Facebookはディープフェイクのファクトチェックなどでロイターに資金を提供

通信社のロイターでは、目撃者からの写真や動画は、現在すでに入念なメディア検証プロセスを経たものを掲載するようになっている。今度はその専門技術を、Facebookの偽情報対策に役立てる。米国時間2月12日、ロイターは新しくReuters Fact Check(ロイター・ファクト・チェック)事業とブログをスタートさせた。この事業は、Facebookに蔓延するウソを暴くためのサードパーティーパートナーになると発表されている。

ロイターから派遣される4人のチームが、Facebookが提示した、またはロイターの編集チーム全体が怪しいと判断した投稿動画や写真、さらに英語とスペイン語のニュースの見出しと記事を審査する。そこで発見されたものは、ロイター・ファクト・チェックのブログで、中心的主張、なぜそれがフェイクなのか、部分的にウソなのか、本当なのかが一覧表示される。Facebookはその結論をもとに偽情報の投稿を嘘とわかるようにラベルを付け、ニュースフィードのアルゴリズムで評価を落とし、拡散を抑制する。

「金銭的な合意内容についてはお話しできませんが、彼らはこのサービスに資金を提供しているのは確かです」と、ロイターのグローバル・パートナーシップ担当ディレクターであるJessica April(ジェシカ・エイプリル)氏はFacebookとの契約について私に話した。ロイターは、アメリカのファクトチェッキングパートナーズの名簿に名を連ねている。これには、AP通信、 PolitiFact、Factcheck.org、その他4つの団体が加盟している。Facebookは60を超える国々でファクトチェックを実施しているが、フランス通信社の地方支社など、1つの企業とだけ提携していることが多い。

ロイターは、ワシントンD.C.に2人、メキシコシティーに2人のファクトチェック担当者を配置する予定だ。参考までに言うなら、メディア複合企業トムソン・ロイターには2万5000人以上の従業員がいる(ロイターの社員が3000人で、そのうち2500人が記者)。ロイターのUGC(ユーザー生成コンテンツ)情報収集部門のグローバル責任者であるHazel Baker(ヘイゼル・ベイカー)氏は、ファクトチェックチームの人員は、Facebookとの提携や2020年の大統領選挙からその先を見越して、増える可能性があると話している。ファクトチェック担当者は、12人態勢のメディア検証チームから独立して作業を行う。ただし、メディア検証チームが得た見識は共有される。

ロイター・ファクト・チェックは、さまざまな偽情報形式にわたって検証を行う。「私たちは段階を設けています。一番下の段階は、操作はされていないが内容が失われているコンテンツ、つまり再利用された古い動画です」とベイカー氏。偽情報特定講座の教材を共著した彼女は、そのレッスンを引き合いに出して話してくれた。次の段階は、遅くしたり、早くしたり、継ぎ接ぎしたり、フィルターをかけるといった簡単な編集を加えた写真と動画だ。次に、やらせのメディアがある。特定の政治家のふりをして録音された音声クリップなど、演じられたり捏造されたりしたものだ。次は、コンピューターで作成したでっち上げ画像や、実際の動画に嘘のものを入れ込むなどしたものだ。「そして最後に、合成またはディープフェイク動画があります」とベイカー氏は、もっとも手の込んだものとして示した。

ベイカー氏は、デマや偽情報をファクトチェックに送るのが遅すぎるというFacebookへの批判を認識している。ひとたび嘘と判定されたコンテンツの評価を下げることで、拡散を80パーセント減らせるとFacebookは主張するが、ファクトチェック担当者に疑わしいコンテンツを送る時点で、すでに膨大な数の怪しい投稿が審査待ちの状態にあり、どれだけの時間がかかるかは考慮されていない。「ロイターは、スピードの重要性を認識しているという点で優れています」とベイカー氏は強調する。Facebookが提出したものばかりでなく、ロイター全体のファクトチェックの経験を活かして自身で選択したコンテンツの審査も行うのは、そのためでもある。

残念ながら彼らが対応しない問題として、たとえそれが扇動的、中傷的な内容で選挙戦への寄付を募るものであったとしても、Facebookが政治広告のファクトチェックを行わないという方針への多方面からの批判がある。「Facebookのポリシーには私たちはコメントしません。完全に彼らの問題だからです」とベイカー氏はTechCrunchに話した。我々は、政治広告の禁止またはファクトチェックの実施、少なくとも大統領候補によるマイクロターゲティングの規制、誤解を招く余地のない規定のフォーマットを使用した場合のみ選挙広告を許可することなどについてFacebookに問い合わせている
関連記事:Facebookの従業員グループが政治広告の嘘を規制するようザッカーバーグ氏に要求

偽情報の問題は、2020年アメリカ大統領選挙の予備選挙に入ると増大した。単なる金銭的な動機よりもむしろ、個人のネット荒らしから怪しい選挙活動員、外国の諜報部員に至るまで、民主主義を貶めたいあらゆる人たちの政治的誘因がそこにはある。できるなら、ロイターの経験と合法性を備えた組織が、4人ではなくもっと多くの人員を配置できるよう予算を投入して数千万人のFacebookユーザーを守って欲しい。

不幸なことに、Facebookは、長年にわたる怠慢な安全対策の埋め合わせに利益をつぎ込んでいる。コンテンツのモデレーター、セキュリティー技術者、ポリシーの改善のために、総収入の伸びは2018年の末に前値比で61パーセントだったものが、前四半期にはわずか7パーセントに落ち込んでしまった。改善への努力が数字に表れている。だが、依然として問題は解決されていない。

デリーの抗議活動家に警察が発砲という動画。判定は嘘

Facebookは、ユーザー数、収入、利益の急増により、何年にもわたり絶好調の収支報告を行ってきた。しかし、マージンが驚異的に跳ね上がったのはソフトウェアの力によるものだと思われていたものが、じつは安全対策への出費を怠っていたためだと判明した。ユーザーの保護にかかる費用に突然目覚めたのだが、それはAirbnbなどの他のハイテク企業にも打撃を与えた。2018年末には2億ドル(約220億円)の年間利益があったAirbnbだが、窃盗、破壊行為、差別に対処した1年後には、3億3200万ドル(約365億円)の損失に転落したとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている。

ロイターの支援に資金を提供することは、Facebookにとって正しい方向への新しい一歩となる。ファクトチェックに着手するようになってから2年。残念ながら、あまりにも遅いスタートとなった。

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(翻訳:金井哲夫) 

大統領選挙戦でデジタル広告担当だった私がTwitterの政治広告禁止を支持する理由

2020年大統領選挙キャンペーンで、当時は大統領候補だったセス・モルトン下院議員(8月に撤退を表明)のデジタル・ディレクターとして私は、インターネット上で行われるあらゆるキャンペーン活動を取り仕切っていた。嫌われ者の電子メール、拡散して欲しいと願う動画、実地で活動してくれる支援者をまとめるオンラインインフラなどいろいろあるが、中でも時間的にも資金的にも最大の投資先はデジタル広告だった。

私たちのキャンペーンでは他の多くの候補者の場合と同様、給与を除き、単独で最も多くの資金が費やされるのがデジタル広告だった。ところが、そうした広告は、キャンペーンにとっては非常に厄介なものだ。民主主義にとって有害であり、それで利益を得ている企業にとっても害悪だ。先週、Twitter(ツイッター)のCEOジャック・ドーシー氏は政治広告を禁止するという、大胆にして初めての一歩を踏み出した。Facebook(フェイスブック)のCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏とGoogle(グーグル)のCEOであるサンダー・ピチャイ氏も、それに続くべきだ。

デジタル広告は、新しい支持者を得るためには最も重要なチャンネルのひとつであり、「10ドル、5ドル、または、できることならなんでも構わないのでご支援いただけますか?1ドルでも大助かりです!」といった極めて重要なお願いをすることができる。米民主党全国委員会がこの2月に、大統領候補者が最初の2回の討論会に参加するためには、少なくとも6万5000人の個人寄付者を集めなければならないと発表して以来、そのような少額の寄付をしてくれる人たちがキャンペーンの生命線になった。

関連記事:デジタル政治広告の禁止は極端主義者を明らかに利する(未訳)

困ったことに、民主党の寄付市場で競合する企業は、2016年にはたったの5社だったものが今では25社となり、どの陣営も新しい寄付者を集めようと必死になっているため、費用が高騰している。激増だ。

私たちは(他所も同じだと推測するが)、本来は利益を生むはずの広告で、10ドル、20ドル、あるいは30ドルを出費して、わずか1ドルの新しい寄付者を獲得するという赤字の運営を日常的に続けていた。キャンペーンにおいて、これは最悪の取引だ。金を失うために大量の資金を投入して、数週、数カ月と、高価なキャンペーンの花道を伸ばす。そこで儲けているのはFacebookだけだ。大きなスケールになると、その結果は膨大なことになる。残っている18名の民主党候補者もこの悪循環にはまり、Facebookとグーグルにすでに5300万ドル(約58億円)以上を投じている。そのほとんどが、政治広告費用だ。

この5300万ドルの資金があれば(これに前候補のクリステン・ギルブランド上院議員とジェイ・インスリー、ワシントン州知事の数百万ドルを加えれば)、誰が候補者になろうとも有権者の支持を民主党に集めるためのインフラ整備や、11月の民主党候補者討論会に役立てることができたはずだ。ところが、そのすべてがFacebookとグーグルの懐に入ってしまった。

政治広告は民主主義の敵だ。ネット上での関心の移り変わりの素早さ、それを助長する文字数制限、そしてデジタル世界の門番となっているエンゲージメントアルゴリズムにより、キャンペーンでは複雑な政治的課題をたったの2行の骨子もどきに凝縮しなければならず、それにで討論会の司会者も説得できない。誰かに政治広告をクリックして欲しいと願うなら、できるだけ扇状的な内容にするべきだ。人は怒りを覚えるとクリックするものだ。

それを一番簡単にやるには、話をでっち上げるだけでいい。ほとんどの候補者が思いも寄らないことをだ。幸いなことに、11月第2週に開かれた米議会の公聴会で、ザッカーバーグ氏は、Facebookは喜んでそれを受け入れると明言していた。

Facebookやグーグルなどの企業は、白か黒かだけの世界を有権者に提示するよう私たちに強要する。そこでは、その中間の微妙な感覚など邪魔者に過ぎず、ほんの1ドルをスマートフォンから寄付することが、市民の社会参画(エンゲージメント)ということになる(毎月継続的に寄付をしたいという人などは、かつてないほど貴重な支持者だ!)。これは、十分に情報に基づく健全な民主主義のあり方とは言えない。

政治広告は、それを出す企業にしても、良いものではない。ドーシー氏の発表と同じ日に開かれた四半期の収支報告会でザッカーバーグ氏は、大統領選挙の候補者による政治広告の収益は、2020年のFacebookの予想収益の0.5パーセントに過ぎないと見積もっていた。それを過去12カ月間の収益と同等の660億ドル(約7兆2000億円)と想定するなら、政治広告による収益はおよそ3億3000万ドル(約360億円)となる。

その代償として、Facebookはこの数年間、悪評に悩まされてきた。米議会の積極的な議員たちは、これを国家の安全保障上の問題と見なすようになり、規制のリスクが高まっている。しかも大統領候補のエリザベス・ウォーレン上院議員は、大統領に選出されたならFacebook を解体すると宣言し、生存の危機まで浮上している。それだけの収益があっても、議会の公聴会のために何時間も準備を重ねるザッカーバーグ氏の潜在的コストは正当化されないだろう。

それでは、こうした広告で利益を得るのは誰なのだろうか?それは、事実は主観的なものであり、現実ははかなく、信頼できる唯一の情報はソーシャルメディアを操る人たちが流すものという、支離滅裂な情報環境をアメリカ合衆国にもたらしたいと考える人物だ。

そのため、ドーシー氏の決断を最初に非難した団体が、ロシアの後ろ盾になっている通信社ロシア・トゥデイであったことはうなづける。わずかな収益と生存の危機との間で、アメリカの民主主義のバグの修正とロシアのプロパガンダの幇助との間で、ドーシー氏は、自身の収支と国の両方のために賢明な決断をした。ザッカーバーグ氏とピチャイ氏も、ドーシー氏に従って欲しい。

【編集部注】著者のAaron Bartnick(アーロン・バートニック)はセス・モルトン米下院議員の選挙キャンペーンでデジタル・ディレクターを担当していた。現在は、大学院大学ハーバード・ケネディー・スクール・オブ・ガバメントで勉学中(@AaronBartnick)。

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(翻訳:金井哲夫)

Twitterの政治広告禁止はプラットフォームの本当の問題点を隠す目眩しだ

インターネットのプラットフォームでは、何もかもが逆さまに感じられることがある。政治とパブリッシング、文化と商売、そしてそう、嘘のための真実のすり替えだ。

今週は、Twitter(ツイッター)のCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏の周囲に広がる光景に奇妙な逆転現象が起きていた。その製品が何のプラットフォーム(舞台)になっているか(たとえばナチス)を示すモラルの歪曲を真後ろで支えているハイテク企業のCEOとして名高い彼が、政治的発言の倫理性に泥縄のツイートストームを展開したのだ。

実際、彼は、民主主義と社会を擁護する態度を示し、人々の生活に強大な影響力を与える巨大無料プロパガンダ帝国を運営しつつ、現実からはまったく遊離したもう一人のハイテク兄弟であるFacebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏の師匠だ。

したがって、完全な逆転とは言えないかも知れない。

要は、Twitterは今後は政治広告を受け付けないという、それだけの話だ。

Jack(ジャック)
私たちは11月15日に、いくつかの例外を含む最終ポリシーを発表する(例えば、有権者登録を促す広告は認められる)。新しいポリシーは、広告主への変更の周知期間を設けるため、11月22日から施行される。

Jack(ジャック)
最後通達。これは言論の自由とは関係ない。問題は、金でリーチを伸ばすことだ。政治的発言のリーチを金を払って伸ばすことには計り知れない悪影響があり、今日の民主主義の社会基盤は、その準備ができていない。これに対処するために、一歩後退することには意味がある。

一方、Facebookは、政治広告のファクトチェックはもう行わないと先日発表した。つまり、Facebookに料金を支払って拡散する限りは、嘘でも構わないということだ。

Facebookの立ち位置は、表面上はハッキリしていると言えないこともない。すなわち「政治に関して、我々は倫理感を持ち合わせていない」と要約できる。おそらく「だから偏向していると責めることはできないよ」と論点をずらそうとしているのだろう。

だが、これは何も不合理な推論ではない。政治キャンペーンに対して倫理的基準を一切設けないことで、Facebookは最も倫理観の乏しく、身勝手な規範しか持たない者たちの味方になっている。そのためその立場は、控えめに言ってもトゥルース・ライト(現実の希薄化)だ(どちらの政治陣営が優勢かを自分で決められる)。

Twitterの立場にも、やはり表面的な明確性がある。全面禁止だ。政治広告も問題提起広告もみなゴミ箱行き。だが私の同僚Devin Coldewey(デビン・コールデウィ)は、それが政治広告なのか(またはそうでないのか)を、さらに数少ない例外には何が該当するかを明確に判断しなければならない状況になると輪郭がぼやける傾向にあると、すぐさま指摘していた。

事実、Twitterの定義には、すでに疑わしい部分がある。例えば、気候変動は政治問題だと明確にしている部分だ。そのため、科学に関する広告も禁止されることになる。その一方で、おそらく大手石油企業からの金にはオープンで、気候変動を招く汚染ブランドの宣伝を許している。そう、めちゃくちゃなのだ。

Will Oemus(ウィル・オリマス)
問題提起広告とは何かをTwitterはどう決めてるのか?

Jack(ジャック)
私たちは、政治広告だけを禁止して、問題提起広告は猶予しようと考えた。だが、政治家だけが訴えたい問題のための広告枠が買えるのでは不公平だと思った。だから、これも禁止する。

Vijaya Gadde(ビジャヤ・ガディ)
現在の定義はこうです。1. 選挙や候補者に言及している広告。2. 国家的に重要な立法上の問題(気候変動、医療、移民、安全保証、税金など)。

Twitterの基準を挑発したり迂回を試みる動きは、必ず起きる。このポリシーは単純に見えるが、そこには同社の策略的な計算と、偏向や道義上の失敗を責められたときの逃げ道を確保するためのあらゆる判断が透けて見える。それでも、コンテンツの基準においては、ルールを定めることは簡単で分別のある行動であり、そうあるべきものだ。こうしたプラットフォームが本当に苦労するのは、その適用段階だ。

それもまた、Facebookが政治広告に関するルールを一切定めないという実験を決断した理由になっているのだろう。政治的発言のお目付役を押し付けられたくないという(はかない)望みのためだ。

それが戦略なのだとしたら、Facebookはすでに呆れるほど愚鈍で何も聞かないふりをする者を目指していることになる。同社は、自身の消極的な姿勢が招いた故意にポリシーに逆らった広告の摘発を強いられるという、今まさに渦中にある広告の悪夢への準備を整えたところだ。自ら望んで腐敗した警察官となったのだ。周囲から、パラパラと拍手が聞こえる。

とは言え少なくともそれは、自らの倫理感を迂回して金儲けをしている自分自身への慰めとしては役に立っている。

Erick Fernandez(エリック・フェルナンデス)
アレクサンドリア・オカシオ・コルテスからマーク・ザッカーバーグへの全質問。予備選挙中の共和党員に向けてグリーン・ニュー・ディールに彼らが賛成票を入れたという広告を私が出すことはできますか?』

Twitterの政治広告に対する逆のポリシーも、すでに述べたとおり批判は免れない。実際、政治広告の全面禁止は、一般の認識度が低いところからスタートする新人候補者に不利になるとの批判が起きている。その議論のエネルギーを、選挙費用の厳格な支出制限を含む、選挙運動資金調達の広範な改革に費やしたほうがましかも知れないが、すべての候補者が平等に戦えるようにして政治活動を再起動したいと本当に考えるならそれも必要だ。

また、不正な資金を厳格に管理できる規制も大切だ。それは、変身マントでマイクロターゲッティングによるハイパーコネクティビティーの姿をぼかしながら、嘘を大衆の真実だと偽って宣伝するために民主主義を買収する、あるいはインターネットプラットフォームのリーチとデータを乱用してプロパガンダの目に見えない種を播いては内部から民主主義を変貌させてしまうことを阻止するものだ。

説明責任を負わず民主主義の監視を受けず、豊富なデータを抱える億万長者から安く影響力を買おうという歪んだ関心が、新しい歪められた普通になっている。しかし、それは間違っている。

別の問題も伝えられている。政治宣伝のプラットフォームとしてTwitterは決してメジャーではないことを考えると、 同社の政治広告の禁止は目くらましだと言える。

2018年、米国の中間選挙の間にTwitterが政治広告で得た収益は、300万ドル(約3億3000万円)に満たない。

Ned Segal(ネッド・シーガル)
質問を受けたので:この決断は金ではなく原則に基づくものです。背景として、2018年中間選挙の際に得た政治広告の収益は300万ドル以下であることを公表している。Q4ガイダンスでも変化はない。私はTwitterで働くことに誇りを持っている!

Rich Greenfield(リッチ・グリーンフィールド)
Facebookは政治広告は収益の0.5パーセントだと言っている。2019年の政治広告の予想収益は最大で3億5000万ドル(約380億円)。Twitterは政治広告は300万ドル以下と言っている。2019年の予想収益の0.1パーセントであることを示している。

もうひとつ、Twitterにオーガニックなツイートとして投稿されたものはすべて、政治的な召集の呼びかけに利用できる。

Natasha(ナターシャ)
もちろん、実質的にはTwitterはみんな政治広告。

このでたらめなオーガニック”なツイートは、Twitter上の正真正銘の政治活動だ(ですよね、トランプさん)。

個人の純粋な気持ちではない、意図した(料金を払っていることが多いが)フェイクである偽のオーガニック”ツイートも含まれる。これはゴーイング・ネイティブ”(現地人に染まる)広告と呼ばれている。嘘を真実であるかのように言い広めることを目的とした偽ツイートだ。ボット軍団(偽アカウント)によって増幅され、見た目は普通のツイートを装い(Twitterのトレンドの話題が標的にされ)拡散される。関心を惹くことを目的とした、真実に逆らい歪める、一般の世論を模したジェスチャーとしての非公式”な広告もどきの構造だ。要するに、プロパガンダだ。

ボットのネットワークで宣伝ができるのに、なぜわざわざTwitterの政治広告に金を出す必要があろうか?

ドーシー氏も、一部の著名な政治家(これもまた基本的にトランプだけど)のツイートにはプラットフォームのルールを適用しないハイテク企業のCEOであることを忘れてはいけない。

なので、Twitterが政治広告を禁止すると言っても、世界の指導者たちのツイートには今後もダブルスタンダードが適用される。具体的には、米大統領の独裁的で右翼思想の政治的目標を達成するための弱い者いじめの暴言や脅しを許していることだが、Twitter社はその矛盾を両立させている。

最近になって、Twitterはポリシーをわずかに変更した。無法な世界的リーダーのツイートのリーチに制限を加えるというのだ。だが、引き続き2つのルールで運用される。

この葛藤を自身のツイートストームの中で前面に押し出したドーシー氏の行動は評価できる。彼はこう書いている。

インターネットによる政治広告は、民間の議論にまったく新しい課題を提示しています。機械学習によるメッセージの最適化やマイクロターゲティング、野花しの虚偽情報、ディープフェイクなど。これらすべてが急激に増大し、発達し、圧倒的な規模に発展しています。

こうした課題は、政治広告のみならず、あらゆるインターネット・コミュニケーションに影響を及ぼします。その根本にある問題に、さらなる負担や複雑性、費用をかけずに対処することが得策です。二兎を追うものは一途も得ず、私たちの信頼にも傷をつけます。

ドーシー氏にしては、よい文章だ。彼とTwitterの長年にわたる言論の自由原理主義のことを思えば、驚くほど良い。同社は、表現の自由をインターネット上に蔓延させるために、故意に目をつぶり耳を塞いで、一般社会による制限に対する盾になることで評価を得た。それがなければ、あらゆるひどいことを増幅させる自由”が、マイノリティーを一方的に傷つけ、言論の抑圧につながってしまう。

いわゆる言論の自由は、リーチの自由とは違うと、ドーシー氏は今になって話している。

今回の政治広告禁止に向けて、政治問題の定義に関するTwitterの判断にはいくつか残念なものもあったが、それは、まだ同じ熱い空気の中でもまれているFacebookやザッカーバーグ氏とは対照的だ。民主主義を、自身が所有する会社ですら忠誠を示すことができない二元論的イデオロギーに売り払うという、つじつまの合わないプラットフォームのポリシーを正当化しようとする姿は、硬直しているように見える。

Facebookの収支報告会の最中というドーシー氏のツイートストームのタイミングは、まさにその点を突こうと意図したものだ。

「ザッカーバーグは、複雑性の中に溺れかけている会社を経営しているにも関わらず、微妙な意味合いも、複雑性も、文化的特異性も関係なく、人は言論の自由に賛成か反対かのいずれかでなければならないと信じさせたいようだ」と、文化史家Siva Vaidhyanathan(シバ・ベイドヒャナサン)氏は、ザッカーバーグ氏の言論の自由に関する宣言”を受けた最近のガーディアンの記事で、道徳観を欠いたFacebookを批判した。「彼は、我々の議論をできる限り抽象的に観念論的にしたがっている。Facebook自身のことをあまり近くから見ないで欲しいと思っている」

言論に関するFacebookの立場は、単に抽象論の中でのみ成立する。その広告ターゲティング事業が、規制されていない曖昧さの中の道徳的な怒りとは無縁の場所でしか運用できないのと同じだ。そこに焼き付けられた偏見(アルゴリズムとユーザーによって生成される)は、目に見えない安全なところに隠されているため、人々は、そのことと自分にもたさされる被害とを結び付けて考えることができない。

次々とスキャンダルを生み出すその企業が、今ではそのでたらめなイデオロギーのために議会から呼び出されるまでになったことは驚きに値しない。ここ数年間のプラットフォーム規模の虚報や世界的なデータ漏洩スキャンダルのおかげで、一部の政治家たちはこの問題に詳しくなってきた。彼らは、Facebookのポリシーが現実世界ではどのような形で実行されるか、つまり不正選挙や社会的暴力だが、それをよく見て体験してきている。

関連記事:政治広告の嘘を容認しているとして英国議会がFacebookを非難(未訳)

これらの、プラットフォームの巨人を問題視するようになった政治家たちには、反社会的なソーシャルメディア事業に直接効く有意義な規制を立案することが期待される。

とりわけ、Facebookの自主規制は、いつだって新手の危機管理広報に過ぎない。本物の規制を、先手を売って回避するためにデザインされている。それは、私たちの関心を逆手に取って収入源を堅持しようとする冷笑的な試みだ。同社は、その有害な言論問題の修正に必要な体系的な改革に着手したことは一度もない。

つまるところ問題は、毒性と分断がエンゲージメントを高め、関心を引き、Facebookに膨大な利益をもたらしているということだ。

Twitterは、そのビジネスモデルからは少々距離を保っていると言ってもいい。その理由は、関心を独占して利益を生み出すことに関して、Facebookの大成功の足元にも及んでいないことの他にも、自分の興味に従ってネットワークを構築したりフォローできる大幅な自由をユーザーに与えていることがある。そこでは、アルゴリズムの介入は受けない(たしかにアルゴリズムを使ってはいるが)。

またTwitterはしばらくの間、改革と自称する道を進んでいたことがある。最近になって同社は、プラットフォーム上で会話的健康の推進に責任を持ちたいと語っている。そこにはすでに会話的健康があると言い切れる人間はいないものの、政治広告の禁止がTwitterに迅速な広報の勝利をもたらしたこととは別に、私たちはついに何らかの行動を見ることになりそうだ。

しかし、本当に骨の折れる仕事は今後も続く。例を挙げるなら、悪意のプロパガンダで公的空間が汚染される前にボット軍団を摘発するという作業だ。Twitterはまだ、その可能性が高まっているとは言っていない。

Facebookも、オーガニック投稿を装った政治的なフェイク・コンテンツの尻尾を捕まえられずにいる。フェイクは、ヘイトと嘘を撒き散らし、私たちの民主主義の負担で儲けている。

その手のコンテンツに関して、Facebookは検索可能なアーカイブを提供していない(今では政治的と判断された有料広告には提供がある)。つまり、グループやページでの無料の投稿という、民主主義を狡猾にハッキングする不正資金の隠れ蓑を提供し続けているということだ。

さらにFacebookは、有料政治広告の影響力を隠していたカーテンを開いて透明化すると宣言してはいるが、みごとに失敗続きだ。その政治広告用APIは、学術研究の世界からは目的に適わないいまだに非難されている。その間も、Facebookのポリシーは、政治家による嘘の広告を容認し、外部のファクトチェック団体への圧力を強めている。

Facebookは、組織的な非認証行為と彼らが遠回しに呼ぶ増幅とリーチ稼ぎのために設定した偽アカウントのネットワークを排除する際に、問題となるプロパガンダが米国内から発せられていて、政治的右派に傾いている場合は、偏向した基準を適用している点でも非難されている。

シバ・ベイドヒャナサン(10月26日付けツイート)
4000もの広告主がブライトバートに金を使わなくなったとき、なぜFacebookがブライトバードに資金を出すようになったかを考えて欲しい。
【訳注:ブライトバードは右派のニュースメディア】

Facebookは、例えば米国の保守系ニュースサイトThe Daily Wire(ザ・デイリー・ワイヤー)の内容を専門に広めているとされているFacebookページのネットワークは「米国の実在の人が運営する本物のページであり、彼らは我々のポリシーには違反していない」と主張し、それを否定している(そうした結論に至った詳細は、私たちには明かされていない)。

同社の広報担当者は、こうも言っている。「将来、Facebookのこうしたページに関する情報を人々がより多く得られるよう、透明化を進めています」

同社が約束しているのは、いまだにさらなる透明化”であって、実際に透明化するとは明言していない。そして、Facebookは、法的拘束力が一切ないポリシーの解釈と適用を行う唯一の裁判官で居続けている。つまり、いかさまの規制だ。

さらにFacebookは、国内でヘイトスピーチを撒き散らす特定の人物による有害なコンテンツを何度か禁止してきたものの、例えばAlex Jones(アレックス・ジョーンズ)氏のInfoWars(インフォウォーズ)ページを削除したとき、まったく同一のヘイト・コンテンツが新しいページで復活するのを止められなかった。または実際に、同じようなヘイト思想を持つ複数の人物が、別のFacebook内の公的空間で別のアカウントを持っていたりもする。ポリシー適用に一貫性がないのはFacebookのDNAだ。

それとは真逆に、ドーシー氏の政治広告に反対する姿勢をとるという判断は、良い意味で政治家的に思える。

また、基本的なレベルにおいて、明らかに正しい行動だった。政治活動で集めてきたよりも、ずっと大きな関心を金で買うということは、豊富な資金を持つ人間に有利に働くために逆進的だ。とは言え、Twitterのスタンスでも、金が流れ続け、政治を汚染しているこの崩壊したシステムを立て直すことはできない。

しかも、オーガニックなツイートの形式に収まっている場合に、Twitterのアルゴリズムが政治的発言をどのように増幅させるかについて、本当に詳しいところはわかっていない。そのため、そのアルゴリズムによって強調されるのが、煽動的な政治的ツイートなのか、または情報を提供し団結を求めるツイートなのかは判然としない。

前述したとおり、Twitterのプラットフォームは、全体が政治広告だと言うことができる。同社は、独自の(そして商業的な)エンゲージメント性”を基準にしたツイートを表に出すか抑制するかの判断を、実際にアルゴリズムにさせている。つまり、ツイートされた言葉をどれだけ広く伝えるか(または伝えないか)を選別ことこそが、Twitterの事業なのだ。

そこに数多くの政治的発言が含まれることは明らかだ。トランプのお気に入りのプラットフォームがTwitterなのは、理由があってのことだ。政治広告を禁止したところで、そこが変わることは一切ない。したがって、今回もまた、ソーシャルメディアの自主規制は、よくても端っこを少しいじくる程度のものと考えざるを得ない。

Twitterが政治広告を禁止したのは、関心を集めることを目的としたインターネット・プラットフォームに焼き付けられている構造的な問題から人々の目を逸らすためだと、皮肉な見方もできる。

世界の民主主義と社会が格闘を余儀なくされている有害な政治的論説の問題は、インターネット・プラットフォームのコンテンツの配信方法と公的な討論の作り方が招いたものだ。そのため、本当の鍵となるのは、これらの企業が私たちの個人情報をどのように使って、個々の私たちが目にするものをどのようにプログラムしているかだ。

私たちが心配しているのは、Twitterの政治広告禁止によってドーシー氏が何かのついでに話した根本の問題”から人々の目が逸れてしまう危険性だ(おそらく彼は、彼らの理念に別の定義を持ち出すであろうが。ツイートストームの中で彼は「私たちのシステムが虚報を広めているという批判を止めさせる努力をしている」と話していた)。

Facebookの、同じ問題に関する一般の診断は、つねに、じつに退屈な責任転嫁というものだ。それは単に、人間の中には悪い者もいるがゆえに、悪いものがFacebookでプラットフォーム化されることもあると言っているに過ぎない。問題の原因を人間性にすり替えている。

別の言い方をしよう。インターネット・プラットフォームが有害なプロパガンダを拡散することに関連するすべての問題に共通する核心は、私たちの関心を操作するために人の個人情報を集めているという根本的な事実だ。

マイクロターゲティングという事業(行動ターゲット広告とも呼ばれる)は、すべての人を、なんらかのプロパガンダのターゲットにする。これは、ドナルド・トランプにやられても、ディズニーにやられても、気分のいいものではない。左右非対称だからだ。不均衡だからだ。搾取的だからだ。そして本質的に反民主主義的だ。

またそれは、産業規模で個人情報をあまねく収集し大量備蓄するよう奨励する。したがってそれは自ずとプライバシーの敵であり、安全を脅かし、大量のエネルギーとコンピューター資源を消費する。なので、環境面から見ても不快なものだ。

そしてそれはすべて、非常に卑しい目的のために行われる。他の人たちがあなたに何かを売りつけるために、あなたの情報を売り渡すというプラットフォームだ。石鹸も政治的意見も同じ扱いだ。

このプロセスをザッカーバーグ氏は、Relevant ads”(関連広告)と命名した。下流で私たちの関心を売るのに必要な個人データを吸い上げるパイプに油を注すための億万長者の巧妙な嘘だ。

マイクロターゲティングは、個人にとっても(気味の悪い広告、プライバシーの喪失、偏向やデータ乱用の危険)、また、まったく同じ理由で社会にとっても不愉快なものだ。さらに、選挙への不当な介入や、苦労して勝ち取った民主主義を敵意に満ちた勢力が踏みにじるなど、社会レベルでも深刻な危険をもたらす。

個人のプライバシーは、公衆衛生と同じ、公共の利益だ。病気や、まさに虚報に対する予防接種は、私たち全員を感染症から守ってくれる。

間違いのないように言えば、マイクロターゲティングは、ターゲット広告の料金をプラットフォームが受け取ったときにだけ実行されるのではない。プラットフォームは、つねにこれを行っている。兵器化されたレイヤーを設け、扱うものすべてをカスタマイズしているのだ。

これが、ユーザーが自由にアップロードした情報を大量に配布しプログラムする方法だ。彼らが日課として作り上げている人々の日常の混沌の中から最大限のエンゲージメントを引き出すために、情報を魅力的でパーソナルな物語に作り替える。それを、人間の編集者を大勢雇うことなく行っている。

Facebookのニュースフィードは、行動ターゲット広告が関心を引きつけ保持するのに使用しているものと同じデータ駆動の原則に依存している。Twitterのトップツイート”も、ビューをアルゴリズムでランク付けしている。

これは、ソーシャル”サービスに詰め替えられた大規模な関心操作のプログラムだ。プラットフォームがインターネットのユーザーをスパイして学んだことを、対立を煽り、個人の関心を縛りつけるために利用している。たとえその目的が、私たちを互いに敵対させることであったとしてもだ。

ある特定の政治的な意見を投稿すると、文字通り秒速で、何年も会っていなかったFacebookの友達”から暴力的な反論が示されるのは、そのためだ。Facebookは、彼らが所有するデータのプリズムを通してあらゆる人を神のように監視しているため、その投稿に強烈なパンチを与えることができる。データは、エンゲージメントを跳ね上げる可能性がもっとも高い順にランク付けされ、関連する”ユーザーに表示するようアルゴリズムにパワーを与える。

本物の友だちのグループにそんな遊び感覚のストーカーが含まれているかどうかは、誰にもわからない。みんなの会話を盗聴し、定期的にチェックして、集めた情報を使って友だちを喧嘩させて楽しんでいるような輩だ。そんな人間がグループの親睦を高めるなんてことはあり得ない。しかしそれがFacebookが監視下に置いたユーザーの扱い方だ。

直近の米議会公聴会で、痛い質問をされたザッカーバーグ氏が気まずそうに沈黙したのも合点がいく。

政治家たちも、ようやくデータのためにコンテンツを扱い社会技術プラットフォームに埋め込まれた本当の根本的問題”を理解し始めたようだ。

私たちを招き入れ、注視してもらうことで永遠の親密な間柄を築こうとするプラットフォーム。しかしそれには、スパイによって学んだ、さらなるスパイ技術と、より早くデータを悪用する技術が使われている。

つまり政治広告の禁止は、聞こえはいいが、目眩しだ。あちらからはあらゆる方向から監視されているにも関わらず、こちらからは彼らが何をしているのか見せないようにしているマジックミラーのようなプラットフォームが、社会に反抗して固持しているものを粉砕できる本物の手段は、プライバシーを完全に守れるカーテンを閉じることだ。個人情報に対するターゲティングを許さないことだ。

投稿や広告を表示させるのは構わない。投稿や広告を、少数の一般的な情報に基づいて、その文脈の中で表示するのもいいだろう。住宅や日用品の広告を見たいかどうか、私たちに聞いてもいい。双方で話し合ってルールを決めるのだ。それ以外のこと、つまり誰と話し、何を見て、どこへ言って、何を言ったかなど、プラットフォームの内外での行動については、厳格に立ち入り禁止とする。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Twitterの政治広告全面禁止は正しいだけに猛攻撃を覚悟せよ

Twitter(ツイッター)の創設者でCEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は突如(とはいえ、タイミング的には偶然というわけではなく)、witter上での政治広告を間もなく全面的に禁止すると発表した。これは正しい行動だが、さまざまな理由から相当な苦難を味わうことになる。テクノロジーと政治の世界の常として、善いことは罰せられるのだ。

政治広告やアストロターフィング(一般利用者を装って政治的な宣伝活動を行うこと)などの悪役は、国を後ろ盾にするなどしてインターネットを通じて米国の選挙への介入を継続を、またこれから始めようと企んでいる。こうした広告の完全撤廃は、手荒ではあるがわかりやすい対策だ。さまざまなオンラインプラットフォームがターゲットを絞った対策を試みてきたが、ほとんど成果が上がらなかった。それを思えば、現時点で実施できる現実的な手段はこれしかない。

「料金を支払って嘘の情報を流す行為の禁止は、企業にできるもっとも基本的で倫理歴な判断」と、民主党ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員は、そのニュースの後にツイートしている。「企業が有料の政治広告をファクトチェックできない、またはしないなら政治広告は全面的に禁止すべき」と。

Facebookが政治広告や政治的コンテンツの制限を避けている理由のひとつには、それを行うことで、適切か不適切かを判断する、さらには無数の文化、言語、出来事にまたがり形成されるフラクタル構造の複雑な環境での実質的な裁定者になってしまうことがある。だが、ザッカーバーグ氏に泣きついても始まらない。これは彼自身が生み出したモンスターなのだ。私が進言したときに引退しておくべきだったのだ。
関連記事:FacebookとYouTubeのモデレーション失敗はプラットフォーム再編の好機-Exxtra Cruch(未訳)

しかしTwitterの、メスではなく大鉈を振るうという判断では、その本質的な困難を取り除くことはできない。そのため同社は、別の種類の懲罰に身を晒すことになった。なぜなら、何が適切かを判断する裁定者とはならず、何が政治的かを決める裁定者となったからだ。

これは、Facebookの課題よりもやや軽めだが、Twitterはそれが正しかったとしても強信的な共和党支持者や偏見による非難からは逃れられない。

たとえば、政治広告を禁止するという抜本的な判断は実に単刀直入で無党派的に見える。現職議員は従来型メディアへの依存度が高く、進歩主義者は若くてソーシャルメディアを上手に使いこなす傾向にある。ならばこれは、左派の候補者のツールを奪うことにならないか?だが、豊富な資金を持つ現職議員もソーシャルメディアへの出費を増やしているため、今の傾向を変える手段と考えることもできないか?誰がどのようにその影響を受けるのかは明確ではない。選挙運動や政治評論家の、終わりのない口論の種となるだろう。ちなみにトランプ大統領の再選をかけたキャンペーンでは「またしても保守派を黙らせるための試み」と断言している

「有権者登録に賛成する広告は今でも可能」とドーシー氏がすぐさま発表したことを考えてみよう。有権者登録とは、無党派的なよい落とし所ではないか?未登録の有権者は、さまざまな理由によりリベラル側に偏っているため、実際、保守派政治家の多くが一貫して反対している。従ってこれは、共和党支持の行為と考えることができる。

非公式な指針は存在するものの、Twitterは数週間以内に公式なものを打ち出すという。だが、満足のいく指針になるとはとうてい思えない。産業団体は、政府の補助金のおかげで新しい工場がうまく行っているとツイートできるのか?人権擁護団体は、国境での深刻な状況についてツイートできるのか?報道機関は選挙に関するツイートを出せるのか?特定の候補者を紹介するのはどうか?何かの問題に対する論評はどうか?

関連記事:Facebookは政治広告を禁止して嘘を止めよ(未訳)

これはいわば、政治の中の世界をパトロールするか、その境界線をパトロールするかの違いであり、明確化できるだろう。しかしそこにはまったく別の種類のトラブルがある。Twitterは苦痛の世界に足を踏み入れてしまった。

しかし、少なくとも事態は前進している。たとえそれが強硬手段であり、肝心な場所を強打するとしても(Twitterがそれを気にしていないというわけではない)、正しい判断だ。Facebookが臆病にも保身を貫いているのに対して、その決断は素晴らしい。Twitterが失敗したとしても、少なくとも挑戦したことを誇れる。

最後に、これがユーザーと有権者にとって、よい選択になったと言っておくべきだろう。巨大ハイテク企業や大手メディアが次々とユーザーいじめの決断を下すなかでの、稀有な例だ。大統領選挙の年を目前に、私たちは良質なニュースを入手して、利用できる。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Twitterの政治広告全面禁止は正しいだけに猛攻撃を覚悟せよ

Twitter(ツイッター)の創設者でCEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は突如(とはいえ、タイミング的には偶然というわけではなく)、witter上での政治広告を間もなく全面的に禁止すると発表した。これは正しい行動だが、さまざまな理由から相当な苦難を味わうことになる。テクノロジーと政治の世界の常として、善いことは罰せられるのだ。

政治広告やアストロターフィング(一般利用者を装って政治的な宣伝活動を行うこと)などの悪役は、国を後ろ盾にするなどしてインターネットを通じて米国の選挙への介入を継続を、またこれから始めようと企んでいる。こうした広告の完全撤廃は、手荒ではあるがわかりやすい対策だ。さまざまなオンラインプラットフォームがターゲットを絞った対策を試みてきたが、ほとんど成果が上がらなかった。それを思えば、現時点で実施できる現実的な手段はこれしかない。

「料金を支払って嘘の情報を流す行為の禁止は、企業にできるもっとも基本的で倫理歴な判断」と、民主党ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員は、そのニュースの後にツイートしている。「企業が有料の政治広告をファクトチェックできない、またはしないなら政治広告は全面的に禁止すべき」と。

Facebookが政治広告や政治的コンテンツの制限を避けている理由のひとつには、それを行うことで、適切か不適切かを判断する、さらには無数の文化、言語、出来事にまたがり形成されるフラクタル構造の複雑な環境での実質的な裁定者になってしまうことがある。だが、ザッカーバーグ氏に泣きついても始まらない。これは彼自身が生み出したモンスターなのだ。私が進言したときに引退しておくべきだったのだ。
関連記事:FacebookとYouTubeのモデレーション失敗はプラットフォーム再編の好機-Exxtra Cruch(未訳)

しかしTwitterの、メスではなく大鉈を振るうという判断では、その本質的な困難を取り除くことはできない。そのため同社は、別の種類の懲罰に身を晒すことになった。なぜなら、何が適切かを判断する裁定者とはならず、何が政治的かを決める裁定者となったからだ。

これは、Facebookの課題よりもやや軽めだが、Twitterはそれが正しかったとしても強信的な共和党支持者や偏見による非難からは逃れられない。

たとえば、政治広告を禁止するという抜本的な判断は実に単刀直入で無党派的に見える。現職議員は従来型メディアへの依存度が高く、進歩主義者は若くてソーシャルメディアを上手に使いこなす傾向にある。ならばこれは、左派の候補者のツールを奪うことにならないか?だが、豊富な資金を持つ現職議員もソーシャルメディアへの出費を増やしているため、今の傾向を変える手段と考えることもできないか?誰がどのようにその影響を受けるのかは明確ではない。選挙運動や政治評論家の、終わりのない口論の種となるだろう。ちなみにトランプ大統領の再選をかけたキャンペーンでは「またしても保守派を黙らせるための試み」と断言している

「有権者登録に賛成する広告は今でも可能」とドーシー氏がすぐさま発表したことを考えてみよう。有権者登録とは、無党派的なよい落とし所ではないか?未登録の有権者は、さまざまな理由によりリベラル側に偏っているため、実際、保守派政治家の多くが一貫して反対している。従ってこれは、共和党支持の行為と考えることができる。

非公式な指針は存在するものの、Twitterは数週間以内に公式なものを打ち出すという。だが、満足のいく指針になるとはとうてい思えない。産業団体は、政府の補助金のおかげで新しい工場がうまく行っているとツイートできるのか?人権擁護団体は、国境での深刻な状況についてツイートできるのか?報道機関は選挙に関するツイートを出せるのか?特定の候補者を紹介するのはどうか?何かの問題に対する論評はどうか?

関連記事:Facebookは政治広告を禁止して嘘を止めよ(未訳)

これはいわば、政治の中の世界をパトロールするか、その境界線をパトロールするかの違いであり、明確化できるだろう。しかしそこにはまったく別の種類のトラブルがある。Twitterは苦痛の世界に足を踏み入れてしまった。

しかし、少なくとも事態は前進している。たとえそれが強硬手段であり、肝心な場所を強打するとしても(Twitterがそれを気にしていないというわけではない)、正しい判断だ。Facebookが臆病にも保身を貫いているのに対して、その決断は素晴らしい。Twitterが失敗したとしても、少なくとも挑戦したことを誇れる。

最後に、これがユーザーと有権者にとって、よい選択になったと言っておくべきだろう。巨大ハイテク企業や大手メディアが次々とユーザーいじめの決断を下すなかでの、稀有な例だ。大統領選挙の年を目前に、私たちは良質なニュースを入手して、利用できる。

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(翻訳:金井哲夫)

Twitter CEOのジャック・ドーシーがは政治広告を全面禁止すると発言

TwitterのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)CEOは、Twitterが政治広告を全面的に禁止することをツイートで発表した。ただし、投票者登録など「わずかな例外」を除くとしている。

「政治的メッセージのリーチは獲得するものであり、買うものではないと私は信じている」とも書いている。例外の範囲がどこまでなのかは明らかにされていないが、禁止の対象は候補者を推薦する広告、政治的問題における立場を支持する広告の両方と思わえる。

ドーシー氏は、会社として正式な方針を11月15日までに公表し、11月22日付けでその方針を適用すると言った。「インターネット政治広告は市民による議論にまったく新しい課題を投げかけている。機械学習によるメッセージングの最適化や細かいターゲティング、チェックを受けていない虚偽情報、そして悪質なフェイクニュースなど、すべてが猛烈な速さで広まり、技術もスケールも拡大している」と同氏は述べた。

それなら、虚偽情報を排除する努力をしながら広告を受け付けてもいいのではないか?同氏は会社として「金銭のもたらす余分な負担と複雑さを避けつつ、根本的問題に集中する必要がある」と彼は主張した。包括的な方針は、Twitterが真実性を個別に判断することの悩みと議論を避けるのにも役立つ。

この直前、Facebookは政治広告のファクトチェックを拒否したことで強い批判に晒され(選挙関連の虚偽情報撲滅を段階的に進めてはいた)、Facebook社員が公開書簡で会社のスタンスを批判する事態に至った。

また、最近の議論のきっかけになった、トランプ陣営がジョー・バイデン氏の陰謀論を流布した広告の1つはYouTubeとTwitterにも流された。なお、一部のTVネットワークにも流されたがCNNは放映を拒んだ。

つまり、たとえ議論の矛先はFacebookに向けられていても、寛容と責任に関わる判断は主要インターネットワークプラットフォームすべてが直面しなければならない問題だ。

実際今年の夏Twitterは、香港での抗議運動にまつわる「政治的不和の種をまく」活動を見つけた後、国が支援する報道機関の広告をブロックすると発言した。そこには 中国政府と繋がりのあるアカウント数百件が関わっていた

Facebookは単に政治広告をすべて禁止すべきだという考えは、一部の評論家の間で言われている解決策で、TechCrunchのJosh Constine(ジョシュ・コンスティン)も書いている。現在までは極端で非現実的な方法と思われていたかもしれない。それが突然現実的に見えてきた。少なくともMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は当分この質問に答え続けなくてはならないだろう。

ドーシー氏は自身のツイートでFacebookの名前に直接言及こそしなかったが「例えば、当社が『私たちは人々が当社のシステムを悪用して虚偽情報を流布するのを阻止するべく大いに努力している、しかし、誰かが金を払って人々をターゲットして自分たちの政治広告を強制的に見せれば、好きなことを言うことができます! 』、などと言ったら信用をなくすだろう」と言ってFacebookの立場を暗に批判した。

もうひとつ「興味深い」のは、TwitterがこれをFacebookが最新の決算報告を発表したその日を選んで発表したことだ。ドーシー氏は、Twitterが「はるかに大きな政治広告エコシステムの小さな部分」であることを認めながらも、「我々は一切の政治広告なしに多くの人たちに届けた社会運動をたくさん見てきた。これがもっと増えていくことを信じるばかりだ」と述べた。

eMarketerのシニアアナリストであるJasmine Enberg(ジャスミン・エンバーグ)氏は声明で、この行動について「Facebookとまったく対照的」と語ったが、「政治広告はTwitterの中核ビジネスにとってさほど重要な位置を占めていないに違いない」とも指摘した。

関連記事:Facebook should ban campaign ads. End the lies.

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookの従業員グループが政治広告の嘘を規制するようザッカーバーグ氏に要求

大統領選挙の政治広告をファクトチェックに送ること、マイクロターゲティングを制限すること、出費できる広告費に上限を設けること、選挙活動禁止期間を監視すること、または少なくともユーザーに警告すること。これらは、Facebook(フェイスブック)の従業員が、政治広告の偽情報に対処するようCEOマーク・ザッカーバーグ氏と会社幹部に宛てた公開嘆願書の中の対処案だ。

この書簡はニューヨーク・タイムズのMike Isaac(マイク・アイザック)氏が入手したもの。それは、「自由な言論と有料の言論は別物だ。政治家や選挙候補者のファクトチェックに関する私たちの現在のポリシーは、Facebookの根幹である精神を危険に晒している」と主張している。数週間前、Facebookの内部協力フォーラムに投稿された。

関連記事:Facebookは選挙キャンペーン広告を禁止し、嘘を止めよ(未訳)

この考え方は、私が10月13日にTechCrunchで公開した、Facebookは政治広告を禁止すべきと訴えたコラムの内容と重なっている。Facebookの政治広告で流される歯止めのない虚報は、政治家とその支持者によって、その主張やライバル候補に関する感情的で不正確な情報が拡散され、さらにそうした広告のための資金集めを助長している。

Facebookは、金持ちの不誠実な人間ほど大金を投じて大声で嘘を拡散できる現状を制限しつつも、各自のFacebook・ページでの自由な発言を許すことは可能だ。私たちは、Facebookがもし政治広告を禁止しなければファクトチェックを行うか、攻撃される恐れのない投票や寄付といった一般的な広告ユニットを使うこと、またはその両方を行うことを提案した。さらに、コミュニティーへのマイクロターゲティングが虚報に対して脆弱であり、簡単に寄付できるリンクはFacebookの広告を、同等のテレビやラジオのスポット広告よりも危険なものにすると批判した。

10月23日水曜日、ワシントンD.C.にて下院金融サービス委員会で証言するFacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏(写真:Aurora Samperio/NurPhoto via Getty Images)

3万5000名のFacebook従業員のうち、250名以上が書簡に署名をした。そこではこう明言されている。「私たちは現状のポリシーに強く抗議します。それは人々の声を擁護しておらず、反対に、政治家の投稿は信頼できると信じる人々へのターゲティングにより、政治家が私たちのプラットフォームを兵器化することを許すものです」と。現在のポリシーは、選挙の品位を保つためのFacebookの努力をないがしろにし、虚報を容認し、嘘で利益を得ることを良しとしているというシグナルを発してユーザーを混乱させていると訴えている。

提案された対処策は次のとおり。

  1. 第三者によるファクトチェックを受けない限り政治広告は受け付けない。
  2. 政治広告と政治的でないオーガニック投稿との区別がつくよう視覚デザインを変える。
  3. カスタムオーディエンスの使用を含む政治広告のマイクロターゲティングを制限する。なぜならマイクロターゲティングは、政治家の誠実性を保つとFacebookが主張している世間の厳しい目から、それを隠してしまうため。
  4. 選挙活動禁止期間中の政治広告を監視し、虚報による影響と拡散を制限する。
  5. 政治家または候補者による広告への出費を、彼ら自身とその政治活動委員会を含めた合算で制限する。
  6. ファクトチェックを受けていない政治広告がひと目でわかるようにする。

これらのアプローチを組み合わせることで、Facebookは虚報が拡散される前に、または個々の主張の監視を行う必要性が生じる前に、政治広告を止めるか禁止することができる。

この書簡に対するFacebookの反応は「私たちは今後も政治的言論への検閲を行わない立場を維持し、政治広告にさらに踏み込んだ透明性を持たせるよう検討を進める」というものだった。だが、これは書簡の論点をすり替えている。従業員たちは、Facebookから政治家を追放せよとは言っていないし、彼らの投稿や広告を削除せよとも言っていない。警告の印を付けて、金によるリーチの拡大を制限しようと言っているだけだ。それは検閲には当たらない。

報道機関や、民主党ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員をはじめとする政治家たちからの反発にも関わらず、ザッカーバーグ氏は現在のポリシーを堅持している。議会証言の際にコルテス議員から、具体的にどんな虚報が広告では許されるのかと質問されたザッカーバーグ氏は言葉を詰まらせていた

しかしその後の金曜日、共和党のリンゼー・グラム議員がオカシオ・コルテス議員のグリーン・ニュー・ディール法案に賛成したとする、ファクトチェックの能力を試す目的で出された広告の掲載を取り止めた。グラム議員は実際には反対している。Facebookは、今後は政治活動委員会の広告をファクトチェックにかけるとロイターに話した。

Facebookにできる、政治家の広告のためのひとつの賢明なアプローチとして、ファクトチェックを重ねることがある。大統領選の候補者を手始めとして、より正しく精査できるようにデータを増やすのだ。嘘と判定されたものは、単に嘘を示すラベルを添付するのではなく、コンテンツをブロックする形でインタースティシャル警告を表示する。これは、一般向けにあまり目立ちすぎない、州ごとのターゲティングのみを許可する、政治広告の大きな断り書きと組み合わせて使うことができる。

広告料金の出費制限と選挙活動禁止期間の決定は、少し複雑だ。低く制限すれば、選挙活動の公平さを保つことができ、活動禁止期間を広げれば、とくに投票期間中は、有権者の投票を妨害するボーター・サプレッションを防止できる。おそらくこれらの制限は、Facebookが開設を予定し、モデレーションとポリシーの最高裁判所となる監督委員会に委ねられることになるだろう。

ザッカーバーグ氏の主張の核心には、時が経てば歴史は検閲ではなく言論に傾く、という考えがある。しかしそれは、テクノロジーは正直者にも不正直者にも平等に恩恵を与えるという前提に基づく理想郷的な詭弁に屈している。現実には、分別のある真実よりも煽動的な虚報のほうが、ずっと遠くまで、ずっと早く到達する。無数のバラエティーに富むマイクロターゲティング広告は、嘘つきを罰するように作られた民主的な仕掛けを無力化し威圧する。その一方で、盲信的な支持者の報道機関が正直者を非難し続ける。

ザッカーバーグ氏は、Facebookが真実の警察になることを避けたがっている。だが、もし彼が、その正しいと信じる思想信条から一歩退いてくれたなら、私たちやFacebookの従業員たちが提案するように、虚報を制限するための進歩的なアプローチの可能性が開かれる。

Facebook従業員が会社幹部に宛てた、政治広告に関する書簡の全文をここに掲載する。ニューヨーク・タイムズより転載。

私たちは、ここで働くことに誇りを持っています。

Facebookは、思いを発言する人々の味方です。討論し、異なる意見を交換し、考えを表現する場所を作ることにより、私たちのアプリやテクノロジーは世界中の人々にとって有意義なものとなります。

このような表現を可能にする場所で働けることを私たちは誇りに思うと同時に、社会の変化に伴い進化することが必然であると信じています。クリス・コックスもこう言っています。「ソーシャルメディアの効果は中立ではなく、その歴史はまだ刻まれていないことを、私たちは自覚している」

ここは私たちの会社です。

私たちは、この会社のリーダーであるあなたたちに訴えます。なぜなら今の路線が、我らがプロダクトチームが、この2年間、品位の保全のために達成した大いなる前進を無に帰するものであることを憂慮しているからです。私たちがここで働く理由は、それを重視しているからであり、ほんの些細な選択も、恐ろしいほどのスケールで社会に影響を及ぼすからです。手遅れになる前に、私たちはこの懸念を表明したいと思います。

自由な言論と、有料の言論とは別物です。

虚報は、すべての人たちに影響を与えます。政治家や政界を目指す人たちを対象にした私たちのファクトチェックのポリシーは、Facebookの根幹を脅かします。私たちは、現状のポリシーに強く抗議します。それは人々の声を擁護しておらず、反対に、政治家の投稿は信頼できると信じる人々へのターゲティングにより、政治家が私たちのプラットフォームを兵器化することを許すものです。

現在の状態で、広告料を受け取り市民向けの虚報をプラットフォームで公開すれば、以下の事態が予想されます。

広告料を支払ったコンテンツと類似のオーガニックコンテンツを、または第三者のファクトチェックを受けたものと受けていないものを、同列に表示することを許せば、プラットフォームへの不信感が増加します。さらにそれは、権力の座にある人、または権力の座に着こうとしている人による故意の虚偽報道キャンペーンから利益を得ることを私たちが是認しているとのメッセージを発することになります。

品位ある製品開発が無駄になります。現在、品位の保全を担当する数々のチームは、より文脈に即した形でのコンテンツの提示、違反コンテンツの降格といったさまざまな課題に懸命に対処しています。Election 2020 Lockdown(2020年大統領選挙ロックダウン)に関して、品位保全担当チームは、支持と不支持の難しい選択を行ったところです。ところが今のポリシーは、プラットフォームの信頼性を低下させ、彼らの努力を無に帰するものです。2020ロックダウンの後も、このポリシーには、今後世界で実施される選挙に危害を与え続けることになります。

改善案

私たちの目標は、従業員の多くが今のポリシーに納得していないことをリーダーたちに知ってもらうことにあります。
私たちは、私たちのビジネスと、私たちの製品を利用される人々の両方を守るための、よりよい解決策をリーダーのみなさんと共に作り上げることを望んでいます。この作業には、微妙な見解の違いがあることは承知していますが、政治広告を完全に排除しない方向で私たちにできることは数多くあります。

以下に示す提案は、すべて広告関連のコンテンツに関するものであり、オーガニックコンテンツは対象としません。

1. 政治広告に、他の広告と同じ基準を適用する。

a. 政治広告でシェアされる虚報には、私たちの社会に並外れた不利益をもたらす衝撃力があります。他の広告に義務付けられている基準に準拠しない政治広告からは、料金を受け取るべきではありません。

2. 政治広告には明確な視覚デザインを施す。

a. 政治広告とオーガニックな投稿との見分けに人々は苦労しています。政治広告には、はっきりそれとわかるデザインを施し、人々が簡単に話の流れを把握できるようにすべきです。

3. 政治広告のターゲティングを制限する。

a. 現在、政治家や政治キャンペーンは、カスタムオーディエンスなど、私たちの高度な広告ターゲティングツールが利用できます。政治広告の広告主の間では、有権者名簿(有権者に接触できるよう公開されています)をアップロードし、行動トラッキングツール(Facebook・ピクセルなど)や広告エンゲージメントを使って宣伝効果を高めるのが一般的です。これを許可することで生じるリスクは、有権者が、私たちが称するところの政治的発言に伴う“世間の監視”に参加しにくくなることです。こうした広告は、マイクロターゲティングされていることが多いため、私たちのプラットフォームでの会話は、他のプラットフォームでのものに比べて、ずっと閉鎖的なものになります。現在、私たちは、住宅、教育、クレジットのバーティカルマーケティングでは、差別問題の過去があるためにターゲティングを制限しています。同様の制限を政治広告にも広げるべきです。

4. 政治活動禁止期間中の監視を広げる。

a. 各地方の法令や規制に従い、選挙活動禁止期間中の監視を行います。世界中のあらゆる選挙における自主的な活動禁止期間を調査し、誠実な良き市民として行動します。

5. 個々の政治家ごとに、資金源に関係なく、出費制限を設ける。

a. 政治広告を掲載する利点として、発言を広く伝えられることがあると、Facebookは主張してきました。しかし、高明な政治家は大金を注ぎ込み大きな声で主張を行い、ライバル候補の声をかき消してしまいます。この問題を解決するには、選挙活動委員会と政治家の両方が広告を出す際には、個々の広告主ではなく、両者の広告費を合算して上限を設けます。

6. 政治広告のポリシーを明確にする。

a. もしFacebookが政治広告のポリシーを変更しないならば、政治広告の表示方法を更新する必要があります。消費者と広告主にとって、政治広告が、他の広告に適用されるファクトチェックを免除されていることは、すぐにはわかりません。私たちの虚報に関する広告ポリシーでは、元の政治コンテンツや広告には適用されないことは、誰にでも簡単に理解できるようにしなければなりません。とくに、政治的な虚報は、他のタイプの虚報に比べて破壊力が大きいためです。

そのため、政治セクションは“禁止コンテンツ”(絶対に掲載不可)から外し、“制限コンテンツ”(制限下で掲載可能)に移すべきです。

私たちは、実際の変化を確かめられるよう、オープンなダイアログでこれを議論したいと思っています。

私たちは、品位保全の担当チームの仕事に誇りを持っています。今後数カ月間、私たちはこの議論を続け、共に解決策に向けて協力できることを願っています。

今でもここは私たちの会社です。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

欧州の研究者団体がFacebookに政治広告の透明性を調査できるAPIを要求

Facebookは、そのプラットフォーム上で政治広告がどのように拡散し増幅してゆくかを調査可能にするAPIを、誠実な研究者に提供するよう求められている。

Mozillaが率いる欧州の学者、技術者、人権団体、デジタル権団体の連合は、5月に行われる欧州議会選挙の前に、政治的な宣伝の拡散と増幅の様子がわかるようFacebookにその透明性の拡大を要求する公開書簡に署名した。

我々は、この公開書簡に対するFacebookの反応を探った。

Facebookは、それ以前に、欧州において独自の「選挙セキュリティー」基準を設けることを発表していた。具体的には、政治広告の承認を行い透明性を持たせるというものだ。

元欧州議会議員でありイギリスの副首相を務めたこともあるFacebookの新しい国際広報担当責任者Nick Cleggは、翻訳された政治ニュースが同社のプラットフォーム上でどのように配信されるかを人間の目で監視するオペレーションセンターを、来月にもEUに複数ある中のアイルランドの首都ダブリンにあるセンターに立ち上げ、運営を開始すると先月発表した。

しかし、公開書簡に署名した人々は、Facebookが盛んにPRする政治広告の透明性に関する基準は甘すぎると主張している。

さらに彼らは、Facebookがとってきたいくつかの手順が、同社が断言する政治広告の透明性を外部から監視しようとする取り組みを拒んでいると指摘している。

先月、ガーディアン紙は、Facebookが同社のプラットフォームに加えた変更により、政治広告の透明性を外部から監視できるよう求める団体WhoTargetsMeの、同プラットフォームでの政治広告を監視し追跡する行動が制限されたと伝えた。

イギリスを本拠地とするその団体は、公開書簡に署名した30を超える団体の中のひとつだが、彼らが言うところの「貴社のプラットフォームでの宣伝の透明性を高めるためのツールを構築しようとする誠実な研究者への嫌がらせ」を止めるよう訴えている。

署名した団体には、Center for Democracy and Technology、Open Data Institute、国境なき記者団も含まれている。

「Facebookユーザーに用意された広告を透明化するツールへのアクセスを制限することは、透明性を低下させ、政治広告の分析に役立つツールをインストールするというユーザーの選択を奪い、貴社プラットフォーム上でのデータの評価を目指す誠実な研究者を支配下に置くことである」と彼らは書いている。

「貴社がこうしたサードパーティー製ツールの代わりに提供しているものは、単純なキーワード検索機能であり、それではレベルの浅いデータにしかアクセスできず、有意義な透明性をもたらすことはできない」

この書簡は、Facebookに対して「高度な調査と、EUのFacebookユーザーに向けられた政治広告の分析ツールの開発を可能にする、実用的でオープンな広告アーカイブAPI」を公開するよう求めている。そしてその期限を、欧州議会議員選挙の前に外部の技術者が透明性ツールを開発する時間が得られるよう、4月1日までと定めた。

書簡の署名者らはまた、政治広告が「他の広告と明確に区別」できるようにすること、さらに「広告主の身元やEU加盟国全体で同プラットフォームに支払われた金額など、鍵となるターゲティング・クライテリア(設定)」を添えることをFacebookに求めた。

昨年、イギリスの政策立案者たちは、ネット上のデマが民主主義にどれほどの影響を与えるかを調査し、政治広告のターゲティング・クライテリアに関する情報として何をユーザーに提供しているのかを教えるようFacebookに圧力をかけた。また、政治広告を完全に拒否できる手段をなぜユーザーに与えないのか問いただした。FacebookのCTO、Mike Schroepferは、明確な答を出せず(あるいは出そうとせず)、代わりにFacebookが提供すると決めたデータのほんの一部を繰り返すことで質問をかわす作戦に出た。

1年近く経過した今でも、欧州市場の大半のFacebookユーザーは、政治的透明性の初歩的な段階すら与えられていない状況だ。同社は自社の規定を採用し続け、対応はマイペースだ。困ったことに、「透明性」の定義(つまり、ユーザーにどこまで提示するか)も自分で決めている。

Facebookは、昨年の秋、イギリスにおける政治広告に関して、「広告料の支払者」の提示機能を加え、広告はアーカイブに7年間保管されることを発表するなど(非常に簡単に回避できることを示されて検証方法を見直すはめになったが)、独自の透明化対策の一部を適用し始めた。

今年の初めには、Facebookは、アイルランドでの中絶を巡る国民投票の間、一時的に海外団体が出資する広告の掲載停止も行っている。

しかし、地方選挙など、その他の欧州での選挙では、表示された政治広告に関して、または誰が広告料を支払っているのかといった情報がユーザーに示さないまま、Facebookは広告の掲載を続けていた。

EUの高官は、この問題を注視していた。先月末、欧州委員会は、先月発表された政治的偽情報に対する自主規制の実施に署名したプラットフォームや広告代理店からの進捗状況を知らせる月間報告の第一号を12月に発表した。

欧州委員会によれば、とくにFacebookには、消費者エンパワーメントのためのツールをどのように展開するか、さらに、どのようにしてEU全域のファクトチェッカーや調査コミュニティーとの協働を強化してゆくかについて「さらなる明確性」を求めた。とくにジュリアン・キング委員は、外部の研究者へのデータアクセス権の提供をしなかった企業としてFacebookを名指ししている。

本日(米国時間2月12日)送られた学者や研究者からの公開書簡は、Facebookの最初の消極的な対応に対する欧州委員会の評価を援護するものであり、翌月の月次評価に向けて力を添えるものとなる。

欧州委員会は、プラットフォームが政治的偽情報の問題に自主的に取り組む努力を拡大できないのであれば、法制化の可能性もあると警告を出し続けている。

プラットフォームに自主規制を迫ることには、もちろん批判的な人もいる。彼らは、それを行っても、強大な力を持ちすぎたというプラットフォームの根本的な問題には、そもそも対処できないと指摘している……。

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この書簡は左派でリバタリアニズムがどう働いているかを示している。Zuckerbergに彼の力を合法化する民主主義を守れと求めている。それは彼が決めることではない。

Facebookに関する事実(本文は英語)

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(翻訳者:金井哲夫)