3回の倒産危機を救った自作の在庫削減ツールを世の中へ、ハモンズが1.2億円を調達

ECやリアル店舗向けの在庫削減クラウドサービス「FULL KAITEN」を開発するハモンズ。同社は6月12日、大和企業投資、ユナイテッド、ベンチャーユナイテッド、みずほキャピタル、京銀リース・キャピタルを引受先とする第三者割当増資により、約1.2億円を調達したことを明らかにした。

本ラウンドはハモンズにとってシリーズAにあたるもので、2017年5月に大和企業投資から資金調達をして以来2度目となる。同社では今回調達した資金をもとに人材採用を進め組織体制を強化する計画。合わせてFULL KAITENの新バージョンや新機能の開発を進めるという。

小売業者にとって切実な在庫の問題を解決

FULL KAITENは小売事業者が抱える在庫の問題を解決するクラウドサービスだ。小売企業の在庫データをもとに取り扱うひとつひとつの商品に対して、これからどれくらい売れるのかを独自のアルゴリズムで予測。現在保有する在庫と照らし合わせ、適正な量なのかどうかを自動で導き出す。

ハモンズ代表取締役の瀬川直寛氏の話では、FULL KAITENの大きな特徴は3点だ。

1つ目は数万〜数十万の取扱商品を適正在庫、過剰在庫、不良在庫に自動で分類した上で、削減リストを数クリックで自動生成できること。資金繰り悪化の原因となる在庫の増加を検知し、削減すべき在庫の推奨セール価格まで提示する。

「重要なのは、いかに不良在庫になる前に在庫を動かしていくか。在庫が過剰になっている時にいち早く抽出して、セールなどで上手に販売していくことが必要。『気づいたら売上は増えているものの、売れない在庫も増えている』というありがちな問題をなくしたい」(瀬川氏)

2つ目は最適な仕入れ量を自動で算出できること。これには大きく2つの側面がある。要は「そもそも売れない商品は仕入れない、もしくはポテンシャル以上の量を仕入れない」ようにする一方で、「売れる商品についてはしっかりと仕入れる(機会損失を減らす)」ということだ。

瀬川氏によると、仕入れについては担当者が勘と経験に基づいて「どの商品を、どれくらい仕入れるか」を決めていることも多いそう。前回すごく売れたからという理由で安易にたくさんの在庫を抱えてしまうことが、経営を圧迫する原因にもなりうる。

FULL KAITENの場合は商品ごとの販売データを使って、各商品がピーク状態にあるのか、下降トレンドにあるかといった状況を分析し、適切な仕入れ量を計算するという。

そして3つ目が在庫の収益性を分析し、粗利が上がるような売り方を見える化できること。粗利を軸に考えた際に、自社にとって重点商品といえるものは何か。そしてそれをどのように売るのがいいのか。たとえば「他のどの商品と一緒に購入された時に粗利が増加したか」を始め、自社の粗利を伸ばすための方法を自動で分析するという。

「小売事業で売上を増やそうと思った時、絶対にやるのが在庫を増やすこと。ただやみくもに在庫を増やせば、売上が上がっても売れない商品も溜まるばかり。これまでも小売企業は担当者をつけて在庫のコントロールをしようと努力してきたが、商品点数が多いところほど人力でやるのには限界があった。FULL KAITENはシステムでその限界を解決する」(瀬川氏)

もともとは自社ECの課題解決のために生まれたツール

FULL KAITENのストーリーで興味深いのが、もともとは自社の課題を解決するために作られた社内ツールであったということだ。

ハモンズは2012年5月の創業以来、自社でECサイトを運営してきた。2014年2月から続けているベビー服EC「べびちゅ」では3回ほど倒産しかけたそうだが、そんな時に危機を救ったのが自作の在庫削減ツールだったという。

「今でもよく覚えているが、最初は2015年の12月。このままでは翌年2月の給料が払えないからと、『不良在庫を徹底的に削減しよう』と動き出した。ただ考えてみるとそもそも不良在庫とは何を意味するのかも曖昧。そこから在庫に関する議論が始まって、最終的に不良在庫かどうかは在庫の数だけでは判断できず、これからどんな売れ方をするのか予測する必要があるという結論に至った」(瀬川氏)

ハモンズには統計学や機械学習、コンピュータシミュレーションといったバックグラウンドを持つ理系出身のメンバーがいたこともあり、まずは移動平均のロジックを使って不良在庫を洗い出す仕組みを開発。該当するものはセールで販売し、危機を乗り切ったという。

ハモンズのメンバー。写真右から2番目が代表取締役の瀬川直寛氏

ところがその半年後には在庫がたまり、またピンチが訪れる。

「不良在庫を算出する仕組みはできても、そもそも不良在庫を生まない(仕入れない)仕組みはできていなかった。そこで予測結果を活用して、不良在庫になる商品を仕入れないで済むシステムを作ろうと。合わせて過剰在庫のコントロールをできるような機能もとりいれた」(瀬川氏)

このようなプロセスを繰り返した結果、不良在庫リスクを極小化する独自アルゴリズムの開発に成功。今では年間で在庫が17回転するような体制を構築できている(中小のアパレルECではだいたい5~6回転が多いそう)。

この自社ツールのアルゴリズムや汎用性をアップデートしたものこそが、2017年11月にリリースしたFULL KAITENだ。現在はアパレル企業を中心に、家具やスポーツ用品を扱う小売事業者などがすでに導入済み。導入企業数は非公開だが、規模でいくと月商1億円以上の企業がほとんどとのこと。現状は7割がECで、残りの3割がリアルな店舗だという。

同社では今回調達した資金をもとに組織体制を強化し、マーケティングやセールスを本格化していくほか、長い期間の需要予測ができる機能を備えた新バージョンの開発にも取り組む。

「近年ECであればCVRやCPAなどを最適化するためのツールが増えている。もちろんこれらのツールは価値があるが、『○○率』の改善は分母が大きいからこそインパクトがある。小売の場合は商品こそがカギで、売上を増やすには商品を増やすのが王道。だからこそFULL KAITENはどの商品をどのくらい保有しておくべきなのか、何を売れば効果的に売上が上がるのかを把握し、実行に移せるようなサービスにしていきたい」(瀬川氏)

継続的インテグレーション(CI)による開発自動化プラットホームCircleCIが初の海外オフィスを日本に

CircleCIの、継続的インテグレーションとデプロイメントをベースとするビルドプラットホームは、今や世界中の数十万のデベロッパーが利用している。同社はこれまで5900万ドルのVC資金を調達しているが、うち3100万ドルは、今年初めのシリーズCのラウンドだ。

グローバル化によって成長を維持したい同社はこのほど初めて、サンフランシスコの本社の外、日本の東京にオフィスを開いた。最初はそのオフィスの社員を4〜5名とし、地元企業とのパートナーシップで事業を展開するつもりだ。

同社にとって日本は初体験ではない。すでに数名のリモートワーカーがいるし、またCyberAgentやDeNAとの仕事を通じて、日本はアメリカとイギリスに次ぐ同社の世界第三位の市場だ。

CEOのJim Roseはこう説明する: “日本やグローバル市場で活躍できることは、本当にすばらしい。日本はこれまでも、うちにとって成長市場だったし、最近では成長のスピードが上がっている”。Roseは2014年にCircleCIがDistillerを買収したとき同社のCOOになり、2015年にCEOになった。

CircleCIは世界のどこにいて、どんなインフラを使っているデベロッパーでも簡単にインストールして使えるため、同社の売上はボトムアップ的(口コミ的)に伸びている。今や同社の知名度は高く、売上の35〜40%はすでにグローバル市場からだ。

しかしCircleCIのプロダクトは、ワンクリックでインストールできる簡便さが売りではない。むしろCircleCIは、クラウドネイティブな環境でソフトウェアを管理するためのまったく新しい方法であり、デベロッパーと管理職との密接な協働を支えることにより、レガシーのコードベースをクラウドとGitから成る環境へ移行させる過程を助ける。Roseは曰く、“最近の6四半期ぐらいの傾向としては、大企業でもそんなやり方が根付きつつある”。

