The EVERY Companyが卵由来でない卵白で作ったマカロンを米国発売、分子レベルで成分把握・人工酵母を利用し再現

The EVERY Companyが卵由来でない卵白成分で作られたマカロンを米国発売、分子レベルで成分把握・人工酵母など利用し再現

Kimberly Tsai / Business Wire

米国で、鶏卵由来でない卵白で作られたマカロンが発売されました。これは鶏卵の卵白とほぼ同じ成分ものを、人工酵母を使って作り出すmicrobial precisionと呼ばれる技術を使用しています。

この技術は牛乳や卵といった動物性食品の成分を分子レベルまで分析、それと同様のものを微生物を利用して作り出します。たとえば、今年はじめにはこの技術を使って牛乳を使わずに作り出された乳成分を使った乳製品が米国で発売されました。

The EVERY Companyと称する企業は、過去数年かけて卵白に含まれるタンパク質を人工酵母で作り出す研究をしてきました。

ニワトリを必要としない卵白が作れるということは、コストが充分に安価になればその分タマゴが必要なくなり、さらにはニワトリを飼育するための養鶏場設備が必要なくなり、そこでの活動で産生される温室効果ガスの排出を減らすことが可能になって、持続可能性が高まると考えられます。

The EVERY CompanyのArturo Elizondo CEOによると、人工酵母で作り出される卵白はその機能や性質も本物とそっくりになるため、泡立ててメレンゲにしたり、中華麺、パン、パスタ、プロテインバーに至るまで加工する際の様子なども本物と同様に、また風味を損なわずに扱えるとのこと。ただし、あくまで性質は本物の卵白と同じになるため、卵アレルギーを抱える人には不適であることに注意が必要です。

同じ方法で卵白タンパク質の生成に取り組んでいるのはThe EVERY Companyだけではなく、今年初めには、フィンランド大学の研究チームが、人工の菌類から卵白の主要な成分であるオブアルブミンの生産に成功したと発表し、この方法であれば養鶏によるタマゴの生産に比べて温室効果ガスの排出を半分に抑えることができると推定していました。

microbial precision方式の卵白成分の生産を拡大しようとすれば、さらに多くの研究や生産設備が必要になります。しかしThe EVERY Companyはそれが食品の製造方法を変える方法になると楽観的に構えており、Elizondo氏も「我々の食料システム、ひいては世界を真に変革する技術だと信じている」と述べ、将来の世界の食糧供給を様変わりさせることになると強調しました。

もし本当にこの技術が普及していくなら、将来的に養鶏業者は新たな職探しをしなければならなくなるかもしれません。一方、これから人類が目指して行くであろう月や火星などでの生活においてこの技術が利用できるようになれば、大量のニワトリを連れて行くことなく、なにかと用途の多いタマゴの成分を使った食品を現地生産できるようになるかもしれません。ただ、オムライスやタマゴかけご飯好きとしては、卵白だけでなく、タマゴの黄身の部分も作れる技術がはやく確立して欲しいところです。

ちなみに今回の鶏卵を使わないマカロンは、パリ発祥で現在はサンフランシスコとパロアルトを拠点とするフレンチマカロン専門店Chantal Guillonとの協力で作られました。Trip Advisorなどで見たところ、本場フランスの味を提供する店として非常に人気が高いとのことです。

(Source:The EVERY Company(Business Wire)。Via New AtlasEngadget日本版より転載)

浮遊植物アオウキクサから卵白代替品を開発するPlantibleが約5億円調達

米国カリフォルニア州が州全域のロックダウンを発表したとき、Tony Martens(トニー・マーチンズ)氏とMaurits van de Ven(マウリッツ・バン・デ・ヴェン)氏はオランダ・アムステルダムに帰えらずに同州にとどまることを決めた。

そして、Plantible創業者である彼らは、トレーラー2台を運び込んで同社の本部で生活し始めた。本部とはサンディエゴにある広さ2エーカー(約8100平方m)のアオウキクサ(アヒルなどの餌になる植物)の農場だ。

Plantibleは、植物由来のタンパク成分を抽出するために小さな水草であるアオウキクサを使う。このタンパク成分で食品会社が動物ベースのプロダクトを植物ベースのものに変えることができるようになる。ベーキング商品やプロテイン粉末を作ったりする企業、製造過程で卵白をたくさん使う企業にとっては魅力的な選択肢となるはずだ。

Plantibleは乳清や乳製品タンパク質の代替品販売に取り組んでいて、米食品医薬品局(FDA)の承認取得作業の最中だ。「自然の中にあるもので人間が必要とする食材を十分に供給できると我々はかたく信じている」とマーチンズ氏はオフィスとなっているトレーラーで話した。

Plantibleはこのほど企業といくつかの実験を行った。そして「Plantibleはベーキング食材会社や植物ベース肉の販売会社とアオウキクサの抽出物が代替品になることを確認した」とマーチンズ氏は述べた。だがPlantibleは現在の活用方法だけに限定していない。

「我々が目を向けていた部門だけに時間をかけていたら、スポーツ栄養の方のチャンスが逃げてしまう。我々はそこも取りにいきたい」とマーチンズ氏は語った。「当社の可能性を証明する必要がある」。

Plantibleの共同創業者たちが新型コロナウイルスによるロックダウンで寝泊りしているトレーラー

Plantibleは競争が激しい業界に参入している。このところ、ひよこ豆の缶詰の煮汁から作られる液体のアクアファバが、外出禁止による料理ブームの中で再び人気を獲得している。アクアファバは(メレンゲのような)泡立ち度を再現できるかもしれないが、ゲル化(あるいは温めたフライパンに卵を割り入れたときにできるトロリとしながら焼けている外観)は再現できないとマーチンズ氏は指摘する。Plantibleはテクスチャや栄養を損なうことなく卵白代替品になると主張する。

Plantibleにはまた、タンパク質代替品を手掛ける資金潤沢な競争相手がいる。Plantibleが最も競合するベンチャー支援の企業はClara Foods(クララ・フーズ)とFUMI Ingredients(フミ・イングリディエンツ)だ。両社とも卵白代替品の生産を手掛けている。Clara Foodsは卵白を作るのにニワトリの代わりにイーストを使っていて、Plantibleと同様にマカロンやスポンジケーキ、プロテイン粉末といったものを作るのにかなりの量の卵白を使用する事業者に製品を販売している。Clara Foodsはグローバル食材ソリューション企業であるIngredionの支援を受けている。

ライバル企業に勝つには、Plantibleにはスピードと安さ、そしてスケール展開できるオペレーションが必要だ。供給面ではPlantibleはいい位置につけている。アオウキクサは48時間で倍増し、通年の栽培が可能だ。加えて、同社によるとアオウキクサはひよこ豆や大豆、藻類よりも消化しやすいとのことだ。

最もコストがかかるのが抽出作業だ。Plantibleは目下「ラボ規模であり、この規模は本当に金がかかる」とマーチンズ氏は認めた。コストを下げるために同社は、Vectr VenturesLerer Hippeauが共同でリードしたシードラウンドで460万ドル(約5億円)を調達した。他の投資家はeighteen94 Capital(Kellogg Companyのベンチャーキャピタルファンド)とFTW Venturesだ。

Plantibleの共同創業者、マウリッツ・バン・デ・ヴェン氏(左)とトニー・マーチンズ氏

新たな資金を通じて卵白に対し価格競争力を持つ、Plantibleは主張する。現在、卵白液2ポンド(約900g)をつくるのに8〜10ドル(約860〜1070円)かかり、15〜20ドル(約1600〜2140円)で販売されている。

「望まれている食材を生み出すには、最終的には量産できて価格競争力を持つサプライチェーンを展開できるかにかかっている。自然と競争するのは困難であり、我々は高機能で栄養に富んだ酵素を特定することで、できる限り自然を取り込むことにした」とマーチンズ氏は話した。

「自然を活用するほどに、よりスケール展開できるようになる」。シード期のタンパク質代替品会社として、Plantibleが成功するかどうかは販売と生産能力にかかっている。現状ではまだそこまでいっていない。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi