台湾Gogoroが電動バイク用交換式全固体電池パックのプロトタイプ発表、容量はリチウムイオン式の1.47倍

台湾Gogoroが電動バイク用交換式全固体電池パックのプロトタイプ発表、容量はリチウムイオン式の1.47倍

Gogoro

電動スクーターの開発販売とバッテリー交換ステーションの運営している台湾のGogoroが、世界初となる電動二輪用交換式全固体電池を発表しました。現在はまだプロトタイプの段階ですが、Gogoroは「将来的に商用製品に発展させることを楽しみにしている」と述べています。

電気自動車などで使用される大容量の充電式バッテリーは、その容量の大きさからリチウムイオン電池が主流になっていますが、可燃性電解液を使用するため熱や変形などによって発火のリスクが高い問題があります。一方全固体電池は電解液ではなく固体の電解質を使用して電極間を接続するため、先に挙げたリスクが小さく、小型軽量化、高エネルギー密度化できると期待される次世代の充電池です。

Gogoroが同じ台湾のProLogium Technologyとの提携により開発したという全固体電池式(プロトタイプ)は内部にリチウムセラミックを使用したもので、Gogoroの電動スクーター用交換バッテリーパックと互換性を持たせて設計されています。そしてその容量は従来のリチウムイオン式の1.7kWhに対して2.5kWhとされ、1.47倍の容量アップを果たしています。

Gogoroは台湾だけでもすでに1万か所以上のバッテリー交換ステーションを設置しており、45万人を超える人々がサービスを利用しているとのこと。台湾の電動二輪車の95%がGogoroのバッテリー交換システムを使用しており、全体のバッテリー交換回数は累計2億6000万回を超えているとのこと。

まだ試作段階ではあるものの、台湾でこれほどに浸透したシステムで利用可能になれば、より大容量かつ安全、航続距離も伸びるであろう全固体式へのシフトはあっという間に進むものと考えられます。

またバイク向けで実用化・普及すれば、バイクよりも航続距離延長と軽量化の需要が高い電気自動車向け全固体電池の実用化にもGogoroとProLogium Technologyの技術が大きく寄与する可能性もあるかもしれません。

電気自動車向け全固体電池の実用化にはまだ数年の期間が必要と言われており、世界各国の自動車メーカーやベンチャー企業などが材料や内部構造を工夫して最適解となるもの生み出すべく開発競争を繰り広げています。

(Source:GogoroEngadget日本版より転載)

半導体産業は台湾にとって「切り札」にも「アキレス腱」にもなる

TechCrunch Global Affairs Projectは、テックセクターと世界の政治がますます関係を深めていっている様子を調査した。

2021年10月上旬の4日間にわたって、約150機の中国軍用機が台湾の領空を侵犯し、台湾と米国からの批判を招いた。このように台湾海峡で緊張が高まる中、台湾の祭英文総統は米国軍は台湾兵士と台湾国内で軍事演習を行っていると発表した。これに対し中国の外務省は、台湾の独立を支援すれば軍事衝突をもたらすだけだと警告した。10月末、米国国務長官Antony Blinken(アントニー・J・ブリンケン)氏が中国外相Wang Yi(王毅)と会見して、台湾地域での現状変更の動きを控えるよう要請したまさにその日に、さらに8機の中国軍用機(うち6機はJ-16戦闘機)が台湾の領空を侵犯した。

1979年、米国は、中華民国(台湾)が中国本土、つまり中華人民共和国の一部であることを承認した。このときから中台関係の変遷が始まり、現在の状態に至る。中国は長期にわたって台湾併合を望んでおり(中国は台湾をならずもの国家と考えている)、軍事侵攻によって強制併合する可能性を決して除外していないが、米国が台湾を軍事的に防衛するかどうかについて戦略的にあいまいな態度をとってきたため、台湾併合を阻止されてきた形になっている。そして近年、台湾が半導体産業で重要な役割を果たすようになってきたため、状況はさらに複雑化の度を増している。

世界の半導体産業における台湾の重要性

台北本拠の調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、台湾の半導体受託製造業者は、2020年時点で、世界のファウンドリ市場の63%のシェアを獲得しているという。詳細を見ると、世界最大の受託チップ製造業者Taiwan Semiconductor Manufacturing Company(TSMC)だけで世界のファウンドリ市場の54%のシェアを確保している。さらに最近のデータによると、Fab 14B P7で停電が発生し製造がストップしたにもかかわらず、TSMCは依然として、2021年の第2四半期で世界のファウンドリ市場の約53%を占めている。

台湾のファウンドリ(TSMCを含む)はほとんどのチップを製造しているが、それに加えて、携帯電話から戦闘機まで、すべてのハイテク機器に内蔵されている世界最先端のチップも製造している。実際、TSMCは世界の最先端チップの92%を製造しており、台湾の半導体業界は間違いなく世界で最も重要視されている。

そして、当然、米国と中国の両国も台湾製の半導体に依存している。日経の記事によると、TSMCは、F-35ジェット戦闘機に使用されているコンピューターチップ、Xilinx(ザイリンクス)などの米国兵器サプライヤ向けの高性能チップ、DoD(国防総省)承認の軍用チップなども製造している。米軍が台湾製のチップにどの程度依存しているのかは不明だが、米国政府がTSMCに対して米国軍用チップの製造工場を米国本土に移転するよう圧力をかけていることからも台湾製チップの重要さの程度が窺える。

米国の各種産業も台湾製半導体に依存している。iPhone 12、MacBook Air、MacBook Proといった各種製品で使用されているAppleの5ナノプロセッサチップを提供しているのはTSMC一社のみだと考えられている。iPhone 13やiPad miniなどのAppleの最新ガジェット内蔵のA15 BionicチップもTSMC製だ。TSMCの顧客はもちろんAppleだけではない。Qualcomm(クアルコム)、NVIDIA(エヌビディア)、AMD、Intel(インテル)といった米国の大手企業もTSMCの顧客だ。

中国も外国製チップに依存しており、2020年現在、約3000億ドル(約34兆円)相当を輸入している。当然、台湾は最大の輸入元だ。中国は外国製チップへの依存度を縮小すべく努力を重ねているが、その需要を国内のみで賄えるようになるのはまだまだ先の話だ。中国の最先端半導体メーカーSemiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)の製造プロセスは、TSMCより数世代遅れている。SMICは現在7ナノ製造プロセスのテスト段階に入ったところだが、TSMCはすでに3ナノ製造プロセスまで進んでいる。

このため、中国の企業は台湾製チップに頼らざるを得ない。例えば中国の先進テック企業Huawei(ファーウェイ)は、2020年現在、TSMCの2番目の大手顧客であり、5ナノと7ナノのプロセッサの大半をTSMCに依存している考えられている。具体的な数字を挙げると、ファーウェイはTSMCの2021年の総収益の12%を占めている。

軍事衝突という形をとらない戦い

2022年前半に起こったことを見るだけで、半導体業界がいかに脆弱かが分かる。比較的落ち着いていた時期でも、停電の影響もあって、TSMCは世界シェアを1.6%失い、継続中の半導体不足に拍車をかけることになった。地政学的な要因による半導体生産量の低下ははるかに大きなものになるだろう。

最悪のシナリオはいうまでもなく、台湾海峡での軍事衝突だ。軍事衝突が起これば、半導体チップのサプライチェーンは完全に分断されてしまう。だが、他にも考えられるシナリオはある。台湾はよく分かっているが、中国に大量にチップを輸出することで、台湾の経済成長は促進されるものの、中国の技術発展も支援していることになる。台湾が、例えば米国との自由貿易協定に署名するなどして、中国への輸出依存度を減らすべく具体的な対策を講じるなら、中国への半導体チップの輸出を打ち切ってしまう可能性がある。

これは中国にとっては耐えられないシナリオだ。考えてみて欲しい。TSMCがトランプ政権の厳しい対中禁輸措置に応えてファーウェイからの新規注文を拒絶して以来、ファーウェイは5ナノ製造プロセスを使用したハイエンドのKirin 9000チップセットの製造を停止せざるを得なくなった。こうしてハイエンドチップが不足すると、ファーウェイはまもなく、5G対応のスマートフォンの製造を継続できなくなるだろう、とある社員はいう

台湾製のチップがまったく入ってこなくなると、中国のテック産業全体の継続的な成長に疑問が生じることになる。そうなると、中国は激怒するだけでなく、国内の安定も脅かされるため、中国政府に台湾武力侵攻の強い動機を与えることになるだろう。

逆に、米国に台湾製チップが入ってこなくなるシナリオも考えられる。「平和的な併合」のシナリオ(武力侵攻なしで台湾が中国に統合されるシナリオ)が実現すれば、台湾のファウンドリは中国政府の支配下に入ることになり、米国にとって戦略的な問題が生じる。中国政府はファウンドリに対してチップの輸出を禁止したり、輸出量を制限するよう要請できる。そうなると、米国は、米軍の最先端の軍事機器のモバイル化に必要なチップが手に入らなくなる。

TSMCが米国企業に対するチップの輸出を停止または制限すると、米国企業は現在のファーウェイのような状況に陥る可能性が高い(中国では「使用できるチップがない」という意味の「无芯可用」という新しいフレーズが登場している)。米国が台湾に侵攻して中国と台湾を再分割する可能性は低いものの、報復として制裁措置を課すなどの対抗手段を検討するかもしれない。そうなれば米中間の緊張がさらに高まることになる。

いうまでもなく、こうしたシナリオが現実化すればグローバルなサプライチェーンは分断され、全世界に深刻な状況を招くことになる。

台湾の半導体産業は国を守る盾か、それともアキレス腱か

台湾は間違いなく、半導体業界における支配的な地位と、それが米国と中国に対する影響力を与えている現在の状況を享受しているが、米中両国は現状に大いに不満を抱いており、両国とも自国に有利な状況になるようさまざまな手段を講じている。たとえば米国は、米国内にチップ製造工場を建設するようTSMCに要請している。一方中国は、TSMCから100人以上のベテラン技術者やマネージャーを引き抜いて、最先端のチップ製造を自国で行うという目標に向けて取り組みを強化している。

