SPACE WALKERが5.5億円の資金調達、サブオービタルスペースプレーンの開発や複合材事業の体制強化

SPACE WALKERが5.5億円の資金調達、サブオービタルスペースプレーンの開発や複合材事業の体制強化

SPACE WALKER(スペースウォーカー)は3月31日、シードラウンドとして、コンバーティブル・エクイティおよび社債などによる5億5000万円の資金調達を2022年3月に完了したと発表した。引受先は個人投資家など。累計資金調達金額は12.16億円となった。

調達した資金により、サブオービタルスペースプレーン(有翼式再使用型ロケット)の技術実証、商用機開発、および新たに立ち上げた複合材事業への設備投資、これらに伴う人員強化、広告宣伝費などの運転資金などにあて、さらなる事業拡大を目指す。

スペースウォーカーは、誰でも飛行機に乗るように自由に地球と宇宙を往来する未来を目指し、持続可能な宇宙輸送手段を提供するために、サブオービタルスペースプレーンの研究・開発を行っている東京理科大学発スタートアップ。

また、2021年7月には複合材事業も立ち上げている。同社が宇宙開発において培われた軽量な複合材製容器は、宇宙のみならず、陸海空にまたがる脱炭素化社会に向けた水素サプライチェーン・プラットフォームの構築において、特に重要な要素である水素の貯蔵容器としても注目されているという。

スペースプレーン開発を手がけるSpace Walkerがガンダム×未来技術の新構想「ガンダムオープンイノベーション」に採択

スペースプレーン開発を手がけるSpace Walkerがガンダム×未来技術の新構想「ガンダムオープンイノベーション」に採択

持続可能な宇宙輸送手段となるスペースプレーンを開発する東京理科大学発ベンチャー企業Space Walker(スペースウォーカー)は3月29日、バンダイナムコグループによる「ガンダムオープンイノベーション」に採択されたと発表した。同社は3月28日、東京都中小企業振興公社による「令和3年度TOKYO戦略的イノベーション促進事業」にも採択されている。

ガンダムオープンイノベーションは、ガンダムの舞台となった時代「宇宙世紀」を現代に捉え直し、さまざまな社会課題を解決し、人類が望む未来社会を築くために、未来に向けたアイデアや技術を掛け合わせて夢や希望の現実化を目指すというバンダイナムコグループのプログラム。2021年6月に発表され、パートナーを募集していた。Space Walkerは、このガンダムオープンイノベーションで「エンターテインメント業界の皆さまと持続可能な社会に向けて共創することにより、社会にとってのより良い相乗効果を期待しています」と話している。

令和3年度TOKYO戦略的イノベーション促進事業では、「タイプ4超高圧複合容器蓄圧器の開発」を研究開発テーマに設定している。これは水素などの気体を高圧で保存するためのタンクで、金属を使わず、軽量な複合材料で作られる。Space Walkerでは、宇宙開発から生まれた高圧ガス複合技術を地上で展開する研究も行っている。具体的には、水素ステーションなどの超高圧水素ガスの貯蔵と移送のための技術だ。この事業では、低コストでの設置と使用が可能な水素ステーション用蓄圧器の開発を進めるとしている。

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功

東京理科大学は3月24日、太陽光発電と電気自動車(EV)の走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムを開発し、世界で初めて実車を用いた実験を成功させたと発表した。EVの普及と太陽光発電の大量導入を後押しする技術に発展することが期待されるという。

2020年、EVの停車中のワイヤレス充電の国際規格(SAE J2954)が制定され、走行中ワイヤレス給電(DWPT。Dynamic wireless Power Transfer)はその次の技術として期待されている。現在のEVは、大量のバッテリーを搭載しているために価格が高く、充電に時間がかかることが普及の足かせになっているが、DWPTが実現すれば、バッテリーは小さくて済み、走行距離を飛躍的に延ばすことが可能となる。すでに、DWPTが経済的に成り立つという試算が出されていて、高速道路だけでなく一般道にも導入が可能だとされている。しかし、太陽光発電とDWPTを組み合わせる技術的な研究は、世界的にもまだ進んでいない。

そこで、東京理科大学理工学部電気電子情報工学科の居村岳広准教授を中心とする研究グループは、太陽光発電とDWPTを組み合わせる際に必要となる回路と制御方法を開発し、実際に実験用道路に給電装置を埋め込んだ実車実験を行った。研究グループは、カーボンニュートラルの実現を目指す観点から電力網に接続しないオフグリッドでの太陽光発電を用いたシステムと、オングリッドのシステムの両面から研究を行っているが、今回実車実験を行ったのは、オフグリッドを想定したシステムだ。

コイルと太陽光発電と実車

コイルと太陽光発電と実車

オフグリッドのシステムは、道路脇に設置した太陽光パネルによる直流電力送電路「DCバス」に接続することが想定されている。オングリッドならば常に一定の電力を供給できるのだが、オフグリッドの場合、発電状況やEVの走行台数の変化によってシステムにかかる電圧が変動する。そこで、太陽光発電の出力を最大化する最大電力点追従制御(MPPT。Maximum Power Point Tracking)とDWPTのそれぞれに想定される負荷変動の周期のずれを吸収する電気二重層キャパシター(EDLC。Electrical Double Layer Capacitor)を、発電部分と給電部分との間に挟んだ。さらに、ワイヤレス給電のために直流電圧を高周波の交流に変換するインバーターの出力電圧波形を位相シフト制御して電圧調整を行った。これにより、発電電圧を最大に保ちながら、供給電力を一定に保つことができた。

東京理科大学、太陽光発電とEVの走行中ワイヤレス給電を組み合わせたシステムの実車実験に成功―世界初の実車を用いたシステム開発

コイルと回路

研究グループは、屋内の基礎実験でこのシステムの動作が検証できたところで、キャンパス内にDWPT実験用道路を作り、実際のEVの床下に受電回路を取り付けて走行試験を行った。その結果、車のボディーやアスファルトの影響が心配されていたが、大きな影響はなく、屋内基礎実験と同様に動作が可能であることが示された。これにより、電気二重層キャパシターとインバーター出力の位相シフト制御を使うことで、オングリッドの場合と同じように供給電力を一定に保てることがわかった。

日本では、2050年には300GW(ギガワット)の太陽光発電施設の導入を目指している。そうなると、昼間の電力量は需要を上回り、余剰電力が生まれるようになる。DWPTは、停車中充電に比べて電力吸収量が10倍以上と多いため、太陽光発電の大量導入時の余剰電力消費先として親和性が高く、余剰電力の負荷平準化に貢献できる可能性もあるという。

今回は動作原理の実証のため電力は抑えて行ったが、今後は、埋設したコイルの大電力伝送実験、雨水や海水の有無による影響の評価などを通して、社会実装に向けた研究を進めるとしている。

東京理科大学が効率的なバイクシェアリングの自転車再配置のための数学的手法を提案

電動キックボードシェア「LUUP」が京阪電気鉄道・京阪宇治駅にポート導入、京都府初のサービス提供開始
東京理科大学が効率的なバイクシェアリングの自転車再配置のための数学的手法を提案

配送車が自転車の回収と補充を行う際の例

東京理科大学は10月27日、バイクシェアリングで使われる自転車の再配置を効率的に行うための数学的手法の提案を発表した。バイクシェアリングでは、各ポートに置かれる自転車の数の偏りが問題になっている。それに対処したこの研究結果は「便利で快適なバイクシェアリングシステムの構築と運用を可能にする重要な基礎となる」とのことだ。

バイクシェアリングのポートでは、自転車が往復だけでなく片道だけで利用されることも多く、どうしても置かれる自転車の台数に偏りが出る。ポート数が少ない場合は、これまでにも適切な再配置を可能にするアルゴリズムが提案されていたが、ポート数が増えると、それが使えなくなるという問題があった。

そこで研究グループは、「これまで解決されなかった再配置作業の時間的制約や実行可能性などを踏まえ」、この問題をバイクシェアリングシステム・ルーティング問題(mBSSRP)として定式化し、ポート数が大きく増えても「現実的な時間内に最適解を求めることができないか」を考えた。

そして、これまで提案されていた「メタヒューリスティックな手法」を用い、mBSSRPの実行可能な解空間と、不可能な解空間を動的に探索する制御手法を導入したアルゴリズムを提案。これにより、mBSSRPの最適解を現実的な時間内で求めることに成功した。

東京理科大学工学部情報工学科の池口徹教授は「配置が偏った自転車に対して配送車の最適配置問題を効率よく解くための手法を開発することは、我々の現実社会における実課題としても解決すべき重要な課題と考えています。今回提案した手法により、便利で快適なバイクシェアリングシステムの構築・運用が可能となります」と話している。

この研究は、池口教授、博士後期課程2年の對馬帆南氏、日本工業大学先進工学部情報メディア工学科の松浦隆文准教授からなる研究グループによるもの。

月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

密閉した袋内で栽培されたレタス。写真左は収穫前の様子、写真右が地上に回収する前の様子

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月22日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」にて、将来の月面探査などにおける長期宇宙滞在時の食料生産を目指した、世界初となる袋型培養槽技術の実証実験を実施したことを発表した。これは、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」の共同研究提案公募の枠組みで、JAXA、竹中工務店、キリンホールディングス、千葉大学、東京理科大学によって2017年から行われてきた共同研究の一環だ。

袋型培養槽技術とは、小さな袋の中で植物を増殖させるというもの。密閉した袋の中で栽培されるため、雑菌の混入がなく、外に臭いが出ない。設備が簡易でメンテナンスしやすく、省エネルギーで、人数に合わせた数量調整も簡単に行えるコンパクトなシステムという特徴がある。今回の実験は、微小重力環境、閉鎖環境での有効性、水耕栽培や土を使った栽培と比べた優位性を確認するため実施した。

実証実験用栽培装置

実証実験用栽培装置

「きぼう」内の実験装置の設置場所

「きぼう」内の実験装置の設置場所

実験装置は、44×35×20cm、重量5kgという小さなもの。この中で、3袋のレタスの栽培が行える。内部にはISSの飲料水を無菌化して培養液を作り供給する装置と、生育状況を定期的に自動撮影する装置が組み込まれている。また袋の中の空気交換も行われる。

実験は、2021年8月27日から10月13日までの48日間行われた。9月10日にはレタスの本葉が確認され、その後、順調に成長して収穫に至った。今後は、レタスと培養液、生育記録を回収して、宇宙での適用可能性やこの栽培方式の優位性を評価するという。また、レタスが食用に適しているかを調べるとともに、培養液を分析して、ISSの環境制御・生命維持システムで再利用処理が可能かを確認する。

月面農場モデルイメージ

月面農場モデルイメージ

JAXAでは、地球からの補給に頼らず、月面に農場を設営して長期滞在のための食料を生産する研究を行っている。将来的には、この袋型培養槽技術を用いた宇宙船や滞在施設での大規模栽培により、持続的な宇宙活動に貢献できるよう研究を続けると話している。