建設現場にロボットでレイアウトを描くRugged Roboticsが約11.4億円を調達

我々が最初にRugged Robotics(ラギド・ロボティクス)という会社に注目してから、1年近く経った。ヒューストンに拠点を置くこのスタートアップは、建設現場の床に建物のレイアウトを印刷するロボットを開発し、作業員がどこに建設すればよいか(そしてどこに建設してはいけないか)を知ることができるようにした。同社はこのロボットを「レイアウト・ルンバ」と称している。当時、同社は2019年のシードラウンドで250万ドル(約3億円)を調達していた。

もちろん、それはこの2~3年の間に起きた新型コロナウイルス感染流行にともなう自動化が加速する前のことだ。今、建設業はロボット工学の主要なターゲットになっているようだ。ウイルスの感染流行は起こり、人々は病になる。しかし、建設は決して止まることはないらしい。Ruggedの技術は、現場の人間に取って代わるものではなく、むしろ精度を高めるために設計されたものだ。それでも、同社は自動化への関心の高まりから恩恵を受けているようだ。

画像クレジット:Paul Valle / Rugged

米国時間3月23日、同社はシリーズAラウンドで940万ドル(約11億4000万円)の資金を調達したと発表した。このラウンドはBOLD Capital Partners(ボールド・キャピタル・パートナーズ)とBrick & Mortar Ventures(ブリック&モーター・ベンチャーズ)が主導し、Riot Ventures(ライオット・ベンチャーズ)、Morpheus(モーフィアス)、Embark(エンバーク)、Consigli Construction Company(コンシーリ・コンストラクション・カンパニー)、Suffolk Technologies(サフォーク・テクノロジーズ)が参加した。これにより、同社が現在までに調達した資金の総額は約1200万ドル(約14億6000万円)になった。

「私たちは建設業界の近代化を目指し、建設業者が毎日苦労している痛点を解決するための実用的なソリューションを構築したいと考えています」と、Derrick Morse(デリック・モーズ)CEOは声明で述べている。「レイアウトは理想的なその出発点であると確信しています。レイアウトは、建設の自動化のための足がかりになります。デジタルと物理の世界の交差点に位置し、大きな問題を解決でき、非常に有意義な方法でロボットを現場に配備することが可能です」。

今回調達した資金は、ロボットの配備を加速させるとともに、人材雇用の拡大にも充てられる予定だ。直近では、同社はAuris Health(オーリス・ヘルス)でメカニカル・エンジニアリング部門のディレクターを務めていたMason Markee(メイソン・マーキー)氏を迎え入れた。Rugged Roboticsが参入したフィールドプリンターの分野には、2021年夏に1650万ドル(約20億円)のシリーズA資金を調達したDusty(ダスティ)などの企業がいる。Ruggedは、最小限のセットアップで複数のロボットを同時に操作できるようにする「自己完結型ソリューション」によって、他社との差別化を図ることを目指しているという。

また、同社はより自律性を高める方向にも取り組んでいる。「Rugged Roboticsは、そのエンド・ツー・エンドのシステムをさらに洗練させ、配備を簡素化し、最終的には無人で夜間作業を可能にすることを計画している」と、同社は記している。

画像クレジット:Paul Valle / Rugged

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インド国税庁がユニコーン企業「Infra.Market」を捜査、偽装購入や使途不明金などを摘発

インド国税庁は、プネーとターネー拠点のユニコーンスタートアップInfra.Market(インフラ・ドット・マーケット)による偽装購入の事実を示す大量の証拠を発見、差し押さえ、2940万ドル(約35億円)以上の追加所得を暴いたことを、異例ともいえるスタートアップに対する捜査の結果公表した。

Infra.Marketは、Tiger Global(タイガー・グローバル)、Nexus Venture Partners(ネクサス・ベンチャー・パートナーズ)、およびAccel(アクセル)が出資している時価総額25億ドル(約2981億円)スタートアップで、建設会社や不動産会社の プロジェクトのための材料調達や物流を支援している。同社は巨額の使途不明金と所得分散によって、総額40億ルピー(約62兆円)以上の所得隠しを行っていたと、米国時間3月20日の報道資料で当局が語った。

税務当局に指摘を受けた同社幹部らは、宣誓下で一連の犯行手口を認め、複数の税申告年度にわたって22億4000万ルピー(約35兆円)以上の追加所得があったことを明らかにし、その結果追徴税の支払いを求められていると当局が発表した。

Infra.Marketの共同創業者でCEOのSouvik Sengupta(ソウビク・セングプタ)氏は、コメントを求めたTechCrunchのテキストメッセージに返信していない。

同スタートアップは、新たな調達ラウンドを評価額40億ドル(約4766億円)で完了予定であることを、インドの報道機関、Entrackr(エントラッカー)が2021年11月に報じた

現在も捜査を続けている税務当局は、ムンバイとターネー拠点の複数のダミー会社によるインド独自の送金システムであるハワラネットワークも見つけており、これらの企業が書類上にのみ存在し、所得分散の目的で設立されていることを突き止めた。

予備的分析によると、これらのダミー会社による所得隠しの総額は150億ルピー(約235億円)を超えるという。これまでに100万ルピー(約157万円)の使途不明金と220万ルピー(約344万円)相当の宝石類が差し押さえられている、と当局は語った。

画像クレジット:DIBYANGSHU SARKAR / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

FigmaがUIデザインにもたらしたものを建築デザインで実現したいと考える「Arcol」

Arcolは、ブラウザ上で動作する設計・文書化ツールの構築の初期段階にある。

Paul O’Carroll(ポール・オキャロル)氏は、建築家である彼の父親が、建物の設計に使えるデジタルツールが不足していることに不満を抱いているのを見て、2021年1月に同社を立ち上げた。彼は、父親が鉛筆と紙を持って机に向かい、6カ月後に実現し始める建物をスケッチしているのを見て育った。

Arcolに入社する前、オキャロル氏はデジタルデザインスタジオで、大企業向けのデザインツールを作っていた。彼は、使われている技術が何十年も前のものであることを知り、Autodesk(オートデスク)のようなレガシーツールに挑戦したいと考えた。

「このような中で、建物の設計に使われるツールがいかにひどいものかを身をもって知り、建築家、エンジニア、請負業者のためにもっと良いツールがあるべきだと思ったのです」とオキャロル氏はTechCrunchに語った。「FigmaがUIデザインの分野で成し遂げたことを、建築デザインでやりたいのです」。

Arcolの創業ストーリーについては、オキャロル氏のブログでより詳しく知ることができる。同社は2Dスケッチを3Dモデルに変換するウェブベースのツールを開発中で、これにより、小さなビルから超高層ビルまで、クリエイティブでコラボレイティブなキャンバスを使って設計することが可能になる。

この製品は現在開発中で、2022年後半に発売される予定だ。オキャロル氏によると、ウェイティングリストは8000人を超えたところだという。彼は、この技術は構築が複雑で、製品は今後数カ月でクローズドアルファに入り、5月頃に20件の顧客を対象にプライベート展開される予定だと語った。年末までには、一般に公開する予定だという。

Arcolの創業者ポール・オキャロル氏(画像クレジット:Arcol)

この勢いを維持するため、同社はCowboy Ventures、FigmaのCEOであるDylan Field(ディラン・フィールド)氏、Figmaの企業開発・戦略責任者であるLauren Martin(ローレン・マーティン)氏、元MozillaのCEOでFigmaの取締役でもある投資家John Lilly(ジョン・リリー)氏、ProcoreのCEOであるToey Courtemanche(トワ・コートマンシュ)氏、元AutodeskのCEOであるAmar Hanspal(アマル・ハンスパール)氏、Not Boring Capitalの創業者でエンジェル投資家のPacky McCormick(パッキー・マコーミック)氏が支援する360万ドル(約4億2700万円)のシード資金を調達した。これにより同社は、2021年150万ドル(約1億7800万円)のプレシード資金を獲得したのを含め、累計500万ドル(約5億9300万円)強の資金を調達したことになる。

今回の資金調達は、経営陣の充実と現在5名のArcolの従業員の増員に充てられる予定だ。

オキャロル氏はこう述べている。「市場の不満がピークに達しているため、製品を迅速に構築する必要があります。建築家にとって実現されていなかったことであり、そのためにクリエイティブな側面が失われてしまいました。私たちは、魔法をよみがえらせたいのです」。

画像クレジット:

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(文:Christine Hall、翻訳:Den Nakano)

1カ月ほどで家を建てる住宅建築ロボットのDiamond Ageが58.6億円を調達

ほんの数カ月前に800万ドル(約9億4000万円)の資金調達行ったばかりのDiamond Age(ダイアモンド・エイジ)が、シリーズAで5000万ドル(約58億6000万円)を追加調達した。3Dプリントとロボット技術を利用して住宅建設を大幅に安くすることで、住宅購入をより手頃なものにするというのが同社のミッションだ。

自らを「フルスタックロボットスタートアップ」と称する同社は、新しい家を建てる際の半分以上の手作業を置き換えるためのツール群を開発している。ロボットという要素を加えることで、これまで9カ月かかっていた住宅建築が、1カ月ほどで可能になるという副次的な効果もある。同社は現在、外装、内装、屋根構造のコンクリートをプリントできる3Dプリントシステムに加えて、26種類のエンドオブアーム型ロボットツール(ロボットアームの末端に装着してさまざまな仕事をこなすアタッチメント)を開発している。

今回の資金調達ラウンドは、科学駆動型イノベーションに注力するPrime Movers Labが主導した。Prime Movers Labは特にエネルギー、交通、インフラ、製造、人間能力拡大、アグテック(アグリテック)などを革新するスタートアップに注目している。シード投資家のAlpaca VC、Dolby Family Ventures、Timber Grove Ventures、Gaingelsは予定以上の投資を行い、Signia Venture Partnersも加わった。創業者たちにとって最も心強いのは、このラウンドの20%が住宅建設業者や土地開発業者であったことだろう。潜在顧客がスタートアップに投資するのは、常に良い兆候だ。

前回の資金調達以来、 Diamond Age は技術を大幅に進歩させ、今では2000平方フィート(約190平方メートル、約56.2坪)の平屋をプリントして建てることができるようになった。それが投資家たちを感心させ、評価額の火種に油を注いだことは間違いない。同社は最初のスケールアップ版システムと、フルスケールの3ベッドルーム+2バスルームの住宅を、予定より4カ月早く11カ月で納入した。このことによって、同社はとある全国規模の住宅メーカーと初めて契約を結んだ。この契約について、創業者たちは今のところ詳細を明らかにしていないが、この発表も近いうちに行われることだろう。

Diamond Ageの共同創業者Jack Oslan(ジャック・オスラン)CEOは次のように語る。「手頃な価格の住宅建設は、世界規模で人々に影響を与えています。初めて家を購入する人の平均年齢が20歳代半ばから30歳代半ばに移行したことで、賃貸物件に対する需要が高まりました。このため『質の高い住宅』を求めて賃貸市場の競争がますます激化しています。次世代の住宅購入者が最初の家に早く住めるようにすることは、住宅のエコシステム全体に貢献することができます」。

Diamond Ageは、ロボットプラットフォームの拡張を継続し、住宅建設に関する初の商業契約を締結するために調達した資金を使用する。同社はすでに規模を2倍に拡大し、さらにエンジニアリングと製作の人材を加える予定だ。これにより、Diamond Ageは住宅メーカーやデベロッパーと提携し、住宅建築をオンデマンド商品化し、住宅購入者が住宅を設計する際に、より多くの選択肢を提供することができるようになる。

Prime Movers LabのジェネラルパートナーであるSuzanne Fletcher(スザンヌ・フレッチャー)氏は「Diamond AgeのFactory in the Field(ファクトリー・イン・ザ・フィールド、現場の工場)システムは、建設現場に自動化をもたらし、住宅建設業界における大規模な労働力不足を補うものです」と述べている。「ジャックと彼のチームは、予定より早く重要なマイルストーンを達成し、分譲住宅の建設方法を変革していましたので、Prime Movers Labが同社のシリーズAを主導することは容易に決断できました」。

画像クレジット:Diamond Age

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

建設業界向け受発注クラウド「建設PAD」のKPtechnologiesが5200万円のシード調達、機能拡大と人材採用を加速

建設業界向け受発注クラウド「建設PAD」を手がけるKPtechnologiesが5200万円のシード調達、機能拡大と人材採用を加速

クラウド型受発注ソフト「建設PAD」を運営し建設業界のDX化を推進するKPtechnologiesは3月2日、シードラウンドとして、第三者割当増資による総額5200万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、B Dash Fund 4号投資事業有限責任組合、エアトリ、WealthPark、クロスボーダーインベストメント、複数の個人投資家。調達した資金は、建設PADのユーザー体験をさらに高めるため、プロダクトの機能拡充および拡販・人材採用にあてる予定。

建設PADは、建設業界の契約、受発注、請求といった業務デジタル化し事務作業にかかる負担を削減できる、電子商取引プラットフォーム。

建設業界は、高齢化や労働人口の減少、時間外・休日労働に関する36協定の2024年改定、電子帳簿保存法改定、コロナ禍による働き方改革への適応といった課題に直面している。その解決のためDX化推進の動きがあるものの、順調に進んでいるとはいえない状況だ。これを受けKPtechnologiesは、建設業に特化したSaaS企業として建設PADに各種課題を解決する新機能を実装し、DXの実現を推進しようとしている。

KPtechnologiesは、2020年2月に設立されたスタートアップ。「建設産業のポテンシャルを最大化する」をミッションに掲げ、現場とデジタルの共生基盤を構築し業界のイノベーションをうながすことを目指している。建設業界向け受発注クラウド「建設PAD」を手がけるKPtechnologiesが5200万円のシード調達、機能拡大と人材採用を加速

アンドパッド、「数年先の設計・施工DX」に先行し取り組む住宅実験プロジェクトANDPAD HOUSE検証発表

クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を運営するアンドパッドは2月21日、2020年10月に企画をスタートした未来の設計と施工のDX実験住宅プロジェクトによる「ANDPAD HOUSE」が完成したことを発表した。

同プロジェクトは、アンドパッドが施主となり、実験住宅の設計・施工を通して「数年先に実現する設計・施工のDX」を先行実証するために立ち上げられた。国土交通省が進める「令和3年度BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(先導事業者型)」において、「木造建築における、BIMとクラウドサービスを用いたCDEとECIの効果検証・課題分析」に採択されている。

現在BIMの利活用は、大手ゼネコンや組織設計事務所といった一部企業の大規模物件だけに限られた状況となっているという。しかし近年、住宅・非住宅を問わずBIMの利活用の需要が高まっており、木造建築・住宅における利活用の効果を実証する必要があるとしている。

今回のプロジェクトで行った検証の結果として、アンドパッドは「移動時間ゼロ、合計300時間以上の移動時間を削減」「工期を3カ月以上短縮」の2点を報告している。

移動時間ゼロ、合計300時間以上の移動時間を削減

プロジェクト管理プラットフォームとしてANDPADを用い、BIMデータだけでなくプロジェクトに関わるすべての共有可能なデータについて、CDE(Common Data Environment)に取り組み、関係者全員がいつでもアクセスできる状態を実現した。

また会議はすべてリモートで行うことで、移動時間を削減するとともに、週1回の定例会議に関係者全員が参加し、意志決定スピードもアップさせた。

そのほか、ロボットやMRグラスなどを使った遠隔臨場にも取り組み、結果として余分な移動時間がゼロ、合計300時間以上の移動時間を削減できた。

工期を3カ月以上短縮

施工者の長谷萬が基本計画段階からプロジェクトに参画することで、施工・製造の効率化を図るECI(Early Contractor Involvement)の形式を採用。実施設計から作図を開始することで、工期をのべ1.5カ月短縮させた。

またウッドショックの影響により、追加で1.5カ月の工期延長を余儀なくされるところだったが、部材変更対応を迅速に行ったことで延長することなく工事を実施。合計で実質3カ月以上の工期短縮を実現できた。

デジタルツインの社会実装を目指すDataLabsが1.3億円のシード調達、点群データの自動3次元モデリングツールを3月末公開

デジタルツインの社会実装目指すDataLabsが1.3億円のシード調達、点群データの自動3次元モデリングツール公開に向け体制強化

DataLabsは2月16日、シードラウンドとして、第三者割当増資による総額1億3000万円の資金調達の実施を発表した。引受先は、東京大学協創プラットフォーム開発、ディープコア。調達した資金は、点群データの有効活用に向けたプロダクト開発および機能の拡張、それらの開発に適したリサーチエンジニア・ウェブエンジニアなどの人材採用にあてる。

また同社は、点群データの「自動モデリングツール」、三次元データや二次元CAD図面の「クラウド型共有・可視化ツール」の2プロダクトのリリースを近日予定しているという。

まず2月末には、点群データ・三次元モデル・二次元CAD図面などを、誰でも閲覧・共有できる「点群三次元モデル可視化・共有ツール「Linked Viewer」を公開予定。URLの共有のみでブラウザー上で閲覧可能としており、生データをダウンロードすることもできる。デジタルツインの社会実装目指すDataLabsが1.3億円のシード調達、点群データの自動3次元モデリングツール公開に向け体制強化

 

もう1点は、3月末にリリース予定の「点群データの自動モデリングツール「Modely」(モデリー)。計測した点群データをDataLabsのプラットフォームにアップロードすると、クラウド上で自動解析するというもの。対象を画面上でクリックするだけで、自動で寸法精度100%(パラメトリックモデリングを採用した場合)の三次元モデルが完成する。

なお現在、Modelyの要素技術を用いて、現場での配筋状況の自動モデル化による検査の効率化などを目指した実証実験を東日本旅客鉄道と進めているそうだ。鉄道をはじめ、あらゆる施工現場における配筋検査等の効率化のため、全国の建設業界の企業などに向けてサービス展開も図るとしている。

2020年7月設立のDataLabsは、「デジタルツインの社会実装」を通じ最適化された社会の実現に資することをミッションとするスタートアップ。三次元計測のほか、点群データの自動三次元モデリング(BIM/CIM化など)、熱流体や気流、構造解析などの各種シミュレーション(CAE解析)機能をSaaSで展開。UI・UXを充実させ、デジタルツイン実現のハードルを極限まで低減するという。

建設現場の省人化・省力化を実現するロボットソリューションを手がける建ロボテックが2.7億円のシリーズA調達

建設現場の省人化・省力化を実現するロボットソリューションを手がける建ロボテックが2.7億円のシリーズA調達

「世界一ひとにやさしい現場を創る」をミッションに、建設現場の省人化・省力化を実現するロボットソリューションを提供する建ロボテックは2月14日、シリーズAラウンドとして、第三者割当増資による総額2億7000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リード投資家のリアルテックファンド3号投資事業有限責任組合(リアルテックジャパン)、またMICイノベーション5号投資事業有限責任組合(モバイル・インターネットキャピタル)、いよベンチャーファンド6号投資事業有限責任組合(いよぎんキャピタル)、ちゅうぎんインフィニティファンド1号投資事業有限責任組合(中銀リース)、エンジェル投資家3名。

調達した資金により、鉄筋結束作業領域以外のロボットの新規開発・製造を加速させる。より多くの建設現場で働く方の安全向上と負担軽減を図り、建設現場の生産性向上と建設業界のDX化に貢献することを目的とした開発費用とその製造や販売、コンサルティングを担う人材採用等に充当する計画。

建ロボテックは、建設現場出身の創業者が2013年に設立したスタートアップ企業で、建設現場の状況やニーズに則した、「実践的な省力化・省人化ソリューション」を独自開発している。人とともに働く協働型ロボット「トモロボ」、鉄筋工事の省力化製品「速鉄」など、建設現場の 「生産性向上」と作業者の「安全確保と負担軽減」を促すソリューションを通じて、建設産業の健全な進化・発展に貢献するとしている。建設現場の省人化・省力化を実現するロボットソリューションを手がける建ロボテックが2.7億円のシリーズA調達

 

土木技術者・実務者のインフラ工事BIM・CIM導入を加速する工事計画用3D建設データ308製品が公開

土木技術者のインフラ工事BIM・CIM導入を加速する工事計画用3D建設データ308製品が公開

建材商社の野原ホールディングスは1月31日、一般社団法人Civilユーザ会(CUG)、BIMobject Japan(ビムオブジェクト・ジャパン)と共同で、BIMおよびCIMのための土木建築関連308製品の3D建設データを公開したと発表した。

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング・マネージメント)とは、どちらも建設関係の部材などを3Dモデル化して、関連する情報を付帯させる取り組みのこと。BIMは、建築部材の3Dモデルに付属情報のデータベースを連携させたもの。CIMは、BIMの発展型で、設計、施工、維持管理など、全ライフサイクルにわたる情報の管理と共有を可能にしたものだ。

国土交通省は、2012年から橋梁やダムの建設にBIMとCIMを導入し、「2023年までに小規模工事を除くすべての公共事業にBIM・CIMを原則適用」を決定している。野原ホールディングスは、「急務となっているCIMデータ活用には土木技術者が利用しやすい環境の創出が必要」と考え、BIMおよびCIMを推進するCUGとこの取り組みを開始した。今回公開された3D建設データは、CUGメンバーの技術者によって作成されたもので、実務重視の使いやすさが特徴だという。

建設機材の3Dモデルも公開

建設機材の3Dモデルも公開

そのデータは、BIMobject Japanが国内で運営する、建設資材や設備などのメーカー製品のBIMコンテンツやデータを提供するプラットフォーム「BIMobject」で入手できる。CUGのサイトを通じてに無料会員登録をすれば、インフラ工事に必要な構造物、建設機材、仮設材、安全施設など308製品がダウンロードできるようになるとのことだ。

【コラム】屋上レンタル、米国の不動産所有者は5Gキャリアと手を結ぶべきだ

5Gインフラを敷設する動きが活発になり各社の競争が激しくなるに連れ、レストラン、ホテル、住居用建物、さらには病院や教会の屋上までもがインフラ敷設場所として注目されている。5Gテクノロジーを人口密度の高い地域に確立したいと考えるテレコミュニケーション会社にとって、こうした屋上は急速に重要な不動産ターゲットとなりつつある。

事実、次世代のワイヤレス展開から得られるリース収入は、今後5年間で、米国内のリース収入の大きな部分を占めると考えられており、不動産所有者や事業主にとって大きなチャンスとなる。

バイデン政権は、5Gインフラの拡大を国の主要課題として位置付けている。1.2兆ドル(約137兆円)のインフラ投資法では、農村部やサービスが十分行き届いていない地域でも高速回線を利用できるようにするための財源として650億ドル(約7兆4000億円) が確保されている。5Gは他のワイヤレステクノロジーと比べて高速で大容量のデータを処理できるが、カバーできる範囲は最大で 約1500フィート(約457メートル)と、ぐっと狭い。

5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短いため、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。

大手ワイヤレス通信プロバイダーに加え、5Gの展開競争には新たにケーブル会社やビックテック企業も含まれている。これらの企業は、5Gマクロおよびスモールセルサイトを配備するために、合わせて2750億ドル(約31兆円)を投資すると予測されている。必要な量の配備を効果的かつ効率的に行う唯一の方法は、既存の建物を利用することである。言い換えれば、5G競争を乗り切るには、屋上配備戦略の採用が鍵になるのだ。

歴史的に言って、ワイヤレス通信市場は不動産所有者やその他の事業主にとっては厳しい市場だった。ワイヤレスキャリアとタワー企業が長期契約を結んでおり、不動産所有者にとって有利とはいえない状況になっていたのだ。

多くの地域では、新しいタワーを立てることに強い反対の声があり、さらに建設、ゾーニング、許可プロセスには時間がかかる。しかし、5G テクノロジーは、次世代ワイヤレスネットワークとしてはアンテナが短く、既存の建物の屋上に敷設するのに非常に適している。現在5Gキャリアにとって、ワイヤレスに関する不動産要件を満たすには、タワー企業より大手不動産業者のほうが、迅速に効率よくソリューションを提供してくれる相手となっている。

屋上配備戦略は、5Gキャリアにとっても不動産所有者にとっても互いにメリットがある。キャリアは使用量の多い地域でできる限り迅速にインフラを配備するという目的を達成することが可能であり、一方不動産所有者は、屋上からリース料を得、すでに所有する不動産を新たな方法で収益化するという経済的利益を得ることができる。

不動産所有者の経常利益に与える影響と、30年リースで生み出されるであろう利益は相当なものであり、不動産所有者は資本へアクセスしやすくなる。さらに不動産所有者は、5Gキャリアに屋上を貸すことで使用料を得ることができるだけでなく、高速回線への接続という意味で、テナントにより質の高いサービスを提供することもできる。

5G展開競争で問題になっている事柄

米国にとって、競争に遅れを取らず国際的な競争力を保つためにも5Gインフラの展開は非常に重要である。5Gは高速での接続、キャパシティの増加、ゼロ遅延をもたらすが、5Gにより期待されるのは、自動運転車や遠隔医療の拡大、製造や農業の効率化、サプライチェーン管理の改善まで、さまざまな事業サービスを可能にするイノベーションの推進である。

これらのイノベーションから生み出される利益すべてを考慮すると、5Gは2025年までに米国のGDPのうち、1兆5000億ドル(約170兆円)以上をもたらすと予測される。

またバイデン政権は、5Gテクノロジーとユニバーサルブロードバンドを、地方に暮らす人々に経済的な平等もたらす手段と考えている。政策声明によると、農村部では都市部と比較して信頼のおけるインターネットの利用が10分の1に限られているとのことである。

最近バイデン大統領が署名したインフラ投資法においては、大統領も国会も農村部におけるブロードバンドインフラへの投資を優先し、十分サービスが提供されていない地域でのインターネットへのアクセスを拡大し、デジタル上の分断を是正したい考えだ。このため、農村部の不動産所有者は5Gインフラの展開からより多くの利益を得ることができるだろう。

強力な5Gネットワークを米国内に確立するには時間がかかるだろう。5Gプロバイダーやワイヤレスキャリアと手を結ぶ不動産所有者は、5Gテクノロジーのサイバーセキュリティにまつわる考慮事項について、しっかり情報提供を受け、それを理解しなければならない(これらの考慮事項が、提携の足かせになると考える必要はない)。というのも不動産所有者は5Gインフラを自身の不動産に配備し、そこからのワイヤレスネットワークを入居者に提供することになるからである。

最近2,300人以上のリスク管理者および他の責任者を対象にAonが行った調査では、サイバーリスクは現在のそして将来予想される世界的リスクの第一位として位置付けられた。5Gが普及し接続性が高まることは確実である。つまり、サイバーセキュリティ業界は機械学習や人工知能を改善しそれを広く活用し防御を強化する必要があるのである。

また最近では、不動産業界におけるサイバーセキュリティ強化を促進するためのガイダンスやフレームワークを提供する Building Cyber Securityといった組織も立ち上げられている。

不動産所有者が効率よく屋上を収益化し5G競争に参画するには、政府や民間企業が5G敷設要件の審査をタイムリーに行うことも含め、引き続き迅速な5Gインフラの配備に向け協力して作業を進めていく必要がある。

これに加えて、州や地域レベルでも、5Gアンテナの敷設に関するゾーニングや認可プロセスを改善する作業をもっと進める必要がある。多くの州議会がすでに州民の利益になる5G戦略を策定するための法案を検討中であり、これにより、不動産所有者にも新たな機会が提供されることが見込まれる。

5Gの競争を促進するためは、より多くの政策や技術的な作業が必要だが、不動産所有者が利益を手にする機会は、目の前に手に取れる形で存在している。新型コロナウイルス感染症によって経済的打撃を受けたレストラン経営者やホテル業者が立ち直ろうとする中、屋上の収益化は、店を閉じるしか選択肢がなかった状態との違いを生み出すことになるだろう。

編集部注:本稿の執筆者James Trainor(ジェームズ・トレーナー)氏は、FBIのサイバー部門の元アシスタントディレクターで、Aonのシニアバイスプレジデント。Rick Varnell(リック・ヴァーネル)氏とMatt Davis(マット・デイビス)氏は、いずれも5G LLCの創設者であり、プリンシパル・パートナー。

画像クレジット:skaman306 / Getty Images

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(文:James Trainor、Rick Varnell、Matt Davis、翻訳:Dragonfly)

土木建設のさらなる効率化を目指すブラジルの建設テックAmbarが約41.2億円調達

ブラジルの建設テックスタートアップAmbar(アンバー)は、大規模なシリーズCラウンドを調達したことを発表した。2億400万レアル、今日の市場中値で約3600万ドル(約41億1800万円)だ。このラウンドはブラジルのEcho Capital(エコー・キャピタル)とOria Capital(オリア・キャピタル)が共同でリードし、TPG Capital(TPGキャピタル)、Argonautic Ventures(アルゴノーティック・ベンチャーズ)などが参加した。

Ambarは、テクノロジーを活用して土木建設プロセスを効率化するという野望を持って2013年に設立された。同社によると、これまでに3億6000万レアルの株式資金を調達している。これは約1億ドル(約114億4400万円)だと、CEOのBruno Balbinot(ブルーノ・バルビノット)氏は推定している。

この1億ドル(約114億4400万円)という数字は、現在のドル建て3億6000万レアルに相当する金額よりも高いが、為替レートはこの数年でかなり変動しているので、この数字を割り出すのは一筋縄ではいかない。また、一方で、同社の借入金も調達していることは考慮されていない。

正確な数字はともかく、Ambarは現在、計画実行のための相当量の資本を手に入れたということだ。TechCrunchの取材に応じたバルビノット氏は、この資金をラテンアメリカ全域で強いニーズがあるデジタル化事業を強化するために使う計画だと説明した。

スペイン語圏のラテンアメリカはAmbarの収益の一部となっているが、Ambarが最も存在感を示しているのはブラジルであるとバルビノット氏はいう。このスタートアップの母国には、2つの利点がある。この地域最大の市場であること、そしてブラジルのポルトガル語が競合他社に対する堀の役割を果たすことだ。

Ambarのサイトによると、467社のアクティブな顧客がいる。このうち3社は米国にあるが、米国に進出したのは、学習のためだとバルビノット氏はいう。一方、ブラジル国内では1500の建築現場がある。

Ambarのビジネスには、2つの側面がある。さらに推進する計画のデジタル化と、一部のメディアで建築分野のLego(レゴ)に例えられた工業化だ。

とはいえ、Ambarはゼネコンではない。「私たちは、建設業を営む人たちとパートナーを組むのが目的であり、決して建設業を営むことはありません」と、バルビノット氏はポルトガル語で語った。バルビノット氏は、Ambarが技術系企業であることを主張するだけでなく「建設部門よりもはるかに高い」単位経済性を裏付けにする。

バルビノット氏と共同創業者のIan Fadel(イアン・ファデル)氏には、自動車産業という意外なインスピレーションの源がある。Volkswagen(フォルクスワーゲン)の関連会社で働いていた2人は、同じようなプロセス駆動型のアプローチを建設分野にも取り入れたいと考えている。

建設業をより効率的に変革することは、同時に持続可能性を高めることでもある。人的・物的資源を最適化することで、Amberは従来の建設業の大きな副産物であった廃棄物を削減している。

これは、最新の投資家たちが取り組んでいる問題でもある。Oria CapitalはBコーポレーションで、サイトの環境・社会・ガバナンス(ESG)セクションは「Oriaのポートフォリオは、国連が提唱する主な持続可能な開発目標に貢献することを目指しています」と、説明している。

また、今回のシリーズCラウンドは、国連グローバル・コンパクトのイニシアチブと繋がりのあるAmbarの取締役Guilherme Weege(ギリェルメ・ウィーゲ)氏が新たに設立した成長ファンド、Echo Capitalが共同リードしている。ファッショングループGrupo Malwee(グルポ・マルウィ)のCEOは、同イニシアチブの1.5℃へのビジネス・アンビション・コミットメントに署名したビジネスリーダーの1人だ。

両ファンドは、Ambarが見習いたいポートフォリオの成功例がある。ウィーゲ氏のファミリーオフィスは、最近サンパウロのB3証券取引所のNovo Mercado(ノヴォ・メルカド)セグメントでIPOを果たしたブラジル企業のInfracommerce(インフラコマース)を支援した。Oriaは、1億ドル(約114億4400万円)の第3号ファンドで、2020年7月にNASDAQに上場したZenvia(ゼンヴィア)への追随投資を行った。

AmbarもOriaの3号ファンドが支援した企業の1つで、来年は大きな成長計画を立てている。「2022年には、Ambar製品を適用した同時施工数を2倍に増やし、970社の新規顧客を獲得する予定です」と、バルビノット氏は述べた。

最近、ソフトウェア会社のAutodoc(オートドック)を買収したバルビノット氏とそのチームは、ビジネスのIT面を優先させる計画だ。このスタートアップは、断片化を解消し、顧客が「1つのプラットフォームですべてにアクセスできるようにしたいのです」と、バルビノット氏は言った。「10のアプリケーションがあり、多くの人がそれらをコントロールする必要があったとしたら、これからはすべてを統一し、同じログインで提供します」。

画像クレジット:Amber

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(文:Anna Heim、翻訳:Yuta Kaminishi)

「家がない」15億人が抱える問題の解決を目指すJupe

「音楽フェスの参加者のためにグランピング用のテントを作っているわけではありません」。Jupe(ジュープ)の共同創業者でCEOであるJeff Wilson(ジェフ・ウィルソン)氏は、同社のビジョンをこのように力説する。「現時点では、食料は流通の問題で、衣類についてはほぼ解決されています。しかし、世界にはまだ適切な家を持てない人々が約15億人存在します。地球上の大きな問題を解決したいのであれば、これは取り組む価値のある問題です」。

Initialized(イニシャライズド)のGarry Tan(ギャリー・タン)氏とY Combinator(ワイコンビネーター)のメンバーはウィルソン氏に同意したらしい。彼らはシードラウンドでJupeに950万ドル(約10億8000万円)を投資した(Jupeに数カ月間のシェルターを提供したといったところか)。この資金は、Jupeのチームを強化し、住むところのない人に住居を提供するというミッションを継続するために使われる。現在までの予約注文は300件以上。多数の地域に同社のJupeシェルターを出荷し始めたところだ。

Initializedの創業者でマネージングパートナーであるギャリー・タン氏は次のようにコメントする。「Jupeの夢であるユニバーサルな自律型住宅があれば、最終的には地球上のどこにいても、衛星を介してインターネットに接続し、快適に暮らせるようになります。世界はこれを待ち望んでいました」「彼らは世界で初めてのハードテックとソフトウェアプラットフォームを構築しています」。

Jupeのミッションは確かに控えめなものではなく、創業者のウィルソン氏は風変わりで個性的だが、それをやり遂げるだけの情熱とマッドサイエンティスト的な雰囲気を持つ。

ウィルソン氏は最近のインタビューで「米国における平均的な家庭の100分の1の体積とエネルギーを使って生活しようと考え、1年間ゴミ箱に住んでいた」と語り、そこから話題を変えてJupeのアイデアを思いついた経緯を話してくれた。「私は環境科学の博士号を取得しています。気候変動で人類の活動は影響を受けています。Jupeのユニットは、基礎工事も電力網への接続も不要で、特定の土地に縛られることがありません。Jupeは年間15億人もの人々に影響を及ぼす住宅危機を解消するためのステップです。Jupeのユニットは、従来の仮設住宅や移動式住宅に比べて、十分の一のコストと期間で生産可能で、15倍効率良く出荷できます。ユニークなデザインですべての人にしっかりとした滞在場所を提供します。インターネット付きのね」。

現在、サンフランシスコのSoMa(サウスオブマーケット)の真ん中で、Jupeのユニットの1つに住んでいるというウィルソン氏は、次のように説明する。「今回の資金調達ラウンドを主導したギャリー・タン氏は「Universal Autonomous Housing(ユニバーサルな自律型住宅)」という言葉を作ってくれました。まさに私たちがやっていることを示す言葉です」「今のところ、自然の中でオフグリッドかつハイデザインの快適な体験を楽しみたい人がJupeを利用しています。長期的には、技術を発展させて、都市に住むことを望まず、広大な土地でコミュニティを作って暮らしたい人たちを対象にします。将来的には、数週間、数カ月、生まれてから死ぬまでJupeのユニットで暮らしてもらえるようにしたいと思っています」。

ウィルソン氏がMVPと称するJupeシェルターの現行バージョンは、シェルターの中核技術を使って製造されたシャーシの上に、アルミニウム製の外骨格を組み上げた頑丈な構造である。強風にも耐えるが、主に5~27℃の温暖な気候で使用されることを想定している。

「次のバージョンではハードトップが導入され、春夏秋冬などの温度変化がある環境で使用できるようになります」とウィルソン氏。「既存の構造では大雪に耐えられません。コロラドに設置したものは、冬は撤去する必要がありました。しかし、これは進化の過程であり、Jupeは創立間もない企業です。私たちは成長を目指しています。2020年4月に最初のJupeを作ってから、すでに700万ドル(約8億円)程度の収益を計上しています」。

価格決定モデルは教えてもらえなかったが、ウィルソン氏は「それは関係ない」と主張する。同社は、Jupeのネットワークを構築して敷地の区画にJupeを設置し、その区画を貸し出して収益を50対50で分配したいと考えている。

「多少のライセンス料を除けば、初期費用はかかりません。私たちの予約プラットフォームに(区画を)掲載して、ホットスワップ(アクティブ状態で機器を交換すること)で運用します。土地のJupeが古くなったら、私たちが交換をしに行きます。車の下取りのようにね。最新の技術を導入したJupeに交換して、古いものは別の用途に使用します」とウィルソン氏は説明する。「Just add land(必要なのは敷地だけ)。これが私たちのスローガンです」。

現状、最大の課題は、技術面を担当できる適切なCTOを招へいすることだ。同社は、技術プラットフォームを発展させていくために「(技術面で)創業者レベルといえるほどのCTO」を求めている。

「とにかくとんでもなく良い人材が必要です。世の中にはスマートではない人がたくさんいますが、私には本当に優秀な人材が必要なのです。15年以上の経験、スタートアップ企業と大きなチームを管理・成長させてきた人材を求めています。ソフトウェアの面で非常に優秀で、インテグレーションの面でも多くの経験を有する人材です。Jupeはガジェットであり、デバイスですから」とウィルソン氏。「見つけるのは大変だと思いますが、大金と自社株を用意して、競争力があり、私が持つビジョンの実現をサポートしてくれる人を獲得する予定です」。

ウィルソン氏の大胆なビジョン……Jupeは何億もの人に家を提供したいと考えている。

「みんなが火星に行きたがっているのは知っていますが、まだ地球を諦めるべきではありません」とウィルソン氏は締めくくる。「会社の評価なんてどうでもいい。私は残りの人生でこれをやりたいのです。優れた人間性を持つ最高の人材が必要です。一緒にミッションを達成しましょう」。

画像クレジット:Jupe

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

cove.toolは炭素排出の少ない建築物の設計を支援するSaaS企業、ロバート・ダウニー・Jr.のFootPrint Coalitionも支援

建築物をより持続可能なものにするためのテクノロジーは数多く存在するが、その機能を設計に組み込むことは、いうほど簡単ではない。

cove.tool(コーブ・ツール)は、設計段階から確実に建築物を持続可能にすることを目指すスタートアップ企業だ。2021年には同社のソフトウェアによって、設計・建設の専門家がTesla(テスラ)の5倍の炭素を削減できるようになったと主張している。アトランタを拠点とする同社は、Coatue(コーチュー)が主導するシリーズBラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。

今回のラウンドには、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)氏のFootPrint Coalition(フットプリント・コーリション)が、既存投資家のMucker Capital(マッカー・キャピタル)、Urban Us(アーバン・アス)、Knoll Ventures(ノル・ベンチャーズ)とともに参加した。

CEO兼共同創業者のSandeep Ahuja(サンディープ・アフジャ)氏によると、今回のラウンドはプリエンプティブラウンドで、同社の調達総額は3650万ドル(約41億5000万円)に達したという。評価額について同氏は明らかにしなかったものの、2020年11月に570万ドル(約6億5000万円)を調達した時から「10倍」になったと述べている。

B2B(企業間取引)のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業であるcove.toolは、建築家や建設業者がプロジェクトの詳細や土地を入力すると、採光、空調システム、太陽光発電、材料などの最適化方法を提案してくれる機能を備えている。cove.toolは機械学習を活用し、建築家、エンジニア、建設業者が、建築コストを削減しながら建築物のパフォーマンスを幅広く測定する方法を提供する。

「当社が存在する理由は、建築環境における二酸化炭素の排出量を削減するためです。なぜなら、二酸化炭素排出量の約40%は建築によるものだからです」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「cove.toolの全体的な目標は、材料の選択と建築のシミュレーションのプロセスをよりシンプルにして、低炭素であるだけでなく、コスト的にも最適な代替材料を選べるようにすることです」。

cove.toolは、2017年8月にソフトウェアのベータ版の提供を開始した。現在では、倉庫からデータセンター、オフィスビルに至るまで、2万5000件以上のプロジェクトがcove.toolのソフトウェアを使って建設されている。同社のソフトウェアには、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーなど、30カ国で1万5000人以上のユーザーがいる。その中には、HDR、AECOM(エイコム)、Skanska(スカンスカ)、Stora Enso(ストラ・エンソ)といった企業が含まれる。

「cove.toolは、合理的な自動分析を行うことで、建設業者、建築家、エンジニア、建築製品メーカーがデータに基づいた設計を行えるように支援し、気候変動との戦いの中で建築物を持続可能かつ効率的なものにしています」と、アフジャ氏は述べている。

驚くべきことに、cove.toolは2021年、2850万トンの炭素をオフセットしたという。これは、4億5000万本の木を10年間にわたって植え、育てることに相当する。同社は新たな資本を活用し、製品群の拡大や、現在60名のチームの増員、建築・エンジニアリング・建設業界へ炭素削減分析の提供などを計画している。

アフジャ氏によると、同社の主な競合相手は、同様の作業を手作業で行っているコンサルタントだという。

「当社の差別化要因は、データへのアクセスを民主化し、かつては2〜4週間かかっていたことを30分でできるようにしたことです」と、同氏は付け加えた。

この会社はまだ利益を出していないものの、アフジャ氏によれば事業規模の拡大をやめれば利益を出せる可能性があるという。

「今後数カ月のうちに、当社の製品群をさらに拡大し、AECエコシステム全体の統合を提供することで、パフォーマンスデータをさらに利用しやすくしていきます。当社では、炭素問題はデータ問題であると考えています」と、アフジャ氏はTechCrunchに語った。「APIフレームワークを使用することによって、建築物のデータを分析する作業を大幅に簡素化し、そのデータを建築・設計プロセスの多くの専門家と共有することができ、最終的にはシームレスな協業を可能にして、プロジェクトの成果を向上させることができます」。

同社では、米国、カナダ、英国、オーストラリア、EUでの販売・マーケティング活動を強化していくことも計画している。

FootPrint Coalitionの創設者であるロバート・ダウニー・Jr氏は、建築物の建設と運営が世界の温室効果ガス排出量の40%を占めると指摘する。

「エネルギー効率、設計、材料選択の透明性を組み合わせることで、cove.toolはこの大きな問題に取り組んでいます」と、同氏はメールに書いている。「これは、機械学習と理念的なリーダーシップを用いて、文字通りより良い未来を築く、スケーラブルなビジネスの最高の例です」。

Coatue社のパートナーであるDavid Cahn(デイビッド・チャン)氏によれば、持続可能な建設は現代の最も重要な環境課題の1つであると、同氏の会社は考えているという。

「cove.toolのソフトウェアによるアプローチは、建築をより簡単かつクリーンにする可能性を持っています」と、チャン氏はメールで述べている。

画像クレジット:Cove.tool

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

大阪大学、磁気を使ったセンサーシステムによりコンクリートに埋蔵された鉄筋の透視に成功

大阪大学、コンクリートに埋蔵された鉄筋の磁気による透視に成功

大阪大学産業科学研究所は12月13日、磁気を使ったセンサーシステムにより、コンクリートに埋蔵された鉄筋の様子を透視することに成功した。また、2次元スキャンロボットによるコンクリート内部の鉄筋の状況を可視化する計測技術を確立。老朽化した建屋の検査、施工確認などが安価にスピーディーに行えるようになるという。

大阪大学産業科学研究所の千葉大地教授らによる研究グループは、2020年「永久磁石法」という手法を開発し、新たな鉄筋探査方法になり得ることを発表している。現在、鉄筋の探査方法として広く用いられている中でコンパクトなものに、電磁波レーダー法や電磁誘導法などがあるが、電磁波レーダーは深い鉄筋も検知できるものの精度が低く、コンクリートの湿り具合や空洞に影響を受けてしまう。電磁誘導法では深い場所にある鉄筋は探知できない。また、磁性のある鉄筋以外の金属の影響を受けてしまうといった欠点がある。

研究グループが開発した永久磁石法は、永久磁石と磁気センサーを組み合わせたシンプルなセンサーモジュールで、磁性を持たない金属には反応しないため、鉄筋のみを狙って検出できる。「磁気誘導法」により、深く埋まっている鉄筋も観測でき、コンクリートの湿潤状況に左右されない。

研究グループは、このセンサーモジュールを2次元スキャンロボットに搭載して、格子状鉄筋の配筋状況の可視化を行った。永久磁石法の場合、センサーモジュールからはコンクリートは完全に透明なものに見えるため、実験用にコンクリートに覆われた鉄筋のサンプルを用意する必要がなく、さまざまな太さの鉄筋や、深さ(距離)を変えて計測結果のデータベースを容易に蓄積できるというメリットがある。

この2次元ロボットの実験では、左上が右下に比べて壁面から数mm離れてしまうという事故があった。その計測結果、鉄筋との距離によってシグナル強度が変化したのだが、これを利用すれば、鉄筋の深さや太さの情報も得られるようになるとの期待が生まれた。

今後は、2次元スキャンロボットとは別に、タブレットやスマートフォンとワイヤレス接続できる小型のハンディーセンサーの開発を進めるという。プロトタイプ機は完成しており、さらなる軽量化と使い勝手の向上を目指すとのことだ。

ソニーが整地・不整地を安全かつ効率的に移動できる6輪ロボを開発、清水建設と建設現場で共同実証実験

ソニーが整地・不整地を安全かつ効率的に移動できる6輪ロボを開発、清水建設と建設現場で共同実証実験

ソニーは、アクチュエーターを備えた6本の脚それぞれに車輪を配した、6輪ロボットを発表した。平地では車輪で走行し、階段などの段差では脚移動と車輪移動を併用する。そのため、整地と不整地が混在する場所でも、安全かつ効率的に移動が可能となる。ソニーグループの研究開発組織であるR&Dセンターが開発した。

このロボットには、ソニーがロボット関連の国際学会「IROS 2021」で発表した4脚歩行ロボットの設計思想が継承されている。作動中・停止中の脚部にかかる負荷を分散することで、最大20kgの重量物を、高いエネルギー効率で運搬できるほか、静止時は自重を支えるために必要なエネルギー消費量も削減できるという。ソニーが整地・不整地を安全かつ効率的に移動できる6輪ロボを開発、清水建設と建設現場で共同実証実験

脚の間接部にかかる力は、ソニー独自の全身協調制御システムにより柔軟に制御され、不安定な路面でも動作を安定させられる。また外部から力を受けたときは、衝撃を最小限に抑えるための自律的な回避行動がとれる。さらに、移動時に瞬間的な大電流が必要になった場合に、電気二重層キャパシタ(EDLC)がピーク電流に対応するため、バッテリーを小さく抑えることができ、機体が小型化できた。ソニーでは、さらなる小型化を進めると話している。このロボットは、清水建設と共同で、工事現場での実証実験が行われる。期間は2021年11月から2022年6月(予定)。

同実証実験は、清水建設が施工中の虎ノ門・麻布台プロジェクト(虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業) A街区のタワービルにおいて、ソニーの移動ロボットの検証機を動作させるというもの。従来は管理者が行っていた施工現場の巡回・監視業務、工事の出来高確認検査業務などの代替を想定し、歩行性能、監視(撮影)性能、操作性能を検証する。

仕様

  • サイズ:
    全高720〜1220mm(500mmの可変ストローク)
    全長912mm
    全幅672mm
    総重量(バッテリーを含む):89kg
  • 可搬重量:最大20kg
  • 移動速度:最大1.7m/s
  • 移動可能段差:最大30cm
  • 連続稼動時間:約4時間(動作パターンにより変動)
  • 自由度:
    駆動軸16軸(直動6軸、Hip回転6軸、駆動輪4軸)
    受動軸2軸(独自開発シングルオムニホイール)

リモート施工管理SaaS「Log System」を開発するlog buildが総額1億円のプレシリーズA調達

リモート施工管理を実現するためのサービス「Log System」を開発しているlog build(ログビルド)は11月24日、プレシリーズAラウンドにおいて総額1億円の資金調達実施を発表した。引受先や融資元は、GMFホールディングス、Monozukuri Ventures、ヨシックスキャピタルなど。

同社は、建設業界において深刻な人手不足や膨大な移動時間が大きな社会課題となっており、テクノロジーを活用したDXが急務と位置付け。レガシー産業の代表といわれる建設業界を変革するとしている。

log buildは、湘南の建設会社であるecomoのVR・AI・ロボット事業部として発足し、2020年2月に設立した建設テックのスタートアップ。

Log Systemは、リモート施工管理を実現するため、「Log Walk」(ログウォーク)、「Log Meet」(ログミート)、「Log Kun」(ログくん)の3つのソリューションで構成されている。Log Walkは、360度カメラとスマホアプリにより建設現場をVR空間化し、現場管理のメイン業務である進捗管理・品質管理・情報管理・安全管理をリモートで行うことを可能とする。Log Meetは、リモート現場立ち会いに特化したオンライン施工管理アプリ。職人でも活用しやすいUIを備え、建設現場に関わるすべての人とビデオ通話機能でオンライン打ち合わせが行える。建設現場特有のコミュニケーションロスを防ぐための機能も持つ。Log Kunは、好きな時に現場を巡視できるアバターロボット。場所や有人無人を問わず、現場に配置したアバターロボットをスマホ・タブレット・PCで操作し、進捗確認や安全管理、品質チェックができる。これにより移動のロスがなくなるという。

ロボットとAIが「空中庭園」の設計と建設をサポート、チューリッヒ工科大学による実験プロジェクト

建築や建設は、常に技術や素材のトレンドの最先端を静かに進んできた。チューリッヒ工科大学のような著名な工科大学で、AIやロボットを使った新しいアプローチのプロジェクトに取り組んでいても何ら不思議ではない。そこで行われている設計と建設を自動化する実験は、10年後に住宅やオフィスがどのように作られるかを示している。

このプロジェクトで作られているのは、古代都市バビロンの伝説的な建造物にヒントを得た「空中庭園」、つまり巨大なプランターの彫刻物だ(ちなみに、バビロン遺跡の有名な「イシュタル門」を発掘・盗掘したロバート・コールドウェイは私の祖先である)。

2019年に始まった「Semiramis(セミラミス)」(伝説的なバビロンの女王にちなんで名づけられた)は、人間とAIのデザイナーによるコラボレーションだ。もちろん全体的なアイデアは、プロジェクトの生みの親である建築学教授のFabio Gramazio(ファビオ・グラマジオ)氏とMatthias Kohler(マティアス・コーラー)氏のクリエイティブな頭脳から生まれたものだ。しかし、そのデザインは、大きさ、水やりの必要性、建造の様式などの基本的な要件を、コンピューターモデルと機械学習アルゴリズムに入力することで生み出された。

例えば、デザインの過程で、チームはこの20メートルを超える建造物を構成する大きな「ポッド」の位置を微調整したり、表面を構成するパネルのレイアウトを変更したりすることがある。そうすると、彼らが作成したソフトウェアは、その変更に合わせて全体の位置関係や他のパネルの形状を即座に調整し、自重に安全に耐えられることを確認する。

セミラミス空中庭園のCGによる完成予想図(画像クレジット:Gramazio Kohler Research)

もちろん、建築業界ではすでに多くの自動化されたプロセスが取り入れられているが、このプロジェクトでは、最終的なコントロールをAIに任せるという点でにおいて、これまでの限界を押し広げる試みだ。何といっても重要なのは、全体が崩壊しないように建築的なスペルチェックをAIにやらせるのではなく、人間とAIによる真のコラボレーションを実現するということである。

「コンピューターモデルを使うことで、従来の設計プロセスを逆に辿ることができ、プロジェクトの設計範囲をすべて探求することが可能になります。その結果、今までに見たこともない、しばしば驚くような形状が生まれるのです」と、コーラー氏はチューリッヒ工科大学ニュースの記事で述べている

最終的な設計に到達すると、建設はもう1つの人間と自動化の混成チームによって行われる。4本のロボットアームが一心不乱に作動して、複数の重い部品(1つのポッドには数十個の部品がある)を固定し、人間がそれらを結合するための樹脂を塗布する。この手法は、数年前に同じチームが使用した、ロボットを自動化されたアシスタントとして使用するやり方よりも一歩進んだものだ。

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セミラミスはこのワークショップで製作された後、最終的にはTech Cluster Zug(テッククラスター・ツーク)に向けて1個ずつ輸送される。2022年の春には完全に組み立てられ、土や種を受け入れる準備ができるはずなので、近くに行かれる際には是非、立ち寄ってみてはいかがだろうか。

画像クレジット:ETH Zurich

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した複数写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

東芝は11月22日、ズームレンズと一般的な単眼カメラ(一眼レフカメラ)で撮影位置などの条件を変えて撮影した写真のみから、遠隔地にある対象物のサイズを3次元計測できる技術を世界で初めて開発したことを発表した。インフラ点検などにおいて、高所や傾斜地など危険な場所に近づくことなく計測が可能になる。

国内のインフラ設備の平均年齢が35年を超えるなど、道路・橋・トンネルといったインフラの老朽化が問題となり、早急な対応が求められているが、効率的な工事を行うには、補修箇所の正確なサイズ計測が重要となる。だが、高所や斜面など危険な場所では目視による計測が難しい。そこで東芝は、危険な箇所に近づくことなく、遠くからズームレンズで撮影した写真から簡単にサイズ計測ができるAI技術を開発した。異なる位置から撮影された複数の写真(多視点画像)から割り出された相対的な奥行き情報と、画像のボケ情報を組み合わせ、スケール情報と焦点距離を未知パラメータとする最適化問題を解くことで、撮影画像のみでサイズの絶対値がわかるというものだ。

カメラの画像でサイズが計測できるアプリはスマートフォンにも搭載されている。これには、多視点画像から得られた相対値に絶対値を与えるジャイロセンサーと、あらかじめ学習されたAIモデルが必要となる。そのため、学習の範囲を超える遠距離となると精度が落ちてしまう。

東芝が開発したシステムでは、7m離れたひび割れのサイズを高精度に計測できた。屋外の11カ所で、5〜7m離れた対象物のサイズを計測したところ、サイズ誤差は3.8%に抑えられた。この精度は、公益社団法人日本コンクリート工学会が定めるコンクリートのひび割れ補修指針に基づく数値シミュレーションで「高精度の補修の必要性を判別できる」と確認された。さらに、2mm以下のひびのサイズの絶対値の計測も行えた。

この技術は、インフラ点検のみならず、製造、物流、医療など、カメラによるサイズ計測が行われる分野に応用ができると東芝では話している。今後も様々なカメラやレンズを使った実証実験を進め、早期の実用化を目指すということだ。東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentが総額約19億円のシリーズC調達

高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentは11月24日、シリーズCラウンドにおいて、12億円の第三者割当増資、約7億円の融資による合計約19億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家のSBIインベストメント、またFUSO-SBI Innovation Fund(フソウとSBIインベストメントによるCVCファンド)、東日本銀行地域企業活性化ファンド(東日本銀行とフューチャーベンチャーキャピタルによるファンド)、ザシードキャピタル。借入先はみずほ銀行およびりそな銀行などの金融機関。累計調達額は約29億円になった。事業シナジーを見込む企業を対象にしたエクステンションラウンドも予定しているという。

調達した資金は、エンジニアやPMの採用強化および「BIM/CIMの自動設計SaaS」「配管の自動設計・積算SaaS」などのプロダクトの開発にあてる予定。なおBIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)とは、調査・計画・設計段階から3次元モデルを導入し、施工、維持管理でも3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を実現すること。

2012年7月設立のArentでは、「高難度のDXに挑み、巨大産業のグローバルイノベーションに貢献する」をミッションに、高度な数学力と開発力を有するエンジニアが、日本の企業が持つ世界トップレベルの技術やネットワークを見極め、業務改善にとどまらず、新規事業を創造する企画力と実行力で新しいサービスやプロダクトの開発・社会実装を推進。千代田化工建設との大規模JV設立など、「熟練技術者の暗黙知のモデル化による設計の自動化・最適化」を実現している。高度な数学力と3次元CADの開発力で建設DXを推進するArentが総額約19億円のシリーズC調達

工場製の壁、床、屋根パネルを現場で組み立てるモジュラーホームビルダーCoverが約68億円調達、テスラの様式にならう

現在、モジュラーホームの設計に取り組むスタートアップが数多く存在する。中でも興味深いのは、ロサンゼルスに拠点を置く創業7年のCover(カバー)だ。同社によると、壁、床、屋根のパネルをすべて工場で製造した後、標準的なトラックで輸送し、現場でクレーンを使わずに組み立てるという。

建物の骨組みには軽量のスチール、天井にはアルミを使っている。パネルがゴムの複合材でできているのは、創業者でCEOのAlexis Xavier Rivas(アレクシス・シャビエル・リバス)氏が説明するように「乾式壁材の設計は製造や輸送に適したものではなく、とても脆い」ためである。

明らかに、これらの建物をどのように設計するかについて多くの考察がなされてきたようだ。例えば、同社ではすべての給排水衛生設備と電気配線を天井に設置しており、オーナーは新しい配線や配管を設置する際、天井を開けるだけで済む。

奇妙に聞こえるかもしれないが、同じ目的を達成するために、壁に一連の穴を開け、それらを補修して塗り直すことに比べると、それほど違和感はない(また、現在不足している配管工や電気工のような職人の助けも必要ない)。

他の使用素材としては、床や外装に使われている天然の木や木の複合材がある一方、堅牢な表面のカウンタートップや浴室の床には多孔性がない。これは衛生的であることを意味しており、世界的なパンデミックからの回復に伴い、住宅オーナーにとってますます重要な要素となっている。

Coverに関して言えば、その主要な焦点、そして将来性として、迅速な組み立てとカスタマイズの両方があることを考えると、材料の組み合わせ方は当然、一層重要性を帯びてくる。

リバス氏が語るプロセスの仕組みは、顧客が同社と協働して設計を作り上げる、というものだ。現時点では、その設計は1200平方フィート(約111.5平方メートル)以下の平屋建てユニットに限られているものの、エネルギーの浪費を最小限にするために窓をどこに配置すべきかなど、さまざまな要素が考慮されている(またリバス氏は、Coverが作る窓はLEED認定を受けており、住宅は気密性が高く、エネルギー効率が大幅に向上していると指摘する)。

Coverは合意された設計を事前に設定されている価格で採用し、パーツのエンジニアリングに着手する。価格には許可手数料、都市に支払う手数料、基礎工事費用、そして家自体の費用が含まれている。例えば400平方フィート(約37.2平方メートル)のスタジオ(ワンルーム)で20万ドル(約2280万円)、600平方フィート(約55.7平方メートル)のワンベッドルームユニットで25万(約2850万円)ドル、1200平方フィートの寝室が3つある住居で最大50万ドル(約5690万円)という設定だ。

いささか驚くべきことに、基礎工事が完了すれば30日間以内の建設と設置が可能でなり、同社が当初顧客に約束する120日という期間より短縮されるという。

また、必要な許可が得られない場合は100%の返金保証を提供する他、構造に関する生涯保証と、それ以外については1年間の保証を設けている。

これらの建物は「腐食することはありません」とリバス氏。「シロアリに食べられることもないでしょう」。一方、顧客が新しいエアフィルターを必要としている場合は「私たちが交換します」。

トロントで育ったリバス氏は、大学で建築学を学んだ後、Coverを設立する前に短期間、複数の建築会社を渡り歩いた。SpaceX(スペースX)とTesla(テスラ)のエンジニアをこのミッションに引き寄せることができたことを誇りに思っているリバス氏は、今週初めに交わした会話の中のさまざまな場面で、Coverのプロセスをこの自動車メーカーのプロセスになぞらえた。

類似点を見出しているのは同氏だけではないようだ。Coverは2021年10月下旬に、Gigafund(ギガファンド)が主導するシリーズBラウンドで6000万ドル(約68億円)を調達したことを発表した。Gigafundは、SpaceXに大きく賭けた2人の元Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)投資家によって設立された投資会社だ。

今回のラウンドには、Valor Equity Partners(バロー・エクイティ・パートナーズ)とFounders Fundが参加しており、どちらもSpaceXとTeslaの初期投資家でもある。他にも、General Catalyst(ジェネラル・カタリスト)、Lennar(レナー)、Fifty Years(フィフティ・イヤーズ)、AngelList(エンジェルリスト)の共同創業者Naval Ravikant(ナバル・ラヴィカント)氏、Lowercase Capital(ローワーケース・キャピタル)の創業者Chris Sacca(クリス・サッカ)氏、Marathon Asset Management(マラソン・アセット・マネジメント)のCEOであるBruce Richards(ブルース・リチャーズ)氏、Dropbox(ドロップボックス)の共同創業者Arash Ferdowsi(アラシュ・ファダウシ)氏など、著名な投資家が多数名を連ねている。

確かに、全国的な住宅と建設の不足を考えると、Coverが建設しているものへの需要は少なくない。実際、Coverのセールスチームについて尋ねられたリバス氏は、非常に多くのインバウンド関心があり、現在「1人の時間の3分の1がセールスに費やされている」と述べている。

人々がどのようなものを注文しているかについて、リバス氏は同社の顧客の傾向を次のように語っている。引っ越してくる家族(年老いた親や大学から戻ってくる子ども)を受け入れるため、自宅とは別にホームオフィスを作るため、あるいは賃貸収入を増やす方法を確立するため、という目的が多くを占めるという。

さらに、これまでに建設した約20軒の裏庭つき住宅に加えて、現在総額7500万ドル(約86億円)を調達している同社は、大規模な複数階建て住宅と複数世帯向け住宅の建設を始める意向を強く抱いている。

現在稼働している2万5000平方フィート(約2322.6平方メートル)の倉庫から、10万平方フィート(約9290平方メートル)の工場に移転することで、さらに多くのパネルを生産できるようになるとリバス氏は話す(そこに6000万ドルの一部が注ぎ込まれている)。

実際、すべてが計画どおりに進めば、近いうちに既存の顧客でも、すでに購入した家をCoverアプリを使って容易に拡張できるようになるという。同氏の話を聞くと、それは簡単なことのようだ。

「アプリを起動して、追加したい部屋をクリックし、予約して、オンラインで支払いをすれば、2〜3日でリノベーションが完了します」。

これはElon Musk(イーロン・マスク)氏がその名を馳せる、一種の開幕戦のようなものだ。さて、Coverがうまくやり遂げるかどうか、注目してみたい。

画像クレジット:Cover

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)