NASAが2022年の月への貨物輸送にMasten Space Systemを指名、同社の月着陸船XL-1と連携

NASAは月面探査プロジェクトのパートナーとして、Commercial Lunar Payload Services(商用月輸送サービス、CLPS)参加企業の中から、カリフォルニア州モハベを拠点とするMasten Space System(マステン・スペース・システム)を指名した。同社はNASAの依頼を受けて、科学以外および技術機器など8つの積載物を2022年に月の南極に運ぶ。

Mastenは、CLPSプログラムの下で月輸送契約を結んだ4番目の会社であり、NASAは2019年5月に、Astrobotic(アストロボティック)、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)、Orbit Beyond(オービット・ビヨンド)の3企業が月への積載物輸送を担当すると発表した。その後Orbit Beyondは契約を取り下げたが、AstroboticとIntuitive Machinesは今も、各社が製作した着陸船を使って来年それぞれの貨物を運ぶことを目標にしている。

今回のMastenとの契約は、CLPSプログラムの他の企業と同じく、月面に再び人間を送り込むNASAのプログラムであるアルテミス計画の一環だ。同プログラムでは恒久的な科学調査基地を設置し、究極的にはそれを火星やその先へと人間を送り込む足場として利用する。NASAはCLPSプログラムを通じて行っているような官民提携によって、月や火星のミッションを可能にするとともに、旅客輸送への商業的関心を引くことに焦点を合わせている。

Mastenの契約金額は7590万ドル(約82億7264万円)で、そこには積載物運搬作業すべてと、同社の月着陸船であるXL-1との連携が含まれている。月に着陸した後も最低12日間作業を続ける必要がある。XL-1が運ぶ貨物の中には、月面温度や放射能の測定とマッピング、水素その他水の存在を示す気体を検知するための機器がある。

Mastenが開発したXL-1は、その革命的デザインで2009年にNASAの100周年記念ノースロップ・グラマン月着陸船 Xプライズ・チャレンジに参加して優勝した。さらにMastenは、何種類もの垂直離着陸(VTVL)ロケットをNASAに代わって開発・飛行させており、テスト機のXaeroもその一つだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

次の月探査プロジェクトに期待してはいけない

私が育った家には、額に入れられた新聞の一面記事が飾られていた。そこには「MAN ON THE MOON」(人類、月に立つ)という見出しが、歓喜にあふれる重々しい書体で書かれていた。小見出しにはもちろん、あの「人類にとって偉大な飛躍」などの言葉が並んでいた。

一歩前進三歩後退。その新聞は50年前の7月20日に発行された。人間が低地球軌道以遠に行った最後のミッション、アポロ17号計画は1972年12月に実行された。現存する人類の大部分が生まれる前のことだ。

宇宙旅行はSF小説の出来事ではない。それは歴史書の中の、過ぎし日の、ざらついた白黒テレビの、私が子供のころすでに色あせていた新聞の中の出来事だ

いったい何が起きたのか?いろいろあるが結局のところコストがかかりすぎ、目に見える恩恵がなさすぎ、スペースシャトルがあらゆる意味で紛れもない大失敗だったからだ。

次は何が起きるのか?それには簡単な答えがある。もう一度行く!米国は2024年までに月面に初の女性を着陸させる!絶対に!

それを大いに疑っているあなたは実に正しい。

「月探査アーキテクチャー」すなわち再び月へ行く方法には数多くの種類がある。友人の物理学者で熱狂的宇宙愛好家で元浮遊技術者のCasey Handmer氏は、自身のブログで数カ月前からそれらの方法を紹介している。その1つがNASAの提案するLunar Gatewayで、月の軌道に宇宙ステーションを配置し、そこを拠点にして月面探査機が往復する。

これは良いアイデアなのか?まあ、1つのアイデアではある。それでも何かを計画してそれが進めていく方がなにもしないより良い。そうだろう?ただし、ここ数カ月間の相次ぐカオスを見ていると、現在NASAの月探査プログラムは混乱状態に陥っている。

例えば、ジョンソン宇宙センターのGatewayプログラム本部で公開された文法やスペリング間違いだらけの5ページからなる無記名書類には、

SLSあるいはその他の大型ロケットシステムを再設計して月面着陸に必要な装置を運ぶ現実的な方法はない。

などと書かれていることをArs Technicaが報じた(Handmer氏がブログで解説している)。そして今月NASAは、有人宇宙探査担当の幹部らを降格、交代させた

これが、時間どおり狙い通りの着陸を目指す月プロジェクトの発言に見えるだろうか?現状では2024年までに再び月に立つというNASAの計画を信じる専門家はほとんどいないという声もある。ほんとに!?
私は2024年までに女性が月面を歩くところをぜひ見たいと思っている。しかし、正直期待していない。2032年には最後の有人月探査から60年、3世代が過ぎる。もう月へ戻るべきではないと考える人たちもいる。もっとやるべき重要なことが地球にはたくさんあるからだという。私はそれには強く反対する。しかし、仮にもう一度月に行けたとしても、その時前回のことを覚えている人が誰もいなかったら、それはあまりにも悲しい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook