九州大学と土木研究所、1960年代から現在まで約60年間にわたる海洋プラスチックごみの行方を重量ベースで解明

九州大学と土木研究所、1960年代から現在まで約60年間にわたる海洋プラスチックごみの行方を重量ベースで解明

九州大学土木研究所 寒地土木研究所は3月2日、1960年代から現在までに海に流出したプラスチックごみ「海洋プラスチック」の行方を、コンピューター・シミュレーションによって重量ベースで解析したと発表した。その結果、海に流れ出たプラスチックは2500万トンほどであり、この60年間に陸上で環境に漏れ出たとされるプラスチックごみの総量の約5%に過ぎないことがわかった。残りの95%は陸上(5億トン程度)で行方不明になっている。

世界中で陸から海に流れ出るプラスチックごみは、年間で115万〜241万トン(Lebreton et al., 2017)と推計されている。しかし、実際に観測される浮遊プラスチックごみの現存量は25万トン程度(Eriksen et al. 2014)しかない。この推計流出量と観測された現存量とがかけ離れている状態は、「ミッシング・プラスチックの謎」といわれている。海に流れ出たプラスチックは、浮遊するものばかりでなく、海中に沈んでしまっているものもある。それらの総量を把握しミッシング・プラスチックの謎を解明しなければ、海洋汚染を回避するためにどれだけプラスチックを削減すればよいかがわからない。

そこで、九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授と土木研究所寒地土木研究所の岩﨑慎介研究員による研究グループは、全世界の海を対象にプラスチックごみの移動を追跡するコンピューター・シミュレーションを行った。海流や波で運ばれるものや、風で吹き寄せられるものに見立てた仮想粒子を追跡するというものだ。これには、陸から海に流れ出たプラスチック量の他に、漁業にともなう投棄量も含まれる。

このシミュレーションには、大きなプラスチックごみがマイクロプラスチックに粉砕される過程や、破砕の後に生物が付着して沈んだもの、海岸の砂に吸収されたもの、破砕が進んで現状では採取できない微細なマイクロプラスチックになったものも、海底に沈んだものなど、海表面や海岸からマイクロプラスチックが消失する過程も組み込まれている。

そしてこのシミュレーションの結果を解析し、全世界でのプラスチック重量の収支を計算した。すると、世界で海に流出したプラスチックごみのうち、約26%(660万トン)は目視できるサイズのごみであり、約7%(180万トン)はマイクロプラスチックとして漂流や漂着を繰り返していることがわかった。世界の海岸に漂着したプラスチックごみの重量は約590万トン。そして、60年代から海に流出したプラスチックごみの総量約2500万トンのうち約67%(1680万トン)はマイクロプラスチックとなり海岸や海面近くから消失している。しかし、これらを合計しても2500万トンほどにしかならず、陸上で環境中に漏れ出たと推定されるプラスチックごみの総量の約5%に留まる。残りの95%(5億トン)は、陸上で行方不明となっている。

今後はこの5億トンのプラスチックごみの行方の追究が、「広範な環境科学の研究者が関わるべきテーマ」だと研究グループは言う。さらに、数百μm(マイクロメートル)以下の「微細プラスチック」の行方も問題となる。九州大学では、ごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」(Android版iOS版)を使った、市民によるプラスチックごみの追跡プロジェクトを実施しており、これと並行して微細プラスチックの分布量把握、将来予測、影響評価を行う研究に取り組むとしている。

米Novoloop、プラスチック廃棄物から高価値の化学製品を生み出すリサイクル方法を開発

ポリエチレン(私たちがよく知っている一般的なプラスチック)を「バージン」プラスチック(石油化学から直接作られたプラスチックのこと)に対抗できる高価値のプラスチックにアップサイクリングすることは、極めて困難な問題だ。それが非常に難しかったため、何十億トンものプラスチックがリサイクルされず、地球や海を汚染している。しかし、米国に拠点を置く新しいスタートアップ企業のNovoloop(ノヴォループ)は、その答えを出したと主張する。

同社の創業者であるJeanny Yao(ジェニー・ヤオ)氏とMiranda Wang(ミランダ・ワン)氏の2人の女性科学者は、5年以上にわたってこの問題に取り組んできた。

米国時間2月15日、Novoloopは1100万ドル(約12億7000万円)のシリーズA資金を調達したことを発表。このラウンドはEnvisioning Partners(エンヴィジョニング・パートナーズ)が主導し、Valo Ventures(ヴァロ・ベンチャーズ)とBemis Associates(ビーマス・アソシエイツ)に加え、SOSV、Mistletoe(ミスルトー)、TIME Ventures(タイム・ベンチャーズ)を含む以前の投資家も参加した。Novoloopは、高機能アウターウェアに見られるシームテープなど、アパレル向けボンディングソリューションを製造しているBemis Associatesと新たに提携を結んだことも発表した。

Novoloopは、プラスチック廃棄物を高性能の化学製品や材料に変えることを目指しており、ATOD(Accelerated Thermal Oxidative Decomposition、熱酸化分解促進)と呼ばれる独自のプロセス技術を開発した。ATODは、ポリエチレン(現在最も広く使用されているプラスチック)を、高価値の製品に合成可能な化学的構成要素に分解するという。

その最初の製品は靴、アパレル、スポーツ用品、自動車、電子機器などに使用される熱可塑性ポリウレタン(TPU)のOistreになる。この製品のカーボンフットプリントは、従来のTPUに比べて最大で46%も小さいと、Novoloopは主張している。

Novoloopの共同設立者でCEOを務めるミランダ・ワン氏は、声明の中で次のように述べている。「プラスチックがすぐにはなくなることはないでしょう。そのため、生産されるものと再利用されるものとの間のギャップを埋めるためのイノベーションが必要です。何年もかけて技術開発を行ってきた私たちは、この必要性の高い技術を商業化するために、すばらしい投資家やパートナーから支援を得られたことを発表でき、大変うれしく思います」。

「我々が今回の投資ラウンドを主導することになったのは、Novoloopがプロダクトマーケットフィットを見つけたからです」と、Envisioning PartnersのパートナーであるJune Cha(ジューン・チャ)氏は述べている。「Novoloopは、Oistreが初期段階でも市場で幅広い用途に使えることを証明しました」。

ワン氏は電話で筆者に次のように語った。「ポリエチレンプラスチックは、包装材として最も一般的に使用されているものですが、化学的に変化させたり、分解して有用なものに変えることが非常に困難です。私たちは、このポリエチレンを酸化させるために、根本的に新しい化学的アプローチを採用することで、これを解決しました」。

「他の誰もが、廃プラスチックであるポリエチレンを化石燃料の原料にしています。しかし、私たちのアプローチは、直接ポリエチレンの廃棄物を採取し、ワンステップで変換するというものです。(中略)ですから、石油やガスに戻す場合に発生する多くのステップや化学反応を根本的に回避することができます」と、ワン氏は語る。

Novoloopの競合企業には、BASF(ビーエーエスエフ)、Covestro(コベストロ)、Lubrizol(ルーブリゾール)、Huntsman(ハンツマン)などがある。これらは化石燃料からバージン材のTPUを製造している企業だ。現在、TPUの約99%はバージン材である。言い換えれば、これは崩壊の準備を整えた巨大な産業なのだ。

画像クレジット:Novoloop / Novoloop founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

海洋研究開発機構と鹿児島大、デジカメ撮影による海岸の写真からAIで漂着ごみの被覆面積を高精度に推定する新手法を開発

セマンティック・セグメンテーションを用いた、海岸の写真からの海ごみ検出のイメージ図。写真に対して、ピクセル単位でのクラス分類が行われる。訓練用に2800枚、評価用に700枚の画像データを用いた(写真は山形県提供)

セマンティック・セグメンテーションを用いた、海岸の写真からの海ごみ検出のイメージ図。写真に対して、ピクセル単位でのクラス分類が行われる。訓練用に2800枚、評価用に700枚の画像データを用いた(写真は山形県提供)

海洋研究開発機構鹿児島大学は2月4日、ディープラーニングを用いた画像解析で、デジカメなどで普通に撮影された海岸の写真から、海岸の漂着ゴミを検出する手法を開発したと発表した。

海岸漂着ゴミの実態調査は世界中で行われているが、ゴミの現存量の定量化が行える、汎用性と実用性の面で優れた技術がなかった。人による調査では、経済的負担、時間的制約、さらに範囲も限定されてしまい、精度にも課題があった。ドローンや人工衛星を使う技術も開発されているが、それではコストがかかりすぎる。そこで、海洋研究開発機構の日高弥子臨時研究補助員、松岡大祐副主任研究員と、鹿児島大学の加古真一郎准教授からなる研究グループは、地上においてデジカメなどで簡易的に撮影された画像から、高精度で海洋漂着ゴミの定量化ができる技術の研究に着手した。

ここで採用されたAI技術は、セマンティック・セグメンテーションと呼ばれるもの。ディープラーニングを用いた画像解析技術で、画像内のすべてのピクセルにラベル付けを行い、ピクセルごとに、人工ゴミ、自然ゴミ、砂浜、海、空といったクラスを出力する。そのクラス特有のパターンの学習には、山形県庄内総合支庁から提供された海岸清潔度モニタリング写真3500枚が利用された。そこから正解となるラベルを作成し、AIの訓練や判断の評価を行った。

入力画像、正解ラベルおよびAIによる推定画像の例

入力画像、正解ラベルおよびAIによる推定画像の例

今回の研究では、海岸漂着ゴミを検出した後の画像を、真上から見た構図に変換(射影変換)して、ゴミの被覆面積を推定することも可能であることがわかった。ドローンによる空撮画像から推定した被覆面積と比較したところ、誤差は10%程度だった。

セマンティック・セグメンテーションと射影変換による人工ごみの被覆面積推定結果。海岸漂着ごみ検出後の画像を真上から撮影した構図に射影変換することにより、海岸全体のごみの被覆面積が推定可能であることを示したもの。同手法の精度は、ドローンによる空撮から得られた正解値との比較により検証している

セマンティック・セグメンテーションと射影変換による人工ごみの被覆面積推定結果。海岸漂着ごみ検出後の画像を真上から撮影した構図に射影変換することにより、海岸全体のごみの被覆面積が推定可能であることを示したもの。同手法の精度は、ドローンによる空撮から得られた正解値との比較により検証している

今後は、海岸漂着ゴミの堆積の推定や、プラスチックゴミの個数のカウントもできるように発展させるという。今回の研究から生まれた学習用データセット(The BeachLitter Dataset v2022)は、非商用の研究目的に限って公開される。汎用性の高いシステムなので、多くの人がデータを集め学習させることで、それぞれの地域特有の、目的に合ったAIの開発が可能になり、全世界で活用できるようになるとのことだ。そこで、研究グループは、アマチュア科学者をはじめ多くの人々が参加する市民科学に期待を寄せている。

サムスン、廃棄漁網由来のスマホで持続可能性への取り組みを強化

韓国のエレクトロニクスの巨人、Samsung(サムスン)は、ここ数年サステナビリティ(持続可能性)を派手に宣伝し、同社のエコシステムに影響をあたえている。「コーポレートシチズンシップ」などのスローガンや、環境に優しいサプライチェーンや材料、製造の強い推進など、今まで以上にグリーンな世界を強調している。Galaxy for the Planet(地球のためのGalaxy)プロジェクトの一環として、アップサイクルプログラムプラスチック包装の廃止など数多くの取り組みに続いて同社が繰り出す最新の妙技は、捨てられた漁網の再利用による環境保護だ。

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米国時間2月9日のGalaxy新機種発表を前に、同社は新しい材料が製品ラインナップのどこに居場所を見つけるかを垣間見せた。強調したのは、プラスチックの使い捨てをやめることによる効率向上と、再利用材料(特に、消費財再利用材料)や再生紙などの環境に優しい材料の使用をさらに強化することだった。

実際に意味のある影響を与えることを確かめるべく、同社は毎年64万トン廃棄されている漁網に注目した。少なくともこの一部を収集し、再利用することで少しでも海洋をきれいにする取り組みを、会社は誓約した。その結果、捨てられた漁網に絡みつかれていた海洋生物にとって、水辺の環境は少しでも改善されるだろう。

廃棄された網を海に残さないことがどの程度の環境的効果を生むのかは不明だが、マスコミに取り上げられる効果は多少なりともあるだろう(画像クレジット:Samsung)

Samsungは2021年の報告書でこれまでに数多くの善行をなし、一部のパッケージをデザイン変更したことでプラスチック使用を20%削減し、製品に省エネ機構を加え、500万トン近くの「電子廃棄物」を収集し、製造工程廃棄物の95%の再利用を確保していることを主張している。同社は、米国、ヨーロッパ、および中国で100%再生可能エネルギーも実現している。さらに、Carbon Trust Standard(カーボントラスト標準)による、二酸化炭素、水、および非リサイクル材への依存削減などの認証取得も進めている。

海洋プラスチック汚染に対し、環境および「全Galaxyユーザーの生活」に良い影響を与える方法で取り組むことを誓約する、と同社はいう。ということは、Galaxy以外の携帯電話を持っている人の生活は過去とまったく変わらないということか、それは、どうもありがとう。

