純粋数学もタンパク質生成も、人工知能におまかせを

人工知能(AI)が興味深い分野である理由の1つに、AIは何が得意なのかを誰も知らない、ということがある。12月2日号の「Nature」に掲載された最先端の研究所による2つの論文では、機械学習(ML)は、タンパク質生成のような技術的に難しい作業、純粋数学のような抽象的な作業のどちらにも対応し得ることが示されている。

最近話題になった、Google(グーグル)が買収したDeepMind(ディープマインド)やワシントン大学David Baker(デビッド・ベイカー)研究室による、タンパク質の物理的構造(フォールディング)の予測に対するAIの利用の実証結果を見れば、タンパク質の話はさほど驚くことではないかもしれない。偶然ではないが、この記事で紹介する論文を発表したのは、そのDeepMindとベイカー研究室である。

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ベイカー研究室の研究によると、タンパク質配列がどのようにフォールディングされるかを調べるために作成したモデルは、本質的に反対(逆)のことをさせることができるという。つまり、特定のパラメータを満たす新しいタンパク質配列を生成し、in vitro(試験管内)のテストで想定通りに機能させることができるというのだ。

タンパク質の構造を予測するために作成されたAIが、逆に新しいタンパク質を作ることもできるという発見は重要である。なぜなら、絵の中のボートを検出するAIがボートを描けないとか、ポーランド語を英語に翻訳するAIが英語をポーランド語に翻訳することができないという例はあっても、逆のことができるかどうかは必ずしも明らかではなかったからだ。

逆方向の可能性の研究は、SalesForce Research(セールスフォースリサーチ)のProGen(プロジェン)など、すでにさまざまなラボで行われている。しかし、ベイカー研究室のRoseTTAFoldとDeepMindのAlphaFoldは、プロテオームの予測の精度という点では圧倒的に優れており、これらのシステムのテクノロジーを創造的な活動に活かせるというのは喜ばしいことだ。

AIの抽象化

一方、Natureの表紙を飾ったDeepMindの論文は、AIが数学者の複雑で抽象的な作業を支援できることを示している。これは数学の世界を覆すものではないが、機械学習モデルが数学をサポートできるということを示す、実に斬新で、これまでになかった成果だ。

この研究は、数学とは主に関係性とパターンの研究である、という事実に基づいている。例えば、あるものが増えれば別のものが減り、多面体の面が増えればその頂点の数も増える。これらの事象はシステマチックなので、数学者はこれらの正確な関係性を推測することができる。

中学校で習う三角関数は、そのシンプルな例だ。三角形の内角の和が180度になることや、直角三角形の斜辺以外の辺の二乗の和が斜辺の二乗になるというのは三角形の基本的な性質である。しかし、8次元空間にある900辺の多面体ではどうだろう。a2 + b2 = c2のような公式を見つけることができるだろうか?

結び目の幾何学的表現と代数的表現という2つの複雑な性質の関係を示す例(画像クレジット:DeepMind)

観察された事象が偶然のものではなく普遍的なものであることを確信するためには、多くの例を調べる必要があるが、数学者による作業には限界がある。DeepMindはここにAIモデルを導入し、省力化を図ることにした。

オックスフォード大学のMarcus du Sautoy(マーカス・デュ・ソートイ)教授(数学)は、DeepMindのニュースリリースの中で「コンピューターは人間が追随できない規模のデータを出力することに長けているが、(今回の場合)異なるのは、人間だけでは検出できなかったであろうデータのパターンを拾い出すAIの能力である」と説明している。

このAIシステムにサポートされて得られた実際の成果は筆者が理解できる範囲をはるかに超えているが、読者の中に数学者がいれば、DeepMindから引用された以下の内容を理解してもらえると思う。

ある有向グラフと多項式の間には関係があるはずだという「組み合わせ不変性予想」は、40年近く進歩を拒んできました。MLの技術を用いて、そのような関係が実際に存在するという確信を得ること、そしてその関係が、破れた二面体の間隔や極値反射などの構造に関連しているのではないか、という仮説を立てることができました。この知識をもとに、Geordie Williamson(ジョーディー・ウィリアムソン)教授は、組み合わせ不変性予想を解決する、驚くべき美しいアルゴリズムを予想することができました。

代数学、幾何学、量子論には(結び目について)独自の理論があります。これらの異なる理論がどのように関係しているかというのは長年の謎でした。例えば、結び目の幾何学は代数学について何を教えてくれるのでしょうか?私たちは、そのようなパターンを発見するためにMLモデルをトレーニングしました。驚くべきことに、これにより、ある特定の代数的な量(表現)が結び目の幾何学と直接関係していることがわかりました。これまで明らかではなく、既存の理論でも示唆されていなかったことです。私たちはMarc Lackenby(マーク・ラッケンビー)教授と協力し、MLの帰属手法を使って、これまで見過ごされていた構造の重要な側面を示唆する、自然な傾きと呼ぶ新しい量を発見しました。

この予想は、何百万、何千万もの例で裏づけられているが、自分の仮説を厳密に検証するよう指示するのにピザやコーヒーをおごる必要がない、というのもコンピューターの利点である。

上述の例は、DeepMindの研究者たちと教授たちが緊密に協力して(MLの)具体的な利用方法を考え出したものなので「(AIは)普遍的に純粋数学のアシスタントである」といえるものではない。しかし、ルール大学ボーフムのChristian Stump(クリスチャン・スタンプ)教授がNatureのSummaryで述べているように、これが機能するということは、そのようなアイデアに向けた重要な一歩である。

スタンプ教授は次のように記す。「どちらの結果も、その分野の研究者にとって必ずしも手の届かなかったものではありませんが、どちらも、これまで研究者が見つけられなかった真の洞察を提供しています。従って、今回の成果は、抽象的な枠組みの概要以上のものです」「このようなアプローチが広く適用できるかどうかはまだわかりませんが、Alex Davies(アレックス・デイビス)等(ら)の論文は、数学研究における創造的プロセスをMLツールにサポートさせる手法の有望性を示しています」。

画像クレジット:DeepMind

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

アスクルが「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」賛同、大学など教育支援で事業課題やデータ提供・指導員で協力

  1. アスクルが「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」賛同、協力企業として大学などの教育を支援

事務用品の販売などを手がけるアスクルは、10月19日、内閣府、文部科学省、経済産業省が創設した「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」に賛同し、経済産業省の「MDASH SUPPORTERS」の協力企業として大学などの教育プログラムの開発、実施の際に事業課題やデータの提供、指導員の派遣を行うと発表した。

「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」は、内閣府、文部科学省、経済産業省が連携して、これらの分野の教育を奨励するための認定制度。大学院を除く大学、短期大学、高等専門学校の教育プログラムを認定し、支援するというもの。「MDASH SUPPORTERS」とは、「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」を支援する賛同企業や団体のこと。富士通、ソフトバンク、NTT DATAなどの大手企業が名を連ねている。

アスクルでは、「MDASH SUPPORTERSとして、数理・統計学を学ばれた若い方々の力が社会で発揮され、日本の競争力が高まることを期待し、本プログラムに協力してまいります」と話している。

N予備校が量子計算入門を9月15日19時開講、高校生以上からすべての者が量子コンピューターのアルゴリズムを無料で学べる

N予備校が「量子計算入門」を9月15日19時開講、高校生以上からすべての者が量子コンピューターのアルゴリズムを無料で学べる

ドワンゴは9月8日、教材・生授業・Q&Aをスマートフォンに最適化したオールインワン学習アプリ「N予備校」(Android版iOS版)において、「量子計算入門」を2021年9月15日に開講すると発表した。料金は無料。講師は、社会人のための数学教室「すうがくぶんか」の内場崇之氏。また監修を電気通信大学教授の西野哲朗氏が行っている。

受講の際は、N予備校にログイン後、ホームのサイドメニューの課外授業欄から
「数理科学」→「量子計算入門」→「量子計算入門」の順に選択する。

「量子計算入門」の特徴

  • 数学的側面を重視:量子コンピューターに関心があるものの、数学的な部分にハードルを感じて取り組めなかった人のために、生放送での授業や補講を通じ、数学的側面について、必要な部分を基礎的なところから丁寧に解説する。難しいものは具体的な例を挙げることで親しみを持てるようにするなど、数学に苦手意識がある人にも取り組めるような構成を採用
  • トピックを基本的な部分に限定:量子コンピューターについては多くの話題がある中で、代表的な話題に絞って基本的なトピックを解説
  • 電気通信大学の西野哲朗先生が監修:日本における量子コンピューター研究の先駆者の1人である西野哲朗教授が監修。また、生放送授業の初回と最終回には、特別ゲストとして登壇する

「量子計算入門」の授業スケジュール(授業は各回とも19時開始)

  • 初回特別講義(9月15日)
  • :「量子計算入門」ガイダンス(特別ゲスト:西野哲朗先生)
  • 第1講(9月22日): 量子ビットとは?
  • 第2講(9月29日):量子ゲートとは?その1
  • 第3講(10月6日):量子ゲートとは?その2
  • 第4講(10月13日):量子回路で足し算しよう
  • 第5講(10月20日):量子計算のテクニック(量子フーリエ変換)
  • 第6講(10月27日):15を素因数分解してみよう!その1
  • 第7講(11月10日):15を素因数分解してみよう!その2
  • 第8講(11月17日):量子機械学習に親しみを持とう
  • 第9講(11月24日):量子アニーリングとは?
  • 第10講(12月1日):量子アニーリングを使って最適化をしてみよう!
  • 最終回特別講義(12月8日):今後の展開について(特別ゲスト:西野哲朗先生)

従来のコンピューターでは計算量が多く解くことが難しかった問題を、短時間で解けるようになる可能性を秘めた次世代コンピュータとして、量子コンピュータの開発が世界各国で進んでいる。

量子コンピューターは、その計算原理に「量子力学」で扱われる微小な領域での物理現象を利用しており、現在のコンピューターの情報の最小単位である「ビット」とは異なる「量子ビット」と呼ばれる新しい情報単位を使って計算している。

2019年のGoogleの研究チームによる実証実験では、53量子ビットの量子コンピューターが用いられ、現在も実用化に向けたさまざまな取り組みが多くの企業や研究機関によって進行している。今回の「量子計算入門」では、このような量子コンピューターが実行するアルゴリズムの入門的な部分を、高校生でも取り組めるような形で提供する。

N予備校は、ドワンゴが独自開発した、授業、教材(問題集・参考書)、Q&Aシステムが1つになった学習アプリ。学費(料金)は、クレジットカード・キャリア決済の場合月額1100円(税込)。

インターネットを活用することで、いつでもどこでも学習を進めることが可能。ライブ配信の生授業では、コメント機能を使って挙手や質問が行えるなど双方向の参加型授業を受けることができる。またアーカイブされた映像授業では、ノートを取る時に一時停止したり、わからなかった所は何度も見返すことができたりと、自分のペースで学べるとしている。また大学受験の授業では、実力派予備校講師陣、プログラミングでは、現役エンジニアが講師を務めるという。

【インタビュー】数学者が紐解く偽情報の世界

偽情報に誤報、インフォテイメントにalgowars(アルゴワーズ)。メディアの未来をめぐるここ数十年間の議論に意味があるとすれば、少なくとも言語には刺激的な痕跡を残したということだろう。個人の心理的状態や神経学的な問題から、民主主義社会についてのさまざまな懸念まで、ソーシャルメディアが我々の社会にもたらす影響に関するあらゆる非難と恐怖がここ何年もの間、世間を渦巻いている。最近Joseph Bernstein(ジョセフ・バーンスタイン)氏が語った通り「群衆の知恵」から「偽情報」へのシフトというのは確かに急激なものだったと言えるだろう。

そもそも偽情報とは何なのか。それは存在するのか、存在するとしたらそれはどこにあるのか、どうすればそれが偽情報だとわかるのか。お気に入りのプラットフォームのアルゴリズムが私たちの注意を引きつけようと必死に見せてくる広告に対して我々は警戒すべきなのか?Noah Giansiracusa(ノア・ジアンシラクサ)氏がこのテーマに興味を持ったのは、まさにこのよう入り組んだ数学的および社会科学的な疑問からだった。

ボストンにあるベントレー大学の教授であるジアンシラクサ氏は、代数幾何学などの数学を専門としているが、計算幾何学と最高裁を結びつけるなど、社会的なトピックを数学的なレンズを通して見ることにも興味を持っていた。最近では「How Algorithms Create and Prevent Fake News(アルゴリズムがフェイクニュースを生み、防ぐ仕組み)」という本を出版。著書では今日のメディアをめぐる課題と、テクノロジーがそれらの傾向をどのように悪化させたり改善したりしているかを探求している。

先日筆者はTwitter Spaceでジアンシラクサ氏をお招きしたのだが、何とも儚いTwitterではこのトークを後から簡単に聴くことができないため、読者諸君と後世のためにも会話の中で最も興味深い部分を抜き出してみることにした。

このインタビューはわかりやすくするために編集、短縮されている。

ダニー・クライトン:フェイクニュースを研究し、この本を書こうと思った理由を教えてください。

ノア・ジアンシラクサ:フェイクニュースについては社会学や政治学の分野で非常に興味深い議論がなされています。一方でテック系サイドではMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が「AIがすべての問題を解決してくれる」などと言っています。このギャップを埋めるのは少し難しいのではないかと感じました。

ソーシャルメディア上の誤報について、バイデン大統領が「誤報が人を殺している」と言ったのを耳にしたことがあるでしょう。このように、アルゴリズムの側面を理解するのが難しい政治家たちはこのようなことを話しているのです。一方、コンピューターサイエンスの専門家らは細部にまで精通しています。私は筋金入りのコンピューターサイエンスの専門家ではないので、その中間にいると言えるでしょう。ですから一歩下がって全体像を把握することが私には比較的簡単にできると思っています。

それに何と言っても、物事が混乱していて、数学がそれほどきれいではない社会との相互作用をもっと探究したいと思ったのです。

クライトン:数学のバックグラウンドを持つあなたが、多くの人がさまざまな角度から執筆しているこの難しい分野に足を踏み入れています。この分野では人々は何を正しく理解しているのでしょうか。また、人々が見落としているものとは何でしょうか。

ジアンシラクサ:すばらしいジャーナリズムがたくさんあります。多くのジャーナリストがかなり専門的な内容を扱うことができていることに驚かされました。しかし、おそらく間違っているわけではないのですが、1つだけ気になったことがあります。学術論文が発表されたり、GoogleやFacebookなどのハイテク企業が何かを発表したりするときに、ジャーナリストたちはそれを引用して説明しようとするのですが、実際に本当に見て理解しようとすることを少し恐れているように見えました。その能力がないのではなく、むしろ恐怖を感じているのだと思いました。

私が数学の教師として大いに学んだことですが、人々は間違ったことを言ったり、間違えたりすることをとても恐れています。これは技術的なことを書かなければならないジャーナリストも同じで、間違ったことを言いたくないのです。だからFacebookのプレスリリースを引用したり、専門家の言葉を引用したりする方が簡単なのでしょう。

数学が純粋に楽しく美しい理由の1つは、間違いなどを気にせずアイデアを試してみて、それがどこにつながっていくのかを体験することで、さまざまな相互作用を見ることができるということです。論文を書いたり講演をしたりするときには、詳細をチェックします。しかし数学のほとんどは、アイデアがどのように相互作用するかを見極めながら探求していく、この創造的なプロセスなのです。私は数学者としての訓練を受けてきたので、間違いを犯すことや非常に正確であることを気にかけていると思うかもしれませんが、実はそれはとは逆の効果があるのです。

それから、これらのアルゴリズムの多くは見た目ほど複雑ではありません。私が実際に実行しているわけではありませんし、プログラムを組むのは難しいでしょう。しかし、全体像を見ると最近のアルゴリズムのほとんどはディープラーニングに基づいています。つまりニューラルネットワークがあり、それがどんなアーキテクチャを使っているかは外部の人間として私にはどうでもよく、本当に重要なのは予測因子は何なのかということです。要するにこの機械学習アルゴリズムに与える変数は何か、そして何を出力しようとしているのか?誰にでも理解できることです。

クライトン:アルゴリズムを分析する上での大きな課題の1つは透明性の低さです。問題解決に取り組む学者コミュニティの純粋数学の世界などとは異なり、これらの企業の多くは、データや分析結果を広く社会に提供することについて実際には非常に否定的です。

ジアンシラクサ:外部からでは、推測できることには限界があるように感じます。

YouTubeの推薦アルゴリズムが人々を過激派の陰謀論に送り込むかどうかを学者チームが調べようとしていましたが、これは良い例です。これが非常に難しいのは、推薦アルゴリズムにはディープラーニングが使われており、検索履歴や統計学、視聴した他の動画や視聴時間など、何百もの予測因子に基づいているためです。あなたとあなたの経験に合わせて高度にカスタマイズされているので、私が見つけた研究ではすべてシークレットモードが使用されていました。

検索履歴や情報を一切持たないユーザーが動画にアクセスし、最初におすすめされた動画をクリックし、またその次の動画をクリックする。そのようにしていけばアルゴリズムが人をどこへ連れて行くのかを確認することができるでしょう。しかしこれは履歴のある実際のユーザーとはまったく異なる体験ですし、とても難しいことです。外部からYouTubeのアルゴリズムを探る良い方法は誰も見つけられていないと思います。

正直なところ、私が考える唯一の方法は、大勢のボランティアを募り、その人たちのコンピューターにトラッカーを取り付けて「インターネットを普段通り閲覧して、見ている動画を教えてください」と頼む昔ながらの研究方法です。このように、ほとんどすべてと言っていいほど多くのアルゴリズムが個人のデータに大きく依存しているという事実を乗り越えるというのはとても困難なことです。私たちはまだどのように分析したら良いのか分かっていないのです。

データを持っていないために問題を抱えているのは、私やその他の外部の人間だけではありません。アルゴリズムを構築した企業内の人間も、そのアルゴリズムがどのように機能するのか理論上はわかってはいても、実際にどのように動作するのかまでは知らないのです。まるでフランケンシュタインの怪物のように、作ったはいいがどう動くかわからないわけです。ですから本当の意味でデータを研究するには、そのデータを持っている内部の人間が、時間とリソースを割いて研究するしかないと思います。

クライトン:誤報に対する評価やプラットフォーム上のエンゲージメントの判断には多くの指標が用いられています。あなたの数学的なバックグラウンドからすると、こういった指標は強固なものだと思いますか?

ジアンシラクサ:人々は誤った情報を暴こうとします。しかし、その過程でコメントしたり、リツイートしたり、シェアしたりすることがあり、それもエンゲージメントとしてカウントされます。エンゲージメントの測定では、ポジティブなものをきちんと把握しているのか、それともただすべてのエンゲージメントを見ているのか?すべて1つにまとめられてしまうでしょう。

これは学術研究においても同様です。被引用率は研究がどれだけ成功したものかを示す普遍的な指標です。例えばウェイクフィールドの自閉症とワクチンに関する論文は、まったくインチキなのにも関わらず大量に引用されていました。その多くは本当に正しいと思って引用している人たちですが、その他の多くはこの論文を否定している科学者たちです。しかし引用は引用です。つまり、すべてが成功の指標としてカウントされてしまうのです。

そのためエンゲージメントについても、それと似たようなことが起きているのだと思います。私がコメントに「それ、やばいな」と投稿した場合、アルゴリズムは私がそれを支持しているかどうかをどうやって知ることができるでしょう。AIの言語処理を使って試すこともできるかもしれませんが、そのためには大変な労力が必要です。

クライトン:最後に、GPT-3や合成メディア、フェイクニュースに関する懸念について少しお話したいと思います。AIボットが偽情報でメディアを圧倒するのではないかという懸念がありますが、私たちはどれくらい怖がるべきなのか、または恐れる必要はないのか、あなたの意見を教えてください。

ジアンシラクサ:私の本は体験から生まれたものなので、公平性を保ちながら人々に情報を提供して、彼らが自分で判断できるようにしたいと思いました。そのような議論を省いて、両方の立場の人に話してもらおうと思ったのです。私はニュースフィードのアルゴリズムや認識アルゴリズムは有害なものを増幅させ、社会に悪影響を与えると思います。しかしフェイクニュースを制限するためにアルゴリズムを生産的にうまく使っているすばらしい進歩もたくさんあります。

AIがすべてを解決し、真実を伝えて確認し、誤った情報を検出してそれを取り消すことができるアルゴリズムを手に入れることができるというテクノユートピア主義の人々がいます。わずかな進歩はありますが、そんなものは実現しないでしょうし、完全に成功することもありません。常に人間に頼る必要があるのです。一方で、もう1つの問題は不合理な恐怖心です。アルゴリズムが非常に強力で人間を滅ぼすという、誇張されたAIのディストピアがあります。

2018年にディープフェイクがニュースになり、GPT-3が数年前にリリースされた際「やばい、これではフェイクニュースの問題が深刻化して、何が真実かを理解するのがずっと難しくなってしまう」という恐怖が世間を取り巻きました。しかし数年経った今、多少難しくなったと言えるものの、予想していたほどではありません。主な問題は何よりも心理的、経済的なものなのです。

GPT-3の創造者らはアルゴリズムを紹介した研究論文を発表していますが、その中で、あるテキストを貼り付けて記事へと展開させ、ボランティアに評価してもらいどれがアルゴリズムで生成された記事で、どれが人間が生成した記事かを推測してもらうというテストを行いました。その結果、50%に近い精度が得られたと報告されています。すばらしくもあり、恐ろしいことでもありますね。

しかしよく見ると、この場合は単に1行の見出しを1段落の文章に展開させたに過ぎません。もしThe Atlantic誌やNew Yorker誌のような長文の記事を書こうとすると、矛盾が生じ、意味をなさなくなるかもしれません。この論文の著者はこのことには触れておらず、ただ実験をして「見て、こんなにも上手くいったよ」と言っただけのことです。

説得力があるように見えますし、なかなかの記事を作ることは可能です。しかしフェイクニュースや誤報などについて言えば、なぜGPT-3がさほど影響力がなかったかというと、結局のところそれはフェイクニュースがほとんどクズ同然だからです。書き方も下手で、質が低く、安っぽくてインスタントなものだからです。16歳の甥っ子にお金を払えば、数分で大量のフェイクニュース記事を作ることができるでしょう。

数学のおかげでこういったことを理解できるというよりも、数学では主に懐疑的になることが重要だから理解できるのかもしれません。だからこういったことに疑問を持ち、少し懐疑的になったら良いのです。

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画像クレジット:Valera Golovniov/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

大人のための数学教室・統計教室の「和から」がアートから数学を楽しく学べるサブスク「数学アートサロン『MAS』」開始

大人のための数学教室・統計教室の「和から」がアートから数学を楽しく学べるサブスク「数学アートサロン『MAS』」開始

大人のための数学教室 和」「大人のための統計教室 和」を運営する和から(わから)は8月31日、数学の美しさをアートやデザインで体感し、楽しい学びに結び付ける数学サブスクリプションサービス「数学アートサロン『MAS』」の開始を発表した。

一般の人間にとって数学は敷居が高く、楽しく学ぶ以前に、まったく理解できないと自分から壁を作ってしまう人が多い。一般的に中学校や高校の授業では、まず理論を「理解」してから、数学の具体的な応用で「体感」し、面白さを知るという流れになっている。しかし、「理解」の段階で苦手意識を持ってしまう人が多く、「体感」にまで至らないと和からは話す。

そこで数学アートサロン『MAS』では、数学に「アート」という身近な切り口から入り、視覚的に数学を捉えてゆく方法で、まず「体感」し、純粋な好奇心から「理解」につなげてゆく。

数学アートサロン『MAS』で受講できる数学アートセミナーでは、「ExcelやPowerPointといった一般的なソフトウェアのみを使って複雑で美しい数学的なアートを体感」できる。VBAなどのコードは使わず、Excelの関数や描写ツールのみで深淵な数学の世界をのぞき込めるとしている。また、大人から子どもまで楽しめる「算数/数学のおもしろショート動画」も特典として提供される。

会員プランは次の3つ。それぞれ受けられる特典が異なる。料金はすべて税込。

  • プランα(月額2980円)
    特典1:過去の数学アートに関する全セミナーの動画の視聴
    特典2:大人のための算数/数学動画コンテンツの視聴
  • プランβ(月額9800円)
    (プランαの特典に加えて)
    特典3:毎月開催される数学アートセミナーのリアルタイム参加
    特典4:毎月開催される「数学座談会」の参加
    特典5:集団チャットコミュニティの参加
  • プランγ(月額1万9800円)
    (プランα、プランβの特典に加えて)
    特典6:理数学博士、岡本健太郎氏が講師を務める1対1オンラインレッスン(月1回80分)

大人のための数学教室・統計教室の「和から」がアートから数学を楽しく学べるサブスク「数学アートサロン『MAS』」開始現在、サービス開始を記念して2021年12月28日までの期間限定で、「Excelアート超入門」と「数学的デザイン超入門」を無料で受講できる。

スイスの大学が円周率計算の世界新記録62.8兆桁達成と報告、AMD Epyc 7542×2・1TBメモリー・16TB HDD×38など利用

スイスの大学が円周率計算の世界新記録62.8兆桁達成と報告、AMD Epyc 7542×2・1TBメモリー・16TB HDD×38など利用

Olivier Le Moal via Getty Images

スイス・グラウビュンデン応用科学大学の研究チームが、円周率計算の世界記録に挑戦し、これまでの記録である50兆桁を12.8兆桁更新する、62.8兆桁まで計算したと主張しています。

50兆桁というこれまでの記録は2020年に米国のティモシー・マリカン氏が更新したもので、その計算時間は303日もかかりました。これに対し62.8兆桁まで計算した今回の記録はもしかしたら1年超えか…とおもいきや、意外にも108日と9時間ということなので、ほぼ1/3に短縮されています。

ではその計算を行った機材はと言えば、2.9GHz(最大3.4GHz)の32コアAMD Epyc 7542を2つ搭載し、1TB RAM、ディスクアレイとして16TB HDDを38台搭載したマシンとのこと。特徴的なのは、38台あるHDDのうち34台はメモリスワップデータ格納用に使用されているところ。これはメモリーが非常に高価でであるためコストダウン策として構成されています。またSSDではなくHDDを使用している理由としては、膨大な回数の計算を繰り返して行い、データの上書きを繰り返すことを考慮した結果とのことです。なお、OSはSSDにインストールされたUbuntu 20.04で、円周率計算には「y-Cruncher」と呼ばれるソフトウェアを使用しました。

ちなみに、62.8兆桁まで計算されたという円周率ですが、チームはまだギネスに正式に記録として認められていないとして、その最後の10桁が「7817924264」だったとだけ述べています。どうやって確認するのかはわかりませんが、ギネスがその数値を正しいと認め、記録として認定すれば、62.8兆桁すべてを公表するとしています。

(Source:FH Graubünden。Via The RegisterEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:その他
タグ:Ubuntu(製品・サービス)AMD(企業)AMD EPYC(製品)グラウビュンデン応用科学大学 / FHGR(組織)数学(用語)Linux(製品・サービス)

語学学習のDuolingoが子供向け数学アプリを開発中、CEOが明言

フクロウをモチーフにした語学アプリで知られるDuolingo(デュオリンゴ)が、新たに数学アプリを開発中であるとCEOのLuis von Ahn(ルイス・フォン・アン)氏が明らかした。共同創業者である同氏が先に行われたインタビューの中で、そのアプリについて言及した。同社はインタビューが行われたのと同じ日に、正式に株式市場に上場した。

インタビューの後、TechCrunchはDuolingoにアプリの詳細について問い合わせたが、同社は開発プロセスの「非常に初期の段階」であることを理由に、詳細な情報の提供を断った。だが、同社が毎年開催している無料カンファレンス「Duocon」で、ユーザーは8月末にこのアプリについて詳しく知ることができるかもしれないと述べた。5月に掲載された求人情報によると、同社は「小規模なクロスファンクショナルチーム」と一緒に新しい数学アプリを開発する数学の博士号を持つ学習科学者を募集している。

求人情報によると、このアプリは若い学習者向けのものであるようだ。採用候補者には、K-12(日本の高校3年生に相当)レベルの数学、特に3〜8年生(日本の小学3年生から中学2年生に相当)までの若い生徒を対象とした授業の経験と知識を求めていると記載されている。

Duolingoの現在のユーザーは、Duolingoが数学に参入することについて複雑な気持ちを抱いているようだ。

IPO当日のインタビューでCEOのルイス・フォン・アン氏は、ユーザーはDuolingoが数学アプリを推し進めていくのを目の当たりにするかもしれないと語った。また、今後の買収によっては、言語学習以外の分野にも拡大していくと話した。この発言は、Duolingoがまったく新しいソフトウェアやカリキュラムに大量のリソースを投入するかもしれないという懸念を解消するかもしれない。

「もし他の分野で、誰かがかなり良い仕事をしていて、我々と同じようなミッションを持ち、同じような企業文化を持っていると思われる場合、Duolingoはその会社の買収を検討するかもしれません」とフォン・アン氏はインタビューで語った。

数学に特化したEdTech企業には、Khan Academy、Brilliant.orgPhotomathNumerade、そして最近買収したSymbolabなどがある。

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Duolingoにとってこの数学アプリは、同社の実験の歴史に新たな1ページを加える。同社は創業から10年間で何百ものアイデアを生み出してきたが、その成功の度合いはさまざまだった。

ここ数年は、子ども向けの読み書きアプリ「Duolingo ABC」や「Duolingo English Test」など、コアアプリ以外の製品群を開発してきた。一方で、Duolingoの失敗したアイデアの「墓場」には、撤退したマネタイズ戦略やAIを搭載したチャットボットなどがある。リーダーボードのような人気のある機能は、成功する前にくすぶってしまった。そして数学は、興味深いことに、常にフォン・アン氏の頭の片隅にあった。

Duolingo EC-1でも紹介されているが、フォン・アン氏は、同氏と共同創業者のSeverin Hacker(セベリン・ハッカー)氏が、最終的に語学に特化すると決める前に、Duolingoを数学アプリにしようと考えていたと常々言っている。

「私は数学が大好きですが、数学を学んでも、数学そのものがお金になるわけではありません」とフォン・アン氏は以前のインタビューで話している。「エンジニアになるには物理学を学びますが、そのために数学を学びます。一方、英語の知識は世界のほとんどの国で収入を増やす可能性を直接的な形で向上させます」。

あるユーザーは「数学は学ぶべき重要なスキルだ。これによって、特にアクセスが限られている人たちに、より良いリソースを提供できるかもしれない。一方で、より多くの機会に恵まれている人たちには刺激的であり、同様に魅力的なものとなるだろう」と書いている

また、Duolingoに対し、他の分野への進出を検討する前に、言語学習サービスにもっと投資するよう望む声もあった。「まだまだカバーすべき言語がある(フランス語とスペイン語を除く)のに、数学への進出を検討するのは奇妙だ」とあるユーザーは書いている。

同社が教えられるのは、欧州言語共通参照枠(CEFR)に基づく初級から中級下レベルまでの語学力のみだ。同社が5月に発表した指標によると、Duolingoのコースの約30〜40%がCEFRと整合しているという。

Duolingoの数学アプリがどのようなものか、何を提供してくれるのか、収益化されるのかどうかを想像するのは時期尚早かもしれない。いずれにせよ、このアプリはDuolingoにとって、言語以外の教育分野への初めての正式な進出となる。

同社は、製品だけでなく、この2つのテーマの間に哲学的な重なりを見つける必要がある。語学は文化的な背景やニュアンスによって恩恵を受けられるスキルであり、数学は1つの正解にたどり着くことを目標に進む。しかし、どちらの教育分野でも、几帳面な思考と、答えを導き出すために関数を応用する能力が必要だ。最終的には、どちらもDuolingoが最大の製品だと主張する、アプリを開き、画面で起こっていることに注意を払おうとする動機に依存している。

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nariko Mizoguchi

セガがゲーム業界における三角関数や虚数の重要性を伝授する約150ページの社内勉強用数学資料を一般公開

セガがゲーム業界における三角関数や虚数の重要性を伝授する社内勉強用資料を一般公開

セガは6月15日、公式ツイッターアカウントで「サインコサインタンジェント、虚数i……いつ使うんだと思ったあなた。じつは数学は、ゲーム業界を根から支える重要な役割を担っているんです」とツイート。セガ社内勉強会用の数学資料「基礎線形代数講座」約150ページを無料公開したと発表した。

この勉強会は、「高校数学の超駆け足での復習」から始めて「大学初年度で学ぶ線形代数の基礎」を学び直し、「応用としての3次元回転の表現の基礎の理解」をすることを目的としている。

線形代数は3DCGの基礎であり、ゲーム開発には欠かせない。しかし、SEGA TECH BLOGによれば、「ゲーム開発においても分業化・専業化の流れは著しく、ゲームアプリケーション(みなさんに遊んで頂いているゲームそのもの)を開発する際、いわゆるゲームエンジンや各種ライブラリを用いるのが当たり前になっています」という。つまり、今やエンジンやライブラリーを使えば高等数学の知識がなくてもゲームは作れてしまうということ。ところが、数学の知識がないと、エンジンやライブラリーをカスタマイズして使いたいときに行き詰まってしまう。当然、エンジンやライブラリーを開発する人や、もっと高度なプログラムを組みたいと考える人には、どうしても必要となる。

この資料の構成は次のとおり。

第1講 イントロダクション
第2講 初等関数
第3講 ベクトル
第4講 行列 I:連立一次方程式
第5講 行列 II:線形変換
第6講 行列 III:固有値・対角化
第7講 回転の表現 I
第8講 回転の表現 II

この資料の「まえがきに代えて」の最後には、こんなメッセージが添えられている。
「学生の方へ、このような異端の書(笑)で学ぼうという奇特な方がもし居たら、言うまでもないことですが、本書を読んだあと講義で指定されている教科書を改めて読み直してみましょう。きっと今まで以上に理解が深まるのではないかと思います。未来を担う皆さんにとって、本書が少しでもお役に立てれば幸甚です」

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数学学習アプリのPhotomathが24.3億円調達、2億2000万ダウンロード突破

方程式を解くのを助けてくれる人気のモバイルアプリPhotomathが、Menlo VenturesがリードするシリーズBの投資ラウンドで2300万ドル(約24億3000万円)を調達した。アプリは大成功した消費者向けアプリであり、自分の家にティーンエイジャーがいる人なら、すでにご存知だろう。

このアプリはまず最初に、スマートフォンのカメラに数学の問題を読ませる。するとアプリは、解き方を1つひとつの説明してくれる。何でも楽をしたい学生にとっては、理想のアプリかもしれない。

Photomathの使い方は実に多様だ。たとえばノートに書いた方程式からPhotomathはグラフを描くこともできる。

キーボードで方程式をタイプするのは、かなり難しい。そこで、紙やペンという物理的世界とスマートフォンとの間にあるギャップの橋渡しをしたことが、Photomathの成功の鍵となっている。ユーザーはペンを握って紙の上に何かを書くだけでい。つまりPhotomathれは、電卓のAR(拡張現実)バージョンともいえる。紙とペンという物理的な現実を、計算能力で拡張する。

今日の投資ラウンドには、GSV VenturesやLearn Capital、Cherubic VenturesそしてGoodwater Capitalが参加した。

このアプリの成功裏話はおもしろい。Photomathは当初、MicroBlinkという企業のためのデモアプリとして設計された。当時チームは、テキスト認識技術に取り組んでおり、自分たちのコア技術が役に立つさまざまな企業に、技術を売る売ることを考えた。

2014年には、ロンドンのTechCrunch Disruptで彼らは、MicroBlinkを売り込んだ。そうするとひと晩で、PhotomathはiOSアプリストアのトップに躍り出た

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Photomathはこれまでに、2億2000万回以上ダウンロードされている。本稿を書いている時点で米国のアプリストアでは59位で、Tinderの1つ上だ。真似をしようとした企業は多かったが、どこもこのヨーロッパの小さなスタートアップを負かすことはできなかった。

アプリは、子どもたちが家で勉強するようになってから、さらに利用されている。手を上げて助けを求める先生がいなくても、十分に勉強できる。

Photomathは無料だが、有料版のPhotomath Plusもある。こちらはアニメを使って解き方を説明するなど、さまざまな機能がある。

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hiroshi Iwatani)