Virgin Galacticの眺めを重視した観光宇宙船の内装が初公開

有人宇宙飛行の商用サービス開始に向けた準備が進む中、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)はVSS Unity(ユニティー)宇宙船の客室の最終デザインを初めて公開した。同社は、本日開かれたバーチャルイベントでその内部を披露し、VRを使って私も含む報道関係者を特別に案内してくれた。客室は、1回数万ドル(数百万円)という料金に見合う乗客のエクスペリエンスを第一に考えて作られている。

Virgin GalacticのVSS Unityは、最大6人の乗客で宇宙の準軌道を飛行するという、前代未聞の旅を提供する。そこでは無重力を体験でき、地球の丸さや大気圏外の宇宙の暗さを観察できる。客室は、料金を支払って搭乗した民間宇宙飛行士たちの飛行中の安全性、居住性、自由が最大限に確保できるよう設計されている。Unityは母機で上空に運ばれ、切り離された後にロケット噴射によって急加速される。宇宙空間では自由浮遊飛行となり、最後に大気圏を脱出したときとは反対の方向に高い加速度がかかる形で地上に帰還する。

快適な飛行を可能にするために、Virgin GalacticはUNDER ARMOUR(アンダー・アーマー)と共同で、カーボンファイバーとアルミにメタリックなローズゴールドのアクセントを織り込んだ三次元の柔らかい素材とファブリックを組み合わせるシートを開発した(UNDER ARMOURは乗客が着る専用宇宙服も作っている)。飛行の途中で乗客は地上の3倍の重力を体験することになるため、できる限り安全に快適に過ごせるように考えられている。このシートは、それぞれの乗客の体型に合わせて個別に製作される。その際、例えばポニーテールにしている人ために頭がフィットするようにヘッドレストの中央に穴を設けるなど、大変に細かい部分まで配慮される。

シートに組み込まれた5点式シートベルトは、1つのボタンを押すだけで簡単に外すことができ、無重力状態になる自由浮遊飛行の際に危険にならないよう、ベルトはシートに内蔵された固定具の中に自動的に引き込まれる。地球に帰還するときには再びベルトを装着するが、そのときは簡単に場所がわかるようになっている。

すべてのシートは、無重力状態の間は手で掴まって体を支えるハンドグリップとしても活躍する。もっとも、客室内のあらゆるものがハンドグリップの役割を果たしている。どのシートも壁から突き出た取り付け具で固定され、下に空間が作られているのもそのためだ。これによりUnityが地球の大気圏を抜け、上下という概念がなくなったときに探索の幅が広がるわけだ。

同じ理由で、客室全体が柔らかい素材で作られている。また窓は2名の乗員用の3つを含めて全部で17箇所あり、乗客用の窓のそれぞれに柔らかい素材で作られたリング状の「ヘイロー」照明とハンドグリップそしてカメラが内蔵されている。この他にもVirginは、客室のいたるところにカメラを設置した。これには飛行中に条件が変化しても高画質の写真撮影ができるよう、映像の専門家が調整を施す。乗客が自分で撮影する手間を省き、それぞれの体験を最良の形で確実に記録することが狙いだ。Virginによれば、画像は着陸とほぼ同時に乗客に送られるため、宇宙旅行者たちは即座にSNSで写真をシェアできるという。

すべての座席が窓際席で、横と上に2つずつ窓が配置されていて、息を呑むような眺めが楽しめる。また、客室とロケットエンジンとを仕切る後方の遮蔽壁全体を大きな鏡が覆っている。これは、乗客が無重力での自分のおかしな姿を見て楽しむためのものだ。

シートは、飛行中の段階に応じて方向や角度が変わる。ロケットを噴射して3.5Gで加速中は背もたれが起きる。大気圏の縁をかすめて再突入のために3Gで減速するときは、背もたれが倒れる。各シートには情報ディスプレイがあり飛行中の状況を確認できるようになっているが、操縦士と副操縦士は完全に乗客と遮断されているわけではないため、理論的にはその場で乗客が質問することも可能だ。

Virgin Galacticでは、定期航空便が先駆者となって採り入れた飛行中の雰囲気を演出する照明方法を、宇宙用に作り直して採用している。客室のよく考えられた位置に巧妙に隠された照明器具から発せられる光が、飛行の各段階に応じて動的に変化する。客室の内装の詳細を表した下の写真を見て欲しい。3名搭乗の場合の座席の配置を示した写真では、片側に実験器具が並べられている(実験器具の搭載は、Virgin Galacticがもう1つの収益源として考えているものだ)。

  1. Virgin Galactic宇宙船客室のペイロード配置

    Virgin Galactic宇宙船客室のペイロード配置。
  2. Virgin Galactic宇宙船の宇宙でのシートの状態

    Virgin Galactic宇宙船の宇宙でのシートの状態。
  3. Virgin Galactic宇宙船シートの細部

    Virgin Galactic宇宙船シートの細部。
  4. Virgin Galactic宇宙船の宇宙での客室内部

    Virgin Galactic宇宙船の宇宙での客室内部。
  5. Virgin Galactic宇宙船客室の内装

    Virgin Galactic宇宙船客室の内装。

実際に料金を取って乗客を飛行させるまでには、まだ最後の準備が残されてはいるが、VSS Unityの内装が決定したことでゴールにぐっと近づいた。これはまったくユニークな提案であるため、実際に乗って確かめた人の意見なしに評価は下せない。しかし明らかにいえるのは、Virgin Galacticはこの宇宙旅行の料金が支払えるすべての人を満足させるために数多くの見解、考察、専門知識をこの宇宙船の内装デザインに注ぎ込んでいるということだ。

画像クレジット:Virgin Galactic

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(翻訳:金井哲夫)

Axiom Spaceが提供する国際宇宙ステーション10日間の旅はコミコミでたったの58億円

Axiom Space(アクシアム・スペース)は、国際宇宙ステーション(ISS)への定員3名の往復旅行を5500万ドル(約58億円)という超低価格で提供し、歴史を変えようとしている。

米国ヒューストンに本社を置き、ベンチャー投資企業の支援を受けるAxiomは、同社で訓練した司令官1人と、民間宇宙飛行士3人をISSまでCrew Dragon(クルー・ドラゴン)で往復輸送する契約をSpaceX(スペースエックス)と交わした。

このミッションは2021年後半に打ち上げが予定されており、3人のクルーはISSに滞在して「少なくとも8日間、大きな由緒正しい宇宙ステーションでしか味わえない微小重力と地球の眺めを堪能できます」と同社は声明の中で述べている。

同社の最高責任者Michael Suffredini(マイケル・サフレディニ)氏にとってこの宇宙旅行は、米航空宇宙局(NASA)でのISSの管理者という以前の仕事の延長線上にある。

「この歴史に残る宇宙飛行は、誰もが日常的に宇宙に行ける時代に向かう分岐点となります」とサフレディニ氏は声明で語っている。「これはAxiom Spaceが、つまり民間企業が初めて運営する数々のISSへの完全な有人飛行ミッションの中の最初のひとつに過ぎません。輸送手段を確保できたことは、目標達成への大きな前進であり、この事業でSpaceXと協力できることを大変にうれしく思います」。

この宇宙旅行は、AxiomがNASAと交わしたSpace Act Agreement(宇宙法協定)のもとで実施されるISSへの数々の「先駆け的ミッション」の中の最初のものとなる。Axiomは、この他にもISSへの民間宇宙飛行ミッションの合意を得るべくNASAと話し合いを続けている。

Axiomでは、NASAのスケジュールの合間を縫って年2回のフライトを人々に提供したいと考えている。その計画を進めながら、同社は自己資金による宇宙ステーションの建造も進める。

同社はすでにその目標のために機関投資家の支援を取り付け、個人投資家やCrunchbaseの情報によるとBalfour Capital(バルフォー・キャピタル)、Starbridge Venture Capital(スターブリッジ・ベンチャー・キャピタル)といった機関投資企業から1600万ドル(約17億円)を調達している。

「2012年からSpaceXは、NASAとの契約に従いISSに物資を送っていました。そして今年の後半には、初めてNASAの宇宙飛行士を運びます」とSpaceXの社長兼最高執行責任者であるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏は声明で述べている。「今、AxiomとそのNASAからの支援のお陰で、国際宇宙ステーションが初めて民間有人ミッションに門戸を開いたことにより、宇宙の商業化はさらに加速され、有人宇宙探査の新時代が幕を開けようとしています」。

Axiomは、宇宙飛行に挑戦したいという人には、あらゆるトレーニング、計画、ハードウェア、生命維持、医療サポート、生活必需品、安全性証明、軌道上のオペレーションを提供すると話している。

また同社は、2024年後半から始まる、ISSへの宇宙ステーションモジュールの造設を担う企業としても、NASAから選定されている。その目的は、宇宙ステーションにプライベートセクションを設け、その利用可能で居住可能な空間を広げることにある。ISSの運用が終了した際にはそのセグメントを切り離し、自由飛行の商用宇宙ステーションとして運用したいとAxiomは考えている。

SpaceXにとってAxiomとの契約は、単にNASAの宇宙飛行士を運送し、大きな収入源を加えてくれる以上にCrew Dragon宇宙船の商業運用の幅を広げてくれるものでもある。

まさにそれが、SpaceXが商用有人宇宙観光業者と交わしたもうひとつの契約だ。先月、SpaceXは、Crew Dragonに4人の乗客を乗せて5日間の宇宙飛行を提供する事業を行うことで、Space Adventures(スペース・アドベンチャーズ)と合意している。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

宇宙観光、大きく近づく―ジェフ・ベゾスのBlue Origin、同一機体の打上げ・回収に4回連続成功

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Blue OriginはNew Shepardブースターと乗員カプセルの宇宙への打ち上げと安全な回収に成功した。用いられた機材は過去3回軌道飛行に成功しており、これで4回目の宇宙旅行となった。ジェフ・ベゾスのBlue Originは世界で最初に宇宙観光旅行を提供する民間企業となるという目標に向けて大きく前進した。

この成功でBlue Originは弾道軌道を飛行するロケットが繰り返し使用に耐えることも証明した。

今日(米国時間6/19)の無人飛行ミッション目的の一つは、乗員カプセルの減速パラシュートの一つが作動しなかった場合でも安全に着陸できることを確認する点にあった。Blue OriginではNew Shepardシステムで有人ミッションを行う前にあらゆる面で安全性を高めるべテストを繰り返している。

パラシュートが開かないというのはありそうにないシナリオと思われるが、実は過去に起きている。ジェフ・ベゾスは以前、アポロ15号が降下中にパラシュートの一つが開かなかった例を挙げた。

Failed parachute during Apollo 15 / Image courtesy of NASA

アポロ15号のパラシュートの一つが作動不良 / 画像: NASA

これに先立つ3回の打ち上げと異なり、New Shepardシステムにいくつかの改良が加えられ、また打ち上げから着陸までの一部始終がライブのウェブキャストで中継された〔ライブ録画は下にエンベッドされている〕。

打ち上げ後、ほぼ11分でNew Shepardシステムは高度100kmを超えて宇宙に達し、その後ブースター、乗員カプセルの双方が安全に地上に降り立った。New Shepardシステムは弾道飛行中に約4分間の無重量〔マイクロG〕状態を経験した。

New Shepard upon descent, slowed by circular fin on the top and smaller fins along the outside / Screenshot of Blue Origin webcast

降下中のNew Shepard。ブースター上部に、大型のリング型フィンとスタビライザー、下部に小型の安定用フィンが見える。 / Blue Originのウェブキャストのスクリーンショット

New Shepardのロケットブースターの上部(乗員カプセルと接合する部分)の円周にはリング型の安定フィンが取り付けられ、降下中の空力安定性を増している。ローンチパッドの直上でメイン・エンジンを逆噴射し、時速5マイル〔8キロ〕程度にスピートを落とす。着陸脚が展開してブースターは静かに着陸するという仕組みだ。

Blue Origin's New Shepard vehicle touches down as the crew capsule begins its descent / Screenshot of live Blue Origin webcast

ローンチパッドに着陸したブースター。インセット内はパラシュートで減速しながら降下する乗員カプセル / Blue Originのウェブキャストのスクリーンショット

ブースターが安全に着陸した後、われわれの注意は乗員カプセルに移った。ウェブキャストで鮮明に映されているとおり、カプセルからはパラシュートが2個しか打ち出されていないが、これは安全性テストのためで、計画どおりだ(このシステムでは減速パラシュートは3個が用いられる)。乗員カプセルはタッチダウン数秒前に小型エンジンを逆噴射してさらに減速する。着地の瞬間の下向き速度はわずか時速2マイル(3.2キロ)程度だという。

Blue Originの説明によると、このような正常に行われた着陸では乗員は「枕をして横になっている」ようなソフトなショックしか受けないという。

New Shepard crew capsule descent with two parachutes deployed / Screenshot of BlueOrigin webcast

New Shepardの乗員カプセルが西テキサスの山なみを背景に降下する / Blue Originのウェブキャストのスクリーンショット

ウェブキャストの解説者を務めたエンジニアによれば、乗員カプセルの着地は「完璧に計画の通りであり、大成功」ということだ。

打ち上げ前の解説によれば、もし降下中に乗員カプセルに何か問題が検知されれば即座に「パラシュートの不具合のテスト」は中止され、3個のパラシュートすべてが作動する手はずになっていた。Blue Originではカプセル・ハードウェアの安全な回収を最優先事項としているためだという。

カプセルは料金を支払った観光客を念頭に置いて設計されている。Blue Originの企業としての当面の目標は観光客を宇宙まで往復させることだ。乗客の視界を最良のものとするため、これまで宇宙に到達したカプセルとしては最大のサイズの窓が設けられている。

ただしこれまでテストされてきたカプセルには本当の窓は設けられていない(外観では判別しにくいが、窓はペンキで描かれたもだ)。しかし次回以降の打ち上げにはカプセル表面積の3分の1にも及ぶ窓が設置される。

New Shepard crew capsule / Image courtesy of Blue Origin

窓を設置した新しい乗員カプセル / 画像: Blue Origin

今回のミッションの成功でBlue Originは同一のブースター、乗員カプセルを4回(おそらくはそれ以上)繰り返して軌道飛行させることことできるのを実証した。

ジェフ・ベゾスは当面の目的として早ければ2018年にも最初の有人飛行を行う準備をしている述べた。 今回のミッションの成功でBlue Originが世界で最初に有人宇宙旅行を実現する民間企業となる可能性は高まった。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+