対Apple訴訟でEpic Gamesが優越的地位の乱用による反トラスト法違反を強く主張

世界的な大人気を誇るゲーム「Fortnite(フォートナイト)」と多くのデベロッパーに利用されているゲームエンジンのベンダー、Epic Games(エピックゲームス)はApple(アップル)に対して訴訟を起こしているが、法廷で反トラスト法に違反する反競争的行為があったと強く主張した。

反トラスト法はリベラル、保守を問わず米国でますます注目を集める問題となっている。これはEpicの訴訟にとって有利な環境を作るものだ。

2020年10月に入ってトランプ政権の米司法省はGoogle(グーグル)に対して反トラスト法訴訟を起こした(未訳記事)。一方、米国議会は時価総額1兆ドル(約104兆7000億円)を超える4大テクノロジー企業の独占的な力を制限するためのロードマップを提示している。4大企業とは、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Alphabet(グーグルの親会社)だ。

Epicの弁護士は訴状で、同社がアップルと結んだ契約に違反したことを認めている。しかしEpicはこの契約をやむを得ず結んだものであり、契約条項においてアップルが課す制約が違法なものであるとして次のように主張した。

「Epic GamesがiOSデバイス上で消費者が直接支払いができるようにする手段を講じた際、EpicはアップルがiOSアプリのデベロッパーに課した契約上の制限のいくつかを破った。しかしEpicがこうした手段をとったのは、この契約が違法であるからだ。Epicが直接支払という手段を選んだのはアップルによる独占が存在することを明らかにし、消費者に歓迎され利益をもたらす競争をiOSに導入するためだった。Epicはこの変更を予告なしに実行したが、それは予告をすればアップルがその独占的支配力を利して競争的手法の実現を妨害したはずだからだ」。

結局この議論は「アップルは自社のスマートフォン上のマーケットプレイスで行われる商取引に対して、アップルを通すことを強制する支配権を持つのか」という点に行き着く。

Epic GamesのファウンダーでCEOのTim Sweeney(ティム・スウィーニー)氏は「これはバカげた誤った考え方だ」とツイートしている。

Epicは法廷で「アップルの契約に含まれる制限事項は反競争的であり、開発者、消費者双方の選択自由を否定するものだ」と主張した。

Epicはゲーム内にマーケットプレイスを作りプレイヤーが直接同社に支払いができるようにした理由は「App StoreがiOSエコシステムの不可分の一部ではなく、単にアップルが独占を維持するための道具に過ぎないことを証明するためだった」と主張した。

Epicは訴状に「アップルには契約から生じるものを除いて、Epicの労働の成果を横取りする権利はない。消費者はEpicに対して創造性やイノベーションの対価を直接支払うにあたってFortnite内の課金システムを利用すること選んだ」と書いている。

この訴訟は時価総額世界最大級の企業とゲーム業界の期待の星であり、圧倒的にユーザーに人気のあるゲームを開発運用している会社の間で争われている。Epic Gamesは2020年8月にFortniteアプリ内でゲームプレイヤーがデジタルグッズを購入した場合、アップルのアプリ内課金システムを通さず、ゲーム内から直接支払いができるメカニズムを実装した。

Epicは同じ仕組みをAndroidアプリにも追加した。アップルに加えてAlphabetも直ちにFortniteをアプリストアから削除した。10月に入ってYvonne Gonzales Rogers(イヴォンヌ・ヌゴンザレス・ロジャーズ)判事は9月に出されたEpicの申し立てによる暫定差止命令を維持した。このこの命令はアップルがEpicのゲームエンジンであるUnreal Engineを削除することを報復として禁止したが、アップルがEpicのFortniteをストアから削除した点については差し止めを認めなかった。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Epic GamesがアップルによるUnreal Engineを含む開発ツール全面禁止予告に差し止めの申し立て

App Storeの売上にApple(アップル)が高率の手数料を課することにFortniteの開発元であるEpic Gamesが戦いを挑んだ。アップルはUnreal Engineを含む開発ツールの削除を通告した。しかしEpicは引き下がる姿勢を見せていない。Epicはアップルから来週いっぱいで同社のデベロッパーアカウントを削除し、すべてのデベロッパーツールへのアクセスを禁止することを通知する書面を受け取った。これに対して、米国時間8月17日朝、Epic Gamesはカリフォルニア州北部地区連邦裁判所にアップルに対する差止命令の申立てを行った。

