YCが支援するBlocknomは「東南アジアのCoinbase Earn」を目指す

Y Combinator(Yコンビネーター)の2022年冬バッチに参加したBlocknom(ブロックノム)は「東南アジアのCoinbase Earn(コインベース・アーン)」になることを志す暗号資産稼ぎプラットフォームだ。同社は米国時間3月4日、Y Combinator、Number Capital(ナンバー・キャピタル)、Magic Fund(マジック・ファンド)からプレシード資金として50万ドル(約5800万円)を調達したと発表した。

Blocknomの共同設立者であるFransiskus Raymond(フランシスカス・レイモンド)氏とGhuniyu Fattah Rozaq(グニュ・ファタ・ロザク)氏によると、このアプリはユーザーに、年率最大13%の安定した高利回りの利息を得るための安全な方法を提供するという。同アプリは暗号資産インフラ企業のFireblocks(ファイアブロックス)と提携しており、ユーザーはいつでも手数料なしでお金を引き出すことができる。

2人の創業者は、新型コロナウイルス感染流行が始まった頃、2020年にオープンソースプロジェクトに取り組んでいるときに出会ったという。「ウイルス感染が流行している間に、私たちはインドネシアで暗号資産市場が活況であることに気づきました。その一方で、私たち2人はすでに暗号資産投資家でした」と、レイモンド氏はTechCrunchに語った。

「しかし、ユーザーと話してみると、誰もが取引でうまくいっているわけではないことがわかりました」。2人はDeFi(分散型金融)が安定的で高利回りの暗号資産による利得方法であることに気づいたものの、インドネシアには競合する製品がなかったため、自分たちで作ることにした。同社がDeFiで提携しているパートナーは、Compound(コンパウンド)、AAVE(アーベ)、Terra(テラ)、Cake(ケイク)などだ。

Blocknomにサインアップすると、銀行口座を持つユーザーはStablecoins(ステーブルコイン)を預金することができる。Stablecoinsは従来の銀行預金と最も同等であるため、新しい暗号資産ユーザーがアクセスしやすいように、同社の創業者たちが選んだ。

レイモンド氏によると、Blocknomが投資アプリと異なるのは、Stablecoinを保有して長期的に保持することを推奨している点であるという。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フィリピンの決済ゲートウェイPayMongoが約35.6億円のシリーズB調達、東南アジア地域での拡大狙う

PayMongoの創業者たち。CTOのJaime Hing III(ハイメ・ヒンIII)氏、CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏、CCOのLuis Sia(ルイス・シア)氏

マニラに拠点を置くフィンテック企業で、加盟店のデジタル決済を可能にするオンライン決済プラットフォームのPayMongo(ペイモンゴ)は、周辺地域での事業拡大を視野に入れ、シリーズBラウンドで3100万ドル(約35億5800万円)を調達したと発表した。参加した投資家には、Justin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏のJAM Fund、ICCP-SBI Venture Partners、Lisa Gokongwei(リサ・ゴコンウェイ)氏のKaya Foundersに加え、既存投資家のGlobal Founders CapitalとSOMA Capitalが名を連ねている。今回のラウンドには、Qonto、Viva Wallet、Billie、Scalableといった欧州のフィンテック創業者らも参加したとのこと。

これでPayMongoの累計調達額は4600万ドル(約52億7900万円)弱に達した。前回の資金調達は2020年に発表された1200万ドル(約13億7700万円)のシリーズAで、米国の決済サービス大手であるStripe(ストライプ)がリードした

同社はあらゆる規模の企業を対象としているが、特に零細企業、中小企業をターゲットとしており、銀行カード、デジタルウォレット、店頭取引など、さまざまな形態の支払いを受け付けることを可能にする。同社の製品には、PayMongo決済APIやeコマースプラグインなどがある。今回調達した資金は、PayMongoの現在の決済インフラをさらに発展させ、払い出し、資金貸し出し、BNPL(後払い)、サブスクリプションや定期支払いなどの金融サービスの追加に充てられる。

PayMongoの製品ロードマップの一部には、より多様な金融サービスの運営を可能にする新しいライセンスの取得が含まれている。同時に、地域的な拡大も模索しているという。

共同創業者兼CEOのFrancis Plaza(フランシス・プラザ)氏は、TechCrunchにメールでこう語った。「まだまだフィリピンで、やるべきことがたくさんあります。現在の需要の増加に対応し、積極的な製品ロードマップを実現するために、チームの規模を2倍以上にすることを見込んでいます。それと並行して、2021年に取りかかり始めた、東南アジア地域での事業拡大に向けた初期調査と足固めを開始しました」。

フィリピンには他にも、DragonPay、PesoPay、PayMaya、Paynamicsといったデジタル決済ゲートウェイがある。プラザ氏はTechCrunchへのメールで、PayMongoは2019年に設立されて以来、SMBや高成長のスタートアップ・企業にフォーカスすることで差別化を図っていると語った。

それ以上に、当社のプラットフォームを利用している何千もの企業と協力しながら、マーチャントが簡単に支払いを受けられるだけでなく、他の金融サービスにアクセスして成長できるような、より多くの製品やサービスを構築することを目指しています」と同氏。「送金機能から、残高の保存、クレジットへのアクセスまで、そして顧客にとっての支払い方法の選択肢を広げることができます」。プラザ氏はさらに、いくつかの新しい製品やサービスを、すでに加盟店とともにベータ版としてテストしていると付け加えた。

Tinder(ティンダー)やJAM Fundの創業者であるJustin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏は声明で次のように述べた。「PayMongoの最初の投資家の一人として、私は彼らがひと握りの企業の決済を簡素化したところから、今では何千もの加盟店が日々の業務で頼りにしている会社になるまでの道のりを見てきました。彼らの成長にワクワクするとともに、デジタル経済を通じてより大きな経済機会を生み出すチームを再びサポートできることを嬉しく思っています」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Den Nakano)

2022年、注目すべき東南アジアのスタートアップ

東南アジアのスタートアップや資金調達の話を取材している私にとって、2021年を表す言葉としては、「whoa!(うわぁ!)」がぴったりだ。2021年は、世界の投資家がこの地域の技術エコシステムに注目し始めただけでなく、実際に資金を投入し始めた年でもあった。

国際的なパートナーに支えられて、Alpha JWCAC VenturesJungle Venturesなどの東南アジアに特化したVCが、過去最大の資金を調達した。

