細胞培養スタートアップのインテグリカルチャーがエビ細胞培養肉の研究開発を開始、シンガポール企業とタッグ

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細胞培養スタートアップのインテグリカルチャーは7月20日、シンガポールのShiok Meats Pte. Ltd.(Shiok Meats)とともにエビ細胞培養肉の共同研究を開始すると発表した。

インテグリカルチャーの食品グレード培養液と汎用大規模細胞培養技術「CulNet System」は、これまでに牛と家禽の細胞における有効性を確認済み。同共同研究では、これらを新たに甲殻類の細胞にも拡張し、長期的にはエビの細胞培養肉を安価で大規模に製造することを目指す。

細胞培養肉の原料である培養液は、タンパク質・糖質・脂肪・ビタミン・ミネラル・血清成分からなり、特に血清成分の低価格化が培養肉の実用化において鍵となるという。同研究ではCulNet Systemの技術をベースに、血清成分を添加せずにエビの細胞を大量培養する技術を開発。Shiok Meatsは、この培養技術を活用し製造される培養エビ肉を2022年頃商品化することを目指す。

また同研究は、2020年5月開始のCulNet Systemにおいて、個別企業の細胞培養商用化をサポートする「CulNetパイプライン」ソリューションにおいて運用する。

インテグリカルチャーは、細胞農業(細胞培養)が普及する世界の実現に向けて、その低価格化・大規模化の技術開発を行うスタートアップ企業。

従来の細胞培養方法で純肉を生産するには、100gで数百万円のコストがかかっていたという。そこで同社では、食品材料を用いた培養液とCulNet Systemとともに、細胞培養のコストを大幅に下げる技術を開発した。

CulNet Systemは、汎用性の高い細胞培養プラットフォーム技術で、動物体内の細胞間相互作用を模した環境を擬似的に構築する装置となっているという。同技術は、理論的にはあらゆる動物細胞を大規模・安価に培養可能で、培養肉をはじめコスメから食材まで様々な用途での活用を想定している。

すでにラボスケールでは、管理された制御装置下で種々の細胞を自動培養し、高コストの一因であった血清成分の作出を実現している(国内外で特許取得済み)。血清成分の内製化実現により、従来の細胞培養が高コストとなる主因の牛胎児血清や成長因子を使わずに済み、細胞培養の大幅なコストダウンを実現した。

CulNetパイプラインは、CulNet Systemを用いて、個々の企業が希望する動物種の細胞を使い、細胞農業商用化をサポートするソリューション。

Shiok Meatsは、幹細胞の研究者Dr. Sandhya Sriram(CEO。写真右)とDr. Ka Yi Ling(CTO。写真左)が共同設立した、シンガポールおよび東南アジアで初の細胞農業企業。同社は、動物ではなく細胞から食肉を製造することで、クリーンで上質で健康的な魚介類や食肉を提供することをミッションとしており、エビ・カニ・ロブスターなど甲殻類の細胞培養肉に取り組んでいる。

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培養肉開発のMemphis Meatsがソフトバンクなどから176億円超を調達

動物細胞から肉、シーフード、鶏肉を人工的に製造する技術を開発しているMemphis Meatsは、ソフトバンクグループ、Norwest、さらにシンガポール政府が支援するTemasekといった投資家から、新たな資金1億6100万ドル(約176億5400万円)を調達した。

今回の投資を受け、同社の総資金は1億8000万ドル(約197億3700万円)となった。これまでの投資は、Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏、Threshold Ventures、Cargill、Tyson Foods、Finistere、Future Ventures、Kimbal Musk(キンバル・マスク)氏、Fifty Years、CPT Capitalなど、個人および機関投資家から受けていた。

Memphis Meats以外にも、Future Meat Technologies、Aleph Farms、Higher Steaks、Mosa Meat、Meatableといった企業が、培養した細胞から肉を作る技術を探求している。それによって、世界中の森林破壊と気候変動を増長している畜産業を代替することを目指している。

計算生物学、バイオエンジニアリング、材料科学といった領域での革新によって、企業は従来の農業を置き換えることが可能な技術を商業化する機会を得ようとしている。それにより、食品を生産するための二酸化炭素排出量を大きく削減し、非常に豊かな時代をもたらすことができると、投資家たちは期待している。

「誰が最初に製品を市場に供給できるか」という競争は始まっている。

「業界全体にとって、このような規模の投資は、このテクノロジーが、遠い将来の努力目標ではなく、今ここにあるのだという自信を強めてくれるものです。培養肉が、リーズナブルな価格で市販される、という『概念実証』ができれば、さらに関心を集め、この業界への投資も加速するはずです」と、Good Food Instituteの専務取締役であるBruce Friedrich(ブルース・フリードリック)氏は、電子メールで表明している。「これは、まだ非常に新しい業界であり、注意深く見守ることが重要です。培養肉というアイデア自体は、すでに1世紀近く言われてきましたが、最初のプロトタイプが作られたのは、わずか6年前のことなのです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)