投資アプリRobinhood、株取引時間拡大の発表で株価が25%急伸

消費者に人気の投資アプリのRobinhood(ロビンフッド)は米国時間3月29日、24時間365日の投資という目標に向けて、朝と夕方の株式取引時間を拡大すると発表した。これまで同アプリは米国東部時間午前9時〜午後6時、つまり市場が開く30分前から、市場が終了して2時間後までの取引を提供していた。新しい取引時間は同午前7時〜午後8時だ。

投資家はこのニュースを好意的に受け止め、Robinhoodの株価はニュース発表後、25%超上昇した。

Robinhoodはブログへの投稿で、取引時間の拡大で顧客のニーズにこれまで以上に応えられると、その理由を説明している。

「当社の顧客は、通常の市場時間帯は仕事をしていたり忙しかったりして、自分のスケジュールに合わせて投資したり、重要な市場ニュースを評価して対応したりする能力が制限されているとよく言っています」と同社は書いている。また、Robinhoodの顧客の中には、午前と午後の両方で通常の市場取引時間外にアプリにログインしている人が多数いることも指摘した。「彼らはフルタイムの仕事から学校、家庭、副業まで多くのことをこなしています」とRobinhoodは述べた。「株取引時間の拡大で、顧客は早朝や夕方など都合のいい時にポートフォリオを管理する多くのチャンスを手に入れます」。

今回の措置は、手数料無料の株式取引というアプリの中核的な価値提案を超えて、消費者投資家のニーズに応えるために同社が創業以来行ってきたいくつかのアップデートのうちの1つだ。

近年、Robinhoodは暗号資産に進出し、分数株を導入し、自動投資を追加し、24時間365日の顧客サポートを展開した。

ちょうど2022年3月、同社は独自のキャッシュカード立ち上げた。このカードは、顧客が外出先で小遣いにアクセスし、オプションで購入額をおおよその額に切り上げ、余った分を自分の選んだ資産に投資できるようにするものだ。Robinhoodの幅広いサービスでは、従来の銀行サービス手数料、サブスク料、ATM手数料、当座貸し越し手数料がかからないだけでなく、給与の口座振替への早期アクセスなどの機能で他のフィンテック企業に対抗している。カードは金融の大衆化という同社のミッションにもつながるものだと述べている。

Robinhoodは初めて株式取引を行う新しい、そしてしばしば若い投資家を呼び込むことができ、サービス開始以来かなりの数の消費者が同社のアプリを利用し、2021年の口座数は2020年12月の1250万から81%増の2270万となった。

しかし直近の四半期で成長が鈍化し、株価が急落している。2021年第4四半期に同社が発表した収益は前年同期比14%増で、夏場の成長率の半分以下だった。また、今四半期の収益見通しを弱めに発表し、業界予想の3億7630万ドル(約462億円)に対して3億6270万ドル(約445億円)、1株当たりの損失は予想の35セント(約43円)に対して49セント(約60円)と予想を下回るものとなった。

2022年の株価はIPO価格から70%下がり8月の高値から87%下落していた。

取引時間の延長は、顧客が通常の市場時間外に取引する機会を増やしたがっているという同社の主張が正しければ、Robinhoodが成長を取り戻すのに役立つ可能性がある。もちろん、同社は取引時間の延長にともなうリスクについても警告しているが、取引時間の延長により、顧客は市場が終了した後に行われる四半期決算発表や、海外市場で行われている活動に基づいて取引を行うことができるようになると指摘した。

新しい取引時間により、Robinhoodはすでに取引延長を提供しているCharles Schwab(チャールズ・シュワブ)やFidelity(フィデリティ)といった従来の証券会社に対する競争力を高めることになる。

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

中国のEVスタートアップたちが投資ゲームに参戦

中国で繰り広げられている自動車関連スタートアップを対象とした投資ゲームは、既存のベンチャーキャピタル会社だけでなく業界のベテランも参加し、競争が激化している。最近、新規ラウンドを完了したモビリティに特化した2つのファンドには、中国を代表する新参の電気自動車メーカーが参加している。

ベンチャーとグロースステージ向けの新しい投資ビークルのRockets Capital(ロケッツ・キャピタル)は、3月初めに2億ドル(約240億円)の初のファンドのクローズを発表し、電気自動車メーカーのXpengがアンカーインベスターを務めた。他の投資家はIDG Capital、Sequoia China、GGV Capital、5Y Capital、eGardenなど中国の大手機関投資家だ。このファンドは、自動車産業のバリューチェーン、クリーンエネルギー、その他の「フロンティアテクノロジー」分野でのビジネスチャンスを探している。

もう1つの大きなクローズは、Nio Capital(ニオ・キャピタル)の申し込み超過となった4億ドル(約480億円)の2回目の米ドル建てファンド「Eve ONE Fund II」だ。投資家は政府系ファンド、保険会社、多国籍金融機関、ファンド・オブ・ファンズ、ファミリーオフィス、年金基金、財団など世界各国から集まっている。

Nio Capitalは、ファンドの名前にもなっているが、XpengのライバルであるNioの創業者William Li(ウィリアム・リ)氏が立ち上げた会社だが、この投資機関はNio自体とは直接の関係はない。人民元建てファンドを米ドル建てファンドとともに運用し、自動車、テクノロジー、エネルギー分野に特化している。

Rockets Capitalは、EV投資家との関係をより公にしている。独立した投資会社として活動する一方で、Xpengの「業界の専門知識とリソース」を活用し「技術革新のインキュベーション」を行う。明言されているミッションを考えると、Rocketsの将来の投資先にもXpengと取引や提携をする企業があってもおかしくはないだろう。

2016年に設立されたNio Capitalは、投資分野では先行している。中国における同社の注目すべき取引には、Bosch(ボッシュ)が支援するMomenta(モメンタ)トヨタが支援するPony.ai(ポニーエーアイ)という2つの大手ロボタクシー企業、それからTemasek(テマセク)が支援するライダーメーカーInnovusion(イノビュージョン、Nioのサプライヤーの1社でもある)、BPが支援するバッテリー交換のAulton(オールトン)、自動車チップメーカーBlack Sesame(ブラックセサミ)などがある。

過去数年間、Nio Capitalは中国の自動車産業における新進気鋭のプレイヤーたちとともに、自らの周りに要塞を築いてきた。Rockets Capitalとその後援者XpengがどのようにNio Capitalに追いつき、市場を再構築するためにどのような提携を結ぶことができるか、注目だ。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブリヂストンが自動運転シャトルのMay Mobilityに少数株主として出資

タイヤメーカー大手のBridgestone(ブリヂストン)は、米ミシガン州に拠点を置く自動運転シャトルのスタートアップ、May Mobility(メイ・モビリティ)に少数持分出資を行い、自律走行車のスタートアップにまた1つ投資することになった。

ブリヂストンはこれまでにも、スウェーデンの自律型貨物輸送技術のスタートアップであるEinrideと協力し、自動運転EVトラック輸送のための持続可能なモビリティソリューションを模索したり、自動運転トラックによる長距離輸送スタートアップのKodiak Roboticsに出資してきた。

ブリヂストンは最近、カーケアサービスに特化したラストマイル配送プラットフォームのYoshi、およびタイヤセンサーとデータ管理企業のTyrataとの提携も発表している。他の最近の戦略的投資と同様に、ブリヂストンはMay Mobilityの株式をどれだけ保有しているかは明らかにしていない。

ブリヂストンとMay Mobilityのパートナーシップにより、後者は2022年後半にブリヂストンのタイヤ摩耗予測モデリング技術を同社の車両に搭載する予定だ。ブリヂストンのインホイールセンサーと予測アルゴリズムが、タイヤの空気圧、温度、トレッドの摩耗など、タイヤの健康状態を監視し、最終的にMay Mobilityの総所有コストの削減とAV車両の安全性の向上に貢献すると、Mayの広報担当者は述べている。また、今回の統合により、ブリヂストンはAVの運用に関する知見を得ることで、同社の主力タイヤ製品の改良につなげることができる。

ブリヂストンの米国子会社であるBridgestone Americas(ブリヂストンアメリカスインク、BSAM)のモビリティソリューション&フリートマネジメント社長、Brian Goldstine(ブライアン・ゴールドスティン)氏はこう述べている。「ブリヂストンの予知保全に関する知見を統合する今後の計画は、May Mobilityの車両がより安全、効率的、持続可能な形で運用されることを保証するものです」。

また、May Mobilityは、ブリヂストンが2021年に買収したクラウド型フリートモビリティソリューション「Azuga」を活用することで、業績の向上が期待される。Azugaは、フリート管理、カメラインテリジェンス、ルートプランニング機能をMay Mobilityにもたらす。

May Mobilityは、Waymo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)のようなロボタクシーではなく、公共交通機関の補強を目的とした低速AVを、広島を含む5都市で運用している。2021年は、テキサス州アーリントン、ミシガン州アナーバーとグランドラピッズで、交通技術企業のViaと共同でオンデマンドの自動運転シャトルサービスを開始した。

同社は2022年初め、車両をハイブリッドのLexus(レクサス)SUVからハイブリッドのToyota(トヨタ)シエナミニバンに変更する計画で、8300万ドル(約99億1700万円)のシリーズCを調達した。この資金は、Mayが米国と日本で事業を拡大し、黒字化するために使用される予定だという。

またブリヂストンは、Mayの事業拡大を支援するため、同社のAVサービスやメンテナンスサポートを、BSAM傘下のFirestone Complete Auto Care、Tires Plus、Hibdon Tires Plus、Wheel Worksブランドの店舗や、ブリヂストンのモバイルサービス会社であるFirestone Directを通して提供する予定だ。

May MobilityのCEOであるEdwin Olson(エドウィン・オルソン)氏は、声明でこう述べている。「ブリヂストンの全国2200店舗を利用した車両運行・サービスにより、May Mobilityは全米で比類ないスケールアップを実現できます。このコラボレーションは、安全で持続可能なモビリティソリューションをグローバルに提供するという、我々の共通のミッションに基づくものです」。

画像クレジット:May Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Den Nakano)

なぜVCは更年期障害に取り組むスタートアップにもっと投資しないのか?

近年「フェムテック」への注目度が高まり、デジタルヘルスアプリから、より新しいところでは再生医療企業まで、何十ものスタートアップが誕生し、ベンチャー資金を集めている。

そうした資金調達の多くが不妊症に関連するもので、その理由は容易に理解できる。米疾病予防管理センターによると、出産経験のない15〜49歳の米国女性のうち、26%が妊娠または満期出産までの妊娠の継続で困難を抱えている。

しかし、創業者や投資家は人口の半分が影響を受ける更年期障害というさらに大きなチャンスに徐々に気づきつつある。1960年代後半に始まった核家族への移行や平均寿命の伸びなどにより世界の人口動態が高齢化する中で、更年期障害は注目されつつある(1980年から2016年にかけて、出生時の平均寿命は73.7歳から78.6歳に伸びた)。

数字が示唆するのは、チャンスだ。実際、最近の国連のデータによると、総人口における高齢者の数は急速に増加している。65歳以上は2020年に世界で7億2700万人だったが、2050年にはその数は15億人に倍増すると予想されている。リバースモーゲージ型の融資会社や高齢者向け在宅介護サービスのスタートアップなど、高齢者層に対応した企業が増え始めているのはそのためだ。

しかし、更年期障害は明らかに巨大な市場であるにもかかわらず、依然として少額の投資しか集めていないのが現状だ。Crunchbaseのデータによると、過去12カ月間で資金を獲得した更年期障害に対応するスタートアップはわずか12社だった。

そうした資金調達の最新例がVira Healthだ。同社は更年期を迎える女性にパーソナライズされたデジタルセラピューティクス(デジタル治療)を提供しており、今週第2ラウンドの資金調達(約14億円)を発表したばかりだ。この取引は、女性の性の健康と更年期に焦点を当てたオフラインセンターの開設を目指している(現在2カ所を運営している)企業、HerMDが先月発表した1000万ドル(約12億円)のラウンドに続くものだ。一方、再生医療によって更年期障害を遅らせ、根絶することを目指すGametoは1月に2000万ドル(約24億円)の調達を発表した。

他の企業、それも似たり寄ったりの企業に投資されている金額と比べれば端金だ。閉経前から閉経後にかけての女性は往々にして消費力の絶頂期にあることを考えると、なおさら衝撃的だ。

投資家が躊躇する理由は、投資家の多くが男性であり、自身は更年期を経験しないなど、たくさんある。実際、これまで資金を調達した企業のほとんどは、女性VCから小切手を受け取っている。

更年期を経験する女性向けの消費者ブランドで「ブレイク」したものはない。

最もコストのかかる投資であるホルモン補充療法の開発は、製薬会社にとって大きな利益をもたらすことが証明されているが、安全性の問題にも悩まされており、新薬の展開には失敗がつきものだ(日本の多国籍製薬会社であるアステラス製薬は、アジアでの第3相試験で失敗した最新の例だろう)。

それでも、利益を求める投資家は、市場としての更年期障害に厳しい目を向けるかもしれない。近年の生物学、コンピューティング、自動化、人工知能の進歩により、さまざまな関係者が更年期障害への関心を高めており、再生医療(失われた組織や臓器の機能を修復・代替するために生きた機能組織を作り出すプロセス)に注目している関係者もそこには含まれている。

例えば、Future Venturesが出資しているGametoは、細胞療法を用いて卵巣が臓器として機能しなくなるまでの期間を延ばし、高血圧、心臓病、骨粗鬆症など更年期に関連する一部の症状を遅らせようとしている(同社のCEOは、女性は長生きしているのだから、より質の高い生活を長く送る権利があると信じている)。

治療法の可能性を示唆する証拠も増えてきている。例えば、更年期障害が女性の脳に与える影響について、研究者は今ようやく気づき始めたところだ。

「ほてり、寝汗、不安、うつ、不眠、物忘れなど、更年期障害の症状の多くは卵巣が直接作り出すものではありません」と、ワイルコーネル医学部の神経学准教授で女性の脳イニシアチブ責任者のLisa Mosconi(リサ・モスコニ)氏は7月にニューヨークタイムズ紙に語っている。「これらは脳の症状であり、脳は少なくとも卵巣と同じくらい更年期障害の影響を受けるものと見るべきでしょう 」。

兆候や症状を和らげ、慢性的な症状の管理を助けるなど更年期を経験する女性向けのブレイクしている消費者ブランドはないが、それらは間近に迫っているかもしれない。

1つだけ確かなことがある。更年期障害分野は急成長している、ターゲットが豊富な未開拓市場、ということだ。さらに、カテゴリーを代表するブランドの後ろ盾となるチャンスもあり、なぜVC、そして創業者は、更年期障害にもっと目を向けないのだろうかと不思議に思うのは当然だ。

画像クレジット:Ja_inter / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

NVIDIA、歩道配送ロボのServe Roboticsに11.6億円投資

チップメーカー大手のNVIDIA(エヌビディア)は、UberからスピンアウトしたServe Robotics(サーブロボティクス)に1000万ドル(約11億6000万円)を投資する。Serve Roboticsはこの資金により、歩道配送ロボットサービスをロサンゼルスとサンフランシスコ以外にも拡大する。

NVIDIAにとっては歩道配送分野での初めての投資となる。両社の長期的な協力関係の一環であり、それぞれのロボット関連技術を発展させるために協働する。

「NVIDIAの投資は、Serveとの長年の提携が根底にあります。Serveは、エッジからクラウドベースの技術まで、当社のさまざまな技術を利用しています」とNVIDIAのロボティクス担当シニアプロダクトマーケティングマネージャーGerard Andrews(ジェラルド・アンドリューズ)氏はTechCrunchに話した。「私たちがうれしく思っているのは、ラストマイルデリバリーの問題に関して可能なことの限界を押し広げるために、Serveと密接に協力できるということです」。

Serveのロボットは、同社によると、特定のジオフェンス領域(仮想的な地理的境界で囲まれた領域)の中で、安全のための遠隔操作者なしで動作が可能だ。現在はNVIDIAの「Jetson」エッジAIプラットフォーム、ハードウェア、あるいは計算モジュールに依存している。いずれもロボット内部にあり、自律動作に力を与える。同社は、NVIDIAの認識・マッピングツールも利用している。これは、ロボットが実世界の環境のどこにいて、どこに行く必要があるのかを理解するのに役立つ。

多くの自動運転車メーカーと同様、Serveも道路を走る前にシミュレーションでモデルをテストしている。そのために、NVIDIAは認識モデルをトレーニングするための合成データ生成ツールを提供している。

これらのツールは、ロボット開発者に、シミュレーションからロボットフリートマネジメントに至るさまざまなソフトウェア技術を提供するNVIDIAのツール群(愛称:Isaac)の一部として提供される。NVIDIAは、Serveとの提携から得た教訓を、新進のロボット分野での技術向上に役立てたいと考えている、とアンドリューズ氏はいう。

「私たちは、自動運転のリーディングカンパニーだと考えています。実世界で本物の自動運転ロボットをスケールアップしています」とServeの共同創業者でCEOのAli Kashani(アリ・カシャニ)氏はTechCrunchに話した。「NVIDIAは、ロボット業界全体にとって最も重要な企業の1つです。NVIDIAはツールにも投資しています。発展途上の分野であることを考えれば、両社が協力することは理にかなっています」。

歩道配送の商業化には現在、さまざまなアプローチが試みられている。Coco(ココ)や最近まではTortoise(トータス)のような企業は、ロボットを目的地まで運転するために遠隔オペレーターを活用し、完全な自動運転に比べ、迅速かつ容易に市場に参入する道を開いてきた。

Serveは最初から、技術的により困難な、完全自動運転への道を選んだ。それはつまり、リアルタイムのデータ処理のために、最高の計算能力を必要としているということを意味する。

「歩道は道路よりも混沌としています」とカシャニ氏は話す。「私たちはヤギに遭遇したこともあります。歩道で直面するランダム性は、道路よりも1桁高いのです。車線変更、ブレーキ、アクセルなど、道路を走る車の動作ははっきりしています。歩道では、いつ何が起きてもおかしくないわけで、そのための準備が必要です。ここがおもしろいところで、だからこそ歩道の方がチャレンジングなのです。もちろん、利点は物事がゆっくり進むことです。そのため、対応する時間が持てます」。

Serveがここ数カ月で受け入れた戦略的投資は、これが初めてではない。12月にはシードラウンドで1300万ドル(約15億円)を調達し、Delivery Hero(デリバリーヒーロー)に投資したDX Ventures(DXベンチャーズ)、7-Eleven(セブンイレブン)のコーポレートVC部門である7-Ventures(セブンベンチャーズ)、Uber Eatsの配達サービスパートナーとしてServeを起用するUber(ウーバー)など、商業化に向けServeの進む道を支援する投資家が参加した。

画像クレジット:Serve Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

会社がなくても問題……ない?激化するスタートアップ企業への投資とVCのアイデア

これまで好調だった伝統的なベンチャー業界は転換期を迎えているのではないか、と思える理由はいくつもある。最も明白な兆候は、ここ数年、上場前に投資したVCが得た利益が非常に大きい一方で、公募された株式ではそれほど上手くいっていないということにある。2月1日に発表されたWSJのデータによると、過去13カ月間に上場したベンチャー企業の最有力候補たちの株価は初日の終値を下回り、DoorDash(ドアダッシュ、-40%)、Oscar(オスカー、-81%)、UiPath(ユーアイパス、-47%)、Compass(コンパス、-56%)、Robinhood(ロビンフッド、-59%)、Coupang(クーパン、-28%)となっている。

上場前の投資の方も、状況はそれほど健全ではない。1月27日の記事でTechCrunchが指摘したように、シード、シリーズA、シリーズBの各ステージにある企業の収益は、この数四半期は過去数年に比べてはるかに少ない。おそらく、スタートアップ企業の資金調達のペースが格段に速くなっていることが原因だろう(数カ月ではたいして進展することはできない)。一方で、投資家の姿勢も今まで以上に緩く、進展がなくてもそれほど問題ではない、と考えているように見える。「創業者に賭ける」ことが重要なのだ。

VCにリセットが必要かもしれないことを示す最も強力な指標は、まだ起業していない人に投資しようとするVCの熱意である。General Catalyst(ジェネラルカタリスト)のマネージングディレクター、Niko Bonatsos(ニコ・ボナツォス)氏は、これは新しいトレンドではない、としながら次のように続ける。「プレシードやシードが急増したことで、(トレンドは)より顕著になっています」「膨大な数のジェネラルパートナー、ファンドの大型化、ディールの増加、そして私たちは資本を投資することで報酬を得るのですから」。

Upfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)のMark Suster(マーク・サスター)氏は、それを実行している。2021年秋、同氏は次のように発言している。「例えば、Riot Games(ライアットゲームズ)、Snapchat(スナップチャット)、Facebook(フェイスブック)、Stripe(ストライプ)やPayPal(ペイパル)で仕事をするあなたを知っていたとしたら、私たちは起業時、つまり設計時からあなたを支援します」。

Foundation Capital(ファウンデーションキャピタル)のマネージングディレクター、Ashu Garg(アシュ・ガーグ)氏も、1月20日(日本版は1月25日)のTechCrunchの記事で同じような戦略を話している。「誰かがまだ会社を立ち上げる準備をしているときに、その人とコンタクトをとるというのが私たちの目標で、それが私たちのビジネスのやり方です。まだ会社が創業されてなくても、これこそが私たちのビジネスモデルなのです」。

他の多くのVCも同じ意見のはずだ。

2013年に「SignalFire(シグナルファイヤ)」というVCを設立したChris Farmer(クリス・ファーマー)氏は「定量的」なベンチャー投資を最も早くから提唱し、広く知らしめた人物の1人だ。同氏はSignalFireのプラットフォームであるBeaconを利用し、特許、学術論文、オープンソースへの貢献、財務申告など、200万ものデータソースから得られた5兆以上のデータポイントを追跡し、エンジニアリングの人材の動向を把握しようとしていた。

その当時、このデータをマーケティングツールとして利用していたのはファーマー氏だけだったが、その後、多くの企業が(Beaconほど強力ではないとはいえ)同様のシステムを採用し、公的、私的なデータを使って、仕事を続けている個人、仕事を辞めたものの計画を発表していない個人、あるいは最初のステップとして会社の登記だけを行った個人を追跡している。

中には非常に簡単なデータ収集方法もあり、ボナツォス氏はそれについて次のように話す。「データの中には、何年も追跡できるものもあります」「誰かがTwitterやLinkedInで経歴を変更したら、それは人材を探している人たちに『私は何か新しいことをしています』というシグナルを送っていることになります」。

大手のVCでアナリスト数人といくつかの基本的なスクリプトがあれば、カリフォルニア州などで興味を持ちそうな企業にフラグを立てることが比較的容易になっている。「主要な同業者のうち、少なくとも6社は同じことをしています」「創業者にメールを送ると、時々『おかしいな、今日は何社もメールもくれたよ』と言われます」とボナツォス氏。

実際、今はVCが才能ある個人をストーキングする方法が数多くある。資金を調達し、会社を創業し、それを売却したことでVCの目に留まる人もいる(創業者や初期の従業員はすぐに別の会社を立ち上げようとするだろう、というのがVCの考え方だ)。

エンタープライズ製品の開発経験者は特に狙われやすい。GitHubのようなコード共有プラットフォームを見れば、開発者コミュニティでどのようなプロジェクトが人気かを、投資活動に先駆けて知ることができるからだ。

スカウトプログラムの増加もこの傾向に関連している。VCはディールフローを改善するために、事業会社の幹部やスタートアップの創業者との関係を構築するが、これには、スカウトの対象者が自身のスタートアップを立ち上げた際、最初に連絡して欲しいという期待も存在する。

もちろん、このような方法に意味があるかどうかには疑問が残るし、イノベーションや特定の洞察力(あるいは腹いせ)といった有機的な方法でビジネスを立ち上げた人よりも、VCに起業をすすめられた個人が優れているかどうかは、まだ十分なデータがない。

それでも資本力が大きいVCはこの戦略を続けている。

ボナツォス氏は、人材を探す際「会社を売却するなどして財を成した人が、まだハングリー精神を持っているかどうか」を考え、その人材の考え方が「本当に斬新なのか、それとも焼き直しなのか。過去にやったことをもう一度やろうとしているのか」を見極めようとしている。さらに同氏は「再チャレンジする人材は見つけやすいが、その分立ち上がるまでのコストが余計にかかる」と指摘する。

一方ファーマー氏は、できるだけ早い段階で創業希望者にアプローチすることも続けていて「資金調達市場が活発化している現在は、これまで以上にその必要性が高まっている」と指摘する。

ファーマー氏の説明によると、創業間もないスタートアップへの「参入コスト」は、この2年間で200%高くなっているという。「つまり、オーナーシップを得るためには、より高い評価額でより大きな小切手を切る必要がありますが、逆張りをするなら、超初期段階のリスクを取る方が理にかなっています。なぜなら投資家のリスクは時期が早ければ早いほど少なく、投資はプレミアム付きで戻ってくるからです」。

これは単純な計算だ、とファーマー氏は続ける。「同じ資産に3年前の3倍の価格を支払っているなら、リターンは3倍低くなる可能性があります。もし、ほとんど実績のないスタートアップアクセラレーターの卒業生に2000万ドル(約23億円)を払うのであれば、(創業者の)アイデアがまとまっていなくても、もっと早い段階の創業者を探した方が割に合います」。

多少おかしな話に聞こえるかもしれないが「本当におかしい」のは「投入されるお金の量」だとファーマー氏は観ている。同氏は、いずれにしても、SignalFireはこの方法で資金を投入して企業を存続することができる、と示唆し「いったん成功のシグナルが出てしまえば、(VC同士の)激しい競争に晒されることになる」と話す。

「競争はまさしく血みどろの戦いです」。

画像クレジット:Liyao Xie / Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

フォード、前を走るテスラに追いつこうとEV投資を約5兆7730億円に増額

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、EV事業向けの投資額を従来の2025年までに300億ドル(約3兆4645億円)という目標から、2026年まで500億ドル(約5兆7730億円)に引き上げる。このニュースは米国時間3月2日、Fordが2月上旬に行った2021年第4四半期決算説明会で触れたように、EV事業をガソリン車事業から分離し、独立採算制にすることを確認した後、Jim Farley(ジム・ファーリー)CEOが発表した。

Fordが電動化投資額を引き上げるのは、この1年足らずで3回目となる。Fordは2021年5月にEV事業に220億ドル(約2兆5378億円)を投資することを発表しており、業界のリーダーであるテスラに追いつくために、財務的な強化を続けていることを示している。

Fordは「Ford Model e(フォード・モデルe)」と名付けた新しいEV事業を通じて、2026年には世界年間生産台数の3分の1に相当する200万台以上のEVを製造し、2030年までに総台数の50%を電動化する計画だとファーリー氏は述べている。ただし、John Lawler(ジョン・ローラー)CFOによると、次世代モデルの生産が始まる2025年までは利益を上げられない見込みだという。Ford Model eと、同社のより伝統的なICE部門であるFord Blue(フォード・ブルー)は、2023年までに別々の決算を報告する予定だ。

Fordは2022年、EVに50億ドル(約5768億円)を費やすと見込んでおり、これは2021年の倍である。

多くの業界アナリストは、FordがEV事業をスピンアウトすると予想しているが、ファーリー氏は、それが近いうちに実現することを示唆しなかった。しかし、それは将来的にその可能性がないということではない。

「ICE事業はキャッシュを生み出すために、EV事業はイノベーションにフォーカスするために必要なのです」とファーリー氏は語った。

Fordは2月に7万2000台の車両を受注し、前年同月の5万4000台を上回った。その大半はトラックとSUVだが、同社のEV販売台数は2月までに55.3%増加し、セグメント全体よりも速いペースで伸びているという。

画像クレジット:Ford

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Den Nakano)

フォード、前を走るテスラに追いつこうとEV投資を約5兆7730億円に増額

Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は、EV事業向けの投資額を従来の2025年までに300億ドル(約3兆4645億円)という目標から、2026年まで500億ドル(約5兆7730億円)に引き上げる。このニュースは米国時間3月2日、Fordが2月上旬に行った2021年第4四半期決算説明会で触れたように、EV事業をガソリン車事業から分離し、独立採算制にすることを確認した後、Jim Farley(ジム・ファーリー)CEOが発表した。

Fordが電動化投資額を引き上げるのは、この1年足らずで3回目となる。Fordは2021年5月にEV事業に220億ドル(約2兆5378億円)を投資することを発表しており、業界のリーダーであるテスラに追いつくために、財務的な強化を続けていることを示している。

Fordは「Ford Model e(フォード・モデルe)」と名付けた新しいEV事業を通じて、2026年には世界年間生産台数の3分の1に相当する200万台以上のEVを製造し、2030年までに総台数の50%を電動化する計画だとファーリー氏は述べている。ただし、John Lawler(ジョン・ローラー)CFOによると、次世代モデルの生産が始まる2025年までは利益を上げられない見込みだという。Ford Model eと、同社のより伝統的なICE部門であるFord Blue(フォード・ブルー)は、2023年までに別々の決算を報告する予定だ。

Fordは2022年、EVに50億ドル(約5768億円)を費やすと見込んでおり、これは2021年の倍である。

多くの業界アナリストは、FordがEV事業をスピンアウトすると予想しているが、ファーリー氏は、それが近いうちに実現することを示唆しなかった。しかし、それは将来的にその可能性がないということではない。

「ICE事業はキャッシュを生み出すために、EV事業はイノベーションにフォーカスするために必要なのです」とファーリー氏は語った。

Fordは2月に7万2000台の車両を受注し、前年同月の5万4000台を上回った。その大半はトラックとSUVだが、同社のEV販売台数は2月までに55.3%増加し、セグメント全体よりも速いペースで伸びているという。

画像クレジット:Ford

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Den Nakano)

17歳のTikTokトップスター、チャーリー・ダミリオ氏の一家が自撮加工アプリFacetuneで知られるLightricksに投資

Charli D’Amelio(チャーリー・ダミリオ)氏は、TikTokで最もフォロワー数が多く最も稼いでいるクリエイターだ。この17歳のスーパースターとその家族は、短い動画から得られる短期間の富よりもさらに先を見ている。米国時間2月23日、ダミリオファミリーはLightricksとのパートナーシップを発表した。LightricksはFacetuneVideoleapといった写真やビデオ編集アプリのメーカーで、アプリのダウンロード数は合計で5億回を超えている。

チャーリーと、姉で同じくTikTokのスターであるDixie(ディクシー)、コネチカット州上院の共和党候補だった父のMarc(マーク)、元モデルの母Heidi(ハイディ)のダミリオファミリーは、Lightricksの株式を取得し戦略アドバイザーとして参画する。Lightricksはファミリーの投資額を明らかにしていないが、ファミリーからの投資は同社が最近調達したシリーズDの1億3000万ドル(約149億5000万円)とは別であると認めた。ファミリーは資金面の支援の他、The247というエディトリアル記事サービスに限定コンテンツを提供する。

Lightricksはダミリオファミリーとのパートナーシップの発表に加え、リンク・イン・バイオに関してLinktreeBeaconsSnipfeedなどのプラットフォームの競合となるLinkInBioのサービスも発表した。LightricksのLinkInBioの利用は無料で、クリエイターがソーシャルプロフィールやウェブサイトへのリンク、そして重要なポイントとしてStripeを利用した投げ銭機能を追加してカスタマイズできる。もっとも、ライバルのリンク・イン・バイオプラットフォームはもっと洗練された収益化手段を提供している。例えばSnipfeedには、購入者向けにパーソナライズした非同期のタロット占いのようなデジタルグッズの販売機能がある。しかしそのトレードオフとして、高機能なプラットフォームはサブスクリプションの課金や売上手数料の徴収などをする傾向がある。

Lightricksの共同創業者でCEOのZeev Farbman(ゼエブ・ファーブマン)氏は報道発表の中で「(ダミリオ)ファミリーはクリエイターエコノミーのトップランナーであり、世界中の前途有望なクリエイターに常に刺激を与えています。一家が開発プロセスのあらゆるステップに携わることとなり喜ばしく思います」と述べている。

Crunchbaseのデータによれば、ダミリオファミリーとしてのスタートアップへの投資はこれが初めてだ。ただしチャーリー・ダミリオ氏自身は2021年にティーン向けバンキングサービスのStepが1億ドル(約115億円)を調達したシリーズCに参加している。セレブがスタートアップへの投資を通じて資産を増やそうとするのはめずらしいことではない。俳優のAshton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏も、ミュージシャンのThe Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)も、女優のJessica Alba(ジェシカ・アルバ)氏もそうだ。しかしダミリオファミリーは、インフルエンサーから投資家へという新しいジャンルを体現している。

ダミリオファミリーはTechCrunchへのメールで「我々はスタートアップの分野に強い関心を持ち、起業家や新しい企業と出あうことを楽しみにしています。我々は今後数件の投資をして、すばらしいプロダクトやサービスを構築できると思われる企業を支援する予定です」と記した。

TikTokのクリエイターは、テニスプレイヤーのSerena Williams(セリーナ・ウィリアムズ)氏やハリウッド俳優のRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)氏といったスターのように長く輝き続けることはできないと不安に思っているかもしれない。両親のサポートのもと、チャーリーとディクシーの姉妹はアパレルのHollisterリングライトの会社、さらにはHuluのリアリティ番組までさまざまなベンチャービジネスを手がけて、すでに知名度を高めている。

しかしティーンの億万長者の苦闘(そう、多くの苦闘だ)を描いた物語でもあるNetflixの「Hype House」と同様に、この「ダミリオショー」は常にオンラインで注目されることによるメンタルヘルスへの負の影響に姉妹がどう対処するかの意味合いも強い。Lightricksとのパートナーシップは疑問のある選択のようにも思える。LightricksのフラッグシップアプリであるFacetuneはレタッチツールとして使われることが多く、身体イメージの問題の一因と考えられてきたからだ。ティーンのメンタルヘルスに対するソーシャルメディアの負の影響は最近大きな議論となっているが、Facetune以外にもLightricksのツールは簡単にビデオを編集するだけの目的でよく使われている。米国時間2月22日にチャーリー・ダミリオ氏はニキビ(ティーンにはごく普通のことだ!)がはっきり写った自撮りを投稿した。レタッチツールは今後も存在するし、本来は邪悪なものではないが、問題はどのように(そしていつ)我々がそれを使うかだ。

画像クレジット:Lightricks

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Kaori Koyama)

気候分野への投資が加熱、2021年の取引は600件超で4.6兆円注入

2021年は、気候分野で活動するスタートアップにとってとんでもない年だった。グローバルで、約1400の投資家が気候変動に取り組む次世代企業に注目している。投資家は600件超の取引に400億ドル(約4兆6000億円)超を投じた。前年の2倍以上の資本が投下されたことになる。Climate Tech VCの新しいレポートによると、モビリティとエネルギーのスタートアップが一貫して最も多くの資金を調達していて、かなりの差で素晴らしい食品と水のテクノロジーが3番手であることが示されている。

筆者はこのほど、気候分野を専門とする14人の投資家に話を聞き、彼らのポートフォリオや業界全体でみられることについて新たな情報を得た。投資家らは資本の流入を歓迎し、これはバブルというより、この部門の適正規模であることを示唆している。

Closed Loop Partnersのストラテジックイニシアチブ&パートナーシップ担当シニアディレクターのGeorgia Sherwin(ジョージア・シャーウィン)氏は、業界全体で共有されている意見として「気候と循環型経済の分野に投資する中で、私たちは自分たちの仮説を証明し続け、この分野に新しい投資家が加わることに感激しています」と語った。「私たちは常に循環型経済と気候テック全般への投資を一層促進することを考えており、今年この分野に参加した新しい投資家を歓迎します」

成長の理由の一つは、上流資本が投資先をより意識するようになったことだ。リミテッド・パートナー(例えばベンチャーキャピタルファンドに投資する人たち)は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の影響をより意識するようになり、その過程で地球にとって有利な方向へと局面を一変させている。2021  年前半には、RivianNorthvoltへの大規模な投資が行われるなどモビリティ分野で巨額のラウンドがあり、同年末にはHelionCommonwealthといった核融合エネルギー企業に数十億ドルの投資が行われ、エネルギーというパイが大きく膨らんだ。今年も核融合の分野では、さらに大きな動きがありそうだ。

2021年の気候関連技術への投資は400億ドルで、これは前年の2倍以上だ。グラフィック:Climate Tech VC

特に、2021年はアーリーステージの取引が急増し、全体の60%超を占めた。シードステージの取引は、投入された資金の2%未満だったが、取引数の約30%を占めた。これはいくつかのことを意味している。まず、2022年には、多くの企業が膨大な額の後期ステージ資本を調達する。定義によれば、これらは投資家にとって低リスクの取引となり、より大きな額を集め、この種の企業に対する意欲をさらにかき立てることになる。そして何より、この青い地球の存続を願う私たちにとって、気候変動ソリューションへの注目度が急上昇することを意味する。

今年、気候テックがどのように発展していくのか楽しみだ。今年最初の数週間だけでも、投資家たちが次々と新しい資金を調達し、巨額の投資を行い、また、私たちが直面している気候問題に対してあらゆる角度からアプローチする小さな企業が続々と誕生しているのを目にしている。

画像クレジット: Climate Tech VC under a license.

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nariko Mizoguchi

ラストマイル配送用の電動自転車サプライヤーZoomo、三菱UFJイノベーション・パートナーズなどから約23億円調達

デリバリーワーカー用の実用電動自転車を作っているオーストラリアのZoomoが、この度、さらに2000万ドル(約23億円)を調達して同社のシリーズBを完了した。

2021年11月、同社は株と債務の両方で6000万ドル(約69億円)のシリーズBを調達し、ソフトウェア開発と自転車の増産に投じた。今回の追加投資により同社の調達総額は1億150万ドル(約117億円)になり、それらはすべて同社のグローバルな雇用増と、自転車の生産量増加、自転車店などのメカニクスと顧客企業の両方へのマネジメントの提供、そしてライダーのためのアプリの開発に使われる。

同社は、フォームファクターとアクセサリーを一新するZoom Oneと呼ばれる高性能な実用自転車を開発中している。

Zoomoはその電動自転車(eバイク)を、ギグワーカーに週20ドル(約2300円)、米国では30ドル(約3450円)でレンタル、料金にはサービスやサポートも含まれる。またUberEatsやDoorDashなど同社が提携しているアプリ利用のデリバリー企業に登録しているワーカーなら、安くなることもある。また同社はドミノ・ピザのような大企業顧客には、サードパーティ製のモペットを含むこともあるeバイク車隊を提供する。

Zoomoは2017年に創業。北米とアジア太平洋と、2021年加わったスペイン、フランス、ドイツなどのヨーロッパなど6カ国16都市に展開している。同社は、2021年はグローバルな売上が4倍、エンタープライズビジネスは20倍に増えたというが、「いつ」に対しての増加なのか、よくわからない。

「2021年はZoomoにとって変革の年であり、ギグワーカーに加え、企業やフリートマネージャーも当社の革新的なプラットフォームの恩恵を受けることができました。Zoomoでは、今後10年以内に、すべてのラストマイル配送が、Zoomoのエコシステムに支えられた軽電気自動車で完了する世界を見ています。私たちの投資家は、この実現に一歩近づくための手助けをしてくれるでしょう」と、Nada(ナダ)氏は声明で述べている。

今回のリード投資家はCollaborative Fundで、これに戦略的投資家として三菱UFJイノベーション・パートナーズとSG Fleet、Akuna Capital、そしてWind Venturesが参加した。戦略的投資家の参加はこれが初めてであり、さらに今後の特にラテンアメリカや日本における将来の有益なパートナーシップやイニシアチブが予想される。すでにWind Venturesはラテンアメリカ最大のエネルギーと林業企業であるCOPECのベンチャー部門であり、またMUFG Innovation Partnersは、Mitsubishi UFJ Financial GroupのOpen Innovation Strategyの企業向けVC部門だ。

関連記事:ギグワーカー向け電動自転車サブスクのZoomoが12億円調達、社名もBolt Bikesから変更

画像クレジット:Zoomo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hiroshi Iwatani)

チップ不足対策でBoschが約340億円を追加投資、半導体の生産拡大へ

Bosch(ボッシュ)は、現在進行中のチップ不足に対応するため、以前から表明していた半導体生産への投資を拡大する。同社は2021年、2022年に4億7300万ドル(約545億円)を投資すると発表したが、さらに2億9600万ドル(約340億円)を新たな製造設備に投資する。

2021年の資本のほとんどは、ドレスデンにある同社の新しい300ミリウェハー製造施設に充てられ、12月に生産を開始したシュトゥットガルト近郊のロイトリンゲンには約5700万ドル(約65億円)が振り向けられた。今回の新たな資金はほぼロイトリンゲンに充てられ、2025年までに新しい生産スペースと計4万4000平方メートルの近代的なクリーンルームを建設する予定だ。この動きは、自動車市場と家電市場の両方で半導体とMEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)センサーの需要が拡大していることに対応するものだ。

Boschの取締役会メンバーでMobility Solutions事業部門会長のMarkus Heyn(マルクス・ハイン)氏は「Boschはすでに自動車用チップのトップメーカーです。そして、この地位をさらに強固なものにしていくつもりです」と述べた。

(クリーンルームは、空気中に浮遊する粒子、温度、照明、騒音、気圧などの環境要因を厳密に制御できるよう特別に建設される密閉された場所だ。Boschの半導体は、他の多くの半導体と同様、炭化ケイ素でできているため、製造プロセスには絶対的な清澄性が求められる。シリコンは砂の中に含まれており、製造に使用する前に精製する必要がある。この工程は非常に精密で、ほんのわずかな塵でもまずいタイミングでチップに付着すると、完全にダメになってしまう)

Boschの取締役会会長Stefan Hartung(シュテファン・ハートゥング)博士は「当社はロイトリンゲンにおける半導体の製造能力を計画的に拡大しています」と声明で述べた。「新たな投資は、当社の競争力を強化するだけでなく、顧客にも利益をもたらし、半導体のサプライチェーンにおける危機を克服する一助となるでしょう」。

ロイトリンゲンのウエハー工場では、6インチと8インチのウエハーを生産する予定だ。6インチウエハーは現在、8インチや12インチほど使われていないが、このプロセスにより、LEDやセンサーなどの半導体製品の生産コストを削減することができる。2019年から特に8インチのウエハーが不足しており、これらは主にセンサーやMCU、無線通信チップといったものに使われている。ロイトリンゲンの拡張は、自動車や消費者部門でのMEMs(微小電子機械システム)や、炭化ケイ素のパワー半導体の需要増に応えるものだとBoschは話す。

同社のドレスデン工場では、CPU、ロジックIC、メモリーなどの高性能製品の製造に使用される12インチシリコンチップをより多く生産する予定だ。

「コネクティビティと組み合わせたAI手法により、製造における継続的なデータ駆動型の改善を実現し、それによってより良いチップを生産しています」とハイン氏は述べた。「これには、欠陥の自動分類を可能にするソフトウェアの開発が含まれます。また、BoschはAIを利用してマテリアルフローを強化しています。高度な自動化により、ロイトリンゲンのこの最先端の製造環境は、工場の未来とそこで働く人々の雇用を守ることになるでしょう」。

Boschはまた、既存の電力供給施設を拡張し、追加のメディア供給システム用の建物を建設する計画だ。新しい生産エリアは2025年の操業開始が見込まれている。

画像クレジット:Robert Bosch GmbH

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

個人が不動産債権に投資できるプラットフォームGroundfloor、事業拡大に向け資金調達

クラウドファンディングは、企業が資金を調達する方法としてますます人気が高まっていて、投資家も注目している。不動産クラウドファンディングのプラットフォームとして初めて規制当局の認可を取得したGroundfloor(グラウンドフロア)は、2015年以来となる機関投資家からの資金調達を発表した。

Groundfloorは、モバイルネットワークの元幹部のBrian Dally(ブライアン・ダリー)氏と、超党派のJOBS(Jumpstart Our Business Startups)法の共同提案者であるNick Bhargava(ニック・バーガヴァ)氏によって2013年に創業された。アトランタを拠点とする同社は、JOBS法の下で新しいクラウドファンディングの規則が施行され、中小企業が商品を登録することなく非適格投資家から最大7500万ドル(約86億円)を資金調達できるようになった直後に、Fintech VenturesがリードしたシリーズAで500万ドル(約5億7000万円)を調達している

Groundfloorのプラットフォームは、15万人超のユーザーに不動産債権への投資を提供しており、最低投資額は10ドル(約1100円)となっている。CEOを務めるダリー氏は、プラットフォームで提供されるほぼすべての商品は非適格投資家に開放されている、と話す。Groundfloorのユーザーがこのプラットフォームを利用する理由はさまざまで、公開市場より安全な代替手段を求める新規投資家から、ブローカーを使うよりアプリを使った投資を好む経験豊富な投資家までユーザーは多岐にわたるという。

ダリー氏によると、機関投資家と同じようにリスク・リターンプロファイルにアクセスする機会を一般的な投資家に提供するためにGroundfloorを始めたとのことだ。同社はそうした投資家に「公募REIT(不動産投資信託)を買ったり、賃貸物件を丸ごと買って運用リスクや集中リスクを負ったりすることなく」不動産にアクセスする代替手段を提供している。

Groundfloor共同創業者のブライアン・ダリー氏とニック・バルガヴァ氏(画像クレジット:Groundfloor)

ダリー氏によると、同社の「秘策」は規制の枠組みの深い理解にある。「最初の製品を発売するのは、新薬の認可を待つような感じでした」と同氏は話し、最初の州で事業を行うために米証券取引委員会(SEC)から認可を得るのに2年という時間と約100万ドル(約1億1000万円)を要したと指摘した。同社は現在、米国50州のうち49州で証券を販売し、35州で不動産プロジェクトに資本を貸し出している。

Groundfloorは、融資を受ける不動産投資家の実績や経験を重視し、6つの要素でリスクを判断して各ローンにグレードを割り当てるアルゴリズムを使ってプラットフォーム上のローンを引き受けている、とダリー氏は説明する。そして、Groundfloorの投資家はこのスコアをもとに、自分のリスク許容度に見合った配分を決定することができると、同氏は続けた。

Groundfloorは、2021年秋に開始した貯蓄・投資アプリのStairsなど、新たな債務投資商品を追加してプラットフォームを拡大し、現在では投資資産2200万ドル(約25億円)を抱える。Stairsでは、ユーザーは基本的に当座預金として保有する現金に対して4%から6%の利息を得ることができる。Groundfloorは、Stairsのユーザーから得た資金をもとに不動産起業家への融資を行っていて、自社で短期間保有した後に投資家に売却しているとダリー氏はいう。Stairsのユーザーには常に流動性があり、好きな時にアプリから資金を引き出せる、とダリー氏は付け加えた。同氏によると、この斬新な仕組みがSECの承認を得るまでに9カ月かかった。

「これらはRegTechの大きな課題です。多くのリーガルエンジニアリングが必要です。そのため、プロセスには多くの時間がかかりますが、それだけの価値があると考えています」とダリーは述べた。

同社は2018年、自社プラットフォームと株式クラウドファンディングプラットフォームSeedInvestを通じて自社ユーザーからの資金調達を開始し、その後4回の公開株式調達で合計3000万ドル(約34億円)を調達した。現在、個人投資家がGroundfloorの約30%を保有しているとダリー氏は話した。

今回発表されたシリーズBは、2021年に売上高が114%増の1200万ドル(約13億円)に達するなど、Groundfloorが大きく成長した後に行われた。投資家は同年、同社のすべての不動産ローンで平均リターン10%を享受した、と同社は話す。

Groundfloorの不動産ローンクラウドファンディングプラットフォーム(画像クレジット:Groundfloor)

今回のラウンドでは、イスラエルの不動産会社Medipowerから株式で580万ドル(約6億円)、クラウドファンディングプラットフォームSeedInvestを通じてGroundfloorを支援する3600人超の個人投資家から720万ドル(約8億3000万円)の出資を受け、累計調達額は1億1800万ドル(約135億円)になった。また、個人86人がGroundfloorのアプリを通じて直接このラウンドに参加し、その投資は5ドル(約82円)の転換社債で構成されている。ダリー氏は、転換社債はGroundfloorの商品の中で唯一、非適格投資家が利用できないものであり、それは部分的には同社が転換社債をほとんど調達していないためだと述べた。

Groundfloorは、今回の資金調達のニュースの中で、ショッピングセンターと小売用不動産を専門とするMedipowerとの戦略的パートナーシップを発表した。Medipowerは2022年、最大1億ドル(約115億円)、2023年にはさらに最大2億2千万ドル(約252億円)をGroundfloor上のローンに投資する計画だ。テルアビブ証券取引所でティッカーシンボル「MDPR」で取引されている同社は、プラットフォーム上の個人投資家と同じ条件でこれらのローンに投資し、他の投資家が押し出されないよう投資額を制限する予定だ。この取引の一環として、Medipowerの創業者で会長のYair Goldfinger(ヤイール・ゴールドフィンガー)氏がGroundfloorの役員会に加わる。

Medipowerの投資額は、2022年末までにGroundfloorの運用資産の25%に達する可能性があるとダリー氏はいう。同氏は、Medipowerのローン投資を非希薄な資金源とみている。というのも、MedipowerがGroundfloorに投資することで組織に認めてもらうことになり、他のソースからの収益を引き寄せると期待しているからだ。

ダリー氏は「その資本の直接的な恩恵を受けるのは、全国で新しい建設プロジェクトを行い、住宅を建設している不動産起業家たちです」と語った。

Groundfloorは、今回のラウンドで得た資金で、現在約70人で構成されているチームに新たに50人を加える予定だ。同氏によると、新規採用のうち約40%はエンジニアで、同社の成長計画、特に製品面を支えることになる。

「16万人の投資家を、今後2〜3年で100万人にする準備をしています」とダリー氏は語った。

画像クレジット:krisanapong detraphiphat / Getty Images

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

インドのフィンテックCRED、アマゾン出資のSmallcaseへの投資を検討

インドのフィンテック企業CRED(クレド)は、ベンガルールに本社を置くスタートアップSmallcase(スモールケース)への出資を交渉中だと、この件に詳しい3人の情報筋が語った。Tiger GlobalとAlpha Wave Globalが支援する同社は、顧客への資産商品を拡大しようとしている。

CREDが提案したSmallcaseへの投資は、同社を3億〜4億ドル(約345億〜460億円)で評価していると、情報筋は述べた。投資規模は不明だ。協議が進行中かつ初期段階であり、また非公開であるため、情報筋は匿名を求めた。

CREDはコメントを却下した。Smallcaseの創業者はコメントの要請にすぐには応じなかった。

Smallcaseは、新世代の投資家がインドの株式市場に参加するのを支援するプラットフォームを運営している。

同社は300万人以上のユーザーにサービスを提供していて、株式や上場投資信託の100以上のポートフォリオや、独立系投資マネージャー、証券会社、資産プラットフォームへのアクセスを提供する、ライセンスを持った社内専門家チームにユーザーをつないでいる。

Amazon、Sequoia Capital India、Blume Ventures、Arkam Venturesを既存投資家に持つSmallcaseは、KiteやUpstoxなど多くの株式仲介サービスと連携している。

Smallcaseへの投資により、CREDは資産管理製品を拡充することができる。Kunal Shah(クナル・シャー)氏が設立した同社は、3つの主要サービスを展開している。ユーザーの金銭感覚の改善を促すため、クレジットカードの請求を期限内に支払うと、ユーザーにリワードを与える。また、家賃や教育費、その他さまざまな請求書の支払いや追跡もサポートしている。

3つ目のサービスは、資産管理だ。CREDは2021年、Mintというピア・ツー・ピアの貸付サービスを開始し、インフレに負けない投資機会を顧客に提供している。

今回の取引が実現すれば、CREDがここ数四半期に行った一連の投資の中で最新のものとなる。直近の資金調達ラウンドで40億ドル(約4600億円)と評価された同社は2021年、B2B債権のスタートアップCredAvenue(クレドアベニュー)に出資し、企業の経費管理プラットフォームを運営するHappay(ハッペイ)を買収した。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

Apache Arrowを商用化するデータ多用化企業Voltron Dataが約127億円調達

Voltron Dataは2021年、NVIDIAとUrsa ComputingおよびBlazingSQLの元社員たちと、Apache Arrowの共同創業者がローンチした。このグループが集まったのは、Arrowをサービスとする企業を作って、オープンソースのプロジェクトを自分で管理するのが難しい企業を助けるためだ。

Voltron Dataの共同創業者でCEOのJosh Patterson(ジョシュ・パターソン)氏によると、同社はスタンダードを広めるための企業であり、Apache Arrowで、データとアナリティクスを標準化することの威力とその認識を広めていきたい、という。

「私たちの目標は、データアナリティクスのこれまでのエコシステムに取り付いて、それをスタンダードに基づいて改善することです。これまで私たちが他の業界で何度も見てきたのは、彼ら自身がアクセラレータになってより効率的な方法を普及し、共通のビルディングブロックで業界全体を改善していく動きです。私たちが特に普及したいのも、データアナリティクスのエコシステムにおけるモジュール化と組み立て構成方式の技術です」とパターソン氏はいう。

このスタンダードの部分が、Apache Arrowの重要な役割だ。このプロジェクトのウェブサイトのFAQには、「Apache Arrowは、大きなデータセットを処理したり転送するハイパフォーマンスアプリケーションを作るためのソフトウェア開発プラットフォームで、分析アルゴリズムの性能と、異なるシステム間やプログラミング言語間でデータを移送するときの効率の両方の改善を目指している」とある。

パターソン氏によると、データとアナリティクスが進化すると開発者は、日に日に増えていく、さまざまな言語を用いた多数のシステムを互いに接続しなければならない。その巨大な難題をArrowは解決する。「このシステムとあのシステムを接続したいとき、一体何をするのか。そのためのグルーコードのリライトなんて、誰もやりたくない。そしてそんなときが、Arrowの出番だ。Arrowは今、複数のシステムを接続するためのデファクトスタンダードになっている」とパターソン氏はいう。

このオープンソースツールの人気はとても大きくて、同社によるとこれまで、毎月4200万回ダウンロードされている。SnowflakeやDatabricks、Google、Microsoftなども採用している。オープンソースのプロジェクトにしてはすごい人気であるため、Voltronのようにこれの商用化を目指す企業が現れても不思議ではない。

それに、VCたちがこのプロジェクトにお金を投じているのも当然だ。同社はシードとAラウンドで1億1000万ドル(約126億7000万円)を獲得したが、いくら投資インフレと言われる時代であっても、それはすごい額だ。

パターソン氏によると、それは明確な実用目的のあるお金だ。同社が解決を目指す問題は相当な難題であり、どれも複数の顔を持っている。そこで同社としては、それをできるだけ速くやるために投資が必要だ。

「このオープンソースプロジェクトは、パワーユーザーやエキスパートしか使わない沈滞状態になってほしくない。次の世代のユーザーやシステムビルダーやライブラリビルダーにも、その魅力が伝わって欲しい。私たちは問題点を解明して、もっと多くのツールとライブラリを作り、誰でもすぐ使えるという状態をもっと完成させたい」とパターソン氏は語る。

同社は現在、最初の商用製品を作っている。現時点で詳細はあまり語られないが、それはApache Arrowのマネージドバージョンで、オープンソース本体には触りたくないユーザーが対象だ。

同社のワークフォースは世界中に分散していて、現在100名近くの被雇用者がおり、求人も積極的に行っている。パターソン氏自身も黒人で、ダイバーシティとインクルージョンの完備した企業にしたいという。「インクルーシブは我が社にとってとても重要で、これまでのように、人種やジェンダーや性的指向がさまざまな人が入ってきて欲しい。私たちでは、誰もが認めてもらえるし誰もが力を発揮できるんだ」と。

現状は、同社従業員の20%がアフリカ系米国人、15%がヒスパニック、15%がアジア系、そしておよそ20%が女性だ。今後の成長とともに、さらにダイバーシティを充実していきたいという。

調達した資金は、2200万ドル(約25億3000万円)がシードラウンド、8800万ドル(約101億3000万円)がシリーズAだ。AラウンドをリードしたのはWalden Catalyst、これにBlackRockやAnthos Capital、Battery Ventures、Coatue、GV、Lightspeed Venture Partners、Nepenthe Capital、Redline、The Factoryが参加した。シードはBlack RockとWaldenがリードし、LightspeedとGVとThe Factoryが参加している。

画像クレジット:myshkovsky/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

近い将来、すべてのブロックチェーン企業が暗号投機家になる

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

ロシアが間もなくウクライナに侵攻するというニュースが流れたばかりの時に、落ち着いてテクノロジースタートアップ市場の現状について活き活きとした原稿を書くのは、ちょっと難しい。独裁政治よりも民主主義を信じている人にとっては、かなり暗い一日になるだろう。そして、すぐ近くの地平線上にある、迫りくる地政学的な雲は、さらに悪いニュースを約束している。

それでも、ニュースエンジンは前進していて、自分の分野で何かをしなければならない。そこで、暗号市場での資本リサイクルについて話すことで仕事の手を止めないことにしよう。

それは、ぐるぐると回っていいる

現在、テクノロジーの世界で徐々に勢いを増しているイノベーションの1つが、企業が創立後のより早い段階からベンチャーキャピタル活動(防御的なものも攻撃的なものも)を始めるようになっているということだ。

OpenSea(オープンシー)は、その最新の例だ。同社は米国時間2月12日に、OpenSea Ventures(オープンシー・ベンチャーズ)という組織と「Ecosystem Grants」(エコシステム・グランツ)という名のプログラムを立ち上げることを発表した。どちらも「Web3とNFTの世界的な成長を促進するクリエイター、チーム、新技術を支援することを目的としている」という触れ込みだ。

OpenSeaから資金を得る企業は「OpenSeaのリーダーシップへのアクセス」を行うことが可能で、当然ながらa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)を含むOpenSeaの投資家へもアクセスすることができる。

The Block(ザ・ブロック)が指摘するように「OpenSeaは、ユニコーンのAlchemy(アルケミー)やFTXなどの、独自のベンチャーユニットを立ち上げた数多くの暗号スタートアップの一員になる」のだ。いずれも非公開企業であることをお断りしておく。ともあれ、急成長したブロックチェーン企業が余剰資金を得て、その資金を他のグループに再投資し始めることはよくある話だ。

Intel Capitalが企業のベンチャー取引のパラダイムだった時代は終わった。現在は、Coinbaseがおそらく最近最も尊敬されている企業投資チームだが、ライバルたちはそれに挑戦しようとしている。

だが、本当にそうなのだろうか?この近辺には奇妙なニュアンスがある。

  • Coinbaseは非公開の時代、a16zがバックアップしていた
  • Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、最近自身の暗号ファンドを立ち上げたKatie Haun(ケイティハウン)氏とともに、Coinbaseの役員として残っている
  • Coinbase VenturesがOpenSeaを支援
  • a16zもOpenSeaを支援
  • OpenSeaは現在、独自の投資を行っているが、理論的にはある程度はa16zとの共同投資となっているはずだ

a16zはまた、独自の投資を行っているAlchemyにも出資しているが、これはなかなかのからみ具合だ。OpenSeaはAlchemyの技術を使用しており、すべてが統合されている(このような中央集権化とファミリー化が、分権化すなわち民主化と正反対であることはいうまでもない)。

資本が暗号を追い、暗号が資本を追うこの渦巻は、いつほど収まり始めるのだろうか、そしていつ内部での競争が強まるのだろうか?もしCoinbaseがかねての計画通り独自のNFTプロダクトをローンチしたら、OpenSeaはいつまで共通の投資家に寄り添っていたいだろうか?Coinbaseがインフラを売りたいと思って、Alchemyのスペースに入ってきたらどうなるのだろうか?Alchemyがどれだけの活動をしているかを考えると、率直に言って、Coinbaseがそれをしない理由はない。

現在、OpenSeaが自らのイグジットの前に、資本を他のベンチャーに再投資しているのは奇妙なことだ。しかし、より大きな暗号資産市場の変化のペースが、単純なビジネスモデルである投機を行う企業を、多数ではないにしても少なくともある程度の数以上生み出したようだ。すごい!そして奇妙だ!

私は、主要な暗号資産プレイヤーとその財政スポンサーのクローズドネットワークを監視しようとしている。私にとっては、他のベンチャーカテゴリーよりも中央集権的で、ちょっと奇妙な感じを受けている。Web 2.0で大金を稼いだ人たちが、この先Web3が何になろうとほとんどの利益を手にしようとしているように見える中で、同じ人たちが、分散型の自律組織やゼロトラスト体制などを推進している話を読み続けていると、口の中にこみ上げる苦みを拭い去ることができない。

さて、私はもう消えて、今は自由な社会と民主主義の運命について心配することにしよう。月曜日までにロシアがウクライナに侵攻していないことを祈る。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

禁酒スタートアップの序盤戦

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは!今日は、シンプルな料理にこだわった。私たちの持ち場の、肉とポテト、豆のプロテインとグルテンフリーのデンプン。すなわちスタートアップの活動だ。ということで今回は、私たちがとてもすばらしいと思うスタートアップのニュースをご紹介する。

個人的な話で恐縮だが、私はお酒とは複雑な事情を抱えていた。最終的には飲酒を完全に止めた。なので、先々週Reframe(リフレーム)が私の視界に入ってきたとき、私は興味を持った。

このスタートアップは、まだアルコール依存症ではないがアルコール摂取量を減らしたい、あるいは完全にやめたいと考えている人に焦点を当て、アルコール摂取量を減らすためのアプリを提供している。飲酒に限らず、あらゆる薬物中毒や依存症、その問題を解決するための市場は巨大だ。私がこのことを知っているのは、酒の量を減らしたり、完全にやめたりしようとしている多くの人たちと、話をできる機会があるからだ。パンデミックの中で状況が悪化していることも付け加えておこう。

なので、Reframeが最近急速に成長していることを知っても驚きはなかった。同社はAtlanta Venturesから140万ドル(約1億6000万円)を調達した後、Y Combinatorに参加している(2021年夏のクラスで、私はお気に入りの企業の1つとして挙げている)。アクセラレータープログラム終了後に340万ドル(約3億9000万円)を調達し、つい最近1250万ドル(約14億4000万円)のラウンドをクローズした。最後の資金調達ラウンドは、2021年末に行われ、資金調達後の評価額は1億ドル(約115億2000万円)となった。

このスタートアップは明らかに何かをつかんでいる。そして、ありがたいことに、同社はその結果を詳細に話してくれた。

同社のCEOであるVedant Pradeep(べダント・プリディープ)氏に話を聞いたところ、Reframeはこの6カ月間でARRが約79%の複利で拡大したという。また、プリディープ氏は、同社では過去12カ月間に毎週10.3%の成長が見られたという。その結果、1月28日までに計950万ドル(約10億9000万円)のARRが発生したが、先週初めにプリディープ氏がメッセージを使ってその数字を1000万ドル(約11億5000万円)に修正してきた。

さらに良いことに、認知行動療法や日記などのツールを組み合わせることで、人々の飲酒量を実際に変化させることができている。プリディープ氏によると、約88.63%のユーザーが2カ月で「飲酒目標を達成した」と報告しているという。さらにCEOは、自社のデータに基づいて、このデータは「彼らの飲酒量が50%(以上)減少したことを意味します」と付け加えた。

大したものだ。

さて、私は薬物関連の営利目的のケアには少々うるさい。そこで私は、プリディープ氏に会社の価格モデルや、Reframeに支払うだけのお金がない人たちに対する方針について話を聞いた。少なくとも私の基準では、この会社は公正なバランスをとっている。

テクノロジー界のリーダー、著名人、悪党が皆、大金を得ようと暗号資産の世界に頭から突っ込んでいるように見える今、Reframeは現実の問題を解決することもお金を稼ぐ方法の1つだということを思い出させてくれる。最近のスタートアップの価格傾向を考えると、なぜこの会社の最新の評価額にもう1つゼロが加わっていないのかが不思議だ。

そして、お酒といえば

今日のテーマであるお酒を続けよう。次はワインだ。それはすべてだ。

ワインについて学ぶ時間は決して無駄なものではない。Reframeの顧客でないのなら、ワイン通でいるのは楽しい過ごし方だ。友人と椅子を並べて、ゆっくりと頭の中に酔いを回すことが好きな人をを酔わせるのが好きな人は、カリフォルニアのしっかりしたカベルネとともにシャブリを楽しむ方法を知ることで食卓が華やぐだろう。

しかし、すべてのワインが飲むためのものではない。その中には、実際に投資に適したものがある。それこそがVinovest(ビノベスト)が、ワインの価格上昇に賭けることができるプラットフォームを開発している理由だ。最近同社は、顧客が個々のワインに投資できるサービスをリリースした。以前のVinovestは、ワイン投資のカテゴリーで、ロボアドバイザーによるサービスに力を入れていた。簡単に言えば同社は、これまで手の届かなかった高級ワインのような、代替投資の選択肢を求める人々が増えていることに賭けているのだ。

このVinovestのニュースを取り上げたのは、2021年に運用資産残高(AUM)が500%成長したことをはじめとして、何かが起きようとしているからだ。同社の勇猛果敢な広報担当者であるWilliam Ruben(ウィリアム・ルーベン)氏によれば、Vinovestは25万本以上のボトルをユーザーの名のもとに管理しており、それらは「世界各地にある特注の倉庫」に保管されているという。

暗号資産の急増や、デジタルコレクション購入の動きなどの中で、おそらくワイン投資は、ありふれた401(k)により多く組み込まれるようになるだろう。もしそれがうまく行けば、Vinovestの市場への賭けは、楽しみの多い果実を実らせることができるだろう。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

自動車ソフトウェア制御のTTTech AutoにAptivが出資、先進運転支援システムを促進へ

自動車メーカーは、より多くの売上を生み出すために機能やソフトウェアサービスを満載した自動車を販売したがっているが、情報過多という課題を抱えている

これらの、ソフトウェアによって制御された自動車には、電動パワートレインから運転支援機能、インフォテインメントまで、あらゆるものを動かす無数のシステムオンチップ(SoC)が搭載されている。最も重要なのは、それらがすべて協調して動作しなければならないということだ。

カメラやレーダーなどの車両センサーがデータを取得し、それを変換してパワートレインに送り、急ブレーキなどの機能を可能にする。そのすべてがミリ秒単位のリアルタイムで行われ、同時にドライバーが車内でストリーミングしているSpotifyを妨げないようにしなければならない。

こうした重要な情報の流れを管理するために、ここ数年、スタートアップが次々と誕生している。ウィーンを拠点とする自動車安全ソフトウェアプロバイダー、TTTech Auto(TTテックオート)もそのうちの1社だ。同社の主力製品であるMotionWiseは、自動車のさまざまな制御システム間でデータの流れを可能にするソフトウェア安全プラットフォームだ。TTTech AutoのCEOで共同創業者のGeorg Kopetz(ゲオルグ・コーペッツ)氏によれば、互いに干渉することなく安全かつ確実に、そしてリアルタイムに機能するようにするものだという。

TTTech Autoはこのほど、大手自動車技術サプライヤーであるAptiv(アプティブ)の出資を獲得した。これはAptivが先進運転支援システム(ADAS)を促進する技術への関心を深めていることをうかがわせる。TTTech Autoは、自動車、航空宇宙、モバイル機器、オートメーション産業にわたる安全なネットワークコンピューティングプラットフォームを提供するTTTech Groupから生まれた会社で、米国時間2月3日にAptivがリードした2億8500万ドル(約328億円)のシリーズCラウンドを発表した。同ラウンドには既存投資家のAudi(アウディ)も参加した(シリーズCは今後2カ月以内の完了が見込まれている)。

Aptivは、高性能ハードウェア、クラウド接続、オープンかつスケーラブルでコンテナ化されたソフトウェアアーキテクチャを含む完全なスタックを自動車メーカーに提供し、ソフトウェアによって制御されたクルマへの移行を加速させることに取り組んでいる時期に、戦略的投資家としてTTTech Autoを支援する。

Aptivは1月、不可欠なインテリジェントシステムの開発、運用、管理を行うエッジ・ツー・クラウド技術を統合すべく、Wind River(ウインドリバー)を43億ドル(約4950億円)で買収した。TTTech Autoは売りに出ている会社ではない。コーペッツ氏は、業界の複数のプレイヤーと協力できるように独立して事業を継続したいと考えているが、MotionWiseがソフトウェア制御の分野で主要プレイヤーになるための道筋において、スマート車両アーキテクチャを提供するというAptivの戦略を補完できることは喜ばしいことだと話す。

Aptivの社長でCEOのKevin Clark(ケビン・クラーク)氏は、2月3日に行われた同社の2021年第4四半期および通年の決算説明会で「AptivとWind Riverの専門知識と補完的技術の組み合わせ、さらにアクティブセーフティソフトウェアアプリケーションを強化するTTTechの確定的フレームワークは、OEMがソフトウェア制御車両の開発と展開をコスト効率よく加速するのを支援するのにユニークな立場にあります」と述べた。

TTTechとAptivは、過去にAudiの自動運転向け中央運転支援コントローラーで協業しており、Aptivがハードウェア側のシステムサプライヤーとして協力し、TTTechはADAS全体の運用を確保するためのアーキテクチャ設計と安全ソフトウェアプラットフォームを支援した。

MotionWiseはこれまで主にADASやその他の自動運転機能に使われてきたが、レベル4およびレベル5の自律性に向けて、ソフトウェアをサポートすることを目標としている。レベル4とレベル5に関しては、SAE(自動車技術者協会)はそれぞれ限定された運転設計領域またはすべての条件下で自律システムがすべての運転を管理することと定義している

このことを考えると、Aptivには自律走行車のボンネットの下で機能するスケーラブルなシステムアーキテクチャに戦略的に投資する、より長期的な理由があるのかもしれない。Aptiv(旧Delphi)は2017年、自律走行車技術企業のnuTonomy(ニュートノミー)を買収し、その後、Motional(モーショナル)というHyundai(現代自動車)との合弁会社としてスピンオフした。Motionalは現在、Lyft(リフト)と提携して自動運転のHyundai Ioniqを使ったラスベガスでのロボットタクシー商業展開の2023年開始や、2022年サンタモニカでのUberとの自律配達の試験実施などに向けて準備を進めているところだ。

Aptivもコーペッツ氏も、MotionWiseが将来的にMotionalの車両に使用されるかどうかについては言及しなかった。もともと2017年に発売されたこの技術は、Hyundai車を含め、世界で200万台を超える乗用車にすでに搭載されている。MotionWiseは、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Porsche(ポルシェ)、Audi(アウディ)、Kia(起亜自動車)、SAIC Motor Corporation(SAICモーターコーポレーション)の車両のソフトウェアスタックにも統合されていると、コーペッツ氏は話す。

TTTechは今回の資金をアジアに重点を置いた国際的なチームの育成に使う予定だ。同社はすでに、SAIC Motor Corporationとともに合弁会社(Technomous)を運営している。ソフトウェアと安全工学、戦略的製品管理、事業開発の分野で、アジア、欧州、北米で人材を採用する予定だとも述べた。

加えて、TTTechは買収・合併の可能性にも目を向けている。同社は、エコシステム内のさまざまなパートナーと協働できるよう、独立企業であり続けたいと考えているが、自動車メーカーの継続的な安全ニーズに対応し続けるために、補完的な製品、技術、サービスの獲得に関心を持っている。

「この分野では協力の余地が大きいと考えており、今回の資金調達は、独立路線で成長しつつ、共同融資や共同イノベーションを必要とし、単独では実現できない企業とも協力する機会を与えてくれます」とコーペッツ氏は述べた。

画像クレジット:TTTech Auto

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

GM Venturesが急速充電対応バッテリー技術のスタートアップSoelectに投資

ノースカロライナ州に本社を置くバッテリー技術のスタートアップSoelect(ソエレクト)は、1100万ドル(約12億円)のシリーズAラウンドをクローズした。同社は、新たに調達した資金を、電気自動車の次世代バッテリーを可能にするかもしれない、急速充電が可能な電極技術の拡張に使う予定だ。

リードインベスターのLotte Chemicalと投資会社KTB Networkに加え、General Motorsのコーポレートベンチャーキャピタル部門であるGM Venturesも戦略的投資家として参加した。GM Venturesは、輸送の安全性や持続可能性に関するソリューションを提供する企業に投資する傾向があり、そうしたソリューションは将来のGM車や製造施設、事業運営に導入することができる、とGMの広報担当Mark Lubin(マーク・ルービン)氏は述べている。

「SoelectをGM Venturesのポートフォリオに加えることの競争上の優位性の1つは、急速充電が可能な電極技術であり、これは将来のリチウム金属電池と固体EVバッテリーの電極設計の両方を可能にするものです」と、ルービン氏はTechCrunchに語った。「今回の投資、そしてこの分野における他の投資は、将来のGM製品の航続距離の増加、効率向上、コスト削減を可能にするバッテリー技術の進歩を加速させるGM Venturesの取り組みをさらに拡大します」。

VCが最近投資したバッテリー会社はSoelectだけではない。バッテリー寿命を向上させ、バッテリーを2倍のエネルギー密度にする「電極なし」のリチウム金属電池を持つ、MITのスピンアウトスタートアップSolidEnergy Systems(SES)にも投資し、提携した。SESとGMは、マサチューセッツ州にプロトタイプ製造施設を建設し、2023年までに大容量の量産前バッテリーを作ることを目指している。

関連記事:GMがバッテリーのエネルギー密度向上でSolidEnergy Systemsと提携

GMは、パートナーのLG ChemとUltiumバッテリーのための2つのバッテリー製造施設を建設中だが、GMは他の実りあるバッテリー提携の可能性にもオープンだ。同社は2021年10月、長寿命で急速充電でき、そして持続可能なバッテリーを実現するためのバッテリー技術を開発する新しいバッテリー研究施設をミシガン州に建設する計画を発表した。GMは、1リットルあたり最大1200ワット時のエネルギー密度を持つバッテリーを製造し、コストを少なくとも60%削減したいと考えている。

関連記事:GMがより低コストで航続距離の長いEV用バッテリーの開発施設を建設中

画像クレジット:Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】失望させられる投資家の8つの典型:創業者が投資家のアーキタイプにはまってしまうのを防ぐ方法

筆者は先に、すべての資本が平等に創出されているわけではないこと、そして私たちが超潤沢な資金調達の時代に生きていること、多くの点で創業者にとって今までで最高の時代であることを論じた記事を執筆した。

このような環境では、どの投資家も、独自の価値をどのように付加できるかについてよく練られたピッチを持っている。高成長スタートアップの創業者であるということは、これまでに経験したことのない多くの状況に遭遇することを意味しており、ビジネスを構築する際にパートナーとなる投資家を選ぶことは鍵となる決定事項である。このコンテキストでは、排他的な付加価値の約束が深く共鳴する。

驚くべきことに、ほとんどの創業者は、投資家から受け取る実際の価値が必ずしも約束されたものと同じではないことに気づく。筆者はすばらしい投資家たちと仕事をする機会を得てきた。彼らは創業者たちと優れた思考パートナーシップを築いている。彼らは企業の軌道を変える決断をする上で非常に価値があり、有能な人材を惹きつける力を持ち合わせている。

ベンチャー投資は見習い的なビジネスであり、私は偉大な投資家から学ぶ機会を得るたびに謙虚になる。しかし、創業者たちと話をしてみると、彼らが選んだ投資家たちは、資金提供後にさまざまな典型的行動を示しているようだ。そのすべてが価値を付加するのでなく、価値を損なうものとなっている。

創業者たちが価値の約束を越えたものを見据えるのを手助けするという精神に基づき、創業者たちが投資を受けた後に経験する投資家との関係の一般的な典型についていくつか掘り下げてみよう。創業者も投資家も、ユーモアのセンスを持ってこれらの典型を読み解いて欲しい。「シリコンバレー」にまつわる秀逸のエピソードのように、効果を意識した誇張も多少含まれているが、それほど多くはない。

失望させられる投資家の8つの典型

ナルシスト:ナルシストは完全に自己中心的であり、自分たちのファームがいかに優れているか、そして自分たちがいかに優れているかなど、すべてが常に自分たちに関するものである。彼らは自分自身に夢中になっていて、創業者たちが実際に何を求めているのか、何を必要としているのかを理解するために時間をかけることはない。ナルシストの中には全盛期をとっくに過ぎてしまっていて、単に過去の成功に乗じようとしているだけの人もいるかもしれない。あなたのスタートアップに価値をもたらすことはないだろう。

ハンマーを持った子ども:この投資家は「私がGoogleにいたときはこういうことをやっていた」とか「Airbnbの役員だったとき、こんなことをやった」などとアドバイスする。彼らはハンマーを持っていて、目にするすべての問題は、打ち付ける釘のように見えている。その針は一様で、彼らが自身のプロフェッショナルなキャリアで経験した意義深い経験の中でしたことと同じ方法で打てると思っている。彼らには、問題にアプローチし解決する方法が他に10通りあるかもしれないという視点が欠けている。特に破壊的な「幹部をクビにする」ハンマーを持っている投資家もいる。

知ったかぶり:ミーティングに参加しているが、創業者を含めて誰の意見も聞きたくないと思っている投資家だ。「私は彼らのシリーズCの前にFacebookに投資している。ゆえにあらゆる答えを持っている」。創業者や他の取締役会メンバーを尊重していないため、重要なリレーションシップと取締役会の力学を損なっている。また「OKR」や「経常収益」といった彼らが特に好む特効薬を、そのビジネスや状況に適しているかどうかを理解せずに持っている可能性もある。

人の言いなりになる人(別名おべっか使い):この投資家は、決してあなたに厳しいメッセージを伝えることはない。彼らは次の会社への推薦を望んでいるので、常に創業者と友達になろうとする。ミーティングにふらりと立ち寄り、ディナーや豪華なスキー旅行に招待してくれる。しかし、難しい局面になると「創業者が望むものは何でも正しい答え」という姿勢を取り、思考のパートナーとはならず、価値ある視点をもたらすこともない。

サービスルーター:分厚いRolodex(ローロデックス:回転式名刺ホルダー)を持つ人を求めているなら、サービスルーターがある最適な場所に来たことになる。CFO、またはセールスマネージャーが必要?サービスルーターは人を教えてくれるが、卓越性を目指すこともなければ、例えば新しいセールス担当VPにどんな良さがあるか創業者が理解するのを助けることもない。サービスルーターはポートフォリオ企業間の再循環を得意としている。問題は、その人材はある企業では良い仕事をしたかもしれないが、あなたのスタートアップには適さないということだ。

Needy Ned(ニーディ・ネッド、誰かの注意を引こうと飽くなき追及をする人のこと):この投資家は、その過程で彼らが付加価値を生み出しているかどうかに関係なく、あなたの会社が行うすべてのことに関わろうとするので、あなたをイライラさせるだろう。これは、彼らが取締役会に参加した最初の会社ということかもしれないし、彼らはベンチャーファームの若手であるかもしれない。あなたが自分のビジネスの運用上の詳細をすべて話していないのに、彼らが驚いて憤慨したとき、Needy Nedを相手にしていることがわかるだろう。Needy Nedのもっと厄介なバージョンは、単に関わりたいということに留まらず、創業者の手からハンドルを奪おうとして、自分たちのやり方で物事を進めようとする人だ。

数字に執着する人:この投資家にとって、ビジネスは大きくて複雑なスプレッドシートであり、すべては数または比率にまとめることのできるものだ。彼らは通常、プライベートエクイティ、投資バンキング、または成長投資に由来しており、一般的に、レベニューチャーン、ARRや「マジックナンバー」といった用語を使用する。しかし困ったことに、彼らは数字の背後にあるストーリーを理解しておらず、数字を動かすために何が必要なのかも把握していない。

ドライブバイ(次の場所へ移動したり別のことをするために手短に済ませる意):投資家があなたのところに資金を送ってきた後、あなたの邪魔をしないように望むなら、ドライブバイはあなたのために存在している。彼らはマシンを取引している。あなたとの取引が成立する前であっても、すでに次の取引を行っている。2年が経過する頃には、彼らは他に10件の取引を完了しており、創業者や企業としてあなたに興味を持つことはない。取締役会に1、2回出席するかもしれないが、出席中はメールをチェックして、最新の取引を確定させるだろう。

創業者への私の思い

残念なことに、創業者たちは日々このような典型にはまっている。あなたが資金調達の選択肢を検討する際、留意すべき点をいくつかお伝えしたいと思う。

人はファームよりもはるかに重要である。ブランドを買うのではなく、人を手に入れよう。その人に対してデューデリジェンスを行って欲しい。創業者たちと話し合い、投資家があなたに提供するリファレンスを、あなた自身のバックチャネルを使って掘り下げる。あなた、共同創業者、既存の取締役会の間でパーソナリティとスタイルが一致していることを確認しよう。さらに、投資家の知識と過去の経験がビジネスと一致していることを確かめることが重要である。

その人とファームの両方があなたのビジネスを本当に理解していることを確認する。これを評価する良い方法の1つは、彼らがあなたのプロダクトにどれだけ勤勉であるか、そして彼らがサードパーティによって行われたコールトランスクリプトをレビューするのではなく、個人的に顧客と話をしているかどうかを調べることだ。投資家が、投資前にあなたが築き上げているものを真に理解するための時間を取らない場合、投資後にそれを理解し、さらに重要なことに、価値ある思考パートナーになる可能性はどのくらいあるだろうか?

誰もが好天時の船乗りである。ただし、失敗や小さなミスがあると(拙著『Anticipate Failure』で指摘しているように、それは間違いなく起こる)、最悪の行動が彼らの醜態を助長してしまう。重要な決定を下す必要があるときや、状況が厳しくなったときに、その人がどのように行動するかを検証しよう。検証手段としては、その投資家に自分たちの投資先の中で最も業績の悪い会社を紹介してもらい、うまくいっていないときに彼らがどのように行動していたかを直接聞く方法がある。

付加価値のエビデンスをチェックし、定量化が可能な方法でタームシートに記入する。彼らが人材採用を支援すると言ったら、最初の2四半期の目標を書いてもらう。彼らが顧客を支援できると言ってきたら、彼らが追加することにコミットする収益額を正確に尋ねてみよう。もし彼らが、自分たちのブランドが独立系取締役を惹きつけるというのであれば、彼らが配置した取締役に話を聞いてみて欲しい。

時間をかけて投資家との相性を見つければ、優れたものを構築するチャンスを最大化することができる。取締役会の中でたった1人の悪い投資家であっても、あなたの成功の可能性を大きく損なう可能性があり、残念ながら私はそのようなことを何度か見てきた。

約束や評価、小切手のサイズに惑わされないようにしよう。これらは一時的なものであり、その輝きから生まれるシュガーハイは長くは続かない。目標に目を向け、投資家を賢く選定して欲しいと願っている。

編集部注:Lak Ananth(ラック・アナント)氏は、グローバルなベンチャーキャピタル企業であるNext47の創業CEO兼マネージングパートナー。10億ドル(約1155億円)の評価額を超えて成長を支援した複数の企業の役員を務めている。

画像クレジット:nitiwa / Getty Images

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(文:Lak Ananth、翻訳:Dragonfly)