アップルはApp StoreからFortniteを削除し、8月28日を終期としてEpicのすべてのデベロッパーアカウントを削除し 、同時にiOSとMacの開発ツールに対するアクセスも禁ずると通知してきた。我々はこのような報復行為に対し、裁判所に差し止め請求を行っている。詳細はリンク先に。

差し止めの申し立てによれば、Epicはアップルの行為を報復と非難すると同時に、モバイルアプリ市場におけるアップルの独占体制を打ち破ることを使命と考えていることを再確認した。またアップルがEpic Gamesの一切のデベロッパーアクセスを差し止める行為がFortniteと無関係な広汎なビジネスに打撃を与えるものだと指摘した。同社はゲームエンジンを代表する有力なプロダクトであるUnreal Engineを多数のサードパーティのゲーム開発企業にライセンスしている。

申し立てでは「アップルはEpic Gamesに対し8月28日を終期として、同社のプラットフォームでゲームを制作するために必須であるすべての開発ツールへのアクセスを禁止すると通告してきた。これには、Epicが多数のサードパーティーのデベロッパーにライセンスしているUnreal Engineが含まれている。これらのツールは、アップル自身も利用約款に違反するとは一度も主張していない」と述べている。

「アップルは単にFortniteをApp Storeから削除するだけでは満足せず、Fortniteとはまったく無関係なEpic Gamesのビジネス全般に影響する攻撃を仕掛けてきた。最終的には法廷で我々の主張が認められるものと信じているが、差止命令が認められなければEpic Gamesは法廷から最終判断を得るよりはるか前に回復不能なビジネス上の打撃を受けることになる」と主張している。

先週、Epic GamesはFortnite内にアプリストアに手数料を支払うことなく直接支払が可能となる機能を追加することによりアップル、Google(グーグル)双方のアプリストアの規約に違反した。簡単にいえば、Fortniteのプレイヤーはこの機能を利用すればストアに手数料を支払わずに済むため、有利な条件でデジタルグッズの購入ができる。アップルは即座にこれを規約違反としてFortniteをApp Store から削除した。これに対しEpicは反アップルのPRキャンペーンを開始した。テクノロジーの巨人に対する反撃は十分に準備されたものだったようだ。Epic Gamesは反トラスト法による訴訟を起こすと同時にアップルの有名な「1984」CMを下敷きにした「圧制者を倒せ」と主張するビデオを流した。

TechCrunchの取材に対し、アップルはこの展開に関する新たなコメントを避け「アップルはこの問題を解決するためにEpic Gamesと協議しており、FortniteがApp Storeに復帰できるようあらゆる努力を払っている」という従来の主張を繰り返した。

Epic Gamesのアップルの行為に対する差し止め申し立ての全文はこちら

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画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米下院公聴会でザッカーバーグ氏はライバルのコピーを認めるも反競争的利用は否定

米国時間7月29日の米下院反トラスト小委員会の公聴会でFacebookのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOはライバルのアプリや機能をコピーする戦略について質問された。また「これを買収・合併のの交渉の際に武器として使ってこなかったか」と正された。同氏は明白な点については認めざるを得ず、「ライバルが実現した機能を自社でも採用したことはもちろんある」と述べた。

しかしFacebookがライバルをコピーする戦術を反競争的な方法、つまり競争するのではなくFacebookに売却するようライバルに圧力をかけるなど目的で使用したとする意味付けは全面的に否定した。

ワシントン州選出で民主党のPramila Jayapal(プラミラ・ジャヤパル)下院議員は、2012年にFacebookがInstagramを10億ドルで買収した件について具体的に質問した。今回の公聴会を通じて、Instagramの件はFacebookが買収によって巨大な市場支配力を得た例として繰り返し提起(未訳記事)されていた。

ジャヤパル議員はInstagramの買収について、「Facebookの経営幹部は他社のアプリをコピーすることが有力なビジネス戦略であるという点で一致していた」と述べた。

同議員はまた、ザッカーバーグ氏がCOO(最高業務責任者)であるSheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏に送った2012年のメール(PDF)を取り上げ、ザッカーバーグ氏が「Facebookはスピードアップすることでライバルが足場を固めるのを防ぐことができる」と書いているとした。このメールに対してサンドバーグ氏は「この戦略がFacebookからユーザーを奪うようなライバルが存在しないことを意味するのであれば、我々のスピードが速ければ速いほどいいという点には同意せざるを得ない」と返信している。このメールには「Facebookがライバルをコピーするのは『できるだけ軽快に素早く動くべきだ』というプライベートメッセージが付けられていたとジャヤパル議員は指摘した。

 

このメールは Facebookの幹部と中国版のFacebook、人人網(Ren Ren)の創業者で、百度の共同創業者であるロビン・リー(李彦宏)氏との間の会話についても触れており、Facebookがライバルをコピーするという戦略を誕生させた経緯についても需要な資料となるという。

これらのやり取りの中でFacebookの幹部は、中国のアプリ市場ではライバルのプロダクトをクローンすることが普通であることを学んだという。「人人網は、PinterestとTumblrの中国版を構築しており、メール、ゲーム、音楽ストリーミングなども含まれている」とメールは述べていたとされる。また当時Tencentには米国のトランシーバーアプリのVoxerをクローンしたメッセージングアプリのQQがあった。メールは「中国ではみんな他人のコピーをしているのだからそうするのが素早く動く一番いい方法だろう」と示唆していた。
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ザッカーバーグ氏はこのメールをサンドバーグ氏に転送し「興味あるメールだ。あなたもおそらく同感だろう」と書いた。そして実際サンドバーグ氏はこれに賛成した。ザッカーバーグ氏は「Facebook は2012年のメール以後、以来何回ライバルをコピーしたか」という質問に対し、この質問の前提自体が誤りであるとして答えることを拒否した。

そして同氏は「Facebook の任務はユーザーが大切な人々とのつながりを得るためにもっとも適したサービスを構築することです。 この任務はイノベーションによって何か今までにないものを作る」と述べたところで遮られた。

続いてジャヤパル議員は「Facebookは他社を買収する交渉中、プロダクトをクローンするぞと脅したことがありますか」と質問した。「私の知る限りありません」とザッカーバーグ氏は答えた。

同議員は、FacebookはInstagramを買収する交渉で、FacebookカメラをInstagramに対して使うと脅迫していたように見えると述べた。「ザッカーバーグ氏は、Instagramの共同創業者のKevin Systrom(ケビン・シストロム)氏とのチャットで『Facebook自身も写真戦略を持っており、我々の関係のあり方によってパートナーとなるかライバルとなるかも決まってくる』と述べていました」と議員は説明した。ザッカーバーグ氏はシストロム氏とのメールのやり取り(Scribdアーカイブ)で「ある時点であなたは我々と実際に協力する意思があるのかどうかはっきりさせねばならない」と述べている。

シストロム氏は投資家の一人に対して (Scribdアーカイブ)、「『ザッカーバーグ氏のコメントは脅しだと感じた』と打ち明けていた」とジャヤパル議員は述べた。議員は「シストロム氏が買収に賛成しない場合、 Facebookは『殲滅モード』に入ることを暗示したのではないか」とした。ザッカーバーグ氏はシストロム氏とのやり取り自体は否定しなかったが、「我々は自由な競争が可能な市場にいた」として脅迫という意味づけは否定した。

議員はSnapchat買収の際にも同様の戦術が用いられたのではないかと質問した。ザッカーバーグ氏は「このときの会話の内容は詳しく記憶していませんが、これ(チャットサービス)も両者が新しいものを作る余地がある分野だったことは明らかです」と述べた。ジャヤパル議員は「これらの行動を検討するとFacebookは独占であると考える」として質疑を締めくくった。

「ここで問題とされるのは、市場支配力があるプラットフォーム企業がライバルとなる可能性のある企業を脅迫するのは通常のビジネス慣行とは見なしがたいという点です。Facebookは、こうした企業の行動を判断するひとつのテストケースです。Facebookはユーザーのデータを利用して収益を上げ、そのデータでライバル企業をスパイし、ライバルを買収することによって根絶やしにしようとする独占的勢力であると私は考えます」とジャヤパル議員は結論付けた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SprintとT-Mobileの合併を連邦地裁も承認、反対州は敗訴

