暗号通貨のビジネス向け銀行口座を提供するフランス拠点のMultisが約2.3億円を調達

Multis(マルティス)はフランスのスタートアップで、暗号通貨(仮想通貨)を保存・送信・受信できるビジネス用の銀行口座サービスを提供している。同社はこのたびシードラウンドで220万ドル(約2億3200万円)の資金を調達した。

今回の資金調達ラウンドには、White Star Capital、Y Combinator、Coinbase Ventures、eFounders、Greenfield One、Digital Currency Group、Monday Capital、SGH Capitalなどの投資家が名を連ねている。

「企業が暗号通貨を管理するのは非常に難しいです。暗号通貨を保有したいと思ったり、従業員や請負業者に支払いを始めたりすると、すぐに巨大な混乱に陥ります」と共同創業者兼CEOのThibaut Sahaghian(ティボー・サハギアン)氏は説明する。

Qontoのようなビジネスバンキングに取り組むスタートアップに詳しい人なら、Multisに何を期待すべきかは知っているだろう。Multisはビジネスチームのために設計されたSaaSの製品だ。

Multisアカウントを作成した後、ほかのメンバーをチームに追加したり、権限や制限を設定したりすることができる。裏では、MultisはマルチシグネチャのEthereum(イーサリアム)ウォレットの役割を果たす。もちろんMultisは鍵を管理していないため、利用者の資金にアクセスすることはできない。

「規制の観点からは、資産を保有していないので取引を審査したりブロックしたりすることができません。これは非常に便利です」とサハギアン氏。マルチシグネチャーの設計のおかげで、各取引をチーム内の一定の人数で承認するなど、承認ワークフローを作成することができます」と同社は説明する。

MultisはEthereumベースのERC20トークンをサポートしているため、USDCやDAIなどのステーブルコインも使用できる。この方法であれば、すべての資産をUSDCに保持することを選択しても、暗号通貨の価値変動にさらされることはない。またMultisから直接トークンを交換することができる。

Multisの口座に資産があれば、従業員、請負業者、パートナー、サプライヤーなどに支払いが可能だ。住所などの関連情報を保存しておくことで、将来的に支払いを効率化することもできる。Multis上でのすべての暗号取引を一元管理することは、税金を申告する必要がある場合に便利です。すべての取引をエクスポートして会計士に渡すことができる。

もし、あまりにも多くの資産を持っている場合は、いくつかの資産を投資しておけばDeFi(分散型金融)製品で利子を得ることもできる。同社は同機能にCompoundを使用している。

現在のMultisのクライアントは、ほとんどがブロックチェーン製品に取り組んでいる企業で、暗号通貨で収益を上げたり、ステープルコインを使って人々に支払いをしたりしている。しかし、同社はカードとIBAN(所在国、支店、口座番号を特定するための銀行口座の国際標準)で、ユーロ圏と米国の口座を追加することで。製品をシンプルにしたいと考えている。

Multisは、不換紙幣(一般的な各国発行の紙幣)と仮想通貨の橋渡しになるかもしれない。複数の国にオフィスを持つ企業は、会社間の手数料を節約するためにMultisのサービスを使うことができる。このスタートアップはこれらの新機能の開発を続けており、今後興味深いユースケースが生まれるかもしれない。

画像クレジット:Multis

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Twitterの暗号通貨詐欺の元凶は内部ツールに不正アクセスした一人のハッカー

Twitter(ツイッター)で発生した連続アカウント乗っ取り事件は、この事件に関する直接的な知識を持つ情報筋によると、米国時間7月15日にTwitterネットワークの「管理者」ツールに不正アクセスした一人のハッカーの犯行と思われる。そのハッカーは、著名人のアカウントを乗っ取り暗号通貨詐欺のツイートを拡散した。

このアカウント乗っ取りの被害に遭ったのは、Twitterプラットフォームでも大変に名の知れたユーザーだった。そこには有力な暗号通貨サイトも含まれていたが、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾズ)氏、Elon Musk(イーロン・マスク)氏、民主党大統領候補のJoe Biden(ジョー・バイデン)氏といった超有名人も餌食にされた。7月15日、ViceはそのTwitterの管理者ツールに関する詳細を伝えている(Vice記事)。

Twitterの広報担当者にこの主張に関して質問したがコメントは得られなかった。後にTwitterは、一連のツイートを発表し、攻撃は「弊社の従業員に狙いを定め、首尾良く内部システムとツールへのアクセスを成功させた人たちによる組織化されたソーシャル・エンジニアリング攻撃」だったと語った。

地下のハッキング事情に精通する情報筋は、そのハッカーは「Kirk」(カーク)というハンドル名で知られる人間(もちろんハッカーの常として本名ではない)で、Twitterがアカウントの管理に使っている内部ツールにアクセスしてから、ものの数時間で10万ドル(約1070万円)以上を稼いだとTechCrunchに話した。ハッカーはそのツールを使い、本人が自分のアカウントをコントロールできなくするために、アカウントに登録された電子メールアドレスをリセットした。そして、暗号通貨詐欺のツイートを投稿した。金額に関わらず投資額を「2倍にして返します」というものだ。

その情報筋がTechCrunchに伝えたところによると、カークはまず、どうでもよさそうなTwitterアカウントへのアクセス権を販売するところから始めたという。ユーザーネームが短く、簡単で推測しやすいものだ。違法ではあるものの、それは大きなビジネスになった(Vice記事)。盗んだユーザーネームやソーシャルメディアのハンドル名には、数百ドルから数千ドルの値が付く。

カークは、盗まれたソーシャルメディアのハンドル名の売人に人気(Vice記事)のフォーラム「OGUsers」の「信頼できる」メンバーと通じているという。カークは、盗んだユーザー名を売りさばく手伝いをしてくれる頼りになるメンバーを必要としていた。

TechCrunchに掲載したDiscord(ディスコード)でのチャットのスクリーンショットには、「@とBTCを送って」というカークの書き込みが見られる。Twitterアカウントと暗号通貨のことだ。「そうすれば代わりに仕事してあげる」と彼は言う。Twitterアカウントの乗っ取りを示唆している。

そしてその日の遅く、カークは「あらゆるものへのハッキングを開始した」と情報筋はTechCrunchに話した。カークは、Twitterネットワークの内部ツールにアクセスしたものと思われる。そこは、Twitterの担当者がユーザーのアカウントを効率的に管理できる場所だ。TechCrunchが公開したスクリーンショットを見ると、あきらかに管理者ツールだとわかる。なおTwitterは、このツールのスクリーンショットをシェアしたユーザーのツイートを削除しアカウントを凍結(Vice記事)した。

Twitterの内部アカウント管理ツールと思われるスクリーンショット(提供された画像)

このツールは、表向きはTwitter内部の担当者が使用するもので、ユーザーアカウントにアクセスでき、アカウントに登録されたメールアドレスの変更やユーザーのアカウント凍結なども行える(実際のユーザーが特定できないようTechCrunchで写真を加工した)。

情報筋は、カークがどのようにTwitterの内部ツールにアクセスしたのか、その具体的な方法については話さなかったが、Twitter従業員の社員アカウントが乗っ取られたとも推測できる。従業員のアカウントを乗っ取れば、カークはTwitterの内部ネットワークに自由に入れるようになる。情報筋は、Twitterの従業員の一人がアカウント乗っ取りに加担したとは考えにくいとも指摘していた。

彼らのハッキング攻撃の一環として、カークは最初に暗号通貨交換サイトBinance(バイナンス)のアカウント「@binance」をターゲットにしたと情報筋は話す。そしてすぐに人気の暗号通貨アカウントに飛んだ。情報筋によれば、カークはユーザーネームの販売額を超える金額を1時間で稼いだという。

プラットフォームのコントロールを取り戻すために、Twitterは一部のアカウント操作を一時停止し、さらに検証済みのユーザーがツイートできないようにした。これは、アカウントの乗っ取りを食い止めようとしたあからさまな対応だ。Twitterは「できるだけ早く事態を平常に戻すための処置」だったと後にツイートしている。

関連記事:著名Twitterアカウントが暗号通貨詐欺にハックされる、アップルやバイデン氏、マスク氏などに被害

画像クレジット:Josh Edelson / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

暗号通貨を担保にステーブルコインを融資するサービス

暗号通貨をたくさん持っているが、市場で売りたくはないときはどうすればいいか?Blockchain(ブロックチェーン)という会社が方法を見つけたと言っている。同社のウォレット(Blockchain Wallet)の中にある暗号通貨の額に応じて融資を受けられる仕組みだ。

ウォレット内の暗号通貨をロックするとすぐにUSD PAX(パクソス)を受け取れる。USD PAXは米ドルに連動したステーブルコイン(価値の安定した暗号通貨)だ。あとはそのステーブルコインを自由に換金するなり送金するなりできる。借金はいつでも返済できる。

融資の最小単位は1000ドルで、同社は200%の担保率を要求する。つまり、5000ドル借りたければ、1万ドル相当の暗号通貨を担保として提出しなければならない。

Blockchain社は融資に対して利息を取る。利率は変動制だが、融資を受ける前に利息がわかるようにする予定だ。通常同社は、差し出した担保から利息を徴収する。暗号通貨の価値には注意が必要だ。なぜなら米ドルの借金がまだ残っているのに、担保の価値が大幅に下がっていることもあるからだ。

舞台裏で同社は機関投資家向けに融資業務を行っている。同社は昨年8月にこの新しいシステムをスタートした。同社は一般投資家を活用した強力な換金システムを構築できたと考えている。

米国、カナダ、および英国のユーザーは現時点で同機能を利用できない。現在同社は、担保をBTC(ビットコイン)でのみ受け付けている。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images(画像は加工済み)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

暗号通貨ウォレットのZenGoが貯蓄口座機能の提供を開始

ZenGoが暗号通貨資産を保持したり、送受信したりといったウォレットの基本的な機能を超えたサービスを提供する。利子を稼ぐために、暗号通貨資産を分けて保持できる。言い換えれば、ZenGoは貯蓄口座としても機能するようになった。

同社はこの新機能のために2つのDeFiプロジェクトと提携した。DeFiは「decentralized finance(分散ファイナンス)」を意味し、暗号通貨業界では今話題のものだ。DeFiプロジェクトは従来の金融商品と同じブロックチェーンで、たとえばお金の貸し借りができたり、デリバティブに投資したりといったことができる。

話をZenGoに戻そう。ZenGoのウォレットに暗号通貨資産を保有しているとき、ユーザーは貯蓄タブを開いてDaiのような資産を選び、保有する資産の何%を分けて保有するかを決める。

その後は、ただ待つだけだ。貯蓄“口座”の概要はいつでも見ることができる。そして稼いだ利子の総額もチェックできる。利子は自動的に再投資される。そしてユーザーはいつでも好きな時にDeFiプロジェクトのお金をウォレットに動かすことができる。

このサービスを提供するのにZenGoはCompound(複利計算)プロトコルを使っている。LendingClub(編集部注:P2Pの貸出プラットフォーム)のような仕組みだが、ブロックチェーンで提供する。流動性プールを確保するためにCompoundに送金するユーザーもいれば、プールからお金を借りるユーザーもいる。

利子率は需要と供給に基づいて変動する。だからこそ、CompoundにDAIやUSD コインを入れると現在より多くの利子がつく。

ZenGoはTezosをサポートするためにFigmentを使う。今回は貸出マーケットプレイスではない。ステーキングプロジェクトに金があれば、それは特定のブロックチェーンのオペレーションをサポートすることを意味する。プルーフ・オブ・ステークに基づく必要があるために、わずかなブロックチェーンがステーキングをサポートする。

エンドユーザーにとっては、CompoundやFigmentに頼っているときはいつでも貯蓄口座のように映る。Coinbase WalletArgentのように、DeFiプロジェクトアクセスできる別のウォレットアプリもある。しかしそれらは普通のユーザーにとっては複雑すぎるとZenGoは考えている。

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(翻訳:Mizoguchi

韓国が世界に先駆けて包括的暗号通貨法案を可決

米国時間3月5日、韓国国会は暗号通貨および暗号化取引の規制と法制化の骨格を決める新法案を可決した。

新型コロナウィルスの状況が悪化する中で召集された特別議会で、同国の金融サービス法修正案が満場一致で可決された。これで韓国の金融当局は、この新興分野を事実上監視し、反マネーロンダリング関連の規則制定が可能になる。

韓国は過去数年、暗号通貨のにわか景気と不景気の中心にあり、暗号化技術を大規模に取り入れている少数の国々のひとつだ。暗号通貨ブームのピークだった2017年に行われた調査によると、韓国労働人口の駅前にあるパーティションで区切られいない路上喫煙所の移転、時期未定の延期になった。毎朝大量の紫煙をくぐり抜けて駅にたどり着く通勤から解放されると思ったのに残念。3分の1以上がBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)などの暗号通貨に積極的に投資していた。同国最大の都市であるソウルでは政府が狂乱の時代精神を取り込むべく設計した独自の暗号通貨S-Coin(エスコイン)を導入する取組みが始まった。

その間韓国政府はブロックチェーンの普及を取り締まる新たな規則をすばやく制定し、その結果投資家が市場の反応を見守るなか、Bitcoinの価格は大きく乱高下した。

わずか数年後の現在の議決は、規制当局の動きとしては比較的早く、ブロックチェーン、具体的には暗号通貨の導入が国内外の金融サービスで進んでいることを示している。韓国最大級のテクノロジー企業であるKakao(カカオ)は今もブロックチェーンへの取組みに力を入れており、地域のエコシステムも業界のイノベーションへの順応性は比較的高い。

暗号通貨法案の成立は、韓国スタートアップエコシステムにとっては大歓迎だが、他の業界については未だに大きな課題だ。

今日最も注目されたのが、現地のライドシェアリング・スタートアップで規制下にある伝統的タクシー業界と競合しているTada(타다、タダ)の運命だ。2018年末に開業した同社は、規制当局による中止命令の脅威に直面してきたが、数週間前に最高憲法裁判所が営業を認可したことで危機を免れた。

しかし、暗号通貨法案が可決された同じ特別議会で、Tadaを事実上禁止し政府の営業許可を必須とする法案が承認された。今後数週間のTadaの動きが注目される。

暗号通貨法案の可決後、ムン・ジェイン大統領が署名すると、数カ月にわたる法制化手続きが始まり、その間に既存のスタートアップや交換所は法の新しい規制方法に対応することになる。

韓国の議会選挙をわずか数週間後の4月15日に控え、地元新聞の見出しを新型コロナウィルス関連の話題が独占する中、テック関連法案に対する賛否は、候補者が自らの立場を表明する手段のひとつとなっている。

画像クレジット:Republic of Korea/ Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド最高裁が中央銀行による暗号通貨取引の禁止命令を覆す判決

インドの最高裁判所は4日、中央銀行が2年前に出した暗号通貨取引の禁止命令をひっくり返す判決を下した。多くの人が判決を「歴史的」と受け止めている。

インド準備銀行(RBI)は2018年4月に暗号通貨の取引禁止を命令した。銀行や他の金融機関が“バーチャル通貨に関連するあらゆるサービス”を行うことを禁止するというものだ。

当時、RBIはインドの金融システムを”囲って守る”ために必要な措置と述べた。また、Bitcoinや他の暗号通貨は金属でつくられておらず、また物理的に存在せず、政府によってスタンプも押されていないため、通貨として扱うことはできない、とも主張した。

中央銀行の2018年の通達は、暗号通貨取引サービスを提供するいくつかのインドのスタートアップや企業をパニックに陥れた。そしてそれらのほとんどが店じまいした。

今日の判決では、裁判長のRohinton F. Nariman(ロヒントン F. ナリマン)氏は中央銀行の通達は不適切として無効にした。

インターネット・モバイル協会といった取引団体を含む原告グループは、暗号通貨取引を許可しているだけでなく、独自のバーチャル通貨を立ち上げようとしている多くの国にインドは目を向けるべきだ、などと主張して中央銀行の通達に異議を申し立てた。

テック投資家のNitin Sharma(二ティーン・シャーマ)氏は、最高裁の判決は“歴史に残るもの”であり、この問題にようやく決着をつけることができた、と話した。

「インドの暗号通貨にとって歴史的な日だ。これでインドはブロックチェーン革命に参加できる」とBitcoin取引プラットフォームWazirXの創業者でCEOのNischal Shetty(二シャル・シェティ)氏は述べた。

画像クレジットAvishek Das / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

デジタル裁判所の構築を目指すAragonが1億円超を調達

暗号通過とブロックチェーンの薄暗闇の世界では、昔ながらの法廷に論争を持ち込むと、原告と被告の両方が牢屋に入れられるか、法廷が混乱して思考停止状態に陥るかのどちらかに終わる。こんな感じだ。

「DAOとは何ですか?」
「分散型自律組織です、裁判長」
「人間の言葉でお願いします!」

また、ブロックチェーン固有の「コミュニティー」も似たような調子で、旧来型の法廷での紛争を収める役には立たない。しかし、資本主義は法律の上に成り立っている。そのため、こうしたことがインターネットで事業を行おうという気持ちを抑えてしまう。なんと皮肉なことか。

数年前、Aragon(アラゴン)というプロジェクトが立ち上がった。Aragonは、数千人規模のユーザーを対象とするものから、数名規模のシンプルなものまで、幅広いストラクチャーに対応する分散型自律組織(DOA)の構築のためのフレームワークとツールを提供してきた。これは「法廷システム」とも呼ばれ、「人間の陪審員の判断を必要とする主観的な紛争」に対応できるとものだと彼らは話している。いい話なのだが、そこには高い見識を持つ本物の投資家が必要だ。

彼らは米国時間2月19日、Tesla(テスラ)、SpaceX、Coinbase、Baidu(バイドゥ)などを以前に支援し、数年前は暗号通貨に多額の投資を行った大富豪ベンチャー投資家であるTim Draper(ティム・ドレイパー)氏から少額の支援を受けたと発表した。

Draper Associates(ドレイパー・アソシエーツ)は、AragonネットワークのANTトークンを実際の100万ドル(約1億1000万円)で購入する。ハイテク分野での「普通」の投資額からすると規模は小さいが、いまだ発生段階にあるブロックチェーンの世界ではかなりの額だ。ニューヨークを拠点とするPlaceholderとCoinFund、そしてシリコンバレーを拠点とするBoostVCといった支援者の中に、ドレイパー氏が最後に加わった。

ドレイパー氏は暗号通貨の強力な支持者だ。2014年にSilk Roadから押収された資産の政府主催のオークションで、3万ビットコイン近くを購入している。それにより、彼はさらに金持ちとなり、ブロックチェーン界の比較的切れる予測家にもなった。

起業家のLuis Cuende(ルイス・スエンド)氏とJorge Izquierdo(ホーヘイ・イスクエアド)氏が設立したAragonは、彼らが呼ぶところの世界初の「デジタル管轄区域」を設定し、デジタル組織の管理のためのツールと、インターネットでの紛争解決サービスを提供することを目指している。

2018年末の設立から現在までに、そのプラットフォーム上には1000件を超える組織が作られている。単にデータベースに企業を登録するのとは違い、ここには法的な争いが生じたときのために信頼できる第三者が存在する。

Aragonのトークン「ANT」は、ネットワークの管理運営に利用される。このネットワークの紛争解決サービスAragon Court(アラゴン裁判所)は、プラットフォーム上に247名の実際の人間の陪審員がいて、その数は増え続けている。彼らは独立した存在とされている。Aragon裁判所は2月10日に業務を開始した。「毎日新しい管轄区域を作ることなど不可能です。Aragonによって、この世界の統治は一変します」とドレイパー氏は声明の中で述べている。

ドレイパー氏は、行政改革の推進者としてもよく知られている。カリフォルニアを6つの州に分割しようというSix Californias運動を立ち上げたり、エストニアのeResidency(電子国民)プログラムに参加するなどしている。さらにティム・ドレイパー氏は、Aragonの諮問委員会に加わり、同プロジェクトを継続的に支援することになっている。ANTを持っている人なら、Aragon裁判所に参加できる。運用開始までに、すでに100万ANT以上が積み立てられた。

「Aragonは、インターネットの事実上の標準管轄区域になることを目指しています。その屋台骨になるのがAragon裁判所です。私たちは、ティムと仕事ができることを大変に嬉しく感じています。新しい管轄区域を作るとき相談すべき人物と言えば、ティムです」とスエンド氏は言う。彼が以前にビットコイン業界で立ち上げたスタートアップも、ドレイパー氏が支援している。

Aragonはまた、イーサリアムに問題が発生したことを受けて構築したAragon専用のブロックチェーン、Aragon Chain(アラゴン・チェーン)も発表している。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

 

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(翻訳:金井哲夫)

フィンテック企業のBuxが「ソーシャル」な暗号通貨投資プラットフォームBlockportを買収

アムステルダムに拠点を置き、投資をもっと身近にしたいと考えるフィンテック企業であるBux(バックス)は、ヨーロッパの「ソーシャル」な暗号通貨投資プラットフォームBlockport(ブロックポート)を買収した。

取り引きの内容は公開されていないが、Buxによれば、これにより独自ブランドの暗号通貨投資アプリ提供への道筋が固まったいう。BUXCrypto(バックス・クリプト)と名付けられたそのアプリは、Buxが事業展開している9つの国で、今年の第1四半期に運用が開始される。

さらに、Blockportの創設者と中核チームがBuxに合流し、Buxの暗号通貨が販売された際には「所有権が与えられる」と聞かされた。BUX Cryptoがローンチされると、ユーザーは、ビットコン、イーサリアム、XRPなど、さまざまな金融資産や市場にアクセスできるようになる。その際、Blockport Tokenは、BUX Tokenと名称が改められる。

「トークンはそのままプラットフォームに統合され、株取引手数料の割り引きがユーザーに提供される取引割引機能も保持されます。またユーザーは、将来利用可能になるプレミアムな機能にBUX Tokenを使えるようにもなります。例えば、高度ソーシャルコミュニティー機能です」(この機能が何なのかよくわからないが)。

この動きは、Robinhoodや、ある意味Freetradeとともに英国の公開市場における手数料なしの株取引の分野、そして間もなく暗号通貨でもBuxと競い合うRevolutとのようなライバル企業との関連性から見ても特に面白くなりそうだ。、もちろん、Robinhoodがヨーロッパでの展開を開始したらの話だが。

「Buxのユーザーは、以前から暗号通貨への投資に関心を示しており、私たちはBuxの使命と明確に一致する情熱と意欲に溢れるチームを招き入れる機会を得ました」とBuxのCEOで創設者のNick Bortot(ニック・ボートット)氏は声明の中で述べている。「ヨーロッパの若者たちが、もっと自分の資金を生かせるようにすることが私たちの使命です。BUX ZeroとBUX Xを、ヨーロッパにおける投資と株取引の拠点として根付かせ、豊富な実績のある暗号通貨のパートナーと手を組みBuxユーザーが期待するエクスペリエンスを提供する。私たちにとってそれは、自然の流れでした」。

その一方でBuxは、未来の金融エコシステムにおいて暗号通貨は「決定的な役割」を果たすことを確信していると話している。そして、暗号通貨資産クラスを手に入れることで、ヨーロッパのあらゆる投資需要に対して、Buxは自身を「360度のソリューション」として位置づけることが可能になるという。

BUX Cryptoは、暗号通貨取引業者としてオランダ中央銀行(DNB)に登録される予定だ。

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(翻訳:金井哲夫)

イーサリアムの従業員が北朝鮮の制裁逃れに協力したとして逮捕

米国時間11月29日、ニューヨーク州南部地区検事局は、イーサリアム財団の職員であるVirgil Griffithバージル・グリフィス)氏が逮捕されたことを発表した。北朝鮮に出向き「平壌ブロックチェーンおよび暗号通貨会議」でプレゼンテーションしたことで、謀議を企てたという嫌疑がかけられている。

具体的には、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対し、米国財務省の対外資産管理局からの承認を得ることなく、労務を提供したとされている。訴状によれば、グリフィス氏は事前に米国国務省に連絡を取ったものの、北朝鮮に対する経済制裁のため許可は得られなかった。それでもグリフィス氏は中国経由で北朝鮮に入国した。さらにグリフィス氏は「制裁の回避と資金洗浄のための暗号通貨技術」について議論したとされている。

FBIの特別捜査官は、2019年5月にグリフィス氏と面談した。これは任意の事情聴取であり、同氏の「ブロックチェーンと平和」というタイトルのプレゼンテーションについて捜査官と話をした。彼は訪朝時の写真を見せて、来年もまた同じ会議に参加したいと述べたという。

またグリフィス氏は、メッセージングアプリを使って、他の人ともプレゼンテーションについて話し合っている。「A氏は、要約すると、北朝鮮は暗号通貨についてどのような関心を持っているのか、と尋ねた。それに対してグリフィス氏は、要約すると『恐らくは制裁を回避するためだろうが、知ったこっちゃない』と答えた」と訴状は記している。

イーサリアムの創立者であるVitalik Buterin(ビタリック・ブテリン)氏は、グリフィス氏の逮捕についていくつかツイートしている。「私は、北朝鮮が悪事を働くのを、バージルが実質的に手助けしたとは思っていません。彼は『オープンソースソフトウェアに関して公開情報に基づいてプレゼンテーションした』だけなのです。ハッキングのための『高度な個別指導』をしたというようなことはありません」と書いている。

またブテリン氏は、イーサリアム財団は、グリフィス氏が北朝鮮に出向いたことと何の関係もないと主張している。「イーサリアム財団は金を出してもいないし、何の支援もしていません。みんなが止めたのに、バージルは個人として行ったのです」とブテリン氏は書いている。

米国時間12月3日、裁判官はこの裁判を進めるための十分な証拠がそろっていると裁定した。グリフィス氏は仮釈放される予定だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ブレンダン・アイク氏の画期的なブラウザーBraveの1.0版が登場

2014年に追放されるまでMozillaのCEOだったBrendan Eich(ブレンダン・アイク)氏が共同創設したBrave(ブレイブ)から、米国時間11月13日、バージョン1.0のブラウザーがWindows、macOS、Linux、Android、iOS用に公開された。ユーザーの選択権が奪われたブラウザー市場で、Braveは、強力なデフォルト設定でユーザーのプライバシーを守る確かな選択肢というポジションを決めている。同時にこれは、コンテンツの作者に報酬を支払える、暗号通貨中心のプライベートな広告や決済のためのプラットフォームでもある。

先月、同社が発表したように、現在は800万のアクティブユーザーがある。そのBrave  Rewards(ブレイブ・リワーズ)プログラムは、ユーザーとパブリッシャーとのオプトイン契約が必要だが、現在は30万のパブリッシャーが参加している。そのほとんどは、YouTubeやTwitterで少数のフォロワーを持つユーザーだが、ウィキペディア、ワシントンポスト、ガーディアン、スレート、LAタイムズのような大手パブリッシャーもこのエコシステムに含まれている。このシステムを使うと、すべてのパブリッシャーが望むわけではないが、ブラウザーは、ユーザーのブラウジングの習慣に応じて、プライベート広告のタブの中に、少数の広告を通知として表示する。するとユーザーは、広告主が支払った広告費の70%を受け取ることができる。ブレイブの取り分は30%だ。

ユーザーは、この広告を表示すると、ブレイブの暗号通貨であるBAT(ベーシック・アテンション・トークン)が獲得できる。それは自分で貯めてもいいし、パブリッシャーに寄付してもいい。当初、ブレイブはビットコインでこれを開始したのだが、アイク氏が言うように、途端に価格が高騰してしまった(しかも価格が上昇したため、ユーザーはビットコインを寄付せず、自分で貯め込んでしまった)。

またブレイブ内蔵の広告ブロッカーは、その広範囲に有効なトラッキング防止機能と並び、おそらく業界一の効力を誇る。「みんながトラッキングされているという感覚に悩まされ、悪質な広告を迷惑に感じています」とアイク氏は私に話した。「しかし、広告の美観には問題がないと私は思っています。問題は、さまざまなトラッキングとトラッキングのコストです。ページを読み込む時間が増え、トラッキング用のスクリプトを読み込むために無線を使い、そのスクリプトは広告を読み込むための別のスクリプトを読み込むためのスクリプトを読み込む。それでバッテリーも浪費されます」。ブレイブは、これらすべてをアンチトラッキング技術でひとまとめにする方法と、業界標準のブロックリストを超える広告のブロック方法を編み出し、さらに機器学習を使ってさらなるブロックのためのルールを特定したとアイク氏は主張している。

ウェブ上で完全に匿名でいたいユーザーのために、ブレイブにも他のブラウザーと同じようにプライベートブラウジング機能がある。しかし、Torネットワークでプライベートなセッションが開けるというオマケが付いている。これなら、ほとんどのすべての企業はユーザーを特定できなくなる。

基本的にブレイブは、単に高速で拡張可能なChromiumベースのブラウザーだ。それもユーザーへのウリになると同社は信じている。「ユーザーの獲得において(中略)最も多くのユーザーに訴求するのが、第一にスピードだと思います。しかし、スピードだけに任せておくことはできません。きれいな結び目であらゆるメリットをつなげてやる必要があります。私たちには、それがあります」と彼は言う。ブレイブにとって、スピードと広告とトラッキングからの保護は明らかに連携している。その他すべてのメリットも、そこから発している。

バージョン1.0の次を見据えて、ブレイブは、さらなる同期の改善を計画している。たとえば、タブと履歴の同期だ。また、ブレイブ・リワーズをもっと抵抗なく参加できる体験にすることも目指している。Android版ができる以前は、オプトイン契約率は40%前後だったとアイク氏は私に教えてくれた。彼らはそれを取り戻したいと考えている。

ブレイブを試してみたい方は、こちらからダウンロードしてほしい。

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(翻訳:金井哲夫)

暗号通貨に暗雲、SECがTelegramの17億ドルトークン売り出しを禁止

暗号通貨(仮想通貨)の暗いニュースが止まらない。米国証券取引委員会は緊急措置を申請し、Telegram(テレグラム)がブロックチェーンで17億ドル(約1842億円)ぶんのトークンを売り出す計画に対する禁止命令が発行された。

今回のSECの行動に先立ち、Facebookが計画する暗号通貨であるLibraを支援する企業提携から脱退が相次いでいた。

関連記事:FacebookのLibra AssociationからMastercardとVisa、eBay、Stripeが脱退

Telegramの野心的な創業者であるPavel Durov(パベル・デュロフ)氏は、Telegram Open NetworkをLibra同様世界の規制制度を離れた決済方法のひとつとして提供しようと考えていたとTechCrunchが初期に報じた

Telegramのトークン売出しは2018年1月以来準備が進められていたが、昨年半ばに問題が発生し、新しいプロトコルの将来はすでに危険にさらされていた。

SECの訴状によると、Telegram Groupと子会社のTON Issuerは、2018年1月に資金調達を開始し、ブロックチェーンのTONとMessengerの開発を始めとする同社のビジネスを支えようとした。

被告であるTelegramは、29億ドル(約3143億円)ぶんのトークンを初期投資家171人に割引価格で販売し、うち10億ドル以上を39人の米国バイヤーに売った。

Telegramは、2019年10月31日までにトークンを提供し、購入者はそれを市場で販売できるようになると言っていた。しかしSECの訴状によると、Telegramはトークンの提供と販売の登録を怠っていた。SECは同社のトークンを証券と考えている。

「本日の緊急措置は、われわれが違法に販売されたと考えるデジタル通貨を、Telegramが市場にあふれさせるのを防ぐことが目的だ」とSECの管理部門ディレクターであるStephanie Avakian(ステファニー・アヴァキアン)氏が声明で語った。「被告はGramsとTelegramの事業運営、財務状況、リスク因子、および証券法が定める管理方法などを投資家に提供していなかったことを、我々は断言する」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

デジタル遺言のススメ

このような記事を書くことにならなければ、どんなによかったかと思う。でも、最近こういったことを意識せざるを得ない、不幸な状況に遭遇してしまった。この時代における死というものが、複雑で困難な、技術的にもやっかいな状況をもたらすことがあることにも気付かされた。言うまでもなく、遺言は書いておくべきだ。遺志は文書にしておくべきなのだ。しかしほとんどの遺言は、故人の財産の処分方法を指示するものに過ぎない。もしあなたがいなくなったとき、あなたの人生の一面でもある、デジタル世界のものはどうなってしまうのか?

「デジタル遺言」や「デジタル遺産相続」といったものについての優れたガイドは、ネット上にもいろいろある。その中には、FacebookやGoogleのアカウントをどうすべきか、といったことが書かれている。そうしたリンク先にアクセスして、このようなテーマについて詳しく調べておくことをお勧めする。とりわけ、2、3の点については、しっかりと意識しておく価値があると思われる。

1つは、こうした用途にも、LastPassや、1Passwordといったパスワードマネージャの利用が有効であるということ。まず、それによって、あなたが利用しているオンラインアカウントの一覧がすぐに分かる。またそうしたサービスは、リカバリ機能を内蔵しているので、あなたの遺族や相続人に後を託すことができる。私が個人的に利用しているLastPassは、実際に「パスワードのデジタル遺言を準備する」ための詳細なガイドを用意している。1Passwordの場合には、この目的で利用するためのサードパーティによるガイドが存在している。

もう1つは、2段階認証の問題だ。もしも、事故に遭って、スマホやYubiKeyなども破壊してしまったとしたらどうだろう? あるいは、相続人がスマホのパスコードを解除できない場合にはどうなるのだろう? そうした状況に対しては、2FAバックアップコードを作成して、パスワードマネージャーの緊急リカバリキットに追加しておくのが有効だ。

技術的なレベルが高い人ほど、デジタル的な後処理は複雑なものになる。ほとんどの人にとって、問題となるのは電子メール、ソーシャルメディア、写真くらいのもの。しかし、技術的な仕事をしている人、特にデベロッパーなら、状況はもっとずっと複雑だ。まず、独自のドメインを持っているか? あなたの相続人は、そのドメインについて、さらにそれを登録したのがどこなのか知っているか?その相続人は、技術に明るいか? そうでない場合、彼らが状況を把握する前に、ドメインの有効期限が切れてしまうことも考えられる。あなたは、AWSやGCP、あるいはDigital Ocean上で実行しているサービスを所有しているか? もしくは、プライベートのGitHubリポジトリを持っているか? あるいは無視できないほどの数のスター、フォーク、イシュー、そしてWikiページを伴ったパブリックなリポジトリを持っているか? また、Slackのワークスペースを管理しているか?

上に挙げたようなことに心当たりがあるのなら、独立した「技術的遺言執行人」を指名した方がいいだろう。そうしたことをどう処理すべきか、執行人に指示を預けておくのだ。技術に詳しくない人は、仮にそうしたものにアクセスできたとしても、指示の意味を理解できないだろう。事前のわずかな準備が、あなたが遺したものを処理しなければならない人の仕事を、大幅にやりやすくすることがあるものだ。

最後に、あなたが個人的に保有しているかもしれない暗号通貨はどうだろう? 一般的に、暗号通貨のウォレットには、何らかのリカバリシードが付属している。あなたは、それをどこかの貸金庫に保管しているだろうか? あなたの相続人は、その貸金庫について知っているだろうか? もしあなたが、相続人にビットコインを引き継いでもらいたいなら、それについて知らせておかなければならない。もちろん、これにはセキュリティ上の代償もある。相続の対象となる金額によって、どれくらい用心すればいいのか、という程度も変わってくるだろう。

まとめておく。デジタル遺言について、さらによく調べ、実際に作成しておこう。どれかのパスワードマネージャーを利用しよう。それは、あなたのオンラインアカウントの明細としても機能する。そして、相続人が緊急用のリカバリキーにアクセスできるようにしておこう。相続人には、2FAバックアップコードも渡しておこう。もしあれば、暗号通貨のウォレットのリカバリシードについても知らせておく。また必要に応じて、技術的な遺言執行者を指名する。そして、これは非常に重要なことだが、何人かの信頼できる人に、あなたがしたことをすべて確実に知らせておこう。そうしておかないと、あまり意味がないのだ。

場合によっては、何らかのハードウェアの消失や災害に遭遇し、このような対策を取っていたことに自ら感謝したいような気になることもあるだろう。そういうことがなかったとしても、あなたの相続人は、間違いなくあなたに感謝するはずだ。私たちは誰も、突然何の前触れもなく、自分がこの世からいなくなってしまうとは考えていない。しかし私は、はっきりと言っておきたい。私が最近経験した残酷な現実からも分かるように、そうしたことは起こるのだ。準備は怠らないように。

画像クレジット:パブリックドメインライセンスによるWikimedia Commons

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Coinbaseが大口保有者の売買動向を提供へ

Coinbaseはその膨大なユーザーベースを活かして、人々の取引行動と価格の相関についてより詳しい情報を提供しようとしている。現在Coinbaseでは15種類の暗号通貨の取引が可能であり、この新機能から何らかの兆候をに読み取れるかもしれない。

価格と変動情報に加えて、ユーザーはCoinbaseの大口顧客が今どんな動きをしているかを見ることができる。それぞれの通貨について、買い/売りの比率がわかる。

舞台裏でCoinbaseは、保有残高が上位10%に入るユーザーの行動を追跡し、そのうち何人のユーザーが過去24時間に順位を上げたか下げたかを数える。データは2時間毎に更新される。

Coinbaseは他にも2種類のデータポイントを算出する。各通貨の平均保有期間と支持率だ。ここではCoinbaseの全ユーザーを対象に、特定の通貨を売ったり別のアドレスに送金したりする前にどれだけの期間保持しているかを調べてデータを提供する。

ただし、ユーザーがハードウェアウォレットやその他のセキュアなウォレットに資金を移動した場合はアカウントから消えてしまうので、Coinbaseはユーザーがもはやその資金を「保有」しているとは見なさない。

さらにCoinbaseは、価格データを監視することで、複数の通貨の間に価格の相関があるかどうかを調べる。この機能を使ってユーザーはバランスのとれた暗号通貨ポートフォリオを作ることができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

FacebookはLibraのプライバシー保護監督を依頼したと証言した規制機関に連絡していなかった(CNBC報道)

CNBCの報道によると、Facebook幹部のDavid Marcus氏が上院銀行委員会で同社の暗号通貨のデータ保護を監督すると証言したSwiss Federal Data Protection and Information Commissioner(FDPIC、スイス連邦データおよび情報保護委員会)は、同委員会に監督を依頼しているとされるFacebookから未だ何も聞いていない。

CNBCに寄せられた声明の中でFDPICの広報責任者、Hugo Wyler氏は次のように述べた。

Facebookの新会社Calibraの責任者であるDavid Marcus氏が、Libraのデータ保護を当委員会が監督する旨の発言をしたと聞いている。今日に至るまで委員会はLibra関係者から連絡を受けていない。われわれはしかるべき時が来たらFacebookあるいはその代理人から具体的な情報が提供されることを期待している。そうなって初めて、われわれは委員会の法律顧問および監督責任者としての任務を遂行することができる。いずれにせよ、われわれは公開討論における同プロジェクトの進展を見守っていく」

Facebookによる国の通貨政策を回避しようとしている行為は、すでに米国をはじめ世界の立法者たちから批判を浴びている。

「暗号通貨を作る計画を発表したFacebookは、同社のユーザーたちの生活に対して、歯止めのない侵入を続けている。同社が過去に起こしてきた問題を踏まえ、私はFacebookに対して、議会および規制当局が諸問題を調査し行動を起こすまで、暗号追加の開発を一時停止するよう要求する」と、下院金融サービス委員会委員長のMaxine Waters議員がFacebookの暗号通貨発表当日の声明で語った。

FRBのJerome Powell(ジェローム・パウエル)議長もFacebookとその暗号通貨計画に苦言を呈した。「Libraはプライバシー、マネーロンダリング、消費者保護、金融安定性などに多くの深刻な問題を引き起こす」と先週Powell氏は語った。

日頃は民間企業の自由競争的アプローチを擁護しているSteven Mnuchin(スティーブン・ムニューチン)財務長官でさえ、Libraに関してPowell氏と同様の懸念を表明している。

「ビットコインをはじめとする暗号通貨は、サイバー犯罪、脱税、脅迫、ランサムウェア、違法薬物、人身売買など数十億ドル規模の違法行為に悪用されている」とMnuchin氏は昨日(米国時間7/15)の記者会見で述べた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Libraはスイスの規制下に入るとFacebookが米国議会で証言予定

ブロックチェーンを扱うFacebookの子会社Calibraの代表のDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏は、米国時間7月16日、17日に予定されている米国連邦議会での証言に先立ち、その内容を公開した。これによると、Libra Associationは、本社を置くスイスの政府による規制下に入るとのことだ。それまでの間は、Libra AssociationとFacebookのCalibra Walletは米国の税制、反資金洗浄規制、不正防止に関する法律に準拠するという。

「Libra Associationは、認可を受け、規制に従い、監督当局による監視の下に置かれることを期待しています。Libra Associationはジュネーブに本社があるため、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)の監督下に置かれることになります」とマーカス氏は記している。「私たちはFINMAと予備会談を行いました。そして、Libra Associationのための適正な規制の枠組みの中で彼らと関わっていくことになります。またLibra Associationは、FinCEN(米国財務省の金融犯罪捜査網)に金融業者として登録する意向があります」

関連記事:Facebookは暗号通貨Libraを発表:知っておくべきこと(未訳)

米国の資金洗浄対策(AML)や顧客確認(KYC)の法律にLibraがどう準拠するかについては、マーカス氏はこう説明している。「Libra Associationも、規制当局、中央銀行、議員と同じように、資金洗浄やテロへの資金供与などをなくすための努力を行っています」。さらにマーカス氏はこう話す。「またLibra Associationは、AMLおよび銀行秘密法を尊重し、その政策と手続き、その他の国際的な安全保障上の法律を守り、テロリズムへの資金供与と戦います。Libraネットワークで金融サービスを提供したいと考える人たちにも、それに準拠してもらいます」

彼は、犯罪者は法の取り締まりを避けるために現金で取り引きを行うため、「Libraは、摘発と法の執行を後退させるどころか、強化します」と主張している。「不正行為が横行する紙幣取り引きのネットワークから、デジタルネットワークへの移行を促進します。そこでは、適正な顧客確認(KYC)の実行による出入り口の管理が機能し、法執行機関や規制当局にはオンチェーン取り引きの独自の分析を可能にする手段が与えられます。したがって、金融犯罪の監視と取り締まりの効力は増大します」

Facebook自身については、マーカス氏はこう書いている。「Calibraウォレットは、 米外国資産管理局(OFAC)が定めたAMLおよびCFT(テロ資金供与対策)プログラムのためのFinCENの規則に従っています。同様に、Calibraも銀行秘密法を遵守し、世界で採用されているKYCおよびAML、CFTの手法を採り入れます」

こうした答えは、金融法にうるさい人たちをなだめる役に立つかも知れないが、私は、議会からもっと主観的な質問がなされることを期待している。ケンブリッジ・アナリティカ事件のような、プライバシー上の約束を破ったりフェイクニュースを流すといった10年間にわたり不祥事を続けてきたFacebookを信頼できるかどうかだ。

そのため私は、Facebookがコミュニケーションの形を変革したとするマーカス氏の以下の声明で、その変革によって社会が混乱したと怒る議員たちと仲良くやれるようになるとは思えない。「私たちは、数十億の人々のための無料で無制限のコミュニケーションを数多く民主化してきました。同じことがデジタル通貨と金融サービスにも起きるよう、支援したいと思っています。しかし、ひとつだけ重要な違いがあります。私たちは、私たちが育ててきたネットワークと通貨の支配権を放棄します」。議会は「民主化」を「混乱」と解釈するだろう。だから、それがお金の世界でそれが起きることを、快く思わない。

FacebookとCalibraは、銀行口座を持たず、銀行や送金業者から多大な手数料を搾取されている貧困家庭を救済するという前向きな意図があるのかも知れない。しかし、Facebookは純粋な利他主義で動いているわけでもない。Facebookは大きく3つの方法でLibraから利益を得ることにしているが、それはマーカス氏の証言には示されていない。

  1. Facebookは、従来の通貨による、Libraの担保として保有するLibra準備金から得られた利益の一部を受け取る。Libraの人気が高まれば、数十億ドル単位にまで膨れ上がる。
  2. Libraを使えば簡単に安価にネット決済ができるため、マーケティング予算はFacebookやGoogleなどのチャンネルに効率的に変換されるようになり、インターネットでの商取引が増大し、Facebookの広告の売り上げも伸びる。
  3. Calibraを通して新しい金融サービスを販売する。可能性としては、Facebookデータを統合すればローンやクレジットを格安に利用できるサービスをユーザーに提供することで、債務不履行が減少し、他のプレイヤーよりも多くのマージンをFacebookが獲得できるようになる。

現実には、フォトシェアリングなどよりずっと大きな賭になる。規制当局の認可にも、適正で詳しい検査が必要になる。FacebookがLibraの所有権からいかに遠ざかろうとしても、それを立ち上げ、育ててきたFacebookが、今も引き続きプロジェクトを主導している。もし議会が、「大きいことは悪いこと」であり、LibraがFacebookをさらに肥大化させるとすでに信じ込んでいたのなら、FacebookとLibraを切り離して、その暗号通貨の利点とリスクを認識することは難しくなる。

マーカス氏の証言の全文は以下のとおり。

Libraの仕組みに関する詳しい解説は、下の記事をお読みいただきたい。

関連記事:Facebookは暗号通貨Libraを発表:知っておくべきこと(未訳)


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(翻訳:金井哲夫)

FacebookのLibraは暗号通貨よりむしろ信用紙幣、金融当局はシャドーバンク化を強く警戒

米国時間6月18日、Facebookは新しい暗号通貨システム、Libraと運営母体となるNPO、Libra Associationの設立を発表した。Libraのホワイトペーパーは他の暗号通貨ビジネスにも大きな反響を呼んでいる。ただし率直に表現すれば、LibraはBitcoinより銀行に近い。

メンバー限定のブロックチェーン

Libraはビザンチン・フォールト・トレランント性を組み込んでおり、マークルツリーによるハッシュ化を用いて取引記録の縮約を行うなど通常のBlockchainテクノロジーをベースとしている。

しかしBitcoinやEthereumなど現在ポピュラーな暗号通貨とは異なり、誰もが自宅で採掘のためのノードを動かすことができなるわけではない。Libra Association の正式メンバーだけがノードを持てる。現在ノード運営能力をもつメンバーは Vodafone、Mastercard、Visa、Stripe、Uber、Spotifyなど28社に限られている。

Libraは一見するとブロックチェーンだが本当に分散化されたブロックチェーンではない。取引内容を記録したレッジャーにアクセスできるのもLibra Associationの正式メンバーに限られる。Facebookないし運営協会のメンバーが公衆向けAPIを作れば別だが、 今のところLibraはオープンなプロダクトではない。

もちろん、Facebookはこの点を認識しており、5年以内に「誰もがノードを運営できるようにする」計画だと述べている。(略)

リセラーは事前認証が必要

Libraは安定した価値を提供するステーブルコインの一種だ。Libraは他種類の法定通貨や債権のバスケットとリンクしている。このためLibra Associationのメンバーが採掘ノードを稼働させて新たなLibraを創造する場合、非常に複雑な処理と監視が必要だ。また売却や保管は通貨や債権を金融機関が処理する方式に準ずる。

これと同様、ユーザーがLibraを米ドルと交換したい場合、Libra Associationは法定通貨の場合と同様売り注文を出さねばならない。

このため、Libraの売買にはLibra Associationに事前に認証されていなければならない。このためLibraのエコシステムにとってLibra Associationは運用の中心をなす規制団体となる。

これは暗号通貨の分散性の理想には反するものだ。消費者がLibraを利用して支払いを行いたいという場合、中小の金融機関は運営協会が認証したリセラーに仲介を以来する以外ない。Libra Associationはデジタルマネーに関するVISAやMastercardのような存在になる。

ただしUSDCなど他のステーブルコインも基本的に同様の考え方で運用されている。例えば、USDCを支払いサービスに利用したならまずCENTREコンソーシアムのメンバー資格を取得しなければならない。(略)

シャドー・バンキング

フランスのブルノ・ル・メール経済財務大臣が Europe 1のインタビューに答えて「Libraは(強制通用力を持った)法定通貨には絶対になり得ない」と強い口調で語った理由はここにある。 もちろんインフレ率の高い国ではステーブルコインであるLibraはヒットする可能がある。こうした場合、消費者だけでなく企業も取引に利用するようになるかもしれない。

しかし現在法定通貨を発行し、金融政策の舵取りをしている各国中央銀行はIMF(International Monetary Funds)のメンバーであり、営利企業の連合とは目的、性格が大きく異なる。

現在のLibra Associationのメンバーを考えれば。Libraが法定通貨に準ずる存在になる可能性はある。ベネズエラ、アルゼンチン、トルコ、南アフリカなど高インフレ率に悩まされている国で特にそうだ。しかしLibra Associationのメンバーは営利企業であり、金融政策の適切化を目的としていない。

EUは長年単一市場を目指してきたが、各国の予算、税制、金融政策に関して一致できたことは一度もない。同様に中国もシャドーバンキングの急激な拡大に伴い、金融におけるシステミックリスクに直面している。

Lbraは新たな巨大シャドーバンキングになる可能性があるため、各国政府は厳重な監視の必要性を感じている。民間企業の集合体であるLibra Associationはビジネス上の理由から一夜にして方針を変えかねない。例えば、Libraの価値を担保している信用紙幣と債権のバスケットからある国の信用紙幣を外す決定をするかもしれない。もし債権の売出しを始めたらどんな影響があるだろう?

要約すれば、Libra Associationが今後運営しようとしているのは準信用紙幣だ。すまり各国の金融当局とさまざまな面で激しい摩擦を予期しなければならない。安全なデジタルマネーを供給するというテクノロジー面だけでなく、いかにして金融政策との調和を図りながら組織を運営するかも困難な課題となるだろう。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

【以上】

Facebookの新暗号通貨プラットフォーム「Libra」を解剖する

米国時間6月18日、Facebookは独自の暗号通貨、Libraを発表した。プロジェクトの内容はTechCrunchの今月始めの予測とほぼ一致していた。LibraはFacebookが構築しようとしている新しい金融システムの一環となるものだ。

Libraを利用したウォレット・サービスのためにCalibraという子会社も設立された。またMastercard、PayPal、Visa、Uber、Andreessen Horowitz、Creative Destruction Labなど有力企業が提携先となっている。

FacebookのLibraイニシアティブは革新的、野心的である一方で大きなリスクもはらんでいる。実はLibraには先行する試みがあり、これと比較することがFacebookのビジョンを理解するために役立つとおもう。

ここで考えているのは英国ロンドン発のモバイルチャットサービスのKikと、そのソーシャルネットワークを利用した仮想通貨のkikkinだ。KinについてTechCrunchの読者に一番よく知られているのは、SEC(米証券取引委員会)に訴追を受けていることだろう。SECはKikが2017に実施したICO(暗号通貨による資金調達)を違法としている。KikはこのICOで1億ドルを調達したが、公衆からの資金調達に必要な認可をSECから得ていなかった。

KikのCEOであるTed Livingston(テッド・リビングストン)氏によれば「Kikが暗号通貨は通貨の一種でありSECの管轄外と考えているのに対し、SECは管轄内の証券の一種と考えていることによる」のが根本的な対立点だという。両者の主張の法的当否は別として(仮に通貨だとしてもKikには法定通貨を発行する権限がないのは明らかだ)、KinはFacebookが独自の暗号通貨を作った背景、仕組み、将来構想を理解するために役立つ。

Creative Destruction Labのイベントで先週、リビングストン氏は「我々には資金が必要だった」と語った。Kinはこの極めて差し迫った問題に対する回答だった。Kikではいくつか異なったマネタイズを試してきた。ひとつはCardsモデルで、これはモバイルメッセージアプリ内にHTML5で書かれたツールやゲームが利用できるエコシステムだ。これは中国のWeChatモデルに近い。

Kikは英国発のメッセージアプリとして大成功した(ただし子供を狙う犯罪者に愛用されているという指摘もあった)とはいえ、規模はFacebookとはかけ離れている。そのためFacebookのように安定した広告収入を得ることはできなかった。 LivingstonのCEOの回想によれば、2011年にKik はBitcoin(ビットコイン)を知り、「これが我々が探していたビジネスモデルかもしれない」と考えたのだという。

リビングストン氏は「ユーザーのコミュニティに自然な形で簡単、迅速に価値を交換できるため暗号通貨はKinのプラットフォームにとって大きな意味があると気づいた」と語った。Kinのコミュニティはクッキングなどメンバーの得意分野の知識を交換する場になっていたので、支払い手段として暗号通貨は適していた。

KikにとってカギとなったのはKinを利用することがユーザーにもデベロッパーにも利益となるようなモデルを構築できるかどうかだった。Kikやデベロッパーには当然ながらkinの普及を図る動機があったが、ユーザーがKinを利用したくなる動機とは別のものだった。リビングストン氏よれば、暗号通貨でサービス提供者とユーザーとの利益を調整するのは広告モデルのビジネスとは決定的に違うという。このため両者のインセンティブがまったく噛み合わないケースが出てくるのはわれわれもたびたび見てきた。

SECによる訴追も含めKinの将来については不確定な要素が多いが、上で述べた問題はすべてLibraにも当てはまる。両者の違いは規模だ。Facebookは成熟した大企業であり、それ自身の巨大な経済圏を持っている。Kikは暗号通貨を資金調達手段として利用した。これはすぐにも資金が必要だったからだ(そこでICOに飛びついた)。

Kikにはビッグネーム企業多数をプラットフォームに参加させ、自力で市場の構造そのものを変えるような力はなかった。見切り発車してコミュニティーに活用されることをデモし、投資家やパートナーが後から参加してくることに望みをつないだ。、

これに対し、FacebookはKikが持っていなかったものをすべて持っている。企業規模と市場支配力はプロジェクトのスタート当初から大企業をパートナーとして参加させるのに十分であり、背に腹は代えられない資金調達の必要にも迫られていない。もしプロジェクトが失敗しても機会損失というコスト生じるだけだ。また今後も相当期間、広告ビジネスからの安定した収入が見込める。

しかし根本的なレベルではFacebookとKikの暗号通貨プロジェクトは極めて似ている。 暗号通貨による決済プラットフォームは広告モデル以上にユーザーに利益をもたらし長期にわたって維持可能なビジネスモデルとなるという認識だ。

現在のところFacebookのLibraは広告ビジネスに対するリスクヘッジという意味が強い。これがFacebookの生き残りをかけたコミットメントに変わるときに真価が問われることになるのだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

CoinstarのマシンがスーパーマーケットでBitcoinを売り始める

スーパーマーケットに置かれていて、ペットボトルに溜め込んだ小銭をもっと使いやすいように、紙幣とかに交換してくれる機械のことは、もちろん知っているよね?あの機械が今度はBitcoinを売り始めようとしている。

この衝動買いの夢を叶えるために、小銭交換機械をそこここに設置しているCoinstarが、全国に暗号通貨ATMの小規模なネットワークを展開しているスタートアップのCoinmeと提携した

CoinstarのCEOであるJim Gaherityは、GeekWireで流された第一報の中で次のように述べている。「Coinstarはいつでも、キオスク端末の前にやってくるお客さまに、価値を提供する新しい手段を模索しています。Coinmeの革新的な提供機構とCoinstarの柔軟なプラットフォームによって、お客さまが現金で手軽にBitcoinを買うことが可能になります」。

全世界で2万台の機械を構えるCoinsterは、デジタル通貨の提供も可能にできる、巨大なネットワークを運用している。同社の発表にあるように「米国市場には、Bitcoin取引を引き受けることのできる機械が数千台存在している」が、当面はそこまでの規模で運用されることはないだろう。

一方Coinmeは、テキサス州、ワシントン州、そしてカリフォルニア州などを含む、11の州でデジタル通貨ATMを運用している。当初Bitcoinに対応する機械の台数は明らかにされてはいないが、Coinmeのサイトにはこの提携によって「Bitcoinを購入できる数千の場所」が生まれると書かれている。

私たちが試してみたときには、Coinstar Bitcoin設置場所検索ツールは具体的なキオスクの場所をまだ教えてくれなかったが、もし適切な設置場所を検索できるようになったら、更新された機械からBitcoinを購入することはとても簡単になるようだ。なお、この交換を行うためには現金が必要であることは注意しておく必要がある。他のデジタルマネーやクレジットカードを使って、暗号通貨を購入することはできるようにはならない。

紙幣を機械に挿入すると、新型のキオスク端末は、CoinmeでBitcoinに交換可能なコードが印刷されたクーポンを発行する。上限は2500ドルで、携帯電話番号をその取引にリンクする必要があるが、疑わしい操作を回避するために、登録できる電話が一台に限られるのかどうかははっきりしていない。

昨年の恐ろしい高騰と、痛みを伴う下落を経験した後では、暗号通貨のクールオフ期間はしばらく続くかもしれない。特に株式市場が皆をハッチの下に閉じ込め続けてしまうようなときにはなおさらだ。そうした状況を考えれば、今回のキオスクは、誰もが最初の暗号通貨をを買おうと複雑な手続きに四苦八苦していた2018年前半の最盛期にこそ、より多くの興味を引きつけることができただろう。まあそれでもCoinstarがどこにでもあることを考えれば、このBitcoinキオスク端末は、手元の30ドル分の10セント硬貨をまとめたい一部の買い物客たちの興味は刺激できるかもしれない。

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(翻訳:sako)

1月のCESに行くならTCミートアップを予約しよう――暗号化テクノロジーのハードがテーマ

新年早々、ラスベガスで開催されるCES 2019に参加予定の読者も多いだろう。TechCrunchはこの機会にスタートアップがプレゼンをするミニイベントを計画している。テーマは暗号テクノロジーを中心にしたハードウェアだ。コ・ワーキングサービス、Work In Progressの好意で200人のオーディエンスを収容できるスペースを確保した。

会場はWork In Progress, 317 South 6th Street Las Vegas、 日時は2019年1月9日(水)6:00 PM – 9:00PM(太平洋時間)。

ラスベガスのダウンタウン、フリーモントストリートエクスペリエンスの近くで、チケットは無料だが200枚しか用意できない。 先着順なので興味があるなら早めにチェックすることをお勧めする。予約はこちらから

このイベントでは各チーム3分、10チーム分の枠が用意されているので、応募多数の場合はわれわれの方でチームを選ぶことになる。ハードウェア・イベントなので実物を持参できることが望ましい。スライドの利用は禁止。ピッチ希望者はこちらの書式に記入して申し込む。選ばれたチームにはこちらから連絡する。

ではラスベガスでお会いしましょう。

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滑川海彦@Facebook Google+

Facebookがステーブルコインを始める? その前に知っておくべきこと

Bloombergが伝えるところによると、Facebookは、独自のステーブルコインの投入計画をひっさげて、ブロックチェーンの波に飛び乗ろうとしているようだ。

次から次へとプライバシー流出問題で騒がれ足元に火が点いた状態のソーシャルネットワークの大手Facebookは、5月にブロックチェーン部門を内部に設立したが、さまざまな憶測を呼びながらも、その本当の狙いは不明のままだ。