冗談はさておき、そして岩礁から漁網などのごみを片付けるために数日間潜水服で過ごしたことのある1人として、これはエレクトロニクス巨人による前向きな行動だと私は思う。果たしてこれが、目に見える影響を環境にあたえるかどうかはまだわからない。Samsungは、年間64万トンの漁網のうちどれだけを海洋から取り除こうとしているのかを明らかにしていないが、コミュニケーションと測定が続いていることには希望がもてる。Samsungや他の大手メーカーが互いにグリーン化を競い合い、気候変動に対する理想的な解決策ができるまでに地球を焼け焦げにしないための役割を果たして続けてくれること願うばかりだ。

Samsungの努力に拍手を送る。そして、もしみんなが携帯電話を1年半ではなく3年毎に買い換えるようにすれば、もっと目に見える影響があるはずだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」を使い、プラごみの総量算定に取り組む参加型プロジェクトが開始

九州大学らがごみ拾いSNSアプリ「ピリカ」を使いプラごみの総量算定に取り組む参加型プロジェクトを開始

九州大学は1月28日、街や海岸のプラスチックごみの散乱状況を分析するための参加型プロジェクトを開始すると発表した。ごみ拾いを目的とするSNSアプリ「ピリカ」(Android版iOS版)を利用し、プラスチックごみの画像を収集して、総量・分布・時間変化の追跡などを行う。2022年1月から2025年3月末まで実施される予定だ。

これは、九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授、鹿児島大学学術研究院の加古真一郎准教授、海洋研究開発機構(JAMSTEC)付加価値情報創生部門の松岡大祐副主任研究員らからなる研究グループと、ピリカとの共同による研究。参加者は、「ピリカ」のアプリをスマートフォンにインストールし、街や海岸で見つけたプラスチックごみを撮影する。すると、その画像が日時や位置の情報とともに鹿児島大学やJAMSTECに送られ、深層学習を用いて分析される。そこでは、ごみの抽出、ごみの種類(ペットボトル、レジ袋など)や面積が自動判別される。

海に漂流したり海岸に漂着するプラスチックごみの80%は、陸から流出したものだとされているが、どれだけのプラスチックごみが陸から海に移動しているかを知るのは難しい。そこで研究グループは、このプロジェクトを通してプラスチックごみの総量や時間変化による移動の様子を推測しようしている。研究グループは、「地域社会の皆さん一人ひとりが、お手持ちのスマホを利用することで、海洋プラスチック研究に参加するプロジェクト」であり、「参加型で作成したビッグデータによって、研究の大きく前進することを期待しています」と話している。

規格外・余剰農産物の売却先をオンラインで農家とつなぎ食品ロスの削減を目指すFull Harvest

年間約40%の食料が廃棄されており、食料廃棄は世界で2兆6000億ドル(約294兆円)規模の問題になっている。Full Harvest(フルハーベスト)は、この問題は流通の問題であり、農産物のサプライチェーンをデジタル化することで解決できると考えている。

サンフランシスコに拠点を置く同社の農産物企業間取引市場は、農産物の買い手と売り手が、わずか数クリックで余剰または規格外の作物の取引を迅速に成立させる手段を提供する。農家にとっては新たな収入源となる。

創業者でCEOのChristine Moseley(クリスティン・モズレー)氏はTechCrunchに対し、生産者の大半はいまだにペンや紙、ファックスを使ってビジネスを行っていると語る。

「これは最も重要な産業の1つです。私たちはこの産業を自動化し、オンライン化することで、これまで解決されていなかったことを解決したかったのです」とモズレー氏は付け加えた。「例えば、売買には膨大な事務処理が必要ですが、オンボーディングプロセスを自動化することで、これまで数週間かかっていた作業が数分で済むようになります」。

そこでFull Harvestは、マッチングアルゴリズムや可視性を備えたスポットマーケットプレイスなど、バイヤーがサプライヤーの在庫を確認できる技術の開発に奔走した。また、第三者による監査・検証プロセスを構築し、一貫した仕様を提供することで、本来は救われるはずだが、廃棄されてしまう農産物の平均量を減らすことに成功した。拒否率は、業界平均10%に対し、同社は1〜2%だとモズレー氏はいう。

過去2年間で、Full Harvestの食品廃棄物削減効果は5倍になり、同社はこの勢いを維持するために追加資本を求めることになった。

同社は米国時間12月17日、シリーズBで2300万ドル(約26億円)の資金調達を発表した。Telus Venturesがこのラウンドをリードし、新規投資家からRethink Impact、Citi Impact、Doon Capital、Stardust Equity、Portfolia Food & AgTech Fund、および既存投資家からSpark Capital、Cultivian Sandbox、Astia Fund、Radicle Growthが参加した。今回の投資の一環として、Telusの投資ディレクターであるJay Crone(ジェイ・クローン)氏がFull Harvestの取締役に就任した。

Full Harvestを取材するのは久しぶりだ。TechCrunchは2016年、同社の旅が始まったときに紹介し、2017年に200万ドル(約2億2600万円)を調達した時に再び紹介した。2018年にはシリーズAで850万ドル(約9億6000万円)を追加で調達した。追加の資金調達をあわせると、現在の調達総額は3450万ドル(約39億円)だ。

同社は、Danone North America、SVZ、Tanimura & Antleなど、食品・飲料、加工業界や生産者業界のビッグネームと取引している。

「より持続可能なビジネスを構築することの重要性は、特に食品・飲料分野の企業にとって、かつてないほど明白になっています」とDanone North Americaのギリシャヨーグルト・機能性栄養食品担当副社長であるSurbhi Martin(スルビ・マーティン)氏は話した。「Full Harvestを通じてオンラインで農産物を調達し、通常であれば廃棄されてしまうような果物を当社の製品用に調達することで、より持続可能な食品を求める消費者の要望に応えています」。

Full Harvestのビジネスモデルは、同社のマーケットプレイスで行われるすべての取引の1%を取るというものだ。2020年から2021年にかけて、サプライチェーンに透明性を持たせた結果、売り上げは3倍になったとモズレー氏はいう。2018年当時、Full Harvestの従業員は約8人だったが、現在は35人にまで増えている。また、同社はカナダを含め地理的にも拡大した。

モズレー氏は、新しい資金で技術開発に投資する他、2022年には技術および製品チームの規模を3倍にし、北米での進出地域を引き続き拡大し、農産物の入手可能性、価格、仕様、持続可能性、品質、予測サポートなどのデータと市場インサイトの提供を進めるつもりだ。

食品廃棄物に取り組み、ベンチャーキャピタルから資金を調達しているのは、Full Harvestだけではない。2021年に限っても、企業から次のような発表があった。

このようにプロデュースの分野で技術革新を進めている企業もあるが、モズレー氏は、Full Harvestのユニークな点は、その専門性が持続可能な製品側にあることと、農産物サプライチェーンのデジタル化のリーダーとしての実績があることで、その両面で先行していると話す。

次は、物流技術に関する提携を確保し、さらなるスケールアップと提供可能なSKUの拡大を図る。

「これまで業界ではオフラインだったプロセスの自動化をある程度完了し、当社のテクノロジーとユーザーエクスペリエンスは大きく向上しました」とモズレー氏は付け加えた。

画像クレジット:Max / Unsplash

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

ゴミの山からプラスチックに代わる素材を作るUBQ Materialsがインパクト投資家TPG Rise主導で約193億円調達

100%分別されていない家庭ゴミだけで作られた、プラスチックのような素材を開発したとするイスラエルのスタートアップUBQ Materials(UBQマテリアルズ)は、TPGのグローバルインパクト投資プラットフォームであるTPG Riseが主導し、同社の気候変動投資専用ファンドであるTPG Rise Climateと、マルチセクター・インパクト投資ファンドであるThe Rise Fundsを通じて、1億7000万ドル(約193億2000万円)の資金を調達した。

今回の資金調達ラウンドには、既存の投資家であるBattery Venturesをはじめ、英国を拠点とするM&GのCatalyst Strategyなどが参加した。

UBQ Materialsは、通常なら埋め立て地に送られる有機物を含む都市固形廃棄物を、石油由来のプラスチックに代わる持続可能で、かつリサイクル可能な素材に変えることができるとしている。「UBQ」の名を冠した同社の製品は、建設、自動車、物流、小売、さらには3Dプリントなどの分野で、単独または従来の石油系樹脂と組み合わせても使用することができるという。

The Rise Fundsの共同代表パートナーであるSteve Ellis(スティーブ・エリス)氏は次のように述べている。

UBQの素材ソリューションは、都市ゴミを機能的な熱可塑性プラスチックに変換するだけでなく、エネルギー効率が高く、加工過程で水を使わず排水も出さないため、産業およびコンシューマアプリケーションにおいて、幅広い用途に利用することが可能です。

