知らない送信者からのメールに寄付を求めるGatedでメール削減

もしあなたが最近、電子メールの山に埋もれたことがないとしたら、電子メールのアカウントを持っていないか、マーケティング担当者がまだ気づいていない若い人かのどちらかだろう(彼らはいずれ気づく)。

このような状況を打開するため、ベイエリアを拠点とする設立10カ月のGated(ゲーテッド)というスタートアップが登場した。同社は、メールに圧倒されている人を助け、できれば社会全体に利益をもたらすようなアプローチをとる。もし見知らぬ送信者が、あなたの受信トレイにメールを送りたいなら、あなたが選んだ非営利団体に寄付をしなければならない、というのがその構想だ。まったく知らない人に、来月のイベントや、会社の売り込みや、機器のセールスをしたいなら構わない。でも、それにはコストがかかる。誰にリーチするかにもよるが、かなりのコストがかかるだろう。

Gatedは、エンジェル投資家で、直近では従業員エンゲージメントのスタートアップCultureAmp(カルチャーアンプ)で成長事業担当副社長を務めていたAndy Mowat(アンディ・モワッ卜)氏が創業した。Gatedは、Gmailアカウントにフォルダを作成すると機能する。モワッ卜氏によると、このソフトウェアは、メール所有者が以前にやり取りをした人の情報から「許可した送信者」のリストを自動的に作成する。見知らぬ送信者が接触してきた場合は、作成した別フォルダにメールが移され、メール受信者が選んだ慈善事業に寄付をした場合のみ受信箱に届くよう設定される。メール1通あたり2ドル(約244円)からで、その70%が非営利団体に支払われ、残りはGatedに流れる。同社のソフトウェアは無料だ。

当然のことながら、毎日何百もの売り込みのターゲットになるベンチャーキャピタリストらは、このアイデアを気に入っている。実際、Corazon Capitalがリードし、Precursor Ventures、Burst Capital、Tuesday Capital、その他のアーリーステージのファンドが参加したシードラウンドで330万ドル(約4億円)を調達したとGatedは発表した。

もちろん、このコンセプトは潜在的なユーザーの共感を得るかもしれないが(手を振って)、何よりもまずプライバシーの問題を含め、疑問も投げかけている。

それについてGatedは、同社がメッセージの中身を読むことはないという。「私たちが見ているのはメタデータ、『to』と『from』だけです」とモワット氏は話す。とはいえ、知らない人からの依頼が殺到している人は非常に多数にのぼるため、Gmailのフィルターでは不十分だ。その中には、自らのやり方で影響力を及ぼす人もいるはずで、Gatedが時間をかけて自身の連絡先をマッピングしていくことを好まない人もいるかもしれない。

もう1つの課題は、誰もがGmailを使っているわけではないことだ。Gmailは、これまでGatedのソフトウェアの使用を承認した唯一のプラットフォームだ(モワット氏によると、同社はMicrosoftと「次の審査」を進めているという。また、いくつかの電子メールプラットフォームが「過去に他のパートナーのせいで損害を受けた」ため「すべてのパートナーをセキュリティ審査の対象としている」とも指摘した)。

Gatedはまた、儲かるビジネスとしてスタートしていない。ほとんどのスタートアップがそうであるように、もちろん変わる可能性がある。モワット氏が語るように、Gatedが受け取る収益の大部分は、取引にかかる決済手数料に充てられることになりそうだ。モワット氏と彼の小さなチームは、Gatedがマイクロペイメントの仕組みをすでに考えており、クレジットカードの手数料に取って食われないようにと思っているが、まだそこまでには至っていない。

Gatedがどのように成長していくかについては、この記事のような紹介以外では、まず口コミ的要素に頼っているようだ。モワット氏によれば、2週間前の時点で、Gatedはまだ公開されていないにもかかわらず、すでに2500人のウェイティングリストを抱えていたというから、このアプローチは合理的なものだと思われる。

今後、GatedはB2B(法人向け)の製品も開発する予定だ。マーケティング担当者がGatedと協力して財源を確保し、営業チームが月に一定数のメールを送信できるようにするのだという。

ちなみに、気になる方にお伝えすると、Gatedを利用するメール受信者は、誰かが金を払ってGmailアカウントに侵入してきたとしても、メールに返信する義務はない。

モワット氏によれば、利用し始めたユーザーからの回答率は平均よりも高いという。「寄付の対象となったメールの40〜60%が返信されています。中には、自分の時間を大切にしてくれる人に感謝して、すべてのメールに返信するユーザーもいます」。「ただし」と同氏は付け加え「非常にまれにしか」返信しないユーザーもいるという。

また「寄付者」は、メール受信者の受信トレイに永遠に自由なアクセスが与えられるわけではないことも注目すべき点だ。「それについては微妙なところがあります」とモワッ卜氏は話す。しかし、基本的には、受信者がメールに返信すると、そのメール送信者はデフォルトで既知の送信者グループに分類される。ただ、その送信者をいつでもGatedフォルダに戻すことができ、また『ミュート』モードにすることもできる。

モワット氏はいう。「これは基本的に、『もうチャレンジメールを送らないで欲しい。私の受信トレイにも入れないでください』という意味です」。

画像クレジット:erhui1979 / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

なぜWeb3の富裕層は現金ではなく暗号通貨を寄付しているのか

ロシアとウクライナの戦争が激化する中、暗号資産は海外の寄付者がウクライナを支援するのに不可欠なツールとなっている。このような状況下での暗号資産による募金活動の成功は、暗号資産保有者が慈善活動の目的を支援するためにコインを手放すという、2022年大流行した広範なトレンドを反映している。

世界中の慈善団体が、ウクライナを支援するために暗号資産による寄付を募っている。人気の暗号資産寄付プラットフォームEndaoment(エンダオメント)は、2月下旬の戦争勃発以来、ウクライナを支援する慈善団体が200万ドル(約2億4000万円)超を集めたと明らかにした。また、別の暗号資産非営利プラットフォームThe Giving Block(ザ・ギビング・ブロック)もすでに150万ドル(約1億8000万円)もの暗号資産による寄付を受けておりキャンペーンのウェブページによると、United Way Worldwide(ユナイテッド・ウェイ・ワールドワイド)やSave the Children(セーブ・ザ・チルドレン)などさまざまな認定非営利団体を支援するウクライナ緊急対応基金に2000万ドル(約24億円)を暗号資産で集めるキャンペーンを3月19日に発表した。

暗号資産を寄付のツールとして活用しようとしているのは、非営利団体だけではない。主要な暗号資産取引所との提携の詳細を説明している新しいウェブサイトによると、ウクライナ政府はすでにBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Tether(テザー)、Polkadot(ポルカドット)、その他の暗号資産で5400万ドル(約64億円)超を集め、主に軍資金として活用している。ウクライナ政府のデジタル変革省は、暗号資産を通じて寄付を呼び込む取り組みの先頭に立っており、新しいパートナー企業はこれらの寄付をフィアット通貨に換えてウクライナの中央銀行に送るのを支援するとウェブサイトにはある。

ウクライナ侵攻は、確かに暗号資産を寄付するきっかけとなったが、この仕組みは2021年にあらゆる種類の慈善活動で人気が急上昇した。

米国を拠点とする501(c)3非営利団体への暗号資産寄付を促進する非営利団体のEndaomentは、プラットフォーム上での寄付額が2021年に25万3000ドル(約3000万円)から2800万ドル(約33億円)へと100倍になった。The Giving Blockも、年次報告書によると、2021年の寄付額が6900万ドル(約82億円)超となり、前年比1558%増と急増した。

こうしたことから疑問が湧く。寄付者はなぜ現金ではなく暗号資産をおくることを選ぶのだろうか。

The Giving Blockの共同創業者でCEOのPat Duffy(パット・ダフィー)氏は、税制優遇措置が重要な動機付けだとTechCrunchに語った。

「もしあなたが何か慈善的なことをしたいと思っていて、価値を認められた暗号資産を持っているなら、その暗号資産は最も税優遇措置を受ける寄付の方法です」とダフィー氏は話した。

米国を拠点とする寄付者にとって、501(c)3団体に暗号資産を寄付する場合と、ウクライナのような外国政府に寄付する場合とでは、大きな違いがある。前者は寄付者に有利な税優遇措置がとられることが多く、後者はそうではない。

法的に認められた非営利団体に現金を寄付すると、寄付者は税控除対象となり、慈善団体に寄付した分だけ支払うべき税金を減らすことができる。暗号資産や株式などの資産を寄付することは、現金で寄付するよりもさらに有益だ。というのも、税控除に加えてもう1つの重要な税優遇措置を受けることができるからだ。

通常、暗号資産保有者が利益を確定するために、価値が上がった後にコインを売却した場合、その利益の最大37%をキャピタルゲイン税として支払わなければならない。しかし、コインを寄付すれば、キャピタルゲイン税を支払う必要はない。この2つの税優遇措置は、デジタル通貨の価値が上がり続けることを期待してできるだけ多くのデジタル通貨を保有したいと考える暗号資産保有者が、現金を寄付する代わりに実際に慈善団体にコインを提供することを望む理由の1つだ。

資産寄付の手段として人気があるのが、ドナー・アドバイズド・ファンドだ。暗号資産やその他の資産、現金を専用口座に拠出することで、即時税控除を受けることができ、時間の経過とともに価値を高めることができる。口座保有者は最終的に自分の裁量で口座内の資金を非営利団体に振り向けることができ、すべての資金をすぐに使用する必要はない。Fidelity(フィデリティ)の慈善寄付部門、Endaoment、The Giving Blockは、暗号資産を受け入れることができるドナー・アドバイズド・ファンドを提供している。

ダフィー氏は、税優遇措置は暗号資産を提供する寄付者の取引を促進かもしれないが、暗号資産による慈善活動の唯一の動機ではないと指摘した。暗号資産の寄付者は、株式や現金を寄付する寄付者よりも多額を寄付する傾向があると付け加えた。

「暗号資産に関わっている人、特に暗号資産を扱い始めたばかりの人は、最先端にいること、世界を変える何かの一部になることに関心を持っています」とダフィー氏はいう。

暗号資産分野のトレンドと同様に、アイデンティティとコミュニティの感覚が参加促進の中心的な役割を担っている。精通した慈善団体は最終的に寄付された暗号資産を使う前にフィアット通貨に変換しているが、この文化的な現象を利用している。

「暗号資産ユーザーのためのスペースをもうける非営利団体は、他の団体を凌駕しています」とダフィー氏は話した。

セーブ・ザ・チルドレンのような大きな非営利団体は、そのリソースと規模から、暗号資産寄付プログラムを構築することができたが、多くの中小規模の慈善団体は、このオプションを追求していない。暗号資産の寄付は、慈善事業全体のごく一部に過ぎない。Giving USAによると、米国の慈善団体は2020年に寄付者から推定4700億ドル(約56兆円)超を受け取った。

米国証券取引委員会のGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)委員長を含む規制当局は暗号資産が詐欺や不正行為と関連していることを指摘しており、非営利団体は関与することをためらっているのかもしれない。また、暗号資産による寄付の受け入れに対応する技術やインフラが整っていない団体もある。

インターネット上で強固なプレゼンスを持たない零細の非営利団体はときに、暗号資産の受け入れは「宝くじ」のようなものだと考える、とダフィー氏は話した。同氏は、このような考え方に注意を促し、オンラインプレゼンスを持たない非営利団体は、暗号資産の統合を構築する前に「基本に忠実であるべき」だと述べた。

EndaomentとGiving Blockの年次報告書によると、両プラットフォームで2021年最も多く寄付に使われた暗号資産はEthereumだった。Ethereumは、他の暗号資産を抜いて、2021年に両プラットフォームで最も寄付された暗号資産となり、以前から人気のあったBitcoinやChainlinkをも上回った。

暗号資産の寄付はコインだけにとどまらず、NFT(非代替性トークン)の慈善プロジェクトも寄付者の間で人気を博している。例えば、人気NFTアーティストのPplpleasrは、Endaomentのプラットフォームを利用して、自身のアート作品の収益をStand with Asians Community Fundに寄付した。それぞれの年次報告書によると、EndaomentとThe Giving Blockのプラットフォームでは、合わせて約2000万ドル(約24億円)のNFTによる寄付が行われた。

特にNFTは、非営利団体にとって長期的な寄付の流れを生み出す可能性を秘めている。Solana(ソラナ)ベースのNFTマーケットプレイスMetaplex(メタプレックス)は、寄付APIスタートアップChange(チェンジ)との統合により、自社プラットフォームのクリエイターがNFTの販売を通じて定期的なロイヤルティ支払いで事前活動を支援することを可能にしている。

Web3のクリエイターは、NFTの寄付を「自分の作品を通して遺産を残す」機会だと考えていると、Changeの共同創業者Sonia Nigam(ソニア・ニガム)氏はTechCrunchに語った。

「これは、従来の慈善事業ではなく、クリエイターの実用化に関するものです。スマートコントラクト技術によって、インパクトが製品自体に宿り、そして永続的に寄付することができます」とニガム氏は語った。

「NFTのコレクションが始まると、彼らは、例えばすべての二次販売のうち2%を気候変動との戦いにずっと提供するという目標を設定します。そうすれば、再販のたびにクリエイターの初志が失われることはないため、クリエイターにとってエキサイティングなものになります。非営利団体にとっては、定期的な寄付のルートを確保することは常に第一の目標です」。

2021年は暗号資産による寄付が牽引してきたが、特に3月のウクライナ支援のための迅速な資金動員は、暗号資産コミュニティが他のものを支援するための触媒となる可能性がある。

TechCrunch Disrupt SF 2017に登場したヴィタリック・ブテリン氏(Ethereum考案者)

ロシア出身のEthereum共同創業者ヴィタリック・ブテリン氏は先週、暗号資産投資家Katie Haun(ケイティ・ハウン)氏のチームが主催したTwitterスペースの会話で、最近の支援キャンペーンによって開かれた可能性について語った。

「(ブロックチェーンと暗号資産分野の)本当に中核となる多くの人々は、自由を支持し、より民主的な組織化の方法をサポートし、人々が基本的なものとして平和的に自分の個人的および経済的生活を持つ能力を一般的にサポートしたいと考えてその分野にいると思います」とブテリン氏は述べた。

ウクライナでこうした権利が侵害されるのを見て、暗号資産コミュニティの関心が高まったと同氏は語り、このような意識の高まりは、著名な暗号資産プロジェクトに携わる多くの人がウクライナ人であることが一因だと分析している。

ウクライナを支援するための暗号資産寄付キャンペーンの成功は、暗号資産が「非常に迅速に資金を集めることができるかなり優れた手段」であることを実証したと同氏は付け加えた。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウクライナ大統領、暗号資産を合法化する法律に署名

ウクライナ議会は1カ月前、暗号資産を合法化する法案を可決し、Bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)などの暗号資産の規制と管理の枠組みを準備した。そして現地時間3月16日、同国のVolodymyr Zelenskyy(ウォロディミル・ゼレンスキー)大統領は、法案「暗号資産について」に署名し、規制された暗号資産マーケットを運営するための法的枠組みを確立した。

「議会は暗号資産に関する法律を採択しました。数日のうちに大統領が署名して法制化されると思います。ですから、我々はできるだけ暗号資産に友好的であろうと努力しています。そして、戦時中もこの努力を続けています」と、ウクライナの副首相兼デジタル変革担当大臣のMykhailo Fedoro(ミハイロ・フェドロフ)氏は3月15日、TechCrunchのインタビューに答えている。

Cointelegraph(コインデレグラフ)やCoindesk(コインデスク)などデジタル資産に特化したメディアの報道によると、暗号資産取引所やデジタル資産を扱う企業はウクライナで合法的に活動するために政府への登録が必要となり、銀行は暗号資産企業向けの口座開設を許可されることになる。

この法律はまた、デジタル資産に関する国の政策を決定し、暗号を扱う企業にライセンスを発行し、金融監視機関として機能する権限をウクライナの国家証券市場委員会に与えると伝えられている(実際には、ウクライナの議会は2021年9月に暗号資産を合法化する法律を可決したが、ゼレンスキー大統領はその後すぐに暗号資産を管理するための新しい規制機関を立ち上げる余裕はないとして法案を否認した)。

もしあなたが、ウクライナでは暗号資産はすでに合法だったと考えていたのなら、それはあなただけではない。ブロックチェーン分析企業のChainalysisによると、正式な規制がなくても、2020年秋までにウクライナ人、ロシア人、ベネズエラ人は(この順で)デジタル通貨のアクティブな小売ユーザーの仲間入りを果たしていた。

当時、Chainalysisの調査責任者は「本当にテックネイティブな人口」や「勤勉なスタートアップ環境」など、いくつかのトレンドがウクライナを上位に押し上げているとCoindeskに語った(Coindeskはまた、東欧は他の地域よりもサイバー犯罪活動が盛んで、これも多くの取引量を牽引する役割を果たした可能性が高いと述べている)。

ロシアがウクライナに侵攻し、兵士と市民を同様に殺害し始め、人口4200万人の国から推定300万人が脱出するようになってから数週間、ウクライナは数千万ドル(数十億円)相当の暗号資産による寄付を受け、法律として成立したばかりの規制の種類は新たな緊急性を帯びてきている(NPRはポーランドに逃れたウクライナ難民、およそ180万人をワルシャワの人口にたとえた)。

新しい法律が施行されたことで、ウクライナ初の暗号資産取引所であるKuna(クナ)は、もはや同国が寄付金を暗号資産を扱っているサプライヤーに直接使うことを支援するだけに限定されず、暗号資産を切望されているフィアット通貨に変換することができる。一方、ウクライナはバハマに拠点を置く取引所大手FTXとも提携し、ウクライナの戦争活動を支援する暗号資産による寄付をフィアット通貨に換え、ウクライナ国立銀行に預けることができるようになった。

具体的には、Coindeskが3月14日に報じたように、FTX、KunaそしてとEverstakeというステーキングプラットフォームはウクライナ政府当局と提携し、Aid for Ukraineというユーザー向けの寄付サイトを立ち上げ、Bitcoin、Ether、Tether、Polkadot、Solana、Dogecoin、Monero、Icon、Neoで「自由のために戦っている人々を支援するため」の寄付を受け付ける。

世界中からの資金調達に関しては、暗号資産による寄付がカギを握っている。「我々は5500万ドル(約65億円)を集めることができました。そして、そのすべてはウクライナ軍の要望に充てられました」と、フェドロフ氏は15日にTechCrunchに語った。

Everstakeが指摘したように、この取り組みが「公的金融機関への暗号資産による寄付のリードを提供した最初の暗号資産取引所の例」であることが事実かどうかはわからないが、最初の1つであることは間違いないだろう。

確かに、ほんの数カ月前にニューヨーク・タイムズ紙でウクライナが「The Crypto Capital of the World(世界の暗号資産首都」という見出しで紹介されたときにウクライナ当局が期待していたようなことは起こっていない。

ウクライナのデジタル変革省の副大臣Alex Bornyakov(アレックス・ボルニャコフ)氏は想像を絶する事態が起こる前の11月に、記事の取材で「暗号資産企業にとって世界トップの権威の1つになる、というのが狙いです」と語った。

「我々は、これが新しい経済であり、未来であり、そして我々の経済を後押しするものだと信じています」。

画像クレジット:Vasenka Photography / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

欧州のスタートアップによるウクライナ難民支援状況

ベルリンに本社を置くバッテリー交換のスタートアップSwobbeeの創業者でCEOのThomas Duscha(トーマス・ダーシャ)氏は、3月初旬にポーランドにいる家族を訪ねた。そこでウクライナ危機に接し、それが行動を起こすきっかけとなった。

「数週間前まで妻と生まれたばかりの子どもと一緒にポーランドにいたのですが、いつもと変わらない様子だったのに、突然、ブラックホークのヘリコプターが飛んできて。大変なことになっているんです」とダーシャ氏は話した。「何かしなければと、すぐに決心しました」。

ロシアがウクライナへの侵攻を始めてから数週間経つが、国連難民機関の追跡調査によると、米国時間3月15日時点で300万人超のウクライナ人が国外に逃れた。うち180万人超がポーランドに向かった。ベルリンはポーランドとの国境に近いため、ベルリンのスタートアップをはじめ多くの人々が技術に裏打ちされた草の根的な活動を始め、物資の提供、国境を越える移送、難民のための仕事と家の確保に取り組んでいる。

ダーシャ氏は、LinkedInへの投稿で、ベルリンのテックコミュニティに行動を呼びかけることから始めた。

3月3日の投稿には「SwobbeeはモバイルエネルギーとVodafone Gigacubeを提供し、人々が愛する人と確実に連絡が取れるようにします」と書かれている。「3月11日には、私の故郷であるトマシュフ・ルベルスキへ緊急物資を支援者と共に車で届けに行きます。状況が刻々と変化する中で、我々は市長とよくつながっています。市長のチームはどこをどのように支援すればよいかを熟知しています」

ダーシャ氏はフォロワーに、ベビーフード、缶詰、おむつ、寝袋、救急用品、生理用品、薬、パワーバンク、懐中電灯、電池などの寄付を求めた。そして、ベルリンのモビリティやスタートアップシーンで活躍する多くの経営者や創業者、投資家たちをタグ付けした。

「タグをつけたからには逃げられない。彼らは助けが必要だ」と、ダーシャ氏がある投稿でTier Mobilityの幹部をタグ付けしたところ、Tierには10トンの物資があるが運送業者がいないとすぐに返事が来たという。「その5分後には、解決策が見つかったのです」。

Swobbeeは、国境に送る物資を積んだバンを提供するために、都市部の物流に特化したeモビリティ企業のOnomotionや、最近GoTo Globalに買収されたeモペットシェアリング企業のEmmyなどのスタートアップの協力を得ることができた。国境で物資を降ろし、ウクライナの難民をベルリンに連れ帰ろう、と一部の物流顧客から声をかけられさえした。

ポーランドのウクライナ難民に物資を届けるベルリンのスタートアップのボランティアたち(画像クレジット:トーマス・ダーシャ氏[SwobbeeのCEOで共同創業者])

3月11日金曜日、約30人が乗り込んだ6台のバンの車列には5000個のヘッドランプ、2000個のパワーバンク、その他基本的な日用品が積み込まれ、ウクライナ国境に届けられた。その際、近くにあるキャビン付きのダーシャ氏の家族の敷地がベースキャンプになったと同氏は話した。

「まず孤児院を訪れ、いくらかの物資を置いてから、国境近くで電力供給が不足しているので助けてほしいと頼まれた都市に行き、クリミアに直接持ち込まれ、現在キエフにある電源バッグやバッテリーなども置いてきました」と同氏は述べた。「翌日、私たちの半分はドイツに戻り、国境で人々を拾いました。ポーランドの東部はすでにかなり混雑していて、そこで人々を受け入れる能力は限られています」

ダーシャ氏によると、自身とベルリンのテックコミュニティはLinkedIn、Facebook、WhatsApp、Telegramといった主要通信プラットフォームの様々なチャットルームを使って、国境を越えた物資や人の輸送を調整している。また、自身と身近にいる誰もが自分の家でウクライナからの避難民を受け入れているという。

ダーシャ氏のクラウドファンディングへの寄付はこちらからできる。

「これほどの連帯感を見たのは初めてです」とダーシャ氏は話す。「戦争中でなければ、EU(欧州連合)に起こった最高の出来事と言えるでしょう。新型コロナウイルス感染症やナショナリズムの影響によって分裂していましたが、今我々は結束しています。私がこの地球に生まれてから、一丸となったEUは見たことがありません」

ダーシャ氏とSwobbeeは、現地で難民に物資を届ける、難民を輸送する、難民のために家や仕事を見つける、資金を募る、サイバー攻撃や偽情報と戦っている、より広範な欧州のスタートアップエコシステムの一例に過ぎない。

このリストは定期的に更新される。最新情報を再度チェックしてほしい。

現地での物資調達

大規模な商業荷主と中小の貨物輸送会社をつなぐプラットフォームのSennderはベルリンで物資の寄付を集めてウクライナ国境まで輸送すべく、他のスタートアップとチームを組んだ

スタートアップのViceroy GroupとPopupのチームによって設立された慈善団体Commerce4goodは、高齢者への食料、民間人への無線機器、生産者への布地など必要な物資を迅速に提供するために、ウクライナにサプライヤーと現場ボランティアのネットワークを構築した。寄付はこちらから。

Uberはポーランドの多くの都市で、赤十字の拠点に物資を届けるために無料で利用できるコードのリストを公開した。このプロモーションの有効期限は3月6日で、最大7ドル(約830円)を1回無料で利用できるというものだった。このプロモーションを継続するのか、するとしたらいつまで続けるか、TechCrunchはUberに問い合わせたが、返事はまだない。

10分で食料品を配達するベルリン拠点Gorillasは、ベルリンの倉庫から必要なアイテムを集めて寄付し、国境に物資を届けるべくWolne Miejsce(ウォルネ・ミエジスツェ)財団に送っている。顧客はGorillasのアプリで「ヘルプボックス」を1つ注文して国境に送ることができる。

La French Tech missionFrance DigitaleThe Galion Projectの連合はLeetchiでクラウドファンディングを開始し、ウクライナ難民への物資を調達するための資金集めを行っている。

ウクライナからの難民の輸送

避難した人々が自立した生活を取り戻せるよう持続可能なデジタルソリューションを生み出している英国拠点の非営利団体Techfugeesは、ウクライナの難民に輸送や移住の選択肢など多くのリソースを提供するために通常の倍取り組んでいる(免責事項:TechCrunchの編集長Mike ButcherはTechfugeesの共同設立者で社長でもある)。 寄付はこちらから。

同団体は、インバウンドのリードコンバージョンとスケジュール管理アプリChili Piperを手がける米国の財団Citizens of Our Planetと連携し、ウクライナから人々を脱出させる方法、ウクライナ国内から国境までの輸送手段、難民を受け入れるすべての周辺国の手続き、利用できる宿泊施設などをまとめた広範囲なドキュメントを作成した

オンデマンドの配車サービス、クルマやスクーターのシェアリング、レストランや食料品店の配達を行うエストニアのスタートアップで社名を冠したアプリBoltは、ウクライナでのすべてのサービス手数料をゼロにすると発表した。また、ポーランドとスロバキアのドライバーには、ウクライナ国境での乗車を受け入れ、難民の輸送を支援するようインセンティブを与えている。さらにBoltは欧州での各注文の5%を赤十字などのNGOに寄付していて、来週中に最大500万ユーロ(約6億5000万円)を寄付する予定だ。

企業価値30億ドル(約3550億円)のドイツの交通スタートアップFlixMobility傘下のバス輸送サービスFlixbusは、国籍を問わず難民に無料チケットを提供している。同社は、ポーランドのプシェミシルやジェシェフ、あるいはルーマニアのブカレストからウクライナとポーランドの国境にやってくる人々のために、追加の接続路を設けた。同社はまた、自社の車両やパートナーとの連携により、難民のために物資を輸送している。

Uberはポーランドとウクライナの国境で無料乗車を提供している。「POMOCLUBELSKIE」または「POMOCPODKARPACKIE」というコードでUber Aidを選択すると、国境とルブリンまたはジェシェフの間で乗車できる。このコードではそれぞれ70ドル(約8300円)までの無料乗車が可能だ。注意事項にはコードは3月12日まで有効と記載されているが、UberはTechCrunchにこのキャンペーンはまだ継続中だと述べた。

ウクライナ人のソフトウェア開発者Andrii Taganskyi(アンドリイ・タガンスキー)氏とEugene Gusarov(ユージーン・グサロフ)氏は、最悪の紛争地域から逃れる民間人のために相乗りと乗車を手配しようと、相乗りアプリのBlaBlaCarとウクライナのUberであるUklonを説得した。2人はBlaBlaCarに手数料をなくしてもらい、ウクライナ全土の1万7000人のドライバーにテキストを送信して、人々を安全に移動させるための支援を呼びかけてもらった。

「最初の3日間だけで、BlaBlaCarは5万人以上をウクライナ西部の安全な場所に輸送しました」とタガンスキー氏はインディペンデント紙に語った。その後、同氏とグサロフ氏はウクライナの保険会社を巻き込んで、7万人以上のバス所有者にBlaBlaCarへの参加を求めるテキストを送ったと述べた。

難民のための住宅

パリのスタートアップキャンパスであるStation Fは、フランスに避難してきたウクライナ人起業家に対し、Station Fの起業家向け住居Flatmatesで宿泊を無料で提供している

ドイツのユーザーが家具付きの仮住まいを探すためのプラットフォームWunderflatsは、ウクライナ難民の仮住まい探しを支援している。価格設定は住居を提供する側の裁量によるため、Wunderflatsは無料の宿泊施設を約束することはできないが、同社によると、支援に登録した家主の3分の2は無償提供を申し出ているという。

空き部屋を抱えている人は、ウクライナ難民をさまざまな方法で支援する新しいプラットフォームWe Help Ukraineに登録することができる。テック企業から慈善団体、広告代理店まで、実に多様な団体が設立したこのプラットフォームは、避難しているウクライナ人が経済面、医療面、心理面でのサポートを得たり、難民資格を取得したり、仕事を見つけたり、現地の語学教室に通ったりすることも支援している。

