アイドルの握手会で、握手の感触を遠隔化―モーションリブの感触伝送技術リアルハプティクス採用

アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

慶應義塾大学発スタートアップのモーションリブは3月17日、「スカパー!アイドルフェス! ~Think of SDGs~」(3月16日開催)における「さわれるVR握手会」において、リアルな感触が遠隔地に伝わるリアルハプティクス装置を提供し、アイドルとのソーシャルディスタンスを保ちつつ、握手の感触の双方向ライブ体験を実現したと発表した。コロナ禍で接触コミュニケーションの機会が減少する中、新時代の非対面接触コミュニケーション手段として期待される。

今回「スカパー!アイドルフェス! ~Think of SDGs~」では、モーションリブが提供するリアルハプティクスという感触伝送テクノロジーを用いて、離れた場所にいるアイドルと直接握手しているかのような感覚を得られる「さわれるVR握手会」を開催した。

リアルハプティクスとは、慶應義塾大学で発明された、人の力加減や物の感触を正確に遠隔地に伝送できる制御技術。アクチュエーターの⼒加減を⾃在に制御可能で、VRなどの画像技術・音声技術と組み合わせることで、より没入感のある体験を創造できるという。アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

モーションリブは、機械が力触覚を自在にコントロールするために必要なリアルハプティクスについて、機械への実装を可能にするための研究開発から、キーデバイスである「AbcCore」の製造販売まで行うスタートアップ。AbcCoreは、同社が開発した、リアルハプティクスの実装を簡便にする汎用力触覚ICチップにあたる。力センサーや特殊なモーターなどを必要とせず、市販モーターを使って力加減や力触覚伝送の制御を実現する点に技術的優位性を持つという。すでに70社ほどの企業に先行提供しており、共同研究や実用化が始まっているそうだ。

またモーションリブは、共同研究を行う「ソリューション事業」、AbcCoreを提供する「デバイス事業」、技術を提供する「ライセンス事業」の3事業を柱に、顧客企業の製品企画から量産販売までをサポートできる体制を構築している。

今後もモーションリブは、力触覚技術リアルハプティクスを通して、Withコロナ社会における新たなコミュニケーション手段を提供するという。アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

 

貴金属や複雑なデバイス構造の必要なく磁気回転効果で磁性体からの起電力取り出しに成功、スピントロニクス応用に道

貴金属や複雑なデバイス構造の必要なく磁気回転効果で磁性体からの起電力取り出しに成功、音波を用いたスピントロニクス応用に道

音波の磁気回転効果に由来する、起電力発生メカニズムの模式図。強磁性体の磁気には弾性変形による磁気弾性効果が、また自由電子スピンには回転変形による磁気回転効果が働く。これら2つの効果が組み合わさることで、貴金属や複雑なデバイス構造を必要とせずに、磁気回転効果に由来する起電力が発生する

慶應義塾大学中国科学院大学は2月21日、磁石に音波を注入すると、磁気回転効果によって起電力が発生することを理論的に示した。貴金属や複雑なデバイスを必要としないため、これまで困難とされてきた磁気回転効果のスピントロニクスへの応用に道が拓かれるという。

「磁気回転効果」とは、ミクロな角運動量(回転の方向と大きさを表す量)である電子スピンが、力学的な回転運動(マクロな角運動量)と互いに変換可能であるという、物質の磁気と回転との関係を示す現象のこと。アインシュタインとドハースが実験により証明した、磁石の磁気量を変化させると磁石が回転し始める「アインシュタイン・ドハース効果」や、バーネットが発見した、磁石を回転させると磁気量が変化(アインシュタイン・ドハース効果とは逆)する「バーネット効果」で知られる。

物質を高速で回転させるほど磁気回転効果は大きくなるが、最先端技術で可能な毎秒1万回転程度でも、得られる効果は非常に小さく、スピントロニクス分野での応用は進んでいなかった。

しかし、慶応義塾大学能崎幸雄教授ら研究グループは近年、物質の表面を伝搬する音波「表面弾性波」を用いて結晶格子点を1秒間に10億回以上回転させ、磁気回転効果によるスピンの流れを生み出せることを実証。表面弾性波を非磁性金属の銅と強磁性体を複合した材料に注入して交流のスピン流を生み出し、隣接する強磁性体に作用させることによって磁気の波を起こすことに成功した。その後同グループは、白金を銅と強磁性体の複合材料へ接合させることで、磁気回転効果によって生み出された交流スピン流を起電力に変換させ、それを電気的に検出することに成功した。しかし、このスピン流を利用するには、白金などの貴金属や複雑なデバイスが必要となるため、スピントロニクスへの応用にはまだ制限があった。

そこで慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの船戸匠特任助教と、中国科学院大学カブリ理論科学研究所の松尾衛准教授による研究グループは、「強磁性金属の単膜というシンプルなデバイス構造において磁気回転効果に由来した起電力が発生する」ことを理論的に提案した。

強磁性金属へ表面弾性波を注入すると、強磁性体内の自由電子スピンには格子の回転変形に伴う磁気回転効果が働き、同時に、強磁性体の磁気には弾性変形に伴って向きが変化する効果(磁気弾性効果)が働いて磁気の波が励起され、自由電子スピンに作用することで起電力が生まれる。この2つの効果を組み合わせることで、貴金属や複雑なデバイスを用いずとも、磁気回転効果に由来する起電力が得られることを発見した。

この発見により、「音波さえ生み出すことができれば、他に制限を受けることなく幅広いスピンデバイスへ磁気回転効果を応用することが可能」になったとのこと。「ジュール熱を伴う電流に比べてエネルギー損失の少ない音波を用いているために磁気デバイスの高性能化・省電力化することができるだけでなく、貴金属を必要としないため安価なレアメタルフリー技術として大きく貢献できます」と研究グループは話している。

ザトウクジラの尾びれ写真から個体を見分けるAI自動識別システム開発、Diagence・阪大・慶應・沖縄美ら海財団で実用化へ

ザトウクジラの尾びれ写真から個体を見分けるAI自動識別システムを開発、Diagence・阪大・慶應・沖縄美ら海財団で実用化へ

コンピューター技術をベースとした企画プロデュースを行うスタートアップ「Diagence」(ダイアジェンス)、大阪大学サイバーメディアセンター慶應義塾大学沖縄美ら海財団からなる研究グループは2月4日、ザトウクジラの尾びれの写真から個体を自動的に識別するAIシステムを開発した。ザトウクジラ研究者の個体識別に関する知見を取り込んだAIアルゴリズムシステムで、尾びれの写真を入力すると、登録されているクジラから特徴の近いものがリストアップされる。

捕鯨によって数が激減したザトウクジラは、保全のための研究が行われているが、その生態を把握するためには個体の識別が重要となる。ザトウクジラの個体識別には、撮影した尾びれ尾びれ写真をもとに、尾びれ先端のギザギザした形状と、尾びれ裏の模様が使われる。この写真については毎年400〜500枚が新たに撮影・追加されており、人の手によって識別するのは何カ月も要する大変な作業となっている。コンピューターを使って自動化させたいニーズは世界中の研究者が持っており、有名なデータ分析コンペティションKaggleでも題材として取り上げられるほどであるが、これまで実際に用いられているものはなかったという。

現在、沖縄美ら海財団では、30年以上にわたり収集してきた1850頭・約1万枚にのぼるザトウクジラの尾びれの写真があるものの、全写真のうち79%は1頭あたりの写真が3枚と少なく、光の具合、距離、角度などによって条件が異なり、形状や模様の判別が難しい状態にあった。さらに35%のクジラには、尾びれ裏に模様がないなど、人の目で識別を行う上でも困難が多い。

そこで研究グループは、深層学習や図形処理を用いて尾びれの形状を正確に切り抜き、そのギザギザ形状の特徴をベクトル化して尾びれの特徴を抽出する方法を編み出した。これによって特徴が抽出された新しい写真は、既存のものと照合され、近いものがランキング形式でリストアップされる。2016年に撮影された写真中の、過去に登録されている323枚について処理を行ったところ、89%が、上位30位までに正しいクジラが入っていた。また76%は、1位に正しいクジラがランクされた。

Diagenceは、このシステムを、ザトウクジラの研究を行っている世界の研究機関に普及させて、「自然科学研究の進展に貢献する」ことを目指すという。また同様の手法を使い、他分野の専門家の知見をAIシステムに落とし込むことで、他分野への応用も目指したシステムやサービスの開発を進めるとしている。

Diagenceは、コンピュータサイエンス領域の国立大学教授2名および教員1名、代表取締役である菅真樹氏の計4名が2019年1月に設立。このうち大学教授と教員はコンピュータサイエンス領域や人工知能領域で国際会議などで多くの業績を上げている研究者という。菅氏は、大手コンピュータメーカー研究職でコンピュータサイエンス領域の研究に10年以上従事した後、スタートアップCTOを経て、研究開発スタートアップを創業。受託研究開発や国家研究プロジェクトに携わる現役研究者であり、先端技術の事業化に取り組んでいるという。

遺伝子治療による視覚再生の早期実用化を目指すレストアビジョンが3億円調達、網膜色素変性症治療薬の臨床試験目指す

遺伝子治療による視覚再生の早期実用化を目指すレストアビジョンが3億円のシード調達、網膜色素変性症治療薬の臨床試験目指す

遺伝子治療による視覚再生の早期実用化を目指すレストアビジョンは2月4日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による総額3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リアルテックファンド、ANRIおよびRemiges Venturesがそれぞれ運営するファンド。

調達した資金は、慶應義塾大学とともに採択された日本医療研究開発機構(AMED)などの補助金計3億円とあわせて、6億円の資金をもって、同社リードパイプラインである網膜色素変性症の遺伝子治療薬RV-001の製剤開発、非臨床試験などを推進し、RV-001の臨床試験の早期実現を目指す。

レストアビジョンは、慶應義塾大学医学部と名古屋工業大学の共同研究成果をもとに、オプトジェネティクス技術の臨床応用による、遺伝性網膜疾患に起因する失明患者の視覚再生の実現を目指して、2016年11月に設立。いまだ有効な治療法のない遺伝性網膜疾患に対し、同社の治療を提供していくことを第1のミッションに掲げて開発に取り組み、日本発・大学発の遺伝子治療技術の産業化による日本経済への貢献を目指している。

RV-001は、AAV(Adeno Associated Virus)ベクターに独自の光センサータンパク質である「キメラロドプシン」を目的遺伝子として搭載した遺伝子治療薬。ヒトの網膜において光センサーの役割を担う視細胞が、遺伝的要因で変性消失してしまう網膜疾患を主な対象として、簡便かつ低侵襲な投与方法である硝子体内注射によりRV-001を投与し、残存する介在神経細胞内でキメラロドプシンを発現させることで、視覚再生を実現する治療法という。

再生医療スタートアップU-Factorと慶應義塾大学医学部、幹細胞培養上清液によるドライアイ治療の共同研究開始

再生医療スタートアップU-Factorと慶應義塾大学医学部、幹細胞培養上清液によるドライアイ治療の共同研究開始

再生医療スタートアップU-Factor(ユーファクター)と慶應義塾大学医学部眼科学教室は2月2日、乳歯由来の歯髄幹細胞培養上清液を用いたドライアイ治療の共同研究を開始したと発表した。

U-Factorは、アルツハイマー病をはじめ、有効な治療法のない疾患に対する要望、いわゆる「アンメットメディカルニーズ」に対処する薬の開発を進めており、乳歯由来の歯髄幹細胞培養上清液の基礎研究も行っている。幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養する過程で得られる上澄み液のこと。これまでの再生医療では、幹細胞そのものを体内に移植する方式が有効とされているが、近年、幹細胞培養上清液にも幹細胞移植と同等の利用効果があることがわかった。

幹細胞培養上清液には数千種類の成長因子が含まれており、体内の細胞組織の再生を促す。なかでも、U-Factorが開発している乳歯由来の幹細胞培養上清液は、骨髄や脂肪から得られる間葉系由来のものに比べて成長因子がより豊富に含まれているという。

この共同研究では、日本で2200万人が悩まされているドライアイ(Uchino M, et al. Am J Ophthalmol, 2013)への幹細胞培養上清液の有効性を確認することにしている。U-Factorは研究費用と幹細胞培養上清液を提供し、慶応義塾大学医学部眼科学教室が研究の実務を行う。数年後には幹細胞培養上清液の産業化を目指すとのことだ。

1024個の長期安定型の分子センサーを1チップに集積化、空中の分子の空間濃度分布の可視化に成功

1024個の長期安定型の分子センサーを1チップに集積化、空中の分子の空間濃度分布の可視化に成功

開発したセンサーアレイの顕微鏡写真(右図)およびアナログフロントエンドセンサー計測回路システムの写真(左図)

東京大学と慶應義塾大学からなる研究グループは、気体に含まれる分子(揮発性分子)を電気信号として検出する分子センサー1024個を1チップに集積化したセンサーアレイ(センサー群)を開発し、揮発性分子の空間濃度分布の可視化に成功した。この分子センサーは金属酸化物ナノ薄膜を用いた堅牢なもので、従来技術では難しかった長期間の安定化と、高密度集積を可能にした。

分子センサーは、医療や食品管理など幅広い分野で注目を集めているが、実際に検出対象となるガスには数十から数百種類の分子が含まれているため、数多くのセンサーを集積したセンサーアレイが必要となる。また、小型、省電力であるうえに、長期間データを取得し続けられる長期安定性も求められる。だが従来技術では、高密度集積化と長期安定(堅牢性)という2つの条件を満たすセンサーアレイは作れなかった。

そこで、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の大学院生 本田陽翔氏、慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻の大学院生 椎木陽介氏らからなる研究グループは、金属酸化物半導体をクロスバー構造に配置したセンサーアレイを開発した。クロスオーバー構造とは、格子状にセンサーを配置するもので、これまで広く開発されている「縦型チャンネル構造」に比べて面積を大きくできる。研究グループは、1辺に32本の電極を設け、計1024個(32×32)の分子センサーを5mm四方の中に集積化した。

ただクロスオーバー方式は集積化に優れている反面、配線の電気抵抗がセンサーの電気抵抗に加わってしまうため正しい測定ができないという問題があるのだが、50nm(ナノメートル)という非常に薄い酸化スズの膜をセンサーに用いることでセンサー自体の電気抵抗を大きくし、配線の抵抗の影響を小さくすることでこれを解決した。またこの酸化スズは熱に強く、長期間安定した分子センサーも実現している。

(a)液滴をから蒸発・拡散させた分子をセンサーアレイで検出する実験の模式図と写真。(b)蒸発・拡散してきたエタノールに対するセンサー応答とセンサー列の関係。液滴に近いセンサーほど高い応答が得られている。(c)bのセンサー応答の勾配(傾き)と各種液滴滴下後の時間の関係。60s時点で液滴を滴下している。勾配の時間依存性が分子の種類に応じて異なる傾向を示している

(a)液滴をから蒸発・拡散させた分子をセンサーアレイで検出する実験の模式図と写真。(b)蒸発・拡散してきたエタノールに対するセンサー応答とセンサー列の関係。液滴に近いセンサーほど高い応答が得られている。(c)bのセンサー応答の勾配(傾き)と各種液滴滴下後の時間の関係。60s時点で液滴を滴下している。勾配の時間依存性が分子の種類に応じて異なる傾向を示している

このセンサーアレイの近くにアルコールを配置して蒸発し拡散する分子の検出を行ったところ、アルコールからの距離に応じてセンサーの反応に差異が出た。このことから、このセンサーアレイで分子の種類を判別できる可能性が示された。

この技術とセンサーチャンネル表面の化学物性を制御する技術を融合すれば、多種類のセンサーを高密度に集積化でき、「多種類の分子が混合された分子群の判別」ができるセンサーシステムの実現も期待されるとのことだ。

慶應発の再生医療スタートアップ「セルージョン」が11億円調達、水疱性角膜症に対する再生医療等製品の社会実装加速

慶應発の再生医療スタートアップ「セルージョン」が11億円のシリーズB調達、水疱性角膜症に対する再生医療等製品の社会実装加速

慶應義塾大学医学部眼科学教室発の再生医療スタートアップ「セルージョン」は1月7日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による総額11億円の資金調達を2021年12月に完了したと発表した。引受先は、リード投資家の東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)、新規投資家の東邦ホールディングス、東洋製罐グループホールディングス、Gemseki、既存投資家のSMBCベンチャーキャピタル、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、DBJキャピタルが運営する投資事業有限責任組合。

2015年1月設立のセルージョンは、iPS細胞から角膜内皮代替細胞を効率的に作り出す独自技術を基に、世界の角膜移植課題をはじめとした、現在の医学が抱えるアンメット・メディカルニーズ(未解決の治療ニーズ。Unmet MedicalNeeds)の解消を最先端の細胞治療技術により解決し、全世界の健康福祉向上への貢献を目指している。

調達した資金により、先行開発品であるiPS細胞由来角膜内皮代替細胞(CLS001)の国内および海外の臨床試験準備、研究・組織体制の強化、後続パイプラインの研究開発を進める。また、医薬品卸業者の東邦ホールディングスや包装材メーカーの東洋製罐グループホールディングスとの事業連携を進め、CLS001の社会実装へ向けたサプライチェーンを整備し、水疱性角膜症に対する新たな治療法提供へ向けた取り組みを加速する。

角膜移植以外では失明を防げない水疱性角膜症のような眼科疾患は、全世界では1300万人以上の待機患者が存在するにもかかわらず、年間実施される角膜移植はわずか約18万件という。この治療需給ギャップの原因は、角膜移植にはドナーからの角膜提供が必要な点に加えて、熟練した角膜移植医の確保やアイバンクの整備を要することが治療提供の大きな制約となっている点が挙げられるという。

そのためセルージョンは、「増殖性に優れるiPS細胞から角膜内皮代替細胞を効率的に作り出す技術」と「簡便な手技で属人的技術を不要とする細胞移植法」を組み合わせ、角膜移植適用症例の半数以上を占める水疱性角膜症に対する再生医療等製品CLS001による治療の開発を進めている。CLS001は、慶應義塾特定認定再生医療等委員会および厚生労働省の厚生科学審議会から2021年7月にヒトでの安全性を評価する医師主導臨床研究の実施承認を得ており、準備が整い次第、慶應義塾大学病院にて同研究が開始される予定だ。

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

慶應義塾大学は12月9日、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスを、世界で初めて13.56MHzという高周波数で動作させることに成功したと発表した。伸縮性のある半導体デバイスはすでに発明されていたが、動作周波数は100Hz程度と低く実用化の壁になっていた。13.56MHzは交通系カードや携帯電話の無線充電などに使われる、とても重要な周波数だ。

慶應義塾大学理工学部電気情報工学科専任講師の松久直司博士と、スタンフォード大学化学工学科のポスドク研究員(研究当時)シミアオ・ニウ博士、ゼナン・バオ教授による研究グループは、薄いゴムのように肌に密着する柔らかい電子デバイスを使ったウェアラブル機器の実現につながる、柔軟で伸縮性のある半導体デバイスを開発した。これは、13.56MHzで駆動する伸縮性ダイオード。元の長さの1.5倍にまで引き伸ばしても、何度伸縮を繰り返しても、壊れることなく電気的特性が維持される。

開発の決め手になったのは「高周波駆動用に精密にチューニングされた様々な新しい伸縮性電子材料」だという。たとえば、割れやすい高分子半導体の化学構造の中に柔らかいシリコンゴムの化学構造を取り込んだり、導電性高分子材料や金属ナノ材料の一種である銀ナノワイヤなどの電子材料に伸縮性を付与し、電気特性が高周波動作の要件を満たすよう新しく設計した。

研究グループは、この伸縮性ダイオードを使ってセンサー・ディスプレイ・アンテナを備えた集積化したシステムを試作した。衣服に仕込まれたアンテナからワイヤレスで給電され、センサーの信号をリアルタイムでディスプレイ素子の色変化として表示する。こうしたデバイスは、肌に貼り付けても違和感なく使用できるため、長期間の生体情報の取得が可能となり、病気の早期発見などを行うヘルスケア分野のウェアラブルデバイスへの応用が期待されている。

慶応義塾大学、柔らかく伸縮性のある半導体デバイスで世界で初めて高周波数13.56MHz駆動に成功

地上最強生物、水がなくても生きられるクマムシの乾燥耐性の仕組みが明らかに

地上最強生物、水がなくても生きられるクマムシの乾燥耐性の仕組みが明らかに

大学共同利用機関法人の自然科学研究機構生命創成探究センター(ExCELLS)は11月4日、クマムシが乾燥しても生きられる乾燥耐性の仕組みについて、CAHS1というタンパク質分子の振る舞いによるものであることを、世界で初めて解明し発表した

最大でも体長1mm程度のクマムシは、実際には虫ではなく、4対の歩脚を持つ「緩歩動物」(カンポドウブツ)という生き物だ。そんなクマムシは、生育環境から水がなくなると「乾眠」(かんみん。クリプトビオシス。cryptobiosis)という状態になり、代謝を止めて生命活動を一時停止させるが、水が与えられると乾眠状態から復帰して、代謝が再開される。乾眠中のクマムシは、乾燥だけでなく、極度の高温・低温・圧力・放射線などによる環境ストレスにも強い耐性を示し、宇宙の真空状態でも生きていられるため、「地上最強生物」と呼ばれている。

なかでも乾燥耐性が強いものに、ヨコヅナクマムシと呼ばれる陸生のクマムシがいる。ヨコヅナクマムシは、乾燥から身を守るために、細胞の中に何種類かのタンパク質が常備されているといわれているが、その役割はわかっていなかった。

この研究では、とりわけ細胞内に多く存在するCAHS1というタンパク質に着目し、透過型電子顕微鏡でその形を調べ、変化の状態を赤外分光法、核磁気共鳴法、高速原子間力顕微鏡を用いて観察したところ、水分が失われ細胞内のタンパク質の濃度が高まると、水溶液中のCAHS1タンパク質は自然に集合してファイバーを形成し、最終的にゲル状になることがわかった。このゲルは、水分を与えると元の水溶液の状態に戻る。

遺伝子組み換えタンパク質として大腸菌の細胞内に作り出したCAHS1タンパク質も、同じようにファイバーを形成し、ヒト由来の培養細胞の中に作り出したCAHS1タンパク質も、脱水ストレスがかかると大きな集合体を作り、ストレスがなくなると集合体は消失することが確認された。

ヨコヅナクマムシは、このようなタンパク質を細胞内に豊富に持っていて、すぐに脱水状態に対応できる仕組みを備えているという。このタンパク質の集合体は、「細胞が復活する際に必要な成分を保護したり、乾燥によって生じる有害物質を隔離したりする働きがあるのかもしれません」と同センターは推測している。

今回の研究成果は、生命の環境適応戦略を理解するうえで重要な手がかりとなる。「生きているとは何か」の謎に迫るとともに、医療やバイオテクノロジーへの応用研究の推進につながるとのことだ。

この研究は、自然科学研究機構生命創成探究センター分子科学研究所の加藤晃一教授と矢木真穂助教の研究グループと、同センター所属の青木一洋教授(基礎生物学研究所)、村田和義特任教授(生理学研究所)、内橋貴之教授(名古屋大学)、荒川和晴准教授(慶應義塾大学)、古谷祐詞准教授(分子科学研究所/現 名古屋工業大学)と共同で行われた。

金沢大学などが乳がん発症の超早期兆候を作り出す仕組み発見、がん予防・超早期がんの診断治療への活用に期待

金沢大学などが乳がん発症の超早期の兆候を作り出す仕組みを発見、がん予防・超早期がんの診断治療への活用に期待

金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構などによる研究グループは10月19日、乳がん発症の際に必ず表れる超早期の微小環境を作り出すメカニズムを発見したと発表した。癌予防、超早期がんの診断治療への活用、ひいてはがん撲滅への寄与が期待される。

乳がん発症の超早期には、間質細胞、免疫細胞などが集まり、がん細胞を取り囲む微小環境が作り出される。その微小環境から生み出されるサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)が、がん幹細胞様細胞に影響を与えていることはわかっていたが、実態は不明だった。この研究では、そのメカニズムを分子レベルで明らかにした。さらに、この微小環境がFRS2βといいう分子によって整えられ、がん細胞の増殖が始まることも突き止めた。

FRS2βの影響で炎症性サイトカインが生み出され、細胞外に放出されると、そこに間質細胞や免疫細胞が引き寄せられる。マウスを使った実験では、この状態の乳腺に乳がん幹細胞様細胞を移植すると、1カ月以内に大きな腫瘍ができた。だが、FRS2βのない乳腺に乳がん幹細胞様細胞を移植しても、まったく腫瘍はできなかった。

この研究を発展させることで、乳がん発症前に整えられる乳腺微小環境を標的とした治療が可能になり、乳がんの発症予防、早期治療が実現するという。

研究グループのおもなメンバーは、金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構の後藤典子教授、東京医科大学分子病理学分野の黒田雅彦主任教授、東京大学医科学研究所の東條有伸教授(研究当時)、東京大学特命教授・名誉教授の井上純一郎教授、国立がん研究センター造血器腫瘍研究分野の北林一生分野長、九州大学病態修復内科学の赤司浩一教授、慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門の佐谷秀行教授ほか。

IPAが「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の参加者募集を開始

IPAが「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の参加者募集を開始

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は10月13日、量子コンピューティング技術の普及と啓発を目的とした「量子コンピューティング技術実践講座(ゲート式)」の開催を発表した。量子コンピューティング(ゲート式)について学びたい、おもに学生や社会人を対象に、量子コンピューティングの研究開発に携わる専門家を講師に招き、全3回の日程で行われる。参加費は無料。申し込みは、connpassのページより登録。申し込み締め切りは2021年10月25日午後6時。

講演では、量子コンピューティング(ゲート式)の基礎を学ぶ。内容は、専門家による講演、「未踏ターゲット事業」修了生による実例講演、量子プログラムコンテストなど教育機会の紹介、ツールやユーティリティに関する包括的な講義などとなっている。最後に受講者は、自身で行うプロジェクトを想定したプレゼンテーションを行い、講師が講評する。「量子コンピューティングの最新事例に関する知識やプロジェクトアイデアを創出する方法が学べます」とのことだ。

開催概要

  • 日程
    第1回 2021年11月5日18:30~21:00 オンラインによる講義形式
    第2回 2021年12月3日18:30~21:00 オンラインによる講義形式
    第3回 2022年1月16日10:00~18:00 オンラインでのプレゼンテーション
  • 定員:30名(応募多数の場合は抽選)
  • 参加費:無料
  • 応募条件:オンライン受講できるインターネット環境とPCを用意できること。第1回から3回まですべて参加できること(Pythonによる基本的なプログラミングの経験が前提とされている)。一部だけの受講は不可
  • 講師
    佐藤貴彦氏(慶應義塾大学量子コンピューティングセンター 特任講師)
    鈴木泰成氏(日本電信電話コンピュータ&データサイエンス研究所研究員)
    渡辺日出雄氏(日本アイ・ビー・エム東京基礎研究所 部長、工学博士)
  • 申し込み方法connpassのページより登録を行う。締め切りは2021年10月25日午後6時

アジェンダ

  • 第1回
    ・量子コンピューティング技術における課題と取組み(渡辺日出雄氏)
    〜本領域の課題と取り組みのオーバービュー
    ・未踏ターゲット修了生講演
    ・量子コンピューティング教育に関する取組み(佐藤貴彦氏)
    〜量子プログラムコンテスト、入門用教育に関する事例紹介
  • 第2回
    ・未踏ターゲット修了生講演(矢野碩志氏/真鍋秀隆氏)
    ・量子コンピュータ利用環境に関する課題(鈴木泰成氏)
    〜ツールやユーティリティに関する包括的課題
  • 第3回
    ・受講生によるプロジェクト案プレゼンテーション(佐藤貴彦氏、鈴木泰成氏、渡辺日出雄氏)
    ・講評

慶應が通信エラーフリーのプラスチック光ファイバー開発、データセンター通信の次世代標準PAM4伝送を誤り訂正なしで成功

慶應が通信エラーフリーのプラスチック光ファイバー開発、データセンター通信の次世代標準PAM4による通信に誤り訂正なしで成功

慶応義塾大学の慶応フォトニクス・リサーチ・インスティテュート(KPRI)小池康博教授らの研究グループは、通信エラーをほとんど発現しないプラスチック光ファイバー(エラーフリーPOF)を開発したことを発表した。100m以内の短距離通信において、データセンター通信の次世代標準となるPAM4(4値パルス振幅変調)方式による毎秒53ギガビットの信号の伝送を、誤り修正機能を使うことなくエラーフリーで実現した。

光ファイバーは、通信速度が上がるにつれ、光の拡散やノイズの影響が大きくなり、誤データを補正する誤り訂正機能や波形成型回路が必要となることから、それによる消費電力の増大や通信の遅延が問題になっている。大量の高速通信が求められるデータセンターなどでは、電線に比べて格段に低損失なガラス光ファイバーが使われているのだが、光ファイバーには光伝送固有のノイズや問題が存在し、PAM4導入のネックになっている。通常、デジタル通信は0と1の2値で行われるが、PAM4では0、1、10、11の4値で行うため、通信速度が格段に高くなる代わりにノイズの影響を受けやすくなるのだ。

光ファイバーにはガラスとプラスチックの2種類がある。プラスチック光ファイバーは、安価で柔軟性が高く、信号強度がガラス光ファイバーよりも高いという利点がある一方で、光通信で問題となる光の散乱はガラスのほうが低く、特に長距離通信ではガラスが優れている。しかしKPRIでは、かねてより「屈折率分布型プラスチック光ファイバー」を提案しており、それをさらに進めて「内部にミクロ不均一構造を形成し、前方光散乱を介して効果的なモード結合を誘起する」ことによりノイズや歪みを大幅に低減した。そうして、高速性と低雑音性を兼ね備えたエラーフリーPOFが誕生した。

エラーフリーPOFは、通信の遅延、発熱、コスト上昇の原因となる補正回路がいらなくなるばかりか、データセンターの省電力化、自動運転車や作業用医療用ロボット、さらには8Kなどの大容量映像データ伝送に欠かせないリアルタイム通信が実現し、「次世代情報産業を支えるコアテクノロジーになる」とKPRIは話している。
慶應が通信エラーフリーのプラスチック光ファイバー開発、データセンター通信の次世代標準PAM4による通信に誤り訂正なしで成功

Diver-Xが寝ながら使う据え置き型VRデバイスHalfDiveの開発発表、3000万円の資金調達も

人が基底状態にいながらにして(つまり布団の中で寝ながら)最大限の行動、体験ができるような世界を目指すというDiver-X(ダイバーエックス)は9月13日、寝ながらの使用に最適化したVRデバイス「HalfDive」(ハーフダイブ)を発表した。2021年11月6日から、クラウドファンディングKickstarterでの支援者募集を行う予定。価格はベーシックモデル(8万円程度)、フルセット(12万円程度)、可変焦点機能対応モデル(40万円程度)を想定している。ハンドコントローラーは9月末にYouTubeで情報公開予定。また同時に、DEEPCOREを引受先とし、シードラウンドにおいて第三者割当増資による3000万円の資金調達実施も発表した。

現在普及しているVRヘッドマウントディスプレイ(VR HMD)は、そのほとんどが装着して動き回ることが想定されているため、小型化・軽量化に重点が置かれている。それに対してHalfDiveは、寝ながら使うことに最適化した据え置き型なので、小型軽量のための性能上の制約を受けない。

主な特徴は次のとおり。

最大134度の視野角と映像美を実現する可変焦点機能(最上位モデル)に対応する独自光学系

フレネルレンズを使用した通常のVR HMDとは異なり、10枚の非球面レンズを組み合わせることで、フレアや映像の歪みをなくし、最大134度の視野角と鮮明な映像を両立。最上位モデルには可変焦点機能も搭載される。

球状の筐体を活かした没入型サウンドシステム

頭全体を覆う球状の筐体に合計4つのスピーカーを配置し、没入感のあるサウンドを提供。

多数の感覚フィードバック

2基のファンによる風フィードバックにより、顔に風を感じさせることで没入感の高いVR体験を提供する。送風で装着者の快適性を保つこともできる。

またワイヤーを用いた力覚フィードバックにより、VR空間内で物に触れる感覚、剣で切った感覚、摩擦感などを表現する。

エキサイターを用いた振動フィードバックでは、モンスターの足音、銃声、環境音などの振動を伝える。

足コントローラーおよびエミュレーションシステムでは、左右の足首の傾きでアバターの動作をエミュレート。寝ていても立っているときと同じ動作表現が行える。

モジュラーおよびオープンソース設計

据え置き型なので、感覚フィードバックモジュール、無線通信モジュールなどの拡張モジュールによる増設が可能。筐体側面には拡張モジュールを接続するためのRJ45端子とねじ穴が存在する。

モジュールの設計や通信プログラムはオープンソース化する予定なので、サードパーティーやユーザーが独自のモジュールを開発できる。これにより「より質の高いVR体験の実現に向けたエコシステムの構築」を目指す。

「布団に入ったまま学校に行きたい、仕事を終わらせたい。誰しも一度は考えた事があると思います」とDiver-Xは話す。さらに「完全据え置き型という時代に逆行した、寝ながらに最適化しているからこその長所を最大限に生かし、これまで小型化軽量化のトレードオフの中で切り捨てられきた多くの機能やインターフェイスを実装し、新たな体験を生み出す」という。

だが、単に楽をするための機器ではなく、想定されるユースケースには医療や介護のための利用法も含まれている。寝たきりの人が社会活動できる機会が広がる可能性がある。

Diver-Xは、慶応義塾大学在学中の迫田大翔氏とコロンビア大学在学中の浅野啓氏が2021年3月に共同創業したスタートアップ。「布団の中に居ながらにして学校にいるのと同等の体験、職場にいるのと同等の生産ができるようになれば、人類のQOLは大きく向上するはず」と彼らは言う。「そこで得られる価値、体験が同じであるならば、人はよりモチベーションが低くとも実行できる手段をとるはずであり、必要なモチベーションが低ければ低いほどより多くの物事に対して働きかけられるようになると仮定するならば、寝ながらという人間にとっての基底状態は、もっとも行動に適した状態である」とのことだ。

仕様

    • 自由度:4.5dof
    • 光学系:合計10枚の非球面レンズを用いた独自の光学系(可変焦点機能に対応)
    • 最大視野角:水平約134度
    • 解像度:片目1600×1440px 両目3200×1440px
    • リフレッシュレート:90Hz以上
    • ダイアル式物理IPD調節:58~82mm
    • オーディオ:4つのスピーカーを用いた没入型サウンドシステム
    • マイク:単一指向性コンデンサマイク
    • コントローラー:両手・足コントローラー
    • トラッキング:LightHouse対応・足コントローラーよるアバター動作エミュレーションシステム
    • カメラ:キーボードオーバーレイシステム
    • インターフェース:DisplayPort 1.2、USB 2.0/3.0、3.5mmオーディオジャック、12V電源、RJ45(I2C:モジュール接続)
    • プラットフォーム:SteamVR完全対応(OpenVR・OpenXR)
    • SDK:Unity(VRchat専用機能あり)、Unreal Engine

iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

iPS細胞で動物再生医療を推進するバイオテック領域スタートアップVetanic(ベタニック)は7月15日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による総額1億5000万円の資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブが運営するKII2 号投資事業有限責任組合、QBキャピタルおよびNCBベンチャーキャピタルが共同で運営するQB第ニ号投資事業有限責任組合。

同社によると、ヒトで実用化が進む再生医療は、獣医療においても普及が望まれているものの、現在は設備要件を満たした少数の動物病院において実施されているのみで、品質のバラツキや治療開始までのリードタイム、また高額な治療費など、普及に向けた課題が存在するという。

そんな中Vetanicは、日本大学と慶應義塾大学との共同研究により、「世界で唯一の臨床応用に適したイヌiPS細胞の作製」に成功した(iPS細胞作製方法は両大学の共同出願として、PCT特許出願中)。これは「病原性となり得るウイルスを利用しない、免疫反応を惹起してしまう異種の動物成分を用いずに安定的・高効率で誘導できることから、安全性が高く高品質な真の『臨床グレード』と呼べるiPS細胞」とのこと。また、この独自のイヌiPS細胞を起原として、イヌの間葉系幹細胞(MSC)の誘導に成功した。同社はこのMSCを用いた再生医療の実用化を目指し、研究開発を推進するとしている。

iPS細胞で犬をはじめ動物再生医療に取り組む、日本大学・慶應義塾大学発「Vetanic」が総額1.5億円を調達

Vetanicの技術で構築した臨床グレードのイヌiPS細胞

間葉系幹細胞(MSC)とは、体にもともと備わっている幹細胞の一種で、増殖能が高く、神経、脂肪、骨、血管などに分化できる細胞。Vetanicの技術は、脂肪組織由来のMSCとは異なり、ドナー動物に依存しないため倫理的で、動物の身体的負担がなく、治療開始までのリードタイムも短縮できるなど、これまでの再生医療の課題の数々を克服している。

今後は、イヌiPS細胞由来間葉系幹細胞の開発を加速させ、「MSC以外の各種再生医療等製品の開発にも順次着手する」という。

関連記事
脚を失ったヒゲハゲタカが鳥類で初めて特殊な骨インプラントを直接埋め込む義肢を得た「バイオニックハゲタカ」に
ねこ用スマートトイレ「Toletta」が本体無料&アプリ月額料金1078円で利用可能に、トレッタキャッツがリニューアル
スマホでペット保険金を請求できる「アニポス」が約1.1億円を調達、開発運営体制を強化
首輪型猫用ロギングデバイス「Catlog」が猫の食事バランスを見守る「Catlogフードケア」開始
ペット業界に特化したTYLが獣医師往診サービス「anihoc」開始、往診料金税込5500円
麻布大学が獣医学系で国内初のVR活用教育を開始、獣医外科学実習の授業に採用

カテゴリー:バイオテック
タグ:iPS細胞(用語)医療(用語)MSC / 間葉系幹細胞(用語)慶應義塾大学(組織)再生医学・再生医療(用語)日本大学(組織)Vetanic(企業)ペット(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題解消を支援、一般的な3Dプリンターで作れる筋肉注射練習モデルが開発・公開

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題解消を支援、一般的な3Dプリンターで作れる筋肉注射練習モデルが開発・公開

掲載写真は手技確認時のイメージのため、手袋の着用は省略している

慶應義塾大学SFC研究所は7月12日、同大学看護医療学部 宮川祥子准教授らが、3Dプリンターで作れる製筋肉注射練習モデルを開発し、その設計データ・作り方・使い方に関する説明書を特設サイトで公開したと発表した。ライセンスは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-SA 3.0)。

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題への対応として、職場を離れている看護師、いわゆる「潜在看護師」の活用が求められているが、長期間現場を離れている看護師がなんの準備もなくいきなりワクチン接種業務に就くのは難しく、協力を得にくいという課題がある。そこで、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」が支援し、慶應義塾大学を中核拠点とする「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」が、上腕三角筋への筋肉注射の練習ができるモデルを生み出した。

今回の開発の中心となった宮川准教授は、かねてより「FabNurse(ファブナース)プロジェクト」を推進し、看護、介護分野にターゲットを絞った3Dプリンターを用いた「ケアのものづくり」による課題解決を研究してきた人物だ。

このモデルは、すでに臨床経験のある(初学者ではない)看護師が上腕への筋肉注射を練習するものとしており、以下の特徴がある。

  • 一般的に販売されている3Dプリンターで出力が可能
  • 肩峰に触れることができ、注射の部位(肩峰から三横指下)を確認することが可能
  • 実際に針を刺して、液を注入することが可能
  • 3Dの設計データは無償で使用することができ、改変可能
  • 作成方法・使用方法に関する説明書が添付されている

このデータは無料で公開されているが、CC BY-SA 3.0ライセンスに基づき製造販売も可能とのこと。ただし、「販売する場合は、新型コロナウイルス対策への貢献という趣旨に鑑み、適正な価格での販売をお願いします」と宮川准教授は話している。

関連記事
電脳交通の配車システムをてだこモビリティサービスが採用、乗合機能でワクチン接種者の無料移動サービスを運行管理
STORES 予約を活用した「ワクチン接種予約システム」をANA、森トラスト、損保ジャパン、近畿大学などが採用
Coral Capitalが投資先スタートアップ向けに新型コロナワクチン合同職域接種の開始を発表
夜間・休日の往診サービス「コールドクター」が企業向け「職域接種」ワクチン接種業務を行う医師・看護師紹介を開始
位置情報関連ソリューション提供のGeoloniaがMedical DOCの「新型コロナワクチンマップ」開発に貢献
ネットショップ開設サービス「STORES」が「STORES 予約」活用の「ワクチン接種予約システム」無料提供開始
新型コロナウイルスのワクチン接種会場や大規模接種センター周辺の駐車場を予約できる特設ページが公開
ジョリーグッドと順天堂大学が新型コロナ診療病棟の完全再現VRを共同開発、医学生に実習の場提供
新型コロナワクチン輸送にHacobuの動態管理サービス「MOVO Fleet」が採用、トラック位置情報を可視化
健康保険が適用可能な夜間・休日の往診サービス「コールドクター」が新たに大阪エリアでも往診開始

カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)慶應義塾大学(組織)新型コロナウイルス(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)ワクチン(用語)日本(国・地域)

慶應発スタートアップOUIのiPhone装着型眼科診察機器「Smart Eye Camera」がEUで医療機器登録

慶應発スタートアップOUIのiPhone装着型眼科診察機器「Smart Eye Camera」がEUで医療機器登録

慶應義塾大学医学部発のスタートアップ企業OUI(ウイ)は6月11日、iPhoneに取り付けて眼科診察を可能にするアタッチメント型医療機器「Smart Eye Camera」(SEC)が欧州連合地域(EU)で医療機器登録を行い、EU指令・規則における必須要求事項に適合したことを示すCEマークの表示(CEマーキング。Conformité Européenne)が可能となったと発表した。

慶應発スタートアップOUIのiPhone装着型眼科診察機器「Smart Eye Camera」がEUで医療機器登録

SECは、すでに日本国内での医療機器として登録済み。眼科医の駐在がない離島におけるドクター to ドクターでの遠隔相談や、医療機関を訪問できない患者さんに対しての訪問診療で使用されているそうだ。また、アジア・アフリカ地域をはじめとする世界10カ国以上で、現地の眼科医・NGO・医療機関・国際機関と協力して、様々なパイロット実証を行っている。国際的な認知度の高いCEマーキングにより、欧州市場のみならず、これら地域においてもSECに対する認知度・信頼度がさらに高まることが期待できるという。

OUIは、今後も国内外の多様なパートナーと連携しながら、SECを国内外に広めることで2025年までに世界の失明を50%減らすことを目指す。

OUIは、「医療を成長させる」を理念に、慶應義塾大学医学部の眼科医が2016年7月に立ち上げたスタートアップ企業。眼科の診察を可能にするiPhoneアタッチメント型医療機器SECをゼロから開発し、約1年半で完成させた。iPhoneのカメラと光源を利用した眼科診療機器は本邦初としており、動物実験の結果およびヒトの眼を使用した臨床研究の結果にて、既存の細隙灯顕微鏡と同等の性能があることが証明されているという(Evaluation of Nuclear Cataract with Smartphone-Attachable Slit-Lamp DeviceSmart Eye Camera: A Validation Study for Evaluating the Tear Film Breakup Time in Human Subjects Translational Vision Science & Technology April 2021, Vol.10, 28.など)。

世界の失明原因第1位は白内障とされており、白内障は適切な時期に治療をすれば失明に至らない可能性が高いにもかかわらず、発展途上国においては白内障による失明が社会問題となっている。SECは、iPhoneに取り付けて使用する小型な医療機器であるため、電気のない地域や被災地など場所を選ばず眼科診察を可能にするとしている。

関連記事
眼科遠隔診療サービス提供のMITAS Medicalが資金調達、チーム強化やデバイス・AI開発加速
自治医大発スタートアップが眼科向けAI診断支援ソリューションを提供開始

カテゴリー:ヘルステック
タグ:iPhone(製品・サービス)医療(用語)OUI(企業)慶應義塾大学(組織)日本(国・地域)

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

アップルの開発者イベントWWDC 2021は、日本時間6月8日午前2時から始まります。世界開発者会議WWDCといえば、 iOS / macOS / watchOS等の新機能に加え、これから登場するデバイスやサービスの可能性をいち早く開発者に紹介する場です。

「アップル史上もっともパーソナルな製品」として2015年に登場した Apple Watch も、世代を重ねるごとに心電計や血中酸素濃度計、睡眠計測など新たな機能を導入し、フィットネスやヘルスケアの分野で新たなアプリやサービスの可能性を開いてきました。

WWDC 2021を前に、そうしたアップルのテクノロジーで社会を変える取り組みとして、一般のApple Watchユーザーを対象にした心疾患の臨床研究アプリ Apple Watch Heart Study をリリースした慶應義塾大学医学部の循環器内科特任講師 木村雄弘先生にお話をうかがいました。

ウェアラブルで心疾患の早期発見を目指す

まずは臨床研究 Apple Watch Heart Study と同名のアプリについて。慶應義塾大学医学部が2021年2月から開始した Apple Watch Heart Study は、Apple Watch の睡眠計測・心電図記録・心拍計と、着用者が手動で回答する質問表を組み合わせて「心電図はいつ計測するのがもっとも有効なのか?」を解明するための研究。

Apple Watch は日本国内では2021年1月末に心電図アプリが解禁されましたが、常時着用するウォッチでも心電図は常時計測できないため、ユーザーが手動でアプリを起動して30秒間指を当てる必要があります。

しかし木村先生によると、たまたま心電図をとったときに異常が見つかることは稀。心筋梗塞などの予防には、異常が出ているときの心電図が手がかりとして役立ちますが、診療に役立つタイミングで都合よく取得できるとは限りません。

「調子が良いときに測っても良いと出るのは当たり前。一度計測して結果が良かったからといって、必ずしも病気がないって話にはならないんですね。いかに異常があるときを捉えるか? が非常に大事で、その心電図一枚で治療の方針が変わることもあります」(木村)。

Apple Watchで心疾患発見を目指す、慶應医学部 木村雄弘先生に訊く(WWDC 2021)

Apple Watch

Apple Watch Heart Study ではこの問題に対して、Watchの心拍計と睡眠検出、毎朝の質問票、自覚症状があった場合に手動入力する動悸記録を組み合わせて、ライフスタイルや生活パターンとの関連性を見つけ出し、将来の心疾患予防や診断に役立てることを狙います。

対象は一般のApple Watchユーザーすべて(20歳以上、日本語が理解できること。心電図記録は22歳以上)。具体的には、アプリをインストールして説明の確認と同意を済ませたら、あとは毎晩就寝時にApple Watchを着けること、毎朝質問票に答えること、もし脈が飛んだ、胸が痛い等の症状があったら手動で選択肢を選んで入力することで参加できます。今回の取り組みで収集するのは7日分のデータ。

一般のApple Watchユーザーを対象とした研究とは別に、慶応義塾大学病院で心房細動患者を対象にした研究も実施しています。そちらでは臨床の現場で使われる医療機器での計測と、Apple Watchを使ったデータとを比較し、機械学習で不整脈が発生しやすい条件を推定するアルゴリズムを構築します。一般のApple Watchユーザーを対象とした研究は、この患者グループの研究で得られたアルゴリズムが一般にどれほど適用できるのかの答え合わせともいえます。

あくまで臨床研究へ協力するためのアプリなので、参加しても個人の診療に役立ったり、健康改善につながるわけではありません。ただし記録へのモチベーション維持のために、毎日の計測結果には睡眠中・日中の心拍数などを元にシンプルなロジックで生成された「コメント」がつくため、睡眠中の心拍傾向を見て飲酒・寝不足などを見直す契機にはなるかもしれません。

医療のDXとWWDCへの期待

Apple Watch Heart Study の実務責任者である木村先生と、アプリを開発した株式会社アツラエの担当者お二方にお話をうかがいました。

Apple Watchを使った臨床研究に取り組んだきっかけは?

・個人的に、Apple Watchは心拍計が使える初代モデルから利用していた。健康のためを意識しなくても、時計として着けているだけで心拍や運動など役立つデータを常時記録できることが大事。

・一度の検査だけではなかなか分からない。「病院で良い検査結果を出そうと思うと、たとえば一週間酒を止めたとか、そういうことができてしまうんですよ」。家庭で実際にどういう生活をしているかを医療に反映させるためには、常時計測できるApple Watchを使う必要がある。

・特に心電図アプリケーションについては、医療機器ではないApple Watchである程度信頼できるデータが取得できる、本当に革命的なことが起きた。一回測って終わりではなく、継続して有意義に使ってもらうにはどうするか、が今回の研究に至る経緯。

心疾患は高齢者に多いと思いますが、Apple Watchを着けている高齢者は多くありませんね

「高齢者こそApple Watchだ!と思います」。慶應で臨床研究をする際は、意図的に高齢の方にお願いすることもある。たしかに操作から覚えてもらう必要はあり、利用者と医療従事者の双方にもっとデジタルリテラシーが必要になるが、自分の健康状態を意識するきっかけにもなる。高齢者こそ使ったほうが良いんだよ、ということを啓発していきたい。

高齢者といえば、Watchを使った「見守り」のアプリケーションについてはどうでしょうか

・ICT技術的には非常に簡単。医療者としても、電子カルテにプラスアルファのヘルスケアデータとして管理できれば非常に有用。

・ただ簡単にできたとしても、異常があったときに誰が対応するのか、具体的にどこまでの緊急性をもって対応するのか? など、リソースの配分やマネジメントをどうするかのルールが統一できていない。体制づくりが必要。

(注:Apple Watchを使った見守りサービスを独自に提供している企業はあります)

セコムがApple Watchで見守りサービスなどを開発。今年秋より順次提供

アプリ作成について。実際のアプリ開発を担当したアツラエとはどんなふうに仕事を進めたんでしょうか。苦労した点があれば教えてください

・ユーザーからすれば、医学研究って堅苦しいとか、たくさん質問票が出てきて面倒くさい! といった点が問題になる。打破するにはユーザーインターフェース、UXできれいなデザイン性を持たせることが重要。それができるデベロッパーを探していて辿り着いたのがアツラエ。研究参加にあたっての同意など、必須のステップをユーザーフレンドリーに構築していただけた。苦労としては、オンラインの打ち合わせを中心に進めざるを得なかったこと。(木村)

・アツラエは前身の会社に遡れば2008年から、クライアント向けのiOSアプリ開発をお手伝いしてきた。iOS / iPadOSと使いやすいデザインには自負もあった。苦労したのは、このコロナ禍でなかなか先生にもお会いできずオンライン打ち合わせで進めたこと。

・UI、UXの開発については、木村先生が求めるものに対してどこまで省略できるのか、遊びをもたせるか、を汲み取るのが重要だが、対面ならば表情や口調も大きな手がかりになる。オンラインでは、本当に喜んでくれているのだろうか? ユーザーに役立つものができているのだろうか? を探り探りで進める必要があった(アツラエ有海)。

・技術的には、開発時点で国内での心電図アプリケーションがまだ解禁されておらず、テストに苦労した(アツラエ早川)。

(日本国内での心電図アプリケーション解禁は1月22日、Apple Watch Heart Studyアプリ配信はわずか一週間後の2月1日)

今回の臨床研究で得られた成果は、今後具体的にどのような形で活かされるのか。「心臓病予防アプリ」への課題は

「最終的な結果はただ研究で終わらせることなく、医療のDXとして提供できるような形を考えています」(木村)。一つ大きな壁は、医学的なアドバイスや計測結果を出すとして、どこまで言えるのか、(認可的な意味で)医療機器の扱いになるか否か。診断を与えることではなく、日々の生活を見守り、自分の変化に気づかせることがおそらく一番重要。長い時間をかけて医療機器を作るんだ! ではなくても、ヘルスケアに貢献できるソリューションは色々ある。

・必ずしも医療機器の精度でないとしても、個々のユーザーに対していま測ったほうがいいのかな、いま病院にいったほうがいいかなという気づきを与えること。知らないうちに見守られていて、変化を教えてくれるものが増えていけば、早期発見や健康寿命に貢献していくことになる。今回の研究も、ソリューションはとしてはそうしたところを目指したい。

Apple Watch Series 6からは、医療機器としての数字ではないものの「血中酸素ウェルネス」でSpO2も取得できるようになりました。今後さらにこんなデータが取れればと期待しているものは

・色々とうわさはあり、今度のWWDCでもジェスチャ検出など新しいものが出てくるようだが、大事なのは同じ機械で計測し続けること。

・計測したデータに医療機器と同じ精度があるかどうかまで立ち戻らなくても、同じ機器で計測し続けた変化量は、その個人にとっては評価できるものになる。もちろん、これが欲しいあれが欲しいという期待はあるが、いずれにしても個人に紐付けられたデータであれば非常に貴重なものになると考えている。

次のWWDCへの期待をお願いします

「WWDCには毎年驚かされていて、素人ながら分かる範囲の開発者向け動画はすべて見るようにしています」。毎年大幅に変わるが、今回のアプリでも睡眠計測やウィジェットなど、新しい機能をできるだけ使うようにお願いした。うわさの血糖値やジェスチャは大変興味深いと思っている。(木村)

・アクセシビリティ・デイで発表済みのジェスチャ操作はどうなるのか、自分たちのアプリに組み込めるか? は注目。日本国内のアプリはアクセシビリティが行き届いていないことが多く、いちデベロッパーとして注目していきたい。過去でいえば、watchOS 2でガラリと変わったこと、6でできることが一気に増えたのが印象深い。Apple Watchのアプリ開発は今後もっと注目されてくるのではないかと思っている(アツラエ早川)。

・プランニングの観点から。毎年WWDCの時期には、クライアントから自社のアプリにこの新機能は使えるんじゃないか、どう変わるのかと問い合わせや提案が増える。応えるためにいち早くプロトタイピングをしたり、社内でディスカッションするのが恒例行事 (アツラエ有海)。

WWDC 2021 のキーノートは日本時間で6月8日午前2時から。Engadgetでも速報体制でお伝えします。

病院がアプリを処方する時代。iOS活用で進む未来の医療
Apple Watch Heart Study

Engadget日本版より転載)

関連記事
慶應病院が全国のApple Watchユーザーを対象とする睡眠中・安静時の脈拍に関する臨床研究開始
Googleが感染症の数理モデルとAIを組み合わせた都道府県別の新型コロナ感染予測を公開、慶応大監修
IBMが量子コンピューターの競技型オンライン・プログラミング・コンテスト開催、慶応大とコラボ

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Apple / アップル(企業)Apple Watch(製品・サービス)医療(用語)慶應義塾大学(組織)ビッグデータ(用語)日本(国・地域)

慶應大病院が全国のApple Watchユーザーを対象とする睡眠中・安静時の脈拍に関する臨床研究開始

慶應義塾大学病院が全国のApple Watchユーザー対象とする臨床研究開始、App Storeでアプリ配信

慶應義塾大学病院は2月1日、全国を対象とするApple Watchヘルスケアビッグデータの構築と医学的な網羅的解析を目的に、Apple Watchを利用した臨床研究「Apple Watch Heart Study」の開始を発表した。研究責任者は副病院長陣崎雅弘氏、実務責任者は循環器内科特任講師木村雄弘氏。

同院独自の研究用iPhoneアプリケーション「Heart Study AW」は、App Store(日本)よりダウンロード可能。同臨床研究の対象者は以下の通り。また参加同意後、いつでも自身の意思で同意を撤回し、参加を取りやめられる。

  • 日本語を理解できる20歳以上の日本国民の者
  • iPhone(iOS 14.0以降)、Apple Watch(watchOS 7.0以降)の利用者
  • 上記を利用し、App Store(日本)から研究アプリケーション「Heart Study AW」をダウンロードできる者
  • 同研究の参加に同意できる者
  • Apple Watchを睡眠中7日間装着し質問票に回答できる者

慶應義塾大学病院は、今回の臨床研究について類を見ない試みとしており、今後家庭でのデジタルヘルスケアと適切な医療との連携に貢献することが期待されるという。なお、本臨床研究は慶應義塾大学病院が行うもので、Appleが共同研究などで関与するものではない。

同院は、日常生活で着用し、血中酸素ウェルネスや脈拍数などの生体情報を自動的に計測・記録できるApple Watchが、心電図アプリケーションで心電図も記録できるようになり、家庭で可能な予防医療の幅が広がりつつあると指摘。同種の機器が取得するデジタルヘルスケア情報を医療に橋渡しするには、これら情報を集約したヘルスケアビッグデータベースを構築・解析して実際の医療に応用できる情報を抽出することが必要とされるという。

そこで同臨床研究では、Apple Watchの心電図アプリケーションで測定する心電図や脈拍などの様々なヘルスケアデータと、同院独自の研究用iPhoneアプリケーション「Heart Study AW」(App Store)で収集する睡眠・飲酒・ストレスなどに関する調査データを解析することで、睡眠中・安静時の脈拍と生活習慣との関連について、分析を行う。

また、アプリケーション経由でなされる「脈がとぶ」「脈が速い」などの動悸の申告を元に、心電図やヘルスケアデータの変化を解析するという。

心電図は心臓に異常がある時に記録することが重要なものの、病院での限られた検査時間中に症状や異常が現れない場合、病気を検出することが困難という。同研究により、家庭でApple Watchのような機器を使用し的確に心臓の異常を記録できるタイミングはどのような場合であるのかが明らかになり、病気の早期発見につながることが期待されるとしている。

同院に通院する患者対象の研究と、全国のApple Watchユーザー対象の研究の2種類で構成

同研究は、対象者の異なるふたつの研究から構成。そのうちひとつは、「Apple Watch Heart Study慶應義塾版」を利用したもの。同院に通院する心房細動患者の協力のもと、臨床現場で使用している心電図検査(2週間。Holter心電図、携帯型心電図)と、Apple Watchおよび心電図アプリケーションから得られる脈拍データと心電図との比較を行う。

また、ヘルスケアデータを睡眠・飲酒・ストレスとの関係に関して人工知能で解析し、どのような時に不整脈になりやすいかを推定するアルゴリズムを構築する。

全国のApple Watchユーザーを対象とした「Apple Watch Heart Study」では、睡眠中および可能な範囲での日中安静時のApple Watch装着と、動悸などの症状の記録の協力(7日間)を依頼。

慶應義塾大学病院が全国のApple Watchユーザー対象とする臨床研究開始、App Storeでアプリ配信

Apple Watchで収集するデータを活用し、日本におけるヘルスケアビッグデータの構築と解析を行うとともに、慶應義塾版で開発するアルゴリズムを一般国民のデータに対して適用。生活スタイルや申告された症状のデータに焦点を置いた解析を行うことで、適切な精度となるよう評価・改修を行う。

収集したデータは、学会や論文での発表を予定。取りまとめられた情報を医学雑誌、データベース(UMIN-CTR)上などに公表する場合には、統計的な処理が行われ、個人の情報は一切公表しないとしている。

なお同研究は、慶應義塾大学病院が内閣府より受託している戦略的イノベーション創造プログラム「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」研究開発事業(研究責任者:病院長 北川雄光)として実施。Apple提供の臨床研究用フレームワークを利用したアプリ開発の技術的サポートをAppleから受けている。また、ジョンソン・エンド・ジョンソングループBiosense Webster, Inc.のInvestigator-Initiated Study Programからの資金提供および指定寄附の支援によって実施される。

関連記事
大学VCの慶應イノベーション・イニシアティブが2号ファンドを103億円で募集終了
Googleが感染症の数理モデルとAIを組み合わせた都道府県別の新型コロナ感染予測を公開、慶応大監修
慶應義塾大学 岩本研究室とEdMuseがブロックチェーン基盤ID証明関連ビジネスモデルに関し協働研究
IBMが量子コンピューターの競技型オンライン・プログラミング・コンテスト開催、慶応大とコラボ
Apple Watch Series 6ファーストインプレッション、血中酸素計測機能と新バンド・ソロループに注目
watchOS 7パプリックベータを検証、待望の睡眠追跡機能の実力は?

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Apple / アップル(企業)Apple Watch(製品・サービス)医療(用語)AI / 人工知能(用語)慶應義塾大学(組織)ビッグデータ(用語)日本(国・地域)

大学VCの慶應イノベーション・イニシアティブが2号ファンドを103億円で募集終了

大学VCの慶應イノベーション・イニシアティブが2号ファンドを103億円で募集終了

大学ベンチャーキャピタル(VC)の「慶應イノベーション・イニシアティブ」(KII)は1月25日、2号ファンドの募集を総額103億円で1月22日に終了したと発表した。中小企業基盤整備機構をはじめとする追加出資者の参加により、2号ファンドの総額は1号ファンドの約45億円から2倍以上に拡大した。

KII2号ファンドへの追加出資者(有限責任組合員)

  • 機関投資家、金融機関:中小企業基盤整備機構、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行、極東証券、三菱UFJキャピタル
  • 事業会社:エーザイ
  • 起業家:金當一臣氏

2号ファンドは2020年1月より運用を開始し、2021年1月25日現在5社に対して投資を実施済み。20〜25社程度への出資を計画しているという。

投資対象は、慶應義塾大学をはじめとする大学や研究機関などの優れた研究成果を活用したスタートアップ。シード・アーリーステージからリード投資家として支援を行っていく方針としている。

KIIは、スタートアップへの投資育成を通じて日本が誇る大学などの研究機関の技術や知的財産といった優れた研究成果の社会実装を推進し社会貢献の一翼を担うと同時に、VCファンドとして高い収益性を確保し持続的なイノベーションエコシステムの構築に取り組んでいくとしている。

KII2号ファンドの概要

  • 名称:KII2号投資事業有限責任組合
  • 投資対象:慶應義塾大学をはじめとする大学、研究機関等の成果を活用したスタートアップ企業
  • ファンド総額:103億円
  • 運用期間:2020年1月24日より10年間(最大2年の延長可能性あり)

KIIでは、2016年7月に開始した約45億円の1号ファンドより慶應義塾大学の研究成果を活用した企業や卒業生が設立した企業19社に対して投資を実施。代表的な投資例としては、2020年12月に東京証券取引所マザーズに上場した創薬ベンチャーのクリングルファーマや、日本で最初にデジタル治療薬として承認されたCureApp、2020年に最も企業価値が増加した未上場企業である次世代バッテリー製造のAPB、2020年12月に人工衛星の実証機を打ち上げた宇宙ベンチャーのSynspectiveなどがある。

関連記事
次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」開発のAPBが追加調達、福井県での第一工場設立目指す
Rocket Labが東京の宇宙スタートアップSynspectiveの衛星打ち上げに成功
「治療アプリ」開発のキュア・アップ、Beyond Nextなどから3.8億円の資金調達
7月設立の慶大初のVC「KII」の投資1号は、AI開発の「カラフル・ボード」

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:慶應イノベーション・イニシアティブ / KII慶應義塾大学(組織)VC / ベンチャーキャピタル(用語)日本(国・地域)

慶應義塾大学 岩本研究室とEdMuseがブロックチェーン基盤ID証明関連ビジネスモデルに関し協働研究

慶應義塾大学 岩本研究室とEdMuseがブロックチェーン基盤ID証明関連ビジネスモデルに関し協働研究

暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、過去1週間分について重要かつこれはという話題をピックアップしていく。今回は2020年11月15日~11月21日の情報から。

慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 岩本隆研究室(岩本研究室)EdMuseは11月17日、HR(Human Resources)テック分野におけるブロックチェーン技術を活用したビジネスモデルの協働研究の開始を発表した

HRテックとは、クラウドやAI、データ解析など最先端テクノロジーを活用する人事・採用・育成から組織マネジメントなど人事関連業務に適用する技術。近年、日本の人手不足問題が深刻となる中で、岩本研究室とEdMuseは人材難という社会課題解決に向けて、HRテック分野における分散型台帳技術(DLT)を活用したビジネスモデルの協働研究を開始した。

岩本研究室の岩本隆特任教授は、「技術」「戦略」「政策」を融合させた「産業プロデュース論」を専門領域として、新産業創出に関わる研究、HRテック分野における第一人者。

EdMuseは、ブロックチェーンを用いて人々のアイデンティティである個人情報や学歴証明、技能評価試験結果などを含めた、人材のID証明に取り組んでいる。すでに、ベトナム・インドネシア・インドなど諸外国の教育機関と協働で、技術レベルでの実証実験を行っているという。

同社は、ブロックチェーンの特性として「改ざんが極めて困難」「データ保管のコストが削減できる」ことを挙げている。この特性をいかし、IDを「簡単」「便利」「正確」に証明できるシステムを構築することで、EdMuseは生活の利便性向上や雇用機会の創出などに貢献していくという。また、モノのIDを証明できるシステムを構築することで、「安心」「安全」な商品を市場に提供する機会を創出していくとした。

岩本研究室とEdMuseによる今回の研究対象は、ブロックチェーン技術によるID証明をはじめとしたビジネスモデル。産業政策の構築を目的として両者は今後、協働研究の成果をさまざまな場面で発表していく。

関連記事
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.8~11.14)
暗号資産・ブロックチェーン業界の最新1週間(2020.11.1~11.7)

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:EdMuse慶應義塾大学(組織)日本(国・地域)