UBQがどのようにこれらを実現しているかについては曖昧だが、同社の主張を興味深く見守っていきたいと思う。

画像クレジット:UBQ Materials

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

東京都八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業が開始

白井グループは11月18日、凸版印刷が受託した東京都モデル事業「家庭用紙おむつの効果的回収と完結型リサイクル事業」に参画し、八王子市と町田市において紙おむつリサイクルの低炭素型回収コースをAI配車システムを用いて最適化すると発表した。

現在、家庭から廃棄される紙おむつは可燃ごみとして回収されている。これに対して同事業では、紙おむつの素材であるパルプとプラスチックを再生原料にリサイクルするため、従来の可燃ごみとは別の車両で回収し、再生工場まで運搬するという。八王子市と町田市は、同事業において紙おむつ回収のモデル地区をそれぞれ設定し、従来の可燃ごみと紙おむつを両市の委託企業が回収する。

白井グループは、両市において、紙おむつのみを選択的に回収した場合の最短ルートを、2014年から実用しているAI配車システムで計算。これらの結果を総合して、両市をまたぐ広域回収のシミュレーションを行うとともに、両市が各々全域に適用した場合の必要車両台数を試算する。

なお、白井グループのAI配車システムは、これまで約2000の排出事業者が回収依頼する可燃ごみ、不燃ごみ・資源物を、排出曜日ごとに異なる約150コースをAI配車システムで計算し、2014年から手作業に比べ10%以上の削減効果を出しているという。廃棄物ビジネスの革新を目指す白井グループが八王子市と町田市においてAI配車システムを用いた紙おむつの効率的回収事業を開始

一般に、全国の自治体では、リサイクル推進のため廃棄物を種類ごとに分別排出する取り組みが進められている。この実効性を高る方法としては「一括回収後に再度分別する」「種類ごとに車両を配車」の2つがあり、それぞれ実態としてはさらなる経済性の向上が重要になっているという。今回の取り組みのような「種類ごとに車両を配車」の分別回収ケースでは、最も経済的なコースで回収することで、追加の車両や重複ルートを省くことが可能となる。またこのため、移動に伴う二酸化炭素排出量を削減できるとしている。

白井グループは、1933年創業で家庭系廃棄物(東京都23区委託)と事業系廃棄物の両事業をカバーする数少ない企業。「都市の静脈インフラを再構築する」ことをミッションとして掲げ、ITやAIなどを積極的に活用し廃棄物ビジネスの革新を目指しているそうだ。具体的には、廃棄物処理を受け付ける情報プラットフォーム事業や、配車台数を削減するAI配車システムなどを事業化しており、今回は、社会として廃棄物量を削減するためのサーキュラーエコノミー事業にあたるという。

また廃棄物処理依頼の電子化、RFIDとブロックチェーンを用いたトレーサビリティ検証を進めており、それらの成果を統合して、2022年度からは静脈物流のさらなるDX化を加速するとしている。

食品廃棄物を利用して持続可能な軟木を堅木のように扱えるようにするKebonyが約40億円調達

これはごくシンプルなことだ。針葉樹(軟材)は「持続可能」な森林で、広葉樹(硬材)よりも早く成長する。広葉樹は、アマゾンのような生物多様性に富んだ原生林に多く見られる。つまり、もし軟材を硬材のように使うことができれば、より持続可能な建築用木材を入手できるだけでなく、広葉樹の森林を破壊から守ることができる。さらに、温室効果ガスの排出量も大幅に削減できる。


これが、Kebonyが開発した製品の背景にある理由だ。Kebonyは、自らを「木材改質技術会社」と位置付け、Jolt CapitalとLightrockが主導して、3000万ユーロ(約39億8000万円)の資金調達を実施した。その木材特性をコントロールする方法はとても興味深いものだ。

Kebonyは、持続可能な方法で伐採された木材に、サトウキビやトウモロコシなどの食品製造過程で発生する廃棄物を加えている。これにより、熱帯広葉樹の挙動や特性を実際に反映した、長持ちする特性を木材に与えることができるという。

もちろん、建設業界がよりグリーンな建設資材を求めている中で、このような素材を使用することは非常に理に適っているし、熱帯林の伐採を減らすことにもつながる。

Kebonyは、この処理によってパイン材のような木材を「貴重な熱帯広葉樹に匹敵し、場合によってはそれを上回る」特徴を持つ木材に変えることができるとしている。また、このプロセスは、木材防腐剤を含浸させる従来の木材処理よりも優れているという。

