新型コロナ時代の調査とインスピレーションについて投資家が知っておくべきこと

【著者紹介】本稿著者のNili Metuki(ニリー・メトトゥキ)氏は、デジタルプロダクトデザインおよび開発におけるインクルーシブな協働のためのプラットフォームInVision(インビジョン)の調査担当シニアディレクター。

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企業は、イノベーションを先導するアイデアで特定分野に衝撃を走らせる「スパーク」によって業界リーダーとなる。Apple(アップル)は、見た目も使い心地もよいコンピューターをポケットに入れて持ち運びたいという人々の願いを実現し、世界を変えた。

スパークを可能にするのは調査だ。現代の経済では「エウレカ」の瞬間は滅多に訪れない。iPhoneやPaypalや、その他数々のプロダクトマーケットフィットは、たしかにイノベーションのスパークの賜物だが、それより重要なものは厳密な調査だ。とはいえ、シャワーを浴びながら素晴らしいアイデアを思いつくことはある。だが大きな前進は、数え切れないほどの時間を市場調査やABテストなどにかけた末に訪れるものだ。

ご想像のとおり、パンデミックによって調査はオンラインに頼らざるを得なくなった。リモート調査の方法を会得した企業は、いまだに躊躇している企業を尻目に、いち早く成功し利益を上げることができる。リモート調査は、幸いにもなんとかパンデミックが終息したとしても、私たちの生活には数カ月間、あるいは数年間にわたって大変動が尾を引くであろうことを考えれば、優位な立場を維持できるはずだ。テック企業への投資を考えている企業にとって、新たに磨き上げたリモート調査の能力は、まだ資産として正当な評価が得られず、企業の健全性を示す指標としては目立たない存在だが、決定的な意味を持つ

パンデミックは、良好な企業調査の大きな障害となった。私自身も含めほとんどの研究者は、顧客や潜在顧客に直接会い、面と向かって話をするのが、昔からの当たり前のやり方だった。すでに2021年がスタートし、企業にはリモート調査問題をどのように解決したか、その方法の説明が求められている。企業には対処のための時間が10カ月あった。まだ解決していない企業は、対応計画を立てるべきだ。

投資家も、企業幹部も、組織の底辺で働く人たちも、企業が適正に調査を行っているかを確認し、またはそうするよう要求することが大切だ。そこには数十億ドル(数千億円)かかっている。誰もQuibi(クイビー)の二の舞は御免だろう。消費者調査をきちんと行ってさえいれば、あんなことにはならなかったはずだ。

デジタルで効果的な調査方式を再構築する方法は、いくつかある。まずリーダーは、調査担当者にどのようなツールを使っているかを知っておくことだ。つまり、斬新な方法で会社の需要を満たすために、彼らがどのような手段を開発したかだ。また調査担当者は、アイデアを引き出し、人々をより深く理解するために協働ツールを活用しているかどうか。

たとえば私は、ある人物の生活状況を理解したいときに、その人の住まいの写真のコラージュを依頼することがある。次に確かめるべきは、調査チームはそうしたツールをどう使っているかだ。ただプレゼンテーションを行うためだけに使っているのか、それとも範囲を限定せずに活発な会話が促されるようなかたちで使っているか。私はよく、デジタルホワイトボードでリアルタイムにスケッチを描いたり図解をして個人的な感覚を伝えているが、楽しいこともあれば、たわいない話になることもある。だがこれによって、人々は心を開くようになる。

次にリーダーは、たとえパンデミックで協働が難しい状況であっても、デザイン工程に必ず会社が関わるように仕向けなければならない。調査担当者とデザインチームは、以下の問題について考えほしい。

  • 調査は、単にチェックマークを付けるだけのものなのか?または、デザイナーや開発者は常にそれを参照しているか?
  • 調査チームは適切に報告を上司に伝えているか?理想的には、最高製品責任者に頻繁に報告し、幹部チームで見識を共有させ、消費者の要望に対する感覚を磨かせているか?
  • 調査担当者は今の異常な現実に対処するために消費者たちが行っている工夫について、深く調査する自由が与えられているか?
  • デザイナーと開発者は調査結果をジャンプ台として利用しているか?新しいかたちでのデザインや開発が許されているか?

いかなる場合でも、優れた製品の判断において、また健全なデジタル製品のデザインと開発において、調査は中核を担っている。もしそうなっていない企業があれば、2021年中に改善すべきだ。

この主張を裏づける定量的データがある。InVision(インビジョン)が行った業界調査によると、対象となった2300社のうち、デザイン的に高度に成熟した調査を実施することで、市場展開を早め、収益と評価額を高めていたチームはわずか10%だった。顧客の意見を重視し、顧客とともに製品を開発している(重要な調査方法だ)と答えたチームはわずか7%に過ぎない。

はっきりいえば、投資対象の企業は、調査を最善のかたちで活用していない傾向にある。この業界調査では、数千社のうちの10%に満たない企業だけが、デザイン調査を重要視していた。つまり、今日のリモート調査の課題を簡単に克服でき、新たな現実をすばやく受け入れ、この極端な変動の時期に成功できる企業は、10%にも満たないということだ。パンデミックの猛威の中では、これは深刻な問題だ。

新型コロナ終息後にも繁栄が続けられるのは、成熟したデザイン能力を持ちデジタル第一に考えられる企業だ。そうでなければ、生き残ることすら難しい。それらの企業は、より多くの収益を呼び込み、顧客との対話を重ね、新たな見識をデジタル式の調査で獲得していく。そうした経済においては、テクノロジーとエンジニアリングの卓越した能力が必須となるが、どのように高い技術的能力を備えていても、消費者が何をほしがっているかを理解できなければ、それは無用の長物だ。フィードバックがなければ役に立たない。イノベーションにつながる見識を持たなければ役に立たない。

有効性を立証し、理解し、アイデアのスパークを実体化できる、調査を活用した成熟したデザイン工程を持たなければ意味がない。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:新型コロナウイルス市場調査

画像クレジット:Eskay Lim/EyeEm / Getty Images

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(文:ゲストライター、翻訳:金井哲夫)

ユーザー が報酬をもらえる生活状況調査プログラム「Facebook Viewpoints」がスタート

Facebookは、ユーザーが報酬をもらえる新しい市場調査・製品テストプログラムを始める。米国時間11月25日から米国在住で18歳以上のユーザーは、Viewpointsアプリをダウンロードして生活状況に関する質問に答えることで、Facebookが「ソーシャルメディアの与えるマイナスの影響を抑え、恩恵を拡大する」手助けができる。ほかにも、Facebookのオンライン作業を手伝ったり、新しいアプリやデバイスを公開前に試してFacebookの改善に協力する機会を得られる。

生活状況調査にはおよそ15分かかり、ユーザーは1000ポイントを獲得しPayPalを通じて5ドルに換金できる。興味のある人はここでViewpointsに登録できる。集めたデータは内部で利用するだけで売ることはないと会社は言っている。Facebook ViewpointsのアプリはiOSAndroidで利用可能で、来年から他の国にも拡大していく計画だと同社は表明している。

問題は、ユーザーがこれ以上Facebookにデータを渡すことに抵抗を感じないかだ。すでに多くの人達がFacebookに不安を感じている、金銭的インセンティブが分別を覆すかもしれない。

いずれにせよFacebookはアプリが乱用されることを防ぐ必要がある。最も重要なのは、未成年者が紛れ込まないようにする方法を確立することだ。子どもたちのほうが現金の誘惑に駆られやすく、自分の情報を渡すことの危険に対する関心も低い。

私もViewpointsを試してみたが、生活状況調査にもほかの作業にも招待されなかったので、報酬を得ることもやってみることもできなかった。一部の調査は特定の地域や年齢層に限定されているためだ。現在はFacebookアカウントでしかログインできないが、Googleや電話番号、メールアドレスによるログインボタンがグレイ表示されていて、近く利用できるようになるとFacebookは言っている。支払い処理には最大10日間かかり、ポイントは5年で失効する。Facebookはユーザーがアプリを通じて提供した情報を一切公開しない。

今回のViewpointsの公開は、Facebookが有料市場調査プログラムの”Research”と、ユーザーのデータを収集する無料VPNサービスのOnavoを終了したのを受けたものだ。TechCrunchは同社がAppleの規則を破り社内専用アプリを外部に配布して未成年者に報酬を支払っていたことを発見し、それがきっかけで中止に至った。

Facebookは、6月に「Study From Facebook」という名前で市場調査プログラムを再開し、子供の利用を許さないことを確約した。 ところが流出した裁判文書によってFacebookがOnavoで集めたデータを意図的に利用して競争相手のデータ利用を阻止しようとしていたたことが発覚した。ライバルを不利にさせたことで消費者はソーシャルアプリの選択権を奪われた可能性があるとして、現在Facebookは反トラスト法違反の疑いで捜査を受けている。

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[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

マーケットリサーチのLucidが6000万ドル調達

Lucidは米国時間10日、North Bridge Growth Equityがリードする資金調達ラウンドで6000万ドルを調達したと発表した。同社にとって、2011年に調達した280万ドル以来の外部調達になる。

創業者兼CEOのPatrick Comer氏によれば、この空白の数年間、Lucidは「プロダクトのグロースにすべての資金を投入し、それに真剣に取り組んできた」という。しかし、同社はすでにそのフェーズを超えたところにいる ― 彼らのプロダクトは500以上の顧客企業に利用され、過去3年間、収益は年率70%のスピードで成長している。

「『私たちのプロダクトとは何か?それは顧客に受け入れられるのか』という問いに対する答えが見つかったあと、今はビジネスをグローバルにスケールさせることに注力しています。今回の資金調達によってそれを実現させるつもりです」とComer氏は話す。「なぜなら、マーケットはすでにそこに存在するからです ― 私たちが創り上げてきたマーケットです」。

Lucidにとっての「スケール」とは、グローバル展開を意味する。Comer氏は同社をマーケットリサーチ業界におけるNo.1プレイヤーにしたいと語る。彼によれば、同社が提供するアンケート調査は国際的なリーチをもっているが、それは米国企業が世界に目を向けていることが主な要因だという。彼らは今、ヨーロッパ諸国、中東、アフリカでのプレゼンス確立を目指している(同社はすでにロンドンとドバイにオフィスを構えている)。

同社は2015年に社名をFederated Sampleから現在のLucidに変更。サンプリング・マーケットプレイスのFulcrumなどをプロダクト・ラインナップに加えた。Comer氏はLucidを「プログラマティック・ディスラプター」と呼び、広告テストやアンケート調査を自動化するソリューションを提供するLucidはマーケッターに前例のない「スピードとスケール」を与えていると主張する。

「プログラマティックな(広告)を利用すれば、適切なインプレッション、適切なメッセージに標準を合わせることはできます。しかし、そのメッセージを適切なオーディエンスでテストすることはできません」とComer氏は話す。

これはLucidがSurvey MonkeyやQualtricsなどの競合になることを意味するわけではない、と彼は加える。そうではなく、それらの企業はLucidを使って適切なオーディエンスを発見することができるのだと彼はいう。

Comer氏はまた、今回の調達によってLucidの本拠地であるNew Orleansに注目が集まることを期待している。

「人々は私に、『サンフランシスコ以外の場所でユニコーンをつくることができるか』と問います」と彼は話す。「その答えは、『Yes』です」。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter