ワクチン接種普及のためにホワイトハウスはデートアプリを利用

ワクチン接種率が伸び悩んでいる米国では、ホワイトハウスも何かクリエイティブな方法で国民に接種を勧めざるをえない。そこで彼らが見つけた名案は、ワクチンを注射すれば自分と他人を致死性の病気から防ぐだけでなく、愛が見つかるでしょう、というもの。ワクチンしなければ、愛どころか一人で寝ることになりますよ、と。

ホワイトハウスの新型コロナウイルス対策班は金曜日(米国時間5/21)に、ワクチンを接種した人には人気のデートアプリから景品が出ると発表した。このプロモーションに参加したのは、Tinderをはじめ、Bumble、Hinge、Match、OkCupid、BLK、Chispa、Plenty of Fish、そしてBadooだ。ホワイトハウスの試算では、これらすべてのデートアプリのユーザーのうち、およそ5000万人をその気にさせるつもりだ。

Tinderでは、6月2日から7月4日までに、自分のワクチン接種状態を証明するステッカーをプロフィールに加えた者には無料でSuper Like(すごくすてき)が贈られる。接種証明は要らないが、でも今住んでるところで接種可能なら受けるべきだ。Tinderなどのアプリはまた、Vaccine.govにある接種会場の情報を載せて、いちばん近い場所が分かるようにする。

TinderのCEO、Jim Lanzone氏は曰く、「この夏、リアルの出会いを期待している人にとっては、こんな花火のようなネタが絶好のきっかけになるね」。

OkCupidによると、ワクチンをしたこと自体がその役に立つ。同社によると、接種証明を見せた人は、マッチを見つける率がそうでない人に比べ14%高かったそうだ。OkCupidでは、接種をしたユーザーは無料のボーナスをもらえて、自分のプロフィールをマッチ候補に対して宣伝してくれる。ホワイトハウスのこの企画に参加したアプリの中には、ユーザーを競争で有利にするための特典をくれるところもある。

関連記事: Running a queer dating startup amid a pandemic and racial justice uprising(未訳、有料記事)

このデートアプリを利用するキャンペーンの最終日である7月4日は、ホワイトハウスがその日までに成人の70%を接種済みにすると宣言している日だ。多くの米国人にそのことを徹底するためにバイデン政権は、NASCARやカントリーミュージックのCMTなど人気のエンターテインメント企業からもワクチン接種を宣伝している。

ホワイトハウスの新型コロナウイルス担当上級顧問Andy Slavitt氏は、金曜日の記者会見で「ソーシャルディスタンスとデートを結びつけるのは基本的に無理がある」、と語った。彼によると、ワクチン接種の推進をデートアプリの企業にお願いするのは、公式のパートナーシップというよりも、「大統領からの行動の呼びかけにこれらの企業が応えた」という性格のものだ。

Slavitt氏はこう言った: 「ついに私たちは、私たちの魅力をより高めるものを見つけたのです」。そして、「それがワクチン接種です」。

関連記事: 「TinderとTikTok」を合体させたマッチングアプリ「Snack」がZ世代の投資家を募る

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Leon Neal/Getty Images

[原文へ]

Twitterはトランプ氏が新型コロナで死ぬことを願っているツイートの削除をユーザーに要請

ドナルド・トランプ大統領の新型コロナウイルスの陽性が判明したニュースが駆け巡ったあと、同ウイルスによって引き起こされる病気で大統領が死ぬことを公に願ったツイートが、この24時間の間にTwitterを賑やかな場所にした。ある投稿は微妙なニュアンスで、またあるものはより直接的な内容だった。

Twitterは、トランプ大統領に限らず誰に対しても死や重篤な身体的危害や致命的な病気を願ったり、希望したりするツイートを許可していないことを人々に注意喚起を出した。Twitterは米国時間10月2日、「このポリシーに違反するツイートは削除する必要がある」とコメントしている。しかし、これは自動的に削除するということを意味するものではないことも明らかにした。自動的に対処される誤報していたサイトもあった。ユーザーアカウントが停止されるという意味ではない。

Motherboardは、Twitterの声明を引用して、ユーザーアカウントが停止になると報じた。これはTwitter自身の公式声明とは少し異なる。

トランプ氏は10月2日の夜、妻のメラニア・トランプ大統領夫人とともに新型コロナウイルスの陽性反応が出たことをツイートした。ホワイトハウスの医師ショーン・コンリー氏は10月2日に、新型コロナウイルスとしてより一般的に知られていることが多いSAR-Cov-2ウイルスの陽性結果を確認するメモを発表した。トランプ氏は、数日間の治療のためにウォルター・リード医療センターに向かっていた10月3日の夕方、ヘリコプターに搭乗するところを目撃された。

この影響を受け。Nasdaq(ナスダック)を含む主要な取引所で10月3日に株式が暴落した。このニュースはすべての主要な米国の指数に下向きの圧力をかけたが、最も影響が大きかったのがハイテク株だった

カテゴリー:ネットサービス
タグ:トランプ大統領、新型コロナウイルス、Twitter

Photo by MANDEL NGAN/AFP via Getty Images / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

GMとフォードが新型コロナで米政府と契約していた人工呼吸器生産を完了

米国内での新型コロナウイルスの広がりを受け、数多くの自動車会社やメーカーが個人防護具や人工呼吸器の不足を補おうと工場を改造する計画を発表した。

そしていま、米自動車メーカー2社がそれぞれ結んでいた数百万ドル規模の人工呼吸器製造の契約を完了した。2社合わせて8万台を米政府に納入した。

General Motors(GM、ゼネラル・モーターズ)は9月1日、3万台の救命救急人工呼吸器を国家戦略備蓄向けに製造するという米保健福祉省(HHS)との契約を完了させたと発表した。GMは人工呼吸器の多くは病院に配備されたと述べた。Ford(フォード)でも契約の人工呼吸器5万台の製造が完了したBloomberg記事)

GMとフォードは単独で取り組んだわけではなかった。両社ともまったくゼロの状態から5カ月以内に数千台の製造体制に加速させるのにパートナー企業と力を合わせた。GMはインディアナ州ココモのエンジンプラントで従業員1000人体制で人工呼吸器を製造するのにVentec Life Systems(ベンテック・ライフ・システムズ)と提携した。GMとVentecの提携は、新型コロナ問題への対応としてし企業のマッチングをコーディネートするStopTheSpread.orgの取り組みから生まれたものだ。

一方、フォードはGE Healthcare(GEヘルスケア)と提携して、ミシガン州ローソンビルロードにあるプラントで人工呼吸器を製造した。フォードの3億3600万ドル(約357億円)の契約は、8月28日にモデルA-E人工呼吸器の最終ユニットを出荷して完了した。フォードの契約は当初7月中旬に完了するとされていたが、Bloombergによると、パーツ生産の新規サプライヤーの影響で遅れが生じた。契約の延長はHHSに認められた。

契約初期に両社はトランプ大統領に批判され、攻撃さらされたが、結局大統領は両社の取り組みを称賛した。

両社の生産は拡大し、車両やパーツの組み立てに使われていたかなりの工場を医療機器製造施設へと変換できることを示した。GMはVentecとの提携を発表する前に、VentecのVOCSNという救命救急人工呼吸器の製造に必要な700以上の部品を確保できるかどうか調査しさえした。VOCSNは2017年にFDA(米食品医薬品局)に承認された多機能人工呼吸器だ。

GMは当初、製造費用を7億5000万ドル(約797億円)と見積もった。ここには、エンジンプラントの改造、人工呼吸器製造のための材料購入、製造に従事する労働者1000人の賃金などが含まれる、と情報筋は話した。しかし、トランプ政権は見積もり額に尻込みし、契約を保留した。最終的にGMは8月末までに人工呼吸器3万台を製造するという4億9000万ドル(約520億円)の契約を政府と結んだ。この契約のもとで、GMは400種類パーツから構成される、VOCSNよりもシンプルなタイプのVOCSN V+Proという別の人工呼吸器を製造した。VOCSNのほうが高価で多機能性を備えた複雑な機器だ。

フォードとGMはまた他の医療用品も手掛けた。Apolloというプロジェクトを展開したフォードは3M(スリーエム)とのコラボレーションで、フェースシールド1900万個、フェースマスク4200万枚、洗濯可能な予防衣160万着、電動ファン付き呼吸用保護具3万2000点を生産した、と述べた。

GMはウォーレンにある施設にフェースマスク生産ライン2つ、N95医療用マスク生産ライン1つを稼働させていると話した。これまでにマスク1000万枚を生産し、GM施設で働く従業員向けと地域組織への寄付用のマスクの生産を続けている、と述べた。

画像クレジット: AJ Mast / GM and Ventec

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Boston Dynamicsの四足歩行ロボの医療版「Dr. Spot」は新型コロナ患者のバイタルサイン測定に役立つ

新型コロナウイルスについて衛生機関が絶えず言ってきたアドバイスは「ウイルスにさらされた可能性のある人との接触を可能な限りなくす」というものだ。しかしこれは病院では難しい。医療関係者は適切な医療を提供するために一定の時間ごとに患者の体温や血圧などのバイタルを計測しなければならない。しかしマサチューセッツ工科大学(MIT)、ブリガム・ウイミンズ病院、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)などのコラボレーションによって、現場のヘルスケアワーカーが直接患者に接することなくこれらバイタル情報を計測できるようになるかもしれない。

発表された論文の中で、MITの研究者はBoston Dynamicsの四つ足イヌ型ロボットのカスタマイズバージョンである「Dr. Spot」を、コンタクトレスのバイタルサイン計測装備としてどのように開発したか説明している。Dr. Spotにはタブレット端末が取り付けられていて、医師や看護師は「フェイストゥーフェイス」で患者とやりとりしながら検査できる。この遠隔診療の超ローカル版は医療従事者の新型コロナ接触リスクを減らすだけでなく、個人用保護具の使用を大幅に減らして最も必要とされるときのためにとっておくのにも貢献する。

Dr. Spotは皮膚温、呼吸数、心拍、血中酸素飽和度などのバイタルサインを一度に測定できる。これらバイタルサインは患者の新型コロナ感染の進行状況を判断するときに医療者が追跡する重要な指標だ。研究目的でDr. Spotは病院に配備されたが、計測とセンサーの精度を証明するためにボランティアのいくつかの項目を測定しただけだ。

この取り組みはDr. Spotを実際に展開したり、あるいは臨床研究における似たようなシステムの可能性を証明するための研究にすぎない。しかし結果は有望だ。リモートでのバイタルモニタリングは新しい概念ではない。ただ、これを実現するための他のシステムの多くが、遠隔での患者のバイタルサイン測定を行う実際の場所を確保する必要がある。一方、Dr. Spotは現存する病院やクリニックにフレキシブルに展開できるかもしれない。

画像クレジット: MIT

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

Bluetooth SIGが新型コロナ濃厚接触者通知をスマートウオッチや健康トラッカーで利用可能にする仕様を策定中

アップルとグーグルが共同で作成したスマートフォンベースの新型コロナウイルス向けの接触者通知システム(ENS)は、世界中の保健機関による包括的な接触追跡の取り組みを支援する素晴らしい取り組みだ。しかし、新型コロナウイルの世界的な感染蔓延は、Bluetoothの仕組みが決められたときに誰もが想定していなかったものだった。そこでBluetooth Special Interest Group(SIG)は、ENS技術の利用範囲を拡大するため、ウェアラブルデバイスとスマートフォンを連動させることでENSを利用可能にする新しい仕様の作成に取り組んでいる。

具体的には、手首に装着したスマートウォッチや健康トラッカーのようなデバイスであっても潜在的な濃厚接触を追跡し、新型コロナウイルスに感染した可能性のある対象者に通知を提供する各種システムを利用できるようになる。Bluetooth SIGは、対象機器をウェアラブルに拡大することで、一般的にスマートフォンを所持していない人、つまり、幼い子供や児童、介護施設にいる高齢者などがENSによる通知を受けられることを目指す。

この新しい仕様が完成し、Bluetoothの標準仕様として組み込まれれば、それがどのように役立つかは容易に理解できるだろう。学校では、例えば体育の授業に戻ったときに潜在的な濃厚接触を追跡するために、シンプルで安価なBluetooth対応のウェアラブルの使用を義務付けることができるかもしれない。

この仕様がいつ、どのようにして策定・展開されるかはまだわからない。しかし、Bluetooth SIGによると新仕様の初期ドラフトを「今後数カ月のうちに」メンバーがレビューできるようにする予定とのこと。このグループには、アップル、マイクロソフト、インテルなどを含む強力なメンバーが名を連ねており、提案された技術は以下のインフォグラフィックに示されているように、個人のプライバシー保護を維持しながら、アップルとグーグルは既存の濃厚接触者追跡プラットフォームにウェアラブル端末を組み込めるようになる。

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

米ゲーム業界は新型コロナ特需で第2四半期も好調、支出額は1.2兆円

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は過去数カ月、多くの産業に打撃を与えてきた。しかし米国のゲーム産業は、いまだに外出がままならない状況で、その恩恵を受け続けている。米国のゲーム支出は第2四半期として過去最多を記録したことがNPDのレポートで明らかになった。

レポートによると、ゲーマーは第2四半期に前年同期比30%増の116億ドル(約1兆2300億円)を使った。新型コロナが猛威をふるい続けているのに伴いゲーム支出も増え続けていて、109億ドル(約1兆1600億円)だった前四半期から7%増だ。

116億ドルのうちゲームそのものは102億ドル(約1兆800億円、前年同期比28%増)で、あつまれ どうぶつの森シリーズ、Call of Duty: Warzone(コール オブ デューティー ウォーゾーン)、Call of Duty: Modern Warfare(コール オブ デューティー モダンウォーフェア)など、馴染みのタイトルがトップの座を占めた。ゲームハードウェア部門の売上は前年比57%増で、Nintendo Switch、PlayStation 4、Xbox Oneいずれも好調だった。

Switchに関しては、昨年の不足を考えれば好調なのは不思議ではない。少し予想外だったのは、PS4とXbox Oneの好調の維持だろう。というのも、どちらのコンソールも今年後半に新世代投入が予定されているからだ。もちろん、今後登場するシステムは外出禁止となっているいま役に立つものではない。

画像クレジット:Frederic J. Brown/AFP / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

ロシアのハッカー集団が新型コロナワクチン開発を攻撃、と英米カナダが警告

西側の情報機関は、ロシアのサイバースパイ活動が、多くの国で展開されている新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン開発を攻撃している証拠を確認した、と明らかにした。

報告の中で、英国の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、ロシアとつながっているハッカー集団が2020年、医学的な研究開発や新型コロナウイルスワクチン開発を行っているカナダ、米国、英国のさまざまな組織を攻撃している(NCSCレポート)と指摘している。このハッカー集団は「APT29」として知られ、時に「the Dukes」「Cozy Bear」とも呼ばれている。

報告書によると、APT29は新型コロナワクチン開発を行っている世界の多くの組織を攻撃するために「WellMess」「WellMail」というカスタムマルウェアを使っている。

WellMessとWellMailはこれまで公にはAPT29と関連づけられていなかった、と書かれている。

英情報機関であるGCHQの一部門であるNCSCは、マルウェア攻撃の意図は新型コロナワクチン開発とテストに関連する情報とIPを盗むことである可能性が「極めて高い」としている。

レポートは、カナダの通信保安局と(CSE)と米国の国家安全保障局(NSA)との連名だ。

「新型コロナワクチンの研究・開発を標的としたこのところの攻撃では、ハッカーグループは研究機関が所有する特定の外部IPアドレスに対して脆弱さを見つけ出そうとスキャニングを行った。その後、特定した脆弱なサービスから情報を盗み出そうと試みた」と報告書にはある。

そして「APT29はパンデミックに関連する重要な疑問の答えを模索している」ため、新型コロナワクチンR&Dを行っている組織織への攻撃を続けるだろう、と結論づけている。

NCSCは「この報告書で詳細に書かれている動きを感知するために、ルールやIOC(セキュリティ侵害インジケーター)を活用することを研究機関に強く勧める」と注意を喚起した。

この勧告について、英国政府は新型コロナワクチン開発に対するロシアの「無責任な」サイバー攻撃だ、と非難した。

「ロシアの情報機関が新型コロナパンデミックとの戦いに従事している機関を攻撃していることはまったく容認できない」と英外相のDominic Raab(ドミニク・ラーブ)氏は声明で述べた。「彼らが無謀な行為で利己心を追求している一方で、英国と同盟国はワクチンを開発し、世界中の人の健康を守るために取り組みを一層強化する」。

「英国はそうしたサイバー攻撃を行うハッカーたちにこれまで同様立ち向かい、同盟国とともに犯人たちの責任を問う」と付け加えた。

先月EUの議員たちは、新型コロナに関する主な誤情報運動の裏にロシアと中国の存在を挙げた。そうした運動では地域のインターネットユーザーを標的にしていた。

欧州委員会は、オンラインでの有害な偽情報の拡大に対応するためにEU全体でのアプローチに取り組んでいる。

ロシアの選挙干渉

ラーブ氏の主張(The Guardian記事)に続き、NCSCの勧告はロシアが漏洩文書をオンラインで拡散することで2019年の英国総選挙に影響を及ぼそうと試みたことも指摘した。

ラーブ氏は7月16日の声明で「広範な分析に基づき、ロシアが不正に入手して漏洩した政府文書をオンラインで拡散することで2019年の総選挙に干渉しようとしたことはほぼ確実だと政府は結論づけた」と述べた。

ガーディアン紙は、451ページにわたる公的電子メールがいかに選挙運動中に野党の労働党にわたったのかを調べるのに英国の情報機関は数カ月を費やしたと報道した。この電子メールの書類により、労働党党首のJeremy Corbyn(ジェレミー・コービン)氏は英米貿易交渉の詳細を政争の具にした。

2017年に保守党の首相Theresa May(テリーザ・メイ)氏もまたロシアが西洋諸国の選挙に介入しようとしていると公に警告した。しかしメイ氏はオンライン上の誤情報による民主主義への脅威を調査した議会委員会からの一連の勧告に対し行動を起こさなかった(未訳記事)。

最新のロシアによるサイバー攻撃についての英情報機関からの警告のタイミングは、ロシアの選挙介入についての英議会のインテリジェンス・安全保障委員会(ISC)の報告書がかなり遅くなったという点で殊更興味深い。

報告書の開示は2020年、Boris Johnson(ボリス・ジョンソン)首相の命により阻まれた。しかし今週、首相官邸が前運輸大臣のChris Grayling(クリス・グレイリング)氏をISCの委員長に任命しようという試みは、保守党議員のJulian Lewis(ジュリアン・ルイス)氏が、官邸提案に反対の議員の側についたことで妨害された。

かなりずれ込んでいたロシアレポートの公開は間もなくだ。議会が夏休みで休会になる前の来週に公開することを委員会が無記名投票で決めた。

2019年11月にガーディアン紙はロシアマネーが英国の政治、特に保守党に流れ込んでいたという主張、そしてロシアが2016年にブレグジット支持で大きな工作を行ったという主張を調べる書類を報道した(The Guardian記事)。

2017年にDCMS委員会からの圧力で、 Facebook(フェイスブック)はロシアのエージェントがEUに留まるかどうかについての英国の国民投票に介入しようと自社のプラットフォームを使用したことを認めた(未訳記事)。ただし同社は広告購入者、あるいはブレグジット投票をターゲットにした政治的誤情報の「明らかな関連」は見つからなかった、と主張した。

2019年に前ISC委員長のDominic Grieve(ドミニク・グリーブ)氏は、ロシアレポートには投票者に「密接な関連がある」情報が含まれている、として投票日前のレポート公開を要求した(The Guardian記事)。

その代わりにジョンソン首相は公開を阻止し、総選挙において保守党圧勝で選出されることを選んだ。

画像クレジット:THIBAULT SAVARY / Getty Images

原文へ
(翻訳:Mizoguchi

Elektra Labsがバイオセンサー評価ツールを無料提供、新型コロナによる医療崩壊防止を目指す

 

米国の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックが拡大を続ける中、医療関係者、研究者はあらゆるリソースとテクノロジーを使って患者をケアし、疾病の本質を解明して対抗しようと全力を挙げている。医療機器のテクノロジーをモニターし評価するスタートアップが、同社のサービスを医師に無料で提供することにした(Elektra Labsリリース)のもそうした努力の1つだ。

サンフランシスコを本拠とすメディカルテクノロジーのスタートアップであるElektra LabsについてはTechCrunchも何度か報じてきた。ファウンダーは米国食品医薬品安全庁(FDA)の元幹部でハーバードで学びマサチューセッツ総合病院に勤務した経験のある医師だ。Electraの目的は市場に次々に登場している医療用センサーのセキュリティ、正確性、実用性などの評価を提供することにある。

Electraは、新型コロナウイルスの症状をモニターできるとしている医療用デバイスについての同社の評価を臨床医や研究者に対して無料で提供すると発表した。

米国における感染者数は250万人に達し、医療専門家が以前から警告してきた患者数の急増によって医療が崩壊するという最悪のシナリオが現実になりつつある。医療はデジタルテクノロジーを利用した遠隔医療に大きくシフトしているが、これは医療関係者がそれを望んでいるというより、他に方法がないからだ。

マサチューセッツ総合病院の最前線で新型コロナウイルス患者を治療してきたElektra Labsの共同ファウンダーであるSofia Warner(ソフィア・ワーナー)医師は、声明で「遠隔医療が有用なものであるためにはを患者のバイタルサインを確実に把握できるなければならない。患者を測定しているセンサーの信頼性を把握することは医療プロバイダーにとって非常に重要だ」と述べている。

デジタルモニターをはじめとすると各種のリモート医療テクノロジーが重要なのは臨床分野だけではない。新型コロナウイルスの流行が始まり、ボランティアと直接対面して治験をすることが不可能になってから新薬の研究、開発でも極めて重要な役割を担うようになっている。

ハーバードとMIT共同の設置によるレギュラトリーサイエンスセンター(Center for Regulatory Sciences)のAriel Stern(アリエル・スターン)博士は声明で「パンデミック下で大規模かつ多額の費用を要する臨床試験を実施している製薬会社は患者、被験者の安全を確保しながら研究を進めるために急速にリモート医療テクノロジーを採用しつつある。多くの製薬会社が安全で効果的であると同時に治験参加者が自宅で簡単に利用できるデバイスを発見することを急いでいる」と述べた。レギュラトリーサイエンスは日常接する物質や現象についてその効果や安全性を評価し、行政的規制を通じて公衆の健康維持を図る科学だ。

2019年秋にElektra Labsはウェラブル端末を利用したデジタル医療ツールを発表し、インターネットに接続されたセンサーによるバイオメトリクスの正確性、有効性、実用性、プライバシー保護能力などを検証した。また2020年に入ってこうした研究を支えるノウハウや手法をフレームワーク化し、Nature Digital Medicineの論文として公開している。

Electraは Founder Collective Boost VC、Maverick Ventures、Village Global、Arkitekt Venturesなど初期段階のスタートアップへの投資を専門とするベンチャーキャピタルの支援を受けている。またすでに製薬会社や研究機関での採用も相次いでいる。

Elektra LabsのCEOであるAndy Coravos(アンディー・コラヴォス)氏は「テクノロジーの進歩は人々が身をを守る能力よりずっと速く進歩してきた。Elektraの共同ファウンダーとなったのは在宅で人々のケアを簡単かつ安全に行えるようにしたいからだった。新型コロナウイルス危機に際してこれがかつてないほど重要な課題になっている。パンデミック下で患者の治療とヘルスケア全般のイノベーションのために努力している人々に我々のAtlasプラットフォームを無料で提供できることを嬉しく思っている」と述べた。

App Storeにおける利用データを使ってアプリをランクづけするApple(アップル)の手法とは異なり、Elektra Labsによる医療用センサーの評価スコアやランキングは一般公開はされない。

評価を利用できるのはリモートケアを実施する臨床医、リモートで臨床試験を行う研究者、健康モニタリングツールを比較検討している公衆衛生当局者などの専門家のみだという。

医師や研究者が、ビデオによるリモートケアの補完に利用するバイオメトリックセンサーとして患者が自宅で使用するのに安全であり効果的なデバイスであるかどうかを判断できるようにしようというのがElectra Labsの目標だ。

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

Colorの新型コロナ検査データも陽性者の大半は症状軽微か無症状であることを裏付ける

サンフランシスコ拠点のColor(カラー)は米国6月15日、自社の検査プログラムに関するデータを公表した。それによると新型コロナウイルス(COVID-19)で陽性となった人のほとんどは発熱なども含め症状が軽微か、無症状だった。既存のデータや研究と同じ分析結果だ。カリフォルニア州の検査ステーションで同社はこれまでに3万人超の検査を行った。その結果は全米で地域や州の経済を再開させる動きが続いているにも関わらず、広範な検査がいまだに経済再生プログラムの鍵を握っていることを示している。

Colorによると、検査を受けた人の1.3%が新型コロナ陽性で、そのうち78%が症状が軽微か、あるいはまったく症状がなかった。つまり特に目立つ症状が皆無だった。加えて37.7度以上の熱があったのは12%のみだった。職場や共有施設での体温チェックのような方策で感染拡大を抑制しようという取り組みにとっては悪い知らせだ。

Colorのデータは、WHO(世界保険機関)が最近発表した情報と一致する。WHOは新型コロナ検査の結果が陽性となった人の最大80%が症状が軽微か、まったく症状がないと指摘した。またColorは症状があったと答えた人がどんな症状を経験したのかについての具体的な情報も明らかにし、大半の人が咳が出たと答えた。ただし実際に陽性となった人が報告した症状で最も多かったものは嗅覚の喪失だった。これは、熱などよりもましな症状だ。

Colorはサンフランシスコ市との提携のもとに同市の最前線で働いているエッセンシャルワーカーにも検査を行った。そうした人の検査結果も含めたColorのデータで他に興味深いのは、陽性となった人の大半は若く(68%が18〜40才)、白人やアジア人よりもラテン系と黒人系のコミュニティで陽性率が高かった、という点だ。この2点に関するColorのデータは、他の機関や研究者が発表した結果を裏付けるものであり、性急で不用意な経済再開で誰が最も影響を受けるかという懸念をサポートするものだ。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

ARでソーシャルディスタンスを確保するグーグルの実験

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的パンデミックから数カ月が経ち、多くの人はすでに2メートル(6フィート)の距離を目視できるようになっていることだろう。しかしまだそのような能力を身につけておらず、またAndroidデバイスを持っているのなら、Google(グーグル)が手助けをしてくれるかもしれない。

グーグルのExperiments with Googleコレクションの最新プロジェクトであるSodarは、WebXRを使ったシンプルなブラウザベースのアプリで、モバイルデバイスでのAR(拡張現実)によるソーシャルディスタンスを提供する。Android端末のChromeブラウザでサイトにアクセスするとアプリが起動し、カメラを地面に向けて移動させると、ドット状のマトリックスで平面を認識する。

画面を移動させると、周囲2メートル(6.6フィート)が確認できる。これは新型コロナウイルスの拡大を抑制するためにCDC(米国疾病予防管理センター)が推奨している距離だ。同センターは、これを「約2本の腕の長さ」だと説明している。このアプリは技術的なデモという意味合いが強く、また将来的にはスマートグラスがその役目を置き換えることになるかもしれない。

一方で、他人や病気の媒介物から適切な距離を保つためにスマートフォンをかざすことは、昔ながらの常識に比べると少々現実的ではない。

原文へ

(翻訳:塚本直樹 Twitter

欧州とアフリカでオンデマンド交通を提供するBoltが約120億円を調達

Bolt(ボルト)は、Uber(ウーバー)などのライバルで、オンデマンドのライドシェアリングやスクーターといった交通サービスを欧州とアフリカの150都市で提供している。同社は5月26日、困難な市場環境に直面する中、新たな資金調達について発表した。新型コロナウイルス(COVID-19)により、人々はその場にとどまり、他人と接触するような交通手段を避けている。

エストニアを本拠とする同社は、コンバーチブルノート(先に資金を受け取り、後ほど算出した時価総額に見合った株を投資元に渡す資金調達方法 、会計上では借金・負債となる)で1億ユーロ(約120億円)を調達したことを発表した。現在17億ユーロ(約2000億円)のバリュエーションで評価されたことも認めた。

投資家はNaya Capital Management(ナヤキャピタルマネジメント)の1社だ。同社は、Boltが2019年7月に6700万ドル(約72億円)を調達したシリーズCでも主要な出資者だった。

新型コロナウイルスのパンデミックの中で投資会社のポートフォリオ企業は事業上の大損害に直面している。その中でも、将来が約束されていたり、すでに多額の資金を投入していたりする会社を支援する1つの方法が資金注入だ。特に、非常に資本集約的なビジネスモデルのスタートアップはかなり難しい状況に追い込まれている。

この調達の前の4月にBoltのランウェイ(継続可能が業務遂行期間)は尽きた。同社の債務引き受け先として、テック産業を強く支援しているエストニア政府とも協議中であるとの声も聞こえてくる。

Boltは今回の資金調達がすべてコンバーチブルノート、つまり負債のかたちで進められ、現時点で追加のエクイティ(株式)の発行はないと認めた。「現時点で語るべきプランはない」と広報担当は説明した。クロージングまでに時間がかかることを考えると、さらなるエクイティラウンドについては今回の調達に関係なく取り組んでいるようだ。

Boltによると、世界35カ国以上で3000万人のユーザーを抱えているという。事業の最悪期は2カ月前であり、その後徐々に回復している。広報担当によると、同社は昨年末に損益分岐点に近づき、「主にフードデリバリーとマイクロモビリティ」のためのエクイティラウンドを準備しているとのことだ。

現在は状況が多少異なり、ライドシェアと業績回復の施策により、財務的ニーズが増えている

ただ全体として、同社のオンデマンド交通サービスモデルの資金調達はまだ比較的小規模だ。Boltはこれまで負債と株式の両方で3億ユーロ(約350億円)以上を調達している。投資家には、多くの日本のリミテッドパートナーが拠出するヘルシンキの新しいファンドで、Boltの本拠地であるエストニア・タリンなど、北欧のスタートアップに投資するNordic Ninjaや、CreandumG SquaredInvenfin(投資持株会社Remgroが支援する南アフリカのファンド)、Superangel(創設当初からBoltに投資してきたエストニアのファンド)、滴滴(および関連がある先としてソフトバンクとUber)、Daimler、Korelya Capital、Spring Capitalが名を連ねる。

以前はTaxify(タクシファイ)として知られていたBoltは、個人の乗り物を超えて電動スクーターやフードデリバリーなどの他の分野にも拡大したため、昨年ブランドを変更した。今後数カ月以内に、今回の資金を使用して3つの事業分野すべてを新しい製品とともに拡大する予定だ。その中には、ビジネス向け市内同日配送サービス「Business Delivery」や、運転席と乗客席の間にプラスチックシートを設けた車によるライドシェア「Bolt Protect」が含まれる。

Boltの上場企業ライバルのUber(ウーバー)は、パンデミックがビジネスにとってどれほど痛みを伴うか明らかにした。かつて未公開のスタートアップとして数十億ドル(数千億円)を調達した同社は、ここ数週間で約7000人の従業員を解雇した。Uberのために人や食品などの輸送を請け負っている人々への影響については現状ほとんどわからないが、次の四半期決算(期間中パンデミックの影響を全て受けている)には、ビジネス全体の低調がはっきりと表れるはずだ。

Boltによると、これまでUberや他社のように人員を削減する必要はなかったという。従業員1500人を全く解雇していない。ただ、役員会メンバーの給料を20〜30%カットした。広報担当は、いま徐々に給料を新型コロナ前の水準に戻しつつある、と話した。財務の詳細には触れなかったが、ビジネスは普通とは言えないと認めた。

「新型コロナ危機が一時的に我々の移動の仕方を変えたが、車の所有が減少したりより環境に優しい交通手段シフトしたりといった長期的な傾向は今後も続く」とCEOで共同創業者のMarkus Villig(マークス・ビリグ)氏は声明で述べた。

「典型的なシリコンバレー崇拝を過去のものとし、我々の長期的視点を支持する投資家に支えらることをありがたく感じている。当社の効率性や局在化がオンデマンド業界において根本的なアドバンテージであることをこれまで以上に確信している。こうしたアドバンテージにより、新型コロナ後も引き続き安価な移動手段を多くの顧客に提供し、パートナーに良い内容の決算を示すことができる」。

現在のような状況では資金調達がはるかに複雑になった、と多くの人が口にする。創業者や投資家が直接顔を合わせたり、投資・調達機会を評価したりすることができなくなっただけでなく、マーケット需要や経済全体が今後どうなるか見通せなくなり、これまでになく投資がリスクを伴うものになっている。

目下、スタートアップはそれぞれだ。新型コロナの影響で事業を棚上げしているスタートアップもあれば、新型コロナにもかかわらずこれまで通り活発に事業を展開しているスタートアップもある。また、不調に陥らないよう投資家がさらに資金を注ぎたいと思うような、十分な体力を持つ(あるいはすでにかなりの資金を調達している)スタートアップもある。この3つのカテゴリーに収まらない、より一般的なのがBoltのように資金を確保するスタートアップだ。

「成長中のBoltにこのステージで投資できる機会を持つことができるのは喜ばしい」とNaya Capital ManagementのマネジングパートナーでCIO、創業者であるMasroor Siddiqui(マスルール・シッディーキー)氏は声明で述べた。「マークスのリーダーシップのもと、Boltは世界のモビリティ分野で最も競争力があり、かつイノベーティブなプレイヤーの1つとしての地位を確立した。消費者の地元交通インフラの活用方法の変化にBoltが貢献していると確信している。そして、同社が引き続き戦略的ビジョンを実行することを期待している」

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

新型コロナで8月に延期されていたニューヨーク国際オートショーが中止

ニューヨーク国際オートショーの主催団体は、8月に延期していたイベントの開催を2020年は見送ることを決めた。新型コロナウイルス(COVID-19)のために正式に中止する、と米国時間5月22日に発表した。

次回の開催は2021年4月2〜11日で、報道機関向け発表日は3月31日〜4月1日だ。

広域ニューヨーク自動車ディーラー連盟が主催するニューヨーク国際オートショーは、ニューヨーク市のJacob K. Javits Convention Center(ジェイコブ・ジャビッツ・コンベンションセンター)で4月10日に始まる予定だったが、新型コロナが欧州と北米に広がったことを受け、8月下旬に延期された。

ショーが例年開催されてきたJacob K. Javits Convention Centerは新型コロナ用野戦病院となった。患者は受けれ入れていない。しかし主催者によると、まだ病院として機能しており、先が見通せないために待機状態となっている。

同連盟の会長、Mark Schienberg(マーク・シェンベルク)氏は、ショーの構成を準備するには自動車メーカーや展示会のパートナーには「かなりの計画」が必要とされる、と記した。

「新型コロナで見通しが立たないため、2020年のショー開催の模索を続けるのは賢明ではないと判断し、その代わりさらにすばらしい2021年のショーに向けて準備する」と述べた。

「自動車販売業者の代表として、このコロナ危機が過ぎ去るときにニューヨーク地域、そして米国全体でかなりの新車需要が遅れて出てくると確信している」とシェンベルク氏は付け加えた。「このショーが消費者を誘導するプロセスでいかに重要かも理解している」。

関連記事:ニューヨークオートショーが新型コロナ懸念で8月に開催延期

画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

パンデミック後に求められるオフィスの密度センサーのVergeSenseが9.7億円調達

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックで施設の管理が注目を集めつつあるようだ。

米国のスタートアップVergeSense(バージセンス)はオフィス向けの「システムとしてのセンサー」プラットフォームを販売する。部屋にいる人の数をリアルタイムに把握したり、人の動きに基づく清掃のノーティフィケーションを送ったりする機能を備えている。同社は、セキュリティ大手Allegion(アレジオン)のコーポレートVCファンド、Allegion Venturesがリードする900万ドル(約9億7000万円)の戦略的投資をクローズした。

本ラウンドにはJLL Spark、Metaprop、Y Combinator、Pathbreaker Ventures、West Venturesも参加した。シードラウンドを含め、2017年創業のVergeSenseがこれまでに調達した額は1060万ドル(約11億円)になった。

ここ数週間、需要の増加が見られるとVergeSenseはTechCrunchに語った。オフィスのオーナーや管理者が新型コロナ時代に職場を安全なものにしようと取り組もうとしているからだ。同社によると、予約は順調に伸びていて前年同期比で500%増となる勢いだ(ただし同社は、新型コロナの感染拡大が始まった後に「アフターショック」があったとし、2020年初めに打撃を受けたことを認めている)。

パンデミックの前は、VergeSenseの顧客はいわゆる「職場での接触」を推進したがっていた。アイデアの共有やコラボを促進しようと、スタッフ同士の物理的な距離を縮めるというものだ。しかし今は反対のことが起こっている。ソーシャルディスンタンスの維持や部屋を使用する人数の制限は、オフィスを再開するにあたっては必須のものとなっているようだ。

VergeSenseにとって幸運なことに、同社の機械学習プラットフォームとセンサーがパックになったハードウェアはこれまでと同じように有用な数値を引き出すことができる。

同社はソーシャルディスンタンスのスコアや毎日の密度などのレポートといった新型コロナに関連する機能を提案するために顧客と協業してきた。今後大きな需要が出てくると思われるSmart Cleaning Planner機能もすでに開発した。VergeSenseはまた、同社のオープンAPIをオフィスのアプリを機能強化できることも想定している。これは、オフィスを利用する人の数が少ないクワイエットゾーンや時間帯を表示したりし、職場に戻っても大丈夫と従業員を安心させるのに役立つかもしれない。

もちろん多くのオフィスが当面、あるいは永久にクローズするかもしれない。たとえば、Twitter(ツイッター)は従業員に今後ずっと在宅勤務ができるとしている。在宅勤務はオフィスワーク職には可能だ。しかしVergeSenseと同社の投資家らは、オフィスは何らかの形で存続するが、例えば人と人の間の距離を検知できるスマートセンサーが必須となってくると確信している。

新型コロナでオフィスがどのように変わるかについて、VergeSenseの共同創業者Dan Ryan(ダン・ライアン)氏は「オフィスの数は全体的に少なくなると考えている」と話す。「多くの顧客が、小規模の地方オフィスを抱える必要性を再考している。それでも大規模のハブは維持しようと彼らは考えているが、そうしたハブは実際にはかなり異なったものとなる」。

「毎日の業務を行うのに必ずしもオフィスにいる必要がない人は、おそらく新型コロナ後は週に5日ではなく3日か2日オフィスに行くようになる。それは異なるタイプのオフィスを意味する。異なるレイアウト、異なる種の机などだ」。

「そうした傾向はすでに見られる。しかし多くの企業がリモートワークを含めた実験に消極的だ。生産性などへの影響が計り知れず、リモートワークに伴う多くの文化摩擦があるからだ。しかし我々は現在、あらゆる物事が同時に起こっている状況を進んでいる。そして今後もそうだろうと考えている。当社は、基本的にすべての顧客からのフィードバックに絶えず耳を傾けてきた」とも話す。

「既存顧客の多くがプロダクトの受け入れに前向きだ。通常我々が展開する手法は、顧客が手始めにまずいくつかのビルで導入し、その後段階的に広げていくというものだ。だが今、このデータのユースケースは密度管理であり、新型コロナのために安全性とコンプライアンスにつながっている。密度に関してはCDC(米国疾病予防管理センター)のガイドラインがあるが、密度を測定して報告できるツールを持つことは必要不可欠とされている」。

VergeSenseは現時点で70の顧客のために、1日あたり600万のセンサーレポートを処理している。顧客にはFORTUNE 1000の40社が含まれる。全部で15カ国にまたがる250のオフィスビルの2000万スクエアフィート(約185万平方メートル)にセンサーとSaasを提供している。

「かなり弱気な見方もある。オフィスがなくなってしまうというものだ」とライアン氏は付け加えた。「我々はそれはないと考えている。なぜならオフィスには目的があり、主には社会的な交流やフィジカルなコラボに根ざしているからだ」。

「我々はZoomとその効率性を愛しているが、フィジカルなコラボやコネクション、仕事を支えるすべての社会的な要素がなければ失われるものも多い」。

VergeSenseの新たな資金は新型コロナで増大している需要への対応と、ソフトウェア分析プラットフォームの拡張に使われる。

ライアン氏によると製品開発にも使われる。「より小型で、バージョンアップしていて、速く作動する」センサーと「追加のデータフィード」を含む、これまでのものとは別のセンサーハードウェアだ。

「現状では、主に人数を数えるだけだが、仕事環境の構築ではそれ以上のものについてのデータにかなり関心がある。環境に関するものだ」と述べ、追加のデータフィードを実装するつもりだと語る。「環境に関する他の周辺データに関心を持っている。空気の質や温度、湿度などだ。顧客は現在、一般的な環境データにこれまで以上に関心を向けている」。

「建物の健全性にかなりの関心が寄せられているが、これまでは、あればいいというものだった。しかしいま、空間の空気の質はどうなのか、コンディションは適切かといったところに関心が集まっている。そして従業員の期待はもっと高くなるだろうと考えている。オフィスビルに入る時、ビルの中の空気が質のいいものであって欲しいし、さらにもっといい質になって欲しいと思う。だからこそ(スマートスペースの)加速を考えている。すでに見られる動きではあるが、人々はもっと加速させたいと考えている」。

資金調達についての声明文で、Allegion Venturesの会長Rob Martens(ロブ・マーチンズ)氏は次のように述べた。「世界的な危機の真っ只中に、(VergeSenseのチームは)シニアのビジネスリーダーたちがソーシャルディスタンスを通じて職場を安全なものにすると同時に、生産性や雇用、費用対効果を維持できるようサポートしてきた。世界中の事業者や雇用主にとって職場の管理が現在、最も大きな課題になっているが、VergeSenseはデータ主導の職場をつくるという動きの最先端にいる」。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

巨額損失のソフトバンク・ビジョン・ファンドは毎日100億円超を投資していた

ソフトバンクグループの2019会計年度(2020年3月31日終了)の財務状況の発表で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドについていくつか興味深い情報が判明している。衛星通信会社のOneWebが倒産し、コワーキングスペース運営のWeWorkと配車・デリバリーサービス運営のUberが苦境に追い込まれ、大株主であるソフトバンク本体とビジョン・ファンドの損失が巨額となる見通しはTechCrunchでもすでに触れた。新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックが将来の見通しにも逆風となっている。

ビジョンファンドの財務諸表(PDF)に埋め込まれていた注によれば、ビジョン・ファンド1号が新規投資を終了したのは2019年9月だった。この時点で投資可能なキャッシュをすべて投資し終わったためだ。

注によれば最初のビジョン・ファンドの管理者は、2019年9月12日にファンドがその資本の85%を使用したと判断した。残る15%の資金は 追加投資、義務的支出、ファンド管理手数料をカバーするために残された。ファンドの約款によれば新規投資は2022年11月20日まで投資を続けることが可能だったが、それを待たずこの時点で新規投資は打ち切られた。

ソフトバンクグループの文書で簡単に振り返ると、ビジョン・ファンドは2017年5月20日に初回の出資クローズを発表し、総額968億ドル(10兆円)を調達した。つまりビジョンファンドは845日間で投資と手数料合計で838億ドル(9兆円)を費やしたことになる。簡単な計算で1日あたり1億ドル弱(106億円)を投じていたとわかる。

週末も含めて毎日1億ドル(約100億円)だ!

昨年、ソフトバンクグループは合計で1080億ドル(11.6兆円)とさらにさらに規模の大きいビジョン・ファンド2号を立ち上げる計画を発表した。しかしその資金集めが難航していると報じられており、これは今後も変わりそうにない。

ソフトバンクグループは今年3月31日を終期とする会計年度でビジョン・ファンドが174億ドル(1.87兆円)の価値の減少となったことを決算発表で正式に認めた。その前年度にソフトバンクグループは128億ドル(1.37兆円)の価値増加を発表していた。つまり2019会計年度の運用はこの利益を完全に帳消しにしたわけだ。

しかし重大な問題点はファンドのポートフォリオ企業のパフォーマンスそのものだろう。現在、ビジョン・ファンドには上場や売却などによるイグジットが行われていないポートフォリオ企業が88社ある。うち19件については価値が合計約34億ドル(0.36兆円)増加している。しかし50社は合計207億ドル(2.2兆円)の損失だ。19社については価値の変動はなかった。

初期段階(シード、アーリー)の投資に特化したファンドが赤字になることはよくある。しかし後期段階(レイター)向けファンドがこの種の巨額の損失を被るというのは非常にまれだ。企業価値の評価新型コロナウイルスが世界経済に大打撃を与える前に行われたことはほぼ確実だろう。そう考えるとポートフォリオ企業の57%が1年間でこれほど価値を減少させたというのは驚くべきことだ。しかもこうした企業の大部分は、それぞれの成長段階に応じて短期的、中期的に何らかのかたでイグジットを目指していたのだから驚きはなおさらだ。

もちろんポートフォリオ内にはいくつかの勝利もあるし、明るい面もある。しかし、結局のところ、ポートフォリオの価値を決めるのは各部分の総和だ。残念ながら現在その総和は上に見たような状況となっている。

画像:Getty Images

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

Build 2020の基調講演に感じたオンライン開催の変なところと良いところ

「私たちは異常な時代を生きています」とMicrosoft(マイクロソフト)のCEOであるSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、Build 2020の基調講演を暗いムードで切り出した。そこには、司会を務めるSeth Juarez(セス・フアレス)氏とDona Sarkar(ドナ・サーカー)氏の開幕の挨拶からの、なんとも奇妙な落差が感じられた。

2人の司会者は、大きなデスクに米国疾病管理予防センターが認可した社会的距離を保って座り、ぎこちない冷やかしや親父ギャグを交えながら、この48時間のライブストリーミングイベントの開幕を宣言した。少なくとも最後の部分では、現在の異常事態の中でもなんとか正常が保たれていた。

気まずいツッコミやつまらない冗談は、良くも悪しくもハイテク業界のプレゼンには付きものだが、無観客の会場では別次元のものに聞こえてくる(特に観客の間に潜り込ませた大げさに騒ぐサクラがいない)。良い方に考えれば、YouTubeの司会者の意気込みが感じられるが、悪くいえば、笑い声の効果音を削除したコメディドラマのようでもある。

避けて通れない初めての試みとして、Microsoft Build 2020の基調講演は、恐らくマシな方だったのだろう。これは間違いなく、パンデミックが世の中を本格的にロックダウンし始めて以来の、巨大ハイテク企業による本格的な大規模イベントだ。結局のところ、Apple(アップル)のWWDCは来月まで開催されず、Google(グーグル)もI/Oを実質的に諦め、オンライン開催も取りやめてしまった。

「今、私たちがみんなでできるいちばん大切なことは、私たちが直面している新たな困難に立ち向かっている人々の支援に注力することです」と、グーグルは中止を決定した際に述べていた。「私たちはプラットフォームのアップデートを、開発者ブログやコミュニティーフォーラムなどを通じて、今後もみなさまと共有する方法を探っていく所存です」。

確かにどちらにせよ難しい決断だ。パンデミックの重大さに比べたら、これらのイベントなどは取るに足らないものかも知れないが、たとえ不自然な方法であったとしても、企業が正常な感覚を取り戻そうとして何かを主張することには意味がある。

フアレス氏とサーカー氏の掛け合いは、2日間のプログラムを1本につなぐ役目を担っていた。多少のアドリブも当然、必要になる。オープニングで2人は、5分間ほどSurface StudioでTwitterのハッシュタグ付きコメントをスクロールさせていた。この開発者カンファレンスに実際に生身で参加した気分になれるよう、コミュニティの感覚に近づけようという試みだ。

ナデラ氏の講演は、それとちょうどいいバランスを保っていた。シンプルでおそらく録画の、家族の小物や写真で飾られた棚の前に立っての出演だった。彼がカメラに向かって話す間に、画像や動画が挟み込まれる。寂しく感じられるとしたらそれは、どうしても2019年の盛大なイベントと比較しながら見てしまうせいだろう。

マイクロソフトは任天堂からヒントを得たのかも知れない。任天堂は基調講演をライブでは行わず、数年前のE3で行われたNintendo Treehouseのプレゼンテーションから録画に切り替えている。普段の形式での興奮は失われてしまうが、その代わりにいくつもの映像を組み合わせてプレゼンテーションを完璧に仕上げることができる。大切なのはそのバランスだ。任天堂の場合は、無数のゲームの予告編を使ったことが功を奏した。このパズルでは、映像資料が大きくものを言う。

残念ながら、ライブのデモで悪態をつく光景は見られなくなった。だが、マイクロソフトのプレゼンテーションを補足しようと大々的にSkypeに依存した会話では、人はホームスタジオに住んでるわけではない事実を嫌というほど突きつけられる。飛行機やら芝刈り機の騒音が聞こえると、当面は物事が正常ではなくなるということを思い出さざるを得なくなる。一概に悪いとはいえないが、なんか変な感じだ。

このような形式の変更が強要される中からも、良いものが生まれている。ひとつはBuildが無料登録で見られるようになったことだ。オフィシャルなチャット(詳しく突っ込むことはしないが、訳あって悲惨な結果になった)では、大勢の開発者や参加者が、これは歴史上初めてのBuildだと興奮気味に伝えていた。参加費、旅費、人で混み合うイベントの不自由さなどが、多くの人たちにとって高いハードルになっていた。

これから数カ月のうちに、これがこの手のイベントの新常態になるのか否かが決まるだろう。2021年への十分な注意を払わないままの主催者を責めるのは難しい。多くは、いつもの人が集まるイベントに戻ると思うが、バーチャルで参加しやすい今の形が新型コロナウイルス(COVID-19)以降も存続されることを私は望む。

“新型コロナウイルス

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

新型コロナ禍でインドのスタートアップ70%が3カ月以内に資金枯渇か

業界レポートによると、インドのスタートアップの3分の2以上が新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックを乗り越えるために、数週間以内に新たな資金を確保する必要があるという。

インドは世界最大のスタートアップエコシステムを有している国の1つだが、スタートアップの70%は資金がなくなるまでに残された期間、いわゆるキャッシュランウェイは3カ月未満で、年内なんとかもつのは22%だ。業界団体Nasscom(ナスコム)が実施した調査で明らかになった。

調査に参加したスタートアップの中で、今後9カ月以上操業を続けるだけの十分な資金があると答えたのはわずか8%だった。スタートアップの90%が売上高の減少に直面していて、30~40%がオペレーションを一時中止または廃止の過程にあると答えている。

前代未聞の状況に直面し、スタートアップの多くがなんとか生き延びようと大胆な策を取ることを検討している。回答したスタートアップ250社の54%が新規事業に目を向けており、40%がヘルスケアといった成長分野へ参入したいと答えた。

世界第2位のインターネットマーケットプレイスとなっているインドの投資家は、若い企業に新たな小切手を切るのに慎重になっていて、これが資金不足を起こしている。2020年4月の公開レターの中で、いくつかの主要VCファンドが「スタートアップに今後数カ月は新たな資金調達がかなり難しくなるかもしれない」と警告した。

一部のスタートアップにとっては他にも苦戦要因がある。B2Bスタートアップの69%超、中でも小売とフィンテック部門のスタートアップが、クライアントの支払い遅れに直面していると答えた。そうしたスタートアップの半分以上が支払い遅れにより給与削減を余儀なくされ、4分の1が経費削減のためにコストの安いベンダーに切り替えた。

交通・旅行部門のスタートアップも甚大な影響を被っている。調査に参加したスタートアップの78%がビジネスモデルを再考中で現状に合うようプロダクトに変更を加えている。

5月19日に開かれた記者会見で、OYOの幹部は格安ホテルチェーンの同社が事業者と顧客の安全を確保するために取る新たな策を明らかにしている。同社はまた、国や州政府が人々の移動とホテル宿泊を再び許可することを望んでいると述べた。

スタートアップの3分の2以上が規制を緩和し、政府購入を推進する政策を期待していると答えた。また大多数が今後数年間の税の減免を要望した。

インドのスタートアップの3分の2以上が、新型コロナウイルスの影響は最大12カ月続くと考えている(提供:Nasscom)

2020年5月初め、インド政府は失速した経済を復活させようと2660億ドル(約28兆6600億円)の対策を発表した。5月15日に財務大臣のNirmala Sitharaman(ナーマラ・シサラマン)氏はスタートアップもこの救済策の一部を利用できる、と述べている。しかしどのように利用できるようになるのか、詳細は不明だ。

2017年以来、インドのスタートアップエコシステムは順調に成長してきた。2019年にインドのスタートアップは過去最多となる145億ドル(約1兆5600億円)を調達(未訳)した。

「新型コロナウイルスという青天の霹靂の要因で、成長は打撃を受けることになった。新型コロナパンデミックの影響を受けていない国や事業者、暮らしはない。各国の政府が人命を守り、助けるのに懸命になっている一方で、事業者は苦しんでいる。零細事業者やスタートアップが最も深刻な影響を受けている」とNasscomの会長であるDebjani Ghosh(デブジャニ・ゴーシュ)氏はレポートで述べた。

画像クレジット:MONEY SHARMA / AFP / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

米国の失業者数が3600万人を突破する中、テック企業では雇用増加も

先週米国では、過去2週間の失業申請が3600万件を超えた。パンデミックによる事業閉鎖は無数の業界に打撃を与え、多くの分野で再開の時期は定まっていない。求人大手のIndeed(インディード)は、2019年の同時期と比べて雇用は著しく低調であると最新の報告で伝えている。報道に注目している人にとってはなんら驚きではない。

大規模なレイオフが日常的に起きているように感じる。この数週間だけでもUber(ウーバー)、Lyft(リフト)、TripAdvisor(トリップアドバイザー)、Casper(キャスパー)、Juul(ジュール)の会社が大がかりの解雇を行っており、多くの人はこれを氷山の一角だと思っている。

しかし国が大恐慌以来最悪の失業率を経験している一方で、テック業界は前進を続けている。つまるところこの数カ月間、リモート会議や遠隔医療、フードデリバリーから個人保護具(PPE)製造まで、テクノロジーは一種のライフラインとして機能している。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響(都市封鎖など)に対応するために生まれた新たな職の多くが一時的なものであるのは間違いないが、パンデミックが多くの分野で重要なパラダイムシフトを起こしていると見るのも理にかなった考えだ。社会が新しい日常に適応するにつれ、テクノロジーがその変化を育む力になることは間違いない。

多くの場面で役割を担うのはギグエコノミーだ。DoorDash(ドアダッシュ)のようなフードデリバリーなら配達要員が必要になり、Amazon(アマゾン)なら配送センターの雇用が増大する。しかしこうした職は万人向けとはいえない。仕事によっては労働者の新型コロナウイルス感染リスクを高くする可能性があり、それは企業がウイルス蔓延を阻止するための努力をしていても完全には防ぎきれない。

Zoom(ズーム)のように増加する需要に答え、サービスの人気の高まりとともに露見した古い問題を修正するために、雇用を急増している会社もある。最近同社は、ソフトウェアエンジニア500人を採用する計画を発表した。Cloudflare(クラウドフレア)もテキサス州オースチンに雇用枠がある。一方Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Goolge(グーグル)といったテック巨人も揃って、ロックダウンにも関わらずエンジニアリング職の採用を順調に続けている。

スタートアップに入社することは、現時点では難しい選択だ。小さな会社は著しく不安定な未来に立ち向かっているからだ。新型コロナウイルスが、既に足元の揺らいでいるスタートアップの終結を早める可能性は非常に高い。一方で最近調達ラウンドを完了した企業は有望であり、嵐を乗り切るのに十分な資金を持っている。例えば資金豊富なBerkshire Grey(バークシャー・グレイ)も、ソーシャルディスタンス時代にロボティクスがますます魅力的なソリューションになっている今、拡大を計画している。

テック求人情報を検索可能な単独データベースにまとめているサイトやアプリが新旧取り混ぜたくさんある。新型コロナの流行によって職を失った人を支援するために作られているサイトを以下のリストに載せた。完全に網羅したリストではないが、良い出発点になるはずだ。

画像クレジット:Manuel Breva Colmeiro / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナ後、スタートアップはどうやって職場復帰するかを米国で調査開始

世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの中で、スタートアップの働き方が将来どうなっていくかに関する総合的な調査を、英国の非営利団体であるFounders Forum(ファウンダーズ・フォーラム)が実施する。この研究は、多くの企業が長期にわたるオフィス閉鎖や「Work From Home(WFH、在宅勤務)」の方針を打ち出していることを受けて行われる。

同グループは、COVID-19 Workplace Survey(COVID-19職場調査)がスタートアップコミュニティーの今後の行動に役立つデータを提供することで、経営者は職場復帰戦略の重要な決定を下し、サービス提供者(アクセラレーター、コワーキングスペース、投資家など)は、「ポスト新型コロナ」世界のスタートアップを最大限支援できるために役立てることを期待している。

このプロジェクトはFounders Forum(ファウンダーズ・フォーラム)、Founders Factory(ファウンダーズ・ファクトリー)、およびfirstminute capital(ファーストミニット・キャピタル)の共同ファウンダー・エグゼクティブ・チェアマンであるBrent Hoberman(ブレント・ホバーマン)氏が設立した。

ホバーマン氏はTechCrunchのインタビューに対して「ファウンダーは職場復帰に関わる重要な決定を孤独に下さなくてはならない」と語っている。研究の目的は「早期ステージのスタートアップが、オフィススペースやリモートワークに関する戦略について現在実施している方策」を調査することだとホバーマン氏はいう。そしてこの調査結果は「ファウンダーと支援サービスを提供する人たちの両方に関して、スタートアップやその社員たちの置かれた状況を改善するために何ができるかを導いていく」と述べている。

COVID-19 Workplace Surveyでは、回答者が以下のような基本的質問に匿名で回答する。

  • スタートアップはオフィスを再開するのか?
  • しない場合は、いつ再開する予定か?
  • 英国政府が安全であることを通知したらすぐに?
  • 今年? 来年?
  • そのために講じる安全施策は?
  • それ以外に、COVID-19によってリモートワークポリシーに対する考え方がどう変わったか?

「ファウンダーには『他のファウンダーは職場戦略をどう変えているのか』の回答を知って欲しいと思っている」とホバーマン氏は説明した。

さらに同氏は、社員各個人のリモートワーク環境が今後のリモートワークポリシーに対する意見に影響を与えることをファウンダーは理解する必要がある、なぜなら万人向けのソリューションはないからだ、と付け加えた。「さまざまな層がどんなリモートワーク環境を望んでいるかを考えるべきだ」。

コワーキングスペースなどのサービス提供者も、ポストロックダウン環境でスタートアップがどんな作業場所を求めているか(フレキシブルなデスクスペース、共用ミーティングルームなど)を、研究結果から知ることができる

調査は10日間実施され、結果はTechCrunchで公表される。

画像クレジット:Amy Galbraith

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルが老人ホームで簡易UI版Nest Hub Maxをテスト中

先週、ニューヨーク市のマウントサイナイ病院は、患者の遠隔監視にNestデバイスを利用し始めたことを発表した。そして米国時間5月18日、Google(グーグル)は新型コロナウイルス(COVID-19)ロックダウンの中で老人ホームの人たちの孤独感を少しでも減らすために、Nest Hub Maxがに役立っている様子を紹介した

同社はこれにともない、スマートスクリーンを機械の苦手な人たちにも使いやすくするために、簡易化したインターフェースをテストしている。グーグルは現在、ワシントン州の高齢者施設であるMerrill Gardens(メリル・ガーデンズ)の居住者にデバイスを渡して使用状況のパイロットテストを行っている。その新しいUIを最初に使うのが施設の人たちということになる。

新UIにはアラーム、天気、音楽などのよく使われる機能のショートカットとして「What can you do」カードが加わる。配布されるデバイスにはビデオ通話の連絡先があらかじめ登録してある。国全体でソーシャルディスタンスが実践されている今、ビデオ通話は最もよく使われる機能に違いない。

関連記事:Mount Sinai deploys Google Nest cameras for COVID-19 patient monitoring and communication

「つながりを保つことは高齢者の精神的、感情的健康のために重要であり、現在の隔離状態の中でそれを行うことは特に困難だ」とグーグルのMolly McHugh-Jonhson(モリー・マキュー・ジョンソン)氏はいう。「Nest Hub MaxとDuoのビデオ通話なら、離れていても『一緒』にいられることが、祖母と使ってみてわかった」。

老人ホームや介護施設は、新型コロナパンデミックの影響が特に大きい。高齢者全般がウイルスの打撃を大きく受けており、65~84歳の致死率は3~11%、85歳以上では10~27%にも上る。このため高齢者の集団では、強力なソーシャルディスタンス対策を講じることが特に重要になっている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

紫外線でフィルターを自己消毒する透明マスクをHuamiが開発中

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックでは、中国の製造業企業が次々に新型コロナ対策備品の製造に乗り出すことになった。深圳拠点の電気自動車大手BYDはいち早く世界最大とうたうマスク製造プラントを立ち上げた。杭州市拠点の音声知能スタートアップRokid(ロキッド)は米国マーケット向けにサーマルイメージングメガネを製造している。他にも多くの企業が似たような取り組みを展開中だ。

最新例となるのがHuami(ファーミ)によるものだ。NASDAQに上場しているウェアラブルスタートアップの同社は、Xiaomi(シャオミ)のMiブランドを製造し、また自社のAmazfitブランドのフィットネストラッキングウォッチを世界70カ国超で販売している。TechCrunchによる電話インタビューで、同社は紫外線をビルトインしたシースルーのプラスチックマスクを開発中だと述べた。USBポートを通じて電源につなぐと10分でフィルターを消毒できるというものだ。ただし、紫外線が消毒できるのはマスクの内側だけで、外側はユーザーがきれいにしなければならない。

Aeriのコンセプト。紫外線ライトをビルトインし、USBポート経由で電源につなげると10分でフィルターを消毒できる。

Aeriと呼ばれるマスクは取り外し可能なフィルターを採用していて、このフィルターはN95マスクと同等の濾過能力を持つ。コンセプトが実現すればフィルターは1カ月半使用可能と、サージカルマスクやN95レスピレータよりもずいぶん長く持つ。モジュラーのデザインは呼吸しやすいようファンのようなカスタマイズされたアクセサリーを取り付けることができ、「airy(風通しの良い)」と同音のマスクの名称Aeriはそこからきている。

Aeriの開発は、マスクの装着が顔認証の急速な浸透を妨害するかもしれないという想定で始まった。画像認識を手がける企業は虹彩や鼻尖といった他の顔の特徴を分析できるようアップグレードに取り組んでいる。

Huamiの工業デザイン担当副社長Pengtao Yu(ペンタオ・ユー)氏は、Aeriがマーケットにアピールするものになるかもしれない、という。「人々がスマホを顔認証でアンロックする必要があるかどうかはともかく、他人と交流するときは互いの顔を見たいものだ」とユー氏は話す。同氏はカリフォルニアを拠点とする中国人デザイナーで、Huamiに加わる前はNest Labs(ネスト・ラボ)、Roku(ロク)、GoPro(ゴープロ)、Huawei(ファーウェイ)といったクライアントと仕事をしていた。

研究・開発にフォーカスしているHuamiの米国オペレーションは2014年にスタートし、従業員は現在12人ほどだ。

パンデミック対応の製造に取り組んでいる多くの企業は主要事業で打撃を受けているが、Huamiはなんとか影響を免れている。同社の2020年第1四半期の決算では、純利益は前年の1060万ドル(約11億4000万円)から270万ドル(約2億9000万円)に減ったが、売上高は1億5400万ドル(約165億3000万円)で、前年同期比36%増となった。だが、同社の株価は1月に記録した最高値16ドル(約1720円)から5月中旬には10ドル(約1070円)に下がっている。

HuamiはAeriマスクのプロトタイプに取り組んでいる最中だ。深セン市に置く同社本部にはウェアラブル部門がある。同市はサプライチェーンリソースが豊富なため、アイデアから実際のマーケット投入までハードウェアプロダクトの開発期間は6〜12カ月だ、とユー氏は述べた。

Aeriはまだ初期段階にあり価格は決まっていない。しかし、同氏は医療関係者にアピールするというより、ウイルスに加えて日々の大気汚染から身を守るという世界中の「大衆消費者マーケット」をターゲットとしていることを認めた。Huamiがこれまで、儲けの少ないウェアラブルを製造してきたことを考えると、Aeriがかなり競争力のある価格になるのは何ら不思議ではない。

Aeriプロジェクトは、フィットネスモニターという域を超えてHuamiが総合ヘルス部門に参入するための足掛かりのひとつだ。同社は、ウェアラブルを使った呼吸系疾患追跡でZhong Nanshan(ゾン・ナンシャン)博士のラボとこのところ協業してきた。同氏は新型コロナ対策において中国を代表する人物だ。Huamiはまた、スマートウォッチで作動するウイルスモニタリングのアプリでドイツの公衆衛生当局と協議していることもTechCrunchに明らかにした。

画像クレジット:Huami’s concept of the self-disinfecting mask, Aeri

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi