外科手術をAIが視覚化して手術ミスを減らすActiv Surgical

2500万ドル(約26億6000万円)の資金調達と3年の開発期間を経て、ボストン拠点の医療機器ソフトウェア開発会社のActiv Surgical(アクティヴ・サージカル)が米国時間5月6日に初の製品を市場に出した。

同社のプラットフォームであるActivEdge(アクティヴ・エッジ)は、既存の手術用機器に後付けするハードウェアアタッチメントから得たデータを使う人工知能・機械学習ソフトウェアシステムだ。知識情報やビジュアル情報をリアルタイムに提供することで患者の治療成果を高めることを目的としている。同システムと関連製品は当初米国内のみで提供されるが、来年には世界各地に提供範囲を拡大する予定だ。

「未来の手術は共同作業であり、人間の判断と見識をロボットの正確性で補強する」とチーフサイエンティストのTodd Usen(タッド・ウーセン)氏が声明で語った。Activのソフトウェアは、米国内だけで年間40万人の命を奪っている医療ミスを避けるために外科医を手助けすることを目的としている。回避可能な医療ミスは、心臓発作とガンに続く3番目の死因であり、そのうち26%は手術ミスが原因だ。犠牲者の数はもちろん、医療ミスは費用の犠牲も大きく、米国内の医療機関は年間約360億ドル(約約3兆8300億円)の出費を強いられている。

当初Activ Surgicalは、自社のテクノロジーを米国で最も多い220万件実施されている腹腔鏡手術に適用される予定で、胆嚢摘出術、堪能摘出、結腸切除術、胃切除術など血流量と重要構造の特定が最も重要な症例を対象とする。

「手術における視覚化技術の革新は長い間起きていない。最も広く導入されている手術画像プロセスであるICGは70年以上前に発明された蛍光染料を使用しており、手術中の外科医がもっとも必要としている時にリアルタイムで客観的な生理学情報を提供できない」とActiv Surgicalの共同創業者でチーフ・サイエンス・オフィサーのPeter Kim(ピーター・キム)博士が声明で語った。

同社のハードウェア・テクノロジーは、既存のビジュアル化システムと連携して、リアルタイムデータや新しいビジュアル情報を手術環境に提供する。このつながったプラットフォームは腹腔鏡手術および関節鏡手術システムに接続できる。新しいシステムはまだFDA(米食品医薬品局)の認可を取得していないが、現在米国内8つの病院ネットワークでパイロットテストが行われている。

ハードウェア製品だけでなく、Activ Surgicalは外科医により詳細なデータとビジュアル化を提供するソフトウェア・ツールも開発している。ActivInsightと呼ばれるその製品は現在開発中だと同社は語った。

「我々は医師が現在見ることのない新しいビジュアルデータを提供しようとしている」とウーセン氏はインタビューに答え、「病院にある既存の内視鏡に付加して手術のビジュアル化を強化する小さなモジュールの開発方法を見つけた」と語った。

同氏はこの装置を、究極的には外科手術へのロボティクスの統合を拡充するテクノロジーになると考えている。「我々が求める間違いのない手術を実現するために、自律ロボットの利点を生かし手術の主流にすることで、コンセプトを証明したい」と同氏は話した。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Zimmer BiometとAppleがApple WatchとiPhoneを使った膝と腰の人工関節置換手術のための臨床研究を開始

Appleは、最新型Apple Watchの利便性を訴えるものとして健康を大きな柱に据えているが、本日(米時間10月16日)、その新たな道筋が形となって現れるというニュースが報じられた。人工関節置換手術の治療材料やシステムの開発で世界をリードするZimmer Biometは、人工膝関節および人工股関節の置換手術を受ける人々に焦点を当てた臨床研究を、Appleと共同で行うと発表した。

この試みは三段階に分かれており、最初の2年間で最大1万人の患者が参加することが予測されると、Zimmer Biometの遠隔医療副社長Ted Spoonerはインタビューで語っている。

彼によると、患者のケアは次の3つの側面によってカバーされる。Apple WatchとiPhoneのセンサーを使い、患者の術前と術後の状態をモニターする。患者自身による術前と術後のケアの質を向上させるための教育と情報を提供する。医師、介護士、患者との間に連絡チャンネルを開設し、質問や答えを交換できるようにする。これらはすべて、Zimmer Biometのmymobilityアプリで行われる。

このプロジェクトに参加する医療施設は以下のとおりだ。
University of Utah Health(ユタヘルス大学)、Rush University Medical Center(ラッシュ大学医療センター)、University of Pennsylvania Health System(ペンシルベニア・ヘルスシステム大学)、Emory University Orthopaedics & Spine Hospital/Emory Healthcare(エモニー大学整形および脊椎病院/エモニー・ヘルスケア)、Hoag Orthopedic Institute in Southern California(ホーグ整形病院サザンカリフォルニア)、Massachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院)およびBrigham and Women’s Hospital(ブリガム・アンド・ウイメンズ病院)が設立した非営利団体Partners HealthCare(パートナーズ・ヘルスケア)のメンバーであるNewton-Wellesley Hospital(ニュートン・ウェルスレイ病院)、Centura Health(センチュラ・ヘルス)所属のPorter Adventist Hospital – Colorado Joint Replacement(ポーター再臨派病院コロラド人工関節置換部)、Legacy Meridian Park Medical Center(レガシー・メリディアン・パーク医療センター)所属のROC Orthopedics(ROC整形病院)、OrthoArizona(オーソアリゾナ)、Midwest Center for Joint Replacement(人工関節置換中西部センター)、Hartzband Center for Hip & Knee Replacement(人工股関節膝関節置換ハーツバンドセンター)、New Mexico Orthopaedic Associates(ニューメキシコ整形連盟)、Michigan Institute for Advanced Surgery(ミシガン高度外科病院)所属のThe DeClaire LaMacchia Orthopaedic Institute(デクレア・ラマッキア整形病院)、
Joint Implant Surgeons(関節移植外科)、Orthopedic and Fracture Clinic(整形および骨折クリニック)、Panorama Orthopedic and Spine Center(パノラマ整形および脊椎センター)。

Spoonerによるとこの研究は(現在はアメリカ国内に限られている)、Zimmer BiometとAppleが2年間におよぶ水面下での共同作業が実を結んだものだ。その目的は、Zimmer Biometが求める遠隔医療アプリの実効性を測る知る数値の収集だけではない。Appleの側には、スマートウォッチとスマートフォンを中心に構築される医療サービスに医療業界が期待していることを出資者たちに理解させるという狙いもある。現在、世界中で行われている人工膝関節置換手術の4回に1回を占めるZimmer Biometは、その中心的な存在だ。同社は、股関節、肩関節、足、歯でも同様に堅固な市場を確保している。

Appleがこの研究の重点をどこに置いているかは、この立ち上げにコメントを寄せた人たちの言葉でわかる。

「顧客に力を与えるには、自分の健康と活動の情報を利用して自分自身の健康管理を改善する手段を与えることだと、私たちは信じています」と、Appleの最高執行責任者Jeff Williamsは声明の中で述べている。「人工膝関節と人工股関節の置換手術を行った患者が、自分自身のデータを使い、また医師と直接共有することで、自分のケアと回復に参加できるようになることを、私たちはとても嬉しく思っています。これは、従来の面接による診察という方法では実現できなかったことです。このソリューションは、消費者と主治医を、手術の前も後も、継続してつないでゆきます」

股関節と膝の人工関節置換手術はもっとも一般的な手術で、
アメリカでは毎年に100万回も行われている。Deloitteによれば、人口の増加と長寿化、さらに若いころにフィトネスのための激しい運動で体を酷使した人たちも多く加わり、2035年にはその数は350万回に増えるという。

遠隔医療サービスを人工関節手術を主に受けている高齢者に売るのは、難しそうだと考えるかも知れない。しかしSpoonerは逆だと言う。

「現在、スマートフォンをもっとも早く導入する年代層は、55歳から64歳だとわかりました」と彼は話す。彼らは、そのひとつ下の年代に比べて、スマートフォンやその他の接続機器を3倍の早さで購入しているという。もろん、高齢者が使い始めたのが遅かったというのも理由のひとつかも知れない。とは言え、その数字に関して、「他の年代グループの複合年間成長率が2パーセント以下であることを考えると、本当にびっくりです」と彼は言っている。同様にスマートウォッチについても、高齢者のユーザー数が高い伸びを示している。「若い人たちよりも、高齢者ほどその恩恵を多く受けることになります。年を取ると健康に敏感になるので、このプロジェクトには最適の時期だと私たちは考えました」

Zimmer BiometとAppleが解決を目指す課題の中心には、患者が積極的に治療に関われるようにすることがある。計画どおりに行かない何かが起きた場合、それを特定して対処できるようにしなければならない。システムには大きなダッシュボードと分析機能を備え、診察日の間に患者がどのような行動をとっているかを、医師や介護士が評価できるようにする。

患者は、手術までの間に何度も知らせを受ける。手術が受けられる健康状態を保つために、活発に動くよう指導されるのだ。医師は、患者の体の動き、脈拍数、そしてとくに、1日のうちに立つなどの基本的な動作をどれぐらい行っているかなどをモニターして、患者が指導に従っているかを確認できる。同じことは、術後も続けられる。その間、たとえば傷口がどう見えるかといった不安を覚えた場合、患者は医療チームに相談することも可能だ。ただしそれは、患者のモニターや教育といった第一義的な目的からは外れる使い方だとSpoonerは言う。

Zimmer BiometがAppleと一層緊密に協力し合うようになったのは、医療系企業が(他の多くの業界もそうだが)デジタルサービスの進歩によってもたらされたイノベーションに飛び込む必要性を感じたからだ。そうしなければ、医療の未来を一切捨て去ることになる。Spoonerは、とくに今回の挑戦のために設立したスタートアップRespondWellを通してZimmer Biometに出会ったという。

「この市場は、患者の継続的な利用、そして自分の状態をより詳しく知り、介護士とうまくやってゆけるようにするための有効な生体データを探す場所でした」と彼は言う。彼のスタートアップはMicrosoft Connctを使っていた。「しかしそのとき、Zimmer BiometがAppleと事前交渉を行っていたのです。私たちは、彼らと共通するアイデアを持ってクパチーノに向かいました。そこから今回のコラボが始まりました」

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(翻訳:金井哲夫)