微⽣物ゲノム解析の早大発スタートアップbitBiomeが7億円を調達、疾患と微生物の関連について大規模研究を開始

微⽣物ゲノム解析技術の早稲田大発スタートアップbitBiomeが7億円を調達、疾患と微生物の関連性に関する大規模研究を開始

微⽣物のシングルセルゲノム解析技術「bit-MAP」を⽤い、微⽣物の産業応⽤を⽬指すbitBiomeは、シリーズBラウンドにおける第三者割当増資として総額7億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は東京⼤学エッジキャピタルパートナーズ、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーターを含む複数企業(既存・新規)。累計資金調達額は10.5億円となった。

今回調達した資金は、さらなる飛躍に向け、自社起点の研究、最新機器の購入、米国展開など5つの重点テーマに投資し、爆発的な事業成長を促すとしている。

  • 疾患と微生物の関連性を解析する自社研究
  • さらなる研究開発力強化に向けたウェットラボ設備導入(次世代シーケンサーなど)
  • ⽶国での研究・事業活動の加速化
  • 特許の出願・維持
  • 人材採用

またbitBiomeは、先に挙げた自社研究として、がん、腸内疾患、自己免疫疾患、神経精神疾患などを含む20を超える疾患について患者の便および唾液サンプルを取得し、種々の疾患と腸内細菌・⼝腔内細菌の関連性を明らかにする大規模研究を開始する。

患者検体についてはQLifeと協⼒し、同社パネルに登録している患者から取得する。疾患ごとに、医薬品研究開発・新規バイオマーカー探索を⽬指したパートナリング・共同研究、解析データの共有および独占販売などを検討しているという。

bitBiomeは2018年11月創業の早稲田大学発スタートアップ企業。bitBiome開発のゲノム解析技術bit-MAPは、世界唯一の微生物を対象としたシングルセルゲノム解析技術で、地球上のあらゆる環境に生息する微生物のゲノム情報をひとつの細胞から高精度に解読することを可能とする。

bit-MAPによって、従来のマイクロバイオーム研究で必要とされてきた煩雑な単離・培養、あるいは複雑なシーケンスデータの計算処理の必要なく、未知の微生物ゲノム情報を高速・網羅的に獲得可能となった。

同技術を次世代のマイクロバイオーム解析サービスとして提供し、医療・農業領域を中心にあらゆる微生物関連の企業・アカデミアとの協業を通じて、同社のミッション「Unlock the Potential of Microbes」を実現し、社会へこれまでない価値を提供するとしている。

早稲田大学が総額20億円規模の公式ファンド設立へ——ウエルインベストメント、Beyond Nextと提携

早稲田大学は10月30日、同大学の研究成果を活用するスタートアップへの出資を目的とした総額20億円規模のファンド組成を目指し、ウエルインベストメントおよびBeyond Next Venturesの2社と提携契約を締結したことを発表した。契約締結日は10月29日。ファンドが設立されれば、早稲田大学にとっては初の公式なベンチャーファンドとなる。

同大学では、教員や学生が設立したスタートアップに対し、これまで早稲田大学インキュベーションセンターなどを通じて、コンサルタントによる経営相談や施設の提供などの支援を行ってきた。

今回の提携により、ウエルインベストメント、Beyond Next Venturesの両社は、早稲田大学の技術シーズを活用したスタートアップの育成強化に向け、シード、アーリーステージの企業に投資するベンチャーキャピタルファンドを2018年内にも設立する予定だ。

また、早稲田大学と両社では、スタートアップ創出のための各種支援プログラムの企画運営や、事業化可能な研究シーズの発掘、ハンズオン支援などの施策も行っていく。

Beyond Next Venturesは、10月22日に2号ファンドを設立したばかり。同社代表取締役社長の伊藤毅氏は「1号ファンドでは、東京大学協創プラットフォーム開発のLP出資を受けているが、ファンドとして特定の大学色を付ける考えはない」と東大・早大以外の各大学との連携も進める考えを示している。一方で「早稲田大学の公認アクセラレーターとして、今まで以上にシーズの発掘を行い、支援したい」とも述べている。

「メルカリ創業者の山田進太郎氏をはじめ、早稲田大学出身でITベンチャーを創業した人はたくさんいるが、大学発の技術シーズ、特に研究室発の技術はビジネスとして理解されにくく、アカデミアに埋もれているものも多い。技術シーズをビジネス側の人が『面白い』と思ってもらえるようなプランに作り替えて示していくのも、アクセラレーターとしての仕事だ」(伊藤氏)

Beyond Next Venturesでは、早大発のスタートアップに対し、ファンドによる起業後のエクイティ資金の提供のほかに、技術シーズの発表会の運営、同社が運営するアクセラレーションプログラム「BRAVE」への参加促進を通じて、メンタリングや事業化を支援するために必要な人材の提案、ビジネスプランのブラッシュアップなど、実践的なサポートも提供していくとしている。

なお、Beyond Next Venturesは同じ10月30日、三井不動産およびライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)と連携して、東京・日本橋にライフサイエンス領域のスタートアップが利用できるシェア型ウェットラボ「Beyond BioLAB TOKYO」を2019年2月に開設することも明らかにしている。シェアラボ開設の経緯やアクセラレーターとしての思いについて伊藤氏に詳しく聞いたので、近日中にご紹介したい。