でも。そのための教育訓練や企業文化の変化は、日本のような非英語圏では容易でないだろう。Roseによると、企業がCircleCIのシステムをインストールするという導入の第一歩をクリアしたら、“今度はそれを社内に周知する仕事があり、それにはローカルな知識が必要だ”。そこで地元雇用の社員たちや地元企業とのパートナーシップが、CircleCIを顧客企業のワークフローに接着していくことを、同社は期待している。

イギリスは同社の二番目に大きな市場だが、新たにオフィスを置くという形での国際展開の端緒として日本を選んだのは、同社の英語のリソースが日本では十分に通用することが実証されたからであり、そしてイギリスはBrexitによってヨーロッパにおける戦略立案が難しくなっているためだ。

“BrexitとGDPRをめぐっては、大量の可動部品があり、単一市場としてアプローチできるのかも、はっきりしない。とりあえずイギリスは、EUとは別の単独市場としてアプローチすべきだろう”、とRoseは説明する。ドイツ、フランス、北欧など、ヨーロッパのそのほかの部分に対する国際展開は、その正しいやり方を目下思案中だ。

Roseの構想では、アメリカ以外の売上を売上全体の50%にもっていきたい。日本は今後国際展開に力を入れていくための、いわばスタート地点だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

英語教師からリフォームまで、プロと依頼主をつなげる集客プラットフォームのZehitomoが4億円調達

写真右がZehitomo代表取締役のジョーダン・フィッシャー氏

個人事業主やスモールビジネス向け集客プラットフォーム「Zehitomo」を提供するZehitomoは6月12日、500 Startups Japan、KLab Venture Partners、Draper Nexus Ventures、ベクトル、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、Social Starts、および複数の個人投資家から約4億円を調達したと発表した。

Zehitomoは、カメラマンや英語教師などの個人事業主を含むSMBと、仕事を依頼したいユーザーをつなげる集客プラットフォームだ。結婚式の写真を撮ってもらいたい、英語を教えてもらいたい、家を改装したい時など、ユーザーはそれぞれの仕事を直接依頼できる“プロ”を検索することができる。

依頼を受けたプロはユーザーに対して見積書を送り、その依頼に「応募」することが可能。ユーザーは送られた見積書を比較して、最終的にどのプロに仕事を依頼するのかを決めるという流れだ。

報酬の〇%が手数料という決済手数料型のクラウドソーシングとは違い、Zehitomoでは依頼への応募ごとに課金するというビジネスモデルで、プロ側は1回の応募につき平均500円の費用がかかる。逆に依頼主であるユーザーはZehitomoを無料で利用できる。ちなみに、Zehitomoが扱う仕事の単価は平均5万円程度だという。

TechCrunch Japanが最後にZehitomoを取材したのは、同社が1.5億円を調達した2017年7月。当時の登録プロ数は約6800人ということだったが、それから約1年で登録者数は5万人(法人含む)にまで拡大している。ユーザーからの依頼は1週間に1000件以上が寄せられるようにもなった。順調に成長を続ける同社だが、ここまでの道のりは決して平坦ではなかったとZehitomo代表取締役のジョーダン・フィッシャー氏は話す。

「前回の資金調達のあと、自分が思っていたスピードでグロースすることができなかった。初めての資金調達でお金を手にすると、やりたいことが沢山浮かんでくる。結果、Must Have(必須事項)ではなく、より着手もしやすいNice to Haveばかりに手を出してしまっていた。昨年のQ4にそれを見直し、選択と集中を進めた結果、ユーザー数も上手く伸びるようになった」(フィッシャー氏)

前回の資金調達から多くを学んだというフィッシャー氏。新たに4億円を調達し、これからの注力ポイントとして彼が選んだのは、組織の強化とZehitomoへの理解度の向上だ。同社はまず、2018年4月に就任したロバート・シューマン新CTOのもと新しいエンジニアチームの構築を目指す。

また、Zehitomoはセールスチームの人員も増やし、プロとのコミュニケーションも強化していくという。「このビジネスモデルへの理解度はまだまだ足りない。(約1年前と比べて)数字の面ではあらゆる指標が10倍になったけれど、理解度は10倍にはなっていない。今年は、プロがどのようにみずからをPRするかを一緒に考えるコンサル的なことも含め、彼らとのコミュニケーション強化をテーマにしたい」(フィッシャー氏)

レシートが1枚10円にかわるアプリ「ONE」公開、17歳起業家が新たに目指すのは“次世代の金券ショップ”

突然だがTechCrunch読者のみなさんは買い物をした際に渡されるレシートをどうしているだろうか?

面倒くさがりな僕はたいてい「レシートはけっこうです」と言ってもらうことすらしないのだけど、家計簿に記録するために丁寧に保管している人もいれば、なんとなく財布の中に溜め込んでしまう人、すぐに捨ててしまう人などそれぞれだろう。

そんなレシートは多くの人にとって日々の買い物(支出)の記録以上の価値はないかもしれないけれど、もしかしたら他の誰かからすればお金を払ってでも買う価値のあるものなのかもしれない。

前置きが長くなってしまったけど、ワンファイナンシャルが6月12日に公開した「ONE」はまさにそのような世界観のサービス。どんなレシートでも1枚10円に変わってしまうというものだ。

レシートが1枚10円になるカラクリ

「きっかけはスイスの友人から現地の小銭をもらったこと」——ワンファイナンシャルCEOの山内奏人氏によると、この出来事がONEのひとつのテーマでもある“価値の非対称性”に着目する契機になったという。

「日本にいる自分にとってはスイスの小銭もただの金属の塊と変わらない。その時に自分にとっては価値がないけれど、他の誰かには価値があるものが面白いなと思った。普段多くの人が日常的に使っているもので同じような例はないか考えた時に浮かんだのが、レシートだった」(山内氏)

先にいってしまうと、ONEはユーザーから「レシートという形をした決済データ」を買い取り、そのデータを手に入れたい企業に販売していく構造になっている。

近年パーソナライズという言葉が頻繁に使われるようになったように、大まかな統計データではなく個人個人の消費傾向を把握し、個々に最適な提案をすることが求められる時代だ。だからこそ「どんな人がどのタイミングで、どのような商品を買っているのか。その商品と一緒に買っているものは何か。といった購買データに価値がある」と山内氏は話す。

ONEの機能はシンプルで、ユーザーはアプリからレシートの写真を撮影するだけ。買い物の金額や購入した商品数などの違いはなく、どんなレシートも1枚10円に変わる(アプリ内のウォレットに10円が振り込まれる)。

ユーザー1人あたりが1日に撮影できるレシートは10枚まで。アプリ内に貯まったお金は300円から出金でき、メガバンクを始め国内ほぼ全ての民間金融機関に対応しているという。利用料等はかからないが、出金時の手数料200円についてはユーザーの負担となる。

出金時には本人確認が必要になるため、ONEの運営側から見ればこのタイミングで大まかな属性データが取得できる。これを送られてきたレシートのデータと合わせて、決済データが欲しい企業へ提供していく仕組みだ。

レシートからは金銭感覚や消費傾向がわかるため、マネタイズの方法としては取得したデータを純粋に企業へ売っていくというのがひとつ。そしてもうひとつ、特定のユーザーにクーポンを配信することで送客をするモデルも考えているという。

目指すのは次世代の金券ショップ

ワンファイナンシャルについては、同社が1億円の資金調達を発表した2017年10月に一度紹介している。当時16歳ながらすでに複数のサービス立ち上げを経験していた山内氏は、スマホ1台あれば数分でカード決済を導入できるアプリONE PAYを手がけていた。

その後ONEPAYMENTへと名前を変えサービスを伸ばしていたが、それに伴い不正利用も増加。2018年4月には不正利用リスクが原因でStripe社から出金APIの利用を止められ、サービスを停止せざるをえない状況に陥った。

一時は再開したものの不正利用のリスクは消えない。山内氏が「多くのユーザーに使ってもらっていたので申し訳ない気持ちはあったが、そのままの形で続けるのは難しかった」と話すように、最終的にはサービスの継続を断念。ユーザーへサービスの終了を通知していた(6月29日に決済機能を停止し、7月31日に出金を含むすべてのサービスを停止)。

ONEPAYMENTはクローズすることになったが、決済データを活用したビジネスへの関心や、新しい金融の仕組みを作りたいという気持ちは変わらなかったという山内氏。上述の通りスイスの小銭がひとつのけっかけとなって、新しいサービスを立ち上げるに至った。

ONEについてはどのような使われ方をされるのか予想できない部分もあるというが、将来的には「次世代の金券ショップのようなものを作っていきたい」という構想を持っているようだ。

「多くの人にとってレシートはものすごく身近なものでもあるので、まずは第一弾としてレシートから。いずれはたとえばギフト券など、もっと多くのものを扱えるようにしたい。データがたまっていけば、与信スコアのような形でレシートの買い取り価格を変えたり、レンディングなど別の展開も考えられる。ここを中心に新しい金融の仕組みを作れるように、サービスを作りこんでいきたい」(山内氏)

LINEが新サービスーー1分100円で恋愛やダイエットをチャットで相談できる「トークCARE」

先日、TechCrunch Japanではチャットで旅行先を相談できるというサービスを紹介したばかりだけれど、恋愛やダイエットに関する相談も気軽にチャットできるようになったみたいだ。LINEは6月11日、女性が抱える悩みを専門家にチャットで相談できるサービス「トークCARE」をローンチした。

トークCAREにはファッション専門家や栄養士など、各ジャンルの専門家が約200名在籍。専門家の検索から相談までLINE上で完結できるため、時間や場所を問わず気軽に相談できることが特徴だ。

LINEはもともと、トークCAREに先駆けてチャットで占い師に相談できるサービスをリリースしていた。占い未経験でも気軽に相談できることや、鑑定を見返すことができるなど、チャットならではの特徴から人気を集めていた同サービスだが、その相談内容のじつに約8割は恋愛や結婚に関する相談だったのだとか。

LINEをすでにインストールしていればトークCAREの利用はとても簡単だ。LINEの中にある「LINEアプリ内ウォレット」タブ(クレカのマーク)を選択し、下にスクロールしていくと関連サービスのセクションにトークCAREのボタンがある。チャットの場合1分100円から、電話の場合は1分130円から利用できる。

恋する相手から“未読スルー”されたりなど、LINEで傷ついた心はLINEで癒してもらおう。

外国人が自国語で医師に相談できる「UrDoc」、7月公開を前に医師向けアプリのベータ版を公開

TechCrunch読者の中には、海外で体調が悪くなったり、けがをしたりして不安になった経験をお持ちの方も多いのではないだろうか。症状や自分の状態を外国語で伝えるのはなかなか難しいことだ。それは海外から日本に来た、日本語に通じていない人も同じこと。「UrDoc(ユアドク)」は日本に滞在する外国人が急な体調不良やけがに見舞われたとき、アプリを通じて自分が慣れ親しんだ言語で医師に相談できるサービスだ。

UrDocを開発するサーティーフォーは6月11日、7月のサービス正式公開に先駆け、相談を担う医師のための専用アプリ「UrDoc for Dr.」ベータ版を公開した。

UrDocでは、ユーザーのリクエストに応じて、登録した医師がそれぞれの空いている時間にオンラインで相談を担い、収入を得ることができる。ユーザーは相談に使った時間あたりの従量課金で費用を支払う。サーティーフォーはそのうちの一定の割合を手数料として得る形だ。

登録医師は、UrDocの審査にパスした現役の医師。2018年2月からクローズドで実施されてきたUrDocのアルファ版では、10名前後の医師と、協力するホテルの宿泊客などを対象に実証実験が行われてきた。

サーティーフォーのヘルステック事業担当者によれば、アルファ版の評判は上々で、外国人ユーザーから「助かった」との感謝の声や、以前滞在していた時に子どもが具合が悪くなった経験を持つ人から「こういうサービスを待っていた」との感想も届いているそうだ。また意外にも、日本人で本当に具合の悪い人が利用したケースで「医者がなかなか見つからなかったので役に立った」との声もあったという。

医療相談アプリでは、TechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した「小児科オンライン」や、1月に1.5億円を調達したiCAREの「Carely」など、いくつかのサービスが既にある。UrDocは多言語対応している点と、事前予約や月額での利用登録不要で、必要なときに必要なだけ、リアルタイムに利用することができる点が特徴となっている。

サーティーフォーでは今後、当面は多言語対応を基本としてサービスの整備を進める予定だ。そして次のフェイズでは日本語での相談や、日本から海外へ出かける日本人への医療相談などにもサービスを展開していきたい、としている。

サーティーフォーは神奈川県相模原市に本社を置く、総合不動産業を営む企業。2017年4月より業務多角化の一環としてヘルステック事業部を新設し、UrDocの開発に当たってきた。2017年10月には経済産業省のベンチャープログラム「飛躍 Next Enterprise」でシリコンバレーコースに採択されている。

古い家電もスマート化するIoTリモコン「Nature Remo」に低価格モデルが登場

家電をインターネットに接続してスマホアプリ経由で操作できる、Natureのスマートリモコン「Nature Remo(ネイチャー リモ)」。その機能を絞って価格を抑えた「Nature Remo mini(ネイチャー リモ ミニ)」が発表された。6月11日より予約受付を開始、正式発売は6月下旬〜7月上旬を予定している。

以前もTechCrunchで紹介した発売中の上位機種Nature Remoは、温度・湿度・照度・人感センサーを備えた家庭用のIoTプロダクトで、専用のスマホアプリを使って、エアコンをはじめとした家電のリモコン操作を戸外からも行える。また、Google HomeやAmazon Echoと連携して声で家電を操作することも可能だ(以前の記事ではIFTTTを利用する方法を紹介していたが、現在は直接設定ができるようになっている)。

新製品のNature Remo miniは、温度センサーのみを搭載することでコンパクトなサイズとなった。価格もNature Remoが1万3000円のところ、Nature Remo miniは8980円となっている。また現在は数量限定の特別価格、6980円で予約を受け付けている(価格はいずれも税抜)。

Nature Remo、Nature Remo miniでは、スマホアプリとのペアリング、Wi-Fi設定、リモコンの学習(製品に向けて家電の赤外線リモコンを発信し、信号を認識させる)といった設定をすれば、アプリ経由でリモコンの操作が可能になる。旧式のエアコンやテレビであっても、リモコンで動くものであれば「スマート家電」化することができる点がミソだ。

Natureではさらに、iOS版アプリのリニューアルを6月下旬に、Android版を7月中旬に予定している。リニューアル後は、Nature RemoやNature Remo miniのセンサーを使ったルールの設定が可能になるという。これにより例えば「温度が25度を超えたらエアコンをつける」といった自動制御もできるようになる。また複数家電を一括で操作する「シーン機能」も追加される予定だ。

介護施設探しを時短&最適化、介護・福祉の専門家が作った「KURASERU」運営が5000万円を資金調達

写真左端:500 Startups Japan代表 James Riney氏、左から3人目:KURASERU代表取締役CEO 川原大樹氏、4人目:取締役COO 平山流石氏

医療ソーシャルワーカーという職業をご存じだろうか。病院や診療所などの医療機関で、患者や家族の抱える経済的・身体的・社会的な問題に対し、社会福祉の立場から解決や調整をサポートする専門職だ。

医療ソーシャルワーカーの仕事は、療養中の心理的・社会的問題の解決、調整援助や患者の社会復帰の援助など、厚生労働省により6つの業務範囲が指針として示されている。そのうちの1つが「退院援助」である。

退院できることになっても「体が不自由になってすぐに元の生活に戻れない」、「自宅に帰っても自力で生活することができない」。そうした在宅療養が困難な患者や家族の相談に応じて、症状や状況に合った適切なリハビリ専門病院や介護施設、在宅療養支援事業所などを紹介するのも、医療ソーシャルワーカーの大切な業務となっている。

だが、医療・介護業界のコミュニケーションツールの主流は今でも電話やFAXがほとんど。高齢化が進み、介護施設の空床確保はますます厳しくなっているなかで、医療ソーシャルワーカーが患者に最適な施設を探すには、大変な労力がかかっていた。

KURASERU(クラセル)」は、そんな医療ソーシャルワーカーの介護施設探しを支援するマッチングサービスだ。サービスを運営するKURASERUは6月11日、500 Startups Japanを引受先とする第三者割当増資により、5000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

神戸市を拠点とするKURASERUの創業は2017年10月。代表取締役CEOの川原大樹氏は介護施設で介護職に従事した後、病院で医療ソーシャルワーカーに従事した介護・福祉のスペシャリストだ。IT業界数社で取締役・執行役員を歴任してきた取締役COOの平山流石氏とは大学時代の同級生。ITで医療介護の課題を解決したいとの思いから、ともに同社を立ち上げた。

在宅復帰が難しい患者に医療ソーシャルワーカーが介護施設を紹介するには、患者に合わせた看護・医療体制が整っているか、利用料金が患者や家族にとって経済面で適切か、といった多くの条件に沿った最適な施設を、少ない空床の中から選ぶ必要がある。

川原氏は、これまでの介護施設探しの状況を「どの施設が空いているかわからない状況で、空いている施設を探すために、60件電話をかけ続けるというようなことをやっていた」と話す。「医療ソーシャルワーカー、もしくは家族や患者の知識の中でしか介護施設を選べず、選択が属人的だった。本当にこれで良かったのか、悩んでいる姿も現場で数多く見ている」(川原氏)

一方、介護施設側も空床があれば早く患者を受け入れたいところだが、医療ソーシャルワーカーや家族からの連絡を待つしかなく、受け身の体勢しか取ることができなかった。営業するといっても病院へパンフレットを置くとか、空床状況をFAXで流すといった、レガシーな手法が大勢を占めている。

KURASERUでは、医療ソーシャルワーカーがエリア、月額利用金額、医療処置の範囲など、在宅復帰が難しい患者のニーズをヒアリングして情報を打ち込むと、空いている最適な介護施設情報をリアルタイムで検索することができる。このためスムーズな退院調整が可能となる。

また、医療ソーシャルワーカーが患者の医療情報なども入力して利用するので、退院期限管理や退院患者のデータ管理もKURASERU内で行うことができ、病院からのニーズが高まっているという。

介護施設のほうは、施設情報や空床状況をKURASERUに登録。病院の退院予定者リストを個人情報が判定できないレベルで閲覧できるため、施設から病院へ入所のオファーを出すことも可能となっている。

KURASERUは神戸市が主催するスタートアップコンテスト「KOBE Global Startup Gateway」の第5期に採択され、神戸市アクセラレーションプログラムにも参加。2018年1月のローンチ以降、神戸市内の46の病院と128の介護施設が利用しており、KURASERUを通して介護施設の入所を検討した患者は50名を超えたそうだ。

ローンチ後しばらくは、介護施設から紹介費用を受け取る課金モデルを採っていたKURASERUは、5月から病院にも施設側にもすべて無料でサービスを提供するようになった。

川原氏は「いまKURASERUの中で、病院と介護施設との間にコミュニケーションが生まれ、医療情報が集まっている。ここにコアな医療情報が集まり、共有できれば、より多くの病院や施設が参加して、さらに医療情報やコミュニケーションを生んでいくだろう」として「課金モデルから要介護に関する情報のプラットフォーム化へ方向転換した」と説明する。

「チャレンジングだが、高齢化社会が大きな問題となっている中で、医療、介護の状況を大きく変えるには、これぐらいの思い切りが必要だと考えた」(川原氏)

現在は神戸の介護施設を対象にサービスを提供するが、ゆくゆくは「病院・介護施設・在宅療養支援事業所をつなぐ医療情報のプラットフォーム」として世界を目指すというKURASERU。「まずは神戸でモデルケースを作る」と川原氏は述べている。エリア限定でサービスを磨いた後、1年以内に神戸で培ったモデルを6都市へ拡大、2年以内に全国への展開を目指す。

「介護施設の空床率は7%と言われていて、都市部では特に空いていないところが多い。しかし、このサービスでそれを埋めることができると考えている」(川原氏)

今回の調達資金は開発の強化、人材確保に充てる。「課金モデルからプラットフォームモデルに転換したことで、登録のスピードは上がるだろう。これからはアクティブユーザーを増やすために、時間とコストをかけてシステムづくりを進めていきたい」と川原氏は言う。

「ITにもいろいろな分野があるが、社会問題としての高齢化や社会保障を扱うKURASERUは、ソーシャルインパクトがある事業としては、やりがいがある、壮大な分野。そういうところに興味がある人に来てほしいし、我々と組んでほしい」(川原氏)

義足テック、法律×IT、ランチの事前予約・決済——東大IPC起業支援プログラムの新たな支援先が決定

東京大学の投資事業会社としての活動を通じて、大学周辺でスタートアップ・エコシステムの構築を目指している東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)。同社は6月11日、現役の東大生や卒業生などの大学関係者や、東大関連ベンチャーを支援する「東大IPC起業支援プログラム」の新たな支援先を決定したことを明らかにした。

2回目となる今回のプログラムで新たに支援先として選ばれたのは、3Dプリンティングと機械学習技術を活用した義足を手がけるインスタリム、自然言語処理技術に基づく法律業務の支援サービスを開発するLegalscape、ランチの事前予約・決済サービスを提供するダイニーの3社だ。

インスタリム : テクノロジーの活用で低価格・高品質な義足を開発

インスタリムは3Dプリンティングと機械学習テクノロジーを組み合わせることで、価格と納期を従来の約10分の1に抑えた新しい義足を開発するハードスタートアップだ。

代表取締役CEOの徳島泰氏は大手医療機器メーカーでAEDや医療系ソフトウェアの開発に従事した後、青年海外協力隊としてフィリピンに2年半滞在。そこで糖尿病が原因で足を切断し、義足を必要とする人が多いことを知ったという。

一般的な義足は職人が自身のノウハウを活用しながらアナログな手法で製作するため、1本あたり2〜3週間の時間がかかる上に費用も30万以上。お金に余裕がない家庭でないととても手に入らないものだった。

インスタリムの開発する仕組みでは3Dプリンタを活用することで材料費や設備費、制作納期を大幅に抑え、1本あたり3〜5万円で提供することが可能だという。また患部データの状態と、フィッティング後のデータを機械学習にかけることで、作れば作るほど高精度の義足を製作できる仕組みを構築している。

現在はフィリピンで実証実験を進めている段階。まずは発展途上国を中心に事業を展開する方針だ。

Legalscape : 自然言語処理技術を用いたリーガルテックサービスの開発

Legalscapeが取り組むのは、法律の専門家でなくても法的な問題に直面した際に解決の糸口を見つけられるようなサービスの開発だ。

代表取締役の八木田樹氏は東京大学でコンピュータサイエンスを先攻。そこで培った経験をビジネスに活用できないかと模索した結果、親族に法曹関係者がいて身近であり、IT化も進んでいなかった法律領域に的を絞ったのだという。

在学中の研究を生かした判例検索サービスが、2017年度の経済産業省IPAの未踏アドバンスト事業に採択。現在は実現可能性を調査しながら新たなプロダクトの開発も進めているそうだ。チームは八木田氏とマイクロソフト出身の2名によるエンジニア3人体制。自然言語処理技術を含めコンピュータサイエンスの技術を生かしたリーガルテックサービスを目指す。

ダイニー : ランチの事前予約・事前決済サービス

現役東大生4人が開発する「ダイニー」はランチを事前に予約、決済することで、列に並ぶ手間やレジで会計をする手間をなくすサービス。

ここ最近TechCrunchでも「PICKS」や「POTLUCK」といったテイクアウトの事前予約・決済サービスを紹介したけれど、ダイニーの場合は実際に店舗でランチを食べる際のストレスを減らしてくれるものだ。

2018年2月に本郷エリアでテスト版をリリース。現在はβ版という形で六本木エリアで9店舗、本郷エリアで13店舗の飲食店で利用できる。代表取締役の山田真央氏によると、まだ店舗が少ないため利用者の数は限られているが、一度使ったユーザーの継続率は高いという。今後は人気店を含めた飲食店の開拓が、事業を拡大していく上での鍵となりそうだ。

山田氏はメルカリやDeNAなどでインターンを経験した後、自らサービスを立ち上げた。一度は別のプロダクトを作っていたそうだが、リリース後ほとんど使われなかったため方向性を転換。あらためてチームで解決したい課題を約120個リストアップした結果、ダイニーの元となるランチタイムの問題に取り組むことを決めたという。

過去の採択チームからは2社が資金調達済み

東大IPCでは1号ファンドを通じてシード・アーリーステージの東大関連ベンチャーを支援する複数のVCへのLP出資に加え、ミドルステージ以降の東大関連ベンチャーへ直接投資もしてきた。

具体的には現時点でUTEC(東京大学エッジキャピタル)など6つのVCファンドへ出資、バイオベンチャーのタグシクス・バイオ資金調達時に紹介したスマートアパレルを展開するXenomaなど4社に投資しているという。

今回の東大IPC起業支援プログラムはこれらの投資活動を補完する取り組みのひとつという位置付け。VCなどから出資を受ける前のプレシード段階にあるスタートアップや、起業の前段階にあるグループに対して市場調査資金の提供や経営面のサポートをすることで、さらなる事業展開や資金調達の実現を目指している。

今回採択されたチーム以外にこれまでに3社が採択されていて、2017年12月に紹介したヒラソル・エナジーを含む2社はすでに資金調達を実施済みとのことだ。

飲食店の経営をデジタル化し、ECのように効果測定できる環境へ——「favy」が5億円を調達

favyの役員と株主一同。写真中央が代表取締役社長の髙梨巧氏

「どうやって飲食店というビジネスとデジタルを融合していくか、『飲食店の経営のデジタル化』をテーマに事業を進めてきた。特に正確な経営判断に必要なデータ基盤を作るというのは創業時から決めていたこと。ようやく、やりたかったことの本丸の領域に入っていける段階になった」——favy代表取締役社長の髙梨巧氏は、同社の現状についてそう話す。

グルメメディアや飲食店向けツールなど、食の領域で複数の事業を展開してきたfavy。同社は6月11日、Draper Nexus Ventures、アプリコット・ベンチャーズ、みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫の資本性ローンに基づく融資により、総額約5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

favyでは調達した資金をもとに新規事業となる飲食店向けMA(マーケティング・オートメーション)ツールの開発のほか、グルメメディア「favy」やサービスEC事業「ReDINE」 の拡充に向けて組織体制を強化する。

同社は2017年3月に環境エネルギー投資、サイバーエージェント・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家より総額約3.3億円を、2016年4月にみずほキャピタルとサイバーエージェント・ベンチャーズから総額1億円を調達している。

飲食店がデータを収集し、有効活用できるシステムを作る

favyはちょっと変わったスタートアップかもしれない。

グルメ領域のメディアや飲食店向けのサイト作成ツール「favyページ」など複数のWebサービスを展開する一方で、「飲食店ABテスト」というリサーチサービスを作ったと思いきや、完全会員制の焼肉屋定額制のコーヒースタンドなど、新しいモデルの飲食店を立ち上げたりもしている。

もちろん各取り組みごとに狙いや役割はあるのだろうけど、創業時から髙梨氏がやりたかったことは変わらないという。それがこれから始める飲食店のMAツールも含め、冒頭で紹介した「飲食店の経営のデジタル化」の実現であり、そのために不可欠な基盤作りだ。

「レジの情報や予約の情報も有用だが、多くの飲食店にとってそれだけでは基盤としては物足りないと考えていた。売り上げが増えたとしても『それがどんな顧客なのか、何の影響で来店したのか』と言ったことがわからなければ次に繋がらない。何に投資をしたらどれだけのリターンがあったのか、きちんと効果測定できるようなデータとシステムが必要だ」(髙梨氏)

たとえばfavyが運営する焼肉屋「29ON(ニクオン)」では完全会員制とすることで、1人あたりの来店率やLTV(顧客生涯価値 : 1人の顧客が生涯に渡ってどれくらいの利益をもたらすかを算出した数値)がわかる。これによって「飲食店でも健康食品や単品通販と同じようなマーケティング手法が使える」(高梨氏)という。

「自社店舗で試すうちに必要なデータをトラッキングさえできれば、それを活用することで売り上げを伸ばしていけるという手応えをつかめた。さらに言えば、どのようなデータをトラッキングするべきか、どういった形でデータが取れれば使いやすいかもわかってきている。これらの仕組みを他の飲食店でも使えるようにシステム化したのが、飲食店向けのMAツールだ」(髙梨氏)

高梨氏はもともとネット広告代理店のアイレップ出身。同社ではSEO、SEM分野の立ち上げを担っていた。「Google アナリティクスの登場でWebサイトの効果測定や改善が簡単になった」ように、飲食店にも同様の仕組みが必要だという。

月間閲覧者6000万人超えのメディアfavyと連動

現在開発を進めるMAツール(飲食店向けには顧客管理ツールと紹介しているそう)は、favyの直営店で約1年前からテストを重ねてきたもの。2018年夏頃のリリースを目処に、5月にはテスト版をリリースしている。

開発中のMAツール。画像はテスト版のTOP画面

このツールでは顧客の予約経路やグルメメディアfavy内における行動データなどから、マーケティングに必要な情報を自動で収集、分析。店舗への来店誘導、集客施策に活かせるほか、予約管理や顧客管理に関する業務を効率化する機能、無断キャンセルを防ぐための前日確認を自動化する機能なども備える。

興味深いのは月間閲覧者が6000万人を超えるfavyで蓄積されたデータと連携している点だろうか。

高梨氏の話では、このデータを活用することで「来店したことのないユーザーも含めて、お店の見込み客が見える化できる」という。たとえばラーメン屋の記事に興味を持っているユーザーのデータとエリアのデータを組み合わせ、「新宿のラーメン屋だと、これくらいの見込み客がいる」と把握できるようなイメージだ。

テスト版の顧客管理画面

もちろん飲食店向けのMAツールと言っているように、来店頻度が下がっているユーザーへ広告やはがきを自動で送ったりなど、見込み客に対する集客施策を自動化することもできる。

飲食店向けのSaaSとしてさらなる進化を

今回の資金調達を踏まえ、favyでは組織体制を強化しMAツールや既存事業の開発、機能拡充を進める方針。MAツールに関しては他サービスとの連携にも取り組んでいくという。

また高梨氏によると、今後目指しているのは飲食店向けSaaSとしての展開。詳しくはまだ言えないとのことだが「集客の機能をより掘り下げていく深さの部分と、それ以外の領域へラインナップを広げていく幅の部分」の2軸でサービスを拡張していく計画のようだ。

「飲食店の経営のデジタル化を通じてやりたいのは、飲食店が簡単にはつぶれない世界を作ること。『デジタル化』というのは、広告手段が増えるとか、効果測定ができるというだけでなく、考え方がアップデートされるという意味もある。自社でも直営店を経営していて飲食店の仕組みとデジタルなマインドを融合することの大変さを痛感しているが、(favyの事業を通じて)飲食店の経営をサポートしていきたい」(高梨氏)

VTuberになれるアプリ「ホロライブ」提供元が2億円を調達、今後はVTuber版「SHOWROOM」の開発も

バーチャルYouTuber(VTuber)向け配信サービス「ホロライブ」を提供するカバーは6月8日、グリーベンチャーズ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家の千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資により総額約2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金をもとに専属VTuberのマネージメント体制の強化、ホロライブの開発強化を進める方針。なお今回のリード投資家であるグリーベンチャーズの堤達生氏がカバーの社外取締役に就任する。

もともとホロライブはVRデバイスを用いて3Dキャラクターを自由に操作し、インタラクティブな番組を配信できるライブ配信サービスとして2017年12月にリリースされたサービス。当時TechCrunchでも紹介している。

カバー代表取締役の谷郷元昭氏も「(サービスローンチ前は)VTuberの流れがまだできていなかったので、サービスの説明をしてもIT業界の人はポカーンとしていた」と話すように、2017年末から2018年にかけて日本国内でVTuberがトレンドに。

カバーでは当初LINE LIVEや17 Liveでのライブ配信をメインにしていたが、徐々に録画したコンテンツをYouTubeに配信するなどしながら事業を拡大してきた。

ホロライブのアプリ自体もスマホやPC、HTC Viveを使ってキャラクター(Live2Dと3Dに対応)になりきり、動画やライブを配信できるVTuber向け配信サービスとしてアップデートしている。

「ブログが普及して『出版革命』が起き、一般の人でも自分の文章やコンテンツを発信できるようになった。同じようにこれまで3DCGのアニメーションを作るのは難しかったが、それが簡単になり誰でもキャラクターになりきって動画やライブ配信ができるようになってきている」(谷郷氏)

またカバーではホロライブの開発に加えて、専属のVTuberをマネージメントする「VTuber事務所」のような機能も持つ。現在は約15万人のチャンネル登録者をかかえる「ときのそら」や「ロボ子さん」を展開するほか、6月1日には6人の専属バーチャルYouTuber「ホロライブ一期生」がデビューしている。

引き続き配信プラットフォームであるホロライブと専属VTuberのマネージメントがカバーの軸となるが、VTuberとして活動したい個人を支援するプラットフォームとして、今後は自社でコンテンツの視聴までできる仕組みも作っていきたいという。

「それこそVTuber版の『SHOWROOM』のようなプラットフォームを作れないかなと考えている。(カバーでは)今まで配信する仕組みだけを作っていたので、視聴まで完結できるような環境を整えたい」(谷郷氏)

カバーは2016年6月の設立。これまでも2017年8月にみずほキャピタル、TLMおよび個人投資家数人を引き受け先とした総額約3000万円の資金調達を実施している。

Airbnbが未認可物件に対する宿泊予約をキャンセル、そして「ズボラ旅」は“救済宣言”

民泊予約サービスのAirbnbは6月7日、自治体への届け出が完了していない宿泊先ついて、6月15〜19日にチェックイン予定だった予約分をAirbnb側でキャンセル処理すると発表した。

観光庁は6月1日に、Airbnbを含む民泊仲介業者に対して「届出番号、あるいはその他のホスティングをするための正当な理由(許認可等)がないホストは、既に確定済みの予約であってもキャンセルしなければならない」(Airbnb発表)という旨を一斉に通知していた。今回のキャンセル処理は、この指示に同社が従ったためだ。

Airbnbはこの件について、「過去に観光庁が示していた対応方針とは異る内容で、当社にとっても驚き」、「苦渋の決断」とコメントしている。

同社は、今回のキャンセルに該当するユーザーへ宿泊代金の満額を返金するとともに、予約金相当額+100ドル分のクーポンを提供する。また、今回のキャンセルで旅行プラン変更を余儀なくされたユーザーを支援するため、1000万ドル(約11億円)の基金を設立。代わりの宿泊施設の確保や、航空券の変更手数料などで発生する追加費用を補填するとしている。

ちなみに、同社のリリースでは、Airbnbで新しい宿泊先を見つけられなかった場合には旅行代理店のJTBが宿泊先確保の手助けをするとあるが、以前TechCrunch Japanでも紹介した完全チャット形式の旅行代理店「ズボラ旅」も、Airbnbユーザーの救済に名乗りを上げた。運営元のHotsprings代表取締役の有川鴻哉氏によれば、ズボラ旅はAirbnbで宿泊予約がキャンセルされたユーザーに対し、手数料無料で宿泊先の相談と手配を受け付けるという。

2018年5月リリースのズボラ旅は、旅行はしたいが、旅行先などはまったく決めていないというズボらな人でも使えるチャットサービスだ。出発地と旅行日程をチャットで伝えるだけで、おすすめの旅行先のリコメンドと手配をしてくれる。サービス発表直後に急増した相談に対応できず“パンク宣言”するなど話題になった。同サービスはこれまでに約7000人の旅行相談を受け付けたという。

クルマを買えない世界の20億人を救う、新たな金融の仕組みーーGMSが11億円を調達

自動車の遠隔起動デバイスを活用したプラットフォームを通じて、これまで金融にアクセスできなかった人たちに向けた新たな金融サービスを提供しているGlobal Mobility Service(GMS)。同社は6月8日、イオンファイナンシャルサービスなど10社を超える東証一部上場企業から11億円を調達したことを明らかにした。

今回GMSに出資した企業は次の通り。

  • イオンフィナンシャルサービス
  • 川崎重工
  • 凸版印刷
  • 大日本印刷
  • 双日
  • G-7 ホールディングス
  • バイテックグローバルエレクトロニクス
  • そのほか非公開の一部上場企業

各企業とは資本業務提携を締結し、事業の拡大へ向けて取り組んでいくという。なお同社は2017年4月にもソフトバンク、住友商事、デンソー、クレディセゾン、グロービス・キャピタル・パートナーズ、SBI インベストメントなどから総額約7億円を、2015年8月にもSBI インベストメントから3億円を調達している。

与信審査の概念を変える新たなファイナンスプラットフォーム

GMSが取り組んでいるのは、既存の与信審査の仕組みでは自動車を手に入れることのできない人達を救うためのデバイスとプラットフォームの開発だ。

同社代表取締役の中島徳至氏によると「リースやローンといったモビリティファナンスが利用できない人が世界に20億人いる」とのこと。特に新興国では劣化した車両を長年使い回すことにもつながり、騒音や排気ガスといった新たな問題の原因にもなっているという。

前回の調達時にも紹介したとおり、GMSでは自動車を遠隔から起動制御できる車載IoTデバイス「MCCS」を開発。月額の料金支払いがないユーザーの自動車を遠隔で停止、位置情報を特定できる手段を作ることで、従来とは異なる新しい金融の仕組みを構築した。

これまでの与信審査を省略することで、より多くの人が自動車を手に入れるチャンスを掴めるようになる。

中島氏によると、現在GMSのサービスは2000台を超える車で利用されていて、毎月導入台数が200台ペースで増えているとのこと。中心となっているのはフィリピンの三輪タクシーで、日本やカンボジアでもすでに事業を展開している。

最近フィリピンではGMSの仕組みを利用して三輪タクシーを手に入れたユーザーが、1回目のローンを完済した上で、次は自動車を入手するべく2回目のローンを組む事例も増えているそう。新たなエコシステムが生まれてきているだけでなく、三輪タクシーから車に変わることで金額も一桁変わるため、ビジネス上のインパクトも大きい。

日本でも年間約190万人がローンやリースの審査に通過できないと言われている。従来は金融機関が保証会社を通じて審査をするのが一般的だったが、GMSの仕組みを使って自分たちでやってしまおうという企業もでてきた。

すでに西京銀行やファイナンシャルドゥとは業務提携を締結済み。今後も金融機関やメーカー系のディーラーと連携を深めていくという。

「今までは台数を重視するというよりも『この仕組みでビジネスが成り立つのか、そもそもユーザーからニーズがあるのか』を検証しながら関係者とのパートナーシップを進めてきた。結果として新興国のファイナンスではデフォルト率が15〜20%が一般的と言われている中で、(GMSでは)1%以内に押さえることができている」(中島氏)

事業会社10数社とタッグ

これまでは技術開発と市場開発に加え、金融機関からの理解を得るために話し合いや実証実験に時間を費やし、少しずつ体制が整ってきたという。たとえば今回出資しているイオンファイナンシャルサービスとは実証実験からスタート。手応えがあったため資本業務提携に繋がった。

同社以外にも今回のラウンドには東証一部に上場する各業界の事業会社が10社以上参加している。GMSによると「国内Mobility、IoT、FinTech の各業界における未上場ベンチャー企業の中では最多」とのことで、各社とは業務提携を締結し事業を推進していく方針だ。

「たとえば初めのベンチャー投資となる川崎重工は、GMSの中で最も取り扱いの多いバイクを開発している企業。今後はタッグを組むことでさらにサービスの価値を向上させていきたい。また当社の事業において『セキュリティや個人認証』が大きな鍵となる。凸版印刷や大日本印刷とはお互いのナレッジやリソースを活用しながらサービスを強化していく」(中島)

今回調達した資金をもとに、GMSでは組織体制を強化しプラットフォームの機能拡充とともに、ASEAN各国での事業開発を加速する計画。直近ではインドネシアでの展開を予定しているという。

「GMSが取り組んでいるのは『Financial Inclusion(金融包摂)』と呼ばれる、これまで金融にアクセスできなかった人たちをサポートする仕組み作り。その点では、導入台数を増やすというよりは、どれだけの雇用を創出していけるかを大事にている。20億人がローンを組めないという中で、まずは1億人の雇用を生み出せるようなサービスを作っていきたい」(中島氏)

ウォレットアプリの「Kyash」がリアルカードを発行、Visa加盟店舗で利用可能に

個人間で送金や請求ができるウォレットアプリ「Kyash」を提供するKyashは6月7日、全国のVisa加盟店で利用できるリアルカードの発行を開始した。

2017年4月に個人間で送金や請求が無料でできるアプリとしてスタートしたKyash。受け取ったお金はアプリ内で発行されるバーチャルカード「Kyash Visaカード」に貯まり、オンラインVisa加盟店での決済時や、モバイルSuicaにチャージすることでコンビニや交通機関などで利用できた。

そして今回のリアルカードの発行によりコンビニやスーパー、飲食店といった実店舗での決済時にもKyashを使えるようになる。以前TechCrunchでも紹介した通り、Kyashでは実店舗での決済対応を見据えて2018年3月にUIを刷新。5月にはGoogle Payに対応し、今夏以降は国内のQUICPay対応店舗で支払いができるようになることも発表したばかりだ。

また決済時にインセンティブを提供するプログラムも開始。決済金額の2%を翌月にKyashの残高としてキャッシュバックし、そのまま送金や決済に利用できるようにする。これはリアルカードの決済だけでなく、アプリ内で発行されたバーチャルカードでの決済も対象だ。

Kyashではウォレットアプリとしての使いやすさ向上を目指し、今後も機能追加や外部連携を進める方針。「キャッシュレス社会の実現に貢献するべく、サービスの拡大に努めてまいります」としている。

ウォレットアプリの「Kyash」がリアルカードを発行、Visa加盟店舗で利用可能に

個人間で送金や請求ができるウォレットアプリ「Kyash」を提供するKyashは6月7日、全国のVisa加盟店で利用できるリアルカードの発行を開始した。

2017年4月に個人間で送金や請求が無料でできるアプリとしてスタートしたKyash。受け取ったお金はアプリ内で発行されるバーチャルカード「Kyash Visaカード」に貯まり、オンラインVisa加盟店での決済時や、モバイルSuicaにチャージすることでコンビニや交通機関などで利用できた。

そして今回のリアルカードの発行によりコンビニやスーパー、飲食店といった実店舗での決済時にもKyashを使えるようになる。以前TechCrunchでも紹介した通り、Kyashでは実店舗での決済対応を見据えて2018年3月にUIを刷新。5月にはGoogle Payに対応し、今夏以降は国内のQUICPay対応店舗で支払いができるようになることも発表したばかりだ。

また決済時にインセンティブを提供するプログラムも開始。決済金額の2%を翌月にKyashの残高としてキャッシュバックし、そのまま送金や決済に利用できるようにする。これはリアルカードの決済だけでなく、アプリ内で発行されたバーチャルカードでの決済も対象だ。

Kyashではウォレットアプリとしての使いやすさ向上を目指し、今後も機能追加や外部連携を進める方針。「キャッシュレス社会の実現に貢献するべく、サービスの拡大に努めてまいります」としている。

クラウド契約サービス「Holmes」がMF KESSAIなどと連携ーー契約書に関わる“すべて”を楽に

契約書の作成から管理までを一括サポートするクラウドサービス「Holmes(ホームズ)」。同サービスを提供するリグシーは6月7日、電子署名サービスの「ドキュサイン」、およびマネーフォワードグループの「MF KESSAI」とのサービス連携を発表した。同サービスはこれにより、単なる“契約書のクラウド作成サービス”からの脱却を目指すという。

Holmesは、クラウド上で企業間の契約書の作成、締結、管理までを一括して行えるSaaSサービスだ。サービス上には弁護士が作成した様々なタイプのテンプレートが用意されているほか、それらの文言を自由に編集することでオリジナルの契約書を作成することが可能だ。

Holmesは契約書を軸にしたコラボレーションツールとしても機能する。契約書の修正やチェックの過程で社員同士がコメントなどを書き込めるほか、各部署間にまたがる承認フローなどもすべてサービス上で完結できる。2017年8月リリースのHolmesは、これまでに約150社の有料ユーザーを獲得。100人以上の従業員を抱える企業がその大半だという。

今回、リグシーがサービス連携を発表したドキュサインは、2003年設立の米国企業。同社が提供する電子署名サービスは約180ヶ国の37万社以上で導入されており、2018年4月にはNASDAQ証券取引所への上場も果たしている。

実は、これまでのHolmesにも独自の電子署名機能は搭載されていた。しかし、「これまでのHolmesでは、相手先に契約締結を依頼する際に自動で送られるメールが日本語にしか対応していないことが、グローバル契約において障害となっていた。また、Holmesのような新しいサービスを導入する際に必要な稟議が通り易くなるなど、ドキュサインの知名度が生かされる可能性もある」とリグシー代表取締役の笹原健太氏は話す。

今後、ユーザーはHolmes上でドキュサインの電子署名サービス選択することができ、英語やフランス語など多言語化された締結依頼メールが送られる。通常は年間契約が必要なドキュサインを、1通あたり600円という従量課金で利用できることもメリットだ。

そしてもう1つ、Holmesがこれまでの“契約書のクラウド作成サービス”からの進化を象徴する連携がある。マネーフォワードグループのMF KESSAIとの連携だ。

これまでもTechCrunch Japanに度々登場してきたMF KESSAIは、企業の与信審査から請求書発行、代金回収などの請求業務を代行するサービスだ。これまで、ユーザーがMF KESSAIを利用する場合、代金の支払日や請求先などのデータを手入力する必要があった。しかし、今回の連携によりHolmesで作成した契約書のデータを自動的にMF KESSAIに取り込むことが可能になる。

笹原氏はこの連携について、「営業にとって、契約書はゴール。でも、経理にとってはスタートになるもの。契約書は業務間をつなぐハブのような存在だ。契約書を作るのも楽だし、その後の関連業務もすべて楽になるというような世界観を今後つくって行きたい」と話す。

MF KESSAIとの連携もその世界観を構成する1つで、契約書を締結した後にやってくる請求業務をサービス連携によって楽にするという考え方だ。笹原氏によれば、リグシーは今後も他社との連携によって、AIによる契約書の自動作成・自動チェックサービスや、企業に溜まった紙の契約書をPDF化して保管するサービスなどを2018年夏頃をめどに提供していく予定だという。

リグシーは2017年3月の創業。同年10月には500 Startups Japanなどから数千万円規模の資金調達を実施している。

日本語版:WWDC関連記事まとめ

米国時間6月4日から開催されているWWDC。Appleが手がける毎年恒例の注目イベントだ。TechCrunchでも同イベントを取り上げた記事を続々と公開している。日本語で書かれたWWDC関連記事を以下にまとめたので、ぜひ活用してもらいたい。

 

駿台グループ、オンライン家庭教師サービス「manabo」を買収

駿台グループのSATTは6月6日、スマホとタブレットを使った家庭教師サービス「manabo」を提供するマナボの全株式を取得したと発表した。買収金額は非公開。manaboは今後、独立した経営体制のまま駿台グループの一員となる。

manaboはスマホアプリを通じて、生徒が宿題や問題集などの分からない部分を撮影し、チューターにオンデマンドでリアルタイムに質問できるサービス。manaboには現在約3500名の家庭教師が在籍していて、彼らが音声通話と手書きの画面共有によって学生を指導する。これまでの累計指導回数は約20万回だ。2015年頃から同社はこのシステムを塾向けに提供するビジネスに軸足を移しており、その導入社数は50社を超える。

塾向けビジネスを加速させるきっかけとなったのは、2016年11月に行われた資金調達ラウンドだ。同ラウンドでマナボはZ会グループなどから2億5000万円を調達し、同グループの経営体制を担うZEホールディングス取締役の下田勝昭氏を社外取締役に招いている。

しかし、今回マナボの買収を発表したのは、Z会グループにとって競合にあたる駿台グループだった。マナボ代表取締役の三橋克仁氏は、「2017年より駿台グループ向けにもmanaboを提供していたが、その連携において特にサービスの消費率が高かったこと、経営の独立性を重んじてくれること、(買収ディールに参加した中でも)提示された評価額が高かったことの3つが駿台グループを選んだ理由だ」と語る。

また、駿台グループはmanaboを他塾に提供することにも寛容で、「駿台グループに入ったことで一部の塾からは反発を受けるかもしれないが、こちら側はすべての塾に対してウェルカムな姿勢」と三橋氏は語る。なお、三橋氏はディールに参加した企業名を明かさなかったが、参加企業は全部で約5社。そのすべてが塾業界の企業だったという。

マナボは今後、駿台グループのアセットを生かしつつ、企業向けの教育研修や病院向けなど、他業種への拡大に注力するという。また、SATTと共同でEdTech領域の新サービス開発にも着手する。

ちなみに、今回のディールにおいて三橋氏のロックアップ期間は設定されていないという。「残念ながら買収金額は公開できないものの、個人レベルの話で言えば、今後お金のために働く必要はなくなった。これからは“ロマンとそろばん”のロマンの方に全力をかけたい」と語った。

ヤフーが実店舗でのQRコード決済サービスを開始、飲食チェーンなどでも順次導入へ

ヤフーは6月5日より、「Yahoo! JAPAN」アプリにおいてバーコード(1次元バーコード、QRコード)を活用した決済サービス「コード支払い」を開始した。

コード支払いは口座数が4000万を超える「Yahoo!ウォレット」の新機能という位置付け。ユーザーがアプリ上でバーコードを表示し、店舗の端末やレジに提示することで決済できる消費者提示型の決済サービスとなっている。

支払い方法はあらかじめ登録したクレジットカードと、コンビニや銀行口座などからチャージした「Yahoo!マネー」の2種類だ。

2018年秋には店舗側が提示したQRコードを、ユーザーがアプリで読み取って決済する店舗提示型の「読み取り支払い」も開始する。

同サービスではヤフーが保有する特許技術を用いて、ユーザーが任意の金額を入力して決済できる仕組みを構築。どのような商品・サービスの購入にも店舗ごとに一つのQRコードで対応できるようにするという。これにより加盟店は特別な設備投資が不要で、QRコードを店頭に掲示するだけで導入可能。小規模な店舗でも取り入れやすい仕組みを作る。

なおコード支払いの加盟店については、6月5日より福岡ソフトバンクホークスの「タマホーム スタジアム筑後」内のショップにて導入がスタート。今後は家電量販店の上新電機が展開する店舗や、白木屋や魚民など外食チェーンのモンテローザが運営する店舗での導入を予定している。

QRコード決済ではLINEが4月にQRコードで決済できるStayPay端末を開発するネットスターズと資本業務提携を締結。LINE Payを利用できる店舗を2018年内に100万店舗まで拡大する目標を掲げているほか、IT業界では楽天やOrigamiなどがサービスを展開している。

クリエイターが創作活動で評価される仕組みづくりへ、イラストやマンガ制作のフーモアが2.6億円を調達

クラウドソーシングの仕組みを活用して、ゲームイラストやマンガなどのコンテンツ制作を行うフーモア。同社は6月5日、みらい創造機構を含む6社と個人投資家3名を引受先とする第三者割当増資に加え、日本政策金融公庫からの融資により総額で2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドに参加した投資家陣は以下の通り。

  • みらい創造機構
  • ジュピターテレコム
  • iSGS インベストメントワークス
  • 一般社団法人 CiP 協議会
  • DG インキュベーション(既存投資家)
  • DK Gate(既存投資家)
  • 個人投資家3名

今回の調達を受けてフーモアでは組織体制を強化しクリエイタープラットフォームの拡大を目指すほか、映像化やゲームなどメディア展開を前提としたコンテンツの原作開発を進める方針だ。

なおフーモアは2011年の設立で、2015年12月にもDG インキュベーションとDK Gateから2億円を調達している。

クリエイターが創作活動を通じて評価されるプラットフォームへ

冒頭でも触れた通り、フーモアではクラウドソーシングを通じてゲーム向けのイラストやプロモーション用のマンガコンテンツを制作してきた。登録クリエイター数は国内外で6000名以上。制作工程を分業するスキームを活用し、手がけたコンテンツは累計で4000〜5000本に及ぶ。

フーモアではこのクリエイターネットワークとノウハウを生かし、クリエイターが世界中で創作活動を通じて評価されるプラットフォームの実現に向けて「クリエイターグローバルプラットフォーム構築の拡大」を中長期の戦略に掲げている。今回の調達もこの戦略をさらに推進するためのものだ。

「これまではクリエイターがクリエイターとしてだけで食べていく世界観というのは非常に限定的だった。我々が実現したいのは、あくまでクリエイターがクリエイターとしてしっかりと社会的に評価されることだ」(フーモア取締役COOの松田崇義氏)

松田氏の話では普段の仕事を提供するのはもちろん「ライフイベントで融資ができるようにしたり、手に職をつけるために雇用先を斡旋したり、アートディレクションという仕事をしっかりと教育する支援をしたりといったように、クリエイターのあらゆる活動を支援するプラットフォーム」をグローバルで目指していくという。

またアニメや映画などの映像化、ゲーム化、商品化などのメディア展開を目的としたコンテンツの原作開発にも力を入れる。これについては先日TechCrunchでも紹介した通り、ジュピターテレコムと業務提携を締結した。

今後は同社の100%子会社であるアスミック・エースと共同で電子コミックやライトノベル、ノベルアプリなどを制作。自社で管理できるIPを保有しマネタイズできる仕組みを構築する計画だ。

フーモア代表取締役の芝辻幹也氏は「今回の資金調達を皮切りに、クリエイターのグローバルエコシステムを構築し、エンターテインメントを前進させていきたい」とコメントしている。

フーモア代表取締役の芝辻 幹也氏