パンデミック下で成長する多種多様なフェムテック企業、従業員への福利厚生としても注目が集まる

女性の健康とウェルネスを支える技術「フェムテック」。McKinsey & Companyによると、2021年のフェムテック領域の資金調達総額は、25億ドル(約2830億円)に到達し、過去最高を記録した。

The dawn of the FemTech revolutio Published by McKinsey & Company(2022/2/14)


女性の健康とウェルネスに特化したVCであるCoyote Venturesと、フェムテック領域の情報配信やスタートアップサポートを行うNPO団体であるFemtech Focusの予測によれば、フェムテック市場は2027年までに1兆1860億ドル(約138兆円)の市場規模にまで成長するという。

そんなフェムテック業界だが、その注目領域も変化している。Crunchbaseによると、過去5年間は妊娠と子育てがVCの資金調達の最大のシェアを占めていたが、2021年に最も投資を集めたのは、プライマリ・ケアや予防医療領域だった。不妊や更年期など、困った時に頼るフェムテックから、すべての女性が常に自分の健康を守るために必要不可欠な技術になりつつあることがわかる。

欧米での盛り上がりを受け、日本でも注目が集まる領域だが、今回は、パンデミック後も続くと予測されるフェムテック業界のトレンドと注目領域について解説する。

新型コロナの影響で広まった手軽にできる自宅検査・治療

パンデミックによって、病院に行きづらくなったことを受け、遠隔医療や自宅検査キットが注目を集めた。これまで当たり前に診察や検査のために病院に行っていた人々が、パンデミックによって自宅でもできるという便利さを経験した。安全に病院に行けるようになっても、人々がこの便利さを捨てるとは考えにくい。実際に、2021年のMcKinsey & Companyの調査によると、調査対象の消費者の約40%が、今後も遠隔医療を利用すると回答しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の遠隔医療利用者の11%から上昇している。

膣内マイクロバイオーム検査キットEvvy

Evvyは、膣内のマイクロバイオームの状態を分析し、健康状態の把握とライフスタイル改善アドバイスなどを提供する。General Catalyst、Box Groupなどから500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

筆者も2021年末実際に試してみた。下記のように、検査キットが送られてくる。採取は簡単で、インストラクションを見ながら3分程度で終わった。

画像クレジット:Evvy

箱には「The female body shouldn’t be a medical mystery(女性の身体は、医療で解明できないミステリーであるべきではない)」と記されており、現状研究段階ではあるものの、マイクロバイオーム分析を通して女性の不調を改善したいという気概が感じられた。

次に、オンラインで質問に回答する。生理サイクル、健康の悩み、感染症歴や今回の検査で知りたいことなどを回答する。10分ほどの割と長い質問票だった。


​​採取したサンプルを送付すると、2週間ほどで結果がメールで送られてくる。結果を解説してくれるマイクロバイオーム専門家とのビデオコールも追加コストなしでリクエストできる。ビデオコールでは、自分の悩みを伝え、結果を見ながら改善方法などを教えてくれた。結果を見てもどのように実生活に活用すれば良いのか、わかりにくかったので、マイクロバイオーム初心者の筆者からするとありがたかった。

ユーザーは、3カ月ごとの定期検査のサブスクリプションモデルと1回のみの検査キット購入が選べる。定期的に検査することで、自分の健康状態を見てみたかったので、筆者はサブスクリプションを選択した。

細菌性腟症などの感染症は、一度なると再発しやすい。実際、一部のユーザーは、膣内感染症の再発を防ぐためのヒントを求めてEvvyにたどり着く。また、早産、不妊の可能性や予防法をマイクロバイオームから知りたいというユーザーもいる。

筆者が最も注目しているのは、同社のビジョンだ。まだ研究段階のマイクロバイオームだが、同社は今後、膣内マイクロバイオームと不妊、子宮頸がん、早産などとの関連を調査し解明するというビジョンを持っている。マイクロバイオームから自分の身体の状態を把握するという未来がくるのかもしれない。

カップルの唾液から遺伝疾患リスクを解明する出生前唾液検査キット

画像クレジット:Orchid ウェブサイトより

Orchidは、パートナー両方の唾液サンプルを送付するだけで60億ものゲノムを解析し、子どもが遺伝性疾患を発症するリスクが高いかどうかを判定する唾液検査キットを提供している。2021年4月、シードラウンドで450万ドル(約5億3000万円)を調達。遺伝子キットを開発、販売する23 and Meの創業者も出資​​している。

対象となる遺伝性疾患は、乳がん・前立腺がん・心臓病・心房細動・脳卒中・1型糖尿病・2型糖尿病・炎症性腸疾患・統合失調症・アルツハイマー病の10種類。唾液を送ると、カップル向け、女性・男性の各パートナー向けの3種類のレポートが送付される。

子どもを作る前に、遺伝リスクを検査するというアプローチをとる同社。心配な結果が出たとしても、遺伝カウンセラーと、リスクを最小限に抑える方法などを相談できる。

2020年にシリーズDラウンドで1億2100万ドル(約143億円)の大型調達を発表したSema4も、出生前検査・遺伝性がん検査を手がける企業だ。同社は、2020年フェムテック領域の中で最大額を調達した企業だった。

テレヘルスユニコーンRoが買収、精子分析・保存キット

画像クレジット:Ro

フェムテックではないが、精子を自宅で採取し、分析結果を送ってくれるサービスを提供するDadiを紹介する。同社は、2022年3月にテレヘルスユニコーンのRoに買収されている。米国の国保健社会福祉省によると、不妊症の約3分の1は男性の不妊症に関連しているため、精液の分析と保存は重要な不妊治療サービスだ。自宅で精子を採取した後、採取キットと保存カプセルの両方が、温度変化や提携ラボへの輸送中の障害などから精子を保護・保存するように設計されている。サンプルの分析が完了すると、精子の数、濃度、運動性の評価を含む個人別の報告書が送付される。また、採取した精子は提携ラボで冷凍保存される。

Roは、コアビジネスである勃起不全治療テレヘルスプラットフォームから、テレヘルス全体へ事業拡大を進めるため、過去12カ月に3社(Workpath, Kit, Modern Fertility)を買収している。

成功の鍵は、丁寧なインストラクションと行動に落とし込める分析結果表示

ここまで自宅検査のスタートアップを解説してきた。筆者自身、自宅検査を複数試して感じたのは、自宅検査ビジネスをグロースさせる上で重要なのは「わかりやすい検査のインストラクション」と「ユーザーが行動に落とし込める分析結果を提示する」という点だ。家庭で正しく検査するためには、動画や簡単なイラストなどで、わかりやすいインストラクションが必要だ。

また、検査を受けて良かったと感じてもらうためには、明日からできる行動の変化を促す分析結果を提示することが重要だろう。自分の状態を把握するだけでは、一度きりの購入で終わってしまう。消費者は「xxのサプリを毎日飲む」「○○の栄養素を避ける」「有酸素運動を30分する」など改善のための方法を知りたいのだ。

この満足感が、安定的な収益を達成するためのサブスク顧客獲得に繋がる。現状、専門カウンセラーとのビデオコールを提供し、テスト結果を解説することでこの部分を補う企業が出てきている。専門家たちは、医学的・生物学的な専門知識がない一般消費者をガイドする役割を担っている。ここでの問題点は、スケールだ。ユーザー数が増えるごとに、専門家の数を増やさなければいけない状況では、スケールは難しい。技術を活用し、ある程度自動化をしながら満足度も担保するようなサービスが、今後伸びていくと考える。

人材獲得戦争時代、さらに重要視される企業の充実した福利厚生

米国では現在、労働者が大量に仕事を辞めている。この現象は、大規模離職を意味する「グレイト・レジグネーション(大退職時代)」と呼ばれ、メディアで頻繁に報道されている。​​Fortuneが2000人以上の米国人労働者を対象に行った調査によると、80%が新しい仕事に就くことを考える際に柔軟なスケジュールが重要であると回答している。また、約70%の労働者がリモートワークの選択肢を重要視している。優秀な人材プールを惹きつけるためには、働きやすい環境を作ることが必須だ。そのため、企業は、福利厚生にこれまで以上に投資している。

パンデミックで完全リモートを経験した労働者たちは、今後も働きやすさを求めている。この流れは、B to B to E(Employee)モデルと呼ばれるかたちで、企業向けに福利厚生としてのソリューションを提供するフェムテック企業にとって追い風となる。

働く親のための福利厚生プラットフォーム​​

画像クレジット:Cleoウェブサイトより

従業員は、Cleoを通して、育休からの復職時に悩みを相談できる専門家や、子どもの健康の専門家、助産師や産後うつ専門家などにアクセスできる。同社は、Pinterest、Uber、Upwork、Salesforceなどを含む、55カ国以上の100社を超える多様な企業に導入されている。​​実際、産休・育休後の復職率は、全米での平均が60%であるのに対し、Cleo会員は92%と改善している。

妊娠・出産のサポートから始まった同社のサービスだが、現在は、5歳から12歳の子どもを対象とするCleo Kids、ティーンエイジャーの子どもを対象とするCleo Teensにも拡大している。

多様なニーズに応える福利厚生の変化

画像クレジット:Carrot Fertilityウェブサイトより

これまで対面での不妊治療を中心に提供してきた福利厚生プロバイダーも、パンデミックを受け、そのサービス提供内容と方法をユーザーの求める形に変化させている。

企業の従業員向けに不妊治療を提供するCarrot Fertilityは、SlackやBox groupなど北米、アジア、ヨーロッパ、南米、中東の50カ国以上で、約200社の企業​​を顧客に抱える。これまで約135億円($115M)を調達している。同社は、パンデミックで通院を避けたい患者のニーズを受け、2020年8月に遠隔医療プラットフォームのCarrot at Homeを開始した。また、2021年12月には、自宅で排卵誘発ホルモンや関連バイオマーカーをモニタリングできる自宅検査キットの提供も開始している。2022年2月には、更年期障害向けのプランも追加した。

従業員それぞれのニーズが異なる点に注目し、福利厚生をパーソナライズできるプラットフォームも登場してきている。

画像クレジット:Nayyaウェブサイトより

2022年2月にシリーズCラウンドで5500万ドル(約64億円)を調達したNayyaは、企業の人事福利厚生システムに組み込んで、従業員のための福利厚生をパーソナライズするツールを提供している。

RPAを使って、従業員がプランをより良く選択し、節約する方法を見つけ、より良い支払いオプションを提供し、保険などの福利厚生を総合的にナビゲートできるようにしている。

画像クレジット:Forma

Formaは、​​裁量型福利厚生管理プラットフォームを提供している。同社も2022年2月、シリーズBラウンドで4000万ドル(約47億50000万円)を調達した。同社は、人事担当者が、従業員による福利厚生ベンダーの選定、払い戻し手続き、デジタルウォレットによるプラン利用をチェックできるようなシステムを構築している。

同社によると、企業の福利厚生は通常、企業が従業員に必要なものを決定するトップダウン・モデルで展開されており、これは雇用者と従業員の双方にとって非効率的だという。Formaの使命は、従業員ファーストの福利厚生プログラムを設計することによって、この関係を逆転させることだ。

Formaはプロバイダーと提携し、家族・人間関係、教育・キャリア、ウェルビーイング・ライフスタイル、基礎健康・保護、資産運用、仕事・パフォーマンスの6つの大きなカテゴリーで福利厚生を提供する。Formaの顧客は、社内の予算と戦略に基づいて、これらのカテゴリーから提供するものを選び、従業員に提供したい福利厚生プログラムを設計することができる。

Twitch、Stripe、Zoom、Lululemon、Palo Alto Networks、Squareなど、前年比330%の125社を顧客に抱えており、定着率は99%だという。この1年間で同社は収益を4倍に増やした。

優秀な人材を惹きつけ、繋ぎ止めるために、今後も企業の従業員への投資は、続いていくだろう。​​上記のパーソナライズ福利厚生が成功していることからも、従業員それぞれニーズが異なっており、企業がそのニーズに応えようとしている姿勢が感じられる。

編集部中:本稿の執筆者は大嶋紗季(Saki Oshima)。日本企業と海外スタートアップの新規事業創出を手がけるスクラムスタジオで、大企業とスタートアップのオープンイノベーションを支援するスタジオ事業部門に所属し、既存プログラムの運営や新規プログラムの立ち上げに従事する。各プログラムで培った日本企業とスタートアップをつなぐ経験を生かし、米国スタートアップ情報プラットフォームScrum Connect Onlineの立ち上げ、運営を担当する。欧米のフェムテックトレンドやサービスを日本語で配信。日本初のフェムテックコミュニティFemtech Community Japan創立メンバー。UCサンディエゴ大学院修了(MBA)。

 

アプリ開発プラットフォームのヤプリが新人事制度「lily制度」開始、働き方支援制度を拡充・妊活・不妊治療費の補助も

アプリ開発プラットフォームのヤプリが新人事制度「lily制度」開始、働き方支援制度を拡充・妊活・不妊治療費の補助も

アプリの開発・運用・分析をクラウドからワンストップで提供するプラットフォーム「Yappli」を運営するヤプリは1月28日、従業員に対する働き方支援として「lily(リリー)制度」を導入・施行したことを発表。社員の働き方とプライベートにおける選択肢を増やし、長期的に安心して働ける環境を整え、働き方支援制度をより拡充。新たに妊活・不妊治療の支援制度も導入した。

「Yappli」と「Family」を組み合わせて命名された「lily制度」は、働く時間とプライベートの時間を切り分けることなく、社員とその家族を、自社にとって家族のような存在として大切にしていきたいという思いを込めているという。

ヤプリは、「働くこと」だけを優先し、社員の人生における選択肢や可能性を狭めさせたくないと考え、産休・育休の支援制度や出産立ち会い制度、フレックス制度やオープン勤務など、様々なライフスタイルに合わせた労働環境作りを目指してきた。さらに今回は、長期的に勤務する土台を作るためには、社員に対して妊娠・出産前からサポートが必要だと考え、新たに妊活・不妊治療の支援制度を導入した。

ヤプリは今後も、社員とその家族の暮らしを支えることができる制度をlily制度に追加していきたいとしている。

lily制度(働き方支援制度。抜粋)

妊活・不妊治療

  • 妊活・不妊治療費の補助:1従業員あたり上限50万円までを負担
  • 妊活・不妊治療時の特別有給:特別有給休暇を必要な日数分付与
  • オンライン外部相談窓口の設置:妊活・不妊治療に対する、外部のオンライン相談窓口の設置(希望者へは提携医院の紹介も実施)
  • 妊孕性簡易検査キット割引:AMH検査、精子検査の簡易検査キットの購入費用を割引価格で購入できる(10~15%程度割引)
  • リテラシーアップの取り組み:継続的に社内のリテラシーを高められるよう、妊活・不妊治療に関するセミナーを定期開催。専門機関からの妊活・不妊治療メルマガの配信

妊娠~出産

  • 産前特別休暇:産前産後休業前に、使える特別有給休暇
    ・女性は10日間(体調調整、通院など)
    ・パートナーは5日間(パートナーの産前看護、通院付き添いなど)
  • 出産立ち会い休暇:パートナーの出産立ち会い用に使える3日間の特別有給休暇
  • 保活コンサル費用補助(全額):保育園探し~職場復帰までのコンサル費用を会社が全額負担
  • 出産祝い金:社員または社員の配偶者が出産した場合には、1産児につき10万円を出産祝金として贈呈
  • 復職祝い金:復職への感謝と育児応援として、復帰後に復職祝い金を贈呈

育児

  • フルリモート勤務:育児・介護等で必要な場合は、フルリモートでの勤務が可能
  • シッター費用補助:内閣府ベビーシッター割引券の導入予定
  • 子の看護休暇(特別有給):子どもの介護で必要な場合、子ども1人あたり年5日(上限10日)まで使える特別有給休暇

妊娠・子育て中の親と専門家をつなぐ「bloss」Antler主導のプレシードで約1.5億円を調達

blossは、これから親になろうとしている人やすでに親になっている人と、事前に審査された子育ての専門家をつなぐ英国のスタートアップだ。このたび、アーリーステージVCであるAntlerが主導するプレシードラウンドで100万ポンド(約1億5000万円)を調達したほか、シリコンバレーの起業家Narry Singh(ナリー・シン)氏、元サッカー選手のAndriy Shevchenko(アンドリー・シェフチェンコ)氏、英国系ジャマイカ人の起業家Alexandra Chong(アレクサンドラ・チョン )氏などのエンジェルが支援している。今回の資金は、2022年後半にblossアプリをローンチするために使われる。

このスタートアップは、161カ国で9万5千人以上のユーザーと200人以上の専門家を抱え、6カ月前の立ち上げ以来、530%の成長を記録しているという。

blossは、妊婦を対象としたアプリをすでに提供しているtintoなど、この分野の既存のアプリと競合することになる。

同社は、Uberの初期の社員の1人であり、英国の創業チームのメンバーでもあるStephanie Desmond(ステファニー・デズモンド)氏が、パンデミックの最中に第3子を妊娠しているときに創業した。デズモンド氏は妊娠するために何度も体外受精を繰り返していたが、信頼できる専門家のアドバイスが不足していると感じた。つまり、blossは「子育て専門家のUber 」と言えるかもしれない。共同設立者は「マミーインフルエンサー」であり、リアリティ番組のスターであるBinky Felstead(ビンキー・フェルステッド)氏だ。

blossでは、助産師、睡眠コンサルタント、栄養士、児童心理学者などの専門家がマッチングされ、24時間以内に親の質問に答えてくれる。

デズモンド氏は次のように述べている。「人々は助けを求めていますが、どこで助けを得られるのかわからないことが多いのです。インターネットは悪いアドバイスの宝庫なので、私たちは何百人もの専門家へのアクセスを民主化することで、子育てを少しでも楽にしたいと考えています。私の家のキッチンテーブルの周りでブレインストーミングをしたのが始まりでしたが、今では世界中の専門家とユーザーが急速に増加しており、毎月平均88%の成長を遂げています」。

AntlerのパートナーであるOllie Purdue(オリー・パーデュー)氏は、次のように述べている。「ステフ(・デズモンド)は、この初期の期間にビジネスを非常にうまく成長させてくれました。私たちはAntlerの全リソースを投入して、世界中のより多くの親御さんにブロッサムをお届けできることを楽しみにしています。blossは多くの家庭にとって大きな価値のある製品であり、この製品が家族に与えるポジティブな影響を楽しみにしています」。

画像クレジット:Bloss / Bloss founders

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

妊娠中・授乳中に安全な薬の情報を検索、産婦人科医開発「妊娠と授乳のくすり案内ボット(くすりぼ)」を相生市が提供

インターネットを通じて子どもの健康や子育てに寄り添う事業を展開するKids Public(キッズパブリック)は、妊娠中から授乳中のお母さんがいつでも気軽に薬の情報を検索できるチャットボット「くすりぼ」を開発。兵庫県相生市が住民向けサービスとして12月13日より提供を開始した。相生市の住民は、無料で利用できる。

Kids Publicは、産婦人科医や小児科医にスマートフォンから気軽に相談ができる遠隔健康医療相談サービスとして「産婦人科オンライン」と「小児科オンライン」を展開している。

くすりぼは、これらサービスに寄せられた、妊娠中から授乳中の8万件以上の相談データをもとに開発されている。様々な事情ですぐに病院にかかれない妊婦や授乳中のお母さんの、いろいろな体の症状に対して、妊娠週数、合併症、持病、産後月数、授乳状況といった本人の状況に合わせて、安心できる薬の情報が提供される。

またそれぞれの薬に関する情報は、2名以上の産婦人科専門医が作成・監修している。産婦人科専門医が文献をもとに臨床現場での知見も踏まえて作成した内容を、別の産婦人科専門医がチェックしているほか、回答文のパターンは2000種類以上にも及び、過去に例のない情報量だという。

さらに薬の情報に加えて、「セルフケアの方法」「事故判断すべきでない状況」「早期に受診したほうが良い状況」なども記載することで、安全性にも配慮している。

これらサービスは、自治体・法人・医療機関に販売されるもので、それら団体から一般にサービスが提供される形となっている。2021年6月1日から子育て支援策として産婦人科オンラインと小児科オンラインを導入している兵庫県相生市は、12月13日よりくすりぼの提供を開始した。

不妊治療可視化アプリを運営するninpathが約3000万円調達、機能改善や関連サービスを充実

不妊治療可視化アプリ「ninpath」(ニンパス。Android版iOS版)を運営するninpathは10月28日、シードラウンドでの第三者割当増資と融資による約3000万円の資金調達を発表した。引受先は、Yazawa Ventures、SFCフォーラム1号投資事業有限責任組合、個人投資家数名となっている。

ninpathは、不妊治療に関する様々な情報を、客観的なデータから把握できるようにする支援アプリ。自身の治療の記録や管理はもちろん、2020年3月にサービスを開始してから3000人を超えるユーザーから集約された情報をもとにした、治療に関する客観的なデータが得られる。これを、治療方法や治療中のさまざまな判断の参考にして、自分で治療方針を考えることができるというものだ。

ninpathでは、今後の事業展開として、アプリの改善とユーザーデータの活用の他、「メンタルを中心とした患者ケアスキームの開発」「企業の女性活躍推進支援」を掲げている。

アプリ改善とユーザーデータの活用では、アプリの利便性の向上と入力負担の軽減を行うと同時に、データドネーション(データの寄付)で不妊治療経験者が提供したデータを活用し、クリニックごとの治療事例の検索や閲覧ができるようにするサービスを準備する。

メンタルケアは、精神的な負担が大きい不妊症や不育症患者のために、「ケアを受けるきっかけ」と「適切なケアラーへつなぐ導線」を提供するというもの。年内に運用実験を行うという。

ライフプランニング支援では、企業での妊よう性や不妊治療に関する従業員向けセミナーを実施したり、休暇制度の導入、簡易検査の提供など、従業員と家族が人生設計と仕事を両立できるように支援する体制を構築するとしている。

ninpathでは、「長年の課題となっている不妊治療患者の精神的な負担を少しでも軽減していくために、医師や各企業がより包括的に患者をサポートできるような体制作りを支援し、患者が治療に集中して臨める環境構築に注力してまいります」と話している。

不規則な周期の女性の妊娠適期を検出する家庭用キット開発のOovaが1.3億円調達

Oovaは、BBG Venturesが主導し、Company Venturesが参加したシードラウンドで120万ドル(約1億3000万円)を得て、7月下旬にOova Kitを正式にローンチした。このキットは、2種類のホルモンを定量的に測定する家庭用検査を含んでおり、女性やその主治医に妊娠可能な日を提示したり、排卵の有無を判定する機能を持つ。

ニューヨークに拠点を置く同社は、2017年にCEOのAmy Divaraniya(エイミー・ディヴァラニア)氏によって設立された。ディヴァラニア氏は遺伝学を専門とする生物医学の博士号を取得している。同氏は個人的に月経不順による不妊に苦しんでおり、医師から35歳になってから再度受診するように告げられた。それでも、Divaraniyaは待つことを望まず、その時に何か行動したいと思った。

その後も、基礎体温や排卵検査薬を使って自然な妊娠の道を追求し続け、18カ月後に息子を授かった。しかしディヴァラニア氏は、利用可能なツールのすべてが「完璧な周期を持つ」女性のために作られたものであり、彼女に当てはまるものではないことを認識した。不規則な周期の女性に向けた事業に利用できる資金がない中で、同氏は、個人に合わせた非侵襲的なツールを提供し、家庭で個人的なホルモンプロファイルに対処できるようにしたいと、Oovaを立ち上げた。

エイミー・ディヴァラニア氏、Oovaの創業者でCEO(画像クレジット:Oova)

ディヴァラニア氏によると、博士課程を修了して2017年に同社を設立した後、過去4年間にわたってこの技術を可能な限り正確に機能させることに注力してきたという。Oovaの家庭用キットには、ハンドルホルダー、15個の使い捨てカートリッジ、モバイルアプリが含まれている。ユーザーは尿検査を行い、結果をスマートフォンのカメラでスキャンして、排卵確認や受胎に最適な日などの実行可能な措置を受け取る。主治医にデータを見てもらい、相談することも有効だ。

Oovaは、黄体形成ホルモンとプロゲステロンを測定し、時間をかけてホルモンを追跡する検査として、市場に出ている唯一のものであるとディヴァラニア氏は強調する。代替手段は、採血のために毎日病院に行くことであるが、それは体外受精を受ける場合に限られる、と同氏は説明する。

BBG Venturesの共同創業者でマネージングパートナーのSusan Lyne(スーザン・ライン)氏は、長い間女性の健康にフォーカスしており、他の創業者からディヴァラニア氏に会うべきだという提案を受けた。

「自分の周期を可視化することは、多くの女性にとって変革の瞬間です」とライン氏はインタビューで語った。「Oovaの科学は強力で、消費者は専門家に相談することなく自分の検査結果を理解できます。過去においてのみ個人的なホルモンプロファイルが得られるという事実は、自分が受精可能かどうかを判断するレベルに達するということでしかありません。同社のキットは定量的なものなので、昨日、今日と、それを追跡し、排卵の時期を知ることができます」。

同社の当初の目標は消費者に直接届けることだったが、パンデミックの最中に不妊治療クリニックが閉鎖を余儀なくされた後、ディヴァラニア氏は医師から電話を受け、診療所に来ることができなくなった患者をサポートするためにキットを早期にローンチするよう求められた。現在、75以上の不妊治療クリニックが同社のプラットフォームを利用している。

コンサルティング会社のPrecedence Researchによると、体外受精、遺伝子検査、卵子凍結、生殖補助などのサービスを含む世界の不妊治療テクノロジー市場は、2020年に331億ドル(約3兆6300億円)と評価され、2027年までに479億ドル(約5兆2600億円)になると予想されている。家庭用診断デジタルヘルス市場は、2027年までにそれぞれ70億ドル(約7700億円)と5510億ドル(約60兆5000億円)になると見込まれている。

他のスタートアップは、類似の不妊治療ケアをよりアクセス可能なものにすることに注力している。例えば2021年、Future Familyは900万ドル(約9億9000万円)を調達して不妊治療のコストとプロセスの透明化を実現し、デジタルヘルス企業のRoは5月にModern Fertilityを買収して、不妊検査とリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を自社のサービスに追加した。また、Mate Fertilityは、家族計画サービスのネットワーク構築に280万ドル(約3億700万円)の資金を投入している。

関連記事:不妊治療サポートのFuture Familyが9.8億円調達、コロナ禍で混み合うクリニックのネットワークを拡大

Oovaはプレシード資金で合計440万ドル(約4億8000万円)を調達した。将来の需要を満たすために、ディヴァラニア氏は新しい資金を使ってより多くの機能を追加し、ホルモン検査を市場に出す準備を進めている。同氏はまた、再ブランド化に取り組み「Oovaを単なる科学的実験にとどまらない、企業として育て上げたい」とも考えている。価格はスターターキットが159.99ドル(約1万8000円)、リフィル可能なキットがサブスクリプションで月額99.99ドル(約1万1000円)となっている。

「私たちは不妊治療からスタートしましたが、慢性疾患などの他の健康分野にも事業を拡大したいと考えています。データ利用者と臨床医が需要を牽引できるようにしたいのです」とディヴァラニア氏は付け加えた。「また、黄体形成ホルモンとプロゲステロンとともに妊孕性にとって完璧な3要素となる、エストロゲンの追加にも取り組んでいます」。

画像クレジット:Oova

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

州の中絶禁止法に対する解決策を提供、バーチャルクリニックのHey Janeが約2.4億円調達

より多くの州が人工妊娠中絶を禁止するある種の法案を可決する中、遠隔医療による妊娠中絶ケアを提供するバーチャルクリニックのスタートアップHey Janeは米国時間8月26日、220万ドル(約2億4000万円)の資金調達を発表した。オーバーサブスクライブとなったこのラウンドには、Koa Lab、Gaingels、Foursight Capital Partnersを含む投資家グループが参加した。

リモートファーストを目指すHey Janeのアイデアは、2019年に同社の創業者でCEOのKiki Freedman(キキ・フリードマン)氏が数人の友人と交わした、ミズーリ州は妊娠中絶クリニックが残り1つとなっている6つの州のうちの1つだという会話から生まれた。中絶医療提供者への攻撃を避けるために仮名を使うフリードマン氏は、実際にはこのクリニックはその夏に閉鎖が予定されており、それはミズーリ州が中絶ケアをまったく持たない最初の州になることを意味していたと説明する。同クリニックは最終的には開業を続けることができた

「当時、私が目にした新興の遠隔医療クリニックの多くは男性のウェルネスに焦点を当てており、女性の健康については語られていませんでした」とフリードマン氏はTechCrunchに述べている。「このバーチャルモデルは、安全かつ慎重な中絶ケアに使えると考えました」。

匿名を希望するHey Janeの投資家の1人は「フリードマン氏とHey Janeに投資することに大いに期待を抱いた」のは、女性の健康が十分なサービス提供を受けていないカテゴリーであることに同意したからだと話す。男性の医療とは異なり、女性の医療では中絶ケアが分離されている。これは、レーガン大統領が中絶ケアを病院と切り離すよう義務付けたことに端を発している。

Planned Parenthoodによると、女性の4人に1人が45歳までに中絶するという。しかし、米国では2021年だけで90件以上の中絶に関する規制が制定されており、その数は総計1320件にのぼることが、Guttmacher Institute(性と生殖に関する健康と権利の向上に取り組む非営利の研究・政策組織)により明らかにされている。アーカンソー州とオクラホマ州では現在、患者の生命が危険にさらされている場合を除いて、中絶をほぼ全面的に禁止している。一方、アイダホ州、サウスカロライナ州、テキサス州では、妊娠6週以降、あるいはごく限られた例外を設けて中絶を禁止している。

2020年7月、連邦判事は女性が医師の診察を受けずに妊娠中絶薬を入手することを認めた。このことは、Hey Janeやその他の企業が妊娠10週未満の人々に「非接触」サービスの提供を開始する道を開いた。

249ドル(約2万7000円)の同社の治療には、医師によるスクリーニング、FDAが承認した薬の処方と患者の自宅への翌日配送、フォローアップのためのバーチャル訪問、そしてプロセス全体における医師とのチャットが含まれる。Hey Janeのチームも、テキストメッセージを通じて患者を頻繁にチェックする。

同社によると、金銭的な障壁を取り除くことは「Hey Janeにとって極めて重要な優先事項」であるという。同社はまだ保険を受け付けていないが、非営利の妊娠中絶基金パートナーReprocareを通じて経済的援助を行っている。この組織は、患者の負担が139ドル(約1万5000円)に抑えられるよう、249ドルの治療費のうち最大110ドル(約1万2000円)を助成している。

今回の資金調達により、Hey Janeは新たな州への展開を図り、7人のチームを増強してプロダクトおよび自動化プロセスの構築と法的調査を進めて、各州における遠隔医療の法制と遠隔医療の妊娠中絶に関する法制の動向を常に把握し、対応できるようにしていく。

Hey Janeが従うべき規制要件は州ごとに複数あり、その中には、臨床医が診療を行うのはライセンスを受けている州の患者に限定されることなどが含まれている。このため、同社は事業を展開する各州でライセンスを取得した臨床医を擁しており、適切な時期に薬を処方する準備ができている。また、必要に応じて精神的な苦痛を和らげる専門家も待機している。

Hey Janeは8月下旬からカリフォルニア全域で活動を開始し、ニューヨークとワシントンでもサービスを展開している。つまり、Hey Janeのサービスエリアは現在、米国で年間に行われる人工中絶の34%をカバーしているとフリードマン氏はいう。「カリフォルニア州とニューヨーク州では年間の中絶件数が最も多いため、これらの州が最初に選ばれました」と同氏は言い添えた。

「これらの州の人々はクリニックへのアクセスが比較的容易になっているかもしれませんが、Hey Janeによるケアは安全で効果的であり、クリニックでのケアの半分の費用で済むため、彼らはHey Janeの治療からより大きな恩恵を受けることができるでしょう」とフリードマン氏。「移動や育児のための費用や時間を必要とせず、プライバシーと裁量を確保し、精神的なサポートを追加することができます」。

フリードマン氏は、2021年末までに10州への進出を果たし、今後数年のうちに50州すべてで治療を提供できるようになることを期待している。しかしながら、19の州で遠隔医療による中絶へのアクセスを制限する規制上の障壁が存在する。Hey Janeは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAdvancing New Standards in Reproductive Healthの研究グループと組んで、そのための情報を集めている。

「私たちは一流の研究者と協力して、この治療法が安全かつ効果的で、患者に好まれていることを示す、豊富にある既存の証拠の拡充に努めています」と同氏は続けた。「この研究が規制の厳しい州での議論をさらに前進させ、最終的には古い規制に対する、より必要とされる患者中心のアップデートにつながることを願っています。遠隔医療による中絶の安全性と有効性に関する既存のデータは、これが中絶医療の未来であることを明確に示しています」。

Hey Janeは現在、同サービスを利用する患者数を四半期ごとに250%増やしている。同社は成長に伴い、連携したケアや新プロダクトのための追加ツールに力を入れている。

妊娠中絶は、審判的な扱いや差別の心配から秘密にされることが多い。患者が慎重を期して自分の経験や感情を共有できるような、切望されていた手段をHey Janeは提供していくとフリードマン氏は語っている。

「私たちは利便性とプライバシーを重視しています。3分の2の女性が自分の経験について話すことを望んでいないため、私たちはそうした女性たちのためのスペースを提供したいと考えています」。

女性の健康問題は、極めて個人的なものである。あなたやあなたの知人が女性の健康に関する個人的な問題に悩んでいる場合は、主治医やかかりつけの地域医療クリニックに詳細を問い合わせて欲しい。

画像クレジット:Carol Yepes / Getty Images

原文へ

(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

テキサス州「密告サイト」の運営元、中絶反対団体Texas Right to Lifeが求職者の履歴書を流出

妊娠中絶反対団体「Texas Right to Life」は、同団体ウェブサイトのバグにより、サイト上の保護されていないディレクトリに保存されていた履歴書に誰でもアクセスできるようになっていたことで、数百人の求職者の個人情報が流出した。

セキュリティ研究者がTechCrunchに語ったところによると、主にWordPressで構築されている同団体のメインウェブサイトでは、ウェブサイト上のファイルストレージが適切に保護されておらず、300人以上の就職希望者の履歴書や、ウェブサイトにアップロードされたその他のファイルの保存に使用されていたとのこと。それらの履歴書には氏名、電話番号、住所、各個人の職歴の詳細などが含まれていた。

このウェブサイトのバグは、流出の詳細がTwitter(ツイッター)に投稿されてからしばらく後の先週末に修正された。同団体のウェブサイトには、流出したファイルは現在掲載されていない。

Texas Right to Lifeの広報担当者であるKimberlyn Schwartz(キンバリー・シュワルツ)氏は、TechCrunchの取材に対し「情報を探し出して広めた」人々(行為者)について「関係者を保護するために行動を起こしている」と述べた。

シュワルツ氏は、セキュリティの不備によって個人情報が流出した人々に組織がその事実を通知する予定があるかどうかについては言及しなかった。

Texas Right to Lifeは先週、テキサス州の住民に、同州の新しい中絶禁止法に違反して中絶を求めている人がいたら報告するよう促す「内部告発」サイトを公開し、怒りを買っていた。この新法では、中絶を希望する人や、受胎後6週間以降の中絶を「ほう助」した人を誰でも訴えることができる。この条項は、中絶手術を行う医師だけでなく、中絶費用を支援する人、友人をクリニックに連れて行ったりするような関係者も対象になると広く解釈されている。

抗議の声が上がるのに長くはかからず、この「内部告発」サイトには、偽の情報やミーム、シュレックのポルノなどが殺到した。9月2日にサイトは一時的に停止したが、これはある活動家が同ウェブサイトのフォームに偽の情報を事前入力してあるiOSショートカットを公開したのと同じ日だった。

しかしその週末、ウェブサイトをホスティングしていたGoDaddyはTexas Right to Lifeに対して、このサイトが利用規約に違反していると指摘し、24時間以内に別のホストを探すようにと指示した。その結果、極右ソーシャルネットワーク「Gab」などの物議を醸したサイトを支援しているウェブホストEpikを介して、同団体は一時的にサイトを復旧させることができた。しかし、それも長くは続かなかった。

米国時間9月6日の時点で「内部告発者(whistleblower)」ウェブサイトは、Texas Right to Lifeのメインサイトに転送されるようになっている。

関連記事
極右お気に入りのレジストラが「検閲に強い」サーバーを構築中
極右ソーシャルネットワークGab、GoDaddyにドメイン登録を抹消されサービス停止

画像クレジット:Sergio Flores / Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

妊娠中の母親と養子縁組を希望者をつなぐマッチングプラットフォーム「PairTree」

養子縁組をする、あるいは養親を探すという選択は、法的に複雑で、感情的な負担が大きく、費用も時間もかかるプロセスである。PairTree(ペアツリー)は、エージェントなどの組織が仲介せずに、妊娠中の母親と養子縁組を希望する人がお互いを検索できるオンラインのマッチングプラットフォームを展開。難しい養子縁組プロセスを少しでも簡単かつ迅速にすることを目指している。同社は先日225万ドル(約2億5000万円)のシードラウンドで資金調達を完了したが、この業界では珍しい。

養子縁組プロセスは人により異なるが、手続きを開始してからマッチングを成立させるまでに、5万ドル(約560万円)以上の費用と1年半を超える時間がかかることはどのケースでも共通している。養子縁組にともなう法律上のハードルもあるが、養子縁組の機会が限られることや、お互いの相性が保証されていないことも大きな要因だ。不妊治療がうまくいかずに養子縁組を検討している多くの人にとって、養子縁組プロセスは負担が大きく、気が滅入るほど長期間待たされることにもなる。

PairTreeはCEOのErin Quick(エリン・クイック)氏とCTOのJustin Friberg(ジャスティン・フリーバーグ)氏が共同で設立した。クイック氏によると、現代の養子縁組は95%近くがオープン、すなわち生物学的母親と養子縁組先の家族の間で継続的な接触があることが特徴だという。

自身も円満な養子縁組をしているクイック氏は、TechCrunchのインタビューに応じ「生物学的母親と養子縁組先の家族は生涯関係を持ち続けることになるので、相性の良い相手を見つけることが重要になる」と語る。しかし、一般的な養子縁組は、州の認可を受けたエージェントを通じて行われ、関係者が連絡を取れる範囲は制限される。

クイック氏は次のように話す。「地理的な縛りが強いのです」「養子縁組は州レベルで規制され、州レベルで進められています。州の法律のせいではない、つまり、州外で養子縁組をしてはいけないという規則はないのですが、エージェントが小さな非営利団体であるのが原因です。彼らは、自分たちが提供できるサービスがその地域にあるという理由で、その地域に囚われています。私たちは、養子縁組プロセスをもっと簡単に、より効率的にするためのプラットフォームを構築しています」。

PairTreeのプラットフォームは、出会い系アプリに非常に似ている点が多い(もちろん、この比喩は正確ではなく、養子縁組を選択することの重大性を反映したものではない)。しかし、交際相手との出会いと同じように、養子縁組においても、人格や個々のニーズを反映できる「場」を介して、つながりを求める人々がいる。

妊娠中の母親が相性の良い養子縁組先の家族をフィルタリングして検索する方法を示すスクリーンショット

PairTreeでは、妊娠中の母親と養子縁組先の両方の性格診断を行う。この性格診断は、OkCupid(出会い系アプリ)のような簡単なものではなく、その人の人生における大まかな優先順位を示す、もっと広範で重要なユングの元型(ユング心理学における概念、人が産まれながらに持つイメージの源)を使用する。例えば「旅をして学びたい」と「何かを与え、育てたい」という思いは、必ずしも両立しないわけではないが、チェックボックスで簡単に答えられない、その人の指向性を示す重要な指標となる。もちろん、これは複数ある基準の1つで、その他の人口統計学的や個人的な情報も収集する。

養子縁組を希望する人は待機リストに追加され、妊娠中の母親はその中から選んで、連絡を取ることができる(この点で、PairTreeは、女性からメッセージを送るという女性優先の出会い系アプリであるBumbleのシステムと同じだとクイック氏はいう)。PairTreeでは、身元確認や学習状況等の重要なステップの確認などの基本的なデューデリジェンスも行う。

マッチしそうな相手が見つかると、関連情報がすべて養子縁組のエージェントに送られ、エージェントがその他の法的・経済的な手続きを調整する。PairTreeは、これらのエージェントの代替機関となろうとしているのではない。(クイック氏によると、)PairTreeは待機時間を短縮し、良い結果に結びつけることができるので、エージェントに強く支持されているという。これまでの成功した養子縁組のデータでは、待ち時間を半分~3分の2に減らすことができ、結果として、コスト(エージェントに検索や法的作業を行ってもらうための定期的な支払いを含む)も同程度に削減できたとのことだ。

クイック氏は「これらのエージェントは小さな非営利団体で、技術的な能力はあまりありません。立ち上げ当初は弁護士に依頼していましたが、エージェントから連絡が来て驚きました」と説明する。

エージェントが養子縁組を希望する家族にPairTreeを紹介してくれたことが、PairTreeの初期の原動力になった、とクイック氏はいう。重要なのは、当初成功した養子縁組には大きな多様性があった、という点だ。

養子縁組は歴史的に、信仰に基づく制度によって否定され、LGBTQの家族や独身女性は差別の対象となっていた、とクイック氏は指摘する。実際、米国時間6月17日、米国最高裁判決は、宗教を重視する養子縁組エージェントに同性カップルへのサービスを拒否する権利を認めた。クイック氏は、PairTreeが提供する同性カップルや独身者の養子縁組の支援に誇りを持っている、と話す。

また、PairTreeは純利益の5%(それなりの額になると期待される)を、養子縁組の手続きを行った生物学的母親にカウンセリングとサポートを提供する「Lifetime Healing Foundation(ライフタイムヒーリング財団)」に寄付する予定だ。

225万ドルのシードラウンドは、Urban Innovation Fund(アーバンイノベーションファンド)が主導し、Founder Collective(ファウンダーコレクティブ)、Female Founders Alliance(フィーメールファウンダーアライアンス)、Techstars(テックスターズ)が参加した。養子縁組がベンチャーキャピタルにとって特に重要視する産業ではないと聞いて驚く人はほとんどいないと思われるが、不妊治療テクノロジーへの関心と投資が増加することで、隣接分野でのビジネスチャンスが注目されるようになったのかもしれない。養子縁組は、テクノロジーを活用した大幅な改善が可能な分野であり、これはスタートアップ企業がポジティブな結果を出して急成長できることを意味している。

同社は今回の資金調達により、サービスのポートフォリオの拡充、さらなるパートナーシップ、ネイティブなモバイルアプリの構築を計画している(同サービスのユーザーの90%がモバイルを使用していることから、この点はユーザーにとって最も重要だろう)。

今回の資金調達の発表で、クイック氏は次のように述べた。「養子縁組はもっと多くの人が親になれる現実的な手段であるべきだと、いう私たちのビジョンを共有する、専門家やさまざまな投資家の方々に感謝しています」「私たちと同じように、投資家の方々は、養子縁組と生物学的母親および養子縁組先の家族を支援することの重要性を確信しています。養子縁組は1回限りの取引ではなく、生涯にわたって彼らがたどる道すじなのです」。

関連記事:不妊治療サポートのFuture Familyが9.8億円調達、コロナ禍で混み合うクリニックのネットワークを拡大

カテゴリー:ネットサービス
タグ:PairTree資金調達養子 / 養子縁組妊娠

画像クレジット:Pairtree

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

妊産婦向けメンタルケアサービスを展開し女性の心に寄り添うケアを提供するFloraが約2200万円調達

妊産婦向けメンタルケアサービス「Flora」を展開し女性の心に寄り添うケアを提供するFloraが約2200万円調達

妊産婦のメンタルケアサービス「Flora」(フローラ)を展開し、思春期から更年期までの女性の心に寄り添うFloraは6月28日、Social Entrepreneur 3投資事業有限責任組合をリード投資家とし、ペイフォワード、SK Impact Fund Japanという2つのエンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資の実施を発表。総額約2200万円を調達した。

ウクライナ出身で、従姉妹が妊娠中にうつ病を発症し、第二子を亡くし苦しむ姿を見た共同創設者でCEOのクレシェンコ・アンナ氏は、京都大学経営管理大学院在学中に「すべての妊婦さんが安心して妊活・出産・育児を迎えられる社会」を目指して2020年12月にFloraを立ち上げた。同時に「Flora妊娠アプリ」のベータ版をローンチし、2021年4月からは「助産師や心理学者などの専門知識とセラピーメソッドに基づき監修されたオンラインレッスン」の提供も開始している。

Floraは、日本で初めて、フルオンラインのグループセラピーを提供し、自社開発のコーチングメソッドで「自分で自分を大切にしていい」というメッセージを女性に発信している。「自分らしさを応援するコミュニティー」として「性や生、パートナーシップ、食生活、マインド」などを包括的にサポートするコンテンツには、特定のテーマについて講師に相談できるZoom茶話会「Floraサロン」、離乳食やマタニティーヨガなどが学べる「Floraルーム」、専門家によるレクチャーやワークショップ、AIを活用したひとりひとりに合ったセラピープログラムを提供するメンタルサポートといったサービスがある。

今回調達した資金で、サービスの拡充とプロモーション活動を行う。ただでさえ妊娠、出産、育児を行う女性への支援が脆弱な日本で、現在は新型コロナ禍の影響で妊婦が孤独に陥りやすい状況になっていると話すFloraは、サービスを通じて「孤独感のない世界」を目指すとのこと。

関連記事
パーソナルモビリティの「WHILL」が出産後の患者を病室まで自動運転で移動させる実証実験を産科病棟で開始
超吸収型サニタリーショーツ「Bé-A」を展開するBé-A Japanが総額1.8億円のシード調達
国内初のIoT型胎児モニターを製造販売する香川大学発「メロディ・インターナショナル」が1.5億円調達
ピルのオンライン診察アプリの「ネクイノ」が法人向け健康経営支援プログラム「For Women’s 保健室」開始
母子手帳アプリ「母子モ」が自治体の子育て関連事業のオンライン化を支援

カテゴリー:フェムテック
タグ:女性(用語)妊娠(用語)Flora(企業・サービス)メンタルヘルス(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

パーソナルモビリティの「WHILL」が出産後の患者を病室まで自動運転で移動させる実証実験を産科病棟で開始

WHILL国立成育医療研究センターは6月16日、出産後の患者を病室まで自動運転で移動させる「WHILL自動運転システム」の実証実験を開始したと発表した。同サービスはこれまで、病院外来や空港などでの活用事例があったが、病棟内での利用は国内初となる。

出産直後の患者は、身体の痛みなどのため車椅子でLDR(陣痛・分娩・回復室)から病室に戻ることが多く、医療スタッフが車椅子を押して移動しているという。その際、医療スタッフは新生児を乗せたカートや、患者さんの荷物などを運ぶ作業もあり、大きな業務負荷がかかっている。

実証実験では、WHILL自動運転システムを産科病棟に取り入れ、医療スタッフの業務効率化や患者の移動における安全性・利便性などを検証する。WHILLを実際に利用した患者からは、「従来の車椅子より振動が少ないので乗り心地が良かった」「WHILLの振動が少ないので、傷(会陰切開)に響かなくてよかった」などの声が寄せられているという。

今回の取り組みで利用しているWHILL自動運転システムは、自動運転・自動停止機能などを搭載したパーソナルモビリティ「WHILL自動運転モデル」と、複数の機体を管理・運用するシステムとで構成される、歩道・室内領域向け自動運転システムとなっている。あらかじめ収集した地図情報と、センサー群で検知した周囲の状況を照らし合わせ、自動走行・自動運転による無人での返却も可能だ。

今後、実証実験の結果を基に国立成育医療研究センターとWHILLは連携を深め、 医療現場におけるサービスの向上を図る。将来的には、WHILL自動運転システムの利用範囲を拡張する計画を進め、現在の病室前までの移動サービスから、患者がベッドへの移動がより楽になるよう、各病室内まで自動運転で入っていくシステムを構築することを検討していく。

なお今回の取り組みは、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトによる支援を受けて行われる。

関連記事
国内初のIoT型胎児モニターを製造販売する香川大学発「メロディ・インターナショナル」が1.5億円調達
WHILLが新型近距離モビリティ「WHILL Model C2」の予約販売を9月21日から開始
WHILLが羽田空港で電動車椅子を使った搭乗口までの自動運転システムを導入

カテゴリー:モビリティ
タグ:WHILL出産自動運転 / 自律運転(用語)妊娠(用語)MaaS(用語)日本(国・地域)

国内初のIoT型胎児モニターを製造販売する香川大学発「メロディ・インターナショナル」が1.5億円調達

国内初のIoT型胎児モニターを製造販売する香川大学発「メロディ・インターナショナル」が1.5億円調達

IoT型胎児モニターおよびクラウド周産期遠隔医療プラットフォームにより安心・安全な妊娠・出産環境の実現を目指すメロディ・インターナショナルは4月30日、第三者割当増資による1億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、京都大学イノベーションキャピタル(京都iCAP)を無限責任組合員とするイノベーション京都2021投資事業有限責任組合(KYOTO-iCAP2号ファンド)。

2015年設立のメロディ・インターナショナルは、周産期医療の胎児モニタリングで利用される、国内初のIoT型胎児モニター「分娩監視装置iCTG」を開発する香川大学発スタートアップ。

分娩監視装置は、超音波ドップラー技術により胎児心拍を測定する際に妊婦健診・分娩監視で利用されるものの、既存製品は装置が大きく据置型であるため、測定できる場所が限られているという。

また日本では産科施設の減少が進み、定期健診などの通院が妊婦にとって負担となっている。高齢出産の増加もあり、出産のハイリスク化も進んでいる状況でもある。さらに最近では、コロナ禍により妊婦の感染対策が求められている。

そこでメロディ・インターナショナルは、いつでも・どこでも遠隔で胎児モニタリングできるように小型・IoT化したモバイル型装置を開発し、2019年に医療機器として発売した。先に挙げた課題に対して周産期における遠隔医療が解決策のひとつとなっており、同社製品が安心安全な出産の実現に役立つことが期待されているという。

国内初のIoT型胎児モニターを製造販売する香川大学発「メロディ・インターナショナル」が1.5億円調達
iCTGは、胎児の心拍と妊婦さんのお腹の張りを、病院や自宅などで測定できるデバイス。iCTGを妊婦のお腹にセンサーをあて計測すると、Bluetooth接続でスマートフォンやタブレットのアプリケーション内に結果が表示され、医師が診断に活用できる。

国内初のIoT型胎児モニターを製造販売する香川大学発「メロディ・インターナショナル」が1.5億円調達

また周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」(メロディ・アイ)は、妊婦さんが計測した結果をかかりつけ医師に送信でき、遠隔で医師から受診推奨などアドバイスを得られるコミュニケーションプラットフォーム。妊婦さんと医師との連携だけでなく、クリニックからNICUのある中核病院へのデータ連携も行える。

国内初のIoT型胎児モニターを製造販売する香川大学発「メロディ・インターナショナル」が1.5億円調達

京都iCAPは、iCTGおよびMelody iの将来性を高く評価し新規投資を実行したとしている。また同投資は、京都大学以外の国立大学発ベンチャーも支援可能となったKYOTO-iCAP 2号ファンドによる、京都大学以外の国立大学発ベンチャー企業への初めての投資案件という。

関連記事
IoT胎児モニターのメロディ・インターナショナルが東南アジアで周産期遠隔医療サーバーのクラウド運用開始
妊産婦のオンライン診療で安心安全な出産を目指すメロディ・インターナショナルが1.6億円調達

カテゴリー:フェムテック
タグ:IoT(用語)遠隔医療(用語)香川大学(組織)資金調達(用語)出産妊娠(用語)メロディ・インターナショナル日本(国・地域)

IoT胎児モニターのメロディ・インターナショナルが東南アジアで周産期遠隔医療サーバーのクラウド運用開始

IoT胎児モニターのメロディ・インターナショナルが東南アジアで周産期遠隔医療サーバーのクラウド運用開始

IoT胎児モニターを開発し国内外で展開しているメロディ・インターナショナルは4月26日、Microsoft Azureの東南アジアリージョンにおいて周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」を開設し、第1弾としてタイ・チェンマイにおいてオンプレミス利用していたMelody iをクラウドに移行して運用を開始した。これを皮切り海外での導入を進め、今後中東のドバイなど、複数リージョンでの運用も開始する予定。

IoT型胎児モニター「分娩監視装置iCTG」は、胎児の⼼拍数と妊婦のお腹の張りを、病院や⾃宅などで測定できるデバイス(2018年5⽉にクラス2医療機器認証を取得)。妊婦のお腹にセンサーをあて計測すると、Bluetooth接続でスマートフォンやタブレットのアプリケーション内に結果が表⽰され、医師が診断に活⽤できる。防滴性能を有しており、ケーブルレスのため、清浄や消毒が容易という。また、医療従事者が直接接触しなくともその指導の下で、妊婦が自分自身で装着して、計測データはリモートで確認可能。

Melody iは、妊婦が計測した結果を医師に送信でき、遠隔で医師から受診推奨などアドバイスを得られるコミュニケーションプラットフォーム。妊婦と医師との連携(DtoP)だけでなく、医療機関から医療機関(DtoD)のデータ連携も可能という。

IoT胎児モニターのメロディ・インターナショナルが東南アジアで周産期遠隔医療サーバーのクラウド運用開始

iCTGとMelodyiの活⽤により、遠隔で胎児の健康状態をモニターしつつ分娩のタイミングなどを予測可能となり、国内外の妊婦がより安⼼・安全に出産できる環境の提供につながるとしている。

東南アジアで「Melody i」サービスの提供開始

メロディ・インターナショナルによると、タイ、カンボジアやミャンマーなどですでに導入済みのiCTGについては、これまでAzureの日本国内リージョン上やチェンマイ大学のオンプレミス周産期サーバー上で運用していたという。今回、よりシームレスでフレキシブルなサービスを提供するため、Azureの東南アジアリージョンでの運用を開始した。

チェンマイ大学に設置しているオンプレミスサーバーは、オンラインでのサポートに限界があることと、タイの民間病院や周辺国の医療データ等を保存できないため、日本のサーバーを利用する場合が多くあったという。しかし、医療データは国によって運用基準が設けられている場合もあり、日本国内のサーバーを使ったサービスの提供が難しい場合もある。

そこでこれら課題をクリアするために、Azureの東南アジアリージョンにおいてもMelody iサービスを開始した。今回のクラウドサーバー運用開始、また2021年1月のタイFDAライセンス取得とあわせて、今後タイを中心として周辺国の医療機関への導入を加速する。

第1弾として、チェンマイ大学のオンプレミスサーバーで運用していた妊婦さんと胎児の医療データを、クラウド運用に移行。これにより、地域での導入コスト・維持費を抑えるとともに、よりきめ細かなサービスやメンテナンスが可能となるとしている。

チェンマイ地区では、25ある公立病院すべてにiCTGが導入されており、産婦人科医が常駐しない16の医療機関から、産婦人科医のいる病院とデータを共有することで、1次医療機関から3次医療機関をつなぐネットワークを構築しているそうだ。データの共有には、メールとSNS(LINE)と連携した、チェンマイ独自のシステムで、世界で最も進んだICTリファラルネットワークとなっているとした。

IoT胎児モニターのメロディ・インターナショナルが東南アジアで周産期遠隔医療サーバーのクラウド運用開始

現在iCTGとMelody iは、国内で約70の医療機関、海外では7カ国約90の医療機関に導入されているという。

現在利用しているAzureは、医療機関の情報システムにおいてクラウドサービスを利用するために満たすべきセキュリティ要件を示した厚生労働省・総務省・経済産業省の3省庁ガイドラインをクリアしており、国内で培った医療データの運用ノウハウは海外でも活用するとしている。

関連記事
妊産婦のオンライン診療で安心安全な出産を目指すメロディ・インターナショナルが1.6億円調達

カテゴリー:フェムテック
タグ:IoT(用語)ウェアラブルデバイス(用語)遠隔医療(用語)出産妊娠(用語)Microsoft Azure(製品・サービス)メロディ・インターナショナル

自分に合った治療情報を得られる不妊治療データ検索アプリ「cocoromi」正式リリースのvivolaが3000万円調達

自分に合った情報を得られる不妊治療データ検索アプリ「cocoromi」正式リリースのvivolaが3000万円調達

不妊治療データ検索サービス「cocoromi」(ココロミ)を手がけるvivola(ビボラ)は4月22日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による3000万円の資金調達を発表した。引受先は、ANRI、DEEPCORE。またスマートフォンアプリ版cocoromi(Android版iOS版)の提供開始を明らかにした。

調達した資金は、「アプリの改善・マーケティング費用」「企業への福利厚生導入支援費用」「オンライン診療システムの開発費用」にあてる。

アプリの改善・マーケティング費用では、cocoromiのさらなるユーザビリティ向上に向けた開発や、医師や企業との合同イベント、キャンペーンなどのマーケティング強化費用に利用。また、不妊治療をしている社員を支えるための職場環境の構築を目的に、医師やNPOとともに動画・リーフレットの啓発コンテンツの制作費用として使用する。通院負荷を低減するため、地域医療ネットワークを活かした新しい不妊治療の診療システムの開発費用にも用いるとしている。

今後cocoromiアプリでは、薬の服用アラーム機能や病院情報などユーザーからリクエストがあった機能を順次追加していく予定。より詳細な分析が可能な個別分析レポート(有料)や、オンラインでの医師のセカンドオピニオンなどのサポート機能も提供を予定している。

またユーザーがcocoromiアプリを活用することで、2年間で3万人の体外受精のデータを取得することを目標とし、収集データの分析により、個別最適化された治療プロトコールの提供の一助となる、医療機関向けの同質症例DBの開発へ取り組む。

不妊治療データ検索アプリ「cocoromi」

国内における少子化は加速しており、2020年の出生数は87万人で過去最少となり、深刻度を増している。一方で、子供を産みたくても産めない、不妊治療をしている女性が50万人以上おり、vivolaは早急に解決すべき社会課題と考えているという。

また不妊治療を取り巻く課題として、体外受精1回あたり平均約50万円かかるという費用経済的負担のみならず、「自分に合った情報が得られない」「通院頻度が多く仕事との両立が難しい」「治療の長期化により、経済的・身体的・心理的負担が大きい」などが挙げられるとしている。

そこでvivolaは、まずは「自分に合った情報が得られない」という課題を解決すべく、不妊治療を経て妊娠した人のデータをわかりやすく可視化し、誰もが自分に合った治療情報を得られるようなデータ検索サービス「cocoromi」を開発し、2020年6月よりウェブサイトサービスとして提供。

そして今回のスマートフォン向けアプリでは、通院スケジュール管理や治療ログといった新機能追加やUIUXの改善を行い、正式リリースした。

これによりcocoromiユーザーは、分析データの閲覧に加えて日常的に自分の治療ログを残すことで、より自分に合った治療データ(=同質データ)が表示されるようになる。またユーザーのみならず、不妊治療の患者を担当する医師は、cocoromiを通じて、患者の治療知識の向上により、診療におけるコミュニケーションの円滑化が可能になるとしている。

通院頻度が高い不妊治療について、通院スケジュールや治療ログ管理

cocoromiアプリのカレンダーは、Googleカレンダーとの連携が可能となっており、通院頻度が高い不妊治療の通院スケジュールを管理しやすいという。

毎回の診療内容も、採卵・移植・検査などカテゴリーごとに記録していくと、周期ごとの治療サマリー表示が可能。どのような治療をして、どのようにホルモン値が変化したのかを一覧で振り返ることができる。転院をする際には、このサマリーをコピーして医師に提出することでコミュニケーションが円滑に行えるとしている。

自分に合った情報を得られる不妊治療データ検索アプリ「cocoromi」正式リリースのvivolaが3000万円調達

データから不妊治療を徹底分析

過去に不妊治療で妊娠した方の統計データに加えて、女性の年齢やAMH(抗ミュラー管ホルモン)、妊孕性に影響のある疾患(男女)などから同質性を定義し、データべースから自分と似た人の同質データが閲覧可能。このため、マイデータと比較しながら今後の治療計画を立てられる。治療ログを記録するほど、ユーザーと似た人の参考になる同質データを表示しやすくなる。

自分に合った情報を得られる不妊治療データ検索アプリ「cocoromi」正式リリースのvivolaが3000万円調達

トークルームや病院検索で必要な情報を収集

不妊治療に関する専門用語や病院による治療方針の違いなど、カテゴリーごとに悩みや疑問を患者同士で共有して情報交換が可能なトークルームを用意。また病院検索では、土日診療や夜間診療などの条件を指定して全国の病院検索が行える。

今後は、セカンドオピニオンやオンライン診療可能な病院検索、病院ごとの治療成績や保有設備などの情報も追加予定。

自分に合った情報を得られる不妊治療データ検索アプリ「cocoromi」正式リリースのvivolaが3000万円調達

関連記事
不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択
自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」が生理不順・妊娠・更年期の検査キット3種類を発売
ガーミンがスマートウォッチ連動の「Garmin Connect」アプリに「妊娠トラッキング」機能追加
妊産婦のオンライン診療で安心安全な出産を目指すメロディ・インターナショナルが1.6億円調達
ピルのオンライン診察アプリ「smaluna」の「ネクイノ」が20億円を調達、社名変更も発表
ゲノム解析技術を不妊治療分野に医療実装するVarinosが総額3億円を調達

カテゴリー:フェムテック
タグ:資金調達(用語)妊娠(用語)vivola(企業)日本(国・地域)

不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

不妊治療のための装着型基礎体温デバイスの研究開発を手がけるHERBIOがNEDO STSで採択

HERBIO(ハービオ)は4月2日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO)が実施した、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」(NEDO STS。最大7000万円の助成金)にかかる第3回公募において採択されたと発表した。

HERBIOは、直腸温(深部体温)と臍部周辺温度の相関性を確認し、同社開発中のウェアラブルデバイスで取得したデータを基に、体温変動の研究・解析を実施する研究開発型スタートアップ。

妊娠を望んでいる女性・将来的に妊娠を望む女性は、妊活の第一歩として基礎体温の継続的な計測を行う必要がある。ただし毎朝安静状態で計測する必要があり、社会進出が進み、様々なライフスタイルの中で生きる女性にとって難しい状況にある。

HERBIOは、独自技術を活用したウェアラブルデバイスにより、取得した体温の変動データを研究することで、より精度高く妊活に貢献できるサービスの提供を目指している。また、研究により体内時計や現代女性の生活様式に適した行動変容システムをあわせて開発し、早期の社会実装を加速させる。

HERBIOは、研究開発型スタートアップとして、2017年の創立以来「体温」を軸とした事業展開を行い、ウェアラブルデバイスの開発、体温データの変動に関する研究・解析を進めている。従来取得が難しかったデータを同社独自技術を活用することで、現在製薬会社との治験や、教育機関との共同研究がスタートしているという。

同社は、「生きるに寄り添うテクノロジー」というミッションを掲げ、今までにない発見と課題の解決手法を確立し、研究成果による社会課題の解決を目指す。また、世界中の誰もが安心して医療を受けることができ、医療と健康に隔たりがなく健やかに生きることができる状態を実現するとしている。

関連記事
妊産婦のオンライン診療で安心安全な出産を目指すメロディ・インターナショナルが1.6億円調達
自社開発のウェアラブルセンサーによる体温の研究・解析を目指すHERBIOが1.2億円を調達
ピルのオンライン診察アプリ「smaluna」の「ネクイノ」が20億円を調達、社名変更も発表
ゲノム解析技術を不妊治療分野に医療実装するVarinosが総額3億円を調達
痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円獲得

カテゴリー:フェムテック
タグ:医療(用語)ウェアラブル(用語)資金調達(用語)妊娠(用語)NEDO(組織)HERBIO(企業)日本(国・地域)

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」が生理不順・妊娠・更年期の検査キット3種類を発売

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」が生理不順・妊娠・更年期の検査キット3種類を発売

Vitalogue Health(バイタログヘルス)は3月26日、自宅でできる郵送のホルモン検査サービス「canvas」(キャンバス)を発売した。妊娠を見据えた健康チェックができる「Women’s Fertility Check」、更年期を見据えた健康チェックが可能な「Menopause Check」、ニキビ・生理不順が気になる方向けの検査キット「Women’s General Health Check」の計3種類を用意しており、公式サイトで購入できる。

  • Women’s General Health Check:ニキビ・生理不順が気になる方向けの検査キット。​排卵・ニキビ・体調に関係するホルモンの値から、肌や体調にホルモンがどう影響しているかセルフチェック可能
  • Women’s Fertility Check:妊娠において不利な状況がないかどうかを調べるための検査キット。排卵・卵子の数・体調に重要な役割を持つホルモンの値から、妊娠に向けた身体の状況や現在の体調にホルモンがどう影響しているかセルフチェックできる
  • Menopause Check:排卵と体調に関連するホルモンのバランスから、気になる症状が更年期に関連しているものなのか、他の要因によるものなのかセルフチェック

価格は、Women’s Fertility CheckとWomen’s General Health Checkが税込2万8600円、Menopause Checkが税込1万6500円。また同サイトでは、それぞれ20~40%オフとなる先行販売価格を別途提示している(1カ月限定)。

また企業・団体の福利厚生や共同購入のためのセット割引も用意しており、10個セットで35%オフ、30個セットで40%オフになるセットも用意。個人・法人問わず多くの人が郵送ホルモン検査サービスを利用できるよう、幅広い商品ラインナップを取り揃えている。

canvasは、自己採血することで、自宅で自分のホルモンをチェックできる検査サービス。PMS(月経前症候群)や生理痛、妊娠、更年期と、女性は一生を通してホルモンに大きな影響を受けるため、年齢や月の生理周期によるホルモンの変化について知ることで、ライフスタイルやキャリアプランの選択肢を自分で選び自分で変えていく人を増やしたいと考え、「canvas」を生み出したという。

検査内容は、「排卵機能」「卵巣予備能(卵子の残り数)」「甲状腺機能」に関わる8つのホルモンのうち、気になる悩みに合わせて必要なホルモンを測定するというもの。同社によると、8つのホルモン値を計測し包括的なアドバイスを行うサービスは、canvasが日本初としている。

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」が生理不順・妊娠・更年期の検査キット3種類を発売

また独自アルゴリズムを確立し機械学習を組み合わせることで高精度で解析できる手法とともに、検査機関と連携しており、検査レポートには最新の医学エビデンスに基づいた医師のコメントを付けているそうだ。

なおWoman’s General Health CheckとWomen’s Fertility Checkでは、同じホルモンを測定しており、主な悩みに合わせて、Menopause Checkも含めて3つのうちから選択できるようにしているという。

利用の手順と検査結果

利用の際は、まずcanvasウェブサイトにおいて、キットに付随するバーコード番号を入力し会員登録を行う。キットが自宅に届いた後は、生理3~5日目に自身で血液を採取し返送すると、検査レポートが10日以内にマイページに届く。

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」が生理不順・妊娠・更年期の検査キット3種類を発売検査レポートには、最新の医学エビデンスに基づいた医師のコメントを掲載。普段病院では時間が足りずにきちんと理解するのが難しかったホルモンと身体の関係について、マイページにまとめているという。

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」が生理不順・妊娠・更年期の検査キット3種類を発売

canvasは、検査方法、検査結果、アドバイスの内容について、医師・専門家によるサポートの基開発を行っており、検査結果により病院への通院が必要な場合には連携クリニックを紹介しているそうだ。

関連記事
ガーミンがスマートウォッチ連動の「Garmin Connect」アプリに「妊娠トラッキング」機能追加
自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」のVitalogue Healthが資金調達
妊産婦のオンライン診療で安心安全な出産を目指すメロディ・インターナショナルが1.6億円調達
ピルのオンライン診察アプリ「smaluna」の「ネクイノ」が20億円を調達、社名変更も発表
「初めて生理が楽しみになった」女性150名の声から生まれた生理用品D2C「Nagi」
ゲノム解析技術を不妊治療分野に医療実装するVarinosが総額3億円を調達
女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」が約4500万円調達、月経前症候群の悩みにアプローチ

カテゴリー:フェムテック
タグ:生理痛妊娠(用語)Vitalogue HealthPMS / 月経前症候群日本(国・地域)

ガーミンがスマートウォッチ連動の「Garmin Connect」アプリに「妊娠トラッキング」機能追加

ガーミンがスマートウォッチ連動の「Garmin Connect」アプリに「妊娠トラッキング」機能追加

GPS機器メーカーのガーミンは、スマートウォッチシリーズと連動して活用するモバイルアプリ「Garmin Connect」に、新たな女性向けヘルスケア機能として「妊娠トラッキング」を搭載します。

妊娠トラッキングは、Garmin Connect アプリでトラッキングしている健康データと一緒に、妊娠状況の経過を確認できる機能です。具体的には、心拍数、ストレスや睡眠、運動量といったGarminの既存のライフログデータのモニタリングと、妊娠中に気になる妊婦の健康、フィットネスなどの情報を1か所にまとめることで、妊娠の経過に沿った体の状態や相関を確認できます。

Garmin Connect アプリでは、妊娠週数ごとに摂取すべき具体的な食材や栄養素に関する情報や、妊娠中の運動についてのアドバイス、妊娠に伴って生じるマイナートラブルへのヒントを確認でき、体重増加の推奨範囲を参照しながら、妊婦と胎児の健康的な体調管理に役立てることができるそうです。

ガーミンがスマートウォッチ連動の「Garmin Connect」アプリに「妊娠トラッキング」機能追加

妊娠アプリの画面:左から毎日の記録、ヒント、4週間データ

妊娠アプリの画面:左から毎日の記録、ヒント、4週間データ

ウォッチの画面

これらの機能は、2月11日に発売した女性向けスマートファッションウォッチ「Lily」シリーズに搭載し、今後は「VENU」シリーズや、「vivomove3」「vivoactive4」などにも搭載するとしています。新機能搭載に伴い、Connect IQ ストアにて妊婦向け専用アプリケーション「Pregnancy Tracking(プレグナンシー トラッキング)」の提供も開始しています。

ガーミンは、これまでも女性に役立つ健康管理機能として、毎日の気になる消費カロリー、睡眠、水分補給、体のエネルギー状態を数値化したBody Battery、そして生理周期トラッキングを提供しています。女性のライフステージに合わせ、日々の健康管理に役立つサービスを展開することで、女性向けヘルスケア機能の充実を図る考えです。

(Source:ガーミンEngadget日本版より転載)

関連記事
妊産婦のオンライン診療で安心安全な出産を目指すメロディ・インターナショナルが1.6億円調達
ピルのオンライン診察アプリ「smaluna」の「ネクイノ」が20億円を調達、社名変更も発表
ゲノム解析技術を不妊治療分野に医療実装するVarinosが総額3億円を調達
妊活・不妊治療領域D2C「MEDERI」がTLMやエンジェル投資家から3000万円の資金調達
LINEで生理日を予測、パートナーとも共有できる「ペアケア」にサブスクプラン追加
Fitbit、スマートウォッチ・アプリに生理周期モニター機能を追加

カテゴリー:フェムテック
タグ:Garmin(企業)ガジェット(用語)出産スマートウォッチ(製品・サービス)妊娠(用語)

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」のVitalogue Healthが資金調達

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」のVitalogue Healthが資金調達

自宅でできる郵送のホルモン検査サービス「canvas」(キャンバス)を展開するVitalogue Health(バイタログヘルス)は2月1日、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先はジェネシア・ベンチャーズ、赤坂優氏、森本千賀子氏、石倉壱彦氏。今後、プロダクトのさらなる拡充、各種プロモーション、採用活動を行う。

Vitalogue Healthは、代表取締役CEOの長谷川彩子氏自身の経験から女性が自分の身体と向き合い、人生の選択肢を広げるきっかけを増やしてほしいという思いから、2020年4月に設立。canvasをファーストプロダクトとして展開し、ウェブサイトを通じた事前登録を開始しているほか、法人利用・アライアンスでの活用も予定。

自宅でできる郵送ホルモン検査サービス「canvas」のVitalogue Healthが資金調達

canvasは、自分の手で人生を描き続けたいと願うすべてのひとの、あらゆるライフスタイルを叶えるための「ホルモンケア」サービス。PMS(月経前症候群)や生理痛、妊娠、更年期と、女性は一生を通してホルモンに大きな影響を受けて生きているという。

同社は、canvasの第1弾として、妊娠を見据えた健康チェックができる「Women’s Fertility Check」、更年期を見据えた健康チェックができる「Menopause Check」の2種類の検査キットへの事前登録を、2020年1月よりcanvas公式サイトで開始している。

関連記事
ピルのオンライン診察アプリ「smaluna」の「ネクイノ」が20億円を調達、社名変更も発表
女性を意識したウェルネスプロテインKOREDAKEが資金調達、「筋肉ムキムキ」イメージを払拭
「初めて生理が楽しみになった」女性150名の声から生まれた生理用品D2C「Nagi」
ゲノム解析技術を不妊治療分野に医療実装するVarinosが総額3億円を調達
女性向けヘルスケアD2Cブランド「WRAY」が約4500万円調達、月経前症候群の悩みにアプローチ

カテゴリー:フェムテック
タグ:資金調達(用語)生理痛妊娠(用語)Vitalogue HealthPMS / 月経前症候群日本(国・地域)

AIが健康な胎芽を特定し体外受精の成功率を高めると謳うEmbryonics

年を追うごとに、医療の世界では正確な診断の標準的レベルをAIが押し上げるようになってきている。皮膚ガン肺ガンの発見においては、それが顕著だ。

そして今、イスラエルのスタートアップEmbryonics(エンブリオニクス)は、同社のAIなら、体外授精で健康な胎芽が着床する確率を高めることができると主張する。彼らが開発したのは、基本的には、胎芽の着床の可能性を予測するアルゴリズムだ。それは、体外受精の際の胎芽の発育をコマ撮りした画像でトレーニングされている。

ハッキリいって、これはやっと始まったばかりの技術だ。現在のところ、20歳から40歳の女性11人を対象にしたテストが行われているが、そのうち6人は妊娠に成功し、残る5人は結果待ちの状態だとEmbryonicsは話している。

それでもEmbryonicsは、経済的不安から出産をためらっているミレニアル世代の女性のように、外的要因のために何十年も進歩がないまま拡大を続けている巨大市場を活気づける可能性があるという点で興味深い。

体外受精市場は2019年のおよそ183億ドル(約1兆9000億円)規模から、今後5年で2倍に拡大すると一部では見られている。しかし、毎年体外受精を試みている多くの女性たちは、1回に1万ドル(約103万円)から1万5000ドル(約155万円)という費用を長期にわたり負担している(少なくとも米国の場合)。しかも、年齢が増すごとに成功率は下がってゆく

そんな体外受精の実施回数を減らし費用を軽減させることが、まさにEmbryonicsの原動力だ。同社は3年前に、CEOでありヘブライ大学で一般外科を学び、後にある体外受精研究所の研究員となり受胎の科学に変わらぬ興味を抱いた医学博士Yael Gold-Zamir(ヤエル・ゴールド-ザミール)氏によって創設された。

後に彼女は偶然にも、興味と専門知識を相補的に併せ持つ2人の人物を紹介される。1人はDavid Silver(デイビッド・シルバー)氏。テクニオン・イスラエル工科大学で生物情報学を学び、2020年にEmbryonicsに加わる以前は、Apple(アップル)の機械学習エンジニアとして3年、Intel(インテル)のアルゴリズムエンジニアとして3年働いている。

ゴールド-ザミール氏が紹介された2人目は、 Alex Bronstein(アレックス・ブロンスタイン)氏だ。いくつもの企業を立ち上げてきた起業家であり、Intelの主幹エンジニアとして長年勤務してきた。現在はテクニオン・イスラエル工科大学の知的システムセンターの主任を務めている。さらに、Embryonicsや資本市場のアルゴリズムトレーディングに特化したスタートアップSibylla(シビラ)などで、深層学習AIを含む複数の研究に携わっている。

Embryonicsの規模はまだ小さいが、この3人と彼らの元に集まった13人のフルタイムの従業員は、明らかに進歩を遂げている。

Shustermann Family Investment OfficeとIsraeli Innovation Authority(イスラエル・イノベーション局)が主導したシード投資ラウンド400万ドル(約4億1400万円)を助力とするEmbryonicsは、現在、欧州でのソフトウェア販売を可能にする認可を待っているという。それは、人間よりもはるかに高い精度で小さな細胞クラスターのパターンを検出するというもので、ヨーロッパ大陸全域の不妊治療クリニックが利用できると同社は話している。

世界中に点在し、あらゆる人種、地域性、年齢層を含む数百万件の匿名化された患者データベースを利用することで、同社はすでに次のステップにも目を向けているとゴールド-ザミール氏はいう。

中でも注目すべきは、胎芽分析ソフトウェアをひっさげて米国アメリカ進出を果たす他に、ホルモン刺激と呼ばれる治療法の改善を不妊治療クリニックと協力して進めるという計画だ。ブロンスタイン氏が指摘するとおり、体外受精療法や妊孕性温存療法を受けるすべての女性は、卵巣ができるだけ多く成熟した卵子を作り出せるようにする処置を受けることになる。これには8〜14日間にわたるホルモン注射も含まれる。しかし現在、一般的なプロトコルは3種類しかなく、「適切なものを確立するために数多くの試行錯誤」が続けられている状態だと彼は話す。そこで深層学習を利用すれば、その人ごとの適切なホルモンの配合と、適正な投与時期がわかってくるとEmbryonicsは考えている。

すべてが計画どおりに進むと、彼らの仕事はさらに増える。「Embryonicsの目標は、治療のあらゆる側面をカバーする総合的なソリューションをもたらすことです」とゴールドザミール氏はいう。彼女は会社を経営しながら、4人の子どもを育てている。

この生まれたばかりの企業が成功できるか否かを判断するのは、まだ早い。しかし、数日間シャーレに載せておいた胎芽を顕微鏡で観察し、細胞の増殖の様子や形状からその健康状態を判断するという、40年前から変わらない世界中の体外受精クリニックのやり方を一気に変革するテクノロジーを先導しているようには思える。

2019年春、ニューヨーク市のワイルコーネル医科大学院の研究者が、AIは人間の目よりも正確に胎芽の形態を評価できるとの研究結果を発表した。これは、受精後正確に110時間経過した人間の胎芽の写真1万2000点を使ってアルゴリズムをトレーニングし、胎芽の質の良し悪しを選別した結果だ。

この調査を行った研究者たちは、まず胎生学者が、個々の胎芽の外観をさまざまな側面から観察して、等級づけを行ったと説明している。次に統計的分析によって胎芽の等級と、うまく妊娠する確率との関係を導き出した。妊娠の成功率が35%以上なら胎芽は高品質、35%未満なら低品質と見なされる。

トレーニングと検証を終えたアルゴリズムは、新しい画像を使った胎芽の選別を97%の精度で判定することに成功した。

関連記事:フェムテックは細分化により妊娠計画以上の事業に成長する

カテゴリー:フェムテック
タグ:Embryonics資金調達妊娠

画像クレジット:Tammy Bar-Shay

原文へ

(翻訳:金井哲夫)