EU4UAは、難民とシェルターを提供できる人をマッチングするプラットフォームとして、パリに拠点を置くHRTechスタートアップJobgetherの共同創業者たちによって結成された。

ウクライナ国内では、テックに精通した国民が、難民のためのAirbnbやCouchsurfingと称されるPrykhystokなどのウェブサイトを立ち上げた。Prykhystokは、独創的な考えを持つウクライナの国会議員Halyna Yanchenko(ガリーナ・ヤンチェンコ)氏が考案したものだ。インディペンデント紙によると、母親であるヤンチェンコ氏は砲撃を受けているキエフから動けず、安全のために子ども2人を西部に送り、子どもと離れ離れになっているという。このウェブサイトには現在、全国5000以上の避難所が掲載されているとヤンチェンコ氏は話す。

また、Ukraine Nowというウェブサイトも近々立ち上げられ、出国途中にウクライナ国内で滞在できる住宅の情報をクラウドソーシングするオンライン・シェルター・サービスを提供する予定だ

テック系スタートアップのCasafariによるものを含め、Shelter UKRTakecareBnBIcanhelp.hostUkraineTakeShelter.comなど、他にも多くの住宅に関する取り組みが展開されている。しかし、宿泊施設のホストの身元を確認する検証済みの方法を打ち出しているサイトはほとんどないため、慎重に行動することを読者にはお勧めする。

ウクライナ人のためのテック職

UA Talentsは、故郷を離れざるを得なくなったウクライナ人が欧州連合の雇用主を見つけるのをサポートするために生まれた雇用プラットフォームだ。設立メンバーは、海外に住むウクライナ出身のIT起業家や専門家で、難民とその家族の生活を支援したいという思いからボランティアで活動している。

Jobs4Ukraineは、ウクライナ人の職探しを支援するために最近設立されたプラットフォームだ。このサイトには、すでに数十社の企業が潜在的雇用主として登録している。また、ソフトウェア開発からマーケティング、翻訳に至るまで、スキルシェアリングに協力するボランティアを希望する人も登録することができる。

また、高度な技術を持つウクライナ人の労働力活用を目指すプラットフォームとしてRemote Ukraineがある。高度な訓練を受けたテック人材をEUの企業に紹介している。単発の仕事から短期契約、フルタイムのものまで何でもある。このサイトでは、プロセスをシームレスにするために支払いも行っている。Techfugeesとのジョイントベンチャーだ。

Techfugeesは、英国や欧州のVCと協力して、移住中に家族を支えるためにリモートで働くことができる避難民を支援できるような資金をプールしている。Tech Nation U.K.および特定の英国VCとオンラインプラットフォームを立ち上げ、合理的なプロセスを形成する予定だ。Techfugeesはまた、欧州のVCと集団を形成している。

IT軍団

NGOが人道支援をこれまで以上にうまく調整できるよう、システムの近代化とデジタル化を支援する取り組みがいくつか始まった。Tech to the Rescueは、この目的のために非営利団体と技術系企業をマッチングさせるプラットフォームで、最近#TechForUkraineキャンペーンを開始した。脆弱なセキュリティシステム、時代遅れのソフトウェア、ユーザーフレンドリーなUIやUXの欠如といった問題を抱えるウクライナの慈善団体を、テックに精通した人が支援することを目的としている。

Code for Romaniaは、市民社会と国家のためにルーマニアのデジタル化を目指すボランティア組織で、全力を戦争タスクフォースに注ぐために2月24日に通常の活動を停止した。この組織と2700人超のボランティアのコミュニティは、ウクライナ危機に対するデジタルソリューションのエコシステムを考案するために協力し合っている。ルーマニアの緊急事態省と協力して、リソースやボランティアを管理するためのツールを提供し、避難民のための重要な情報を掲載したガイドを作成した。

Code for Romaniaのタスクフォースは、難民を安全な宿泊施設に誘導し、緊急支援を提供するソリューションにも取り組んでいる。

Techfugeesは、、現在の紛争地域と安全な地域をマッピングするオープンソースの迅速対応サイトを開発し、車で出国する人のための燃料マップも作成した。

誤情報、フェイクニュース、ディープフェイクと戦うAI駆動型プラットフォームCREOpointは、ウクライナでの戦争に関連して、ロシアのプロパガンダマシンなどから出回る偽データに対抗するために活動している。

スタートアップではないが、GoogleウクライナのAndroidスマホに空襲警報を送信している

それでも必要なものは?

「スペインやドイツ、オランダなど、ウクライナの人々が避難する国では、セラピストやセラピー能力、トラウマに対処できる人材が必要です」とダーシャ氏は話す。「土曜日に、生後2カ月の赤ちゃんと6歳と10歳の女の子を連れて到着した男性に会いました。彼らはキエフから逃げてきたのですが、ロシア軍に攻撃され、男性の妻は車の中で撃たれて死亡しました。男性は子供たちと高速道路の脇に妻を埋葬しなければなりませんでした」

It’s Complicatedのようなセラピープラットフォームは、ウクライナでの戦争の影響を直接受けた人に、無料のオンラインカウンセリングを提供している。一部のイスラエルのヘルステック企業も、ウクライナ人の心のケアに協力するためにチームを組んでいる。心の健康をサポートするAI駆動型のパーソナルコーチKai、特別なニーズや学習・感情面での困難を抱える学生を支援するプラットフォームAmplio Learning、デジタル医療サービス企業Femiなどだ。

ロシア軍に攻撃されている都市から逃げ出すウクライナ人が増える中、住宅も非常に重要になる。3月14日には、2週間前にロシア軍に包囲されたマリウポル市から、初めて民間人が出発することができた。ウクライナ当局は、市内に閉じ込められた市民が食料や医薬品の配送を断たれ、ロシアからの執拗な砲撃が人々の脱出を妨げていることから、同市での人道的大惨事を警告している。戦闘が始まって以来、マリウポルでは2000人以上が死亡した

多くの企業がNGOや政府と協力して支援を行っているが、次の大きなステップはまさに需要と供給の調整、構造、最適化だとダーシャ氏は話す。資源をより集中的に管理する必要があり、そのためには民間企業の協力が必要だ。

ウクライナ難民を支援している他のスタートアップの情報を持っている人、またはこの記事に掲載されているいずれかのソースとのつながりを望む人は、rebecca.techcrunch@gmail.comまたはmike@techcrunch.comまで連絡を。

画像クレジット: Techfugees

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(文:Rebecca Bellan、Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウクライナ情報変革副大臣インタビュー「IT軍団と29億円相当の暗号資産による寄付」について語る

事態が憂慮すべき展開を続ける中、ウクライナは地上戦の枠を超えてロシアへの抵抗を強めている。インターネットを活用してロシアの攻撃に対抗し、ロシアの権力の中枢を積極的に攻撃し、何か支援をしたいと考える人たちからの(資金援助を含む)支援を集め、デジタル戦線で戦っているのだ。ロシアが常時警戒態勢から全面攻撃態勢に移行したことに驚いた人もいるかもしれないが、早期警戒の兆候をすでに認識していた人たちにとってはそのようなことはない。

ウクライナ時間3月1日のインタビューで、Oleksandr (Alex) Bornyakov(オレクサンドル[アレックス]ボルニャコフ)情報変革(Information Transformation)担当副大臣は「戦争は4日前に始まったわけではありません」と語った。「8年間続いているのです。ロシアはずっと攻撃していました」。

ウクライナの積極的なデジタルキャンペーンは、すでに大きな成果をあげ始めている。ボルニャコフ氏によると、2月28日の時点で、世界中からさまざまなオンライン寄付によって1億ドル(約115億6000万円)が集まったという。このうち2500万ドル(約28億9000万円)は、ウクライナ当局が共同管理しているアカウントや、官民パートナーシップでネットワークを運用しているアカウントへの暗号資産寄付によるものだ。その半分以上は、ウクライナのレジスタンスを支援するための物資にすでに費やされているという。

ウクライナ情報変革担当ボルニャコフ副大臣

ボルニャコフ氏は、以前から国のデジタル戦略の最前線に携わってきた。

先週まではそれが意味していたものは、同国のDiia City(ウクライナのITセクター向け仮想組織)イニシアチブの運営だった。それは、より多くの外国のテック企業がウクライナに進出して事業を展開することを奨励する大規模な計画、大きな優遇税制やその他の優遇措置で取引を有利なものとすることで、ウクライナのエコシステムでより多くのスタートアップが成長することを奨励することなどだった。

だが今週の時点でのボルコニャフ氏の仕事は、レジスタンス活動を支援するために暗号資産で資金を調達するという同国の大きな動きを管理すること、他のデジタル活動家の草の根活動を管理して連携させること、そして戦闘が激化する中で、コミュニケーションのための不測事態対応計画を考えることだ。

それぞれの領域で開発がどんどん進んでいる。彼にインタビューしたときには、ロシアがテレビ塔を爆破したというニュースが流れていた。ハイテク企業は、コンテンツやサービスの遮断を発表し続け、より多くの人々が逃げ惑い、戦い、銃撃戦に巻き込まれていたのだ。

ボルニャコフ氏本人は、いまでもウクライナに安全にとどまっていることは認めたが、正確な居場所は明かさず、取材に協力したアシスタントもまた別の場所にある防空壕からその作業を行った。またうまくいくコミュニケーションチャンネルを見つけるまでには、複数の経路を試す必要があった。これらがいつまで続くのかはわからない。私たちはみんな、この事態に終止符が打たれ、ウクライナが自立して強くなることを望んでいる。

物事が急速に進展している中で、私たちはボルニャコフ氏に話を聞き、いわゆるIT軍団の台頭、ウクライナのサイバーセキュリティ、ウクライナが取っている暗号資産への賭けなど、より大きなデジタル化の動きの中で、現在どのような状況にあるかを聞き出すことができた。その内容は、大局的に見れば、これから起こることに備えるだけでなく、冷静さを保ち、前進し、プレッシャーの中で繁栄さえできるかもしれないものだ。以下、そのインタビューと対談の内容を、長過ぎる部分を割愛し簡単に編集したものを掲載する。

TechCrunch:お時間をいただき、ありがとうございました。いま現地は極めて混沌とした状況だと思います。まず、どちらから通話をなさっているのでしょうか?まだキエフですか、それともどこか別の場所でしょうか?

オレクサンドル・ボルニャコフ氏:ウクライナにいますが、キエフではありません。大変なできごとですが、今のところ無事です。しかし多くのウクライナ人は無事ではありません。

了解しました。質問に入ります。魅力的なのはレジスタンス活動のデジタル化ですね。まず、IT軍団について質問させてください。IT軍団は、草の根のクラウドソース型ハッカー集団で、ロシアの多くのサイトをダウンさせ、大混乱を引き起こしている団体ですね。副首相でデジタルトランスフォーメーション担当大臣のFederov(フョードロフ)氏がそれを支持してTwitterで宣伝しました。Telegram(テレグラム)内のグループには、現在約27万人以上のメンバーがいます。これは政府とどんな関係があるのでしょうか?

彼らは副首相の呼びかけに応じただけのボランティアです。彼らのことはよく知りません。そして、個人レベルで調整を行うリーダーみたいな人もいません。とにかく大きなグループなのです。そして、そこには個人だけでない関係者が含まれていると思っています。組織も参加しているのです。ロシアですら「(IT軍団)が持っている力は、この世界でアメリカ、中国、ロシアの3カ国しか持っていないものに匹敵する」と言ったそうです。つまり、彼らの力を合わせれば、最大の国家的サイバー防衛グループに匹敵するのです。

相手を倒した数ではという意味ですよね?

ええ、どれだけの被害を及ぼせるかという意味ですね。

彼らがどこにエネルギーを注ぎ込むのかに対して、何らかの調整は行っているのでしょうか?

特定の人やグループと1対1のレベルでコミュニケーションをとっているわけではなく、グループ内にタスクを投入すれば、彼らがそれを実行するという流れです。その数分後には、いくつかのインフラがダウンします。私たちが依頼したら、どんなインフラでも破壊してしまうのです。

ロシアが、ウクライナと利害関係のあるものを地上とサイバースペース両方で最大限激烈な方法で攻撃しようとしていことを考えると、IT軍団は対象を攻撃する活動以外にも何か関与しているのでしょうか。

戦争は4日前に始まったわけではありません。8年間続いているのです。ロシアはその間、ずっと攻撃を続けていました。つまり、インターネット上のサイバーセキュリティレベルでということですが。そのような中で、私たちは非常に高度なサイバー防衛システムを開発してきました。だから、もしかしたら……そうですね、ロシアは私たちを攻撃しようとしていたのかもしれません。しかし、成功はできませんでした。サイバーディフェンスは、まったく別の人たちが担当しています。防衛のためには、制限されたシステムにアクセスできるようにする必要がありますが、誰にでもアクセスさせるわけにはいきませんし、IT軍団は公開グループですので誰が参加しているのかはわかりません。なので、守備側は完全に別の人たちの肩にかかっているのです。

IT軍団に関するより大きな戦略をお持ちですか?

まあ、このインタビューは公開されるものですから、戦略についてはあまり話せません。でも、ヒントのようなものはお答えできます。私たちは何年もの間、ずっとネットで攻撃を受けていました。それでも決して反撃はしませんでした。私たちは自分たちを守るだけだったのです。なので、インフラが攻撃され、カードや行政サービスが使えなくなったときに、私たちがどのような気持ちになったのかを、今回初めて伝えることができたわけです。ということで、これが答です。

IT軍団とその連携について、もう1つお聞きします。私にとって興味深いのは、彼らの規模と影響を示すことで、公に知られることが彼らにとって有利に働くという点です。しかし、Telegramはそれほど安全ではないという主張や、検閲される可能性があるという主張、そしてロシアがそれをコントロールしているという主張など、他の側面も考慮する必要があります。これらはどの程度、気になさっていますか?

まあ、実際にはメッセンジャーを使い分けています。でも、Telegramは……(笑)、Telegramとしての利用は多いですね。でも同時に、実のところほとんど全部のメッセージングアプリを使っています。個人的な好みはありません。私たちのチームの他のメンバーも、さまざまなメッセージングアプリを使ってコミュニケーションをとっています。この観点で私たちを打ち負かすのは本当に難しいでしょう。

他のコミュニケーションチャネルはどうでしょう。持ちこたえられていますか?

接続は維持できています。影響を受けた電子機器はまだありません。基地の1つが攻撃されましたが、大都市の中の1つに過ぎません。まだ他にたくさんありますので。おそらく、彼らはこの先接続を撹乱しようとすると思います。彼らが最初にそれをしなかったのは、事態を簡単なものだと思っていたからでしょう。単に街に侵入して、中央広場に集って、祝杯をあげるだけだと思っていたのです。だから、そもそもインフラには一切手をつけていなかったのです。しかし、やっとロシア人は自分たちがここでは歓迎されていないことに気づいたのです。彼らは領土を占領しつつあります。そしてほぼ1週間経って、彼らは我々のインフラを破壊し始め、民間の施設を攻撃し、民間人を殺し始めました。

イーロン・マスク氏のStarlink(スターリンク)の拡張は、通信計画にどのように関わってくるのでしょうか?

いいですか、そうした計画についてはお話できません。でもまあ、バックアップには何段階もあって……もちろんまだ計画だけですが。とはいえ、もし不測の事態に備えていなければ、私たちはとっくの昔にやられていたはずです。彼らがサイバー空間でどれだけ攻撃を仕掛けてきたか、ご存知ないでしょう。ということで、私たちのインフラは動いているし大丈夫です。サーバーを叩けば落ちるというものではありません。

発信なさっている国際的なメッセージの中には、他の人たちに自分たちでできることをして欲しいと訴えるという点で、とても効果的で直接的なものがあります。最近の例では、ICANNにロシアのトップレベル国別ドメイン名を「永久的または一時的に取り消す」こと、DNSを停止させること、そしてTLS証明書を失効させることなど、あらゆることを要請しています。これらの妥当性についてはどのようにお考えでしょうか。そして彼らから返事はあったでしょうか?

ICANNからの返事はありません。彼らがどのようなアクションを起こすのか、起こすべきなのかはよくわかりません。しかし、組織、あるいは人々が共通の人道的価値観を共有しているならば、ここで立ち上がらなければ、影響を受けるのは世界であることは間違いないでしょう。事態はこのまま終息しません。プーチンは完全にいかれていますし、さらなる追い打ちをかけてくるでしょう。彼のこの10年間の活動を見れば、限界に挑戦していることがわかります。そして、彼は「力による会話」を理解していると思います。ですから私の立場は、とにかく全力で反撃することです。そうでなければ、考えたくはありませんが、もしかしたら最終的には核兵器まで行ってしまうかもしれません。しかし、彼の国は、問題を解決するには戦争以外の方法があることを感じなければなりません。

そこで一部の団体や草の根レベルで国際協力を呼びかけているわけですね。サイバー防衛に関しても、米国や他の国々と連携しているのでしょうか?

たくさんの連携が取れていると思います。

(彼は他国の支援を高く評価し、特に米国と英国に感謝を述べたが、具体的な内容には触れようとしなかった)

暗号資産について少しお話させてください。ウクライナはこの週末、ウォレットのアドレスをツイートし、さまざまな暗号資産が莫大に流れ込んでいるようです。そのウォレットをウクライナ政府のために、あるいはウクライナ政府に代わって実際に運用しているのは誰なのでしょうか。

そうですね、私たちが運用しているファンドは、ウクライナの暗号資産取引所が運営しているものです。つまり、これは官民合同のパートナーシップのようなものです。より迅速な対応を行えるように、このたび、ある取引所と提携したところです。誰も手を出せないように、資産がしっかり確保できるようにする必要があります。もちろん、高速交換、高速送金も必要です。政府だけが関わっているわけではないのですが、私たちがアカウントを管理してます。そのほとんどがマルチ署名のアカウントです。つまり、それを使おうと思ったら、少なくとも3人くらいの署名をもらわなければなりません。

(ボルニャコフ氏はそのうちの1人だが、すべての口座の署名者ではない)

Kuna(クナ)はあなたが取引をしている取引所です。これが、暗号資産取引所との間の提携で、暗号資産を実際の通貨に交換するのを支援しているということですか。

はい。ほぼ、その通りです。

了解です。また、みなさんはどの暗号資産を扱い、どの通貨に交換しているのでしょうか?

主にBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Tether(テザー)を扱っていますが、Polkadot(ポルカドット)で500万ドル(約5億8000万円)という巨額の寄付をいただきました。他の暗号資産での寄付を希望される方も多いので、暗号ウォレットを追加中です。交換先の通貨としては、米ドルとユーロが多いと思います。

Airdrop(エアドロップ)が承認されました。寄付権利確定は明日3月3日、キエフ時間(UTC/GMT+2)の午後6時に行われる予定です。(日本時間では3月4日午前1時)
報酬は追って配布!

ウクライナの暗号資産寄付キャンペーンに関する続報は、@FedorovMykhailoをフォローして下さい。

(訳注:Airdropとは暗号資産の無償配布のこと。暗号資産による寄付に対してウクライナが WORLD という暗号資産を無償配布することを事前に表明していた)

【編集部注】日本時間3月3日の夜、上記のAirDropが中止されたことをフョードロフ氏自身が発表した。

検討の結果、airdropを中止することにしました。ウクライナの反撃に協力を申し出る人は日々増えています。その代わり、ウクライナ軍を支援するためのNFTをまもなく発表する予定です。私たちは、FT(代替可能なトークン。ex.普通の暗号資産トークンなど)を発行する予定はありません。

もう寄付金は使われているのでしょうか?それとも、まだ使わずに待っているのでしょうか?

半分はすでに何かの機材に使われています。具体的に何をとは言えませんが、今日も大きな買い物が行われました。活用しています。防衛省とも連携しているので、Kunaと私たちだけでなく、防衛省も巻き込んでの活動です。ですから、基本的には私たちがニーズを理解して、彼らがロジスティクスを助けてくれるのです。これが終わったら、みなさんに完全な透明性のある報告をするつもりです(別途Kunaから聞いたところでは、機材の購入にはドローンやその他の補助的な機材も含まれているとのことである)。

関連記事:ウクライナへの暗号資産による寄付金、政府基金の使われ方

これまでにどれだけの資金が使われたのでしょうか。また、これまでにどれくらいの寄付金が集まったのでしょうか。

これまでに約2500万ドル(約29億円)の資金が集まり、1400万ドル(約16億2000万円)ほど使ったと思います。

なぜ、暗号資産を使わないルートではなく、暗号資産による寄付を選んだのでしょうか?資金調達のルートはたくさんあります。

さて、みなさんはご存じないかもしれませんが、ウクライナ国立銀行は、これに先立って、最初に大規模な国家的キャンペーンを行っています、こちらは、ほとんど通常の通貨とカードで資金調達をしています。ということで作業は並行しています。暗号資産だけではありません。ファンドは沢山あるのです。人道支援に重点を置いているものもあれば、軍事だけに重点を置いているものもあります。政府業務をサポートするために存在するものもあります。つまり、正確には知りませんが、さまざまな機関の力を合わせると、1億ドル(約115億7000万円)ほど調達できたと思います。

余談になりますが、副大臣が担当されたテックシティプロジェクト「Diia City」についてお聞きしたいのですが。今は少し後回しになっているようですね。

この時点では、そう、後回しになっています。このプロジェクトに関しては比較的すばらしいスタートを切ることができました。巨大企業や国際的な企業など、何百もの企業が参入していましたが、残念ながらロシアの侵攻によって、これがご破算になってしまいました。延期ということにしておきたいと思います。しかし現在は、企業はほとんどの人員を避難させているところです。

ウクライナに残って仕事を続けている人もいますが、多くの人が去ってしまいました。とても残念なことです。

私もそう思います。本当に、信じられないようなことが起きてしまったんです。私たちの領土でこのような悲劇が起こるとは、想像もしていませんでした。でも、いずれは再建します。そしてもちろん、現状を打開できると思っています。しかしその道のりはとても険しいものでしょう。

画像クレジット:Pierre Crom/Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

ウクライナへの暗号資産による寄付金、政府基金の使われ方

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、ウクライナの公式Twitterアカウントは寄付を募るべく、ここ数日、暗号資産ウォレットのアドレスを共有している。筆者が以前書いたように、ウクライナのデジタル変革省の広報担当者が「これらのアカウントは国が所有するもの」と確認したように、共有しているウォレットアドレスで受け取った寄付はウクライナ政府が管理している可能性が高いようだ。

関連記事:暗号資産の寄付、ウクライナはどう活用するか

しかし、これらの暗号資産による寄付の目的は何なのか、その資金で何を購入するのか。ブロックチェーンの性質上、ある時点までは暗号資産取引を追うのは簡単だ。ブロックチェーンエクスプローラーに公開アドレスを入力すれば、入出金取引のリストを見ることができる。

例えば、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーンでは、ほとんどの送金はキエフに拠点を置く暗号資産取引所のKuna(クーナ)に向かっている。

「Kuna.ioはウクライナの資金調達を技術面でサポートしています」とKunaの広報担当者は2月28日に電子メールで筆者に述べた。「すべての資金は安全で、要請に応じて政府に送られています」。

しかし、一度資金が取引所にアップロードされると、追跡が難しくなる。そこで、筆者はKunaの創業者Michael Chobanian(マイケル・チョバニアン)氏にいくつか質問した。チョバニアン氏は、暗号資産寄付のセットアップにおけるKunaの役割と、ウクライナ政府の動機について詳しく教えてくれた。

同氏は、寄付に関する情報を共有するためにこのほどTwitterアカウントを作成したことを認めた。「その通り、私のアカウントです。最近作りました。Twitterは主に英語のコミュニティなので、ここではTwitterはあまり人気ではありません。しかし世界に発信しなければならないので、アカウントを作りました」と語った。

キエフ時間3月2日午後12時に、同氏は2枚のスクリーンショットを公開した。「ウクライナの暗号資産基金」(Twitterで@Ukraineが共有したウォレットアドレスだ)には3100万ドル(約35億8000万円)超が集まり、別の基金には1700万ドル(約19億6000万円)ほどが寄せられている。

「私たちは2つの基金を持っています。まず、自分たちの基金を立ち上げ、それがうまくいっているのを政府が見ました。そしてデジタル変革省から、政府基金を立ち上げるのを手伝って欲しいと打診がありました。そこで、政府基金も作ったのです」とチョバニアン氏は語った。

それぞれのファンドのアドレスは異なるチャネルで共有されている。「現在、私たちは2つの基金を持っています。Twitterにあるのが政府基金で、Telegram(テレグラム)や他のソーシャルメディアにあるのがKuna基金です」と付け加えた。

ウクライナの軍事費の資金源

チョバニアン氏が「政府基金」と呼ぶものは、現在もKunaが管理している。しかし、同氏によると、Kunaは政府の代理で動いており、暗号資産アセットについては発言権がない。

「私たちは技術のプロバイダーです。基本的には、これらの基金の暗号資産銀行として機能しています。私たちは資金を集め、その資金がクリーンであることを確認します。その後、支払いや通貨の要件に応じて、変換するか、直接支払うかします」と同氏は語った。

「この基金は、軍隊のためのものです。変革省の助けを借りて、大部分が軍によって運営されています。そして、輸入される特殊品にお金が使われています。それらの特殊品は軍や特殊部隊に直接送られます。具体的には何を買っているのでしょうか。明らかな理由で、言えません。政府が実際に何を買ったかを公表するかどうかはわかりません。明らかに秘密だからです」と同氏は述べた。

Telegramやその他のソーシャルネットワークで共有されているKunaのもう1つの基金は、目的が少し異なる。「私の基金では、ドローンを買い、ガソリンを買い、人々に食事を提供し、キエフやハリコフといった最も危険な場所から人々を避難させるための輸送費などに使っています」とチョバニアン氏は説明した。「私たちは正規軍にも供給していますし、政府から銃を受け取って戦っている普通の人々にも供給しています」と付け加えた。

暗号資産での物資購入

興味深いことに、暗号資産はインターネットを通じて資金を調達するためだけに使われているわけではない。Kunaは、これらの暗号資産をすべて不換通貨に変換してはいない。

「どこにいくら支払うのか、暗号資産を受け取って喜ぶ人がいるかを理解するまで、暗号資産のままにしています。支払いの90%は暗号資産のみで行っています」とチョバニアン氏は述べた。

しかし、誰かが不換通貨で支払われる必要がある場合、Kunaは暗号資産を換えて銀行口座に送金することができる。「我々は暗号資産、ユーロ、そしてドルで支払っており、資金のニーズを満たすために必要なあらゆる種類の取引を行っています」と話した。

画像クレジット:Sergey Bobok / AFP / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

暗号資産の寄付、ウクライナはどう活用するか

ウクライナ政府の公式Twitterアカウントは現地時間2月26日、2つの暗号資産ウォレットアドレス(ビットコインウォレットアドレスとイーサリアムウォレットアドレス)を共有した。「ウクライナの人々とともに立ち上がろう。現在、暗号資産による寄付を受付中。ビットコイン、イーサリアム、USDT」と@Ukraineは書いている。

しかし、これらのウォレットを誰が所有し、運用しているのかを確かめることは難しい。公開アドレスは、文字と数字の羅列にすぎないからだ。ウォレットの所有権を譲渡することは可能なので、厳密には誰のものでもない。

このようなツイートに対する最初の論理的な反応は、細心の注意を払って行動すべき、だ。これらのウォレットが政府のメンバー、政府機関、政府に代わって非公式に暗号資産の寄付を促進している政府外部の人物、または政府のメンバーのふりをしている人物によって運営されているかどうかは不明だ。

しかし、ウクライナ政府がこれらのウォレットアドレスで受け取った資金を管理している可能性は、低いというよりも高いと思われる理由がいくつかある。まず、このツイートは削除されておらず、つまり@Ukraineが悪用されている可能性はおそらく排除される。もし誰かがアカウントを乗っ取ったのであれば、政府の公式アカウントを運営している人たちは比較的早くこのツイートを削除しているはずだ。

次に、ウクライナの副首相兼デジタル変革大臣であるMykhailo Fedorov(ムィハーイロ・フョードロフ)氏をはじめとして、他の人々がこれらのウォレットアドレスを共有した。「ウクライナの人々とともに立ちあがろう。暗号資産の寄付を受付中」とフョードロフ氏は書いている

3つ目は、ウクライナのデジタル変革省の広報担当者が、@Ukraineのツイートが本物であることを確認したことだ。「これらのアカウントは国のもので、特別な暗号資産基金を作りました」と電子メールで筆者に述べた。

そして、多くの人がすでにこれらのアドレスに暗号資産を送っている。この点では、ブロックチェーンエクスプローラーに公開アドレスを入力するだけで、入出金取引のリストを見ることができるので、把握するのは簡単だ。

本稿執筆時点では、Etherscanでイーサリアムウォレットに約6800件の入金があったことが確認できる。同様に、ビットコインのウォレットアドレスに関連する取引は7000件超ある。

人々は153BTCと2230ETHを送り、現在それぞれ629万ドル(約7億2200万円)と627万ドル(約7億2000万円)の価値がある。また、一部の寄付者はUSDTやUSDCといったイーサリアムベースの暗号資産を送った。

暗号資産コミュニティの一部のメンバーも、独自の資金調達活動を開始したことは注目に値する。Michael Silberling(マイケル・シルバーリング)氏はDune Analyticsにダッシュボードをつくり、@Ukraineが支援するイーサリアムウォレットアドレスだけでなく、他のコミュニティ主導のプロジェクトに対する暗号資産寄付も追跡している。

取引に関しては、キエフに拠点を置く暗号資産取引所であるKunaに、すでに多額のETHが送金されている。

「Kuna.ioはウクライナの資金調達に技術的なサポートを提供しています」と、Kunaの広報担当者は電子メールで筆者に語った。「すべての資金は安全で、要請に応じて政府に送られています」。

Kunaの創業者Michael Chobanian(マイケル・チョバニアン)氏は主にTelegramで発信してきたが、最近自分のTwitterアカウントを作り、寄付の詳細を共有した(Kunaのチームは、このアカウントが正規のものであることをメールで確認した)。

チョバニアン氏は、資金調達活動の進捗状況の共有を始めた。

まだ未解決の懸念がいくつかある。暗号資産はどの通貨と交換されるのか? そして、これらの資金はどのように使われるのか?

TechCrunchはウクライナ政府に資金に関するより詳細な情報を求めている。また、Kunaのチョバニアン氏にも連絡を取ったが、執筆時点では返答がない。

つまり、この話題については、もっとフォローする余地がある。しかし、暗号資産ウォレットのアドレスが書かれた1つのツイートが、いかに数時間のうちに世界中から寄付者が集まる大規模な資金調達キャンペーンになったかは、すでに興味深いものだ。

画像クレジット:Ismail Ferdous / Bloomberg / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

個人が寄付金管理口座を簡単に低コストで開設できるアプリ「Daffy」

シリコンバレーで活動する有名人Adam Nash(アダム・ナッシュ)氏は、あなたがもっと寄付をしたいと思っていると考えており、さらに「寄付」という行為をとてもシンプルなものにしようとしている。

そのようなメッセージを筆者はナッシュ氏と先週末に話をしたときに受け取った。同氏の直近のフルタイムの職務にはDropbox(ドロップボックス)の副社長と、財務顧問会社Wealthfront(ウェルスフロント)の社長兼CEOがあり、自動車eコマースプラットフォームShiftとAcornsの取締役も務めている。

実は、ナッシュ氏が現在構築しているDaffyという寄付のための新しい金融プラットフォームは、マイクロ投資アプリAcornsでの最後の役割がきっかけで生まれたものだ。DaffyはRibbit Capitalがリードし、XYZ Capital、Coinbase Ventures、50人以上の著名なエンジェル投資家(Reid Hoffman[リード・ホフマン]氏、Aaron Levie[アーロン・レヴィ]氏、Amy Chang[エイミー・チャン]氏など、リストは続く)が参加したシリーズAラウンドで1710万ドル(約20億円)を調達したばかりで、目的は人々がより頻繁に、もっと寛大になれるよう支援することだ。

具体的には、どう機能するのか。Daffyは、慈善寄付のための401(k)のようなものであるドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)を開設して利用する、最も低コストで摩擦の少ない方法を提供している。DAFは、お金あるいは株式や暗号資産を寄付することで寄付時に税優遇を受け、その寄付金は管理された投資口座に移動し、時間の経過とともに増えることが期待されるものだ。後日、寄付者はその資金を自分の選んだ慈善団体に寄付する。

DAFは、超富裕層や、億万長者ではないが生活に困っていない人々の間で、含み益に対する課税を回避する手段として非常に人気がある。National Philanthropic Trust(NPT)によると、2021年時点で平均的なドナー・アドバイズド・ファンド口座は16万3000ドル(約1880万円)で、現在DAFには十分な資金(約16兆円超)が眠っており、2021年のDAFから適格慈善団体への助成金は推定346億7000万ドル(約4兆20億円)に達し、2019年に比べて27%増加した。NPTはこれを「ハイウォーターマーク (最高水準)」としている。

DaffyはDAFを開放することで、経済的なスペクトルを超えてより多くの人々が参加できるようにするつもりだとナッシュ氏は述べた。そのための第一歩は、より手頃な価格でアクセスできるようにすることだ。SchwabFidelityVanguardの顧客は現在、ドナー・アドバイズド・ファンドを設立することができるが、これらの金融大手はそれぞれ資産の0.60%の管理手数料を徴収しており、これは長期的に積み重なる可能性がある(Vanguardは最低寄付額2万5000ドル[約290万円]を口座開設要件としている)。

一方、Daffyは最低100ドル(約1万1550円)の寄付を一度だけ行う必要があり(あるいは、100ドルに達するまで毎週10ドル[約1155円])、寄付の金額にかかわらず、月3ドル(約350円)、年間36ドル(約4200円)の手数料を徴収する。この手数料は「より多くの費用がかかる」評価済みの株式や暗号資産も寄付する場合は月20ドル(約2300円)になるとナッシュ氏は説明する。しかし、その資産が相当なものであるなら、これはおそらくリーズナブルな設定だろう。

DAFがより広く採用されるための第2ステップは、アクセスを容易にすることだ。この点では、カリフォルニア州ロスアルトスを拠点とするDaffyは前進している。実際、Daffyのアプリは現在Apple App Storeからダウンロードでき、Daffyはこのプラットフォームで利用できる初の「フル機能」DAFだと主張している。

Daffyは現在、9つのファンドにアクセスできるようにしているが、今後さらに多くのファンドが登場する見込みだとナッシュ氏は話す。

この大きく成長する経済の一部に取り組んでいるのは、Daffyだけではない。Fidelityのような大手に加え、Y Combinatorのアクセラレータープログラムを最近終了したCharityVestのようなスタートアップも同じ顧客を追い求め始めている。

また、低コストであるため、どのように生き残り、成功するかという問題もある。それはそうとして、従来はもっと手数料の高いDAFを利用していたが、数千ドル(数十万円)とは言わないまでも数百ドル(数万円)の管理コストを節約するためにDaffyに乗り換えるような顧客を、Daffyがますます自社プラットフォームに引きつける可能性はありそうだ。

ケチな大富豪について質問されたナッシュ氏は、Daffyにはすでに「7桁」のポートフォリオを持つ顧客がいると述べ、Daffyがこれ以上高額の扱いをする計画はないと主張した。また、Daffyが提携するファンドから紹介料を受け取っていないこと、資産額に関係なくすべての顧客を歓迎することも明確にした。

おそらく、一部の顧客はロスリーダーと同氏は見ているのだろう。実際、多くの金融サービスのスタートアップと同様、DAFはDaffyが他の多くの商品を提供するための最初のステップであるように見える。しかし、同氏は、まだすべてを発表する準備ができていない。

「これは間違いなく、より大きなもののためのくさびですが、金融サービスを目的とはしていません」とナッシュ氏は語った。「これはメガバンクが手がけるものではありません。当社の使命は、人々がもっと頻繁に、そしてより寛大になり、自分より恵まれない人々のために積極的にお金を準備するのを助けることです。人々が寄付をする方法、組織が資金を調達する方法はたくさんあり、これらはすべて我々が非常に楽しみにしている分野です」と同氏は続けた。

しかし、今のところナッシュ氏は、Daffyをユーザーの毎日の習慣にすることに全力を注いでいる。それは野心的なことだと同氏は認めるが、人はテクノロジーの助けを借りてあらゆる種類のルーチンを確立するものだ。

「CalmやHeadspace、あるいは宗教関係のアプリなど、人々が自分の望む生活を送れるようにするためのアプリやサービスはますます増えています」とナッシュ氏は指摘する。多くの人が「なりたい自分になるために、サービスを利用しています」ともいう。それが寛大さ、慈善活動、チャリティーに適用されない理由はない。

画像クレジット:Dropbox

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーサリアム開発者ツールプラットフォーム「Hardhat」開発元、a16zなどの寄付により非営利団体「Nomic Foundation」に

人気の高いEthereum(イーサリアム)開発者ツールプラットフォーム「Hardhat」を開発したNomic Labsは、プロトコルの開発者エコシステムを改善することを目的として、非営利団体になることを発表した。

2018年に立ち上げられたNomicは、Nomic Foundationとしてリブランディングを行っており、3000万ドル(約34億6600万円)の寄付目標のうち、すでに1500万ドル(約17億3300万円)の寄付を確保していると、共同設立者兼CEOのFranco Zeoli(フランコ・ゼオリ)氏がTechCrunchのインタビューで述べている。Nomicによると、最初のコミットメントは、Ethereum Foundatio(イーサリアム財団)、Ethereumの共同設立者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏、およびCoinbase(コインベース)、Consensys(コンセンシス)、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・ホロウィッツ)、The Graph(ザ・グラフ)、Polygon(ポリゴン)、Chainlink(チェーンリンク)、a_capital、Kaszek Venturesなどの多数の暗号取引所やベンチャーから得られたものだ。

同グループは3000万ドル(約34億6600万円)の目標を達成するために、いくつかの分散型自律組織(DAO)に資金提供の提案を行う予定だ。

開発者ツールは、ソフトウェアエンジニアがそのブロックチェーン上でアプリを作成することをより簡単にすることで、Ethereumのような特定のプロトコルの成長を加速させることができる。ゼオリ氏によると、実際に2万3千のGitHubリポジトリ(開発者プロジェクト)がHardhatを使用しており、数万人のアクティブユーザーがいるとのこと。また、Uniswap、ENS、AAVEなどの著名な暗号プロジェクトもHardhatユーザーだという。

Nomic Foundationの主な目標の1つは、開発者に質の高いエクスペリエンスを提供するインフラを構築することで、より多くの開発者をEthereumプロトコルに引き付けることだとゼオリ氏は語る。

「Ethereumには、成功しなければならない2つの重要な側面があると思います。1つはスケーリングです。しかし、非常にスケーラブルなシステムを持っていても誰も使わないのであれば、それは無意味なことです」とゼオリ氏。開発者による採用は、Ethereumプロトコルの将来にとって中核をなすものだ、と同氏は続けた。

ゼオリ氏と彼の共同設立者は、2015年にビットコインの可能性を探るために暗号の世界に入り、Nomic Labsはプロトコルの異なるさまざまな暗号化プロジェクトに取り組むために設立されたが、Ethereum Foundationからの助成金を受けて、2019年にHardhat製品に注力するためにピボットした。この助成金がきっかけとなり、NomicとEthereum Foundationの間に密接な協力関係が生まれ、Nomicが非営利団体に移行する前は、後者がNomicの唯一の資金源となったとゼオリ氏は語った。

同氏と共同設立者のPatricio Palladino(パトリシオ・パラディーノ)氏は、ともに母国アルゼンチンに住んでいるが、同国では、通貨の切下げやボラティリティが激しく、市民の生活に支障をきたしている。このような変動に関連する課題は、暗号資産が価値ある代替手段となり得る明確な例を示しており、これがNomicを非営利団体にすることを決めた動機となったとゼオリ氏はいう。

Nomic Foundationは、Hardhatをサポートするだけでなく、Ethereumエコシステム全体を向上させることを目的として、他の開発者ツールをサポートすることを目指していく。

ゼオリ氏はこう語っている。「(Nomic Foundationが)将来的に成功するシナリオは、Hardhatに対する競争が大幅に激化することでしょう。Hardhatだけでは、成長を続ける業界全体のニーズを満たすのに十分でないことがわかっているからです。ソリューションの多様性、異なるアプローチ、異なる戦略、さらには異なる嗜好が存在することが必要なのです」。

画像クレジット:DrawKit Illustrations on Unsplash

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Aya Nakazato)

カナダのワクチン義務化に抗議するトラック運転手たちの寄付サイトから個人情報流出

カナダのワクチン義務化に抗議しているオタワのトラック運転手が利用している寄付サイトが、寄付者のパスポートや運転免許証が流出するセキュリティ上の不備を修正した。

マサチューセッツ州ボストンを拠点とする寄付サービスGiveSendGo(ギブセンドゴー)は先週、GoFundMe(ゴーファンドミー)が市内での暴力や嫌がらせに関する警察の報告を理由に数百万ドル(数億円)の寄付を凍結した後、いわゆる「フリーダム・コンボイ」活動の主要寄付サービスとなっていた。

1月に始まったこの抗議運動では、新型コロナワクチン接種の義務化に反対する数千人の抗議者とトラック運転手がカナダの首都に降り立ち、渋滞で通りがマヒするほどだ。GoFundMeの募金ページが約790万ドル(約9億1200万円)の寄付を達成した後、このクラウドソーシングの巨人はキャンペーンを阻止するために介入し、募金活動を、抗議活動への支援を公言するGiveSendGoに移行するよう促した。プレスリリースによると、GiveSendGoは、同社がキャンペーンを主催した初日に、フリーダム・コンボイの抗議者のために450万ドル以上(約5億1900万円)の寄付を処理したと述べている。

TechCrunchは、AmazonがホストするS3バケットに50Gバイトを超えるファイル(パスポートや運転免許証など)が保存されていることがセキュリティ分野の人物によって発見されたことを受けて、このデータ漏えいに関する情報を入手した。

この研究者は、GiveSendGoにあるフリーダム・コンボイのウェブページのソースコードを閲覧することで、公開されたバケットのウェブアドレスを見つけたという。

S3バケットは、ファイルや文書、あるいはウェブサイト全体をAmazonのクラウドに保存するために使用されるが、デフォルトでは非公開に設定されており、バケットの内容を誰でもアクセスできるように公開するには、複数のステップのプロセスが必要だ。

公開されていたバケットには、フリーダム・コンボイのページがGiveSendGoに最初に設置された2月4日から、1000枚以上のパスポートと運転免許証の写真とスキャン画像がアップロードされていた。ファイル名から、一部の金融機関が個人の支払いや寄付を処理する前に必要とする、支払いプロセスで身分証明書がアップロードされていたことが示唆される。

TechCrunchは、GiveSendGoの共同設立者であるJacob Wells(ジェイコブ・ウェルズ)氏に、現地時間2月8日に公開されたバケットの詳細について連絡を取った。しばらくして、バケットの安全は確保されたようだが、ウェルズ氏は、GiveSendGoがセキュリティの欠陥について、情報が流出した人々に知らせる予定があるかどうかなどの質問には答えなかった。

バケットがいつまで晒されたままになっていたかは正確には不明だが、無名のセキュリティ研究者が残した2018年9月付けのテキストファイルには、バケットが「適切に設定されていない」ため「危険なセキュリティ上の影響を及ぼす」と警告されていた。

画像クレジット:Kadri Mohamed / Anadolu Agency / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ミレニアル世代やZ世代を惹きつけたいインスタ風アプリSupernovaはSNS大手の「倫理的オルタナティブ」になれるか

Supernova(スーパーノヴァ)は新しいアプリで、Apple(アップル)とAndroid(アンドロイド)のアプリストアで公開されており、広告収入の大部分を慈善事業に寄付している。Instagram(インスタグラム)とFacebook(フェイスブック)の新しい「倫理的オルタナティブ」と謳う同アプリに、チャンスはあるだろうか?

Facebookがパノプティコン(一望監視施設)のような刑務所になり、米国政府の権力を覆そうとするプライベートグループに参加することを軽々しく提案するのを何年も見てきたか、あるいはInstagramをドゥームスクローリング(ネット上で悲観的なニュースや情報を読み続けること)して、自身や10代の子どもたちのメンタルヘルスが徐々に損なわれていくのを経験した後であれば、多くの人々は、より高潔な原則を持つ代替のソーシャルメディアプラットフォームに大きな満足を覚えるだろう。こうした代替のいくつかは何年にもわたって現れたり消えたり(RIP Path)しているが、Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏の悪徳のような支配から大衆を遠ざけることに成功した者はいない。

おそらく人々は忘れてしまっているかもしれない。Facebook(その延長線上でInstagram)がこれほど大きい唯一の理由は、広告収入がこうした無料サービスを支えているからだということを。もし広告主が、十分に魅力的なアプリでソーシャルメディアの群衆を取り込むことができる他の場所を持っていれば、FacebookとInstagramはある程度プレッシャーを感じ始めるだろう。少なくとも、理論上はそうなっている。

広告業界を知り尽くしている英国の起業家が、ミレニアル世代やZ世代にアピールするために設計された独自のソリューションを使って、これらの大手企業に対抗しようと計画している。これらの世代は一般的に、前世代よりもはるかに大義を支援したいという欲求に導かれている。

Supernovaの創業者でCEOのDominic O’Meara(ドミニク・オメーラ)氏(画像クレジット:Supernova)

Supernovaの創業者でCEOのDominic O’Meara(ドミニク・オメーラ)氏は、かつてSaatchi(サーチ)に在籍した広告の第1人者で、英国アカデミー賞の受賞歴もあり、同スタートアップを主に自己資金で運営している。同氏は次のように語っている。「ASICS(アシックス)のようなスポンサーやMQのような慈善団体は、このアプリに備わる、ユーザーの安全を中心に据えた包括的なソーシャルネットワークという要素を評価して、今回のローンチに参加することを選んでいます。Supernovaが補完するのはまさにそこに存在するギャップであり、私たちは今後数カ月から数年のうちにこのギャップを縮小し、社会に成果を還元するソーシャルネットワークとなることを目指しています」。

「私たちの技術とアクセシビリティは、ソーシャルメディアと広告の力を使って世界がお互いに心から助け合うこと、そしてそれらの行動がどこでどのように役に立っているのかを常に透過的かつ正確に見ることを可能にします」と同氏は付け加えた。

Supernovaはこれを、同社のプラットフォーム上で有害性を防止することにより実現しようとしており(その方法については後述)、ユーザーが「安全かつセキュアであり、友人たちとの前向きで、刺激的で、人生を肯定するようなインタラクションを持つことを推奨されていると感じることができ【略】ヘイト、人種差別、ホモフォビア(同性愛嫌悪)、極端な政治思想などを目の当たりにすることのない場所を作ろうとしている」。

ビジネスモデルはシンプルである。同社は広告収入の60%を世界の慈善事業に寄付し、寄付金は気候変動、動物福祉、緊急事態の対応、健康と福祉、ホームレス支援、人権、メンタルヘルス、海洋清掃の各項目について、会員の希望に応じて配分される。どの要因が最も多くの資金を得るかは、ユーザーによって決定される。

Supernovaによると、世界のソーシャルメディア広告市場の1%以上を獲得できれば、年間6億ポンド(約925億円)を慈善団体に寄付することになるという。対照的に、FacebookとInstagramからの相当額は510億ポンド(約7兆9000億円)となる。しかし当然ながら、その現金は現在すべてザック氏の金庫に入っている。

FacebookやInstagramがヘイトスピーチを禁止していることはよく知られているが、もちろん、実際に行われることはほとんどないことも私たちはわかっている。Supernovaはまず最初に、自社のコミュニティ基準に基づいて「100%人間によるモデレーション」を行うとしており、さらにはユーザー向けに完全な憲章を約束している。

Supernovaアプリ(画像クレジット:Supernova)

どのようなアプリなのだろうか?

Instagramとの類似点はすぐにわかるだろう。ユーザーはコメントやメッセージングとともに写真やビデオを共有できる。ユーザーはフォローすることもフォローされることも可能である(1つか2つのバグが残っており、筆者のプロフィールは選択していないユーザーを自動的にフォローしているようだ)。

ユーザーはアカウントに対して、非公開、検索、フォロー、不要なユーザーのブロックなど、私たちが慣れ親しんできたソーシャルメディアツールのほとんどを設定することもできる。

ここで異なるのは、基礎となる仕組みである。

まず、ユーザーは自身のプロフィールで、Supernovaが広告パートナーから調達した資金を使って支援したい慈善分野を指定できる。

次に、ユーザーにナルシシズムを誘発することなく「Like」が慈善事業の広告収入の一部を得るための票のような働きをする。ユーザーの投稿に「Like」がついた場合、彼らが選んだ慈善団体は寄付として「Supernova Action Fund(Supernova活動基金)」のより大きな部分を得ることになる。

Superlikeや「Supernova」を獲得した投稿は、通常の「Like」の10倍の票を獲得する。ただし1つ難点がある。Supernovaを提供するには、まずユーザーが十分な「Karma Point」を獲得しなければならない。おそらくこれは、エンゲージメントを促進するためであろう。

今のところ、世界的なスポーツブランドであるASICSがSupernovaのスポンサーとなり、メンタルヘルスの慈善団体MQ Mental Health(MQメンタルヘルス)が最初に選ばれた慈善事業となっている。

また、Instagram(というよりFacebookのようなもの)とは異なり、Supernovaにはユーザーがグループに集まることのできる「グループ」機能がある。

オメーラ氏によると、Supernovaへの投資は「友人、家族」による資金調達ラウンドで100万ポンド(約1億5000万円)を超えており、2022年前半には機関投資家からのさらなる資金調達を予定しているという。

人間によるモデレーションについてオメーラ氏に尋ねたところ、次のように回答してくれた。「英国に拠点を置く訓練を受けたチームで、24時間体制で私たちが管理するシフト制を採用しています。彼らは若くて聡明な人材であり、主にコンピュータサイエンスの大学院や学部出身者です。会社の成長に合わせて社内で育成することで、チームが最初からコミュニティに親近感と共感を持てるようにしています」。ただし、同社の規模拡大に伴い、機械学習の支援を受けることになるだろうと同氏は言い添えた。

「Supernovaは、AIによって他のプラットフォーム上で活発に宣伝されている、有害で急進的なコンテンツから解放されます。その結果、Supernovaが万人向けではなく、熟慮される存在になることは間違いありません」とオメーラ氏は語っている。

Instagramでは禁止されていることで知られる乳首は同プラットフォーム上で許可されるのだろうか。

「すべては、投稿の内容や性質、投稿内のテーマによって異なりますが、コミュニティ基準に準拠しているかどうかは確実にチェックされます。違反した場合は削除されます」と同氏。

もし女性が母乳育児について説明しているのなら、それは許されるだろうかと筆者は尋ねた。

「その意図が明らかに有益であり、主題の真の側面を扱っている限りは、おそらくそうなるでしょう。もしその意図や内容が、その主題や私たちのコミュニティに対して、私たちの考えでは失礼であるか、有害であるか、あるいは否定的であるならば、コミュニティ基準や憲章を侵害することになり、削除されるでしょう」と同氏は回答した。

広告主にとってのメリットは何であろうか?

オメーラ氏は次のように語っている。「正しいことをしている『新時代』のソーシャルメディアの一部であることは、ブランドに害を与える可能性のある古い有害な秩序の一部であることとは対照的に、彼らのブランド(PR)にとってすばらしい価値があります。Deloitte(デロイト)によると、ミレニアル世代の80%は、他人の利益を自分の利益よりも優先するブランドからのみ購入したいと考えています。大手広告主は、ソーシャルメディアの現状に辟易しているようです。私は昨日、100億ドル(約1兆円)を超えるグローバル予算を投じている広告主に会い、そのことを明確に伝えられました」。

「当社のプロダクトは完全にスケーラブルで、ミレニアル世代のわずか1%にリーチすれば、毎日4000万人にスポンサー広告を届けられるでしょう。広告主たちが『量より質』を求めている今、これで十分です。1000社以上の広告主による42億ドル(約4822億円)規模のFacebookのボイコットは、その初期の兆候であり、今も消え去ってはいません。代替のオファーは今のところ提供されていません。そこにSupernovaが登場したのです」と同氏は付け加えた。

Supernovaが生き残れるのか、それともDavid Beckham(デイビッド・ベッカム)氏がローンチし、痕跡を残さず沈んだストリーミングソーシャルメディアアプリ、MyEyeになるのかはまだわからない。

タフで物議を醸す話題がこれまでほとんど登場してこなかった、一種の「バニラ(ありきたりな)」ソーシャルネットワークであるだけで、ユーザーを惹きつけるのに十分かどうかという疑問が残る。そして、潜在的に偏った人間によってコンテンツがモデレートされた場合、Supernovaはその決定を好まない人々から訴えられることになるのだろうか?

しかし、少なくとも今回の初公開からは、Supernovaは好調なスタートを切ったようだ。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

Mozilla、強い反発を受けて暗号資産による寄付の受付を一時停止

Mozilla Foundationは、多くの人たちからの反発により、暗号資産で寄付を受け取ることを休止する。反対派の中には、Mozilla Projectの創始者もいる。

Firefoxブラウザーの開発を統括している同財団は米国時間1月6日に、暗号資産の環境への影響を議論し、暗号資産による寄付に対するこれまでの方針が「気候に関する同団体の目標に合致しているか」を検討していることを認めた。

財団はツイートのスレッドで「ウェブ技術の分散化は私達が探求すべき重要な分野であり続けるが、暗号資産による寄付に関しては、私たちがその受け入れを始めてから以降、多くのことが変化しました」と述べ、今後その検討過程のアップデートを提供すると約束している。

財団が反発にあい始めたのは、Bitcoin(ビットコイン)といったさまざまな暗号トークンでこの非営利団体に寄付をしようとする人びとを、彼らが歓迎するようになってからだ。

そのツイートに応じてMozillaの創始者であるJamie Zawinski(ジェイミー・ザウィンスキー)氏が、財団の態度に失望感を表明した。彼は「プロジェクトに関わる誰もが、この惑星を灰燼に帰すネズミ講詐欺と提携するこの決定を、心底恥じ入るべきである」と激しい言葉で言った。

このブラウザーのエンジンであるGeckoを創ったPeter Linss(ピーター・リンス)氏も会話に加わり、Mozillaに対し「前の方が良かった」と語った。

メジャーな企業や組織が、環境への懸念でビットコインに反発したり、距離を置いたりすることは、これが初めてではない。2021年5月にはTesla(テスラ)が、車両の代金をビットコインで受け取ることを保留にしたが、それは受け入れを表明してからわずか数カ月後だった。

Elon Musk(イーロン・マスク)氏によると同社は「ビットコインの採掘や取引で化石燃料、特に石炭の使用量が急増していることを心配している」そうだ。数週間後に同氏は、暗号資産の採掘に使われるエネルギーの50%が再生可能エネルギーになったら再びビットコインを受け入れるだろうと述べた。

ビットコインの環境負荷をめぐる疑問は、さまざまなトークンの作られ方と関連がある。ビットコインとイーサリアムは、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれる仕組みを利用して自分たちのネットワークを動かし、各通貨の新しいブロックを作り出している。その計算方法は、数年にわたって、ネットワークの成長とともに複雑化する設計であり、そのパズルを解くことに何千ものGPUを昼夜不休で動かす企業の業界を生んでいる。

Cambridge Centre for Alternative Financeの推計によると、ビットコインの採掘は毎年、約148テラワット時のエネルギーを消費している。多くの暗号資産支持者はしかし、そんな所見に反論したり、暗号資産の存在意義を主張したりしている。

数カ月前には、この業界に大きな分裂が出現してきた。批判者たちは、Web3の基本的な価値命題に異議を唱えている。しかしビットコインを支持しているTwitterの創業者Jack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は、VCたちがWeb3のプロジェクトからほとんど利益を得ていないという説を却下した

このような議論が続く中、多くの企業がWeb3の野心を小さくしている。Discordは11月、暗号資産とNFTの探求に反対する多くの人々の反発を受け、一時停止した。ゲーム会社GSC Game Worldは、複数のゲーマーから強いフィードバックがあったため、発売予定のタイトル「STALKER 2:Heart of Chernobyl」にNFTを搭載する計画を中止している。

画像クレジット:David Tran/Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

社会問題・難病支援を「NFTリボン」でサポート、ガイアックスがチャリティ・支援サービスRibboを2022年1月開始

社会問題・難病支援やチャリティを「NFTリボン」でサポート、ガイアックスがチャリティ・支援サービスRibboを2022年1月開始

ガイアックスは12月23日、NFTを通じたチャリティ・支援のサービス「Ribbo」(リボ)を2022年1月下旬より提供開始すると発表した。決済方法はクレジットカード。ブロックチェーンを用いたチャリティ・支援のプラットフォームは日本初となる取り組みという。

またRibboは、2022年1月下旬のサービスリリースまでにリボン販売者登録数「100」を目指しており、リボン販売者登録ページにおいて登録受付を開始している。記事掲載時点では、Ribbo導入予定団体は、ハートリボン協会HON.jp学習圏開発機構LeSDAこちねことなっている。社会問題・難病支援やチャリティを「NFTリボン」でサポート、ガイアックスがチャリティ・支援サービスRibboを2022年1月開始

社会問題や難病などに対し支持・支援を表明するシンボルとして身に着ける様々な色のリボンは、アウェアネス・リボン(Awareness ribbon。リボン)と呼ばれる。その代表例としては、乳がん撲滅の啓発を行う「ピンクリボン」が挙げられる。

ただ、これら活動においてグッズ販売など物販の売上から活動資金を得る場合、グッズ制作の初期投資や在庫リスクなど、活動資金を得るまでのハードルが高いという課題がある。例えば約2000円の価格で販売しているグッズでは原価だけで約1000円かかり、その他の費用も含めると得られる資金はほとんど残らないという事例が実際に発生しているそうだ。

その課題の解決策としてガイアックスは、ブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータとして販売することで制作コストをほぼゼロに抑えられる、NFT体裁のリボンとしてRibboを実現した。

Ribboは、誰でも簡単にNFTリボンを作成・販売でき、支援を募ることができるサービス。「最短10秒でオリジナルのNFTリボンを作成」「リスク0で始められて売上の90%を受け取れる」「購入したNFTリボンで支援者の世界観を表現できる」という3つの特徴を備えているという。

初期費用はゼロで、販売手数料は金額の10%。NFTリボンを作成しストアに掲載するところまでは無料で行える。また集まったお金は、毎月1度1カ月分の売上をまとめて指定の口座に振り込む。社会問題・難病支援やチャリティを「NFTリボン」でサポート、ガイアックスがチャリティ・支援サービスRibboを2022年1月開始

  • 最短10秒でオリジナルのNFTリボンを作成可能:Ribboでは画像と文字を選択することで簡単にオリジナルのNFTリボンを作成可能。発行したNFTリボンをその場ですぐに販売できる
  • リスク0で始められて売上の90%を受け取れる:初期費用はゼロで、NFTリボンを作成しストアに掲載するところまでは無料で行える。また、販売手数料は金額の10%。NFTリボンの制作に初期投資を必要とせず、売り上げた際の90%を受け取れる
  • 購入したリボンで支援者の世界観を表現できる:過去購入したNFTリボンは、購入者自身だけでなくRibbo上で誰もが閲覧できる。同じNFTリボンを購入した人同士、同じ世界観を応援している仲間との新しい出会いが生まれるきっかけになるという

なお今回の取り組みは、ブロックチェーンを学びたい人のコミュニティ「Blockchain Biz Community」の企画から生まれたものという。スタートアップでブロックチェーンを使いたい、ブロックチェーンの技術を学びプロダクト開発を行えるようになりたい方を対象とするコミュニティとなっているそうだ。

テック起業家がジョンソン英首相をパロディ肖像画NFTで風刺、収益をホームレス支援チャリティに寄付

NFT市場はクレイジーなものとなったが、NFTが莫大な価値を持つようになっても、猿やパンクのポン引き画像以外にも、NFTを使ってできることは増えてきている。

例えば、マンションがNFTとしてオークションにかけられるのも我々は見てきた。

関連記事:キエフのアパートが収集可能なNFTとして初オークション、ブロックチェーンスタートアップPropyが企画

そして最近は、慈善団体がこの熱狂状態からメリットを得て、新しいオーディエンスを惹きつけつつ、透明性のある方法で資金を調達しようとしている。

Binance(バイナンス)でも、Binanceチャリティ財団が設立したオープンプラットフォーム「NFT for Good」を立ち上げ、人々が自分のアートやクリエイティビティを社会的・人道的な問題を対象としたオークションに変換できるようにした。

NFTが資金調達のプロセスをゲーム化していることが、こうしたプロジェクトが成功している理由の一つだ。

同時に、暗号アートは、ダダイズムや風刺のリアリズム領域に入りつつある。2017年7月のICOで、最初の30分で3万ドル(約342万円)を調達したFUCKというイーサリアムのトークンを覚えているだろうか?今では、現在260.774イーサまたは104万ドル(約1億2000万円)の値がついている、NFTとしての世界で最もリッチな線(文字通り赤インクで描かれた線)がある。

NFTアートと風刺の世界は、NFTプラットフォームOpenSeaで公開されたばかりの新プロジェクト「Non Fungible Tories – The Boris Drop」でも融合している。

これは、英国のBoris Johnson(ボリス・ジョンソン)首相を描いた8ビットパロディ肖像画のセットで、収益の52%(悪名高いBrexit、EU離脱投票の過半数と同じ割合)を、ホームレスを支援する英国の慈善団体に寄付するというものだ。

NFTシリーズでは、自らを「Pfeffel, a punk artist」と名乗るアーティスト(英国を拠点とするテック企業の創業者であることが、TechCrunchによって確認されている)が、ジョンソン英首相の最も有名な言葉を風刺している。

Pfeffel氏は「a clown, an oaf, a wager of culture war, and a pound-shop Churchill(道化師、愚か者、文化戦争の賭け人、1ポンドショップ[訳註:100円ショップのような意味合い]チャーチル)」へのトリビュートとして、ジョンソン氏の「Watermelon smile(スイカの微笑み)」「Letterbox(レターボックス)」、そしてジャーナリストの質問に答えずに冷蔵庫に隠れた瞬間などの名言をもとに、一連のNFTを作成した。

また、英国でパンデミックのロックダウンの最中に、No.10(官邸)でパーティーを開きチーズやワインをふるまっていたという、最新の論争も風刺している。この「2ビットの政治家の8ビット画像」はすべて初版となる。

Pfeffel氏は、クリスマスシーズンに英国の路上で生活するホームレスの人々を支援する慈善団体「Crisis at Christmas」に、NTFオークションの利益を寄付することを約束した。

確かにNFTのアーティストにとって、ジョンソン氏のネタはいくらでもある。

​​ジョンソン氏は、新型コロナウイルスのパンデミックに関して「fuck business(ビジネスなんてクソ食らえ)」や「let the body pile up(死体を山積みにしてしまえ)」というような言葉を使ったことで有名になり、「配慮と良心のない」政治家としての評価が高まっている。また、英国の援助予算を削減し、同国は彼の任期中に欧州で最も新型コロナによる死亡率が高くなり、G7の中で最も深刻な経済不振に陥っている。

Pfeffel氏はTechCrunchに語った。「悪魔を懲らしめる方法のひとつは、彼を笑うことです。私のアートはジョンソン氏を笑い飛ばします。これらのNFTが、死体が山積みになっているのにパーティーを楽しんでいるように見える政府から忘れ去られた路上の人々の苦しみを、何らかの形で和らげる手助けになることを期待しています」。

オークションは、英国時間12月21日正午(日本時間12月21日午後9時)に開始され、大晦日の正午に終了する。

オークションの最新情報は、こちらのTwitterでご覧いただける

画像クレジット:Non Fungible Tories – The Boris Drop

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

職場での寄付やボランティア専用のプラットフォームを提供するDeedが約11.3億円調達

2021年の初めに書いたように、Deed(ディード)のミッションは明確だ。それは、多くの大企業が実施している従業員の寄付 / チャリティ / ボランティアプログラムを、より良いものにすることだ。モダンなUI、内蔵型コミュニティ管理ツールを備え、そして忘れないようにワークフロー(Slackなど)に接続することができる適切な箱を用意することだ。

その結果、Airbnb(エアービーアンドビー)、Stripe(ストライプ)、Box(ボックス)、Adidas(アディダス)などの大手企業を、ローンチ後すぐに顧客として獲得することができた。そして今、彼らは1000万ドル(約11億3700万円)のシリーズAを調達し、その活動を続けている。

先に、私はDeedの共同創業者であるDeevee Kashi(ディーヴイ・カシー)と電話で話をした。彼は、私に会社の最新情報を教えてくれるために、講演中のカンファレンスを抜け出して対応してくれた。彼によると、今回のラウンドはEarlybird(アーリーバード)がリードし、PruVen Capital(プルベン・キャピタル)、Y Combinator(Yコンビネータ)、Paua Ventures(ポウア・ベンチャーズ)がバックアップし、さらに戦略的な観点から非常に興味深い人物として、David Clarke(デビッド・クラーク)氏(エンタープライズワークプレイス管理ツールWorkdayの元CTO)、Uber(ウーバー)のCEO Dara Khosrowshahi(ダラ・コズローシャヒ)氏、そしてJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)のWndrco(ウォンドルコ)などが参加しているという。

同氏は、企業が従業員が本当に関心のある事を把握し、それに合わせて企業の取り組み(多くの場合「ESG」という言葉で括られる)をどのように形成するかを支援することにより注力していると教えてくれた。

「ESGへの投資は過去最高の水準にありますね。企業は多額の資金を投じていますが、その前に従業員の賛同を得られていません」と彼はいう。

「Deedの目標は、ESGとESGに関する戦略を『私』から『私たち』に変えることです。従業員が自分の関心事について行動を起こせるようにすることで、企業が従業員の実際の関心事に耳を傾け、発見できるようにするのです」。

そのためには、企業のソーシャルインパクトチームの担当者だけでなく、個々の従業員にも、プログラムや募金、ボランティア・キャンペーンを作成・管理する能力を与えることが必要だと彼はいう。「企業が従業員のためにプログラムを管理するのではなく、従業員自身が企業のためにプログラムを管理できるようにすることです」。

もう1つは、データチームを強化し、明確で実行可能な方法で「インパクトを測定し、報告する」方法を見つけ出すことだと彼は指摘する。

これに先立ち、Deedは2020年末にシードラウンドで200万ドル(約2億2700万円)を調達している。

画像クレジット:Deed

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Huluがオンラインショップ開店、クリスマスの「ダサいセーター」の売上はチャリティーへ

この夏、Netflixは独自のショッピングサイトオープンして、ファンが「ストレンジャー・シングス」や自分の好きなコンテンツのアパレル、アクセサリーやライフスタイルグッズなどが買えるようになった。

今度は、Huluが同じことをしている。ディズニーがオーナーを務めるストリーミングサービスが発表した「Shop Hulu」には、Hulu Originalsと同社のオンデマンドライブラリにあるその他のタイトル、およびさまざまなHuluブランドのアパレルやライフスタイルグッズの限定版コレクションが並んでいる。このサイトではHuluの例年発表する「Ugly Holiday Sweaters」を、初めて一般的に買えるようになる。

2019年から、Huluはプロモーションの一環としてそのアグリーな(ダサい)セーターをランダムに選んだファンに無料で贈っている。その無料提供の人気に乗じてHuluは2020年からそれを懸賞にし、セーターをもらえるチャンスが誰にでもあるようにした。その懸賞は「Little Fires Everywhere」や「Shrill」「The Handmaid’s Tale」などHuluの番組にも登場している

2021年のホリデーセーターは、米国時間11月30日に発売される。

2021年のラインナップには「Love, Victor(Love, ヴィクター)」や「Solar Opposites(ソーラー・オポジット)」「The Great(THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜)」「The Handmaid’s Tale」、そして「Wu-Tang: An American Saga」などがあり、その多くは人気作品だ。ただしNetflixのストアが同社の大きなリテール事業の一環としてのオンラインストアへの投資であるのに対して、Huluの主な製品はチャリティーの資金を得ることが目的だ。同社によると、12月31日までのダサいセーターの全売上は、税や送料を除いた全額が、フードバンクの巨大全国ネットワークであるFeeding Americaに寄付されるという。

なお、寄付金の上限はセーター1000着で価格は5万4950ドル(約628万4000円)となっている。

画像クレジット:Hulu

Huluのショップは、ホリデーのチャリティー目的だけでなく、年間を通じていろいろな商品が販売されている。たとえば「ソーラー・オポジット」のファンは、この番組のホリデー特集が放映される11月22日にはアパレルやガラス食器、ステッカーなどを買える。同社によると、これらのグッズのデザインには、プロデユーサーのMike McMahan(マイク・マクマハン)氏やJustin Roiland(ジャスティン・ロイランド)氏、そしてJosh Bycel(ジョッシュ・ビセル)氏が協力している。

また「The Orville」や「Wu-Tang: An American Saga」などの番組からはアパレルや家庭用品が出品される。Mitchell & Ness製のカプセルのコレクションの一部も買える。またHuluが放映権を買い上げた「Grey’s Anatomy(グレイズ・アナトミー 恋の解剖学)」や「It’s Always Sunny in Philadelphia(フィラデルフィアは今日も晴れ)」「American Horror Story(アメリカン・ホラー・ストーリー)」「What We Do in the Shadows(シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア)」などからは、それぞれの商品が売られる。

Huluは今後、同社のニュースレターの定期購読者には割引を提供し、1年を通じてときどき特選コンテンツを提供する。それは、2021年のブラックフライデーとサイバーマンデーから始まる。

画像クレジット:Hulu

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Z世代が安心して少額寄付を行えるようにするソーシャルメディアWishly

米国時間11月16日、社会的責任に焦点を当て、Z世代の視点から資金調達のあり方を変えることを目指す新しいソーシャルメディアプラットフォームWishly(ウィッシュリー)が、120万ドル(約1億4000万円)を調達したことを発表した。同プラットフォームは、消費者ブランド、慈善活動家、非営利団体の活動が交差する興味深い地点を目指している。その願いは、ソーシャルメディアの力を利用して、社会に貢献することだ。

このアプリは、経験豊富なソーシャルインパクトマーケターであり、非営利団体の資金調達者であり、管理者でもあるJoanne Gonzalez-Forster(ジョアン・ゴンザレス=フォースター)氏とJustine Makoff(ジャスティン・マコフ)氏の2人によって作られた。彼らは、Z世代の楽観主義と利他主義を受け入れ、人びとが団結し世界に真のポジティブな変化をもたらすことができるソーシャルプラットフォームの必要性を感じていた。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やBlack Lives Matter(ブラックライブスマター)への支援が爆発的に増えた2020年初頭、私たちは子どもたちやその友人たちがソーシャルメディアを使って、フォロワーに行動を起こさせたり、自分たちが気にかけている活動に寄付をさせたりしている様子を目の当たりにしました」と、共同創業者でCEOのジョアン・ゴンザレス=フォースター氏は語る。「しかし彼らにとって、非営利団体を見つけて吟味したり、少額の寄付をして友人にも参加を促すような簡単な方法はありませんでした」。

同社は、Pelion Venture Partnersの創業パートナーであり、現在は引退しているJim Dreyfous(ジム・ドレイファス)氏や、ソーシャルインパクト投資家であるJoshua Mailman(ジョシュアメールマン)氏などの、名のあるエンジェル投資家を集めることができた。この2人は、2020年に40万ドル(約4570万円)のプレシードラウンドに投資したあと、現在のシードラウンドに80万ドル(約9140万円)を投資するために他の投資家を連れて戻ってきてくれたのだ。

ゴンザレス=フォースター氏は「Z世代やミレニアル世代の子どもたちが何をしてくれるのか、私たちはとても楽しみにしています。機会はたくさんありますし、世界にはやるべきことがたくさんあります。毎日のように自然災害が起きていますし、たくさんの社会的な動きがあります。私たちは彼らが、つまり今の若い世代が、小さな行動で世界にポジティブな影響を与えることができるようにWishlyを作りました」という。「『慈善家』をGoogle検索しても、ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、ウォーレン・バフェットといった人たちの写真は出てきますが、若い人の顔は出てきません。私たちはそれを変えたいのです。さまざまな色や形、そして大きさの若い顔を見たいのです」。

同社のビジネスモデルはシンプルで、プラットフォーム上で調達した資金の5%を得るというものだ。また、Wishlyは、プラットフォームに掲載されるすべての非営利団体をしっかり精査する。

「私たちはIRS(米国国税庁)から、登録されているすべての501c3団体(課税を免除される非営利団体)のリストを入手しており、それらの団体はすでに私たちのプラットフォームに登録されていて、それらの団体向けの寄付を受け付けることができます。ゴンザレス=フォースター氏は「非営利団体がアプリ上でプロフィール掲載を要求したら、それを合図にその団体の審査を始めます」という。「私たちはIRSの検索ツールを使って、彼らがIRSと良好な関係にあるかどうか、つまり3年連続できちんと税金を申告しているかどうかを確認します。また、Charity Navigator(チャリティーナビゲーター)やBetter Business Bureau(ベタービジネスビューロー)をチェックしたり、Googleでその非営利団体に関する詐欺や訴訟、誤解を招くような情報がないかを確認したりします。世の中には悪質なチャリティがたくさんあるのです」。

このアプリは現在、iOSAndroid上で提供されているが、チームによれば、このプロダクトは近日中に予定されているより一般的なローンチまでは、基本的に親しい者向けのステージだという。

画像クレジット:Wishly

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

マーク&リン・ベニオフ夫妻とSalesforceが気候変動対策で約340億円を寄付

Marc and Lynne Benioff(マーク&リン・ベニオフ)夫妻は米国10月28日、気候変動対策と他の人々に行動を促すために2億ドル(約227億円)を寄付すると発表した。マーク・ベニオフ氏の会社であるSalesforce(セールスフォース)がさらに1億ドル(約113億円)を追加し、寄付は計3億ドル(約340億円)だ。

ベニオフ夫妻の寄付金は2つに分けられる。1億ドルは「Benioff Time Tree Fund(ベニオフ・タイム・ツリー基金」に、残りの1億ドルは夫妻のベンチャー企業である「タイム・ベンチャーズ」に寄付され、気候変動に対処する製品やサービスを開発している有望な新興企業に投資される。

「Benioff Time Tree Fundは、新興国や発展途上国において、最もリスクの高いコミュニティや自然生態系への気候変動の影響を軽減するために、先住民族やコミュニティに根ざした森林管理に焦点を当てます」と同基金は声明で述べた。

マーク・ベニオフ氏は、気候変動に立ち向かうためには、さまざまな構成員が一致団結して努力することが必要であり、植林活動はそのための大きな要素だと話す。

「すべての政府、企業、個人が地球の保護と保全を優先すれば、気候変動の阻止に成功することができます。私たちは100ギガトンの二酸化炭素を分離しなければなりませんが、それを実現するためには森林再生が不可欠です」と述べた。

さらにTime Venturesの方では、エコに特化したスタートアップ企業に1億ドルを投資する計画だ。これは、夫妻の会社が2014年以降、DroneSeed、Loam Bio、Mango Materialsなどの企業に投資してきた1億ドルに上乗せされる。

Salesforceは、すでにネットゼロ(温室効果ガス実質ゼロ)を達成したことを表明しており、9月に開催された同社の顧客向けカンファレンス「Dreamforce」では、2021年3000万本の木を育てるというコミットメントを発表している。この追加の1億ドルは、生態系の修復や気候変動対策などの分野で活動する非営利団体を支援するための今後10年間の助成金など、いくつかの取り組みに分配される。さらに、気候変動対策に取り組んでいる団体に技術を提供し、250万時間のボランティア活動を行うことを計画している。

関連記事:Salesforceがバリューチェーン全体での温室効果ガス実質ゼロを達成

Salesforceのチーフ・インパクト・オフィサーであるSuzanne DiBianca(スザンヌ・ディビアンカ)氏は、ネットゼロの達成に向けた同社の活動は第一歩だが、今回の追加資金は他の団体を支援することを目的としていると話す。

「私たちは、気候変動対策を加速させるために活動している人々に力を与え、気候変動による影響を最も受けている人々を支援したいと考えています。二酸化炭素排出量を削減し、より健康的で回復力のあるネットゼロの世界を実現するためには、大胆かつ緊急の行動が必要です」と述べた。

同社は、再生可能エネルギーの使用と、それが不可能な場合はカーボンオフセットの購入を組み合わせてネットゼロを達成している。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

移動するだけでお得なポイントゲット、環境に優しい方法ならさらに倍々なアプリ「Miles」が日本上陸

米国シリコンバレー発のアプリ「Miles(マイルズ)」が本日、日本でもローンチされた。2019年に米国でサービスが正式にスタート、現在、140万人以上がアプリに登録したという「Miles」は、1マイル(1.609km)の移動に対して1マイルのポイントを貯めるサービスだ。

「Miles」の特徴として、移動手段で貯まり方に違いがあるという点がある。徒歩やランニングは10倍、自転車は5倍、バス・電車・スキーは3倍と、環境に優しい方法ほどよりより多くポイントが貯まる(ちなみにクルマの相乗りは2倍、クルマは1倍、飛行機は0.1倍)。ユーザーの移動手段はスマホのデータに基づきAIが自動で判定する。

貯まったマイルはギフトカードや割引クーポン(ファミリーマートやJALグループのアンカーやGarminでのプレゼントや割引。Amazonギフトカードへの交換など)や各種サービスの抽選(DAZNの6カ月ギフトコードなど)、そして寄付(森林保護や日本赤十字社などへ)として使うことができる。本稿執筆時で108も用意されている。

また、今後、一定期間内に「徒歩」「ランニング」「自転車」のいずれかで移動を一定距離移動した人を対象に特典を提供するイベントなども予定しているとのこと。さらに自治体と連携、渋谷区の清掃活動参加者にボーナスを付与する取り組みなども行うとのことだ。

新型コロナの流行による緊急事態宣言も解除され、十分な注意は必要であるものの外出しやすくなってきた。リモートワークになり、通勤の機会は少なくなったものの健康のためウォーキングをする人も増えている。「Miles」はその都度アプリで設定しなくても、インストール、登録さえしていれば、スマホを持って移動するだけでマイルを貯めることができるのはうれしい(バックグラウンドでの更新をオンにしている場合)。知らず知らずのうちに貯まることになる。

また、「Miles」はいつ、どこに、どのように行ったのか、トラッカーとしても使うことができる。

アプリはiOSAndroidともに配信中。誰でも無料で利用できる。

Clubhouseのアイコンにもなった芸術家ドゥルー・カタオカ氏が初のNFTをオークション、収益すべてをアジア系米国人のために寄付

Drue Kataoka(ドゥルー・カタオカ)氏の作品は、世界30カ国のみならず、国際宇宙ステーションでも展示された経歴がある。最近ではClubhouseアプリの新しい顔に選ばれたアーティスト兼活動家の同氏は、アジア系米国人の活動を支援するため、同氏にとって初となるNFT作品をリリースすることとなった。このオークションはデジタルアートマーケットプレイスNifty Gatewayにて米国東部時間5月13日午後1時30分に開始され、Clubhouseでのローンチパーティとともに24時間にわたって開催された。Nifty Gatewayはオークション手数料を免除し、すべての収益はAsian Pacific Fundと提携しているビジネスリーダーや活動家の連合体Stand with Asian Americansの助成部門であるCatalyst Fund for Justice(CFJ)に寄付される予定だ。

鏡面仕上げの鋼製の彫刻や、バーチャルリアリティ、脳波、モバイル技術を用いたアートなどの依頼作品で知られているカタオカ氏。同氏の作品の1つでわら紙に墨で描かれた「Up!」は、国際宇宙ステーションで行われた初の無重力アート展示の一部にもなっている。また、活動家やオーガナイザーとしても活躍している同氏は、1968年にCoretta Scott King(コレッタ・スコット・キング)氏が始めた非営利団体The Martin Luther King Jr. Center for Nonviolent Social Changeのため、Clubhouseを通じて#StopAsianHate#Clubhouse4India#24HoursofLoveなどで合計で約30万ドル(約3300万円)の寄付を行っている。

「In the Club:#StopAsianHate」と名づけられたカタオカ氏のNFT作品は、Clubhouse内の活動家コミュニティにインスピレーションを得たものである。同氏は10万2000人のフォロワーを持つClubhouse最大のアートグループ「Art Club」を率いている。

「Clubhouseを社会変革のための媒体として活用することに情熱を注いできました」とカタオカ氏は話す。今回のプロジェクトでは「慈善活動かアートかのどちらかだけでなく、両方に総力を挙げ、目標を達成してアジア系米国人コミュニティにできる限りのインパクトを与えたいと思っています」。

同氏はDrue Kataoka Studiosの創設者兼最高経営責任者を務めており、禅宗、墨絵の修行、そしてシリコンバレーからの影響を結集した作品を制作している。バーチャルリアリティやARなどの技術、コードの書き方、ビジネスの基礎などを学びたかった同氏は、美術大学ではなくスタンフォード大学を卒業している。

「ここ20年間の私の信条は、アートはテクノロジーであり、テクノロジーはアートであるということです」と同氏はTechCrunchに話してくれた。

カタオカ氏にとって初となるNFT作品のリリースについて、同氏は「最初のプロジェクトについてはとても慎重に考えていたので、この作品となってうれしく思っています。私はこれまでもこの分野を注意深く見てきましたし、暗号資産やNFTに対してとても強気です。変動性が高く、衰退するものや時の試練に耐えられないものも多くあることは承知していますが、最終的には創造性や多くの重要なことのためのメカニズムとして未来をかたち作っていくことでしょう」と話している。

Stand with Asian AmericansのCatalyst Fund for Justiceの共同議長を務めるEric Kim(エリック・キム)氏は「彼女が今回の収益の100%をAAPI(アジア・太平洋諸国系米国人)コミュニティに向けて寄付してくれるということに、非常に大きな意味があります。また、ブロックチェーン技術の美しい表現でもあると感じています」と述べている。

キム氏はベンチャー企業Goodwater Capitalの共同創設者兼マネージングパートナーでもある。「私はブロックチェーンの最適なプロダクトマーケットフィットをずっと探してきました。デジタルアートがコード化されて非代替性トークンで証券化され、さらにコミュニティのために活用されてClubhouseなどでもローンチされ、Nifty Gatewayのようなプラットフォームを通じてオークションにまでかけられるというこのプロジェクトは、私がこれまでに見たブロックチェーンの中でも最高の方法の1つであり、複数のコンシューマーテックのプラットフォームが見事に連携した結果の賜物です」。

約1分間の「In the Club:#StopAsianHate」では、Clubhouseの部屋のイメージが金色の背景に重ねられている。ユーザーの写真は取り除かれ、残された空間にはカタオカ氏がバーチャルリアリティで造形した一連のモチーフが流れ動いている。同時に、最近行われた街頭デモの声がカタオカ氏自身の心臓の鼓動の録音に重ねて流されている。最終的にその声が風の音に変わり消えていくのだが、これは多くのアジア文化において生命力の源とされている空気、すなわち「気」「氣」「プラーナ」を象徴している。

「この作品はこの活動に信念と信頼を寄せ、当初からこの問題について声を上げ続けてきた活動家やコミュニティメンバーへの敬意を表したものです。主要メディアが、アジア系米国人コミュニティに起きている多くのヘイトクライムや大きな問題を見て見ぬふりをしたり、包み隠したりしていることがとても気になっていました。Clubhouseでは編集もセンサーシップもなく、2020年の早い段階から私はこのような会話をホストして聞いていました。私たちは真剣にこの会話に取り組み、Twitterとの相乗効果によって広がりが勢いを増していきましたが、当時主要メディアはまったく気にもしていませんでした」とカタオカ氏は振り返る。

キム氏によると、Catalyst Fund for Justiceはデータに基づいたアプローチで助成先を決定するという。初めはヘイトクライムの減少や被害者の支援、職場での差別、政治におけるアジア系米国人の欠如、資金不足の非営利団体の支援などに重点を置く予定だ。また、教育カリキュラムにアジア系米国人の歴史をもっと取り入れることや、職場での偏見によってアジア系米国人が昇進を妨げられているという状況を理解すること、また市民団体にアジア系米国人を増やすことなどを目標としている。

アトランタの銃乱射事件の後、キム氏はGoodwaterの共同設立者であるChi-Hua Chien(チ・ファ・チェン)氏、GGVのマネージングパートナーであるHans Tung(ハンス・タン)氏、Lightspeed VentureのパートナーであるJeremy Liew(ジェレミー・リュー)氏などのベンチャーキャピタリストと協力して有力なベンチャーキャピタルから500万ドル(約5億5000万円)を調達し、AAPIの組織に寄付をしている。

「このような意識の高まりと活性化から、ビジネスリーダー、起業家、投資家はどうすればもっと体系的にこの活動を行うことができるか、自分たちの専門的なスキルセットをこの活動にどう適用することができるかを考え始めました」とキム氏。

こういった議論の結果、Stand with Asian Americansが誕生。2021年3月末にはZoomの創業者兼CEOのEric Yuan(エリック・ユアン)氏、YouTubeの共同創業者であるSteve Chen(スティーブ・チェン)氏、Yahooの共同創業者であるJerry Wang(ジェリー・ワン)氏、Stitch Fixの共同創業者兼CEOのKatrina Lake(カトリーナ・レイク)氏、元ワシントン州知事で米国商務長官のGary Locke(ゲイリー・ロック)氏など、ビジネス界や政治界のリーダーたちが共同で署名したWall Street Journalの全面広告でそのミッションを紹介している。Stand with Asian Americansは、ベイエリアで最も長く活動しているAAPI 非営利団体であるAsian Pacific Fundと提携し、助成金を提供する部門としてCatalyst Fund for Justiceを立ち上げた。同部門には現在8000人近くの署名者と100人以上の献身的なボランティアの力が存在する。

Asian Pacific Fundの会長兼エグゼクティブディレクターのAudrey Yamamoto(オードリー・ヤマモト)氏は声明中で次のように述べている。「家の外に出る度に暴力への恐怖に怯えなければならい今、カタオカ氏によるGenesis NFTドロップの惜しげもない寄付はAAPIコミュニティにとってかけがえのないものです。Catalyst Fund for Justiceは新たな資金源を開拓し、データに基づいたアプローチを用いてAAPIコミュニティが直面する最大の不正に立ち向かうための助成を今後も行っていきます」。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:NFTオークション寄付アートClubhouse

画像クレジット:Drue Kataoka

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(文:Catherine Shu、翻訳:Dragonfly)