Kebonyの資金調達は、Jolt CapitalとLightrockがリードした。Jolt CapitalとLightrockは、以前からの株主であるGoran、MVP、FPIM、PMV、Investinorとともに参加し、後者2社は引き続き取締役会に参加する。

Kebonyのコア市場は欧州と米国で、今後も拡大を計画している。欧州の木材市場は、住宅・非住宅建築業界で30億ユーロ(約3980億円)規模の市場となっている。

KebonyのNorman Willemsen(ノーマン・ウィレムセン)CEOは次のように述べている。「Kebonyは市場で最も美しくエコロジカルな木材を生産しており、環境に優しく費用対効果の高い優れた品質を誇っています」。

Kebonyの創業者たち。ノーマン・ウィレムセンCEOとThomas Vanholme(トーマス・ヴァンホルム)CFO(画像クレジット:Kebony)

Jolt CapitalのマネージングパートナーであるAntoine Trannoy(アントワーヌ・トランノワ)氏は次のようにコメントしている。「Jolt Capitalでは、特許技術を活用して持続可能な製品を提供するマテリアルサイエンス企業に強い関心を持っています。ウッドテックにおける20年以上の研究開発と、栽培された針葉樹にハードな熱帯広葉樹の望ましい特性を与える実証済みのプロセスを持つKebonyは、そのうちの1つです」。

LightrockのパートナーであるKevin Bone(ケビン・ボーン)氏は、こう付け加えた。「Kebonyは、脱炭素社会に向けた競争の中で、木材改質技術のリーダーになるという野心を持っており、絶好の立場にあります」。

Kebonyによると、2021年上半期の売上高は2020年の同時期と比べて23%の成長を遂げ、EBITDAも大きくプラスとなっているという。

ウィレムセン氏は次のように説明してくれた。「私たちが実際に行っているのは、木材に含浸させてオートクレーブに入れることです。これにより、木材構造の細胞壁が恒久的に変化し、恒久的に変化した特性が得られ、実質的に木材の寿命を延ばすことができるのです」。

それは何よりだが、スケーラビリティはどれほどのものなのか、と尋ねてみた。

「実際、非常にスケーラブルです。現在、2つのオペレーションが稼動しています。さらにスケールアップするための基本的な青写真を持っています」。

コンクリートやスチールなどの伝統的な素材と比較して、カーボンフットプリントは「大幅に削減されます」と同氏は語った。「立方メートルあたりのCO2排出量は約350キロです。例えば、スチールや従来の広葉樹と比較すると、それらは約1万キロです。つまり、他の素材に比べて非常にわずかです」。

画像クレジット:Kristian Alveo / Kebony

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

再利用可能なプラスチック容器エコシステムの構築を目指すAlgramo、シリーズAラウンドで9.3億円調達

世界の廃棄物の中で大きな割合を占める使い捨てのプラスチック容器。しかし、消費者にとって使いやすく、費用対効果の高い容器の代替手段は、今のところ見当たらない。再利用可能なプラスチック容器と販売拠点を組み合わせることで、コスト削減と収益アップを目指すAlgramo(アルグラモ)は、新規の850万ドル(約9億3000万円)の資金調達ラウンドで、その存在感を大幅に拡大しようとしている。

さまざまな業界で企業が環境に配慮することを強く求められている現在、約10年前にチリで設立されたAlgramoはその地位を確立しつつある。

プラスチック廃棄物を減らすための有力な方法の1つは、使い捨てのプラスチックを減らすことだ。ここで難しいのは、消費者にコストを転嫁しないで、具体的にどのような方法で削減するか、である。環境にやさしい製品でも、2倍の値段だったら金銭に余裕がある人しか買わないし、そうでない人は良心に反して、安くて環境に良くない方の選択肢を選ばざるを得ない。

「自分の財布か、地球か、という選択肢です」とCEOのJosé Manuel Moller(ホセ・マヌエル・モラー)氏。「だからこそ、より安く、より良いものが必要なのです。私たちは、物事をさらに複雑にするのではなく、もっとシンプルにしようとしています」。

画像クレジット:Algramo

何年にもわたるテストの結果、Algramoがたどり着いた解決策は、洗剤やシャンプーなどの既存製品のラベルを変更し、ICタグを付けて、消費者がディスペンサーで簡単にボトルを補充できるようにするというものだ。モラー氏が製品コストの30%を占めると推定するパッケージのコストを取り除き、詰め替えを販売することで安価になる。これは店舗に行くだけで購入できる。

画期的だったのはこのアイデアではなく、大手ブランドとの関係だ。食器用洗剤を補充するために、遠くのスーパーまで行かなければならないとしたら、補充するのではなく、新しい洗剤を買ってしまう可能性が高くなる。詰め替え用の商品が適当なノーブランドのものばかりだとしても同様である。そこでAlgramoは、世界中のウォルマートやユニリーバに訴えてきたが、ごく最近、彼らは少なくとも地域レベルで耳を傾けてくれるようになった。

モラー氏は次のように話す。「Algramoの存在がなくても、起こるべくして起こったことです」「しかし、私たちは彼らのサプライチェーンに参加し、既存の関係を壊さないように小売店やブランドと協力しています。実際、詰め替え用の商品では約60%のスペースを節約することができます」。

同社は現在、Unilever(ユニリーバ)、Nestlé(ネスレ)、Colgate-Palmolive(コルゲート・パーモリーブ)、Walmart Chile(ウォルマートチリ)と提携している。大手ブランドと大手小売企業を結びつけ、消費者がすぐに実践できる、少しでも節約できるようなソリューションを提供することで、誰もがハッピーになれるのだ。Algramoは当初、ディスペンサーを搭載した小型車両を使って事業を展開していたが、最終的には小売業との連携の方が成功した。

写真でわかるように、小型車両はまだ存在している

現在、チリ全土にAlgramoのステーションがあり、約5万人のユーザーが詰め替えの商品を購入している。取り扱う商品は、収益性ではなく、環境負荷が大きいものを選んで決定されたのだが、モラー氏によると、最も環境汚染につながるのは飲料だという。同社は意欲的に取り組んでいるものの、これには別の課題があり、まだ商品化には至っていない。

その代わりに、洗濯用洗剤やシャンプー、コンディショナーなどの使用頻度の高い製品、さらにはドライタイプのドッグフードの利用率は高い。また、同社は余裕のない人でも利用しやすいように、ユーザーが必要な分だけを詰め替えの料金で購入できるように配慮している。

チリでの実績により大規模にこのアイデアが実証されたので、Algramoは、世界各地での試験運用に向けて資金調達を行っている。現在、ジャカルタ、ニューヨーク、メキシコ、ロンドンでプロジェクトが進行中だが、いずれも確実に現地での作業が必要になる。というのも、規制や委託企業、流通ネットワークが異なるため、進出先ではどこでも新たな契約や合意が必要になるからだ。

今回のシリーズAラウンドによる850万ドルの資金は、このようなグローバル展開を目的としている。ラウンドはメキシコのDalus Capital(ダラスキャピタル)が主導し、Angel Ventures(エンジェルベンチャーズ)、FEMSA Ventures(フェムサベンチャーズ)、Volta Ventures(ボルタベンチャーズ)、Impact Assets(インパクトアセッツ)、University Venture Fund(ユニバーシティベンチャーファンド)、Century Oak Capital(センチュリーオークキャピタル)、Closed Loop Partners(クローズドループパートナーズ)のVentures Group(ベンチャーズグループ)(Closed Loop Partnersは2019年のシードラウンドも主導)が参加した。

モラー氏は、Algramoのような取り組みは他社も行っていて、最終的には同社のプラットフォームは競合他社のプラットフォームと連携するかもしれない、と話す。このビジネスで最も重要なのは、小売店およびブランドの両方と関係を構築することで、次に顧客との関係であるが、その後のステップはさまざまな状況に合わせることができる。例えばインドで一般的な再利用可能な食品容器などのリバースロジスティクスシステムが成功しているケースがあれば、それがソリューションの一部になるかもしれない。食料品チェーンなどが独自のリサイクルソリューションを構築する場合は、Algramoは役割の一部を担い、裏方に徹したいと考えている(Algramoは特許もいくつか所有している)。

今のところ、これらはすべて計画に過ぎず、Algramoはさまざまな大きな市場における自社の存在感を高めることに集中している。もしこれを読んだあなたが上に挙げた地域にお住まいなら、近所の大規模小売店や食料品店でAlgramoのステーションを探してみるか、ウェブサイトの下部にある地図を確認してみてはどうだろうか。

画像クレジット:Algramo

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)