これは台湾の将来にとって決して好ましいことではない。台湾が海外での半導体生産量を増やすと、台湾に対する国際的な注目は弱まるかもしれない。が、同時に米国が台湾を軍事的に保護する動機も弱まってしまう。サプライチェーンが広域に分散するほど、中国が台湾を軍事力で併合するための主要な障害が軽減されることにもなる。台湾にとってこれは、難しいが、存続に関わる問題だ。

こうした不確実な要因はあるものの、台湾の地位は少なくとも短期的には安泰のようだ。米中両国の競争相手の製造プロセスはまだ数年は遅れている状態であるし、彼らが追いついてきたとしても、工場は稼働するまでに数年の計画と投資が必要になることはよく知られている。現状に何らかの変化がない限り、米中両国とも、少なくとも短期的には、台湾製チップなしでやっていけるとは考えられない。今確実に言えることは、米中両国は、対台湾戦略において、従来にも増して台湾の半導体産業の役割を考慮する必要があるということだ。

編集部注:本稿の執筆者Ciel Qi(シエル・チー)氏は、Rhodium Groupの中国プラクティスのリサーチアシスタントで、ジョージタウン大学のセキュリティ研究プログラム(テクノロジーとセキュリティ専攻)の修士課程に在籍している。また、ハーバード大学神学部で宗教、倫理、政治学の修士号を取得している。

画像クレジット:Evgeny Gromov / Getty Image

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(文:Ciel Qi、翻訳:Dragonfly)

AndroidのゲームをWindows上で楽しめる「Google Play Games for PC」がベータテスト開始、香港・韓国・台湾で

米国時間1月19日、Googlは同社が新たに発表したGoogle Play Games for PCプロダクトの非公開ベータテストを香港、韓国、台湾の3つの海外市場で開始する。PCアプリケーションGoogle Play Gamesは2021年12月のThe Game Awardsイベントで発表され、Google Playのゲームを、これまでのモバイルとタブレットとChromeOSに加えて、Windows PCでプレイできる。対応するPCはラップトップとデスクトップの両方で、Androidスマートフォンなど別のデバイス上で途中でやめたゲームをコンピューター上で再開することもできる。

同社は前に、そのPCアプリにアクセスできる最初の市場を発表しており、その時期は2022年の初めと予想されていた。しかし正確な日付は未発表だった。

ベータにアクセスできたテスターは、人気のモバイルゲーム「モバイルレジェンド:バンバン」や「サマナーズウォー」「State of Survival:The Joker Collaboration」「Three Kingdoms Tactic」などの人気モバイルゲームをトライできる。これらはすでに、1カ月のプレイヤー数が数億に達している。ベータテスターがアクセスできるのは、Googleによると約25のゲームだ。

そのPCアプリは、ユーザーがカタログを閲覧でき、ゲームをダウンロードして大型画面でプレイできる。しかも、マウスやキーボード入力の便利さは失われていない。一方、Googleの発表によると、ユーザーのゲームプレイがどこまで進んだかは複数のデバイス間で同期され、PCでプレイしても前からのプレイポイントは継続される。

 

このPCアプリのローンチの前には、Microsoft(マイクロソフト)によるWindows 11のAndroidアプリ対応があった。それはAmazon(アマゾン)との提携でAmazon独自のAmazonアプリストアを使うやり方で、クロスプラットフォームなゲームプレイの需要と要望の過熱に応える措置だった。しかし今回のGoogle Play Games for PCアプリケーションはMicrosoftとのパートナーシップはゼロで、あくまでもGoogle独自のアプリケーションであり、Google内で開発され配布される。またゲームストリーミングサービスでもない。プレイヤー自身がゲームを自分のコンピューターにダウンロードしてプレイするものだ。

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ベータ版の公開にともない、GoogleはAndroidの開発者向けに、既存のゲームをWindows PCと互換性を持つように最適化するための詳細を公開するとしており、これによりPCアプリが提供する拡張アクセスを利用できるようになる。Googleは2021年12月、Windowsアプリの登場により、Google Playゲームは、プラットフォームを問わず、25億人の月間アクティブユーザーを抱えるゲームエコシステムに到達することができると発表していた。

Googleはベータ版への参加に関して、開発者向けウェブサイトを開設しベータ版の継続にともなうアップデートを受け取るためのオプトインができるようにしている。

画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Gogoroが中国で電気二輪車用バッテリー交換ステーションを開設、サービス開始

中国の二輪車メーカー大手2社との提携を発表してから5カ月「Gogoro(ゴゴロ)」は米国時間10月11日、杭州に45カ所のバッテリー交換ステーションを開設し、サービスを正式に開始した。同社の共同設立者であり最高経営責任者であるHorace Luke(ホレス・ルーク)氏は、TechCrunchの取材に対し、年内に80カ所のステーションを開設することを目標としており、その後、パートナーであるYadea(ヤデア)とDachangjiang Group(大長江グループ-DCJ)とともに他の主要都市にも拡大していくと述べている。

中国では、Gogoroのバッテリー交換技術はGogoro、Yadea、DCJが提携するHuan Huanブランドで運営されることになる。

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YadeaとDCJは、Gogoroのバッテリー交換技術を搭載した車両の開発を進めており、Yadeaは本日、杭州を皮切りに2モデルの販売を開始した。

両社は、とりわけ電気二輪車において、鉛蓄電池ではなくリチウム電池の使用が義務づけられていることなどから、政府の規制が消費者の需要を動かしてくれることを期待している。2025年までに、この規制に対応していない2億7千万台の車両が廃車になると言われている。

Gogoroは2021年9月、Poema Global(ポエマ・グローバル)との23億5000万ドル(約2600億円)のSPAC取引(2022年第1四半期に完了予定)を経て、NASDAQに上場することを発表した。同社は、バッテリー交換ネットワークに加えて、独自のハイエンド2輪スクーターのシリーズでもよく知られているが、Yamaha(ヤマハ)、Suzuki(スズキ)、AeonMotor(イオンモーター)など、同社のバッテリーや充電ステーションを使用する車両を生産する他のメーカーとの契約を結んでいる。

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このパートナーシップは、Gogoroの技術へのアクセス性を拡大させるための重要な要素となっており、2021年はインドの二輪車市場のリーダーであるHero MotoCorp(ヒーロー・モトコープ)との契約も発表している。

「私たちは『Gogoroは高級すぎて、主要都市で本当に必要としている人たちには届かない』という目で見られてきましたが、YadeaとDCJの協力があれば、これから誰もが乗れるようになり、これまで販売されてきた大衆車よりも安価な車両を購入できるようになります」とルーク氏は語った。

画像クレジット:Gogoro

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(文:Catherine Shu、翻訳:Akihito Mizukoshi)

台湾の電動スクーターと交換式バッテリーインフラ企業Gogoroが評価額2575億円のSPACを経てNASDAQへ上場

Gogoro(ゴゴロ)が上場する。電動のスマートスクーターと交換式バッテリーインフラで知られている同社は現地時間9月16日、Princeville Capital(プリンスビレキャピタル)傘下のSPAC(特別買収目的会社)Poema Global(ポエマグローバル)との合併を通じてNASDAQに上場すると発表した。この取引でのGogoroのバリュエーションは23億5000万ドル(約2575億円)で、2022年第1四半期の取引完了を目指している。合併会社の社名はGogoro Incとなり、ティッカーシンボル「GGR」で取引される。

発表によると、募集以上の申し込みがあったPIPE(上場企業の私募増資)での2億5000万ドル(約274億円)、そしてPoema Globalが信託で保有する3億4500万ドル(約378億円)を含め、Gogoroは上場の過程で5億5000万ドル(約603億円)を調達すると予想している。PIPEでの投資家には、Foxconn Technology Group(フォックスコン)や、GojekとTokopediaの合併で誕生したインドネシアのテック大企業GoToといった戦略的パートナー、Generation Investment Management、台湾の国家開発基金、Temasek、Ruentex GroupのSamuel Yin(サミュエル・イン)博士、Gogoroの創業投資家などの新規・既存投資家が含まれる。

資金はGogoroの中国、インド、東南アジアでの事業拡大と、テックエコシステムのさらなる開発に使われる。

台湾で10年前に創業されたGogoroのテクノロジーには、交換可能なスマートバッテリー、充電インフラ、車両やバッテリーの状態やパフォーマンスをモニターするクラウドソフトウェアが含まれる。Smartscooters、Eeyo電動自転車といった自前のブランドを手がけているだけでなく、Gogoroは自社のPowered by Gogoro Network(PBGN)プログラムを通じて利用できるプラットフォームを作り、パートナー企業がGogoroのバッテリーや交換ステーションを使う車両を製造できるようにしている。

SPAC取引の数カ月前に、Gogoroは中国とインドでの大きな提携を発表していた。中国ではバッテリー交換ネットワークの構築でYaeda、DCJと協業し、インドでは世界最大の二輪車メーカーの1つ、Hero MotoCorpがGogoroのテックをベースにしたスクーターを発売する。Gogoroはまた、ヤマハ、スズキ、AeonMotor、PGO、CMC eMOVINGなどのメーカーとも提携している。

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これらのパートナーシップが整ったことで「我々は現在、真に当社を次のレベルに持っていく必要があります」と創業者でCEOのHorace Luke(ホイレス・ルーク)氏はTechCrunchに語った。GogoroがSPACのルートを取った理由について、同氏は次のように説明した。「ビジネスチャンスやストラクチャー、提携とは何か、かなり掘り下げて語ることができるため、急ぎのロードショー(さまざまな機関投資家への会社説明会)よりも正しく会社を評価できます。当社の事業計画を考えると、SPAC上場は事業拡大にフォーカスする絶好の機会となります」。

GogoroがPoemaを選んだ理由の1つは「Poemaの持論が当社のものとかなり一致していたからです」とGogoroの最高財務責任者Bruce Aitken(ブルース・エイトケン)氏は述べた。「例えばPoemaは持続可能性の基金を持っていて、当社の環境と持続可能性に対する情熱はそれとうまく融合します」。

5年もしないうちに累計で売上高は10億ドル(約1097億円)に、バッテリー交換インフラの契約者は40万人超になる、とGogoroは話す。同社は2021年第4四半期に中国・杭州で試験プログラムを立ち上げ、2022年にはさらに6都市でも展開する。インドではHero MotoCorpが現在、Gogoroをベースにした初の車両を開発中で、2022年にニューデリーでバッテリー交換インフラの展開を開始する。

「想像したよりも中国での需要は大きく、これは当社にとって良いニュースです。そしてこれは上場する必要がある基本的な理由の1つでもあります。当社はこうしたマーケットに実際に大規模に貢献するのに必要な資金やリソースを調達しなければならないのです」とルーク氏は述べた。

Gogoroが東南アジアに進出するのにGoToと同様の提携を結ぶのか尋ねたところ「重要なのは東南アジアが二輪車マーケットとしては中国、インドの次に3番目に大きいことを認識することです。Gogoroはこうした大きなマーケットを追い求めるためのビジョンを常に持っています。GoToはインドネシアですばらしい成功を収めていて、GoToの当社への投資は会話のきっかけになりますが、GoToがPIPEに参加するということ以外、現時点で発表できることはありません」とルーク氏は話した。

発表資料の中で、Poema GlobalのCEOであるHomer Sun(ホーマー・サン)氏は「Gogoroが構築したワールドクラスの提携との組み合わせで開発したテクノロジーの差異化は、2つの世界最大の二輪車マーケットでかなりの成長機会をもたらすと確信しています。Gogoroの事業エリア拡大の計画とNASDAQ上場企業への移行をサポートすべく、同社の傑出した経営陣とともに取り組むことを約束します」。

画像クレジット:Gogoro

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

台湾TiSpaceは初の同国産ロケット試験打ち上げを2021年中にオーストラリアで予定

オーストラリアの規制当局は、創設5年目のロケット打ち上げ会社であるTaiwan Innovative Space(晋陞太空科技、通称TiSpace)に、2021年後半にオーストラリア南部の新たに認可された施設で商業打ち上げを行うことを許可した。

TiSpaceは、オーストラリア南部のホエーラーズ・ウェイ軌道発射施設で、2段式弾道飛行ロケット「Hapith I(飛鼠一號)」の試験飛行を行う予定だ。この飛行では、ロケットの推進、誘導、テレメトリ、構造の各システムの検証を行うと、TiSpaceはニュースリリースで述べている。宇宙インフラ企業のSouthern Launch(サザン・ローンチ)が運営するこの発射施設は、3月にオーストラリアの産業省から認可を取得した。

このニュースは、他国に比べて遅れをとっているオーストラリアと台湾で急成長中の宇宙産業にとって、潜在的に重要な意味を持つ。オーストラリアは2018年に国の宇宙機関が設立されたばかりだが、それ以来、新たな宇宙経済への参入方法について国家的な関心が高まっている。新たに認可された発射施設では、まずは最大3件の弾道飛行ロケットの試験打ち上げキャンペーンを支援することになっている。その目的は、この地域で起こりうる環境への影響に関するデータを収集するためだ。

「今回の打ち上げ許可は、オーストラリアの商業打ち上げ能力を確立し、国際的な宇宙分野においてオーストラリアが何を提供できるかを示す重要な成果です」と、Christian Porter(クリスチャン・ポーター)産業・科学・技術大臣は声明で述べている。「宇宙は世界的に重要な成長市場であり、大規模な投資、新しい技術、さまざまな産業分野における雇用拡大を通じて、オーストラリアの経済的未来を支えることになるでしょう」。

台湾でも自国の宇宙産業は発展が遅れていたが、2021年5月に立法院が国内の宇宙開発を促進するための「太空発展法(宇宙開発法)」を可決したことで、大きな一歩を踏み出した。最近では1月にケープカナベラルからSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットで運ばれたキューブサット「YUSAT」や「IDEASSat」など、いくつかの衛星を軌道に乗せているものの、国内からロケットや宇宙船を打ち上げたことはまだない。

Hapith Iは台湾初の国産ロケットであり、TiSpaceは同国初の商業宇宙打ち上げ会社である。当初は台湾の発射場からHapith Iの試験打ち上げを行う予定だったが、場所に関する法的問題から中止となった。打ち上げだけでなく、TiSpaceは国外でさらなる事業の展開を始める可能性さえある。オーストラリア向けに発行されたプレスリリースによると、同社は「ロケットシステム一式の製造」を現地で行うことも検討しているという。

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画像クレジット:Australian Space Agency

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

韓国eコマース大手のCoupangが日本に続いて台湾に進出

台北で配達をするCoupangのライダー

2021年6月に初の海外市場として日本でサービスの試験運用を始めた韓国eコマース大手のCoupangが、今度は台湾に進出した。同社が台北市中山区でサービスを開始したことで、住民はアプリから商品を注文し、午前8時〜午後11時にオンデマンドで配達してもらえる。配達手数料は19ニュー台湾ドル(約75円)。

Coupangはサービスをテストし、台湾での配達インフラについて今後さまざまなモデルを評価する。注文できる商品は食品、飲料、生活必需品、ペット用品で、日本でのサービスと似ている。台北ではCoupangの現時点での最も直接的な競合は、ドラッグストアなどの小売店やレストランから配達をしているUber EatsやFoodpandaだ。Coupangは今のところ配達担当者を店舗やレストランに向かわせるのではなく直接注文を処理しているのが大きな違いだ。

今後Coupangが商品のカテゴリーを広げていくと、24時間配達をしているMomoやPChomeなどのeコマースプラットフォームとも競合するだろう。Coupangは韓国のeコマースプラットフォームで膨大な商品を取り扱っている。生鮮食料品のRocket Freshや食事のCoupang Eatsといったサービスも展開している。

2010年に創業されたCoupangは、2021年3月にニューヨーク証券取引所での上場に成功した。韓国におけるeコマースのマーケットリーダーとなり、配達のスピードとリテンションレート(顧客がどの程度の頻度で戻ってきて購入するか)で「Amazonを超えようとするAmazon」と国際的にも評価されている。

韓国でCoupangが10年前に創業したときには自社のロジスティクスのインフラに相当な投資をしたが、現在では他社とも連携している。日本や台湾でどのような事業モデルを選択するかはまだ決まっていないようだ。同社は次にどこのマーケットに進出するかを明らかにしていないが、シンガポールでオペレーション、小売、ロジスティクスの責任者を募集していた

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Coupangeコマース韓国台湾デリバリー

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

台北のコンピュータービジョンeYs3DがシリーズAで7.7億円獲得、日本の丸文も投資

コンピュータービジョン技術のための、エンド・ツー・エンドのソフト・ハードウェアシステムのファブレスデザインハウスeYs3D Microelectronicsが、シリーズAで700万ドル(約7億7000万円)を調達した。参加者には、ARM IoT Capital、WI Harper、丸文が含まれる。いずれも戦略投資家だ。

台湾の台北に拠点を置くeYs3Dは2016年、ファブレスICおよびシステムインパッケージ(SiP)の設計会社であるEtronからスピンアウトした。eYs3Dは、新しい資金により、新市場で組み込みチップビジネスを構築する。集積回路、3Dセンサー、カメラモジュール、AIベースのソフトウェアなどの同社のテクノロジーは、ロボット工学、タッチレスコントロール、自動運転車、スマートリテールなど幅広く応用できる。eYs3Dの製品は、Facebook Oculus RiftS、Valve Indexバーチャルリアリティヘッドセット、Techman Robotsで使用されている。

マイクロプロセッサー企業であるArmは、eYs3Dのチップを自社のCPUとNPUに統合する予定だ。台北、北京、サンフランシスコにオフィスを構えるクロスボーダーの投資会社であるWI Harperは、eYs3Dに産業パートナーの国際ネットワークへのアクセスを提供する。半導体などの電子部品を販売する丸文株式会社は、eYs3Dの新たな流通チャネルを開拓する。

Arm IoT Capitalの会長であるPeter Hsieh(ピーター・シエ)氏は声明で「将来、強化されたコンピュータービジョンサポートがArmのAIアーキテクチャーとその展開において重要な役割を果たします。eYs3Dの革新的な3Dコンピュータービジョンの機能が市場に大きなメリットをもたらします。eYs3Dと提携し、AIに対応しやすいビジョンプロセッサーを生み出す機会に投資できることをうれしく思います」と述べた。

新しい資金は、eYs3Dの製品開発拡大と、一連の3Dコンピュータービジョンモジュールの立ち上げにも向けられる。また、新しいビジネスパートナーと協力して同社のプラットフォームを拡張し、より多くの人材を採用するためにも使われる。

eYs3Dの最高戦略責任者であるJames Wang(ジェームス・ワン)氏はTechCrunchに「世界的なチップ不足と台湾の干ばつによる当社の事業計画や生産計画への影響は大きくありません。集積回路製造サービスに関してEtronと協業しているからです」と語った。

「Etron Technologyは台湾のファウンドリーセクターの主要な顧客の1つであり、さまざまなファウンドリーと強い関係を持っているため、eYs3Dは顧客向けの製品を必要なときに受け取ることができます」とワン氏はいう。「一方、eYs3Dは主要な顧客と緊密に連携して、生産パイプラインのジャストインタイムのサプライチェーンの計画を立てています」。

