高純度間葉系幹細胞を開発する島根大学発バイオスタートアップPuRECが総額7億円調達、製品開発を加速

高純度間葉系幹細胞を開発する島根大学発バイオスタートアップPuRECが総額7億円調達、製品開発を加速

島根大学発の細胞医薬スタートアップ「PuREC」は3月29日、第三者割当増資による総額7億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は持田製薬、山陰合同銀行、ごうぎんキャピタル、中内啓光氏(スタンフォード大学教授)。累計調達額は13億7000万円となった。

調達した資金は、製品開発をより加速することにあてる。それによりこれまで十分な医療効果が得られなかった疾病に対し、少しでも早く高純度間葉系幹細胞RECを活用した再生医療を届けることを目指す。

2016年1月設立のPuRECは、島根大学発のバイオ領域スタートアップ。独自開発した手法で得られた高純度間葉系幹細胞「REC」(Rapidly Expanding Cells)の臨床応用を進めている。間葉系幹細胞が持つ細胞機能の増殖能と分化能、またその均一性や遊走能を利用して、安全かつ効果的な幹細胞治療を実現することを目指しているという。これまでに日本医療研究開発機構(AMED)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、富士フイルム、ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング、持田製薬などと連携し、低ホスファターゼ症、関節疾患、脊椎関連疾患など様々な疾患を対象とした細胞医薬品開発を進めている。

ソメイヨシノの遺伝子発現をPCR法で解析し正確な開花予測を実現、サクラと同じバラ科のナシやモモにも応用可能

ソメイヨシノの遺伝子発現をPCR法で解析し正確な開花予測を実現、サクラと同じバラ科のナシやモモにも応用可能

ソメイヨシノの萌芽から開花の時期に発現する遺伝子群とその発現量の変化(発表論文データより)。各グラフの縦軸は遺伝子の発現量に相当する。萌芽から開花までに働く様々な遺伝子の発現変動を全体像としてまとめたことで、正確な開花日予測が可能となった

かずさDNA研究所は2月18日、ソメイヨシノの遺伝子発現に基づく開花予測技術を開発したと発表した。ハンディータイプの解析装置を用いたリアルタイムPCR法により、開花前に特徴的に発現量が増加する遺伝子を捉え、正確に開花日を予測できる。これは、かずさDNA研究所(白澤健太氏)、島根大学(江角智也准教授)、京都府立大学(板井章浩教授)による共同研究。サクラと同じバラ科のナシやモモをはじめとする、様々な果樹の開花予測に応用できるという。

ソメイヨシノの開花予測は、現在は「温度変換日数法」によって行われている。冬に休眠した花芽が「休眠打破」により成長を開始した日から、特別な公式によって弾き出された日数を経過すると開花するという予測方法だが、それでは桜前線のように、大きな範囲での予測となる。そこで研究グループは、気温の上昇にともない発現する開花に関連した遺伝子を特定し、発現量をモニターできれば、各地のお花見スポットやソメイヨシノ1本1本の開花日予測が正確に行えるようになると考えた。

ソメイヨシノは、エドヒガンとオオシマザクラを掛け合わて作られた品種のため、2つのゲノム(2倍体)を持つなどゲノム構成が複雑で、これまで解析が難しかったのだが、同研究グループでは2019年にソメイヨシノのゲノム配列の解読を成功させ、新たな開花予測手法の開発に取り組んできた。

その結果、開花1カ月前までに器官発達に関わる遺伝子が働き、開花2〜3週間前までに細胞壁の構築・伸展または分解に関する遺伝子、糖の代謝や必要な物質の輸送に関する遺伝子が順番に働き始め、さらに、おしべやめしべの発達に関する遺伝子が働くことがわかった。どれもが、花器官の組織や細胞の劇的な肥大、花柄(かへい)の成長などの形態変化に関係するものだ。そこから、開花前10〜20日、また0〜10日前に特徴的に発現する遺伝子を選び出し、ハンディータイプの解析装置を用いたリアルタイムPCR(Polymerase Chain Reaction)法によりその発現量を測定し、開花日を予測できるようにした。リアルタイムPCR法とは、DNA断片を増幅するためのサーマルサイクラーと、DNA量をモニターするための分光蛍光光度計を一体化した専用の装置を用いて、DNA断片の増幅量をリアルタイムでモニターし解析する方法。新型コロナウイルスの陽性確認PCRにも用いられている。

今回発表の技術は、サクラと同じバラ科のナシやモモなどの果樹にも応用が可能とのこと。開花後の受粉の管理などを計画的に行う必要のあるこれらの果樹は、気候変動により難しくなっている開花予測の精度を高めることで、安定して高品質な果実を得られるようになると、研究グループは話している。

夜型人間も夜型人間も平日の活動量に差がなく、社会的要因が影響しているという世界初の研究

夜型人間も夜型人間も平日の活動量に差がなく、社会的要因が影響しているという世界初の研究

夜型20人と朝型61人の学生それぞれの活動量平均値をプロット。土曜日と日曜日午前は、夜型の活動量が朝型よりも低下する。しかしこれ以外の時間帯は、活動量に差はなかった(平日は金曜日と月曜日だけを図示したが、火曜日から木曜日も同様に差がない)

島根大学京都医療センター臨床研究センター金沢大学の研究グループは、遺伝子で決まる朝型と夜型の人の活動量が、平日においては差がないことを明らかにした。これまで夜型生活者は活動量が相対的に低いとされてきたが、差が表れるのは土曜日のみで、遺伝的要因と社会的要因が大きく関わっていることが世界で初めて示された。

ヒトには「朝型タイプ」「夜型タイプ」があり、その違いの約半分は、遺伝的(先天的)に規定されている。その規定遺伝子が、2017年のノーベル医学生理学賞の対象となった「時計遺伝子」であり、その個人差である時計遺伝子多型であることが知られている。

夜型の生活習慣を持つ者(夜型タイプ)は、朝型に比べて身体活動量が低く、睡眠時間が短く、食生活が乱れることが多いために、肥満や糖尿病の罹患率が高いことが広く報告されてきた。しかし、そうした研究では、調査は1日だけ(24時間程度)に限られており、社会的制約が異なる平日と休日の両方で調査しなければ「健康増進へのエビデンスとして不十分」だと研究グループは考えた。そうして、この比較研究を行うことにした。

研究グループは、大学生男女81人を対象に、朝型とされるTの遺伝子多型を持つ人(TT者)と、夜型とされるCを含む遺伝子多型を持つ人(TC+CC者)とに分けて実験を行った。学生たちには、7日間連続して、起床時から就寝時にかけてデジタル加速度計を装着してもらい、活動量を計測した。その結果、平日は両者とも活動量に大きな差はなく、土曜日と日曜日の午前中にのみ、TC+CC者の活動量の低下が見られ、起床時間と就寝時間が大幅に遅くなることがわかった。ここから、平日は通学などの社会的な制約のために夜型も朝型と同じ行動をとらざるを得ず、差が見えなくなっていると推定された。

また、実験の際に行ったアンケート調査から、「自分は朝型」や「自分は夜型」といった主観は、遺伝子による分類とは関係がないこともわかった。つまり、自分の遺伝子の型を理解することで、自分にとって最適な活動時間を把握できるということだ。研究グループは、子どもの生活指導を行う人は、社会的制約のない週末の子どもの行動を観察して、適切にその生活習慣を理解することが大切だと提言している。また、勉学、スポーツ、ビジネスに取り組む際には、遺伝的な朝型か夜型かの個性を考慮することで、最善のパフォーマンスを発揮できるとも指摘している。