アメリカのモバイル事業に地殻変動が起きる。T-MobileSprint260億ドルの合併には激しい反対者が存在しているが、このほど連邦地裁から合併を承認する判決が出た。この合併により、アメリカ3位と4位のキャリヤが合併する。アメリカのモバイル・キャリヤの数は4から3となる。

この合併の反対して訴訟を起こしていた14州の司法長官らは「競争者の数が減ることはカルテルを結ぶことを容易にさせるものであり消費者の利益を損なう」と主張してきた。T-MobileSprint「事実はその逆であり、合併によって両社の立場を強化することは巨額の投資を必要とする5Gネットワーク建設にあたってVerizonTechCrunchの親会社)と ATTという1位、2位の会社との競争を可能にし、消費者の利益になる」と主張していた。

連邦地裁のVictor Marrero判事は後者の主張を認め、T-Mobileの事業について「同社はこの10年間に(旧AT&Tグループの)2社と競争できる企業に成長し、消費者に利益をもたらす無数の変化を生じさせた」と評価した。

この合併は司法省による反トラスト法の審査でも承認を受けている。しかし反対州はこの判決に強い不満を抱いており控訴する可能性がある。

画像:TechchCrunch

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滑川海彦@Facebook

米FCCがT-Mobile/Sprint合併を承認

米国時間10月16日、米国連邦通信委員会(FCC)はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併について投票し3対2で正式に承認した。The Vergeによれば、承認が共和党3、反対が民主党2と政党の方針どおりに賛否が分かれた。

TechCrunchではFCCにコメントを求めている。

今年4月8日、T-MobileとSprintは260億ドル(約2兆8267億円)の大型合併で合意したが、当然ながら反トラスト法に違反するのではないかという議論を呼び起こした。当事者企業はAT&TとVerizon(TechCrunchの親会社)というモンスター企業と競争するうえで合併は必須だと主張した。かなりのやり取りの後、7月に入って合併は司法省の承認を受けた。FCCの承認を受けたことにより、残るハードルは他国籍の訴訟だが、両社とも合併手続き完了以前に解決することを約束している。

The Vergeの記事によれば、民主党側のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォルセル)委員とGeoffrey Starks(ジェフリー・スタークス)委員は反対票、共和党側のAjit Pai(アジット・パイ)委員長、Brendan Carr(ブレンダン・カー)委員、Michael O’Rielly(マイケル、オリリー)委員は賛成票を投じたという。

民主党側のローゼンウォルセル委員はこの決定に反対票を投じたとして、次のような声明を発表している。

このような合併によりマーケットが寡占的になれば何が起きるか我々はよく知っている。航空業界でも荷物の料金はアップしシートは狭くなった。製薬業界では数少ない巨大企業が生命に関係する薬剤を高価なままにしている。携帯電話企業が例外であると考えるべき理由はない。T-MobileとSprintの合併は競争を阻害し、料金を高騰させ、品質を下げ、イノベーションを妨害すると考えるべき証拠が圧倒的だ。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

T-MobileとSprintの合併を司法省が承認、衛星放送のDishが携帯事業に参入へ

米国時間7月26日、米司法省はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の超大型合併を承認した。この合併により加入者数で米国で第3位と第4位のモバイルキャリアが単一の会社となる。T-Mobileは260億ドル(約2兆8255億円)をSprintに支払う。

反トラスト法をクリアするため、SprintがBoost Mobileなどのプリペイド携帯事業をDish Networkに売却することが合併の条件となる。この条件に基づき、900万人のプリペイド携帯のユーザーはDishに移るが、向こう7年間はT-Mobile、Sprintの携帯網にアクセスできる。

TechCrunchはこの4月にT-MobileとSprintが合併で最終合意したが、米政府の承認が課題と報じている。T-MobileはドイツのDeutsche Telekom(ドイツテレコム)、Sprintは日本のソフトバンクのそれぞれ子会社だ。

この合併は両社間で合意をみていたが、規制当局による審査に時間がかかっていた。これはAT&T、Verizon(ベライゾン)と合併後の3社が米国の携帯電話加入者の95%を占めることになるからだ。先月、ニューヨーク州、カリフォルニア州の司法長官を代表としていくつかの州の司法省が合併を承認しないうよう求めて訴訟を起こしていた。訴状によれば、この合併は競争を制限することにより料金の上昇を招き、長期的にみて消費者の利益を脅かすからだという。ニューヨーク州司法長官のLetitia James(レティーシャ・ジェームス)氏はTechCrunchに対して次のよう述べた。

合併の条件としてT-Mobileが約束する(プリペイド携帯などの事業をDishに移管するという)措置は、そもそも市場に健全な競争がなければ無意味となる。競争を促進するという口実のもとに政府が恣意的に第4位のキャリアを創設しようとすることに我々は深刻な懸念を抱いている。これは消費者にもテクノロジーのイノベーションにとっても有害な結果をもたらす。

カリフォルニア州司法長官の広報担当者はTechCrunchに対して「我々は引き続き合併条件を検討している」と述べた。州司法省による訴訟は以前として合併を妨げるハードルになり得る。Consumer Reportsの上級政策担当弁護士であるGeorge Slover(ジョージ・スローバー)氏は次のように批判した。

報じられている合併は実績ある競争者であるSprintを消滅させ、携帯事業者としてまったく実績のない新参のDishを4位の事業者にしようとするものだ。Dishは衛星放送事業者であり、独自に携帯を構築、運用した経験はまったくないため、ゼロからのスタートなる。携帯電話事業が寡占とならないことを保証するためにDishの参入が必要とされたわけだが、同社が携帯電話事業で現在Sprintが占めている地位に到達するまでには(到達できるとしても)何年もかかるだろう。

一方、合併推進派は現在の米国の携帯電話事業はVerizon and AT&Tが圧倒的に優勢であり、合併はT-Mobile、Sprinがこれら上位2社との競争を助けるものだとしている。合併が実施されればT-Mobile(合併後はT-Mobileが存続会社)は米国において8000万人のユーザーを持つことなり、それぞれ1億人以上の契約者をもつVerizon、AT&Tに迫るサイズとなる。T-MobileとSprintはそれぞれAT&T、Verizonに対する競争力の強化と巨大な建設費を要する5Gネットワークの実現には両社の合併が必要であると主張していた。司法省はこの主張を認めたかたちだ。

司法省反トラスト法部門のトップであるMakan Delrahim(マカン・デラヒム)氏はWall Street Journalに対し次のように述べた

この合併とこれに付随する取り決めにより、現在利用されていないか、利用が著しく不十分である電波帯域を米国の消費者が必要とする高品位な5Gネットワーク建設のために活用することできるようになる。

T-Mobileは合併の意思を固めた後、実現に向けて何年も非常にアグレッシブなロビー活動を行ってきた。特にCEOのJohn Legere(ジョン・レジャー)氏を始めとする経営陣は4月以降、ワシントンDCのトランプ・インターナショナル・ホテルで滞在費など19万5000ドルを使っている。

【Japan編集部注】TechCrunchは、Verizonに属するウェブメディアだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップルが新設したApp Storeウェブサイトは反トラスト訴訟に狙いを定める

WWDCを目前に控えた今、Apple(アップル)は新しくApp Storeウェブサイトを公開した。最近の同社を相手取った反トラストおよび反競争の告発から自らを擁護することが目的だ。同サイトには、AppleがどのようにApp Storeを運営しているかが詳しく書かれている。アプリがどのように集められ、レビューされているか、デベロッパーはどんなビジネスモデルを構築できるかなども説明されている。さらに、「A Store that welcomes competition」(競争を歓迎するストア)と題したセクションもあり、自社アプリとサードパーティーアプリがマーケットプレイスで共存していることをAppleが主張している。

例えば、Appleの自社製メッセージアプリがMessenger、Slack、Snapchat、Viberらと、AppleのメールがGmail、Outlook、Spark、Yahoo Mailと、マップがGoogleマップ、Citymapper、MAPS.ME、Wazeとそれぞれ競合していることを紹介している。

当然Spotifyも、Apple Musicとポッドキャストのライバルとして掲載されている。

これは驚くことではない。なぜなら最近Spotifyは、Appleが反競争的環境で運営されていると主張しているからだ。3月にEUに提出され現在調査中と報じられている告発状で、同社はAppleがiOS、App Store、自社製競合アプリのすべてを持っていることで戦いを有利に導いていると主張している。Appleバージョンのアプリと競合するアプリを売りたい人は、収益の30%をAppleに払わなくてはならない。