同社のシステムは、シリコンの設計とアルゴリズムを組み合わせ、熱、3D、ニューラルネットワークの認識など、さまざまなセンサーから集まる情報を管理する。その技術は、Visual SLAM(vSLAM)、物体の深度認識、ジェスチャーによるコマンドをサポートする。

ワン氏によると、eYs3Dは集積回路設計からすぐに使用できる製品までエンド・ツー・エンドのサービスを提供でき、クライアントと緊密に連携して彼らが必要なものを探り当てる。例えば障害物の回避と人間の追跡機能のために、自律型ロボット会社にチップソリューションを提供した。

「彼らの専門はロボットモーター制御と機械であるため、3Dセンシングや物と人の認識のための設計モジュールに関してより完全なソリューションが必要でした。検証用のミドルウェアアルゴリズムサンプルとともに、当社の3D深度カメラソリューションとSDKの1つを提供しました」と、ワン氏は語る。「顧客は当社の設計パッケージを採用し、3D深度カメラソリューションをシームレスに統合して、概念実証を短期間で実現しました。次に、ロボットを商品化する前にカメラの設計をロボット本体に合うように改造する作業を支援しました」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:台湾eYs3Dコンピュータービジョン資金調達

画像クレジット:eys3d

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

半導体不足がさらに深刻化し「危険水域」に突入か、MacやiPadの製造にも影響する可能性も

半導体不足がさらに深刻化し「危険水域」に突入か、MacやiPadの製造にも影響する可能性も

Nikada via Getty Images

昨今、あらゆる業界を悩ませていると言っても過言ではない半導体製造の不足。ここ最近は製造側の取り組みにも関わらず悪化の一途を辿っているといった状況ですが、リードタイム(発注から納品までの時間)が17週間にも及ぶことから、この問題では比較的影響の少なかったアップル製品にも、ついに影響が出る可能性があると報じられています。

この動向を報じているのは、米国Bloomberg。同誌の報道によると、サスケハナ・ファイナンシャル・グループはチップ製造の遅延(リードタイム)が3月時点での16週から4月では17週に延びており「ユーザーが供給の確保に必死になっていることを示している」と分析しているとのことです。

これは同誌が2017年にデータを追跡し始めて以来最も長い待ち時間であり、記事ではこれを称して「危険水域」と表現されています。

なお、さらに小規模な企業の場合はもっと影響が大きく、待ち時間が52週間を超えるほどの大問題になっており、製品の再設計や優先順位の変更さえも余儀なくされているとのこと。実際に最近は、日米の自動車メーカーにおいて一部のハイテク機能を省いて需要に応えているとの報道もありました

現状でのアップルは半導体メーカーにとっては最上級とも呼べる顧客である点や、ティム・クックCEOがサプライチェーンの構築や物流に長けた達人であるため、これまでは部品の供給不足に大きく悩まされたといった話はほとんどありませんでした。

しかし先日の第2四半期決算説明会では、幹部ら自らが今後MacやiPadが品薄になる見込みと警告していたほどです

特にアップルにとって重大と思われるのが、iPhoneのAシリーズチップやMacおよびiPad Pro用のM1チップを製造しているTSMCがある台湾が、目下危機的状況に置かれていることです。

台湾は新型コロナウイルス感染が再び拡大していることに加えて、雨期にほとんど雨が降らなかったために節水対策を強化するとも発表されており、こちらもチップ生産に影響するとの懸念もあります。

もっともTSMC側は今のところ「この措置が当社の事業に影響を与えるとは考えていない」との声明を出しています。

こうしたチップ不足が、今年のMacやiPadの生産や入手しやすさにどの程度の影響を与えるかはまだ不明です。またサスケハナは、リードタイムが長くなったことで各企業が在庫の積み増しや二重発注をするなど「悪い行動」に拍車をかけたようだも推測しています。

もしも今回のチップ不足が解消されても、その後の混乱は長引くのかもしれません。

(Source:BloombergEngadget日本版より転載)

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電動スクーターの台湾Gogoroが世界最大規模のインド二輪メーカーHero MotoCorpと提携

Gogoro(ゴゴロ)の交換・再充電可能なバッテリーで動く電動スクーターは現在、同社のホームマーケットである台湾の月間販売の約4分の1を占めている。しかし共同創業者でCEOのHorace Luke(ホレイス・ルーク)氏が頻繁に聞かれる質問の1つが、Gogoroがいつ他国でスクーターを展開するのか、というものだ。

「私はいつも『準備してます、準備してます、準備してます』と言ってきました」とTechCrunchに語った。そしてGogoroは現地時間4月21日、世界最大の二輪車メーカーの1社で、本社を置くインドでマーケットリーダーであるHero MotoCorpとの戦略的提携を発表することでその質問に答えた。

GogoroとHero MotoCorpの提携にはインドにおけるバッテリー交換ネットワークを構築する合弁会社の設立が含まれる。Hero MotoCorpはまた、Gogoroのテクノロジーをベースとする電動二輪車をHero MotoCorpブランドで立ち上げる。これはHero MotoCorpにとって初の電動車両となる(この提携はHero Electricとではない。Hero ElectricはHero MotoCorpの創業者の親戚が運営している別会社だ)。

提携では、Hero MotoCorpの他のマーケットに拡大する前にまずインドにフォーカスする(同社は世界40マーケットで事業を展開している)。初の車両がどのようなものになるのか、立ち上げ都市、価格など詳細は今後発表されるが、ルーク氏はGogoroとMotoCorpが「かなり急速に準備中」だと述べた。

ルーク氏は戦略的提携を、エネルギー効率のい車両を生産したい企業にとってのターンキーソリューションとして、バッテリー交換とスマートモビリティプラットフォームになるというGogoroの目標の認証だと表現した。

「当社は、いつかHeroのような大手企業を誘うことができると期待してテクノロジー、能力、ビジネスモデルをデザインしました」とルーク氏は語った。

最初のGogoroスマートスクーターは2015年に立ち上げられた。以来、提携企業が電動スクーターを自前のブランドで生産できるようヤマハ、PGO、A-Motorなどのメーカーと提携を結んだが、Gogoroの海外展開はかなり遅々としたものだった。例えば韓国での納車すでに廃止となった欧州のシェアリングサービスCoupとの提携などだ。米国での初の製品展開はスクーターではなく、電動自転車Eeyoだった。

GogoroとMotoCorpは1年以上協議してきた。ルーク氏は戦略的提携を同社がこれまでに結んだ契約の中で最も重要なものの1つだとした。

「大きな変化を起こすために、我々は本当に大規模な採用を必要としています。軽量のパーソナルモビリティを発進させるために、台湾は当社にとってテクノロジーを開発して改良し、プラグをつなげて充電するのではなく交換して乗車するテクノロジーが可能であることを世界に示すための最高のパイロットマーケットでした」とルーク氏は話した。

しかしインドは明らかに、地理的、そして人口という点でも台湾よりかなり大きなマーケットだ。インド政府は補助金プログラムで電動車両を推進したいと考えており、人々にとって同国の燃料コストの高さもガソリンから電気へと切り替えるインセンティブとなっている。しかしながら、多くの消費者にとって大きな障害は「航続距離の心配」、つまり1回のフル充電でどのくらい長く走行できるかについての懸念だ。

だからこそGogoroとMotoCorpの交換ステーション合弁会社は重要だ。台湾ではGogoroは37万5000人超のライダーを抱え、バッテリー交換・充電ステーション2000カ所で1日あたり26万5000回のバッテリー交換が行われる。この割合は鍵を握るセールスポイントだ。というのも、ライダーはGogoroのスマホアプリを通じてすばやく近くの交換ステーションを探し出せる。

Gogoroのバッテリー交換ステーションの1つ

Gogoroのバッテリーと充電ステーションはGogoroのネットワーククラウドサービスにつながっていて、バッテリーの状態を監視し、いかに早くバッテリーが充電されるかを管理している。これにより、バッテリーは長持ちする。立ち上げ後の6年間でスマートバッテリーをまだ1つもリタイアさせていない、とルーク氏は話した。Gogoroネットワークのデータはまた、どこにステーションを設置すべきかも示す。インドではGogoroとMotoCorpは人口密度の高いエリアでまず事業を開始し、その需要に基づいてステーションを加える。台湾のネットワークで取ったアプローチに似ている。

インドの後、GogoroとMotoCorpは他のマーケットへの進出も計画しており、Gogoroの海外展開を一層促進する。

「この提携で本当に重要なことは、二輪マーケットにおけるMotoCorpの影響力、そして新興マーケットにおける二輪マーケットの重要性です」とルー氏は話した。

報道機関向けのリリースの中で、MotoCorpの会長兼CEOのPawan Munjal(パーワン・ムンジャル)博士は戦略的提携は研究の延長であり、開発によってすでに電動車両のポートフォリオが作られつつある、と述べた。

「二輪におけるHeroのリーダーシップ、グローバル展開、イノベーションの原動力、そして台湾と世界で過去数年にわたって展開されてきた交換ビジネスモデルにおけるGogoroのリーダーシップを持ち寄り、今日は我々の旅におけるもう1つの大きなマイルストーンです」とムンジャル氏は付け加えた。

カテゴリー:モビリティ
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画像クレジット:Gogoro

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

クラウドキッチンスタートアップJustKitchenがカナダのTSX Venture Exchangeに上場へ

クラウドキッチンのスタートアップであるJustKitchenは米国時間4月15日木曜日の朝、トロント証券取引所(TSX)のVenture Exchangeの取引を開始する。すでに同社は3000万ドル(約33億円)の評価額で800万ドル(約8億7000万円)を調達しており、普通株式による直接上場を行う。

JustKitchenによると、これは北米で最初ではないにしても、クラウドキッチン企業として初期に上場した会社の1つとなる。同社は2020年に台湾で事業を開始し、現在はカナダで法人化され、香港、シンガポール、フィリピン、米国にも進出する計画だ。TSX Ventureは、業種によって一定のしきい値に達するとメインボードに移行できる、スタートアップを含む新興企業のためのトロント証券取引所のボードだ。

関連記事:クラウドキッチンで次世代のレストランフランチャイズを作る台湾のJustKitchen

「これは市場に参入するための非常に便利な方法で、特にゴーストキッチン業界ではアーリーステージであり、多くの滑走路があります」と、共同創業者兼CEOのJason Chen(ジェイソン・チェン)氏はTechCrunchに次のように語っている。「私達はできるだけ早く事業を開始し、市場に進出する必要性を感じていました」。

JustKitchenのIPOラウンドには、(2020年同社のアクセラレータープログラムに参加した)以前からの投資家であるSparkLabs Taipeiや、トロントの投資機関、リテール顧客などが参加した。チェン氏によると、JustKitchenの発行済み株式の半分以上は同社の役員、取締役、従業員が所有しているという。

JustKitchenがTSX Venture Exchangeへの上場を決めた理由の1つは、チェン氏がカナダの資本市場と密接な関係にあることだ。同氏は投資銀行家として勤務した後、台湾に渡ってスタートアップを立ち上げた。またJustKitchenの役員の中にも、TSX Venture ExchangeのLocal Advisory CommitteeのメンバーであるDarren Devine(ダレン・ディバイン)氏をはじめ、カナダの資本市場で活躍している人が数名いる。

これらの要因のため、JustKitchenの今回のボードへの上場は自然な選択だったと、チェン氏はTechCrunchに語った。その他の理由としては、企業が一定の基準(時価総額や純利益率など)をクリアすれば、自動的にTSXのメインボードに進めることや、他国での二重上場が容易であることなどが挙げられる。JustKitchenも、米国のOTCQBとドイツのフランクフルト証券取引所に上場する準備を進めている。

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カテゴリー:フードテック
タグ:JustKitchenゴーストキッチンカナダ新規上場台湾

画像クレジット:JustKitchen

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とにかく時間がかかるAIモデルの構築とトレーニング、展開をサポートする台湾のMLOpsの「InfuseAI」が約4.7億円調達

AIモデルの構築とトレーニングには時間がかかり、さらに組織のワークフローへの展開にも時間がかかる。ここにMLOps(Machine Learning Operations、機械学習オペレーション)の企業が参入し、AIテクノロジーをスケールする顧客を支援するチャンスがある。米国時間4月5日、台湾を拠点とするMLOpsスタートアップのInfuseAIがシリーズAで430万ドル(約4億7000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはODMメーカーのWistron Corporationで、Hive Ventures、Top Taiwan Venture Capital Group、Silicon Valley Taiwan Investmentsが参加した。

InfuseAIは2018年に創業した。同社によれば台湾でのMLOpsソリューションの市場規模は年間3000万ドル(約33億円)で、調査会社のCognilyticaは2025年までにグローバルでおよそ40億ドル(約4400億円)の市場に成長すると予測している。InfuseAIの顧客には台湾最大クラスの銀行であるE.SUN(玉山銀行)やSinoPac Holdings、Chimeiなどがある。

InfuseAIは機械学習モデルのトレーニング環境、クラウドまたはオンプレミスのクラスタコンピューティング(Kubernetesのコンテナオーケストレーションなど)、チーム向けコラボレーションツールを含むプラットフォームであるPrimeHubというターンキーソリューションで、モデルの展開と管理を支援する。もう1つ別のプロダクトとして、AIモデルのトレーニング、展開、アップデート、監視ができるPrimeHub Deployがある。

Hive Venturesの創業者でマネージングパートナーのYan Lee(ヤン・リー)氏は報道発表で「製造業、ヘルスケア、金融などの企業がAIのオペレーションやモデルの展開をスケールしたいと考える中で、開発者とデータサイエンティストがシームレスにコラボレーションできるInfuseAIのようなプラットフォームが求められています。InfuseAIは、企業の採用サイクルの中で使われるプラットフォームとソフトウェアに力を入れるという我々の投資の方針にぴったりと一致しています」と述べた。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:InfuseAI資金調達機械学習台湾MLOps

画像クレジット: shulz / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

台湾の水不足でわかるテックへの気候変動の脅威

前代未聞の干ばつに直面している台湾のチップメーカーへの給水能力について台湾政府が週末に出した声明は、気候変動がテック産業の基盤にとって直接の脅威であることをはっきりと示している。

Bloombergが報じたように、台湾の蔡英文総統は現地時間3月7日、56年の歴史で最悪の干ばつに直面している市民や事業所への給水能力についてFacebookに投稿した

総統は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSMC)のような企業による半導体製造を停止させないだけの十分な貯水量は確保される、と述べた。

チップはテック産業の基礎であり、チップ製造の混乱は世界経済に悲惨な結果をもたらす可能性がある。チップ供給の逼迫はすでにGeneral Motors(ゼネラル・モーターズ)やVolkswagen(フォルクスワーゲン)といった自動車メーカーの生産停止を招き、チップ製造施設の稼働は限界に近づいている。

バイデン政権は、米国各地で製造プラント停止を引き起こしている現在も続くチップ不足を解決するために2021年2月に大統領令を出した際に、米国が半導体製造供給を強化する必要があると強調した。

「台湾の水不足、そして半導体への影響はあらゆるテクノロジー投資家、創業者、全ベンチャーエコシステムへの警鐘です。はっきりとした複雑性理論であり、産業マーケットで広く急速に展開されているスケーラブルでデータを活用しているソリューションはコース修正で唯一の望みであることを示しています」とエネルギー専門の投資会社Blue Bear Capitalのパートナー、Vaughn Blake(ヴォーン・ブレイク)氏は書いた。

台湾の水危機と半導体産業への大きな影響は目新しいものではない。そうした問題は2016年のハーバードビジネススクールのケーススタディ分析でも取り上げられた。そしてTSMCはすでに水の消費を解決するために取り組んでいる。

TSMCは2016年には水の浄化とリサイクルの改善に取り組んでいた。これは1日あたり200万〜900万ガロンの水を消費する産業にとっては必要不可欠だ(Intelだけで2015年に90億ガロンの水を使用した)。ハーバードのケーススタディによると、少なくともTSMCの製造施設の一部は90%という率で工業廃水リサイクルをなんとか達成した。

しかしムーアの法則によってそのサイズは小さくなり、製造工程におけるさらなる正確さとより少ない不純物に対する需要が増えるにつれ、製造施設での水使用は増えている。次世代チップはおそらく1.5倍の水を消費し、これは、増加分を埋め合わせるためにリサイクル改善が必要とされることを意味する。

スタートアップはコストを下げ、ますますエネルギー集約的になっている排水リサイクルと脱塩のパフォーマンスを改善する方策を探す必要がある。

一部の企業はそうした方策を実践している。量子ベースの水処理テクノロジーを開発したと主張している英国のBlue Bosonのような企業もある。同社の主張はサイエンスフィクションのように聞こえるが、同社ウェブサイトは世界で最も優れた研究だとうたっている。同じく英国企業である漏れ検知のFidoは水が浪費されている可能性がある箇所を追跡する。そしてPontic TechnologyとMicronicは水と液体の減菌システムを開発している米国企業だ。

浄水のスタートアップNumixは工業生産の要である重金属を排除することを目的としている。そしてロサンゼルスのDivining Labsは水使用のためにより多くのリソースを集めるため、雨水流出を予測・管理を向上させるのに人工知能を使っている。

「『その人の給料が理解していないことに基づくとき、その人に何かを理解させるのは難しい』とUpton Sinclair(アプトン・シンクレア)氏はいう」とブレイク氏は述べている。「さて、そこにいるすべての創業者と投資家のみなさん、当分の間、すべてのテクノロジーは気候対策のもののようだが、技術がまったくないということにならないように」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:TSMC台湾災害気候変動半導体

画像クレジット:Usis / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

「マイクロインフルエンサー」マーケティングプラットフォームを日本でも展開する台湾のInfluenxioが2.2億円調達

Influenxioのメンバー。中央が創業者でCEOのAllan Ko(アラン・コー)氏(画像クレジット:Influenxio)

「マイクロインフルエンサー」がマーケッターたちの間で影響力を持ち始めている。台北を拠点とするInfluenxioの創業者でCEOのAllan Ko(アラン・コー)氏は、マイクロインフルエンサーのフォロワーは1000人程度と多くはないが、特定のコンテンツに強くオーディエンスから注目と信頼を集めていると語る。Influenxioは同社のオンラインプラットフォーム上でInstagramのマイクロインフルエンサーと連携している。そのInfluenxioが現地時間3月8日、DCM Venturesが主導するプレシリーズAで200万ドル(約2億2000万円)を調達したことと、新しいサブスクリプションプランを開始することを発表した。

2018年に創業したInfluenxioは、シードインベスターのSparkLabs Taipeiなどからこれまでに300万ドル(約3億2500万円)を調達したことになる。同社は現在、台湾と日本で事業を運営しており、台湾では10万人、日本では25万人のInstagramクリエイターが同社のデータベースに登録されている。これまでに6000以上のブランドがInfluenxioのプラットフォームに登録し、1000件以上のキャンペーンを実施した。

Influenxioは今回調達した資金を人材の雇用と製品開発に使う計画だ。コー氏はTechCrunchに対し、サブスクリプションプランはこの分野では比較的新しいモデルで、目的の1つはこのモデルが有効かどうかを検証することだと述べた。他に日本のプラットフォームを増強し、さらに多くの国に拡大する計画もある。

Influenxioプラットフォームのスクリーンショット

Influenxioは過去のキャンペーンやパフォーマンスのデータ、クライアントからのレビューを分析してアルゴリズムを改良している。コー氏はTechCrunchに対し、インフルエンサーを見つけるところからインフルエンサーへの支払いまで、キャンペーン制作のプロセス全体をInfluenxio経由で実施するため、幅広いデータを集めてテクノロジーを磨くことができると説明した。

インフルエンサーには、キャンペーンに参加するごとに通常35〜40ドル(約3800〜4300円)が支払われる。Influenxioを利用しているブランドには、フード(レストランなど)、ファッション、ビューティー、生活サービスなどがある。

コー氏はInfluenxioを起業する前に、デジタルマーケティング業界で15年間働いていた。Yahoo!とMicrosoftのアカウントマネージャーを務めた後、香港と台湾のGoogleのオンラインパートナーシップグループで責任者を務めた。同氏はデジタルマーケティングについて学んだことを生かし、多くの企業にとって利用しやすいスタートアップを作ろうと考えた。

関連記事:国際的VC・DCM共同創業者デビッド・チャオ氏インタビュー、B2B決済企Bill.comへの28億円投資はすでに1062億円に

大企業はInfluenxioを利用して、母の日やクリスマスなど特別なイベントのマーケティングキャンペーンを迅速に展開している。例えば台湾のある広告主は、Influenxioを利用して1週間で200人近くのインフルエンサーを動員し、製品を試用して投稿するように依頼した。Influenxioを利用している著名な企業には、資生堂、Shopee、iHerb、KKBoxなどがある。

しかしInfluenxioのクライアントの大半(およそ80〜90%)は中小企業だ。中小企業は通常、1カ月に数人のインフルエンサーと連携し、時間をかけて複数のキャンペーンを実施してブランドの認知度を上げるとコー氏は説明する。

Influenxioの新しいサブスクリプションプランは、このような中小企業のためのものだ。プランは1カ月100ドル(約1万800円)未満で、まず台湾でスタートしてから他の市場に展開される。コー氏は「プラットフォームを立ち上げた最初の年に、中小企業は専門家やアドバイスを求めていることがわかりました」という。マーケティングマネージャーがいない中小企業が多く、Influenxioのサブスクリプションプランはそうした企業におのずとマッチする。プランでは毎月新しいインフルエンサーに依頼し分析を提供するため、企業はキャンペーンの成果を知ることができる。

Influenxioは「マイクロインフルエンサーエコノミー」に進出している多くのスタートアップの1つで、他にはAspireIQ、Upfluence、Grinなどがある。

コー氏は、Influenxioの最大の特徴は中小企業に注目し、インフルエンサーキャンペーンを実施するためのワンストップのマーケットプレイスを提供していることだという。さらに同氏は「我々のプラットフォームにとって重要なのは、とても簡単でシンプルでなくてはならないということです。広告主がプラットフォームをスムーズに使えるようにすることに多くの時間を費やしました。インフルエンサーに対しては、もっと便利にしようと取り組んでいます。例えばインフルエンサーが報酬を受け取る方法を簡単にしたいと思っています」と述べた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Influenxioマーケティングインフルエンサー台湾資金調達

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

台湾3Drensがフリートオペレータによる車両使用の効率化を支援

3DrensのIoTモビリティマネジメントプラットフォームは、車両がどこにあるかをフリートオペレーターが追跡できるだけでなく、ビジネス上の意思決定に役立つデータを生成する。同社は本社がある台湾で事業を開始した後、東南アジアに進出した。現在、CESのTaiwan Tech Arenaに出展している3Drensは、新型コロナウイルス(COVID-19)による物流需要の増加に焦点を当てている。たとえば同社の技術は、小規模なeコマース小売業者が大規模なプラットフォームから配送車両の未使用容量をレンタルできるようにするために、使用される可能性がある。

3Drensの顧客にはレンタカー、配車、食品配送の事業者がいる。2017年に設立された同社の最初のクライアントの1つは、主に観光客向けにサービスを提供する電動スクーター会社だった。同社はスクーターに3DrensのIoTボックスを設置し、スクーターが事故に巻き込まれたり、ユーザーが料金を支払った時間を超過したりした場合にアラートを送信するようにした。またスクーターの走行頻度が高い場所のヒートマップも生成され、人気のある会場やアトラクションとの提携が可能になった。

3Drensのプラットフォームは、ロジスティクスサービスが配送に適した車種を選んだり、最適なルートを予測したり、注文が完了した後の帰りのドライバーに新たなタスクを割り当てたりするのにも役立つ。

カテゴリー:モビリティ
タグ:3DrensCES 2021ロジスティクス台湾

画像クレジット:3Drens

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

台湾Winnozが指先の採血でも幅広い検査を可能にする真空アシスト採血装置「Haiim」を開発

Winnoz(ウィノーズ)のHaiim(ハイム)は、指先からの採血をより簡単にするために設計されており、採血量を増やすことで、より多くの種類の検査に使用できるという。台湾の新北市を拠点とする同社の真空アシスト採血装置は、人にもよるが指先から最大150~500マイクロリットルの血液を約2分で採取することができる。

Winnozは現在、CESのTaiwan Tech Arena(台湾科技新創基地)パビリオンで、Haiimと等温DNA / RNA増幅法に対応した分子検出装置eGGiを展示しており、新たなパートナーや投資家の発見を目指している。

Haiimは、創業者兼CEOのJoses Hsiung(ジョゼス・シュン)氏が幼い頃、母親が血液検査のためにクリニックに通うのを見ていた思い出にインスピレーションを得て開発された。彼の母親の血管は見えにくいため、十分な血液を採血するためには何度も針を刺す必要があったという。そして、彼女の血管は破れてしまうことも。そこでシュン氏は、指を刺すだけで採血できる血液の量を最大化する装置の開発に取り組み始めた。

指からの採血は、通常、血糖モニタリングやコレステロールパネルのように10マイクロリットル未満の血液を必要とする検査に使用されるが、Haiimはより多量の血液を必要とする検査に十分な量を採血することができ、患者が静脈穿刺採血を回避するのに役立つ可能性がある。

この装置は、本体と検査されるまで血液を保存するシングルユースカートリッジの2つの部分で構成されている。多くの診療所や病院では人員が不足しているため、従来の採血方法よりも少ないトレーニングで使い始められるように設計されている。Haiimは2019年に台湾食品薬物管理署の認可を受けており、医療機関やクリニック、病院での使用を想定している。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:WinnozCES 2021台湾

画像クレジット:Winnoz

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(翻訳:Nakazato)

CES 2021に先駆けてShowShoppersと台湾貿易センターが厳選した台湾エクセレンス受賞製品7点を紹介

台湾はFoxconn(フォックスコン)、Pegatron(ペガトロン)、TSMC、Acer(エイサー)、ASUS(エイスース)などが本社を構えるテック産業の原動力として知られている。しかし、名の通った大手企業の印象が強い台湾のテック業界ながら、そこは躍進するスタートップシーンの拠点でもある。CESの公式開幕に先立ち、台湾の貿易を促進する非営利団体対外貿易発展協会(TAIRA)とShowShoppers(ショーショッパーズ)は、台湾エクセレンス賞の受賞スタートアップの製品を紹介した。受賞したのは7社だが、その他11社も紹介された。それらの企業はフィットネス、医療、工業用モニターなど幅広い分野をカバーしている。

さらに多くのスタートアップが、来週開催されるCESのTaiwan Tech Arena(台湾科技新創基地)が主催する台湾パビリオンに出展される予定だ。

7つの台湾エクセレンス受賞製品

Advantech WISE-2410振動センサー(画像クレジット:Advantech)

AdvantechのLoRaWANソリューションは、遠近幅広い距離の機器を制御できるようデザインされており、洪水、病院の救急患者、運送インフラの監視など、多様なセンサーアレイに利用されている。同社の最新2機種のうちの1つは、最大500基のセンサーが接続でき、3G / LTEまたは有線のEthernetでクラウドにデータを送信できるWISE-6610。もう1つは、モーターを搭載した機器の振動を感知して潜在的問題点を特定し、故障を引き起す前に工場管理者がメンテナンスのスケジュールを組めるようにしてくれるWISE-2410がある。結果として修理のために機械を止めるという高コストな対応を回避できる。

画像クレジット:CyberLink

CyberLink(サイバーリンク)はセキュリティ、スマートリテール、アンケートなどのAIoTアプリに使われる、機械学習を用いたFaceMe Facial Recognition Engine(フェイスミー顔認証エンジン)を開発した企業。新型コロナウイルスのパンデミックが続く中で発表されたCyberLinkの新製品FaceMe Heaith(フェイスミー・ヘルス)は、マスクをしていても顔認証が可能で、またマスクをしていない人や熱のある人に警告を出すことがでる。病院、空港、店舗、工場などの感染対策を支援するためのものだ。

画像クレジット:Dyaco

Dyaco(ダイアコ)の運動器具製品ラインSOLE Fitness(ソール・フィットネス)に、新しくSOLE CC81 Cardio Climber(カーディオ・クライマー)が加わった。ステッパーとクライマーをかけ合わせたマシンだ。SOLE CC81は、関節の負担を抑えつつ有酸素運動ができるよう人間工学に基づきデザインされている。

画像クレジット:Green Jacket Sports

Green Jacket Sports(グリーン・ジャケット・スポーツ)は、Golface(ゴルフェース)スマートシステムを披露した。ゴルフコース管理者のためのコースの監視や運用データのリアルタイム収集を行うもので、ゴルファーがプレイしている最中でも使える。その他このスマートシステムは、航空動画を追加したり、リアルタイムでスコアを付ける機能もある。