関連記事:インドネシアのVC、Alpha JWCが490億円の第3号ファンドを組成、東南アジア最大のアーリーステージ対象のVCファンドに

The Kenの報道によると、Grab(グラブ)やSea(シー)のIPOのようなエグジットが東南アジアのスタートアップエコシステムへの関心を高める中で、米国のVCであるA16z、Valar Ventures、Hedosophia、Goodwater Capitalなども、地域事務所を設立している(あるいは設立を計画している)。Golden Gate Venturesの包括的なレポートでは、BとCラウンドの増加もあって、記録的な数のエグジットを予測している

「東南アジア」という言葉を使うのは、いつも少し気が引けているのだが、それはこの地域があまりにも大きく複雑だからだ。もちろん簡潔に表現したい場合には一番簡単な選択肢なのだが。東南アジアは11カ国で構成されていて、たとえばシンガポール、ミャンマー、ラオス、ベトナム、フィリピン、インドネシアの間には当然ながら大きな違いがある。

グローバルな金融センターとして知られるシンガポールのスタートアップエコシステムは、近隣諸国と比べると独自のカテゴリーに属していると言えるだろう。特にインドネシアは、世界第4位の経済大国であり、人口2億7350万人に達する東南アジアで最も人口の多い国であるため、特別な注意が必要だ。両国とも2021年にはかなりの数のユニコーンを輩出している。たとえばシンガポールでは、Ninja Van(ニンジャバン)、Carousell(カルーセル)、Carro(キャロ)、Nium(ニウム)などがユニコーンのステータスを獲得したスタートアップだ。

シンガポールのスタートアップは他の東南アジア諸国(Niumの場合は米国とラテンアメリカ)に焦点を当てる傾向があるが、一方インドネシアを拠点とする創業者たちは、中長期的な国際展開計画を持っていたのかもしれないが、私が話をした創業者の多くは、少なくとも来年は国内展開に焦点を当てる計画のようだ。インドネシアは広大なだけでなく、地理的にも複雑で、1万7000以上の島があり、そのうち約6000の島に人が住んでいる。通常スタートアップ企業は、グレーター・ジャカルタ地域で事業を開始した後、バンドンやスラバヤなどの主要都市に進出する傾向があったが、特にフィンテックやeコマースのスタートアップ企業を中心に、いまや多くの企業が小規模な都市に注目している。

以下にご紹介するのは、2021年に飛躍し2022年に注目すべきいくつかの分野だ。

投資用アプリ

ミレニアル世代や初めての個人投資家を対象とした多くの投資アプリが、2021年初めに小規模なアーリーステージのラウンドで調達を行ったが、数カ月後にはそれよりはるかに大きな追加調達が行われた。例えばインドネシアを拠点とする暗号資産に特化したPintu(ピントゥ)、ロボアドバイザーのBibit(ビビット)、Ajaib(アジャイブ)、Pluang(プルアン)、シンガポールを拠点とするSyfe(セイフ)などがある。

インドネシアでは、個人投資の割合はまだ比較的低いが、その数はパンデミック期間中のファイナンシャル・プランニングへの関心の高まりと、株式インフルエンサーの人気によって、一部の人たちからの懸念にもかかわらず、増加している

インドネシアの中小企業に特化したスタートアップがフィンテックを深化させる

政府の発表によると、インドネシアには6200万社の中小企業(SME)があるとされているが、複数の創業者から聞いたところによると、特に家族経営の企業や個人事業主は計上されていない可能性があるため、この数字は実際よりも低くなっている可能性があるという。その正確な数はともかく、中小企業の多くはエクセルや紙の台帳で会計処理をしているため、技術系のスタートアップにとっては絶好の機会が広がっている。

最も注目すべきは、競合する2つの簿記アプリのBukuWarung(ブクワルン)とBukuKas(ブクカス)が、2021年多額の資金を調達したことだ。両社とも、当初は中小企業のデジタル化を支援することに注力していたが、最終的には、ユーザーがソフトウェアに入力したデータを利用して信用力を判断し、運転資金の融資などの金融サービスに製品を拡大する予定であるという点で互いに似通っている。

中小企業を対象とした他のスタートアップには、賃金前払いや給与管理のプラットフォームのGajiGesa(ガジゲサ)やWagely(ウェイジリー)などがある。

ソーシャルコマース

インドネシアの大都市に住んでいる人には、eコマースのプラットフォームの選択肢が多いのだが、地方では選択肢が少なくなる。これは、物流インフラが細分化されていることが一因で、商品の受け取りにコストと時間がかかることが問題なのだ(ただし、SiCepat[サイセパット]、Advoctics[アドボクティクス]、Kargo[カーゴ]、Waresix[ウェアシックス]などのスタートアップ企業もこの問題に取り組んでいる)。

そこで、中国のPinduoduo(拼多多、ピンドゥオドゥオ)やインドのMeesho(ミーショ)の成功をこの地で再現しようと、Super(スーパー)、Evermos(エバーモス)、KitaBeli(キタベリ)といったソーシャルコマースのスタートアップが登場している。いずれも、日用雑貨や食品などの生活必需品を対象としていて、同じ地域に住む人たちがまとめて注文を行うことで、サプライチェーンをより効率的かつ安価にするソーシャルコマースモデルを利用している。その意味では、少なくとも部分的には物流のスタートアップと呼ぶことも可能だ。

eコマースアグリゲーター

Thrasio(スラシオ)のように、小規模なeコマースブランドを買収するスタートアップ企業は、数年前から欧米で多くの資金を集めてきた。しかし、このようなeコマースアグリゲーターが東南アジアに進出するには、ある程度の時間が必要だった。

2021年、2つのeコマースアグリゲーターがベンチャーキャピタルからの資金提供を受けて正式に発足し、数ヵ月後にはどちらも追加の資金調達ラウンドを実施した。多くのeコマースアグリゲーターがAmazon(アマゾン)の販売者を中心に活動しているのに対して、Una Brands(ウナ・ブランズ)は「セクターは問わない」としている。アジアパシフィックを横断する有力なマーケットプレイスが存在しないため、同社はTokopedia(トコペディア)、Lazada(ラザダ)、Shopee(ショッピー)、Rakuten(楽天)、eBay(イーベイ)などのプラットフォームからブランドを探すシステムを開発した。一方、Rainforest(レインフォレスト)は、アジアのAmazon販売者に焦点を当てているが、消費財のコングロマリットであるNewell Brands(ニューウェル・ブランド)のオンライン版を目指すことで、他のアグリゲーターとの差別化を図っている。アジアを拠点とするeコマースの販売者が多いことから、Una BrandsとRainforestの両方が成長し、他のアグリゲーターが登場することも期待される。

画像クレジット:Abdul Azis/ Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

アリババの東南アジアECモールLazada、年間アクティブコンシューマー数1億3000万人を達成

Alibaba(アリババ)は、中国以外の国の顧客にも同社のeコマースサービスを提供することを常に目指してきた。その戦略は多面的だ。ECの巨人が自社開発したAliExpress(アリエクスプレス)は近年、ロシアで成功を収めている。2016年には、Rocket Internet帝国から生まれたLazada(ラザダ)を買収し、東南アジアに特化したマーケットプレイスの競争力を高めている。

12月16日に行われたAlibabaの投資家デーでのプレゼンテーションによると、Lazadaは9月までの18カ月間で80%成長し、年間アクティブコンシューマー数(AAC)が1億3000万人に達した。9月時点の月間アクティブユーザー数(MAU)は1億5900万人で、AACよりも多いのは、Lazadaを利用するすべてのユーザーが最終的に商品を購入するわけではないからだろう。

中国の姉妹アプリであるTaobao(淘宝网、タオバオ)と同様に、Lazadaはライブストリーミングやゲームなどのエンターテイメント機能を導入しユーザーを引きつけて、純粋なショッピングアプリ以上のものにしようとしている。

Lazadaは、2021年に210億ドル(約2兆3880億円)の商品総額(GMV、経費を差し引く前の売上額)を記録した。また、9月の時点で、92万2000の出品事業者(その多くは中国からの出品者)が毎月活動しており、その規模は1年前の2倍以上になっている。

東南アジアのデジタル経済の発展の一翼を担おうとしている中国の大手企業は、Alibabaだけではない。Alibabaの宿敵であるTencent(テンセント)は、LazadaのライバルECプラットフォームであるShopee(ショッピー)を運営するSea Groupの主要投資家の1つだ。2020年、Seaは354億ドル(約4兆255億円)のGMVを記録した。

Alibabaのもう1つの中国の競合企業JD.comは、インドネシアのEC部門であるJD.IDが2020年初頭にユニコーンの評価額まで上昇したことがTechCrunchの取材でわかった。

画像クレジット:Lazada

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

東南アジアの多通貨ネオバンクYouTripが約34億円調達、法人カードも発行

多通貨取引のコスト削減と効率化に特化した、シンガポールを拠点とするオンライン銀行のYouTrip(ユートリップ)は現地時間11月30日、シリーズAで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。

同社創業者でCEOのCaecilia Chu(カエシリア・チュー)氏によると、今回のラウンドは、アジアの著名なファミリーオフィスがリードしたもので、このファミリーオフィスは匿名を希望しているが、前ラウンドにも参加している。

今回のシリーズAにより、YouTripの資金調達総額は6000万ドル(約67億円)を超えた。同社によると、これまでに全世界で8億ドル(約902億円)超のカード利用を処理し、取引数は約2000万件、アプリのダウンロードは150万回を超えている。

チュー氏はTechCrunchに対し、YouTripが資金調達に踏み切ったのは「変曲点」に達しているからだと述べた。

「東南アジアがパンデミックから脱却し、シンガポールがワクチン接種率で先頭に立っていることから、消費者の間では、旅行に対する大きな需要の高まりと、消費者心理の回復が見られました。eコマースへの支出は確実に増加しており、旅行に関しては、シンガポールのワクチン接種済みトラベルレーンが始まって以来、1日の取引額が少なくとも2〜3倍に増加しています」。

YouTripはこうした追い風を楽観視しているが、旅行の回復については現実的なアプローチをとっている。中期的には、個人消費と、YouBizと呼ばれる複数通貨対応の法人カードを含む新しいB2Bビジネスに最も期待しているとチューは述べた。

YouTrip共同創業者でCEOのカエシリア・チュー氏

2022年、YouTripは地理的拡大にも注力する計画だ。現在、シンガポールとタイで事業を展開している同社は、フィリピンとマレーシアに進出するためにVisa(ビザ)と提携した。さらにチュー氏は、インドネシアとベトナムでのサービス開始に向けて、パートナーと話し合いを進めていると付け加えた。

TechCrunchが2019年にYouTripを取り上げたとき、コアな顧客層の1つは海外旅行者だった。そして新型コロナに見舞われ、同社は非常に迅速に適応しなければならなかった。

YouTrip Perksのような新機能を追加し、LazadaやShopeeといった業者と協力して最大15%のキャッシュバックを提供するパートナーシップチームを立ち上げた。「パンデミックの間、人々はオンラインで多くのものを購入していただけでなく、健康への意識も高まっていたため、スポーツ用品や健康補助食品の購入が増えました」とチュー氏は話す。「私たちは、ユーザーにとって最も関連性の高い業者をターゲットにして提携を促進してきました」。

同社によると、現在、取引額はパンデミック前のレベルに戻っている。YouTripは、消費者の支出や旅行の増加にともない、さらなる牽引力を期待しており、2022年初めに消費者向けアプリのブランドイメージを一新し、新たな決済機能を導入する予定だ。

また、法人向けカードであるYouBizも2022年初めに導入する予定だ。チュー氏は、同社がB2B分野に参入した理由の1つとして、フィンテックサービスを導入する中小企業が増えていることを挙げる。

「私たちは、パンデミックに強い企業になることがどれほど重要かを知っています」と同氏は付け加えた。「国境がいつ再開されるかと毎日ニュースを読むのはやめようと心に誓いました。私たちは、新しい旅行対策に関わらず乗り越え、成功させ続けます」。

同社はまた、中小企業におけるパラダイムシフトを目の当たりにした。

「彼らはフィンテック商品や新しい銀行商品に対して、よりオープンマインドになっています」とチュー氏は指摘する。「当社に関連して言えば、在宅勤務やハイブリッドモデルの普及により、企業の分散化が進んでいます。給与支払い、ベンダーへの支払い、さらには売上の受け取りや消費者への請求までもが世界中に広がっており、外貨のニーズは確実に高まっています。ですので、この市場に参入するには最適な時期だと感じています」。

YouBizの提供が始まれば、YouTripは、AspireSpenmoVolopayなど、法人カードを提供したり、中小企業分野に焦点を当てたりしているVCが支援する東南アジアのフィンテック企業数社の仲間入りをすることになる。しかしチュー氏は、中小企業向けのサービスは消費者向けのサービスに比べて巨大であるだけでなく「サービスが十分に行き届いていないため、大きなチャンスがある」と話す。

特にYouTripは、従業員数1人から1000人までの企業にフォーカスする計画だ。このセグメントを選んだ理由は、YouBizが従来の銀行口座の代わりになるものではないからだ。YouBizは、中小企業の外貨取引にかかる費用を削減することを主な付加価値としている。また、出張の再開を見据えて、経費管理ツールの導入も予定している。

「中小企業の部門では、1人勝ちにはならないと感じています。しかし、競争の話に戻ると、私たちはこの分野に注意深く参入しています。当社には、際立った2つの優位点があります。1つは、テックインフラとライセンスインフラをエンド・ツー・エンドで所有している唯一のネオバンクであることです」。

YouTripは「消費者向け決済サービスではマージンが非常に小さいため、最高のコストと価値を提供するためには、製品のロードマップを含めて、バリューチェーンを完全にコントロールできるレベルまで最適化する必要がある」として、自社の技術スタックに多くの投資を行った。

YouTripの2つ目の強みは、すでに強いブランド認知があることだ。「ビジネスオーナーと話をしていると、多くの人が自分の買い物のためにすでにYouTripを利用しています」とチュー氏はいう。この実績は、YouTripが中小企業に売り込む際に役立っており、チュー氏によれば、B2Bサービス開始に向けてすでに1000件の申し込みがあるという。

画像クレジット:YouTrip

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

インドネシアのVC、Alpha JWCが490億円の第3号ファンドを組成、東南アジア最大のアーリーステージ対象のVCファンドに

Alpha JWC共同創業者のジェフリー・ジョー氏とチャンドラ・チャン氏(画像クレジット:Alpha JWC)

ジャカルタに拠点を置くベンチャーキャピタルAlpha JWCは、第3号ファンドを4億3300万ドル(約489億円)で組成したことを発表した。同社によれば、当初の目標額だった2億5000万〜3億ドル(約283億〜339億円)を上回る応募があり、結果としてアーリーステージのスタートアップを対象とした東南アジア最大のVCファンドとなったという。この3つ目のファンドの出資者には、世界銀行の国際金融公社(IFC)が含まれている。また、Alpha JWCの最初の2つのファンドのパートナーの大半が出資をしている。

共同創業者でゼネラルパートナーのJefrey Joe(ジェフリー・ジョー)氏は、Bukalapak(ブカラパック)やSea Group(シー・グループ)のIPOのような注目を集めたイグジットのおかげで、グローバルな投資家から東南アジアへの関心が高まり始めていると述べている。

そしてTechCrunchに「米国のような先進国の市場に比べても、十分な価値を生み出すことができることを示しています」と語る。また彼は、Alpha JWCのポートフォリオ企業であるAjaib(アジャイブ)、Kredivo(クレディボ)、Carro(キャロ)を含む多くのスタートアップが、比較的短期間でユニコーンの地位を獲得したことから(投資アプリのAjaibは、ローンチから2年半でユニコーンとなった)、投資家の新たな関心の波が2020年から始まっていると付け加えた。Alpha JWCは、上記3つのスタートアップの最初の機関投資家だったのだ。

関連記事:インドネシアのミレニアル世代を対象にする投資アプリAjaibがシリーズAで約71億円を調達

Alpha JWCは現在、3つのファンドで合計約6億3000万ドル(約712億円)の資産を運用している。この1年間で、投資先企業はこれまでに合わせて10億ドル(約1130億円)以上の資金を調達しており、大部分がアルファJWCの最初の投資から1年以内に追加の資金調達を行っているという。

同社は、アーリーステージ(プレシード、シード、プレシリーズA)への投資を行っており、スタートアップの資本政策表上で最初の機関投資家となることが多い。ジョー氏によれば、Alpha JWCのパートナーたちは、米国の投資家を紹介したり、経営陣の育成を支援するなど、ポートフォリオ企業が後期段階に入ってからも緊密に連携している。

Alpha JWCは、2016年に第1号ファンドを5000万ドル(約56億5000万円)で立ち上げ、23社に投資した。その第2号ファンドは2019年に1億4300万ドル(約161億5000万円)で組成され、30社の支援に使われた。同社によると、第1号ファンドのTVPI(Total Value-to-Payed-In、投資倍率)は3.72倍に達し、IRR(Internal Rate of Return、内部収益率)は約37%となっている。その第2号ファンドのパフォーマンス指標はさらに高く、TVPIは3.45倍、IRRは87%となっている。

第3号ファンドの大半はインドネシアのスタートアップ企業に充てられるが、シンガポール、マレーシア、ベトナム、タイ、フィリピンなど他の東南アジア市場でも、インドネシアへの進出を目指す企業を中心に投資が行われる。投資額は、数十万ドル(数千万円)から複数のステージで構成される最大6000万ドル(約67億8000万円)までの範囲となる。Alpha JWCの第1号ファンドと同様に、第3号ファンドでも25~30社程度のアーリーステージのスタートアップ企業を対象とし、セクターを問わないアプローチをとる。

共同創業者でゼネラルパートナーのChandra Tjan(チャンドラ・チャン)氏は「現時点では、セクターに特化する必要はないと考えています」と語る。「市場はまだ若く、非常に高い可能性を秘めており、私たちが地元のチャンピオンを獲得できる産業はたくさんあります。とはいえ、私たちが本当に好んでいる分野は、ソフトウェアサービス、フィンテック、O2Oモデル、ソーシャルコマースです」。

Alpha JWCによると、コーヒーチェーンのKopi Kenangan(コピ・ケナガン)、B2BマーケットプレイスのGudangAda(グダガダ)、消費財メーカーのLemonilo(レモニロ)、中小企業向けデジタルファイナンスプラットフォームのFunding Societies(ファンディング・ソサイエティ)など、少なくとも11社のポートフォリオ企業がユニコーンのポジションに近づいているという。

デジタル導入は、いまだにジャカルタなどの大きな都市が中心となっているものの、ジョー氏はインドネシアの小さな市や町が急速に追いついてきているという。「第2、第3レベルの都市たちが猛追しています。そうなれば私たちの潜在能力が発揮されて、デジタルエコシステムの超々大規模成長が見られることになるでしょう」。

ジョー氏は、Ajaibのようにより優れたマネタイズプランや戦略、より強力なファンダメンタルズを早い段階で示すスタートアップが現れ始めているという。これにより、イグジットが明確になり、より多くの投資家が地域に集まってくることになる。

チャン氏は「私たちはAjaibの最初の機関投資家でしたが、創業者たちは当初から、ユーザーを獲得するためにお金を使うだけではなく、非常に強いファンダメンタルズを打ち立てるために努力をしていました」という。

IFCの東アジア・太平洋地域担当ディレクターのKim-See Lim(キムシー・リム)氏は、Alpha JWCの第3号ファンドへのIFCの投資に関する声明の中で「IFCとAlpha JWC Venturesとのパートナーシップは、インドネシアの経済発展とデジタルトランスフォーメーションに対する我々の長期的なコミットメントを明確にするものです」と述べている。

関連記事:Predicting the next wave of Southeast Asia tech giants

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

シンガポールのエドテックDoyobiは教師を通じて子供たちのSTEM教育に貢献

EdTechブームは主に学生を対象としているが、教師も学ぶ者の1人だ。シンガポールを拠点とするプロフェッショナル開発プラットフォーム「Doyobi(ドヨービ)」は、教育者がSTEM科目(科学・技術・工学・数学)を教えるための新しい魅力的な方法を提供したいと考えている。このスタートアップ企業は米国時間10月21日、Monk’s Hill Ventures(モンクス・ヒル・ベンチャーズ)が主導したプレシリーズAの資金調達で、280万ドル(約3億2000万円)を調達したことを発表した。

今回のラウンドには、Tres Monos Capital(トレス・モノス・キャピタル)、Novus Paradigm Capital(ノーヴァス・パラダイム・キャピタル)、XA Network(XAネットワーク)の他、Carousell(カルーセル)の最高経営責任者であるQuek Siu Rui(クエック・シウ・ルイ)氏、Glints(グリンツ)の共同設立者であるOswald Yeo(オズワルド・ヨー)氏とSeah Ying Cong(シーア・イン・コン)氏、Grab Financial Group(グラブ・ファイナンシャル・グループ)の代表であるReuben Lai(リューベン・ライ)氏などのエンジェル投資家が参加した。

Doyobiのプラットフォームには、教師向けのトレーニングや生徒のためのインタラクティブなコンテンツが含まれており、現在は東南アジア、中東、アフリカの10カ国以上で約2000人の教師に利用されている。その中でも特に大きな市場は、インドネシアとフィリピンの2カ国だ。Doyobiは、教育プラットフォームであるLeap Surabaya(リープ・スラバヤ)やCoder Academy(コーダー・アカデミー)の他、HighScope Indonesia(ハイスコープ・インドネシア)、Mutiara Harapan Islamic School(ムティアラ・ハラパン・イスラミック・スクール)、Stella Gracia School(ステラ・グラシア・スクール)などの私立学校と提携している。

Doyobiは2020年、STEMに特化した教育プログラム「Saturday Kids(サタデー・キッズ)」からスピンオフして設立された。共同創業者兼CEOのJohn Tan(ジョン・タン)氏は、8年間運営してきたSaturday Kidsでは、世界中にSTEMスキルを学ぶ必要のある子どもが何百万人もいるにもかかわらず、年間数千人の生徒にしかリーチできていなかったと、TechCrunchに語った。

「学校で教えられていることと、子どもたちが将来の仕事に備えるために必要なこととの間には、大きなギャップがあります。好奇心、想像力、共感力は、読み書きや計算のスキルと同様に重要です」と、タン氏は述べている。「教師は学習成果を形成する上で非常に大きな役割を果たしているのに、ほとんどのEdTechイノベーションは教室にいる教師を完全に対象から外してしまっています」。

多くの政府が、経済成長におけるSTEMスキルの重要性を理解しているにもかかわらず、カリキュラムにSTEMスキルを組み込むことに苦労していると、同氏は付け加えた。Doyobiは教師を通して生徒にリーチすることで、この問題を解決したいと考えている。

Doyobiは、ライブビデオレッスンなどの教師向け啓発トレーニングに加えて、教育者が子どもたちと一緒に使える独自の仮想学習環境を構築した。これには、新しいスキルの実社会への応用、インタラクティブメディアの使用、Scratch(スクラッチ)を使ったコーディングプロジェクトなどが含まれており、生徒が授業で学んだことを強化することができる。DoyobiはTeachers As Humans(人間としての教師)というオンラインコミュニティも運営しており、そこでは教育者がピアサポート(同じ立場にいる人同士の相互サポート)を受けられる。

Doyobiは今回調達した資金を使って、教育者向けのコースを増やしたり、生徒向けのビデオ、クイズ、プロジェクトなどの教材をさらに充実させていく予定だ。

画像クレジット:Karl Tapales / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東南アジアでメンタルヘルス支援アプリを提供するThoughtFullが約1.2億円を獲得

新型コロナウイルス(COVID-19)が流行する以前から、うつ病や不安神経症は人々の健康に深刻な影響を与えていたが、パンデミックをきっかけに、メンタルヘルス関連のスタートアップ企業への関心(およびベンチャーキャピタル)が高まってきている。Calm(カーム)Headspace Health(ヘッドスペース・ヘルス)のようなメンタルヘルス関連のスタートアップ企業の多くは米国に拠点を置いているが、世界各地でもエモーショナル・ウェルネスに注目が集まっている。例えば、東南アジアでは、メンタルヘルスケアやサポートへのアクセスを向上させるスタートアップ企業が増えている。その1つであるThoughtFull(ソウトフル)は米国時間10月12日、110万ドル(約1億2400万円)のシード資金を調達したことを発表した。これまでに東南アジアのデジタルメンタルヘルススタートアップが調達したシードラウンドの中で最大級のものだという。

関連記事:新型コロナを追い風に瞑想アプリのCalmが2080億円のバリュエーションで78億円調達

2019年に設立されたThoughtFullのアプリ「ThoughtFullChat」は、ユーザーをメンタルヘルスの専門家につなげてコーチングセッションやセラピーを受けさせたり、セルフガイドのツールも用意している。「ThoughtFullCare Pro」と呼ばれる同スタートアップのメンタルヘルス専門家向けアプリは、オンライン診療の管理と拡大を可能にしてくれる。ThoughtFullChatは、App StoreGoogle Playでダウンロードできる他、保険会社や従業員の福利厚生プログラムを通じても入手可能だ。