このいわゆる「Apple税」のために、デベロッパーの中にはiOSユーザー向けのアプリやサブスクリプションの価格を高く設定しているところもある。例えばSpotifyは、ウェブで申し込むと月額9.99ドルだが、iOSデバイス経由だと12.99ドルで、事実上「Apple税」を消費者に転嫁している。

これが、今月米国最高裁判所が、裁判の実施を認めた反トラスト法訴訟の根拠となっている。

裁定に際しAppleは、「デベロッパーはアプリの価格を自由に設定しており、Appleは関与していない」と、iOSユーザー向けの価格を高く設定したデベロッパーの決定から自らを遠ざけようとした。

「Appleが収益を分配するのは、デベロッパーがデジタルサービスをApp Store経由で販売することを選んだ場合に限られる」とも同社は言っている。デベロッパーは支払いとサブスクリプションをAppleのプラットフォーム経由で行わなくてもよい、ということのリマインダーだ。

実際、複数の大手IT企業がすでにApp Storeを回避している。

Amazonは以前から長期にわたり、同社のiOSアプリのユーザーが書籍、音楽、映画、TV番組などを買う場合、ウェブブラウザー経由でのみ許している。最近Netflixは、Google PlayとApp Storeの両方でアプリからのサブスクリプション申し込みを廃止した。

残念ながらiOSデベロッパーは、App Store以外で購入する手段をユーザーに伝える手段が制限されており、App Store以外で購入するためのウェブサイトへのリンクを知らせることも禁止されている。しかし、これはフェアなシステムとも言える。「Apple税」は消費者にとってApple Payで簡単に支払うことができ、デベロッパーにとってはAppleが支払手続きを代行してくれ手数料と見ることができるからだ。

本件に関するAppleの総合的な立場はこの新しいApp Storeウェブサイトでも繰り返されている。アプリを集約したプラットフォームの価値と、全世界で10億人に達する顧客とつながることの利点を強調している。

さらにAppleは、これまでに合計1200億ドル以上をデベロッパーに渡してきたことも、思い出させようととしている。そして、ほかのどのアプリストアよりもiOSユーザーが多くのお金を使っていることも(だからデベロッパーは頑張ってね!)

ただしこれは、Appleにとって強調すべきことだったかどうかはわからない。なぜならApp Storeが業界内で避けることのできない巨大な存在であることを、自ら示しているからだ。そして、デベロッパーがよそへ行くことがいかに難しいかを容易に想像できる絵がそこには描かれている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米最高裁での反トラスト訴訟でアップル株が下落

米国時間5月13日、合衆国最高裁判所はiPhoneのユーザーグループがApple(アップル)を反トラスト法違反で訴えていた件で、5対4でユーザーに原告資格を認めると決定した。 ユーザーグループはAppleの独占的地位を不当に利用してApp Storeに30%という高額な手数料を設定し、消費者に転嫁していることが反トラスト法に違反するという訴えを起していた。

これに対してAppleは「消費者はアプリをデベロッパーから購入するのでありAppleは仲介者に過ぎない」として訴えの却下を求めていた。つまり個々のアプリの価格を決めているのはデベロッパーであり、消費者にAppleを訴える資格がないという主張だった。最高裁はこの主張を認めず、Appleは200万種類のiPhoneアプリすべてをApp Storeで販売する契約をデベロッパーと結んでおり、販売の都度30%の手数料を得ていると述べた。

iPhoneユーザーに反トラスト法による訴えの原告資格を認める決定にあたって、最高裁は次のような点も指摘している。すなわち、反トラスト法に違反する経済行動によって被害を受けた者は裁判によって被害回復が図られるべきところ、Appleの申し立てを認めてユーザーの訴えを却下するなら、そうした司法的被害救済を妨げることになる。つまり販売業者が独占的地位を利用して不当な手数料を設定、徴収している場合、結果的に高額の手数料を転嫁されているユーザーも反トラスト法の原告資格があるというものだ。上流のデベロッパーだけに原告資格を認め、下流の消費者に資格を認めないなら、反トラストの遵守にあたって抜け穴を作ることになるとして、ブレット・カバノー最高裁判事が執筆した決定は次のように述べている。

Appleの原告資格の線引きの主張には合理性がなく、単に同種の反トラスト法訴訟を逃れようとするゲリマンダー(恣意的な区分け)に過ぎない。もし販売業者が不当な独占的行動により消費者に競争的価格を上回る価格を強いているなら、その販売業者が上流の製造業者ないし販売業者との間にどのような仕入れ契約を結んでいるかは(原告資格を認めるにあたって)無関係である。

iPhoneのユーザーグループは「AppleはiPhoneのアフターマーケット市場においても独占的地位を得ており、消費者は競争的環境であれば決定されたであろう価格よりも高い価格を押し付けられている」とも主張していた。

つまりApp Storeを代替するサービスが存在するのであれば消費者には選択の余地があるが、事実はApp Store以外にiPhoneアプリの購入方法がないという点だ。またiPhoneユーザーグループは「デベロッパーはAppleの要求するコミッションを前提として価格を決定せざるを得なかった」と述べている。

もちろん反トラスト法におけるこの問題についてはすでに多数判例がある。最近の例ではSpotifyがAppleを訴えたケースだ。ウェブ経由で契約すれば月額9.99ドルだが、iOSを経由するとAppleへの手数料が加算されるため月額12.99ドルとなってしまう。こうした結果が生ずるのはAppleの独占的地位の優越性によるものだというSpotifyの主張に対し、EUも反競争的行動の疑いでAppleに対する調査を準備している

有力デベロッパーの中にもApp Storeでの販売を中止するところが出ている。例えばAmazonは、物品、書籍、音楽、ビデオなどのオンライン販売をウェブ経由に振り向けている。Netflixも昨年12月に30%の手数料、いわゆるApple タックスを避けるためにiOSのアプリ内販売を中止した。Forniteの開発元であるEpic Gamesも手数料を嫌ってGoogle Play Storeの利用を避けた

最高裁の今回の決定にあたって少数意見は1977年のIllinois Brick Co. v. Illinois訴訟の判決を前例として、(原告適格があるのは)アプリのデベロッパーであり消費者ではない」と述べた。つまりデベロッパーが手数料を消費者に転嫁すると決定した場合のみ消費者に被害が生じるのであり、Appleは単なる仲介者に過ぎないというものだ。

Appleの株価は6%近く下落している。


【TC Japan編集部追記】原告資格が認められたことにより、実際に反トラスト法違反があったかどうかの実体審理に移ることになる。多数意見を執筆したブレット・カバノー判事はトランプ大統領による任命だが、今回の決定ではApple寄りの保守派に同調せず自ら多数派意見を書いたことで注目を集めている。反トラスト法の議論は簡単にいえば「AがBに販売し、さらにBがCに販売するという連鎖があった場合でも、Bが独占的地位を利用してCに販売したのであればCはBを訴えることができる」というものだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Amazonが米国の出店者に価格統一を強いる契約条項を廃止か

Amazonは、同社の米国内プラットフォームに出店している独立販売者が、同じ製品を他サイトで安く売ることを禁止していた契約条項を解除する計画であることを、ビジネス情報サイトのAxiosが報道した。

Amazonがこの価格統制方針を撤回したのは、リチャード・ブルメンタル上院議員がAmazonのポリシーを反トラスト法に則って調査するよう 司法省に要請したことを受けてのことだ。要請の数日前、民主党大統領候補のエリザベス・ウォーレン上院議員は、Amazon、Google、Facebookの分割を自身の選挙方針の主要課題であると発表した

最恵国(Most Favored Nation、MFN)条件とも呼ばれるAmazonの価格統制条項は、競争優位性をもたらす一方、その規模ゆえに、消費者にとって公正な競争や価格に影響をおよぼす懸念がある。Amazonは2013年、英国公正取引局およびドイツの連邦カルテル庁の捜査対象になった後EUの出店者に対する価格統一規約を解除した

ブルメンタル議員は声明で、Amazonの「賢明かつ歓迎すべき決定は、Amazonに虐待的契約条項の削除を余儀なくさせた積極果敢な支援と広報活動があってようやく実現した」。さらに彼は「私は今も、反競争的行為を取り締まるべき規制当局が居眠り運転状態でいることが、米国のイノベーションと消費者に多大な犠牲をもたらしていることを深く懸念している」と語った。

TechCrunchはAmazonにコメントを求めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

連邦地裁、AT&TとTime Warnerの合併を承認――政府の差止決定を覆す

反トラスト法に基づいてAT&TとTime Warnerの合併を差し止めたアメリカ政府の決定を連邦地裁のRichard J. Leon判事は覆した。この数週間、こうした決定が下されると予想されていた。当初からこの合併に反対してきたトランプ政権には打撃となるはずだ。決定はニューヨーク証券取引所の取引終了後に発表された。時間外取引への影響は軽微だった。

独自のコンテンツ製作者の立場を確立しようとしてComcastは21st Century Fox(21世紀フォックス)の買収を狙っていた。今日の決定を受けて、Comcastは早ければ明日にも正式な買収提案に動くと予想されている。

2016年10月に AT&TはTime Warnerを854億ドル(純負債を含めて1080億ドル)で買収する計画を発表した。 これに対し、政府は3月に「競争を阻害し、消費者の選択を狭める」として合併を差し止める決定を行った。

今回の連邦地裁の決定が持つ意味は重要だ。AT&TとTime Warnerの合併という個別案件にとどまらずメディアの再編というさらに大きな問題に影響を及ぼすはずだ。

まず第一に、反トラスト法の目的は経済力が1社に過度に集することによってもたらされる不公正なビジネス慣行から消費者を保護することだ。こうした案件では常に合併の結果生じる会社の規模が問題にされる。しかし反トラスト法の目的は規模を制限することではない。垂直統合においては新たな企業が競争を阻害せず、むしろ消費者の選択を増やす場合が往々にしてみられる。

垂直統合というのは、異なった、ないし相補的な関係にあるビジネス分野の2社が合併するような場合だ。新会社が適切な利益を上げつつつ、消費者は同一あるいはより低い料金で以前より広い範囲のサービスを選択することでできる結果となることが珍しくない。もちろんだからといって垂直統合が無条件に承認されるわけではない。FTC(連邦取引委員会)は2000年以来22件の垂直統合を差し止めている。しかし概して水平統合よりも審査は厳しくない。

AT&T/Time Warnerの件は垂直統合の例と考えられる。AT&Tはキャリヤであり、コンテンツの配給者であるのに対してTime Warnerはコンテンツの製作者だ。しかし他の要素が問題を複雑化していた。

まずこの分野で活動するプレイヤーの数がきわめて少なく、それぞれが強い影響力を持つ世界的企業だ。AT&T自体、世界最大のテレコム企業であるし、傘下のDirecTVを通じてアメリカ最大の多チャンネル配信者でもある。一方Time WarnerはHBO、TBS、TNT、ワーナー・ブラザース・エンタテインメント、NBA、MLB、NCAA March Madness、 PGAなどのスポーツ試合を中継する有力メディア・コングロマリットだ。

そこで司法省は「AT&T-Time Warnerの合併が行われれば、新会社は競争相手に料金引き上げることを余儀なくさせ、競争力を失わせるために通信料金の引き上げを行うことができる」と主張した。政府はまたネット中立性を担保する規則が廃止されるため、たとえばAT&TはNetflixがTime Warnerのコンテンツを配信しない場合、通信料金を引き上げるのを防ぐことができないと論じた。

これに対してAT&TとTime Warner側は(事実巨大企業ではあるが)激しい競争にさらされており、ライバルとなる有力デジタル企業、FAANG(Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Google)はすべてビデオ配信を最優先事項のひとつしていると反論した。CNNMoneyが報じたところによれば、AT&T-Time Warnerの弁護士、Daniel Petrocelliは「〔Time-Warneのような〕伝統的形態のメデイア企業はデジタル革命にすでに大きく遅れを取っている」と述べている。

CNNMoneyによれば、こうだ。

PetrocelliはLeon判事に「推算によればFAANG企業の時価総額合計は3兆ドルにもなる。これに対してAT&T-Time Warnerの合併後の時価総額は3000億ドルにしかならない。われわれは彼らの後ろを懸命に追いかけているところだ」と述べた。

一方、トランプ大統領は選挙キャンペーン中から合併に強く反対してきた。Time WarnerはCNNを所有しており、トランプ大統領が目のかたきにしているメディアだ。2016年の選挙戦の演説でトランプ候補は「私が大統領になればこの合併は断固阻止する」と述べ、メディア事業への政治の介入の懸念を高めていた。ただしトランプ大統領は反トラスト担当者にこの件で連絡は取っておらず、合併を承認しないという決定はホワイトハウスからの指示ではないという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


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