SprintとT-Mobileの合併を連邦地裁も承認、反対州は敗訴

アメリカのモバイル事業に地殻変動が起きる。T-MobileSprint260億ドルの合併には激しい反対者が存在しているが、このほど連邦地裁から合併を承認する判決が出た。この合併により、アメリカ3位と4位のキャリヤが合併する。アメリカのモバイル・キャリヤの数は4から3となる。

この合併の反対して訴訟を起こしていた14州の司法長官らは「競争者の数が減ることはカルテルを結ぶことを容易にさせるものであり消費者の利益を損なう」と主張してきた。T-MobileSprint「事実はその逆であり、合併によって両社の立場を強化することは巨額の投資を必要とする5Gネットワーク建設にあたってVerizonTechCrunchの親会社)と ATTという1位、2位の会社との競争を可能にし、消費者の利益になる」と主張していた。

連邦地裁のVictor Marrero判事は後者の主張を認め、T-Mobileの事業について「同社はこの10年間に(旧AT&Tグループの)2社と競争できる企業に成長し、消費者に利益をもたらす無数の変化を生じさせた」と評価した。

この合併は司法省による反トラスト法の審査でも承認を受けている。しかし反対州はこの判決に強い不満を抱いており控訴する可能性がある。

画像:TechchCrunch

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滑川海彦@Facebook

米FCCがT-Mobile/Sprint合併を承認

米国時間10月16日、米国連邦通信委員会(FCC)はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併について投票し3対2で正式に承認した。The Vergeによれば、承認が共和党3、反対が民主党2と政党の方針どおりに賛否が分かれた。

TechCrunchではFCCにコメントを求めている。

今年4月8日、T-MobileとSprintは260億ドル(約2兆8267億円)の大型合併で合意したが、当然ながら反トラスト法に違反するのではないかという議論を呼び起こした。当事者企業はAT&TとVerizon(TechCrunchの親会社)というモンスター企業と競争するうえで合併は必須だと主張した。かなりのやり取りの後、7月に入って合併は司法省の承認を受けた。FCCの承認を受けたことにより、残るハードルは他国籍の訴訟だが、両社とも合併手続き完了以前に解決することを約束している。

The Vergeの記事によれば、民主党側のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォルセル)委員とGeoffrey Starks(ジェフリー・スタークス)委員は反対票、共和党側のAjit Pai(アジット・パイ)委員長、Brendan Carr(ブレンダン・カー)委員、Michael O’Rielly(マイケル、オリリー)委員は賛成票を投じたという。

民主党側のローゼンウォルセル委員はこの決定に反対票を投じたとして、次のような声明を発表している。

このような合併によりマーケットが寡占的になれば何が起きるか我々はよく知っている。航空業界でも荷物の料金はアップしシートは狭くなった。製薬業界では数少ない巨大企業が生命に関係する薬剤を高価なままにしている。携帯電話企業が例外であると考えるべき理由はない。T-MobileとSprintの合併は競争を阻害し、料金を高騰させ、品質を下げ、イノベーションを妨害すると考えるべき証拠が圧倒的だ。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

T-MobileとSprintの合併を司法省が承認、衛星放送のDishが携帯事業に参入へ

米国時間7月26日、米司法省はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の超大型合併を承認した。この合併により加入者数で米国で第3位と第4位のモバイルキャリアが単一の会社となる。T-Mobileは260億ドル(約2兆8255億円)をSprintに支払う。

反トラスト法をクリアするため、SprintがBoost Mobileなどのプリペイド携帯事業をDish Networkに売却することが合併の条件となる。この条件に基づき、900万人のプリペイド携帯のユーザーはDishに移るが、向こう7年間はT-Mobile、Sprintの携帯網にアクセスできる。

TechCrunchはこの4月にT-MobileとSprintが合併で最終合意したが、米政府の承認が課題と報じている。T-MobileはドイツのDeutsche Telekom(ドイツテレコム)、Sprintは日本のソフトバンクのそれぞれ子会社だ。

この合併は両社間で合意をみていたが、規制当局による審査に時間がかかっていた。これはAT&T、Verizon(ベライゾン)と合併後の3社が米国の携帯電話加入者の95%を占めることになるからだ。先月、ニューヨーク州、カリフォルニア州の司法長官を代表としていくつかの州の司法省が合併を承認しないうよう求めて訴訟を起こしていた。訴状によれば、この合併は競争を制限することにより料金の上昇を招き、長期的にみて消費者の利益を脅かすからだという。ニューヨーク州司法長官のLetitia James(レティーシャ・ジェームス)氏はTechCrunchに対して次のよう述べた。

合併の条件としてT-Mobileが約束する(プリペイド携帯などの事業をDishに移管するという)措置は、そもそも市場に健全な競争がなければ無意味となる。競争を促進するという口実のもとに政府が恣意的に第4位のキャリアを創設しようとすることに我々は深刻な懸念を抱いている。これは消費者にもテクノロジーのイノベーションにとっても有害な結果をもたらす。

カリフォルニア州司法長官の広報担当者はTechCrunchに対して「我々は引き続き合併条件を検討している」と述べた。州司法省による訴訟は以前として合併を妨げるハードルになり得る。Consumer Reportsの上級政策担当弁護士であるGeorge Slover(ジョージ・スローバー)氏は次のように批判した。

報じられている合併は実績ある競争者であるSprintを消滅させ、携帯事業者としてまったく実績のない新参のDishを4位の事業者にしようとするものだ。Dishは衛星放送事業者であり、独自に携帯を構築、運用した経験はまったくないため、ゼロからのスタートなる。携帯電話事業が寡占とならないことを保証するためにDishの参入が必要とされたわけだが、同社が携帯電話事業で現在Sprintが占めている地位に到達するまでには(到達できるとしても)何年もかかるだろう。

一方、合併推進派は現在の米国の携帯電話事業はVerizon and AT&Tが圧倒的に優勢であり、合併はT-Mobile、Sprinがこれら上位2社との競争を助けるものだとしている。合併が実施されればT-Mobile(合併後はT-Mobileが存続会社)は米国において8000万人のユーザーを持つことなり、それぞれ1億人以上の契約者をもつVerizon、AT&Tに迫るサイズとなる。T-MobileとSprintはそれぞれAT&T、Verizonに対する競争力の強化と巨大な建設費を要する5Gネットワークの実現には両社の合併が必要であると主張していた。司法省はこの主張を認めたかたちだ。

司法省反トラスト法部門のトップであるMakan Delrahim(マカン・デラヒム)氏はWall Street Journalに対し次のように述べた

この合併とこれに付随する取り決めにより、現在利用されていないか、利用が著しく不十分である電波帯域を米国の消費者が必要とする高品位な5Gネットワーク建設のために活用することできるようになる。

T-Mobileは合併の意思を固めた後、実現に向けて何年も非常にアグレッシブなロビー活動を行ってきた。特にCEOのJohn Legere(ジョン・レジャー)氏を始めとする経営陣は4月以降、ワシントンDCのトランプ・インターナショナル・ホテルで滞在費など19万5000ドルを使っている。

【Japan編集部注】TechCrunchは、Verizonに属するウェブメディアだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ハイテク企業の買収狂想曲はまだ続く?

PwCとThomson Reutersが発表したデータによれば、今年はハイテク関連の買収事案にとって良いスタートが切られたようだ。第1四半期には486件の米国ハイテク取引が発表され、その総額は428億ドルとなった。

取引件数と取引金額の両面で、今年は米国のハイテクM&Aにとって、2014年以来の好スタートとなった。ただ昨年の同時期に比べて28%多い取引件数があったものの、価値という面では2%多く上回っただけだった。すなわち取引の平均額が下がっていたということを意味する。

Intelによるイスラエルの自動車技術会社Mobileyeに対する154億ドルの買収その中でも飛び抜けて最大の取引であり、自動運転車に関連する買収の勢いを生み出した。思い起こせば、ほぼ1年前にGMは、自動運転技術向上のために、Cruise Automotiveを10億ドルで買収していた。

CiscoによるAppDynamicsの37億ドルでの買収は、この四半期で2番めに大規模な買収であり、その条件は計画されていたIPOのほんの数日前に合意された。その他にもDigitalGlobeの24億ドルの買収や、同じく24億ドル規模のCapitol AcquisitionとCisionの合併があった。10億ドルを超える取引は7件を数えた。

ソフトウェアは当四半期で最もアクティブなセクターで、その取引数は227件に及んだ。ITサービスは167件の買収で2位に入った。

伝統的なビジネスがイノベーションのためにスタートアップに頼り続ける中で、非デジタル企業たちが143件のテクノロジー企業を買収している。この傾向は、一般的にまだ続くと予想されている。

しかし、国境を越えた買収には失望すべき案件もあった。PwCのレポートによれば「アジア/パシフィックの投資家の活動は、2017年第1四半期には顕著に減少した、これは新政権による米国市場の不確実性を反映したものである」。法律事務所Morrison&Foersterによる最近の調査も同様の報告を出していて「世界の2大経済国である米国と中国の間のM&Aは、今後数年間特に困難になると予想されている」。

中国人バイヤーたちの困難は「トランプ政権によってもたらされた不確実性と、中国当局による中国からの資本流出規制の組み合わせによるものです」とMorrison & FoersterのGlobal M&A Practice Groupの共同議長であるRobert Townsendは語る。しかし、米国における多数の技術取引は今後も継続する見込みだ。

第2四半期も引き続き活発で、PetSmartがChewy.comを、e-コマースの買収額としては最高記録の33.5億ドルで買収したと言われている。私たちはこれまでにも、幾つかのe-コマース買収を見てきた。その中にはRetailMeNotの6億3000万ドルの取引IACによるAngie’s Listの5億ドルでの買収なども含まれている。e-コマースは「特に対応するブリックアンドモルタル企業(昔ながらの店舗を抱える業態の企業)から新たな関心を寄せられやすい領域です」と言うのはPwCのU.S. Technology DealsのリーダーであるTodson Pageだ。

現四半期におけるその他の注目すべき買収には、Oracleによるアドテック会社Moatの買収買収額は850億ドルと伝えられている )、Uber競合のGettによるスタートアップ企業Junoの2億ドルでの買収、そしてAureaによるコラボレーションソフトウェアJiveの4億6200万ドルでの買収などが挙げられる。

MoFoという名でも知られているMorrison&Foersterは、150人以上の投資銀行家、M&Aエグゼクティブ、ベンチャーキャピタリスト、弁護士などを対象に調査を行い、その半数以上である52%が、世界のハイテク取引の数は昨年を上回るものと期待しているという結果を得た。減少を予想しているのはわずか15%である。

PwCのページも同様に、今年の残りの部分については楽観的だった。彼は「技術的M&Aの勢いが続くことを確信している」と語った。特にソフトウェア分野では強気のようだ。

MoFoのTownsendは、多くの専門家たちがセキュリティ業界の統合を予測していると述べている。「サイバー脅威の増加と、特に(いずれかの)国家の後押しするハッカーたちによるサイバー攻撃の並外れた脅威」がこの分野での買収を加速することになる、と彼は予想している。MoFoはまた、IoT、人工知能、およびビッグデータのカテゴリでの統合も予測している。

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(翻訳:Sako)

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