国際送金のTransferWiseがAlipayと提携

ロンドンに本社を置く国際送金サービスのTransferWise(トランスファーワイズ)が、国際送金のために中国のAlipay(アリペイ)と提携した。同社の最新評価額は35億ドル(約3732億円)だった。

このローンチにより TransferWiseの700万人以上のユーザーは、17の通貨でAlipayのユーザーに中国人民元を送金できるようになった。

20秒以内で「インスタント」送金が約束されているTransferWiseユーザーは、送金の際に受取人の名前とAlipay IDを指定するだけで良い。この操作で、受取人のAlipayプロフィールにリンクされた銀行口座に送金される。

顧客数や取引量を増やすことができるこの手のパートナーシップの確保に苦労しているTransferwiseにとって、これはちょっとしたビジネスになる可能性がある。同社の2019年のレポートによれば、中国は世界でトップの送金受取国の1つになることが予測されており、中国外に住む中国人駐在員や移民によって、540億ポンド(約7兆540億円円)が母国へ送金されると予想されている。

「Alipayプラットフォームを介してお金を管理している人たちの新たな追加市場にアクセスできるようになるため、今回の提携はTransferWiseにとって大きな拡大となります」と同社はいう。

とはいえ、今回のAlipayの件は、TransferWiseがここ数カ月のうちに発表した主要な提携の第2弾である。2019年11月には、ロンドンのフィンテックであるGoCardless(ゴーカードレス)と提携し、顧客が定期的な銀行支払い(英国ではDirect Debitsとして知られている)ができるようにした。GoCardlessは、多国籍企業から中小企業に至るまで、世界中の5万を超える企業で利用されており、このパートナーシップではTransferWiseを活用した独自の外国為替機能が実現されている。

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(翻訳:sako)

国際送金APIのCurrencycloudがSBI、Visa、世銀グループなどから約87億円調達

ある国から別の国にお金を送る。年間7000億ドル(約76兆円)の規模に上る巨大ビジネスだ。企業がサービスに対してお金を払ったり、海外で働く個人が家族にお金を送ったり、何かその中間の場合もある。ロンドンのスタートアップであるCurrencycloud(カレンシークラウド)は1月26日、8000万ドル(約87億円)の調達を発表した。同社が開発した送金APIによって金融機関は自身の送金サービスを同社のプラットフォームに統合できる。調達資金を活用して金融機関へサービスを売り込み、世界各国でWestern Union(米国の国際送金大手)のようなビジネスの立ち上げを支援する。

これまでに、Currencycloudの85のAPIを使用して約180カ国間で500億ドル(約5兆5000億円)以上が送金された。APIは、インバウンドマネーコレクション(クライアントの資金回収支援)、外国為替、支払い、複数通貨を管理するデジタルウォレットサービスなどの分野をカバーしている。

CurrencycloudのCEO兼創業者であるMike Laven(マイク・レイブン)氏はTechCrunchに、同社のAPIを利用する会社は2019年末で約350社に上り、また同社は230人を雇用していると語った。だが、同社のサービスを何らかのかたちで利用したことがある人でも、まず同社の存在には気づかないだろう。

「当社と同じビジネスモデルを採用している会社は他にない」とレイブン氏は述べ、同社の顧客プラットフォームとワークフローに送金がシームレスに組み込まれた「埋め込みモデル」に言及した。「当社は顧客と競合しない。当社のブランドは表に出ない。こうしたソリューションを持っているのはまだ当社だけだと思う」

今回のシリーズEラウンドに新しく参加したストラテジックインベスターにはVisa(ビザ)、世界銀行グループのInternational Finance Corporation(国際金融公社)、フランスの銀行BNP Paribas(BNPパリバ)、SBIグループ(かつてソフトバンクから独立した日本の大企業)、タイのSiam Commercial Bank(サイアム商業銀行)が名を連ねる。レイブン氏は、このラウンドに伴い今後1年はアジアがCurrencycloudの大きなターゲットとなるため、シンガポールに新設するオフィスを拠点にこの地域で企業に送金APIを提供していくと述べた。

今回ラウンドに新たに参加した投資家のうち少なくともVisaはCurrencycloudのサービスを自社サービスに統合している。既存の投資家からはSapphire Ventures、Notion Capital、GV(シリーズDをリードした旧Google Ventures)、Accomplice、Anthemisが参加した。

バリュエーションについて、レイヴン氏は開示しないと述べた。現時点ではこだわりはないということだが、プレマネーベースで前回資金調達時よりも高いという。信頼できる情報筋によると、実際には5億ドル(約550億円)前後だ。

これは同社にとって大きな飛躍だ。参考情報として、TechCrunchは当初、Currencycloudの2019年夏の資金調達について報じた。PitchBookは当時、約4000万ドル(約44億円)の資金調達終了時点のバリュエーションを、プレマネーで1億1400万ドル(約120億円)、ポストマネーで1億8400万ドル(約200億円)と推定した。これは、シリーズEでのバリュエーションが約2億2000万ドル(約240億円)だということだ(当初の計画よりもクロージングに多少時間がかかった)。これまでに、Currencycloudは1億4000万ドル(約150億円)を調達した。