Bloomebergの記事は、その新部門から何が現れるのかを明確に示した最初のものとなった。さらに、それは「メッセージングアプリWhatsAppを使ってユーザー同士で金銭の移動ができ、最初はインドの送金市場にフォーカスをあてた」ステーブルコインであるという。

Facebookは、これに対して曖昧なコメントを返した。

「他の多くの企業と同様に、Facebookもブロックチェーン技術の力を役立てる方法を模索しています。この新しい小さなチームでは、さまざまな応用方法を探っています。私たちからは、これ以上は申し上げられません」と、FacebookはBloombergに対する声明の中で答えている。

もしこのアメリカの巨大企業が、Bloombergが報じたとおりの計画を実行した場合、それは時価総額3760億ドル(約41兆7600億円)、年間収入は400億ドル(約44億4000万円)にのぼり、事業規模においてもユーザー基盤においても、(たちまち)一般消費者向けブロックチェーン・サービスの最大手となる。Facebookには、その中核的ソーシャルネットワークに22億人以上、WhatsAppに15億人、Messengerに13億人、さらにInstagramに10億人のユーザーを擁している。

これは、しっかり知っておくべき話だ。

Facebookのブロックチェーン部門を率いるPayPalの元CEO、David Marcus。彼は、暗号通貨交換所Coinbaseの役員でもあった。

またひとつ新しいステーブルコイン

ステーブルコインは、今年の後半にブロックチェーンの世界で大流行した。数多くのプロジェクトが飛び出して、いろいろなソリューションを提示したのだが、まずその理由を考えてみよう。

ステーブルコインの考え方は簡単だ。法定通貨と連動する暗号通貨なので、価格の乱高下の影響を受けないというものだ。

プログラム可能で国境のない通貨としてのブロックチェーンには可能性があるが、安定性が大きな問題になっている。たとえばBitcoinは、1年前には2万ドル(約222万円)という高値をつけたが、現在は4000ドル(約44万4000円)をわずかに上回る程度だ。ただ注意すべきは、この数カ月間にそれよりも価格が下がっていたことだ。「アルトコイン」の場合は、さらに変動が激しい。

ステーブルコインは、Bitcoin、Ethereumなどのトークンを、銀行口座よりも早く買い入れることができる預け入れ方法を提供している。また、不安定なトークンからの利益の移動も可能になり、とくに、暗号通貨を他者(他の企業)に経費をかけずに送ることができることが大きい。

しかし、大変にシンプルな前提で、しかも多くの人たちが参入しているにも関わらず、実際に成功し、その価値を証明できたステーブルコインはいまだに存在しない。

もっとも注目を集めているTetherですら、経済的支援にまつわる心配に追い回されている。その背後にある組織は、そのトークンの価格が1ドルを下回っても、市場でその裏付けとするのに十分な法定通貨を用意しているか否かを明らかにしていない。

Tetherが苦戦する中、仮想通貨取引所がライバルのステーブルコインをローンチ


TechCrunchが11月に報告したとおり、いくつもの「Tetherキラー」が登場したが、王座を奪ったものはない。USD Coinは、CounbaseやBinanceなどの大手取引所で取引されるEthereumをベースとする暗号通貨で、時価総額2億3000万ドル(約255億5000万円)と二番目に広く利用されている。驚くべき規模だが、それでもTetherの180億ドル(約2兆円)の15パーセントにも満たない。そのギャップの大きさは明らかだ。

そして、規制の問題がある。

Andreessen HorowitzやBain Capitalといった大物投資家から1億3000万ドル(約144億4000万円)以上を調達したBasisは、設立から18カ月後の今月、廃業した。「ボンドトークンもシェアトークンも、有価証券ではないと認めざるを得ない」と判断したのが理由だ。

フィンテックのサービス

詳細はまだはっきりしないが、Facebookが推進するステーブルコインは、安定を強く望む暗号通貨の所有者に、技術を使ってそれ以上のものを提案することになりそうだ。

Facebookは、もしかしたら、膨大なユーザー数を誇るメッセージングサービスに、金融サービスや製品を追加する可能性がある。フィンテックは、信用力の調査方法が限られ、為替市場の価格が低いといった問題の改善にデジタル・プラットフォームやデータが有効な新興市場で急速に発達している。しかし、Facebookはそこに本格的に足を踏み入れたことがない。唯一あるのは、WhatsAppだ。インドではピア・トゥー・ピアの取り引きができるようになっているが、それを世界的に広げ、新しい金融機能を追加すると考えれば筋が通る。

安くて速い海外送金は、FacebookのCEO、Mark Zuckerbergがブロックチェーンの可能性に注目していると書いた1年前の記事で私が提唱したことだ。2017年の新年の抱負を聞いたとき、彼は暗号通貨とブロックチェーンを勉強して「我々のサービスにどう使うのがベストかを見たい」と話していた。

WhatsAppは、月間のアクティブユーザーが15億人を超える。そのうち約2億人を占めるインドでは、それは巨大な単一市場だ。インドはまた、世界銀行のデータによると、2017年には690億ドル(約7兆6660億円)を受け取った世界最大の送金先にもなっている。

送金以外にも、ステーブルコインはもっと多くの利点がある。デジタル製品やサービスの購入から、ピア・トゥー・ピアの支払い、もっと本格的な暗号通貨による取り引きや融資などだ。

明らかなのは、Facebookのブロックチェーン部門の仕事はまだ初期段階にあるということだ。現時点では、30名ほどの社員が配属されている。

チャットアプリが暗号通貨とブロックチェーンに参入

Bloombergが推測するようにプロジェクトが継続された場合でも、WhatsAppがブロックチェーン機能を持つ最初のメッセージングアプリとなるまでには時間がかかるだろう。しかし皮肉なことに、WhatsAppやFacebookのMessengerといった独占的地位にあるサービスに対抗するための手段として、他社が暗号通貨の機能を採り入れている。

カナダのチャットアプリKikは、2017年のICOを通じて1億ドル(約111億円)を調達して、独自のトークン「Kin」と、開発者用アプリをサポートするブロックチェーンを開発した。昨年、KikのCEO、Ted LivingstonがTechCrunchに話したところによれば、基本計画は、Facebookのような広告モデルではなく、ユーザーの注意や関わりを通して「ボジティブ」に利益をもたらすアプリを開発できるようにすることだという。収益は、さまざまなユーザー本位の基準で、Kinで支払われる。

Livingstonは、暗号通貨の弁明をするどころか、ブロックチェーン技術を「役立たず」だとする意見を批判した。Kikのアプリはまだブロックチェーン化されていないが、昨年の夏からベータ版のリリースを開始した。

KikのCEO、Ted Livingstonは、ブロックチェーンと暗号通貨が広告ベースのモデルに置き換わると信じている。つまり、より多くのアプリや製品が、金儲けのためではなく、消費者のために作られるようになるということだ。

日本のLINEアプリは、アジアの一部で人気が高いが、ブロックチェーンを導入し、独自の取引所暗号通貨投資ファンドを設け、「Link」というアプリ内トークンを使えるようにしている。ICOは行わず、Linkトークンをユーザーの間で流通させてさまざなに利用してもらい、売買も可能にしてゆく計画がある。Linkは、事実上LINEのサービスや製品の購入の手段となり、サードパーティーのサービスでも使えるようにしたいと同社は話している。

ロシアのFacebook的存在であるVKontakteの創設者Durov兄弟が開発したメッセージングアプリTelegramもそうだ。Telegramは暗号通貨業界で人気を高めており、ICOを通じて17億ドル(約1888億円)を調達した。大変に期待された公開だったが、結局のところ、対象は認定投資家に限られることになった。

しかし、非常に野心的な「非中央集権的」プラットフォームの目標について長々と書かれた白書に批判が集まっている。プロジェクトは目立たない形で進められ、一部には製品がリリースされる前に投資金を現金化した投資家もいると見られる混乱した現状は、ほとんど明かされていない。

もうひとつ、暗号通貨を採り入れたチャットアプリで注目すべきものが、Statusだ。非中央集権的チャットアプリとエコシステムを開発し、2017年にEthereumで1億ドル(約111億円)以上を調達した。Statusは現在使用可能だが、Coindeskによると、資金繰りがうまくいかず、100名いた写真のうち25パーセントを、今月、一時解雇したとのことだ。

その一方で、韓国最大のメッセージングアプリKakaoは、ブロックチェーン企業を所有している。将来の計画の詳細は不明だが、Kakaoはブロックチェーン企業に投資を行っている。

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(訳者:金井哲夫)