画像クレジット:Maktar

Maktar(マクター)は、スマートフォン用のバックアップ機器Qubii(キュービー)のメーカー。小さなサイコロ型の装置で、充電中にスマホの中の写真などをバックアップする。インターネットもWi-Fiも使わない。microSDカードをQubiiに差し込み、スマホを通常の充電用ケーブルでコンセントや充電器に挿し込むだけ。充電するごとに、Qubiiは写真、動画、連絡先情報のバックアップを取る。また、同社の特許技術であるSDカードのロック機能によりデータが保護される。

画像クレジット:MiTAC Digital Technology

MiTAC Digital Technology(マイタック・デジタル・テクノロジー)のMio(ミオ)シリーズ車載カメラは、駐車場などの暗い場所でも鮮明な動画が撮影できる。最新型のMiVue(ミービュー) 798は、Sony(ソニー)のローライトセンサーSTARVIS(スタービス)と全ガラスレンズを採用し、最大2.8Kのワイドレンジ動画が撮影できる。また MiVue 798にはWi-Fi接続機能が内蔵されているため、MiVue Proアプリを使って動画のバックアップやシェアも行える。その他、GPSトラッキング、車間距離と制限速度の警告、車線の逸脱、運転車の疲労、前方衝突を警告する運転支援機能もある。

画像クレジット:Winmate

Winmate(ウィメイト)は、車両点検用のM133WK Ultra Rugged(ウルトラ・ラゲッド)タブレットPCを公開する。第8世代Intel(インテル)Core i5-i5-8265U Whiskey Lake(ウイスキーレイク)プロセッサを搭載。省電力で高い性能を発揮するM133WKの1920 × 1080ピクセルPCAPタッチパネルは、強い日光の下でも画像がよく見える。

TAITRAとShowStoppersが紹介するその他のスタートアップ11社

ATrack(エイトラック)のAK11 Fleet Hub(フリート・ハブ)は、さまざまな分野でフリートをリアルタイム管理できる4G LTEデバイス。

ELECLEAN(エレクリーン)360は「世界初のナノ触媒電気化学テクノロジー」と同社が称する技術を用い、水を過酸化水素水と水酸ラジカルに変換して洗浄と殺菌を行う。

InWIN Development(インウィン・デベロップメント)は、SR Pro CPU冷却器を発表する。特許技術のツインタービンポンプを並列に配置して水の流れを最適的化し、熱管理能力を高める。さらにPCを急速冷却するための高風量AJF 120ファンも搭載している。

Innolux(インノラックス)は、テレビ、モニター、ノートパソコン、工業、医療、モバイルなど数多くの分野で利用される液晶パネルを幅広く製造している。

Planet Technology(プラネット・テクノロジー)は、PLANET Powerful Enterprise VPN Cybersecurity(パワフル・エンタープライズVPNサイバーセキュリティ)と呼ばれる「新型コロナ後の時代」に向けた安全性の高いネットワークとファイヤーウォール・ソリューションを開発している。

Rice Air(ライス・エアー)は、フィルターを使わないナノテクノロジーを利用した個人向け空気清浄器LUFT Cube(ラフト・キューブ)を作っている。

Systems & Technology Corp(Systech、システック)のフリート管理プラットフォームは、インテリジェントなテレマティクスを利用して、車両がどこにいるかを管理者に知らせ、フリート管理を効率化する。

Tokuyu Biotech(トクヨ・バイオテック)は、アプリやセンサー技術に接続できるスマートな小型マッサージチェアや医療関連機器を製造している。

Winnoz(ウィノーズ)は、真空アシストによって指先から採血ができるポータブルな血液採取装置Haiim(ハイム)のメーカー。

WiseChip(ワイズチップ)は、タッチ機能付きの透明有機ELディスプレイを開発している。家電品、自動車、交通機関(乗客向け情報表示システムなど)、ウェアラブル機器の操作パネルに使われている。

Yztek(耀主科技:ヤオズジシュ)のE+ Autoff(イージャ・オートフ)は、コンロの消し忘れに対処するIoT機器。自動的に火を消してくれる他、調理時間の設定や省エネ機能もある。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:CES 2021台湾

画像クレジット:Cavan Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

バーチャル美容アプリYouCam MakeupのPerfect Corpが52億円調達

化粧品への出費は、普段なら経済危機も乗り越えるものだが、新型コロナウイルスのパンデミックで事情は変わった(The Guardian記事)。ステイホーム命令とマスクのお陰で、化粧をしたいという人々の欲求が低下してしまったからだ。これが小売業者のオンライン戦略を加速させ、店頭サンプルを使わずに客の関心を惹く新しい方法が求められるようになった。そこで、Perfect Corp(パーフェクト)などが開発する化粧品の仮想お試し技術が、デジタル化における重要は役割を担うことになる。同社は米国時間1月6日、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)主導によるシリーズC投資5000万ドル(約52億円)を調達したことを発表した。

台湾の新平市を拠点とし、CEOのAlice Chang(アリス・チャン)氏が率いるPerfect Corpは、消費者の間では、その美容アプリYouCam Makeup(ユーキャム・メイクアップ)で最もよく知られている企業だろう。アプリでは、300を超える世界の化粧品ブランドの仮想サンプルの「お試し」が可能だ。そこには、Estée Lauder(エスティローダー)やL’Oréal Paris(ロレアルパリ)といった美容コングロマリットが所有するブランドも含まれる。2014年にローンチされたYouCam Makeupは、現在、月間アクティブユーザー数が4000万人から5000万人を数え、自撮り画像の拡張現実(AR)化から、美容インフルエンサーによるライブ配信やチュートリアル、ソーシャル機能、さらに肌の状態を評価する「スキンスコア」機能などを搭載するまでに成長した。

Perfect Corpの技術は店頭販売、eコマース、ソーシャルメディアツールにも活かされている。たとえば2020年12月にローンチされた、Google(グーグル)検索のための拡張現実を利用した新しいお試しツールの開発にも、この技術が役立てられている(以前はユーチューバーの化粧品お試し機能にも使われていた)。また同社は、Snapchat(スナップチャット)に化粧品お試し機能を統合する目的でSnap(スナップ)との共同開発も行っていた。

今回の資金調達により、Perfect Corpの調達総額は1億3000万ドル(約134億円)となった。それ以前に発表された資金調達に、2017年10月のシリーズA投資2500万ドル(約2億5800万円)がある。新たなシリーズC投資による資金は、多様な販売チャンネルのための技術開発の推進と、海外拠点の拡大に使われる(現在は11の都市で事業展開中)。

記者発表で、Goldman Sachsマーチャントバンキング担当責任者のXinyi Feng(フェン・ジンイ)氏は「人口知能、機械学習、拡張現実を通してテクノロジーを美容業界に統合することで、デジタル販売チャンネルの増大、パーソナライズの拡大、消費者のエンゲージメントの深化など、多大な可能性が開放されます」と述べている。

またPerfect Corpは、多様性のある国際的起業家を支援しようとGoldman Sachsが行っている5億ドル(約515億円)規模の投資活動であるLaunch with GS(ローンチ・ウィズ・GS)に参加する予定だ。

同社は、顔のランドマーク検出技術を利用している。化粧品のお試しがリアルに見えるよう、ユーザーの顔の上に「3Dメッシュ」を生成するというものだ。プライバシーの面では、最高戦略責任者Louis Chen(ルイス・チェン)氏がTechCrunchに話したところによると、写真や生体情報を含む個人情報は一切保存されず、すべての演算処理はユーザーのスマートフォン内で行われるという。

Perfect Corpの顧客の大多数、およそ90パーセントが、化粧品とスキンケアのブランドだ。残りは、ヘアケア、毛染め、アクセサリーのブランドとなる。Perfect Corpの技術が目指すのは、店頭で化粧品を試したときの体験をリアルに再現することだとチェン氏はいう。たとえばユーザーが口紅をバーチャルで塗ると、自分の唇に色がついて見えるだけでなく、マット、グロス、シマー、メタリックといったテクスチャーもわかる(同社が現在提供している口紅のテクスチャーは11種類あり、業界最多だとチェン氏は話す)。

パンデミックで化粧品の売上げは下がったが、反対にスキンケアは伸びた。NPDグループの2020年9月の報告には、米国人女性は2019年と比べて、より多くの種類の製品を購入し、より頻繁に使用ていることが示されている。各ブランドがその傾向を活かせるよう、Perfect Corpは先日、AI Skin Diagnostic solution(AI肌診断ソリューション)というツールをローンチした。同社によれば、これは皮膚科医の検証を受けて水分、シワ、目の下のクマなど、8つの指標で顔の皮膚の状態を評価するというものだ。このツールは、スキンケア製品ブランドのウェブサイトで使用でき、ユーザーに合った製品を教えてもらえる。

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック以前、YouCam Makeupと同社の拡張現実お試しツールは、主に自撮り写真やフィルターを使い慣れているZ世代の若者を惹きつけていた。だがパンデミックによって、化粧品とスキンケアのブランドは、この技術の導入をすべての顧客に向けて加速せざるを得なくなった。美容業界における新型コロナウイルスの影響に関するMcKinsey(マッキンゼー)の報告書には、こう記されている。「安全と衛生への不安により、製品のテストと相談員の直接対応が基本的に不可能となった現在、テスト、発見、カスタマイズのための人工知能の利用を加速させる必要がある」。

「ブランドの地理的条件にもよりますが、過去において、事業のおそらくわずか10%、20%に満たない程度が消費者への直販でした。残りの80%は小売流通業者や提携流通業者を通じてのものです。そのネットワークはすでに2020年のうちに構築されています」とチェン氏。しかし、美容品メーカーは、現在、特にeコマースへの投資を強めており、Perfect Corpはその技術をSaaSとして提供することで、そこを活用している。

パンデミックの間、Perfect Corpが同社の製品を応用したもうひとつのかたちに、リモート相談ツールがある。通常はサロンやUltra(ウルトラ)などの店舗で働いている化粧とスキンケアの相談員が、ビデオ通話を利用してユーザーに化粧のやり方を実演して見せるというものだ。

「私たちが現在開発しているものは、どれをとっても単一の技術で構築されるものではありません」とチェン氏。「いまでは必ず動画配信機能が組み合わされています」。これには1対1のチャットに限らない。中国で大人気となり海外にも広がりつつあるライブショッピングや、YouTube(ユーチューブ)やSnapchatに組み込まれているAR技術なども含まれる。

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タグ:Perfect Corp資金調達美容メイクアップ仮想現実台湾

画像クレジット:Perfect Corp.

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(翻訳:金井哲夫)

ドコモ、KDDIも利用するミリ波5Gテストツールの台湾TMYTEKが基地局に狙いを定める

5Gミリ波機器のテスト用プロダクトを開発する台湾のスタートアップであるTMYTEKがシリーズA+ラウンドを実施し1000万ドル(約10億3000万円)を調達した。現在同社のユーザーには日本のKDDI、NTTドコモをはじめ各種研究機関が含まれている。TMYTEKはNokia(ノキア)、Ericsson(エリクソン)、Samsung(サムスン)、Huawei(ファーウェイ)などの既存企業に対抗して独自の基地局ソリューションを販売することも目標としている。TMYTEKは、ユーザーが5Gインフラを開発するのを支援してきたが、共同ファウンダーでCEOのSu-Wei Chang(スー・ウェイ・チャン)氏は「これによって得たノウハウを生かして完全な5G機器のサプライチェーン」を構築するとしている。

今回の資金調達ラウンドでは、台湾最大のOEMの1つでTMYTEKのパートナーであるInventecがリードした。これまでの資金調達のトータルは1330万ドル(約13億7000万円)となった。ラウンドには台湾政府の国家発展基金を始めTaisic Materials、ITEQ、日本の多摩川電子も参加した。TMYTEKは最近、台北のSparkLabsアクセラレータプログラムにも参加している。

CEOのスー・ウェイ・チャン氏は、TechCrunchの取材に対し「基地局の開発・商品化のためにさらにシリーズBラウンドを実施する予定だ」と語っている。最近、TMYTEKはO-RAN Allianceに参加した。この組織は5G時代の無線アクセスネットワークのオープン化、インテリジェント化のために日本のNTTドコモをはじめとする主要キャリアによって設立された標準化団体だ。

チャン氏によれば、TMYTEKのが台湾を拠点することには戦略的優位性があるという。5G機器は台湾経済の重要な部分であり2020年下半期には過去最高の輸出(AmCham Taipei記事)を達成した。これはスマートフォン、自動運転車、スマートデバイス用の5G関連機器、テクノロジーに対する需要の高まりも追い風となったものだ。

同氏はマサチューセッツ大学アマースト校で学んだ。6年前に台湾でTMYTEKを設立したとき、スタートアップ資金確保が容易な米国で行わなかった理由をよく尋ねられた。しかし台湾に本拠を置くことで日本をはじめとする重要な市場へのアクセスが得ることができた。現在の同社の事業の30%を日本が占めており、米国や欧州に事業を拡大するための基礎を確立できたという。

また台湾という地理的条件により、サプライチェーン上の利点も得られた。TMYTEKは中国本土に加えて、台湾のInventec、ベトナム、タイなどアジア全域の多数のメーカーをパートナーとしている。チャン氏は「これは我々が新型コロナウイルスのパンデミックや米中貿易摩擦の激化によって不利益を受けなったことを示しています」と述べた。

2014年にTMYTEKを立ち上げる以前、共同ファウンダーのチャン氏とEthan Lin(イーサン・リン)氏は、台湾のトップ研究機関の1つである中央研究院(Academia Sinica)に所属していた。当時、移動体通信の研究者の多くはミッドバンドを対象としていたが、両氏はミリ波に研究の焦点を合わせた。

しかしデバイス、アプリの数が飛躍的に増加し、4Gスペクトルが混雑し始めるとミリ波はニッチな研究対象ではなくなった。Qualcommが次世代の5Gミリ波用のハードウェアとチップを発表し、ミリ波をカバーするキャリアが増え、ミリ波がメインストリームに浮上した。

高い周波数帯域を利用するミリ波は、原理的に多数のチャンネルを収容できレイテンシーも低いが、建物などの障害物に遮られやすいという欠点もある。カバー範囲が限定を受けやすいため基地局の数は増加する。デメリットを克服するために信号を特定のデバイスに志向するビームフォーミング、複数のアンテナを単一のアンテナのように機能させるアンテナアレイなどのテクノロジーも必要となる。

5G基地局、デバイスを開発する時間とコストを80%節約できる

ミリ波普及における課題の1つは、既存のR&Dツールが利用できないため市場投入までの期間が長くなりがちでコストもかさむことだ。

この状況を事業のチャンスとみたTMYTEKは、クライアント向けに設計や製造を行うOEMの立場から、BBox(ビームフォーミングボックス)のようなミリ波5G普及に必須となるソリューションの販売に重点を移した。このプロダクトを開発したきっかけは国立台湾大学の教授が「私のチームは5Gデバイスのアンテナ設計に取り組んでいるが、基地局側でビームフォーミングできるテクノロジーが必要だ」と語ったことだった。BBoxはソフトウェアを使用して電波信号の振幅と位相を制御して16のビームを作成できる。これによりアンテナやその他のハードウェアの機能するか迅速にテストできる。TMYTEKは、BBoxはエンジニアがデバイスを開発する時間とコストを80%節約できるとしている。

チャン氏によると、TMYTEKは台湾で最も先進的な研究を行っている国立台湾大学の研究者があるソリューションを必要としている場合、その需要は普遍的なものであることに気づいた。すでにBBoxは日本のKDDI、NTTドコモ、富士通をはじめフォーチュン500企業や研究機関などに30セットが納入ずみだという。

BBoxはデバイスのアンテナ設計者向けのプロダクトだが、同社では他の設計分野を支援するソリューションも開発中だ。これにはビームトラッキングなど基地局とデバイスの通信やデータの収集を助けるアルゴリズムの開発が含まれる。

TMYTEKの共同ファウンダーであるイーサン・リン氏がXBeamミリ波テスト向けのアンテナのパッケージを示す(画像クレジット:TMYTEK)

MYTEKのXBeamはこのためのツールで、「トータルソリューション」と呼ばれ大量生産における各段階をサポートする。ツールが対象とするのはスマートフォン自体、基地局に含まれるモジュールをテストできる。従来のソリューションはメカニカルな回転子を利用していたが、チャン氏は「研究開発の段階ではいいが、大量生産段階のテストには向かない」という。BBoxをベースにしたXBeamは電子的操作によってビームを生成してスキャンする。同社によればXBeamは他のテストソリューションよりも最大20倍高速だという。

TMYTEKは2019年にXBeamのプロトタイプを発表し、2020年11月に商品化した。

BBoxとXBeamはTMYTEK自身が基地局ビジネスを構築するための重要な資産だ。同社はこれらの独自のソリューションによって基地局をテストを効率化し市場投入までの期間を短縮できる。次にこうしたツールが高い評価を受ければ、基地局をキャリアや企業内ネットワークをマーケティングする上で役立つ。TMYTEKは基地局局ビジネスをノキア、エリクソン、サムスン、ファーウェイなどに対抗できる製品とすることを目指しているため、これは特に重要だ。

「TMYTEKの強みは自分自身で設計を行う能力があり、製造のために優れたパートナーを有しているいることです。投資家のInventecは、台湾のトップ5メーカーです。またTMYTEKは独自のテストソリューションも構築しているためユーザー企業にトータルソリューションを提供できます。これらがTMYTEKが価値ある企業である理由です」とチャン氏は述べた。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:TMYTEK5G台湾資金調達

画像クレジット:TMYTEK

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Microsoftが台湾初のAzureデータセンターリージョン開設を発表、IoTとAIの研究や投資に続く取り組み

10月前半にはオーストリアに最新のデータセンターリージョンを開設しブラジルの拠点を拡大することを発表したMicrosoft(マイクロソフト)が、米国時間10月28日に台湾に新しいリージョンを開設する計画を明らかにした(Microsoft発表)。同社はすでに中国(運営は21Vianet)、香港、日本、韓国でデータセンターを運営しており、台湾の新しいリージョンは東アジアでのこれまでのプレゼンスを強化するものになる。台湾の新しいリージョンが開設すると、全世界で66クラウドリージョンとなる。

マイクロソフトはブラジルでの拡張と同様に、2024年までに台湾で20万人以上に対してデジタルスキルの向上を図り、台湾のAzure Hardware Systems and Infrastructureのエンジニアリンググループを強化することも発表している。同社は台湾でIoTとAIの研究やスタートアップアクセラレーターに投資しているが、これはそうした投資に続く取り組みだ。

マイクロソフトのエグゼクティブバイスプレジデント兼同社グローバルセールスマーケティング&オペレーション プレジデントのJean-Phillippe Courtois(ジャン-フィリップ・クルトワ)氏は「台湾への新たな投資は、ハードウェアとソフトウェアの統合に関する確固とした伝統を我々が信頼していることの現れです。台湾のハードウェア製造の専門性と新しいデータセンターリージョンにより、インテリジェントクラウドとインテリジェントエッジを広めて5GやAI、IoTの可能性をさらに推し進め、大きなトランスフォーメーションを実現できると期待しています」と述べている。

画像クレジット:Microsoft

新しいリージョンではMicrosoft Azureのコアのサービスを利用でき、Microsoft 365、Dynamics 365、Power Platformをサポートする。マイクロソフトが最近開設しているする新しいリージョンの計画は、ほぼこのようになっている。マイクロソフトのほとんどの新しいデータセンターリージョンと同様に、台湾のリージョンでも複数のアベイラビリティゾーンを提供する。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:MicrosoftMicrosoft Azure台湾

画像クレジット:dowell / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)