スマート配電盤で一般家庭の電化を進めるSpanが約110億円調達

あの地味なブレーカーパネルは、特に愛されることもなくすでにまるまる1世紀存在しているが、そこに登場したのがSpanだ。同社は現代的でスマート、そして魅力的な配電盤を作っており、その進化を継続するために、このほど9000万ドル(約110億円)を調達した。同社は電化とマイクログリッドの均衡化という問題の解決を目指しており、それにより未来のスマートホームが自らの電力消費の状況をもっとよく把握できるようにする。

Spanは2年前に1000万ドル(約12億円)を調達し、Alexaを統合して、さらに2022年初めにはスマートパネルと相性がいいよりスマートなEV充電器をローンチした。

SpanのCEOで創業者のArch Rao(アーチ・ラオ)氏は、2022年初めのインタビューで次のように語っている。「初期のTeslaに入って、後にTesla Energyになるもの設計に最初から関われたことは、とてもラッキーでした。私は、Energy Groupの初期のリーダーの1人でした。みんながよく知っているのはPowerwallバッテリーだと思いますが、私はそのプロダクトチームのリーダーで、一般住宅用製品や産業用製品、それに公益企業が使うような規模の製品をハードとソフトの両面で設計、開発そしてデプロイしていました。また、ソーラールーフや太陽光発電の導入など、ガラス屋根の製品も担当しました」。

「家庭用バッテリーやソーラーシステム、電気自動車の充電システムを世界中で展開する中、私が直接目にしたことの1つに、インフラと結びついた根本的な問題があることです。特に、電化が私たちの目指す『脱化石燃料』の重要な一部であると考えるのであれば、インフラは分散型クリーンエネルギー導入の足かせになってしまいます。化石燃料を使用した家電製品を優れた電気製品に置き換えるには、家庭用電気パネルから始まるインフラの大規模なアップグレードが必要になるのです」。

「私たちは家庭の電化を実現するために、拡張性のある方法の中核となる配電盤を再発明することから始めました。しかし消費者はそれ以上のものを求めています。新しい資本を投入して、家庭の脱炭素化を実現する製品を拡大し、Spanが独自に提供する家庭のエネルギー管理という比類のないアプローチを開発し続けられることに興奮しています。」とラオ氏は語る。

SpanのシリーズBをリードしたのはFifth Wall Climate TechとWellington Managementだ。その他の投資家はAngeleno Group、FootPrint Coalition、Obsidian Investment Partners、そしてA/O PropTechとなる。同社の説明によると、資金は主にSpan Homeシリーズのエネルギー製品およびソリューションの開発の継続により、同社の商業的成功を引っ張り家庭の新しい電化を加速していくことに向けられる。

画像クレジット:Span

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hiroshi Iwatani)

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学は3月24日、太陽光発電と電気自動車(EV)の走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムを開発し、世界で初めて実車を用いた実験を成功させたと発表した。EVの普及と太陽光発電の大量導入を後押しする技術に発展することが期待されるという。

2020年、EVの停車中のワイヤレス充電の国際規格(SAE J2954)が制定され、走行中ワイヤレス給電(DWPT。Dynamic wireless Power Transfer)はその次の技術として期待されている。現在のEVは、大量のバッテリーを搭載しているために価格が高く、充電に時間がかかることが普及の足かせになっているが、DWPTが実現すれば、バッテリーは小さくて済み、走行距離を飛躍的に延ばすことが可能となる。すでに、DWPTが経済的に成り立つという試算が出されていて、高速道路だけでなく一般道にも導入が可能だとされている。しかし、太陽光発電とDWPTを組み合わせる技術的な研究は、世界的にもまだ進んでいない。

そこで、東京理科大学理工学部電気電子情報工学科の居村岳広准教授を中心とする研究グループは、太陽光発電とDWPTを組み合わせる際に必要となる回路と制御方法を開発し、実際に実験用道路に給電装置を埋め込んだ実車実験を行った。研究グループは、カーボンニュートラルの実現を目指す観点から電力網に接続しないオフグリッドでの太陽光発電を用いたシステムと、オングリッドのシステムの両面から研究を行っているが、今回実車実験を行ったのは、オフグリッドを想定したシステムだ。

コイルと太陽光発電と実車

コイルと太陽光発電と実車

オフグリッドのシステムは、道路脇に設置した太陽光パネルによる直流電力送電路「DCバス」に接続することが想定されている。オングリッドならば常に一定の電力を供給できるのだが、オフグリッドの場合、発電状況やEVの走行台数の変化によってシステムにかかる電圧が変動する。そこで、太陽光発電の出力を最大化する最大電力点追従制御(MPPT。Maximum Power Point Tracking)とDWPTのそれぞれに想定される負荷変動の周期のずれを吸収する電気二重層キャパシター(EDLC。Electrical Double Layer Capacitor)を、発電部分と給電部分との間に挟んだ。さらに、ワイヤレス給電のために直流電圧を高周波の交流に変換するインバーターの出力電圧波形を位相シフト制御して電圧調整を行った。これにより、発電電圧を最大に保ちながら、供給電力を一定に保つことができた。

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功―世界初の実車を用いたシステム開発

コイルと回路

研究グループは、屋内の基礎実験でこのシステムの動作が検証できたところで、キャンパス内にDWPT実験用道路を作り、実際のEVの床下に受電回路を取り付けて走行試験を行った。その結果、車のボディーやアスファルトの影響が心配されていたが、大きな影響はなく、屋内基礎実験と同様に動作が可能であることが示された。これにより、電気二重層キャパシターとインバーター出力の位相シフト制御を使うことで、オングリッドの場合と同じように供給電力を一定に保てることがわかった。

日本では、2050年には300GW(ギガワット)の太陽光発電施設の導入を目指している。そうなると、昼間の電力量は需要を上回り、余剰電力が生まれるようになる。DWPTは、停車中充電に比べて電力吸収量が10倍以上と多いため、太陽光発電の大量導入時の余剰電力消費先として親和性が高く、余剰電力の負荷平準化に貢献できる可能性もあるという。

今回は動作原理の実証のため電力は抑えて行ったが、今後は、埋設したコイルの大電力伝送実験、雨水や海水の有無による影響の評価などを通して、社会実装に向けた研究を進めるとしている。

ヒョンデの新型ハイブリッド車に装備されたソーラールーフにはどれほど価値があるか?

Hyundai(ヒョンデ、現代自動車)の新型ハイブリッド車「Sonata(ソナタ)」のルーフには、太陽電池が組み込まれている。1日中太陽に照らしておくと、航続距離が3〜4マイル(約4.8〜6.4km)ほど延びる。しかし、私が所有している電気自動車は、駐車して座っているだけで、航続距離が1日に3〜4マイル以上減る。運転していないときにTesla(テスラ)が何をしているかはわからない。何もしていないのに電力が消費しているところをみると、ひそかにクルマに自意識が芽生え、感情が生まれていて、Elon Musk(イーロン・マスク)への愛を俳句に詠んでいるのではないかとしか思えない。

「ソナタ・ハイブリッドのソーラーパネルは、正確には204Wの容量を持っています。つまり、日当たりの良い場所で太陽に照らされたパネルは200Whの電力を生み出します」と、ヒョンデはウェブサイトに書いている。200Wはゼロではないが、電気自動車の文脈では、200Wはそれほど印象的な数字ではない。50アンペアブレーカーの家庭用急速充電器は9.6kWで充電できる。ソナタの屋根で焼かれる哀れな小さな太陽電池より約50倍も速いのだ。

ヒョンデは「1日5.8時間充電することで、1年間に走行可能な距離が1300km増える」と主張している。計算してみると、1日あたり2.5マイル(約4km)の航続距離がプラスされるだけでラッキーだということがわかる。もしあなたが健常者で、通勤距離が2.5マイル以下なら、歩いた方が環境にも健康にも、そして全体的な交通インフラの平常性にも良いと主張することができそうだ。しかし、1日に2.5マイル以下しか走らない人はたくさんいる。そして、たとえ天候の影響で航続距離が大幅に伸びなかったとしても、駐車していたクルマのバッテリーが、数日間放置した後も同じかあるいは少し増えているなら、それは決して悪いことではないだろう。

平均的なドライバーの年間走行距離が1万マイル(約1万6000km)の世界では、無料で走行可能な距離が1300km増えたら、それは約8%の燃費向上を意味する。どんな世界でも、8%の値引きを提示されたら買ってしまいそうなものだ。ハイパーマイリング(省燃費追求)の本からも引用すれば、それがすべて現実の数字になるのだ。

ソーラールーフの追加費用と複雑さが、長い目で見て本当にお金の節約(あるいは環境の保護)になるかどうかはわからない。しかし、私はここに原則的な問題があると思う。どのクルマにも、トランク、ルーフ、ボンネットなど「役に立つ」ことに使われていない数平方メートル分の不動産がある。もし、それが全体のエネルギー消費量を8〜10%減らすことができるのであれば、バッテリーの蓄電能力を持つすべてのクルマ(EV、ハイブリッド車など)の分を掛け算すれば、すぐにプラスになるだろう。ソーラールーフ機能は、2022年型ヒョンデ・ソナタ・ハイブリッドの最上級仕様である「Limited(リミテッド)」グレードに標準装備されており、その車両価格は3万5500ドル(約430万円)からとなっている。

ヒョンデやその他の企業をグリーンウォッシングと非難することは超簡単だ。そしておそらく、これは車両の寿命を考えると最終的には正味のマイナスとなるギミックであることが判明するだろう。しかし、ここで1つ言いたいことがある。私は排ガス試験で不正を行う「クリーン」なはずのディーゼルよりも、ほとんど何もしない屋根の上に設置されたソーラーパネルで走るクルマの方を運転したいと思う。

画像クレジット:Hyundai under a license.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

タンポポの種のように風に乗せてばら撒ける超軽量センサーをワシントン大学の研究者が開発

100平方マイル(約259平方キロメートル)の森林で温度、湿度、日射量をモニターしようとしたら、さまざまな機器を結びつけてシステムの森を構築するのに長い時間がかかる。しかし、タンポポやニレの種を撒くように、センサーをばら撒くことができたらどうだろう?ワシントン大学の研究者は、必要な機器を風で運べるほど軽いデバイスにまとめあげた

このプロジェクトは、小規模で特定の目的に特化したコンピューティングの境界を押し広げるものだ。まだごく初期の試作品に過ぎないが、組込み電子機器が進むべき興味深い方向性を示している。

「私たちの試作品は、ドローンを使ってこれらの数千個のデバイスを、一度に投下できる可能性を示唆しています。これらのデバイスは、すべて少しずつ異なる方へ風で運ばれていき、基本的にはこの1回の投下で、1000個のデバイスネットワークを構築することができます」と、ワシントン大学の教授であり、多くのデバイスを製作しているShyam Gollakota(シャム・ゴラコタ)氏は語る。

この電子機器はバッテリーを一切使用しないため、全体の質量を大幅に削減することができる。数個の小さなセンサーと無線トランシーバー、そして数個の小さな太陽電池を搭載したこのデバイス自体の重さは、30ミリグラムにも満たない。

風を受ける部分の構造は何十回も試行錯誤を繰り返し、最終的にこの自転車の車輪の形に辿り着いた。これによってデバイスは、出発地点から遠くまで移動できるだけでなく、95%の確率でソーラーパネルを上向きにして着地できるという。ドローンでばら撒く場合は、100メートルほど移動して着地する。

一度着地すれば、明るいうちは常に動作し、後方散乱高周波信号を利用して周囲や互いに信号を跳ね返し、制御装置で収集することができるアドホックネットワークを構成する。

重さ1ミリグラムの驚異的に軽いタンポポの種が何キロメートルも移動できるのに比べれば、今はまだそれほどの機動力はない。しかし、自然界ではその設計を完成させるのに測り知れないほど長い年月がかかったが、ワシントン大学のチームは最近始めたばかりだ。もう1つの課題は、もちろん、本物の種はやがてタンポポになるか、朽ちて無に帰すという事実である。これに対し、1000個のセンサーは、拾われるか粉々に砕かれるまで残るだろう。生分解性エレクトロニクスの分野はまだ新しいが、研究チームはこの点に取り組んでいるという。

もし、電子機器廃棄物という観点(そして、おそらくそれを食べる動物という観点)を解決できれば、絶滅の危機に瀕した生態系を監視しようとする人々にとって、非常に有益なものになるはずだ。

「これは最初の一歩であり、だからこそ、とてもエキサイティングなのです。ここから私たちが進むことのできる道はたくさんあります」と、筆頭研究者のVikram Iyer(ヴィクラム・アイヤー)氏は語っている。この研究成果を記した論文は、米国時間3月16日発行の「Nature(ネイチャー)」誌に掲載された。

画像クレジット:Mark Stone/University of Washington

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

光電変換効率が高い有機薄膜太陽電池の発電の仕組みは「下り坂」だった―京都大学が発電機構を解明

光電変換効率が高い有機薄膜太陽電池の発電の仕組みは「下り坂」だった―京都大学が発電機構を解明

左図:従来型の有機薄膜太陽電池では、十分な「オフセット」(=電子の動きを速くするドーピングのようなもの)がないとエネルギー準位の峠を越えられず効率よく発電できない。右図:最新型の有機薄膜太陽電池ではエネルギー準位の勾配ができるため、オフセットがなくても坂道を下るだけで効率よく発電できる

京都大学大学院工学研究科の研究グループは2月24日、プラスチック太陽電池とも呼ばれる有機薄膜太陽電池(OSC。Organic Solar Cell。OPVとも)の発電メカニズムを明らかにしたと発表した。P型半導体に半導体ポリマー、n型半導体に非フラーレン型電子アクセプターを用いたOSCは、「坂を下る」ように効率的に発電ができるという。

軽量、柔軟で、大量生産に向き、室内光でも光電変換効率が高いOSCは、次世代太陽電池として注目されている。特に、これまでn型半導体に使われてきたフラーレン誘導体の替わりに非フラーレン型電子アクセプター(NFA。Non-Fullerene Acceptor)を使うことで、OSCの課題となっていた高い「オフセット」(エネルギー準位差)の問題が解決し、さらなる高効率が実現した。研究グループでは、半導体ポリマーに「PM6」という有機化合物を、NFAには「Y6」という有機化合物を用いて研究を行った。これらは、オフセットが低くとも発電効率がよいことから、現在もっともよく研究されている材料だ。しかし、その発電メカニズムはよくわかっていなかった。OSCを実用化するためには、その解明が欠かせない。

OSCでは、半導体ポリマーとNFAのエネルギー準位(エネルギーレベル)の差によって光電変換が行われる。従来の方式では、効率のよい光電変換を行うには、0.3eV(電子ボルト)の電圧をかける必要があった。これがオフセットだ。光電変換効率を高めるには、太陽電池の最大電圧を高める必要がある。そのためにはオフセットを小さくしなければならない。しかし、オフセットを小さくすると効率的な発電が行われない。そこが大きな問題だった。ちなみに、PM6とY6を組み合わせたOSCでは、オフセットは0.1eVで済む。光電変換効率が高い有機薄膜太陽電池の発電の仕組みは「下り坂」だった―京都大学が発電機構を解明

研究グループは、PM6とY6のブレンド膜で電子と正孔が形成する界面電荷移動状態(電子と正孔が拘束された状態)を観察した。電子と正孔が拘束から解かれて自由電荷になること(電荷解離)で、光電流として回収され、光電変換が行われるようになるのだが、電荷解離までの時間を測定したところ、10ピコ秒だった。フラーレン誘導体を用いたOSCでは0.1ピコ秒ほどであり、その反応が速いことが高効率な発電につながると考えられている。そのため、非常に長い時間がかかるPM6とY6の組み合わせでは、発電のメカニズムが異なることがわかった。

その秘密は結晶化にあった。n型半導体のY6は時間とともに非晶状態から結晶状態へと変化する。n型半導体とp型半導体の相分離界面付近では材料の結晶化が低下していることが知られている。Y6の基底状態(エネルギー値がもっとも低い状態)を調べたところ、そのスペクトルの変化から、時間とともに電荷がより結晶性の高い領域に移動していることがわかった。非晶状態のY6よりも結晶状態のY6のほうがエネルギー準位が「深く」、電子は結晶相へ移動することで安定化されるためだという。結晶性が低い相分離界面で発生した電荷は、よりエネルギー的に安定した結晶性の高い領域を求めて移動することで電荷解離されていた。つまり、「界面から遠く離れるほどY6の結晶性が向上し、それに伴いエネルギー準位が連続的に安定化することで、電荷が坂道を転がるように界面から遠ざかっていく」という。

この研究成果を活かすことで、「無限に存在する有機半導体」からOSCの材料として有望なものを効率的にスクリーニングでき、さらなる効率向上が期待されるとのことだ。

Rocket Labが宇宙用太陽光電池を手がけるSolAeroを約91.6億円で買収

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、宇宙ソリューションの垂直統合というミッションに取り組んでいる。米国時間1月18日、この打ち上げ・宇宙システム企業は、宇宙用太陽光発電製品および精密航空宇宙構造物のサプライヤーであるSolAero Holdings(ソルエアロ・ホールディングス)を現金8000万ドル(約91億6000万円)で買収完了したことを発表した。

1998年に創立されたニューメキシコ州に本拠を置くSolAeroを買収したことで、Rocket Labは衛星製造のための重要なサプライヤーを社内に持つことになる。同時に、Rocket Labのリソースを利用することができるようになったSolAeroは、大量生産と規模拡大に必要な製造能力を得ることができ、他の顧客への供給を強化することが可能になる。

今回の買収は、宇宙市場のさらなる獲得を目指すRocket Labを支援し、その長期的なビジョンを後押すると、広報責任者のMorgan Bailey(モーガン・ベイリー)氏はTechCrunchに語った。

「例えば、Rocket LabがElectron(エレクトロン)やNeutron(ニュートロン)で特定の宇宙機を打ち上げることはないかもしれませんが、ソーラーパネルや、スタートラッカー、リアクションホイール、フライトソフトウェア、分離システムなどのコンポーネントを供給することによって、収益を得ることができ、ミッションの一翼を担うことができます」と、ベイリー氏はいう。「もちろん、SolAeroの技術は、Rocket Lab自身ののPhoton(フォトン)宇宙船にも組み込まれ、当社の垂直統合戦略をさらに後押しすることになります」。

今回の買収は2021年12月に一定の閉鎖条件を前提に発表されたもので、Rocket Labはその数カ月前に、コロラド州のAdvanced Solutions, Inc. (ASI、アドバンスト・ソリューションズ)という宇宙用ソフトウェア会社を4000万ドル(約45億8000万円)で買収することを発表している。ASIの買収は、Rocket Labが宇宙システム部門を構築し、宇宙船の製造、衛星のサブシステム、フライトソフトウェア、地上運用、打ち上げまでを網羅した「エンド・ツー・エンド」の宇宙企業になるという目標の達成を支援することが目的だという。

関連記事:Rocket Labが宇宙飛行ソフトウェア・ミッションシミュレーション企業ASIを45億円超で買収

SolAeroの合併は、Rocket Labが2021年12月に買収した宇宙機分離システム会社のPlanetary Systems Corporation(プラネタリー・システムズ・コーポレーション)と、2020年4月に買収した衛星部品メーカーのSinclair Interplanetary(シンクレア・インタープラネタリー)に続くものだ。

「SolAeroは、Rocket Labの垂直統合型ビジネスモデルを高度に補完するものであり、我々の顧客に完全な宇宙ミッションソリューションを提供することを可能にします」と、Rocket LabのCEOで創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏は声明の中で述べている。「これまで1000回以上のミッションを成功させた経験を持つSolAeroのチームは、James Webb(ジェイムズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡や、InSight(インサイト)とIngenuity(インジェニュイティ)を含む火星でのミッションに、宇宙太陽光発電ソリューションを提供するなど、先駆的なミッションを実現してきました」。

InSight火星探査機は、火星表面に展開された史上最大の太陽電池アレイであり、Ingenuityは2021年4月に火星での飛行に初めて成功したヘリコプターである。

SolAeroの製品は、NASAのParker Solar Probe(パーカー・ソーラー・プローブ)宇宙探査機や、国際宇宙ステーションへのCygnus(シグナス)補給ミッションに電力を供給してきた。また、OneWeb(ワンウェブ)のブロードバンド衛星コンステレーションにも電力を供給しており、NASAのArtemis(アルテミス)月面探査計画では、将来の火星探査を可能にするSolar Power Modules(ソーラー・パワー・モジュール)の供給元に選ばれている。

SolAeroで働く425名のチームがRocket Labに加わることで、同社ではカリフォルニア、バージニア、コロラド、メリーランド、トロント、ニュージーランド、そして今後は(SolAeroの)アルバカーキの施設をを含め、合計1100名以上の従業員が働くことになる。SolAeroチームは引き続き、社長兼CEOのBrad Clevenger(ブラッド・クレベンジャー)氏が指揮を執る。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

畑を走り回るAigenの農業ロボットは二酸化炭素排出量のマイナス化を目指す

そのロボットは今のところ、雑草を抜くことしかできないが、Aigen(アイジェン)は「雑草を抜くロボットを作っているわけではない」と断固主張する。同社のミッションは惑星規模の土壌再生であり、農業をカーボンネガティブにするための道筋を作っているのだという。

そんな主張には説得力があったに違いない。なぜなら、同社はシードラウンドで400万ドル(約4億6000万円)を調達したと発表したばかりだからだ。このラウンドはNEAが主導し、AgFunder(アグファンダー)、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、ReGen Ventures(リジェン・ベンチャーズ)が参加した。

Aigenは太陽電池を搭載した自律型ロボットを開発している。このロボットは、コンピュータビジョンを利用して、敵か味方か、作物か雑草かを見分けながら、畑を走り回ることができる。その最初のバージョンは、1日に最大3エーカー(約1万2000平方メートル)の農地を、ただひたすら歩き回っている。

「私の親戚がミネソタ州で農業を営んでいるのですが、彼らとは以前から話をしてきました。農家は従来の農業のやり方では問題があることを実感しています。化学薬品を進んで使い、土壌の耕起を愛し、何千年にもわたって大気中に炭素を放出してきた農法を愛する保守的な人々でさえ、他の方法に目を向けるべきなのではないかと気づき始めているのです」と、AigenのCEOであるRichard Wurden(リチャード・ウルデン)氏は語る。そんな話を聞いてきた同氏は、農業の炭素排出量をマイナスに逆転させることに、特に情熱を注いでいる。「現在、農業は炭素排出量の約16%を占めています。将来的には、ディーゼルの排出ガス、土壌の圧縮、化学薬品の使用、耕す回数を減らすことで、マイナスにできる可能性があります」。

このスタートアップ企業が根拠としているのは、光合成は全体ではカーボンネガティブであるということだ。植物は空気中のCO2を取り込んで糖(正確には炭水化物)に変える。つまり、実質的には空気中の二酸化炭素を大地に戻しているのだ。Aigenは、テクノロジーと農業のやり方を変えれば、カーボンニュートラル、あるいはネガティブな状態にすることも可能だと主張している。この草取りロボットは、会社が進むべき道の第一歩にすぎない。今、本当に価値がある物を作り、プラットフォームを拡大して、将来的にはより多くのミッションを遂行できるようにするというのが、同社創業者たちの主張だ。

「私たちは画像によるデータ収集を行っています。このロボットには複数のカメラが搭載されており、あらかじめ学習させたAIを使って植物やさまざまな物体を識別しています。見ているものが何だかわかったら、ロボットの下に備わる2本のアームを使って、植物を取り除くか、増殖させるかを判断します」と、同社COOのKenny Lee(ケニー・リー)氏は説明し、その小型軽量ロボットの価値をアピールする。「重機は土壌を圧縮するため、根が下ではなく横に伸びてしまいます。これが問題なのです。なぜなら、これでは植物が取り込んだ炭素を地中深くに送ることができないからです。トラクターや大型の農業機械を減らすことができれば、農業の仕組みを変えられます」。

Aigenの小さな太陽電池ロボットは、クルージングしながら自分の仕事をこなしている(画像クレジット:Aigen)

「Aigenの技術は、クラス最高のAIとロボット工学を活用し、人類最大の問題にエレガントなソリューションを提供します」と、NEAのパートナーであるAndrew Schoen(アンドリュー・ショーン)氏は述べている。「彼らの製品は、惑星規模で相当な量の大気中の炭素を封じ込める自然の強大な力を解放させるものです」。

同社は、今回の資金調達の評価額を公表していない。

画像クレジット:Aigen

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

シェルが設立したスタートアップファンド「EEGF」、太陽光発電を提供しアフリカでクリーンエネルギーを促進

FinDev Canadaは、サハラ以南アフリカにおける初期および成長段階のエネルギー関連スタートアップに投資するファンドEnergy Entrepreneurs Growth Fund(EEGF)に1300万ドル(約14億8500万円)を出資した。資金の一部は、同地域のオフグリッド世帯や企業のクリーンエネルギーへのアクセス向上に役立てられる。

1億2000万ドル(約137億円)のEEGFは、2019年にShell Foundation(シェル財団)と英国のUKaid、そしてオランダのEntrepreneurial Development Bank FMOが共同で設立したファンドで、エネルギー分野の企業に対し、デット(触媒 / メザニン)または株式の形で融資を行っている。EEGFは、インパクト投資マネージャーであるTriple Jumpと、気候変動対策ベンチャーを支援する企業であるPersistentが運営している。

FinDev Canadaは、サハラ以南アフリカ、ラテンアメリカ、カリブ海地域の低所得者や十分な支援が行き届いていない層の経済的エンパワーメントを促進するインパクト金融ファシリティである2X Canadaを通して資金調達に参加した。

FinDev CanadaのVP兼最高投資責任者であるPaulo Martelli(パウロ・マルテリ)氏は、今回の資金提供は、新型コロナウイルスによる減速の後、クリーンエネルギー産業のイノベーションを加速するのに役立つと声明で述べている。

「パンデミックの影響で、健康危機以前から遅れていたアフリカの電化推進が遅れています。EEGFのこの分野への投資能力を高めることで、FinDev Canadaとその2X Canadaファシリティは、アフリカの家庭や企業においてクリーンで信頼できるエネルギーへのアクセスを拡大し、包括的で持続可能な成長と何百万人もの人々の生活の向上に貢献するエネルギー企業を支援します」と同氏は述べた。

このファンドの投資先は少なくとも半数が、アフリカの女性消費者や起業家のエネルギーニーズに明確に対応している企業、および企業や家庭に再生可能エネルギーのソリューションを提供している企業だ。サハラ以南アフリカは、電気を利用できない世界人口の75%を占めると言われており、そのギャップを埋めていく過程で再生可能エネルギーによるソリューションを採用できる可能性がある。

Shell FoundationのオペレーションディレクターであるGareth Zahir-Bill(ガレス・ザヒル・ビル)氏はこう述べている。「エネルギー貧困を緩和し、気候変動を軽減する、公正かつ包摂的なエネルギーシフトには、世界のエネルギーアクセス目標を達成するために頼りにされている起業家の資金ニーズを理解する必要があります」。

「FinDev Canadaによるファンドへの投資は、起業家への柔軟な融資ソリューションの提供を拡大し、アフリカの何百万人もの人々にとってクリーンで信頼できるエネルギーへのアクセスを加速するのに役立ちます」とも。

EEGFは2021年、時間をかけて支払うことが可能な太陽光発電ソリューションを提供するBaobab+とYellow、企業向けにモバイルソーラーファームの設計・設置を行うRedaviaに投資した。

ガーナ、ケニア、タンザニアに顧客を持つRedaviaは、このファンドから370万ドル(約4億2000万円)のメザニン投資を受けた。同社は、アフリカ大陸で85MWp以上の太陽光発電の設置を目標としている。2021年9月までに「90台近いソーラーユニットを設置し、7MWpのソーラー容量を確保した」とのこと。

マラウイとウガンダで事業を展開し、一般家庭や中小企業が分割払いでソーラーシステムを購入できるYellowは400万ドル(約4億5700万円)、一方Baobab+は230万ドル(約2億6300万円)を獲得した。Baobab+は、マリ、セネガル、マダガスカル、コートジボワールで事業を展開しており、ナイジェリアとコンゴ民主共和国の市場への参入を計画している。

画像クレジット:Pramote Polyamate / Getty Images

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(文:Annie Njanja、翻訳:Aya Nakazato)

ウェザーニューズ、電気事業者向けに1kmメッシュの高解像度な太陽光発電量予測データをAPIで提供開始

ウェザーニューズは、同社の日射量予測モデルを改善し予測精度を通常のものから11%向上させ、これを用いた太陽光発電量予測モデルを開発。電気事業者向けの1kmメッシュ(約1km四方)の高解像度な日射量予測データのAPIによる提供を開始した。現在は無料トライアルを実施している。

これは、企業向けの気象データの提供と分析を行うサービス「WxTech」(ウェザーテック)サービスの1つ。2021年4月からは、再生エネルギー発電の固定価格買取制度から、補助金が変動するFIP制度に切り替わる。そのため、高精度な太陽光発電量予測が今まで以上に重要になるという。そこでウェザーニューズでは、新たな太陽光発電量予測モデルを開発した。そして、このモデルを使った日射量予測データのAPI提供サービスを開始した。

電力取引に適した30分ごとの太陽光発電量の予測データを72時間先まで提供するというもので、「物理モデル」か「統計モデル」の2種類を用意があり、いずれか精度の高いほうを選択できる。なお新設の発電所の場合は、実績データが蓄積されるまで統計モデルは選択できない。

物理モデルでは、太陽光発電所の緯度・経度、ソーラーパネルの出力・方位角・傾斜角・パワーコンディショナー(PCS)の出力や効率といった情報をもとに、ピンポイントな太陽光発電量予測データを算出。統計モデルでは、過去の発電量実績データと気象データをAIに学習させて高精度な予測を行うという。

ウェザーニューズでは、2020年12月に機械学習を用いた日照量予測モデルを開発。従来は、雲の透過率を上空の湿度から推定していたが、このモデルでは、上空の湿度や温度から推定される雲の水分量、風向と風速から計算される収束量などで機械学習を行い、雲の透過率を高精度に推定している。今回はその大気濁度と雲透過率の算出方法を見直してバージョンアップし、2021年12月には、同社の従来予測モデルと比べて8.5%、気象庁(MSM)と比べ11%という精度改善を確認した。

予測解像度を1kmメッシュにしたことでも、データの精度は高まった。従来の5kmメッシュでは1つの区画の範囲が広く、その中で天気や発電量に大きな差が出ることがあったからだ。また、1kmメッシュの積雪予測、積雪実況データと過去の気象予測も追加された。太陽光発電に大きな影響を及ぼす積雪予測と積雪実況データは、30分ごとに更新され、積雪を加味した予測が可能になる。

太陽光発電予測データのサービス仕様

  • 単位:kWh
  • 空間解像度:1kmメッシュ
  • 時間解像度:30分間隔(72時間先まで)
  • 更新頻度:30分ごと、5回/日、1回/日から選択可
  • 提供方法:API提供、または専用ウェブサイトからCSVファイルをダウンロード

GAF Energyのソーラー屋根板の設置は専門チーム不要、テスラや他社製品の凌駕を目指す

屋根へのソーラーパネルの設置は、平均的な住宅所有者にとってますます現実的な選択になっているが、専門的なアフターマーケット業務や屋根全体の取り替えという面では悩ましいものだ。屋根素材の世界的大手企業の子会社であるGAF Energyは、同社新製品であるソーラー屋根板は極めてシンプルで、専門的な機器や知識が不要であるため再生可能エネルギーの家庭への導入がとても簡単に行えるという。

ソーラー屋根板という製品は以前からあるが、設置はかなり面倒なものだ。その下に数インチのスペースを空けながらパネルをリベットで屋根に取り付けていくといった単純な作業ではなく、屋根素材とソーラーパネルの配列を兼ねている製品なので、むしろ屋根板全体の取り替え工事になってしまう。

TechCrunchの読者は、Tesla(テスラ)がこの分野に進出していることをご存知だろう。同社の「Solar Roof」という想像力豊かな(皮肉!)名前の製品もソーラー屋根板を使うが、他社製品と同様も、専門チームが必要であり屋根全体の取り替える工事になる。損傷部の交換用に30平方フィート分のパネルが欲しいとしても、Teslaではそれができない。また、他のソーラー屋根板製品でも、地元の屋根葺き屋でも工事はできないだろう。

GAF Energyは、米国時間1月3日のCESで発表した「Timberline Solar」というプロダクトで、そんな状況を変えようとしている。同社によるとそれは、どんな屋根葺き屋でもネイルガン(電動釘打ち機)でも簡単に設置できる。GAF EnergyのMartin DeBono(マーティン・デボノ)社長の説明によるとその屋根板は「ソーラー技術を既存の屋根葺き工程と素材に統合できる唯一の製品であり、従来的な屋根葺き業界が本格的なソーラールーフを作り、クリーンエネルギーの主流的な展開をできるようになる」という。

画像クレジット:GAF Energy

ソーラーパネルを設置しようとしてトラブルを経験した人なら、最初から専門業者に任せればいいじゃないかと思うかもしれない。どちらにしろ高くつくのだから。しかし、それもある意味では正しいが、屋根をソーラーにしようとすると、いろいろなところに費用が発生するため、1ドルでも節約したいのが多くの顧客の気持ちだ。Aurora SolarのCOOであるSam Adeyemo(サム・アデエモ)氏も、2021年同じことを述べていた。しかもそれだけでなく、専門業者は人口の多いところにしかいないため、ソーラーの実用性が高いと思われる農村地区ではコストがより高くなり、利用率も低くなる。

同社によると、同社のソーラー屋根板の設置は通常の屋根板と同じだが、電気接点を上側に露出してアクセスしやすくしている。ただし防水性は普通の屋根と同じく完璧だ。樋を掃除するために屋根の上を歩いてもよい。同社は、国の安全規格である「建材一体型太陽光発電設備(BIPV)ソーラー屋根認証」であるUL 7103を、初めて交付された。

ソーラールーフは高価で複雑なオプションから、誰でも利用できる普通のものへと一歩前進した。もしかしたら、そのうち元が取れるかもしれない。

画像クレジット:GAF Energy

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

太陽電池を搭載し自ら電力を供給し続けるMayhtの小型高音質スピーカー

Powerfoyleはあらゆる光源から電力を取り出す素材を生み出し、Mayhtは新しいタイプのスピーカードライバーを開発した。この2つを組み合わせれば、お気に入りのプレイリストを聴き終わったあとも、ずっと鳴らし続けられるBluetoothスピーカーができあがる。両社は、2021年のCESでそのプロトタイプを公開しました。

MayhtのHeartmotionテクノロジーは、従来のドライバーの代わりに、10倍コンパクトで、もっとフラットな、軽量なスピーカーを実現させる。同社は音質、音域、出力に妥協することなく、このレベルの魔法を実現することを約束している。

「近年、家電製品はよりパワフルでコンパクトになりましたが、スピーカーのコアテクノロジーはこの100年間、ほぼ進化していません。私たちのHeartmotionスピーカー技術は、業界が夢をみながらも実現できなかった革命だと確信しています」という。

従来のスピーカー技術に比べ、はるかに小型・軽量であることに加え、ドライバーは現在市販されている同性能のオーディオ機器より少ない電力で駆動する。このスピーカー技術とExegerの太陽電池素材「Powerfoyle」との組み合わせは、まさに「フレックス」だ。この太陽電池は、屋内外のあらゆる光をエネルギーに変える。この太陽電池材料は、自己充電式の太陽電池製品の製造に使用することができ、その試作品は、この技術がコンシューマー向け製品として世に出る可能性を示す現実的な例の1つとなる。また、CESではBlue Tiger Headsetsが、同じソーラー充電技術を搭載した「Solare」を披露する。

CESでデモを行ったMayhtのスピーカーのラインナップ。右端はエグゼガーの太陽光発電技術「PowerFoyle」を使った「実質無制限」の再生時間を持つポータブルスピーカーのプロトタイプ(画像クレジット:Mayht)

ExegerのCEOであるGiovanni Fili(ジョバンニ・フィリ)氏は「ExegerとMayhtは、音楽の聴き方を変える可能性を秘めたすばらしい製品を共同開発しました。私たちはともに、すばらしいサウンドのスピーカーから無限のリスニング体験を提供し、スピーカー市場に新しい基準を打ち立てようとしています」という。

画像クレジット:Mayht

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Katsuyuki Yasui)

東芝、タンデム型太陽電池向けの透過型Cu2O太陽電池で世界最高レベルの発電効率8.4%を達成

東芝、タンデム型太陽電池向けの透過型Cu2O太陽電池で世界最高レベルの発電効率8.4%を達成

東芝は12月22日、透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池の発電層の不純物を抑制して、世界最高の発電効率8.4%を達成したことを発表した。これは、2つの太陽電池を積層するタンデム型で、光を透過する上層(トップセル)に使われるもの。発電効率25%の高効率シリコン(Si)太陽電池を下層(ボトムセル)にして組み合わせたCu2O/Siタンデム型太陽電池では、発電効率は合計で27.4%となり、Si太陽電池の世界最高効率26.7%を超える。電気自動車(EV)に搭載すれば、充電なしの航続距離は1日あたり約35kmになると試算されている。

現在、高効率なタンデム型太陽電池にはガリウムヒ素半導体を使ったものがあり、30%台の発電効率が報告されているが、製造コストはSi太陽電池の数百倍から数千倍にものぼる。これに対してCu2O太陽電池は、どこにでもある銅と酸素が主原料であるため、製造コストは非常に低くできる。

透過型Cu2O太陽電池は、短波長光を吸収して発電し、長波長光は透過する。その下に置かれたボトムセルのSi太陽電池は、その長波長光を吸収して発電する。そのため短波長から長波長までの光を発電に使うことができ、限られた設置面積でも低コストで効率よく発電できる太陽電池となる。

もともと透過型Cu2O太陽電池は、2019年に東芝が世界で初めて開発したもの。透過型Cu2O太陽電池単独(トップセル)では10%の発電効率を目指している。しかし、Cu2Oは半導体結晶としての性質により、結晶中に酸化銅や銅といった不純物が生成されやすく、それが発電効率と透過率の双方の低下原因になっていた。そこで東芝は、X線回折法を用いて、Cu2O発電層に含まれる微量の酸化銅や銅を検出し、不純物の量を精密に数値化した。そして、この2つの不純物が最小化する成膜プロセス条件を特定し、光透過性と発電特性の双方に優れた透過型Cu2O太陽電池の開発を成功させた。

今回開発された透過型Cu2O太陽電池と、発電効率25%のSi太陽電池を組み合わせてCu2O/Siタンデム型太陽電池を作り、例えばEVに搭載した場合(車載設置面積を3.33m2と仮定)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の試算方法に従えば、充電なしの航続距離は1日あたり35kmとなる。もし、発電効率が30%に達すれば40kmに達する。また、蓄電池に電力を補充し続ければ、充電なしでの長距離走行も夢ではない。

電気自動車(EV)へのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

電気自動車(EV)へのCu2O/Siタンデム型太陽電池搭載イメージ

発電効率10%を目指す透過型Cu2O太陽電池の開発はNEDOの委託事業だが、これとは別に、東芝は東芝エネルギーシステムズと共同で、量産タイプのSi太陽電池と同じサイズの大型Cu2O太陽電池の開発を開始したという。2023年度を目標に外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度を目標に実用サイズのCu2O/Siタンデム型太陽電池の製造技術の完成を目指すとしている。

独Sono Motorsが上場、ソーラー電気自動車Sionを2023年までに市場へ投入

Sono Motors(ソノ・モーターズ)は、すべての電気自動車に太陽光発電で電力を供給したいと考えている。そのアイデアは9年前にミュンヘンの地下室で、起業家精神に富んだ18歳の若者2人が、化石燃料への社会の依存に対するソリューションを思いつくまま打ち出し始めたことに端を発する。Sono Motorsの共同創業者であるJona Christians(ジョナ・クリスチャン)氏とLaurin Hahn(ローリン・ハーン)氏は、自動車にはあまり乗り気ではなかったものの、輸送機関がどれほど化石燃料の燃焼に貢献しているかを認識しており、そこから始めるのが良いと考えた。

「私たちはあらゆる車両に太陽光発電を統合するというビジョンを思いつき、それには何が必要かと考えました」とハーン氏はTechCrunchに語った。

彼らは、再生可能エネルギーが輸送時の排出ガス問題の解決に役立つことを証明するために、ソーラー電気自動車の試作品の製造に着手し、2015年までに実用モデルを完成させた。翌年、クリスチャン氏とハーン氏はクリエイティブディレクターのNavina Pernsteiner(ナヴィナ・ペルンシュタイナー)氏を招き、共同で事業を立ち上げ、Sono Motorsを会社とブランドとして確立した。

米国時間2021年11月17日、Sono Motorsの親会社であるSono Group(ソノ・グループ)が上場した。IPO価格が15ドル(約1730円)に設定された後、NASDAQで20.06ドル(約2314円)で取引を開始したが、取引終了前に38.74(約4469円)ドルの高値をつけた。

Sono Motorsの市場への道は2つある。同社は、同社初のソーラー電気自動車であるSion(サイオン)の1万6000台の先行予約を平均3000ドル(約34万6000円)の頭金で確保した。5ドアの小型でファミリー向けのハッチバックは2万8700ドル(約331万円)で、2023年前半までに消費者に届ける予定だ。Sonoはさらに、複数の企業と協力して同社のソーラー技術を他の車両に統合しようとしている。2021年の初めに、同社は自社のソーラーボディパネル技術を他社にライセンス供与することを発表し、電動自動運転シャトルバス会社EasyMile(イージーマイル)を最初の顧客に選んだ。

関連記事:Sono Motorsがソーラーカー技術を自動運転シャトルバスのEasyMileにライセンス供与

Sion

Sionの航続距離は190マイル(約306km)で、中国のBYD(比亜迪)が供給する54kwHのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用する。この電池は環境と倫理に大きなインパクトを及ぼす金属であるマンガン、ニッケル、コバルトを使用していないため、よりサステナブルだと考えられている。Sionは壁のボックスを介して充電できるが、Sonoによると、太陽が輝いているときはいつでもバッテリーにエネルギーを供給するため、毎日の通勤のほとんどをまかなうことができるという。

「例えばドイツでは、通勤圏の平均は1日10マイル(約16km)です」とクリスチャン氏はTechCrunchに語ってくれた。「当社独自の技術により、太陽光発電だけで週平均112(約70マイル)走行できます。これは毎日の通勤の大半をカバーしているので、それほど頻繁に充電する必要がありません。同じサイズのバッテリーを搭載しながらも太陽光を統合していない他の電気自動車と比べて、航続距離は4倍になります。だからこそ、この技術はEVを大衆化する大きなポテンシャルを秘めていると考えています」。

同社によると、アルミニウム製フレームは248個以上のセルを統合したソーラーパネルで覆われており、車には双方向充電機能が搭載されている。これにより、消費者はバッテリーに蓄えられたエネルギーを使って、壁のボックスを介して自宅や他の電子機器に電力を供給できるようになる。この機能は、相乗りやカーシェアリングと併せて、デジタルキーとしても機能するSonoアプリによって実現される予定だ。

このクルマの予約注文のほとんどは、発売が予定されている欧州からのものだ。受注の90%はドイツまたは「ドイツ語圏」からで、残りの10%は製造拠点となるオランダ、スペイン、フランス、イタリア、スウェーデンなどからの受注だ。Sonoは旧Saabの工場で生産するため、National Electric Vehicle Sweden(ナショナル・エレクトリック・ビークル・スウェーデン、NEVS)と提携した。クリスチャン氏の話では、この工場は年間4万3000台の生産能力を有し、7年間で約26万台が生産される予定になっている。

「ワンベース」車両プラットフォーム

他の多くの自動車メーカー(GM、Arrival)と同様、Sonoも「ワンベース」の車両プラットフォームを開発中で、その上に将来のモデルを構築したいと考えている。Sionを皮切りに、同社はクロスオーバー乗用車やラストワンマイル配送用の貨物バンの製造も検討している。

「パワートレイン、シャーシ、サーマルユニット、一部の電子機器などのモジュラーシステムをSionで使用予定」とSonoは米証券取引委員会(SEC)への提出書類に記載している。「これらのモジュラーシステムは、改造なしに、または軽微な改造のみで他の車種にも使用することができる」。

太陽光技術の統合とライセンス

Sonoの太陽光技術は、他の車両への統合と、バス、トラック、ラストマイル車両などのさまざまな車両アーキテクチャのライセンス供与の両方を可能にするように設計されている。同社によると、すでに試作サンプルを顧客に発送しており、戦略的ユースケースの検証に向けて10件を上回る予備的合意書や商事契約書を締結済みだという。

「特に輸送および物流業界は、総所有コストに非常に重点を置いており、太陽光発電の統合でランニングコストを大幅に削減できる」とSECへの提出書類には書かれている。「当社の専有技術を保護するために、いくつかの特許を取得している。さらに、これらの特許、多数の異なるポリマー材料のテスト、そしてパワーエレクトロニクス、特にMCUなどの完全な太陽電池集積化用の複数の関連コンポーネントの使用により、関連する競合他社であると考えられる企業に先駆けて、最大4年間の高度な開発を進めている」。

このMCUとはSonoの「maximum power point tracker central unit(最大電力ポイント追跡中央ユニット」のことで、同社によると、太陽電池がエクステリアのさまざまな場所に設置されていることに起因する不均一な日光暴露の問題を解決する。

Sonoはまた、2030年に販売される車両の半数以上がソーラー改良に適しており、そのうちの3分の1がソーラー統合に適していると考えている。近年、太陽光発電の価格が低下し、太陽電池の効率が向上しており、EVの航続距離にインパクトを与える可能性がある。

「また、電気自動車の販売台数が急増していること、そして充電ステーションの伸びが比較的鈍化していることが、電気自動車の大規模導入のボトルネックになっている」と同社は提出書類に書いている。「今後数年のうちにも、個人が充電できないような場所に住んでいる人たちは、適切な充電オプションを見つけられるかどうかが不透明であることから、電気自動車を購入することに消極的になると私たちは考えている」。

Sono Motorsは納品できるだろうか?

生産をNEVSにアウトソーシングすることは、車を効率的かつスケーラブルに生産するためのSonoの戦略における、同社が称する「重要な差別化要因」の1つである。差別化には次のようなものが含まれている。他の企業はB2C販売のみであるが(同社は)従来型の店舗を排除している、アルミ製のスペースフレームを採用しているためスチールプレス加工が不要、ソーラーパネルであるため塗装作業が不要。しかし、NEVSは頼りにするには慎重を要する。この会社は中国企業のEvergrande(恒大集団)が所有しているが、同社は880億ドル(約10兆円)の負債を抱えており、世界的な金融危機の脅威にさらされている

「NEVSは2019年から当社の生産パートナーを務め、それ以来緊密な交流を続けており、現在もその状態が続いています」とクリスチャン氏。「Sionの生産は現在のところリストラの影響を受けていません。2022年のプレシリーズ生産と2023年前半に予定されているSionシリーズ生産の設備準備は計画通りに進んでいます」。

Sono Motorsは念のため、いくつかのバックアップ計画を立てている。プランAではNEVSでSionの製造を継続する予定だが、他の欧州の委託製造業者のキャパシティを利用するなど、代替シナリオと選択肢を模索しているとクリスチャン氏は話す。

それでも、NEVSは新しいオーナーを探しており、最終的にはSonoにとっては問題ないかもしれない。しかしこのスタートアップは生産を遅らせる余裕はないだろう。2018年、Sonoは2019年までに顧客に出荷する予定だった予約注文が7000件あったが、これらの注文は2021年まで延期された。Sonoがすぐに納品とスケーリングを開始しなければ、単なる評判の問題以上の問題に直面することになる。

予約注文1件当たり3000ドルで、Sonoは約4800万ドル(約55億円)を銀行に保有している。しかし、それだけではSionを生産することはできず、Sonoはすでに現金獲得を切望している。SECに提出された書類によると、同社の上半期の損失は約2900万ドル(約33億円)で、純損失は累積赤字1億2300万ドル(約142億円)となった。同社は「少なくとも当社がSionの資材輸送を開始し、当社のソーラー技術の収益化を含む事業規模を大幅に拡大するまでは、予測可能な将来においても引き続き損失を発生させ、外部からの資金調達に依存することになる」と述べている。

幸いなことに、今回のIPOは同社にとって、Sionを製品化するための良い緩衝材となった。同社は上場により1億5000万ドル(約173億円)を調達した。この資金は、一連のコンポーネントから作られる次のプロトタイプ世代に焦点を当てたSionの開発にも使われる予定だ。

画像クレジット:Sono Motors

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

テスラ、太陽電池パネルの欠陥疑惑で米証券取引委員会が調査

米国証券取引委員会(SEC)は、Tesla(テスラ)が太陽電池パネルシステムに火災リスクがあることを株主に開示していなかったという内部告発者の疑惑を受け、同社に対する調査を開始した。

Reuters(ロイター)の報道によると、この告発はテスラの元従業員であるSteven Henkes(スティーブン・ヘンクス)氏によるもので、同氏は2019年に米国証券取引委員会に告発状を提出している。この調査が明らかになったのは、ヘンクス氏が当初の内部告発を申し立てた結果について、情報公開法に基づく要求を委員会に提出したためだ。

SECはヘンクス氏に何の記録も提供していないものの、9月24日付けの書簡で「あなたが記録を求めている調査はまだ有効であり、進行中である」ことを認めた。SECはTechCrunchの問い合わせに対し「調査の可能性の有無についてはコメントしない」と述べている。

ヘンクス氏は告発状の中で、テスラと同社が2016年に買収した子会社のSolarCity(ソーラーシティ)が、火災の原因となり得る欠陥が見つかった電気コネクタのことについて、顧客に知らせていなかったと主張している。

LinkedInのプロフィールによると、ヘンクス氏は約4年半にわたってテスラに勤務した後、2020年8月にテスラを解雇されている。解雇される前、同氏は現場の品質管理者だった。また、ヘンクス氏は以前、Toyota North America(北米トヨタ)で品質開発および計画を担当するマネージャーとして働いていたことがある。

ヘンクス氏はその後、テスラを不当解雇で訴え、解雇は安全上の懸念を提起したことへの報復だと主張した。訴状によると、ヘンクス氏はSECに懸念を告発する前に、テスラに火災の危険性を通知していたという。

テスラのソーラーパネルで安全性に関する問題が明るみに出たのは、今回が初めてではない。2019年には、Walmart(ウォルマート)の7つの店舗に設置された屋上のソーラーパネルシステムから火災が発生したとして、契約違反と重過失の疑いでテスラはウォルマートから訴えられた。それから3カ月後に両社は和解に達し、ウォルマートは訴訟を取り下げた。

関連記事:ウォルマートがソーラーパネル火災でテスラと和解

また、Business Insider(ビジネス・インサイダー)は、テスラがコードネーム「Project Titan(プロジェクト・タイタン)」と呼ばれる大規模なプロジェクトを実施し、欠陥のあるソーラーパネルのコネクターを交換していたことを暴露した。

テスラはまた、別の連邦規制機関からの安全性に関する調査にも直面している。米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は、テスラの先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」が作動していた際に発生した事故について調査を行っているところだ。

画像クレジット:Tesla

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ポルシェがカーボンニュートラルな家庭のためのワンストップショップを目指す独スタートアップに出資

Porsche(ポルシェ)のベンチャー部門は、エネルギー貯蔵、電気自動車の充電インフラ、太陽光発電など、カーボンニュートラルな家庭を実現するために家庭に必要なものをすべて提供することを目指しているドイツのスタートアップ1Komma5(ワンコンマファイブ)に少数株主として出資した。

投資額は公表されていないが、Porsche Venturesは過去2年間に、イスラエルのセンシング技術のスタートアップTriEye電動マイクロモビリティのオンラインディーラーRidePandaバーチャルセンシングのスタートアップTactile Mobilityなどに出資してきた。

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今回の投資は、Porsche Venturesの典型的なモビリティ技術に関するものとは少し異なる。

Porsche Ventures Europe and Israelの責任者であるPatrick Huke(パトリック・ヒューケ)氏は「今回の投資で、スマートシティとサステナビリティの分野における我々の野心を強調したいと思っています」とTechCrunchに語った。

ドイツ・ハンブルグ拠点のこのスタートアップは、CFOを務めるMicha Grueber(ミーヒャ・グルーベル)氏、そしてTeslaとエネルギー貯蔵システム会社Sonnenで働いた経験を持つPhilipp Schröder(フィリップ・シュローダー)氏によって設立された。

パリ協定の目標である「気温上昇を1.5度以内に抑える」ことにちなんで名付けられた1Komma5は、ワンストップショップという目標に向けて興味深い方法をとっている。

シュローダー氏は最近のインタビューで「今日、どの企業も太陽光発電やエネルギー貯蔵などのコンポーネントの販売に集中しています。その一方で、ヨーロッパでは、これらの分散型資産をまとめることに注力している企業はありません。これでは問題が発生するのは必至です」と話した。