Currencycloudは2012年から活動を開始し、早い時期に送金市場でチャンスを見つけた。

世界経済のグローバル化により送金のペースが急激に上昇し、インターネットとスマートフォンの使用が拡大したことで、後者を活用する企業が市場に参入する機会が生まれた。送金サービス提供企業にはWestern UnionやMoneyGramのようなよく知られた老舗が存在するが、全体としては多数の小粒なプレーヤーで構成される市場であり、新規参入にも希望が持てる。

その上、システムが大幅に高価で非効率的だ。そのため、送金サービスを構築したい企業に対して必要なAPIを提供し、いわばレールを敷くことができるプレーヤーにとっては魅力的な機会が広がっていた(AdyenやStripeのようなeコマース向け決済とは異なる)。

すべての道がうまくCurrencycloudに通じ、ビジネス拡大につながった。これまでにCurrencycloudは、いわゆるネオバンク(またはチャレンジャーバンク、オールデジタルかつモバイルファーストのプラットフォームによって預金と貸出業務を行い伝統的な金融機関に真っ向から挑む銀行)の急増に伴い、国境を越えた送金を500億ドル(約5兆5000億円)以上処理した。Monzo、Moneze、Starling、Revolut、Dwollaなどを顧客に抱える。Visaなどの大企業も利用している。

「このようなエキサイティングなテック企業の取締役会に参加できることをうれしく思う」とVisaのSVPトレジャラーであるColleen Ostrowski(コリーン・オストロースキー)氏は声明で付け加えた。「Currencycloudは、未来のプラットフォームによって世界中の資金移動の方法を変えようとしており、国際送金業界でさらなるイノベーションを推進する大きな可能性がある」

画像クレジット:jnhphoto / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

FacebookのLibraは「大きくて悪い」電子マネーなのか?

Libraに関しては書くべきことが山ほどある。それに、すでに書かれている記事で的外れなものも山ほどある。それはたぶん、私が思うに、ほとんどの批評家が発展途上国で長時間過ごした経験を持たないからだ。途上国は、明らかにそのターゲット市場だ。まずは、Libraのプロモーション動画を見て欲しい。

Libraには、この世の終わりのような反応が見受けられる。新たなディストピアを招くとの警鐘だ。その論理はこうだ。1)Libraはたちまち世界を席巻する。2)LibraはFacebookが発行している。3)Facebookは悪い。4)世界の終わりだ! その最初の仮説に、私は面食らった。裕福な欧米の人間は、すでにたくさんの決済システムが使える状態にある。それらは、取り消し可能な取り引き、競争可能な取り引き、マイレージ制度、信用枠が使えるなど、Libraよりもずっと優位な存在だ。

私は、Libraに関する技術的、法的、政治的、そして高度な分析結果を数多く見てきた。その多くは価値のある内容だったが、今のところ、実際にターゲットとされる利用者のことは、ほとんど語られていない。つまり、Libraの白書が言うところの銀行口座を持たない人たちだ。しかしどうも、Libraが目新しく、興味をそそられ、重要に感じる人たちとは、カテゴリーが少し違うようだ。しかし、誰もこのことを語ろうとしない。これほど多岐にわたって、しかも深く追求できる議論の宝庫であるにも関わらず、実際の利用者について触れられないというのは奇妙だ。

白書では、「銀行口座を持たない人」は17億人と推定されている。しかしこの数字は……、怪しい。このデータは、世界銀行のグローバル・フィンデックス・データベース2017から引用している。「それなら、信頼できる最新のデータなのだろう」と思われるかも知れない。たしかにそうだ。しかし、この同じ白書に、2104年から2017年の間に「銀行口座を開設」した人の数は5億5100人とも書かれている。Libraが運用を開始するときまでに「17億人の銀行口座を持たない人」は半減する計算になる。それは銀行のお陰ではなく、電子マネーのプロバイダーのお陰だ。

東アフリカで電子マネーM-Pesaが誕生したのをきっかけに、電子マネーは広く世界に普及した。西アフリカのOrange Money、インドネシアのOvo、インドのPaytm、そしてもちろん中国のWeChatとAlipayと、スマホの中のお金は、発展途上国ではもはや新しいものではない。

こう聞くと、裕福な国々と同じように、地元の言語を話し、市場をよく理解し、広く流通している競争相手が大挙してLibraを待ち構えているように思われるだろうが、それは違う。Libraの利点は、端的に言えば、現地通貨ではなく、国際通貨だといということだ。それには、優位な点もあり、またアキレス腱もある。しかもその市場は、厳密に言えば銀行口座を持たない人たちではない。電子マネーの口座は持っていたとしても、国際通貨にアクセスできない人たちだ。

なぜ、そのアクセスが必要なのか? 裕福な国で暮らす家族が途上国に送金するというのは日常的なことだが、その額は全体で年間5000億ドル(約53兆5000億円)にのぼる。その大部分が、ウエスタンユニオンなどの、遅くて手数料の高い業者を通じて行われている。それに従い、Libraの白書でも、問題提起の章で「送金」を大きく取り上げている。

しかし、両替に関しては論拠に欠ける記述がわずかにあるだけだ。なぜそれが問題なのか? なぜなら、送金はじつに大きな市場でありながら、以前の記事で述べたとおり「たしかに、5000FaceCoinをガーナの家族に0.1パーセントの手数料で送れるのは有り難い。しかし、その後ガーナの家族は、両替所でなんとかそれをクレジットに変換しなければならない。その作業は、今これを書いている時点で、時間がかかり、大変に面倒で、ユーザーに優しくなく、しかも通常の送金方法よりも高くつくことが非常に多い」からだ。

「現地がLibraを受け入れたら、問題ないんじゃないの?」と思うだろう。しかし、a)途上国の地元産業に新しい決済方法を受け入れさせるのは大変に難しく、b)地元の税金を払うために、結局、彼らも両替手数料を支払わなければならなくなる(Libraでの納税を可能にして、Libraを国の通貨にするよう政府に提言する楽天的な人が現れる前に、ひとつ忠告しておく。政府は、マネーサプライの権限を手放すようなことは、決してしたがらない)。

したがって、真に大規模な受け入れを実現するには、とくに産業と金融機関の取り引きにおいて、両替の制度が鍵になる。送金の分野では、普段から利用者のための通貨の両替サービスで大変な競争が繰り広げられている。Facebookは、それとなく市場に依存して、競争力の高い、流動的で、効果的で、効率的で、広く名が通った、Libraとそれが流通しているすべての国の現地通貨の両替を行おうとしているように見える。たぶん。しかし、それは高望みだ。

だが、個人や家族といった小さなスケールなら、Libraはずっと有効だろう。LibraはM-Pesaに取って代わるものではないし、それを狙ってはいないだろう。むしろLibraは、ケニヤ・シリングに対する米ドルのような関係の電子マネーになろうとしている。Libraは、国際的な準備通貨になれる可能性がある。おそらくそれは金融機関向けではなく、個人向けだ。そのレベルなら、両替もそれほど重要でなくなる。

米ドルは、少額であっても世界中のほぼ全域で使えて、送金もできる。貧困な国々では、そのほとんどで、米ドルが事実上の影の通貨となっている(私は、タクシーの運転手たちが20ドル札にやたらと詳しい地域に行ったことがある。20ドル紙幣には、種類によって偽造しやすいものと、しにくいものがあるからだそうだ)。さらに、米ドルは強い通貨だという理由だけで、現地通貨とは異なり、貯め込まれることがある。ベネズエラ、ジンバブエ、それにアルゼンチンなどを見ればわかるだろう。

Libraも、同じようになると私は期待している。個人は両替所に口座を開く必要がなく、LocalBitcoinsと同じようなスタイルで、Libraを現地の両替所に送るだけで済む。両替所は、Libraを受け取ると、相応の現地通貨を送り返す。願わくば、安い手数料で。

もしそれが実現すれば、そしてFacebookの圧倒的なサイズと浸透力で、そのようなサービスがほぼ世界全域で使えるようになれば、たとえLibraが裕福な国々で、また業界や金融機関で人気を得られなかったとしても、世界中の個人や家族が、受け取り、貯蓄し、使い、国際的に強い通貨に素早く(願わくば)ウェスタンユニオンなどより劇的に安い手数料で両替できる初めての通貨となるだろう。分散型の暗号通貨のような乱高下も、使用の制限も、ユーザーをないがしろにするようなこともない。これは大変なことだ。とってもいいことだ。

決して保証はできない。Libraには、まだ不確かな点が数多く残されている。アイデンティティ問題という非常に固い殻を砕く必要があるかも知れない。さらに、Facebookの技術力はさておき、これは、政治家や規制当局(そしてジャーナリズムも)目の敵にしているFacebookが発行する電子マネーだ。少なくともこれは、最初から彼らに対する反撃であり、それが多くの人々に、Libraの裏にある本当の狙いは何なのかと疑いを抱かせることにもなる。

だが、そこにある本当に大切なものも、一括りにして投げ捨てるのはよくない。もしLibraが、ある程度の規模でなんとか成功したなら、それは世界の大勢の人たちとって、生活と切り離せない非常に重要なものとなる。油断は禁物だ。プライバシーについては気を配るべきだ。適格な疑問を持とう。これは分散型のソリューションではなく、今後も決してそうはならないことを忘れてはいけない。私の立場は、みなさんと同じだ。私自身、Facebookに厳しい批評家との評価をいただいている。

みなさんが、憤慨と批判に走りたくなるのは無理もない。しかし、世界でもっとも貧しく弱い立場にある無数の人たちに大きな恩恵がもたらされる可能性は、どうか無視しないで欲しい。あなたは、分散型の、認証が必要ない、検閲を受け付けない形式のほうが好ましいとお考えだろうか? 私もだ! もし、Libraのように実用間近で、そうした電子マネーをご存知なら、教えて欲しい。

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(翻訳:金井哲夫)