フォードが電動カーゴバンの市場投入に先立ち、商用車部門のリーダーシップチームを構築

Ford(フォード)は、新たに設立した商用車・サービス事業部に6名の上級幹部を採用した。これは商用車ユーザー向けの新たな主力製品となる電動カーゴバン「E-Transit(イートランジット)」と、電動ピックアップトラックの商用バージョン「F-150 Lightning Pro(F-150ライトニングプロ)」の市場投入に先立ち、準備を整えるためだ。

フォードは、新ビジネスユニット「Ford Pro(フォード・プロ)」のリーダーシップチームを、社内外から招集した。新たに採用されたのは、6月にフォードが買収したバッテリー管理および車両監視ソフトウェアのスタートアップ企業であるElectriphi(エレクトリフィ)でCEOを務めているMuffi Ghadiali(マフィ・ガディアリ)氏だ。同氏はElectriphiにおける職務を継続し、フォード・プロの充電部門を統括する。

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また、これまでフォードの米国マーケティング・販売・サービス担当コントローラーを務めていたTim Baughman(ティム・バックマン)氏は、フォード・プロ・ノースアメリカのジェネラルマネージャーに任命された。

フォード・プロの新しいCFOには、Ford Autonomous Vehicles LLC(フォード自動運転車有限責任会社)に在籍していたNavin Kumar(ナビン・クマール)が就任する。

Walt Disney Company(ウォルト・ディズニー・カンパニー)から移籍してきたTracey Pass(トレーシー・パス)氏は最高人事責任者として採用され、Ford Autonomous Vehiclesのソフトウェア開発責任者だったRahul Singh(ラフル・シン)氏はCTOに就任。Samsung Electronics America(サムスン電子アメリカ)のチーフ・マーケティング・オフィサーだったWanda Young(ワンダ・ヤング)氏は、フォード・プロで同じ役職に就くことになった。

フォードはすでにHans Schep(ハンス・シェップ)氏がフォード・プロの欧州地域担当ジェネラル・マネージャーに就任することも発表している。

フォード・プロが力を入れているのは単に商用バンだけではない。Ted Cannis(テッド・カニス)氏が率いるこの部門は、フリート管理やメインテナンス、充電サービスなども顧客に提供することを目指している。フォード・プロはハードウェアとそれに関連する新サービスから、2025年までに450億ドル(約4兆9500億円)の収益を上げることを期待しているという。

2019年に商用車部門の売上高が270億ドル(約2兆9700億円)だったことを考えれば、これは大きな収益増だ。フォードはこの目標を達成するために、バンやフルサイズのピックアップトラックに、内燃機関とハイブリッド、そして近い将来に追加される電気自動車バージョンを組み合わせて販売し、さらにそのEVのために、車両基地だけでなく自宅でも充電できる設備や、顧客のフリート管理およびメインテナンスに役立つデジタルサービス、サービスセンターのネットワーク、そしてもちろん融資を提供することを計画している。

フォードの商用車事業は欧州で先行しており、同地域では6年連続で商用車ブランドの首位に輝いている。北米では、クラス1からクラス7までのフルサイズ商用トラックおよびバンで、フォードのシェアは40%を超えているという。

特に欧州では、各国政府が都市部における排ガス規制を強化していることから、EV事業に力を入れている自動車メーカーには、より多くのシェアを獲得するための新たなチャンスが生まれている。フォード・プロの計画には、2021年後半に納車が開始予定のE-Transitと、2022年春の発売が見込まれるF-150 Lightning Proが重要な役割を果たすことになる。

画像クレジット:Ford

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

現代自動車グループが2028年までに全商用車に水素燃料電池モデルを投入へ

Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)は持続可能性のための最優先エネルギーソリューションとして水素を支持している。今後数年内に展開する新しい燃料電池システムで、韓国の自動車メーカーである現代自動車グループは2028年までに同社の全商用車に水素燃料電池バージョンを提供すると明らかにした。

同グループは米国時間9月7日、同社のHydrogen Waveカンファレンスのライブストリームで水素を活用した未来戦略を発表した。同グループの代表取締役副社長で燃料電池センター責任者のSaehoon Kim(セフン・キム)氏は、2030年までにEV(電気自動車)バッテリーに匹敵するコスト競争力を獲得するのが目標だ、と述べた。

同社はまた、高性能で後輪駆動の水素スポーツカーVision FKの詳細も明らかにした。Vision FKは停止した状態から時速100kmに達するまで4秒もかからない500kWの燃料電池システムを搭載し、航続距離は600kmだ。生産開始時期については明らかにしなかった。

大半の自動車メーカーが乗用車EVと商用車EVの展開を始めているが、水素タイプはまだニッチなマーケットだ。しかし欧州、中国、米国が野心的な二酸化炭素排出削減目標を設定したのに伴い、成長中のマーケットでもある。トヨタ自動車、BMW 、Daimler(ダイムラー)も程度の差こそあれ、EVの開発を続けながら燃料電池テクノロジーを受け入れ始めた。この点において、現代自動車の水素への傾倒はEVへの傾倒を阻んでいない。現在のような気候状況では、あらゆるソリューションが必要だ。最高の燃料が選ばれるといい。

イベントでキム氏はまた、2023年に2種の水素燃料電池パワートレインを立ち上げる、と発表した。同社は2040年までに水素を主流にしたいと考えている。現代自動車の水素燃料スタックの第3世代は、乗用車向けが出力100 kW、商用車向けは200kWとなる。

現代自動車、Kia(起亜自動車)、Genesis(ジェネシス)を傘下にもつ現代自動車グループは現在、燃料電池バス「Elec City Fuel Cellバス」を展開していて、韓国で115台が走っている。また燃料電池トラック「Xcient Hyundai」も展開中で、こちらは45台が2020年スイスで導入された。

現代自動車は燃料電池SUVの「NEXO」を誇っていて、水素で駆動する多目的車両モデルとともに次のモデルを2023年に投入する計画だ。同社はミュンヘンで開催中のIAAモビリティカンファレンスで、大型の燃料電池で走るSUVを2025年以降に発売し、2030年までにさらに4種の商用車を投入する、とも発表した。同社は緊急車両や船舶、貨物トラック、トラム、フォークリフト、その他にも産業で使用される車両など異なるユースケース向けに燃料電池テクノロジーを提供することを目指している。

「燃料電池は水素のメリットをさまざまな分野の世界中の人に届けることができる実証済みのテクノロジーです」とキム氏は述べた。「基本的に燃料電池はエンジンのような発電機です。電気を蓄えるバッテリーとは異なります。燃料電池システムは発電する燃料電池スタック、水素供給システム、空気供給システム、熱管理システムで構成されます。水素と酸素を合わせることで発電し、内燃機関車両のエンジンと似ていますが、二酸化炭素を排出しません」。

同氏は続けて、燃料電池システムが化学反応を通じてエネルギーを生み出し、受動的にエネルギーを蓄えるだけのバッテリーと違って水素燃料が供給される限りエネルギーを生み出し続ける、とも説明した。現代自動車は生産、貯蔵、燃料電池テクノロジー、インフラなど、水素分野で成功するために必要なエコシステムの構築に取り組んでいる、と述べた。インフラの多くは、水を酸素と「グリーン」な水素に分解するためのクリーンパワーを生み出すのに必要な再生可能エネルギーを生産する太陽光と風力の発電施設となる。

独自のR&Dに加えて、現代自動車グループはH2Proのような水素スタートアップにすでに投資していて、政府が協力的で再生可能エネルギーリソースが豊富な国でグリーンな水素インフラを確立する計画も発表している。

この分野における取り組みの多くは、2040年までに二酸化炭素排出レベルを2019年の75%以下に削減し、2045年までにカーボンニュートラルになるという発表に続くものだ。現代自動車グループは全車両の30%が2030年までにゼロエミッションになり、全車両の80%が2040年までにバッテリー電気自動車と燃料電池車になると見込んでいる。

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画像クレジット:Hyundai Motor Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi