全国14の教科書出版社と提携、有償導入600校超の中高生向けデジタル教材・問題集「リブリー」が資金調達

全国14の教科書出版社と提携、有償導入600校超の中高生向けデジタル教材・問題集「リブリー」が資金調達

デジタル教材とAIドリルの特性を併せ持つデジタル教材プラットフォーム「リブリー」を展開するLibryは7月21日、グロービス・キャピタル・パートナーズ、凸版印刷などを引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施したことを発表した。調達金額は非公開。

「一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮できる社会をつくる」をビジョンとするLibryは、2017年にプラットフォーム「リブリー」をリリース。ひとつの端末で複数の教材や問題集を管理でき、学習履歴に基づいた「類似問題」機能などで、生徒ごとの学習状況や理解度に合わせた個別最適化学習を行うというものだ。同時にLibryは、全国14の教科書出版社と提携し、数学、物理、化学、生物、地学、英語の教科書と問題集260冊をデジタル化して提供している。特に高校理数科目では、教科書会社5社中の4社と提携しているという。有償導入している学校は全国600校以上。2022年には複数の出版社が「リブリー」上でデジタル教科書の提供をすることになっている。

今回の資金は、次の目的に使われる。

  • 営業体制の強化による導入校数の拡大
  • 操作性の高いUIへの改善およびカスタマーサクセス体制の強化による顧客の活用促進
  • 「生きるチカラを育むデジタル教科書」に向けた新機能開発
  • 地理・歴史・公民科目など、対応科目の拡張に向けた新機能開発

2012年5月設立のLibryは、共同創設者で代表取締役CEOの後藤匠氏と取締役テクリードの中村文明氏が東京工業大学在学中に立ち上げたスタートアップ。その成り立ちから今日までの記録が、「note」の記事で紹介されている。

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カテゴリー:EdTech
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Microsoftが学校用軽量版、Windows 10 Sを発表――Google Chromebookに対抗

今日(米国時間5/2)、ニューヨークで開催されたイベントで、Microsoftは教育マーケットを取り戻すための大きな発表を行った。 Chromebookに負けつづけきたMicrosoftは、これに対抗すべく、肥大化した機能を思い切って削った軽量のOS、Windows 10 Sを発表した。これは学校現場での利用に焦点を絞ったプロダクトだ。

Microsoftは名指しはしなかったものの、新しく発表されたブラウザ専用OSがChromebookを念頭に置いて開発されたことは間違いない。Microsoftは経済性を武器に世界の教育マーケットで大きなシェアを持っている。しかしアメリカ市場ではこのところChromebookが着実にシェアを伸ばしていた。

複数ユーザーがそれぞれログインできることがChromebookの重要なセールスポイントだ。なんといっても教育用ノートパソコンは大勢のユーザーが使うことになる。公立学校の情報システム担当はこの問題を処理するために頭を悩ましてきた。そこでWindows 10 Sはこの機能を備えることとなった。Microsoftはログイン・アプリを追加し、システム担当が簡単に複数ログイン問題を処理できるようにしている。

ログイン情報はUSBに保存される。システムにUSBを接続すると30秒程度でログインが完了する。何百台ものパソコンのログインを処理しなければならない場合、わずかな時間の節約も大きな影響を与える。

もう一つ重要なのは、Windows Storeだ。このストアからのダウンロードには教師の承認が必要だ。また教師はインストールされたアプリについてもカメラなど多数の機能をコントロールできる。

Windows 10 Sの登場は今年1月に教育マーケットに注力するという発表の際に予告されていた。Windows 10 S対応ハードウェアはAcer、Asus、HP、Dell、東芝その他のサードパーティー製で189ドルから供給される。興味ある点はこうしたハードウェアは発表されたWindows 10 S専用ではない点だ。 学校は独自に10 Sをアップグレードすることができる。そういう次第で、Microsoftは学校に対してOSのアップグレードとOffice 365の利用を1年間無料で約束している。

Windows 10 SはあくまでWindowsの軽量版であり、Chromeの目新しさを欠いているのは事実だ。 しかしMicrosoftはゼロからスタートするのではなく、教育市場における現行の強みを活用することを考えたようだ。【略】

Chromebookはアメリカ以外の市場ではまだ大きな存在とはなっていない。世界的に教育市場で大きな存在であるMicrosoftにはWindows 10 Sを成功させる可能性が十分ある。また教育市場を通じて将来のパソコン・ユーザーたちに強い印象を与え、Microsoft製品の選択に導こうという意図もあるかもしれない。

Windows 10 Sは、アメリカにおける新学年の開始に間に合うよう、この夏に出荷される予定だ。

〔日本版〕イベントの冒頭でサティア・ナデラCEOが登場、インドで祖父が教育を受けられたことが父に教育を受けさせ、結局ナデラ自身が大学で学ぶことを可能にしたと語っている。祖父には兄がいたが教育を受けられなかったために建設労働者として終わったという。Windows 10 Sの紹介は17:20付近から。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon、無料の教材プラットフォーム「Amazon Inspire」のローンチで教育分野に参入

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今年3月、Amazonは教育出版市場に乗り込む計画を立てていると伝えた 。教師らがオンラインで教育リソースを投稿したり、共有したりできる無料のプラットフォーム「Inspire」をローンチするという内容だった。本日、その発表通りのことを行った。先生向けのオンライン・エデュケーション・リソース(OER)プラットフォームAmazon Inspireをローンチし、教師は幼稚園生から高校生までを対象とした教材を無料で得ることができる。まずはアメリカでベータ版を展開する。

Amazonの最も有名なサイトのような見た目と使い方だが、Eコマースの要素はない。Inspireを使ってユーザーは関連度の高い順、ユーザー評価、人気度や他の条件(レベルやスキル)にあてはまる特定の教材を探すことができる。

コンテンツは先生や他の教育者から「クラウドソース」された教材もある。Amazonのセルフパブリッシングプラットフォームにやや似ているインターフェイスからアップロードされたコンテンツだ。そして、サードパーティーが投稿した教材もある。Folger Shakespeare Libraryはまず100の演目と関連レッスン、授業モジュールを追加し、ワシントンDCのNewseumもコンテンツを提供する。

Amazon Inspire Search

教育者からプラットフォームへの教材提供が思うように進まない場合、このようなサードパーティーからのコンテンツ提供は助かるだろう。しかし、AmazonのK-12 Education部門のGMを務めるRohit Agarwalは、今のところそのような状況ではないと話す。「早期パートナーシップから、教育者はコンテンツ協力に対して積極的です」とTechCrunchに話す。「すべての地域や州からInspireへの協力があります。教材を制作している人もいれば、キュレートしている人もいます」。

Inspireを使う動機(インスピレーションとも言える)は、教育者はこれまで教材が得られるところを探していたことがある。また、自分が持っている教材を共有することもありうるだろう。「アメリカには1万3000以上の学区があり、そこの人たちと話した結果、何度も同じ話を聞きました。それは、自分たちで教材を作ったことがあり、また他の人たちも同じような教材を作っていることを知っているという話です」と彼は言う。しかし実際にそういった教材を見つけるのには細かい作業が必要で「サイトやブログを介してたどり着く」のだという。

教師は授業の教材を探すのに週に12時間ほど費やしているとAmazonは推定する。探す時間を削減できるのなら、そういった教師に訴求することができるだろう。「全ての教師にリソース面で貢献してもらいつつ、教師の教材を発掘する助けになれば、全国にいる300万人以上の教師のためにアクセスを広げることができるでしょう」という。

Amazon Inspireで、Amazonはより真っ向からGoogleやAppleと競い合う立場になる。彼らもまた、教育分野をターゲットにプラットフォームや端末を広める施策を進めている。Amazonも以前から着目していた分野だ。Amazonはオンラインの数学教育スタートアップTenMarksを2013年に買収した。 TenMarksのプロダクトは買収後も引き続き利用可能な状態だ。そして、2015年にはアメリカ政府のOpen Education initiative(オープン・エデュケーションに関する取り組み)にも参加した。TenMarksのチームはInspireも率いている。AgarwalはこのスタートアップのCEOを務めた人物だ。

AmazonはInspireから直接収益を得ることはない。無料で参加でき、プラットフォームの教材を使用するのにコストはかからない。ただこのサービスはAmazonのビジネスにとって複数の戦略的で重要なプロダクトを支えるものになる。

それには、Eブックやテキスト、教育アプリを管理するWhispercast(Whispercastは2015年に教育向けに大幅アップデートした)、AWSの生徒や教師、学校への展開、Kindleの教育版ダイレクト・パブリッシング、「School List」とAmazon Businessでの備品販売などが含まれる。もちろん、KindleのEリーダーやFireタブレットといった物理的なプロダクトの展開も想定される。

ここにInspireを加えることで、教育者はAmazonを使い、教育に関する必要なものがオンライン上で全て揃うワンストップのプラットフォームになることができる。Inspireを無料で提供することは、営利目的の大手ビジネスが公的な教育リソースを扱うべきではないという多くの人が持つ認識に沿う。中にはAmazonのような営利目的企業がこういったプラットフォームを運営することに疑問を持ち、Amazonの目的を懸念する人もいる。

「誰もが、テキストは高額すぎると思っています」とAudrey Wattersは書く。(3月のAmazon Educationのウェイトリストの件に関しても私はAudreyのツイートを見て知った)。「ただ、価格のインフレはOERが解決することに掲げる問題の1つにすぎません」。(OERの目的は、教材の保有、再利用、見直し、再編集、再配信と伝えている)。「Amazon Inspireがこれらの目標を達成する助けになるか、あるいはAmazonが本当に解決したい『課題』は教育市場における強い足場を作ることなのかはまだ分からない」。

Inspireを無料で提供することは、他の支払いを求めるプラットフォームより魅力的で気軽に使うことを促すだろう。

3月にInspireについて最初に報道してからこれまでの間、Amazonは静かに(でも秘密ではない)招待制でコミュニティーの参加者を集めてきた。Twitterの教育コミュニティーなどに参加しているのなら、その内何人かがInspireについてツイートしているのを見た事があるかもしれない。

結果として、プログラムにはそれなりのユーザーが参加した状態でローンチすることができた。Amazonはいつものように、ユーザー数を開示することはなかったが、インディアナ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、バーモント州がこのプログラムを支持しているという。また、カルフォルニア州のヴィサリア、ニューヨーク州ミネオラ、ペンシルベニア州ピッツバーグ、カルフォルニア州エルカホン、ミズーリ、ナッシュビル、タラホーマ、テネシー、バージニアビーチの学区が支持しているという。

Inspireを今ローンチすることで、夏休みが終わって学校が再開する秋頃、具体的にはデンバーで開催されるISTE教育者カンファレンスまでに、プログラムの評価が上がり、コンテンツが増えていることをAmazonは期待している。Folgerだけでもそれまでに2000以上のコンテンツを追加する予定だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website