米政府が先進的半導体工場の国内建設に向けインテルやTSMCと協議か

ウォールストリートジャーナル(WSJ)のレポートによれば、ホワイトハウスの担当者が、現在インテルならびにTSMCと米国内への半導体工場の建設について話し合っているらしい。米国のハイテク企業と政府は、長年にわたりアジアのチップ工場への依存度を下げる努力をしてきた。その背景にあるのは、安全保障上の懸念、米中関税戦争、さらには世界中のサプライチェーンと物流を混乱させた新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックだ。

WSJはまた、一部の米国当局者がSamsung(サムスン)とより高度なチップを生産するために、米国内での既存の受託製造事業を拡大することについても話をしていると報じている。

インテル、TSMC、サムスンは、10nm(ナノメートル)以下のチップを製造できる。これは、現在市場に出ている最速かつ最も電力効率の高いチップである。

WSJが4月28日に入手した書簡には「インテルのCEOであるBob Swan(ボブ・スワン)氏が国防総省と話し合い『現在の地政学的状況が生み出す不確実性を考慮して』ペンタゴンと共同で商用工場を建設する意向があると語った」と書かれている。

インテルはすでに、自社製品のチップを製造する米国内の事業を持っているが、新しい工場はほかの企業にもサービスを提供することになるだろう。台湾の半導体受託製造メーカーであるTSMCは、他社向けのチップの製造を継続するだろう。なお、その顧客にはQualcomm(クアルコム)、Nvidia(エヌビディア)、AMDが含まれている。

レポートによると、TSMCは商務省と国防省の当局者、および最大の顧客の1つであるApple(アップル)と、米国内での半導体工場の建設について協議中だということだ。

TSMCの広報担当者はTechCrunchへの声明の中で「TSMCは海外に工場を建設することに対して常にオープンであり、どこも排除していません。米国を含むすべての適切な場所を積極的に評価していますが、具体的な計画はまだありません。それはすべて顧客のニーズに依存しています」と語っている。

米国の関係者や業界団体が提案している他の解決策としては、工場の建設コストの高さを補填するための国内チップ産業への政府投資、半導体メーカーが米国の工場で装置を購入して設置する際の税額控除、そして中国のバイヤーにマイクロチップを出荷する米国企業への輸出規制の強化などがある。

TechCrunchはインテルとTSMCにコメントを求めて連絡している。

画像クレジット: Busakorn Pongparnit (opens in a new window)/ Getty Images

原文へ

(翻訳:sako)

アップルがインテルのモバイル向けモデムチップ事業を約1000億円超で買収

TechCrunchはApple(アップル)がIntel(インテル)のモデム事業部の支配権を握る契約を結んだことを確認した。価格は10億ドル(約1087億円)前後で、知的所有権、製造設備、リース物件、社員の全てを含む。特に社員は 2200人全員がAppleに加わる。この契約により、Intelが保有していた分を加わることができたためAppleが保有するワイヤレステクノロジー関係の特許は1万7000件以上になる。

Appleのシニア・バイス・プレジデントであるJohny Srouji(ジョニー・スロージ)氏はプレスリリースで以下のようにコメントしている。

我々は長年にわたってIntelと協力関係にあった。消費者に世界で最高の体験を届けようとするAppleの情熱をチームは分かち合い、チームは一丸となってテクノロジーの進展に努めてきた。我々のセルラーテクノロジーグループは、買収より多数の優秀なエンジニアを迎え入れ、大きく成長する。Appleのクリエイティブかつダイナミックな企業文化は元Intelのエンジニアが活躍するのにふさわしいものと確信する。今回の買収により、我々はイノベーションの基礎となるべき重要な知的所有権を多数入手した。これは今後のApple製品の開発に大きく寄与するだろう。Appleの製品の差別化はさらに進む。

契約の締結発表はTechCrunchでも報じたとおり、しばらく前から流れていた情報が事実だったことを確認するものとなった。AppleがIntelのワイヤレスモデム事業を入手しようとした背景としてQualcomm(クアルコム)との関係がここ数年緊張したものになっていたことを考える必要がある。AppleはQualcommが設定したライセンス料金が高すぎるとして訴訟を起こした。両社はこの4月に和解し訴訟を終結させたものの、AppleはスマートフォンのモデムチップでQualcommに縛られることを強く嫌った。

この買収は Appleは2020年中にもスタートするはずのモバイルネットワークの5G化に向けた準備の一環だと見られている。5GテクノロジーはIntelとQualcommが二分しているが、Intelはこの10年間のスマートフォンブームに出遅れた感があり、5GソリューションではQualcommにやや劣るものと見られている。

Appleは最近デバイスのパーツをすべて内製しようとする攻勢を強めているが、今回買収もこの動きと整合する。CEOのティム・クック氏は10年前に内製化の方向を打ち出していた。クック氏は声明で「我々はプロダクトに使用される主要なテクノロジーを所有し、あるいはコントロールを握っておく必要があると考える。我々は自ら大きな貢献ができる分野にのみ進出すべきだ」と述べている。

今回の契約ではスマートフォン向け以外のモデム・テクノロジーを独自に開発しり権利をIntelは引き続き保持する。つまり各種のパソコン、IoTといったハードウェアだ。これには自動運転車も含まれる。IntelのCEOであるRobert Holmes Swan(ボブ・スワン)氏はプレスリリースで次のようにコメントしている。

今回の合意により、我々はさらに効果的に5Gネットワークの開発に注力することができるようになった。Intelが長年にわたって開発してきたモデムテクノロジーと知的財産を利用する権利は引き続き保持される。我々は以前からApple深い敬意を払ってきた。移籍するエンジニアにとってAppleは最良の舞台を提供するものと信じる。ネットワークのキャリア、接続プロバイダ、クラウド事業者などが必要とするテレコム機器の開発、製造に用いられるモデムチップを始め、Intelは引き続き消費者がもっとも必要とするワイヤレステクノロジーを提供し、5Gネットワークの実現に向けて全力を挙げていく。

この後、司法省の反トラスト法に基づくものなど規制当局の審査が行われるが、Appleでは第4四半期中にこの買収手続きを完了できると考えている。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

QualcommがオランダのNXP Semiconductorを470億ドルで買収

qualcomm2-shutterstock

QualcommがNXP Semiconductorを約470億円で買収することを発表した。今回の買収は手元資金で賄われる。半導体の巨大企業であるこの2社によれば、買収交渉が合意に達したのは先週のことだが、本日のクアルコムによる発表で正式なものとなった。

今回の買収によって年間収益が300億ドルという巨大企業が出来上がることになる。さらに、クアルコムにNXP Semiconductorのセキュリティ向け、認証端末向け、自動運転車向けの半導体技術が加わることで、同社のモバイル事業、ワイヤレス受信機事業、IoT事業の強化にもつながる。自動運転車やサイバー・セキュリティ分野にテック業界や投資家からの注目が集まるなか、半導体分野における主導権をより強固にする今回の買収は賢い選択だったと言えるだろう。

QualcommがオランダのNXPと買収交渉をしていると最初に報じられたのは今年の9月のことだった。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter