NASAのレトロなワームロゴが初の有人ミッション用Falcon 9に入る

NASAとSpaceX(スペースX)は、宇宙飛行士を米国の民間ロケットで初めて宇宙へ運ぶため、Crew Dragon宇宙船によるDemo-2の打ち上げにむけ注力している。そしてCrew Dragonを宇宙へと打ち上げるFalcon 9ロケットには、1992年から退役していたNASAのロゴが入った。

1970年代に誕生した「ワーム」ロゴは20年以上もの間、NASAの記念品でしか確認することができなかった。キャップやトレーナー、ステッカー、その他のグッズで見たことがあるかもしれないが、NASAの宇宙船が退役してからは、打ち上げミッションには使用されていない。NASAが現在使用している「ミートボール」ロゴは、実はワームよりも前の1950年代後半にデザインされたものだが、ワームのほうがレトロな感じがする。

このワームロゴは、現在5月上旬から中旬に打ち上げが予定されている、NASAのDoug Hurley(ダグ・ハーレー)飛行士とBob Behnken(ボブ・ベンケン)飛行士を宇宙空間の国際宇宙ステーション(ISS)へと運ぶSpaceXのDemo-2ミッションで、再び大々的に使用される。これは、宇宙飛行士の輸送ミッションでCrew Dragonを定期的に運航するための認定の最後のステップだ。

NASAはフロリダでミッションを準備中しているFalcon 9ロケットの側面に描かれた、赤いワームロゴの画像を共有し、さらに公式ミッションでロゴが使用されるのはこれが最後にはならないだろうと述べている。ただし、ミートボールロゴのファンも心配する必要はない。NASAによると、たとえワームロゴが復活したとしても、ミートボールロゴはまだその主要なシンボルだとしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

宇宙開発スタートアップのFireflyがあSatlantisと衛星群打ち上げミッションを契約

宇宙開発スタートアップのFirefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)は、地球観測と衛星運用のリモートセンシングペイロードメーカーであるSatlantis(サトランティス)と、新たな契約を結んだ。FireflyはSatlantisの小型衛星群を打ち上げる予定で、これは低軌道から地球の高解像度、あるいはマルチスペクトル画像を提供する。

Fireflyは同社初の「Alpha」ロケットと、宇宙船の開発とテストを進めている。同社は今年中にAlphaの初打ち上げを実施する予定で、米国時間2月4日にSatlantisとの間で結ばれた契約によれば2022年の打ち上げが予定されている。

Alfaは2段式ロケットで、機体には炭素複合材が使用されている。全長は約95フィート(約29m)で、約2200ポンド(約1トン)を低軌道に打ち上げられる。Rocket Lab(ロケット・ラボ)と同様にFireflyの目標は、相乗りミッションの予約に頼るのではなく、専用の打ち上げを行うための手頃な価格の選択肢を小型衛星の顧客へと提供することだが、実際にはそれ以上のペイロードも提供できる。

Fireflyは2020年初めに垂直状態でのエンジンの燃焼試験を実施したばかりだが、最初のテストに続く1月末の発射台でのテストは、出火により失敗した。同社は出火は燃料漏れによるものだと発表し、Alphaの改良を進めている。FireflyでCEOを務めるTom Markusic(トム・マルクシック)氏はKVUEに対し、この事故は今年半ばまでにロケットの初打ち上げを実施するという目標には影響しないと述べた。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

月に民間探査機が到達する日、SpaceILから有人探査の復活まで

米国時間2月22日、イスラエルの月面探査機「Beresheet」がフロリダから打ち上げられた。もしミッションが成功すれば、民間としては初めて、そしてロシア(旧ソ連)や米国、中国に続く月面探査機の軟着陸の成功例となる。ここでは、Beresheetのミッションの経緯からその技術までを追ってみよう。

月面探査レースの参加チーム

スペースILは2011年に、非営利団体として設立された。その目的は、Xプライズ財団が運営しグーグルがスポンサーとなった月面探査レース「Google Lunar X Prize」に参加することだ。

Google Lunar X Prizeのレース目標は、民間チームが月面探査機を打ち上げ、月面を走行しつつ画像や動画を撮影。そして地球へと送信することだ。参加チームには月面探査機だけでなく、地球との通信モジュールの開発など高度な技術力が求められた。また、レースでは優勝チームに最高2000万ドル(約2200万円)が与えられ、賞金付きの中間目標も各種設定された。

2007年から始まったこのGoogle Lunar X Prizeには、世界各国から34チームが参加。途中で計画の進展により参加チームが選別され、SpaceILと米国のMoon Express、インドのTeamlndus、日本のHAKUTO、国際チームのSyneygy Moonが最後までレースに残った。しかし2018年4月、レースは達成者なしで終了したのだ。

達成チームが現れなかった大きな理由として、打ち上げが間に合わなかったことがあげられる。先述したチームはすべてロケットの打ち上げ契約にこぎつけていたが、結局スケジュールの関係で探査機が打ち上がることはなかった。

しかし、各チームの努力が無駄になったわけではない。SpaceILだけでなく、Moon ExpressやHAKUTOの運営チーム「ispace」、そしてTeamlndusやSyneygy Moonはそれぞれ独自に月面探査機を開発し、月へと打ち上げようとしているのだ。

極めて小さな探査機

Beresheetの大きさは直径2mかつ高さ1.5m、重量は585kgで、そのうちの400kgを燃料が占めている。これは有人探査機だったアポロ計画の宇宙船はもちろん、無人探査機のソ連のルナシリーズ、アメリカのサーベイヤーシリーズ、そして中国の嫦娥など、過去に月面に軟着陸した探査機よりもずっと小さく軽い。

Beresheetの打ち上げは米SpaceXの「Falcon 9」ロケットで実施された。インドネシアの通信衛星「Nusantara Satu」の副ペイロードとして搭載されたBeresheetは、予定されていた軌道に投入済みだ。そして月面に近づいたBeresheetはエンジン噴射により4月11日に軟着陸し、数日間の稼働を予定している。このように稼働期間が短い理由は、熱調整機構が搭載されていないためにオーバーヒートを避けられないと予測されているからだ。

そして、搭載した磁力計にて月の地磁気を観測。これにより、月の成り立ちについてのヒントが得られることが期待されている。その他にも、観測用にレーザー反射体やカメラを搭載している。

なお興味深いことに、Beresheetには「タイムカプセル」も搭載されている。このタイムカプセルにはWikipediaや聖書、子供の絵、ホロコーストの記録、イスラエル国歌、国旗、独立宣言書が封入されている。遠い将来、地球人や宇宙人が月の砂に埋もれたBeresheetを発見したときには、イスラエルという国の歴史を伝える貴重な資料となるかもしれない。

ますます加熱する月面探査

地球から一番近い天体の月では、さまざまな探査プロジェクトが進行している。

まず近年で最も注目を浴びたのは、中国の探査機「嫦娥4号」だろう。この嫦娥4号は2019年1月に史上初めて、月の裏側に軟着陸することに成功。現在は探査車「玉兎2号」を展開し、月面探査を実施している。さらにこの嫦娥4号や玉兎2号と地球との通信をリレーするために、中継衛星「鵲橋」をあらかじめ打ち上げるという力の入れようだ。

そして2019年4月には、インドの月面探査機「チャンドラヤーン2号」が打ち上がる。このミッションが成功すれば、インドは5番目に月面に探査機を着陸させた国となる。また2019年には民間企業のMoon Expressの探査機や、中国によるサンプルリターンミッション「嫦娥5号」の打ち上げなど、実に賑やかな1年となるはずだ。

その後の注目べきミッションとしては、中国が月の南極からのサンプルリターンを目指す「嫦娥6号」を2020年に実施する。そして日本も、高精度着陸実証機「SLIM(スリム)」を2021年に打ち上げる予定だ。

復活する有人月面探査

さらに2020年代には、月面探査に大きな転機が訪れるかもしれない。NASAは、2028年に人類を再び月に立たせるとの目標を発表したのだ。

かつて米国は「アポロ計画」にて、1969年から1972年まで宇宙飛行士を月へと送っていた。しかしアポロ17号を最後に、45年以上人類は月へと降り立っていない。2028年というタイムスケジュールが現実的かどうかは残念ながら不透明だが、我々は再び有人月面探査を目撃することができるかのしれない。

現在も月への着陸を目指し、宇宙を飛行し続けているイスラエルのSpaceIL。その計画は、民間企業による月面探査の第一歩目に過ぎないのである。

(文/塚本直樹 Twitter

SpaceXがCrew Dragon宇宙船を初打ち上げ、有人宇宙飛行の準備進む

SpaceXは米国時間3月2日、「Falcon 9」ロケットと「Crew Dragon」宇宙船の打ち上げという、2つの偉業を成し遂げた。Crew DragonはSpaceX初の、国際宇宙ステーション(ISS)との宇宙飛行士輸送を目的として開発されれた宇宙船だ。今回の宇宙飛行は宇宙船の最終チェックを目的としたもので、打ち上げからISSとのドッキング、回収に向けた大気圏への再突入までがテストされる。

これまで、Crew Dragonの打ち上げは順調に推移しており、宇宙船内部のダミー人形と「ゼロGインジケーター」の様子が確認できる。

そして明日の朝、宇宙船はISSとのドッキングに挑み、その後に大気圏に再突入することとなる。

打ち上げに向け、今週NASAはSpaceXに打ち上げ許可を与えていた。

打ち上げの様子は下の動画でご確認いただきたい。

(文/塚本直樹 Twitter

小惑星採掘のPlanetary Resourcesがヨーロッパの小国ルクセンブルクで2800万ドルを調達

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ヨーロッパの小国(しかし裕福な国)のルクセンブルク。みずからを商業の味方だと呼ぶこの国で、小惑星採掘企業のPlanetary Resourcesは有望な鉱脈を探り当てたようだ。ルクセンブルクは同社に対して1200万ユーロの直接投資を行うと発表し、同時に民間の投資銀行であるSNCIも1300万ユーロを出資すると発表した。

この話は突然現れたわけではない。ルクセンブルクとPlanetary Resourcesは今年6月、両者のパートナーシップに関する合意に達したことを発表しているが、その時は出資規模や契約内容を明らかにしていなかった。そして本日、その詳細が公式に発表されたというわけだ。

ルクセンブルクの副総理を務めるÉtienne Schneiderは、「ルクセンブルク大公国はPlanetary Resourcesのシェアホルダーとなることで彼らとパートナーシップを結び、これからの両者の協力関係の礎を築くことができました」とプレスリリース(PDF)の中でコメントしている。

今回の出資は特定の採掘場やテクノロジーに対する投資ではなく、企業そのものに対する投資だ。森林と山々に囲まれた、ロードアイランド程の面積しかないルクセンブルクが、みずから大規模な調査を開始するのは難しいのだ(観光に行くことはおすすめする。とても美しい国だ)。

同社が今回調達した2500万ユーロ(約2770万ドル)は、2020年にローンチが予定されている小惑星調査システムの開発費用となる。また、同社は5月にも2100万ドルを調達している。

だが、ルクセンブルクは他の選択肢も手元に握ったままだ。同国はPlanetary Resourcesの競合企業(まだ両者ともプロジェクトを開始していないので、潜在的な競合とも言うべきか)であるDeep Space Industiesともパートナーシップに関する合意に達しているのだ。しかし、この出資内容の詳細はまだ明かされていない。

もしルクセンブルクと宇宙関連企業とのパートナーシップの動向に興味があれば、この公式サイトでチェックすることができる。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

宇宙居住設備の開発にNASAが6500万ドルを投入

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NASAは火星到達を真剣に考えている。しかも短期滞在ではない。このほど2年にわたり6つの会社に6500万ドルを投入する発表をしたばかりだ。あの赤い惑星へ向かう途中そしてその惑星の表面上で使用できる、宇宙向け居住施設の開発とテストが目的だ。

これは、NASAの Advanced Exploration Systems(民間の研究を宇宙探索のテクノロジーに転用するためのファンド)主導のもとに遂行されている、NEXTStep(NeXTSTEP OSと混同してはならない)パートナーシッププログラムの一部である。

NEXTStepによる昨年の契約のテーマは様々なものだったが、今年の契約のテーマは皆同じである、即ち「地球からの補給なしで独立して数カ月から数年の間、人間が生活し働くことのできる深宇宙用居住設備」。ここで想定されているのは宇宙船である ‐ それも巨大な。

金額も巨大だ、昨年の契約ではおそらく合計1500万ドルが10の企業に振り分けられたが、今年は6500万ドルが6つの企業に振り分けられる。言うまでもないが、遥かに巨額の投資である。

こららの幸運な企業はすべて、深宇宙居住の問題に対し少しずつ異なるアプローチをとっている。

左上から:ロッキード・マーチン、ボーイング、軌道ATK、シエラネバダ山脈のコンセプト宇宙船。

左上から時計回りに:Lockheed Martin、Boeing、Sierra Nevada、そしてOrbital ATKによるコンセプト宇宙船。

Bigelowは既にお馴染みの名前かもしれない:Bigelow Expandable Activity Module(BEAM)は最近、国際宇宙ステーションに接続され、現在テストを受けている最中である 。これから同社はその20倍の大きさ(現行の16に対し330立方フィート)の、Expandable Bigelow Advanced Station Enhancement、別名XBASEを開発する計画を立てている。モジュールをしっかりと折り畳み、後に展開することができるという特長がある、しかしBEAM配備時に起きたトラブルは、課題も多いことを意味している。もちろん、それこそがテストが必要な理由である。

Lockheed Martinは高品質な宇宙機材を無駄にはしたくないと考えている。彼らの計画は、スペースシャトルによって運ばれる貨物モジュールを、居住可能な多目的環境へと転用することだ。アイデアの基本は、実績のある機材を将来の開発の基礎として利用することである。ちょうどモジュールとオリオン宇宙船との間でデータや乗組員を移動させるように。

居住モジュールの内部のNASAのコンセプト。

居住モジュールの内部のNASAによるコンセプト図。

リサイクルに熱心なもう1つ業者はNanoRacksである。同社のISS外実験プラットフォームは昨日運用が開始されたばかりである。NanoRacksはかなりクレイジーなアイデアを暖めている:ロケットの最終段にある大きな燃料タンクを、居住空間に転用しようというのである。同社は、Space Systems LoralならびにUnited Launch Allianceと共に、これが実現可能なクレイジーなのか、あるいは単なるクレイジーなのかを確かめようとしているところだ。

Sierra Nevada(正確にはその子会社のSpace Systems)の計画はおそらく1番野心的なものだ。4回の以上の商業打ち上げで、 ロケット推進装置、拡張可能な環境、そして生活サポートを付け加えて、同社のDream Chaser貨物モジュールの1つの上に構築を狙っているのだ。段階的にそれを進めることは、良いリスク管理を意味している。

BoeingとOrbital ATKはあまり詳細を発表していない。前者はただ広範なテストのためのフルスケールプロトタイプを作成中であるとし、後者はそのCygnus宇宙船を目的のために改造中であると言うばかりである。

もちろん、すべてはまだ始まったばかりだ。そしてとりわけこれらのプロジェクトは、実際に火星やその彼方へ私たちが送り出すものを創り出すわけではないが、可能性の追求と潜在的なリスク発見の任を課せられている。これらの企業によって調査されるテクノロジーは、まずは地上で、次に静止軌道上で、そして最終的には月と地球間で、その性能を証明しなければならない ‐ 長期にわたるミッションのためのハードウェアの「信頼できる基礎」となるために。

NASAはそれぞれのプロジェクトが幾ら受け取るかの詳細を発表していないし、正確なタイムラインや成果物についての発表もまだである ‐ 最終成果は24ヶ月後に現れるという契約ではあるにせよ。現在NASAに対し詳細を問い合わせ中である、もし何らかの回答があればこの記事を更新する。

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(翻訳:Sako)