「分散型エネルギーの世界では、各家庭にヒートポンプや充電ポイント、蓄電システムがあっても、それらがグリッドレベルで(あるいは相互に)通信しなければ問題が発生します」と同氏は話す。

1Komma5は、買収だけでなくソフトウェアを通じてすべてを統合することを目指している。具体的には、1Komma5はドイツ国内で、太陽光、ヒートポンプ、エネルギー貯蔵などの再生可能エネルギーに特化した大手電気設備会社の買収を目指しており、最終的にはオーストリアやスイスなどの他の国にも拡大する予だ。1Komma5は、これらの企業に対して、管理業務や顧客関係管理を行うための法人向けソフトウェアや、充電、太陽光、エネルギー貯蔵を結びつけるエネルギー管理ソフトウェアを提供する。

1Komma5のビジネスが興味深いのは、ソーラーやエネルギーストレージなどのコンポーネントを、家庭レベルとグリッドレベルで相互に接続する計画があるからだとシュローダー氏は話す。

1Komma5は、これまでに現金および株式による5件の買収を行っている。

この若いスタートアップは、今後2年間で1億ユーロ(約127億円)の現金と株式を使って、再生可能エネルギーに特化した設置会社をさらに買収するという壮大な野望を抱いている。ターゲットとしているのは、500万〜2000万ユーロ(約6億〜25億円)の売上と、熟練した労働力を持つ設置会社で、単に他の業者に委託しているような販売会社ではない。

Porscheからの資金は、1Komma5の事業拡大のために使用される。その計画には、プレミアムなAppleデザインのような雰囲気の小売店舗を開設し、潜在的な顧客がカーボンニュートラルな住宅に不可欠な構成要素について学べるようにすることが含まれる。このような店舗では、例えば、家庭用充電器、エネルギー貯蔵、太陽光発電などの隣にPorscheのTaycanが展示されるかもしれない。

最初のショールームは、ハンブルクのビネナルスターとリンゲン・アン・デア・エムスに計画されており、2022年第1四半期にオープンする予定だ。

Porscheは、1Komma5の製品を自社の顧客層に提供することをすぐには考えていない。しかし、ヒューケ氏が指摘したように、Porsche Venturesは戦略的な投資を行っており、中長期的にはさまざまな可能性を検討していくことになる。

画像クレジット:Porsche

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Energy Domeは太陽エネルギーの貯蔵に二酸化炭素を利用する

長時間にわたるエネルギー貯蔵は厄介だ。だが多くのバッテリー技術は「EVをさらに数百マイル走らせるために、バッテリーをどれだけ速く充電できるか」に焦点を当ててきた。急速充電は、月が夜空をゆっくりと散歩している12時間に使う電力を、昼の12時間で太陽から得ようとすることとは根本的に異なる問題だ。

米国時間11月30日、Energy Dome(エナジードーム)は、拠点を置くイタリアのサルデーニャ島での実証プロジェクトで、世界初の商用CO2(二酸化炭素)バッテリーを設置するために、1100万ドル(約12億5000万円)のシリーズA資金調達を行ったことを発表した。

同社によれば、CO2バッテリーの最適な充電 / 放電サイクルは4〜24時間であり、日次および日中のサイクルに最適だという。また、これは現在急成長している市場セグメントであり、既存のバッテリー技術が十分にカバーできていなことも指摘している。具体的には、太陽光発電の余力がある日中にCO2バッテリーを充電しておいて、電力需要が太陽光の供給量を上回る夕方や夜間のピーク時に放電することを想定している。なぜなら──まあ当たり前過ぎてわざわざ書くのもはばかられるが──夜は太陽が出ていないからなのだ。

同社は、市販のコンポーネントを使用して構築されているそのCO2バッテリーが、75〜80%の充放電効率を達成していると主張している。しかし、おそらくもっと興味深いのは、バッテリーの動作寿命がおそそ25年程度になると予測されていることだ。他の電力貯蔵ソリューションの事情をよく知っている人なら、ほとんどのソリューションの動作性能が、10年を超える頃には大幅に低下し始めることに気がついているだろう。同社は、製品のライフサイクルコスト全体を考慮した場合、エネルギーを貯蔵するコストが、同じサイズのリチウムイオン電池で貯蔵するコストの約半分になると予測している。

この技術は非常に優れており、同社はCO2をガスから液体に、そしてまたガスに戻す閉ループサイクルで利用する。ソリューションの一部となる、ガス状のCO2を充填した膨張可能なガス容器部品にちなんで、会社は「ドーム」と命名されている。

充電時には、システムは電力網から電力を引き込む。この電力を用いてドームからCO2を引き出して圧縮するコンプレッサーを駆動し、熱を発生させるのだ。この熱は蓄熱装置に蓄えられる。次に、CO2は圧力下で液化され、環境と同じ温度で液体CO2容器に保管され、充電側サイクルが完了する。放電時には、このサイクルが逆になる。液体のCO2を気化させ、蓄熱装置から熱を回収し、高温のCO2をタービンへ送り込んで発電機を駆動する。電気はグリッドに戻され、CO2は大気に放出されることなくドームを再膨張させ、次の充電サイクルに使われる準備が整えられる。このシステムの貯蔵容量は最大200MWhだ。

今回のラウンドはディープテックVCの360 Capitalが主導し、他の多くの投資家が投資ラウンドに参加した。その中には、インパクト投資アプローチを採用する大手銀行バークレイズの一部門であるBarclays’ Sustainable Impact Capital プログラム、ジュネーブを拠点とするマルチファミリーオフィスのNovum Capital Partners、そしてRMIとNew EnergyNexusによって設立されたグローバルな気候テクノロジースタートアップアクセラレーターのThird Derivativeが含まれている。

画像クレジット:Energy Dome

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

LAオートショー2021の高揚感としらけムード

LAオートショーは、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック下で初めて戻ってきた室内自動車ショーだ。ニュースに乏しく、いつも以上にベーパーウェアが多い中、それでも、いくつかのクルマやテクノロジーや企業が、イベントに先立って行われた2日間のプレスデーで目立っていた。

以下に、2021年のロサンゼルスで良くも悪くもTechCrunchの目に止まったクルマとテーマを紹介する。

グリーン&クリーンへと変わるストーリー

画像クレジット:Kirsten Korosec

米国時間11月17日正午前に行われた少数の主要なニュースカンファレンスでは、持続可能性と気候変動が中心テーマだった。そこには企業の偽善的環境配慮と実際の行動が入り混じっていた。

Hyundai(ヒョンデ)とKia(キア)は、環境の認識がいかに大切かを訴える短編動画を流したあと、全電動コンセプトカーとプラグインハイブリッド車を披露した。Fisker(フィスカー)は海洋保護について話した。長年グリーン化に取り組み、国立公園から動物保護まであらゆる活動の支援に多額の資金を投入してきたSubaru(スバル)も、環境保護の支援を継続していくことを強調した。

これは過去においても珍しくなかったことだが、自動車業界全体が二酸化炭素排出量低下に重い腰を上げ、持続可能な生産と調達に革新を起こし、有効な寿命を終えた部品や車両リサイクルと再利用の方法を探求していることは銘記しておくべきだろう。人類の気候変動への影響を減せる時間はあと10年しかないという恐怖の警告は、ショーで行われた複数のプレス会見で言及されていた。

ハリウッドモード

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年特に目立った発表の1つが、Fisker Ocean(フィスカー・オーシャン)の量産間近なバージョンだ。全電動SUVが備える17.1インチ巨大スクリーンは、180度回転可能で、同社が「ハリウッドモード」と呼ぶ横位置のランドスケープモードから縦位置のポートレートモードへ回転できる。

横位置モードでは、Oceanが駐車あるいは充電中に、ゲームをプレイしたりビデオを見たりできる。Fiskerは、このスクリーン回転技術の特許を取得していると述べた。

画像クレジット:Kirsten Korosec

電化、電化、電化

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショー全体のテーマは、(驚くに当たらないが)あらゆるものの電化だ。展示場にはICE(内燃エンジン)駆動の車両が数多く見られたものの、バッテリー電力の世界にいくつもビッグニュースがやってきた。

Nissan(日産)の全電動SUV、Ariya(アリヤ)、Toyota(トヨタ)bz4xと双子車Subaru Solterra(ソルテラ)から、TechCrunchのお気に入りである全電動Porsche(ポルシェ)Sport Turismo(スポーツ・ツーリズモ)セダンの最新モデルとマジックルーフ付きワゴンまで話題は尽きない。

健康被害からあなたを守るテクノロジー

画像クレジット:Kirsten Korosec

現行パンデミックが3年目を迎える中、自動車メーカーは利用者を病気から守る方法を考え始めている。HyundaiがLAオートショーで披露した SUVコンセプトカーSEVEN は、垂直空気循環、抗菌性の銅、紫外線殺菌装置などの機能を提供している。

電動化レストモッドがやってくる

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のLAオートショーで目についたトレンドの1つが、何台かの古い車体に電動パワートレインを積んだレストモッド(レジストレーション&モディフィケーション)モデルだ。内燃エンジンのような直感的体験を与えることはないかもしれないが、クラシックカーの新しい楽しみ方を提供するものだ。

自動車製造のスタートアップ、Cobera(コベラ)が展示していたC300は、懐かしいShelby Cobraとよく似た外観だ。しかし、ボンネットの中にはV8エンジンに代わってC300を時速0〜62マイル(0〜約99.8km)まで2.7秒で加速すると同社がいう全電動パワートレインが入っている。Cobera C300は、ハンガリーの乗用車とキャンピングカーの製造に特化した会社Composite-Projects(コンポジット・プロジェクト)が設計・製造した。車両のスイッチを入れると、合成されたサウンドが出て、昔のV8に少しだけ似た音が聞こえる。

Electra Meccanica(エレクトラ・メカニカ)は、LAオートショーで三輪自動車Solo(ソロ)(詳しくは下で解説)も発表している会社だが、もう1台、Porsche 356 Speedsterに似た電動車、eRoadsterを披露した。エアコンディショニング、パワーウィンドウ&ロック、最新インフォテイメントシステムなどを備える。

画像クレジット:Kirsten Korosec

新たなパワートレインを搭載したレストモッドを披露したのは比較的無名で小さなメーカーだけではない。Ford(フォード)は11月初旬のSEMAショーに登場した電動化したF-100を持ちこんだ。1978 F-100 Ford Eluminator(フォード・エルミネーター)はFordの電動モーター、E-crate(イークレート)を備えたレストモッド機能で、ユーザーはこれを購入して自分の車両に取りつけられる。

F-100は前輪と後輪に1台ずつモーターを備え、最高出力480馬力、最大トルク634lb-ft(860Nm)を誇る。室内には新型インフォテイメントシステムのスクリーンとデジタル・ダッシュボードがある。

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三輪車

画像クレジット:Kirsten Korosec

例年、会場には少なくとも数台の三輪自動車が登場するが、2021年はいつもより多かった。Biliti Electric(ビリティ・エレクトリック)が持ってきた電動&ソーラー駆動トゥクトゥクは、Amazon(アマゾン)やWalmart(ウォルマート)が世界の人口密集都市のラストワンマイル配達に使える、と同社は言っている。

同社のGMW Taskmanは、すでにヨーロッパ、アジアの各所で使われていて、これまでに1200万個の荷物を配達し、延べ2000万マイル(3200万km)を走ったとファンダーが言っていた。

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Electra Meccanica のもう1台、Soloは同社が2016年のこのショーでも披露したsharyou

で、プレスデーにテスト乗車を提供していた。同社によるとSoloは1回の充電で最長100マイル(約161 km)走行可能で、最大出力82馬力、最大トルク140lb-ft(約190N-m)、最高速度は80mph(約128 km/h)。定員1名で荷物スペースを備え、近距離の移動や都市圏での通勤のために作られている。Soloの価格は1万8500ドル(約211万円)で、アリゾナ州メサで製造されている。

Sondors(ソンダーズ)の三輪電気自動車は、3人乗りで航行可能距離は約100マイル(約160km)と同社はいう。このクルマは、100万ドル(約1億1400万円)以上を集めて成功したクラウドファンディングの後に開発されたもので、33 kWhのバッテリーパックを備え、最大出力170馬力、最大トルク323 lb-ft(約438N-m)を発揮する。

Imperium (インペリウム)も三輪電気自動車、Sagitta(サギッタ)を披露した。ショーに登場した三輪乗用車の中では最大で、4人まで乗ることができるスペースをもつ。Sagittaは車両のスペックを発表していないが、2022年中頃から予約を開始すると同社は述べた。

バービー

画像クレジット:Abigail Bassett

ことしのLAオートはには、バービーまで登場した。Mattel(マテル)はBarbie Exra(バービー・エクストラ)カーの実物大バージョンを公開した。2021年式Fiat(フィアット)500のシャシーに載せたファイバーグラスのボディーはキラキラの白い塗装で飾られ、ウィング式ドアと後部にはペット用プールもある。

ソーラーパワー

画像クレジット:Kirsten Korosec

2021年のショーには、興味深いソーラー充電オプションを備えたクルマがいくつかあった。中国のエネルギー会社、SPI参加のPhoenix Motor Inc.(フェニックス・モーター)が発表したピックアップトラック、EF1-Tの収納可能なソーラーピックアップベッカバーは、最大25〜35マイル(約40〜56km)の走行距離を追加できると同社はいう。EF1-TおよびバンバージョンのEF1-Vは、いずれも巨大な車両で、明らかにまだプロトタイプであり、機能や利用形態について顧客の意見を聞いているところだと会社は述べた。

大きな虫のような外観のEF1-Tは、1回の充電で380〜450マイル(約612〜724 km)走行可能で、2025年の発売に向けて予約を受け付けているという。ずいぶんと遠い話だ。

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Nob Takahashi / facebook

家庭の電力利用をよりスマートにすることを使命とするSpan、新しいEV充電器Span Driveをリリース

エアコンや洗濯機、乾燥機などの電化製品が家庭で主役を務めた時代は終わった。最近は、EV(電気自動車)充電器、太陽光発電パネル、蓄電ソリューションなどにより、家庭の電力利用状況はますます複雑度を増している。Spanは、そうした状況にスマートさを組み込もうとしている会社の1つだ。同社がこのたびリリースしたSpan Driveは、さまざまなルールに基づいてEVをさらにパワフルな存在にするEV充電器だ。

米国の家庭はますます電化が進み、とりわけ最新の電化製品は古い設計の家では想定されていないような大量の電力を消費する。エアコン、ヒーター、ヒートポンプ、給湯器、洗濯機、乾燥機、電気コンロ、電気オーブン、EV充電器、蓄電装置などは、多大な電力を消費する可能性がある。それに加えて、ソーラーパネルを設置する家庭が増えたため、大量の電力が家庭に入ってくるようになった。こうした状況の中、米国家庭の電力状況は複雑度を増し、電力を大量消費するようになっているが、実際には、こうした電化製品をすべて同時に使用することはまずない。これは、最近の電子設計が直面している難題である。つまり、家庭に送電網から送電されてくる電力が最大100Aで、家庭にある電化製品の消費電力の合計が180Aであっても、実際にはそれらの電化製品をすべて同時に使用することはおそらくない。問題は、一時的に、すべての電化製品の電源を同時にオンにした場合、少なくともブレーカーが上がるまでは、電力会社にとって厳しい状況になるという点だ。

Spanはこうした問題を解消してくれる。Spanは5月に、家庭用スマートブレーカーパネルをリリースし、その数カ月前に2000万ドル(約22億8000万円)の資金調達ラウンドを発表した。同社はこのたび、500ドル(約5万7000円)のEV充電器Span Driveをリリースし、それに合わせて、3500ドル(約40万円)のブレーカーパネルは、今家庭で最大の電力を消費する装置である電気自動車向けにスマート性能が強化された。

「当社は、家庭でアンペアを100から200、200から400に上げる際のコストや時間をかけることなく、電化製品を追加し続けることができるようにしたいと考えています」とSpanのCEO Arch Rao(アーチ・ラオ)氏はいう。

「ブレーカーパネルをアップグレードするというより、家庭内の電化製品の使われ方を基本的に考え直して、電源管理を改善し、クリーンエネルギーと電化製品の統合を強化したいと考えています。従来のブレーカーパネルは安全装置としては大変優れていました。家庭に入ってきた電気はこのパネルを経由して家庭内の各装置と回路に分配されます。回路の動作状況が危険なレベルに達すると、回路は遮断されます。これがブレーカーの仕事であり、その仕組みは約100年間進歩していません。つまり、受動的な安全装置として機能しているのです」とラオ氏は説明する。「ブレーカーパネルが設置されている場所こそ、まさしくイノベーションが必要な場所です。ブレーカーパネルはグリッドと家庭内のすべての電化製品の交差点に位置しています。電化製品だけではなく、ソーラーシステム、電気自動車、蓄電システムなども、ブレーカーパネルに接続されています。当社が開発した新しいパネルは、グリッドと安全に遮断または再接続するための装置であるという点で、単なる安全装置としての機能よりもはるかに多くの仕事をします」。

グリッドとの接続とグリッドからの遮断は、グリッドに依存して生活している人たちにとって重要な点だ。家庭を、少なくとも電気的には、島に変えることができるというのが、将来的な観点から見たときのSpanのシステムの興味深い点の1つだ。また、Spanのパネルを使用すれば、停電時に従来よりも長く自力で電力を供給できる。蓄電ソリューションが設置されている家庭では、このパネルはよりスマートに動作する。停電を検出すると、不要な電気製品の電源が落とされる。例えばサーモスタットをオフにして、食品が腐らないように冷蔵庫や冷凍庫をできるだけ長く稼働させる。

Span Driveはしゃれたデザインの低価格EV充電器で、Span製パネルの機能を拡張する(画像クレジット:Span)

このシステムはアプリで制御できる。このアプリで家の電気の使い方に関する「ルール」を設定できる。例えば太陽光発電でまかなえるときだけエアコンを稼働するよう選択できる。48Aを電気自動車に接続して高速充電するよう選択する場合は、他の大量に電力を消費する電化製品の電源を落として、総電力消費量を100A以下に抑えるようにする。逆のケースもある。つまり、できるだけ高アンペアで高速充電しているときに、乾燥機、エアコンが同時に稼働し、電気オーブンと電気コンロで料理を始めると、Span Driveは充電に使用する電流を下げ、子どもたちが食事を済ませ、衣類がすっかり乾いてみんなでハグできるようになったら元に戻す。

あるいは、電気自動車の充電を太陽光発電でのみまかなうようSpan Driveをプログラムすることもできる。Tesla(テスラ)のオーナーは信号待ちから静かに発信させてフェラーリを抜き去りたいといつも考えているようだが、Span Driveのこの機能でそうしたオーナーの自己満足度は何倍にもなるに違いない。

もちろん、Spanのパネル自体から回路をオン / オフすることもできるが、このパネルは各回路に分配されている電力量を把握しているため、家電製品が増えてもより細かい制御が可能になる。これにはおそらくAmazon(アマゾン)のアイデアも一部入っているのだろう。アマゾンはSpanの最近の投資ラウンドに参加し、Alexaとの互換性を実現することも発表した。

ある意味、Spanは、従来家庭内でスマートさを欠いていた部分に多くのスマートな機能を組み込んだように感じる。電力はそのままではローテクだが、電化製品のスマート性が向上し、IoTの波が日常的に使う多くの電化製品にまで押し寄せる中、Spanは家庭全体に、マイクログリッドを構築しているように思われる。それは、孤立したゾーンであり、まだ誰も使い方を知らない強力な機能を備えている。SpanのCEOもその点を認識しており、同社は家庭の未来の争奪戦の真っ只中にいることに同意する。

「ブレーカーパネルには、他のどんな製品にもない永続性があります。今後30年は、現在と変わらず壁に設置されたままでしょう。もちろん、将来を見据えた設計についても考えています。現在当社が提供している機能は、競合他社が提供するどのような機能とも一線を画すものです。未来に重点を置くことで、現行のさまざまなソリューションを基本的な部分で凌駕していると思います」とラオ氏は話す。

画像クレジット:Span

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

ウガンダで電動バイクの普及を目指す仏Zemboが豊田通商などから約3.8億円を獲得

豊田通商とCFAOグループのコーポレートベンチャーキャピタル子会社であるMobility 54 Investment SASと、DOB Equity、InfraCo Africaは、電動バイクのスタートアップZembo(ゼンボ)の事業成長を支援すべく、340万ドル(約3億8000万円)を出資した。

Zemboはウガンダで事業を展開するフランスのスタートアップで、2018年に設立された。リース・トゥー・オウン(購入選択権付き)プログラムを通じて電動バイクを販売している。また、同国でソーラー充電ステーションとバッテリー交換ステーションのネットワークを運営している。

Mobility 54は、このスタートアップがアフリカ全土で事業を拡大するために「グループ(トヨタ)の自動車事業の大陸全体での存在感を活用して支援する」と話す。加えて、Mobility 54はZemboが最も成長を期待しているバッテリーとソーラーパネルの事業を中心に、同社と新たなパートナーシップの構築を目指す。

「Mobility 54のZemboへの投資は、モビリティ産業の電動化によりアフリカのカーボンニュートラルを加速させることを目的としています。豊田通商とCFAOグループは、アフリカでの自動車販売実績を活かし、Zemboのアフリカでの事業展開に貢献します」とMobility 54は声明文で述べた。

今回調達した資金は、オートバイの台数を約2000台増やし、ウガンダの首都カンパラに60カ所以上の充電・バッテリー交換ステーションを設置するために使用される。Zemboのバイクは、1回の充電で37マイル(約60キロメートル)走行する。

Zemboの共同創業者Étienne Saint-Sernin(エチエンヌ・サン・セルニン)氏は「InfraCo Africa、DOB Equity、Mobility 54といったインパクト重視の組織と提携して、電動ボダ・ボダ(オートバイ)と充電ステーションの開発を継続できることをうれしく思います」と述べた。

「ウガンダのボダボダライダーの収入向上と大気汚染の抑制を両立させるというZemboのミッションは支援者にも共有されており、今回のパートナーシップの原動力となっています。今後も顧客にサービスを提供し、ウガンダで持続可能なモビリティを実現できることを楽しみにしています」と話した。

Zemboは、ウガンダで電動バイクを組み立て、外部の金融機関と協力して、レント・トゥー・オウンプランで販売している。同社のバッテリー・アズ・ア・サービス・モデルでは、ライダーは空になったバッテリーをフル充電されたバッテリーと有料で交換することができる。

InfraCo AfricaのCEO、Gilles Vaes(ジル・ヴェース)氏は次のように話した。「……Zemboは、電動二輪車を市場に提供してきたすばらしい実績を持っています。DOB EquityおよびMobility 54と共同で事業の拡大・発展に取り組むことで、カンパラの都市大気汚染の抑制、雇用の創出、経済発展を促進するZemboの能力を拡大することができます。このプロジェクトは、大気の質を改善し、今世紀半ばまでに二酸化炭素排出量を正味ゼロにするという世界的な取り組みにも合致するものです」。

InfraCo Africaは、6カ国の政府と国際金融公社(IFC)が出資するPrivate Infrastructure Development Group(PIDG)の一員として、インフラプロジェクトに資金と専門知識を提供しており、DOB Equityは東アフリカに関心を持つオランダの一族が出資する投資家だ。

バイクタクシーはアフリカ全土で人気があり、カンパラなどの大都市でも広く利用されている。しかし、騒音や大気汚染の大きな原因とみなされていて、こうした問題は電動化で解決できる。

Zembo Stormバイクは、よりクリーンな移動手段として電動モビリティソリューションを提供するためにアフリカ市場で台頭してきた数多くの企業の1社だ。

他のプレイヤーとしては、ケニアのOpibusがあり、2022年にはオートバイの大量生産を開始する予定だ。同社はTechCrunchとの先のインタビューで、電動移動手段の競争上の優位性として、化石燃料を使う移動手段に比べて最大60%運用コストを抑制できる点を挙げている。

また、電動化は世界が取り組んでいる気候変動問題の原因となっている二酸化炭素の排出量を削減することも期待されている。

しかし、アフリカにおける電動モビリティの普及は始まったばかりであり、チャンスはまだたっぷりある。特にインフラの整備が進めば、その可能性は大きく広がる。このギャップを埋めるために、ZemboやOpibusのような企業は独自のインフラを構築している。

画像クレジット:Zembo

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(文:Annie Njanja、翻訳:Nariko Mizoguchi

より安価で優れた太陽電池パネルを開発するRegher Solar、激増する宇宙産業からの需要に応えられるか?

質問自体には簡単に答えられる。今後10年間で打ち上げられる人工衛星は何機か?人工衛星に必要な太陽電池パネルの枚数は?現状人工衛星に使える太陽電池パネルは何枚あるのか?その答えは「たくさん」「ものすごくたくさん」「まったく足りない」である。Regher Solar(レガーソーラー)は、製造コストを90%削減しつつ、桁違いに多くの人工衛星用太陽電池パネルを製造して名を成そうとしている。

「控えめな目標」とはいえないが、幸い同社は科学的にも市場的にも有利な状況にあり、追い風に乗っている。問題は、コストと性能のバランスを取りながら、なるべく簡単にこれを実現することである。もちろん、簡単に答えが出る問題であれば、すでに誰かがそれをやっているはずだ。

宇宙で使用される太陽電池と地上の太陽電池は大きく異なる。地上では大きさや質量の制約があまりないので、より大きく、より重く、そして安価な太陽電池を作ることができる。効率が悪くても問題はない。一方、宇宙で使用する太陽電池は、効率が良く、非常に軽く、放射線や温度変化などのさまざまな危険に耐えるものでなければならない。小さな規模で高価な材料を使用して製造するトップクラスの製品で、地上用の太陽電池と比較して5~10倍のコストがかかる。

Regher Solarが開発した太陽電池パネルは、宇宙用としての最高品質ではないものの「まあまあ良い」レベルは満たしている。しかも、コストは(高品質の製品の)数分の一で、一般的なプロセスで大規模に製造することができる。20億円の静止衛星に最高品質の太陽電池パネルを利用できるのは、全体のコスト(200億円)に占める太陽電池のコストの割合が少ないからである。しかし、寿命の短い小型衛星を1万機展開する場合はどうだろうか。総コストに占める太陽電池パネルのコストの割合を抑えるためなら、性能が20%低下しても許容できるはずだ。

Regher Solarの共同設立者かつCEOのStanislau Herasimenka(スタニスラウ・ヘラシメンカ)氏は、同社の製品は簡単に開発できたものではなく、新しい宇宙経済にとって何が重要かを理解し、繰り返し改良を重ねてきたものだと説明する。

「(宇宙用太陽電池パネルの)技術は、小規模かつ高コストを前提に進化してきました」「宇宙用のパネルは、ゲルマニウムやガリウムヒ素などの非常に高価な基板上で、高額な加工が数多く行われます。そして宇宙での使用に耐える接合、高価なガラスや炭素繊維、アルミニウムの基盤、手作業による組み立て……最高の性能と低劣化性は実現されますが、まったく拡張性がありません。10倍の量を生産したいと思っても不可能なのです」。

それでも、今後打ち上げられる衛星の数は確実に2倍、3倍、そして10倍になるだろう。地上用のパネルをそのまま宇宙に持って行くわけにはいかないし(すぐに壊れる)、ガリウムヒ素などの化合物でセル(太陽電池の素子)を製造しているメーカーの在庫ではまったく足りない。そこでRegher Solarが開発したのが、宇宙用、地上用の両方の長所を取り入れた、宇宙用でありながら安価で簡単に製造できるセルである。

20ミクロンのシリコン基板を使用し、柔軟性のあるRegher Solarのシリコン太陽電池パネル(画像クレジット:Regher Solar)

ヘラシメンカ氏は次のように話す。「現在、私たちは研究開発用のパイロットラインを運用して、少量のパネルを製造しています。50kW、つまり宇宙用太陽電池パネルの約5%のサイズです」「私たちはシリコン基板で自動生産可能な製品を設計しました。1年後にはパイロットラインを離れ、現在のパネルの10倍に相当する10メガワットまで規模を拡大できるはずです」。

新しい製品とはいえ、特別な技術や新開発の技術を使用しているわけではないので、ヘラシメンカ氏がいうような増産も可能かもしれない。同氏は、宇宙用レベルの性能を地上用並みの価格で実現するために行った改良をいくつか紹介してくれた。

まず、シリコン基板の厚さを大幅に薄くしたことで、逆説的に放射線の吸収が少なくなり、耐放射線性が向上した。また、添加する不純物を変え、低温で硬化するようにして、ダメージを受けても80℃に加熱するだけで修復できるようにした。コーティング、接合、ボンディングを空間的に安定させた。ベゼルを細くして、太陽光に反応するセルが占める面積を増やした。さらに同社は、(この画像のように)パネルに柔軟性を持たせることで、一般的ではない形状にも対応可能で、物理的な耐久性が向上した製品も計画している。

Regher Solarの「solar blanket(太陽の毛布の意味)」の柔らかさを示す研究室の技術者(画像クレジット:Regher Solar)

どこまで開発を進めるべきかは、衛星コンステレーション(衛星を複数機協調させることで機能するシステム)に属する衛星のコストと計画寿命という動く目標に依存する。意外かもしれないが、Starlink(スターリンク)のようなコンステレーション企業にとっては、衛星の性能が良すぎるのは有害である。何千機もの衛星で構成される衛星コンステレーションでは経済性が問われる。打ち上げから5年後に交換する予定であれば、必要以上に性能を上げたり、コストをかけたりするべきではない。もし、5年後にまだ100%の性能を有しているのであれば、どこかでかなりの費用を節約することができたはずだ。

「コンステレーションの設計者は、指定された軌道で一定期間衛星が機能することを想定して設計しています」とヘラシメンカ氏。「衛星の寿命は2週間でも15年でも不適切です。ほとんどの衛星は徐々に軌道を下げて地球に近づき、5~7年で寿命を終えます。だから、私たちはこの条件を満たすようにパネルを設計したのです。5~7年以上経ってパネルが劣化するとしても、クライアントにとって問題ではありません。つまり、私たちも気にかける必要はないのです」。

Regher Solarはこの新しい市場に挑戦し、2019年にTechstars(テックスターズ)のプログラムに参加。その後、メーカーとの対話を開始し、取引の計画を立てた。さらに、米国国家航空宇宙局(NASA)の中小企業技術革新制度(SBIR)フェーズIと米国国立科学財団(NSF)のSBIRフェーズIIで、総額110万ドル(約1億3000万円)を獲得している。ヘラシメンカ氏によれば、プロトタイプと検証資金を獲得したRegher Solarは、夏の間に3300万ドル(約38億円)分の基本合意書を取り交わし、さらに5000万ドル(約58億円)分の合意に向けて調整中だという。

有望な市場が故に、迅速に行動しないと他の企業が参入してパイを奪われてしまうかもしれない。「たった数年ですべてが変わってしまい、業界がそれに気づいたときには市場のチャンスはなくなっていることすらあるのです」とヘラシメンカ氏はいう。Regher Solarがこの機会を逃したくないのは当然のことだが、彼らは現在、まずは試験的な製造ラインを立ち上げ、次にフルスケールの製造ラインを立ち上げるために多額の投資を必要としている。具体的な内容はまだ明かされていないが、ヘラシメンカ氏によると、機関投資家による500万ドル(約5億8000万円)のシードラウンドが年内に完了する予定で、個人投資家からも90万ドル(約1億円)の投資を受けるという。

既存の航空宇宙企業が関心を示し、NASAやNSFにも(SBIRで)認められたRegher Solarの活躍の場は広がりそうだ。しかし、難しいのは新しいパネルの設計なのか?それとも実際に製造することなのか?それは今後明らかになるだろう。

画像クレジット:Regher Solar

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)