今回のシードラウンドの投資家には、The Hive SEA(ザ・ハイブ・シー)、ボストンを拠点とするFlybridge(フライブリッジ)、Vulpes Investment Management(バルプス・インベストメント・マネジメント)の他、アジア太平洋地域のファミリーオフィスやエンジェル投資家が名を連ねている。

ThoughtFullを立ち上げる前、創業者兼CEOのJoan Low(ジョーン・ロー)氏は、香港のJ.P.Morgan(J.P.モルガン)での6年間を含み、投資銀行家だった。ロー氏はTechCrunchに電子メールで「私が住み、働き、学んできた米国やヨーロッパなどでは、デジタルメンタルヘルスのイノベーションが猛烈なスピードで起こっているのに比べ、東南アジアではメンタルヘルスケアにアクセスするのがいかに難しいかを認識し、金融機関を辞めなくてはいけないと感じました」と語ってくれた。

ThoughtFullの主な運営市場はシンガポールとマレーシアだが、現在は43カ国にユーザーがいる。2020年にサービスを開始した同社のアプリは、5つの言語に対応している。英語、バハサ・マレーシア、バハサ・インドネシア、北京語、広東語の5つの言語に加え、タミル語、タイ語、ベトナム語、タガログ語にも精通したコーチがいる。

ロー氏は、ThoughtFull社が各市場に合わせたサービスを提供するために、現地のヘルスケアシステムと密接に連携していると述べている。例えば、The Hive Southeast Asiaやマレーシア財務省の100%子会社であるPenna Capital(ペンナ・キャピタル)と提携し、パンデミックの影響で対面での相談を含むケアへのアクセスが困難になったマレーシアのメンタルヘルスのエコシステムをデジタル化する予定だ。

「ヘルスケアシステムは、さまざまなステークホルダー、構造、結果が絡み合っているため、本質的に複雑です。しかし、アジアのヘルスケアは、文化だけでなく、ケア提供から支払者や研究モデルに至るまで、システムが多様であるため、特に複雑なのです」とロー氏はいう。「そのため、参入障壁が高く、アジアのヘルスケアに大々的に参入する外資系企業が少ないのです」。

東南アジアでメンタルヘルスの専門家へのデジタルアクセスを提供するアプリには、最近ベンチャー資金を調達したIntellect(インテレクト)がある。ロー氏は、ThoughtFullが他のメンタルヘルス関連のスタートアップ企業と異なる点として、エンド・ツー・エンドのサービスに焦点を当て、ユーザーにパーソナライズされた予防と治療のオプションを提供し「より質の高いメンタルヘルスケアを提供するための完全に閉じたフィードバックループ」を構築することを挙げている。

ThoughtFullのシードラウンドは、ディープテック技術の開発や臨床研究を含む製品開発に使用される。

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画像クレジット:ThoughtFull

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(文:Catherine Shu、Akihito Mizukoshi)

東南アジアでライブコマースのためのコミュニティ主導型ディスカバリーアプリを構築するUpmesh

Upmesh(アップメッシュ)の創業者らは、Twitch(ツイッチ)のAPIでゲームを作っていたときに、別のライブストリーマーのグループについてあることに気づいた。東南アジアでは何年も前から、Facebookライブでの販売が人気を博しているが、多くの業者は未だに、終了後のコメントから注文を集めるためにペンと紙を使っていたのだ。Upmeshは、チェックアウトプロセスの自動化のために創業された。最終的にはWhatnotのように、さまざまなソーシャルメディアプラットフォームで新しいライブコマースの販売業者を見つけられるようなプラットフォームを作りたいと考えている。

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Upmeshは現地時間10月8日、300万ドル(約3億3600万円)のシードラウンドを完了したと発表した。このラウンドはLeo Capitalがリードし、Beenext、iSeed、Goto Financialのマーチャントファイナンシャルサービス部門長のJonathan Barki(ジョナサン・バーキ)氏、BukuWarungの創業者であるAbhinay Peddisetty(アブヒナリー)氏とChinmay Chauhan(チンメイ・チョーハン)氏、Zopimの創業者であるRoyston Tay(ロイストン・タイ)とKwok Yang Bin(クウォク・ヤン・ビン)氏が参加した。

Upmeshは、Wong Zi Yang(ウォン・ジー・ヤン)氏、Soh Jan(ソー・ジャン)氏、Nhat Vu(ナット・ブー)氏、Shawn Teow(ショーン・テオ)氏の4人が9カ月前に立ち上げた会社だ。現在、シンガポール、マレーシア、フィリピンの約300社のライブコマース事業者に利用されている。同社によると、流通取引総額は年間4000万ドル(約45億円)に上るという。

このプラットフォームのツールは、ライブストリームのコメントでの発注(例えば「white top +1」)を自動的に捕捉し、販売業者の在庫の中から適切な商品を探し出し、顧客にチェックアウトリンクを送信する電子商取引機能を提供する。Upmeshは現在、Facebook Liveに対応しているが、今後は他のプラットフォームも追加し、プラットフォームを問わないサービスを目指している。

ライブコマース用の受注ツールを提供する企業には、CommentSold、Dibsly、Soldie、Buy It Liveなどがある。Upmeshの創業者らは、最も重要な差別化要因の1つとして、東南アジアのさまざまな国の販売業者と顧客の期待に応えるため、プラットフォームを個別に調整している点を挙げた。

「東南アジアのライブ販売の状況を見ると、国ごとに注文の集め方が大きく異なります」とCEOのウォン氏は話す。「シンガポールとフィリピンでは、在庫入力をライブ前後のどちらで行うのか、また在庫数を管理するのかについて、やり方がまったく異なります」。

Facebookライブのコメントで注文を取るUpmeshのツール(画像クレジット:Upmesh)

例えば、シンガポールでは、在庫の回転が非常に速いため、何千点もの商品を提供している販売者でも、短期間しか在庫を置いていないことが多いという。一方、フィリピンでは、多くの業者が、実店舗を補完するためにライブコマースを行う。在庫は店舗から持ち出し、手元にあるものを販売することが多い。「ソフトウェアの構造は、それぞれの市場に合わせてカスタマイズする必要があります」とウォン氏はいう。

Upmeshは今回調達した資金の一部を使い、少なくとも半年間はフィリピンとマレーシアに力を注ぐものの、インドネシア、タイ、ベトナムにも進出したいと考えている。また、従業員の増員、マーケティングキャンペーンの実施、販売業者向けの教育コンテンツの作成なども計画している。

ウォン氏は、新型コロナウイルスが電子商取引の導入を促進したのだとしても、それがライブコマースへの関心を生み出したわけではないと指摘する。同社の顧客の多くは、3年ほど前からライブストリーミングを行っている。「人々の電子商取引への関わり方は変化しています。関係性が重視されるようになってきています。売り手が買い手のファーストネームを知っているからこそ、ライブストリームで名前を呼ぶことができるのです」とウォン氏は語る。「中小企業にとっては、広告の代わりになっています」。

Upmeshのユーザー獲得は、これまでほとんどが口コミによるものだった。ファッション系のライブ販売業者が多いのは、彼らが密接なコミュニティを形成しているからだとウォン氏は話す。

同社は、そうしたコミュニティを新しい収益獲得の手段にすることを計画している。売り手と買い手が互いに交流し、さまざまなソーシャルメディアプラットフォームでライブコマースの動画を見つけられるようなプラットフォームを作るのだ。

「比較して興味深いのは、米国にはWhatnotのようなライブコマースのプラットフォームがあることです。しかし、Whatnotはコレクターズアイテムやヴィンテージアイテムなど、非常に厚い二次的な再販市場があるものに力を入れています」とウォン氏はいう。「米国では、分野ごとにだいたいコミュニティがあり、人々はeBayやYouTube上で、あるいはオフラインで交流しています。そうしたコミュニティが彼らに家を与えたのです」。

Upmeshのライブコマース販売者用ダッシュボード(画像クレジット:Upmesh)

一方、東南アジアでは、コレクターズアイテムのような市場はないが、ファッションや生鮮食品など、さまざまな種類の商品にコミュニティが形成されている。Upmeshはそういった商品ごとにプラットフォームを作りたいと考えている。

「ライブコマースの最終目標は、買い手がさまざまな売り手を見つけて交流し、気に入った売り手を見つけたら、さらに先へ進むことができるといったことです」とウォン氏は話す。「私たちは、商品がどこにあるかにユーザーの注意を向けます。私たちはすべての売り手の在庫を持っているので、もしあなたが赤いドレスが欲しいなら、どの売り手が赤いドレスの在庫を持っているかお知らせすることができます」。

画像クレジット:nikom1234 / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

東南アジア6カ国でロジスティックを展開するNinja Vanが約642億円調達

シンガポール拠点のロジスティックスタートアップNinja Van(ニンジャバン)が、事業のインフラとテクノロジーシステムの成長を支えるべく、5億7800万ドル(約642億円)のシリーズEラウンドをクローズした。

同社の発表によると、投資家には中国のAlibaba Group、そして既存投資家であるDPDgroupのGeoPostFacebook共同創業者Eduardo Savering(エドゥアルド・サベリン)氏のB Capital Group、MonkのHill Ventures、ブルネイ政府系ファンドZamrudが含まれる。

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報道によると、早ければ2022年にも新規株式公開するNinja Vanのバリュエーションは、最新のラウンドにより10億ドル(約1111億円)を超えた。同社の広報担当はバリュエーションについてコメントしなかった。

シリーズEで、同社の累計調達額は9億7650万ドル(約1085億円)になったと広報担当はTechCrunchに語った。

今回のラウンドは、2020年4月に7億5000万ドル(約833億円)のバリュエーションで2億7900万ドル(約310億円)を調達したシリーズD、2018年1月に8700万ドル(約96億円)を調達したシリーズCに続くものだ。

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Ninja Vanは調達した資金を、東南アジアにおけるeコマースの機会を最適化するためのマイクロサプライチェーンソリューションを含む、オペレーションの強化に使う。

同社は1日あたり約200万個の小包を配達していて、150万もの荷主と受取人1億人を抱える、と主張する。

CEOのLai Chang Wen(ライ・チャン・ウェン)氏、CTOのShaun Chong(ショーン・チョン)氏、CPOのBoxian Tan(ボシアン・タン)氏が2014年に創業した同社はシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンで事業を展開している。現在スタッフ6万1000人超を雇用する。

「東南アジアのeコマースをの可能性、特にeコマースの成長を促進するテクノロジーがもたらしているロジスティックの力を強く信じています。この地域でのNinja Vanの広範なプレゼンスと極めてローカルな洞察でもって、Ninja Vanとの提携で東南アジア中のeコマースエコシステムの参加者にさらにサービスを提供できると確信しています」とAlibaba Groupの東南アジア投資責任者Kenny Ho(ケニー・ホー)氏は述べた。

画像クレジット:Ninja Van

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

LINEがインドネシアでデジタルバンキング提供開始、タイと台湾に続き

メッセージングアプリで有名なLINEは、現地時間6月1日、インドネシアでデジタルバンキングのプラットフォームをローンチした。これで、日本を拠点とする同社が、その三大海外市場であるインドネシアとタイと台湾でバンキングサービスを提供することになる。

LINEのインドネシアのバンキングプラットフォームは同社が2018年に、韓国のHana ZBankの子会社PT Bank KEB Hana Indonesiaと結んだパートナーシップの結果だ。LINEはPT Bank KEB Hana Indonesiaの20%を買収することで合意し、それにより同行の2番目に大きな株主になり、普通預金口座とマイクロクレジットと送金と決済のサービスを提供するオンラインバンキングサービスを行なうと発表した。

Momentum Worksの記事は、2020年にインドネシアではデジタル銀行アプリのダウンロードが7%増かし、それらは主にBTPN JeniusやOCBC Nyala、Permata leadingといった既存銀行のアプリだったという。しかしMomentum Worksによると「インドネシアのデジタルバンクのユーザーの多くは複数のデジタルバンクアプリをダウンロードして試している」段階であり、勝者はまだ決まっていないという。Sea GroupGrabGojekなどの大手テクノロジー企業も独自にネオバンクサービスを提供している。

LINEは2020年10月に、Kasikorn Bankの子会社Kasikorn Vision Companyとの合弁事業の一環としてタイのユーザーにバンキングサービスを導入している。台湾では同社の子会社LINE Bank Taiwanが、2021年初めにFinancial Supervisory Commissionからバンキングのライセンスを認められた

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カテゴリー:フィンテック
タグ:LINEインドネシアデジタルバンク東南アジア

画像クレジット:Bloomberg / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hiroshi Iwatani)

衛星データで耕作放棄地の把握や土壌解析を行い農業課題解決に取り組むサグリが約1.55億円調達

衛星データで農業分野における課題解決に挑むサグリが、 リアルテックファンドをリード投資家として、みなとキャピタル池田泉州キャピタル広島ベンチャーキャピタルひょうご神戸スタートアップファンド、他エンジェル投資家等を引受先として総額約1億5500万円を調達した。今回の調達で、投資家である地域金融機関とも連携しながら、全国における市町村のユーザー獲得・導入を目指す。

耕作放棄地をデジタル地図で確認できる「ACTABA」

耕作放置地である可能性が赤色の濃淡で確認できるACTABA

同社は、自治体や農業委員会向けに「ACTABA(アクタバ)」という耕作放棄地把握アプリを提供。日本では農業従事者の高齢化等にともない耕作されなくなった農地が増えているが、その把握は、自治体職員が行わねばならない。ACTABAでは、Planetの衛星データを使用し、農地の荒れ具合を人工知能(AI)が判断、耕作放棄地とみられる土地を、可能性の強弱に応じて赤色の濃淡で表示し、職員の作業を軽減する。耕作放棄地の判定精度は現状でも9割を超える正答率であり、また全国の自治体で広く使われることでACTABA自身が学習し、アプリの精度が高まっていくという。

区画形成の自動化でデジタル地図の作成を容易にするAIポリゴン

区画形成データは、より高解像度なMaxer Technologiesの衛星データを用い、独自のAIポリゴン技術によって加工し、提供しているという。料金は農地面積に応じる。

東南アジアにプレシジョンファーミング(精密農業)を

同社は、衛星データによる土壌解析技術を使って、施肥量適正化による肥料コスト削減や植生解析による収量増加、土壌より生じる「温室効果ガスの把握と削減」など「地球環境改善」と「農家の収益改善」の二軸を求めていく考え。対象は東南アジアとしており、タイ、インドにはすでに進出している。

代表の坪井俊輔氏は横浜国立大学理工学部在学中に、子どもたちが未来に夢を感じられていない状況を危惧し、教育事業の「うちゅう」を創業。日本のみならず海外の子どもたちの様子も知るため、2016年にルワンダへ行くが、若年労働がほぼ義務化されている状況にあり、同じく子どもたちが夢を追いかけられない現状があることを知った。子ども達を労働から解放するため、まず途上地域の農業DXを進めようと、サグリを設立。坪井氏は「当初は営農アプリ開発をはじめ、途中でメディア事業へピボットするなど、試行錯誤して今があります。資金調達を経て、改めてパートナーのみなさまと事業を大きくしていきたいと感じています」と語った。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:サグリACTABA資金調達農業東南アジアタイインド人工衛星日本画像解析

世界最大のSPAC合併で配車サービスGrabがNASDAQ上場へ

配車とデリバリーの会社Grab(グラブ)は米国で上場する計画を発表した。シンガポール拠点の同社は配車サービスアプリから、フードデリバリーや送金ができるeウォレットのような金融サースなどいくつかの消費者サービスを提供する東南アジアのスーパーアプリへと進化した。

同社はシンガポール、マレーシア、カンボジア、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナムでサービスを展開している。Crunchbaseによると、同社はこれまでにソフトバンクのビジョンファンドなどから100億ドル(約1兆924億円)を調達している。

上場するのにGrabはAltimeter Growth CorpというSPAC(特別買収目的会社)との合併を選んだ。Altimeter Growth Corpは米国拠点の上場している空白小切手会社だ。このプロセスを経ての上場は米国では外国企業であるGrabにとってずっと簡単なものであるはずだ。

取引が完了すれば、世界最大のSPAC合併となる。Grabはティッカーシンボル「GRAB」でNASDAQに上場する。

発表の一環として、Grabはいくつかの指標や大きな数字を明らかにした。2020年の同社のGMV(販売総額)は約125億ドル(約1兆3649億円)だった。そして合併による同社の評価額は396億ドル(約4兆3241億円)となり、同社は現金45億ドル(約4913億円)を保有する。

東南アジアにおけるフードデリバリーとオンデマンドモビリティはまだ成長する余地があるとGrabは考えている。獲得可能な最大市場規模は520億ドル(約5兆6779億円)から2025年までに1800億ドル(約19兆6545億円)に急拡大すると見込む。

「誰でもデジタル経済の恩恵を受けられるようにアクセスを広げるという目的に向けた旅路におけるマイルストーンです。東南アジアが新型コロナウイルスから立ち直るのに、これはより重要な役割を果たします。新型コロナは当社にとっても非常に厳しいものでしたが、事業の耐久性について学ぶところがかなりありました」とGrabの共同創業者でCEOのAnthony Tan(アンソニー・タン)氏は声明で述べた。

「当社の多様化したスーパーアプリ戦略はデリバリーを行うドライバーパートナーをサポートし、収益性を改善しながらの成長達成を可能にしました。上場企業となる現在、当社は我々のコミュニティの経済を強化すべく、一層懸命に取り組みます。というのも東南アジアが成功すれば、Grabも成功するからです」と同氏は付け加えた。

Altimeterは自社のスポンサー株に3年の売却禁止期間を設けることに同意した。これはしばらくの間、AltimeterがGrabにコミットし続けることを意味する。

カテゴリー:モビリティ
タグ:GrabSPACAltimeter Growth CorpNASDAQ東南アジア

画像クレジット:Grab (Image has been modified)

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

ベトナムの電動バイクメーカーDat Bikeが2.9億円調達、ガソリンバイクからの乗り換えを狙う

自社のバイクに乗るDat Bike創業者でCEOのソン・グエン氏

東南アジアでトップの電動バイク企業になることを目指しているベトナムのスタートアップ企業Dat Bike(ダット・バイク)が、Jungle Venturesが率いるプレシリーズAで260万ドル(約2億9000万円)の資金を調達した。Dat Bikeは、ほとんどが国産部品で構成されたベトナム製バイクで、価格と性能の両面でガソリンバイクに対抗できるのがセールスポイントだ。Jungle Venturesがモビリティ分野に投資するのは今回が初めてで、Wavemaker Partners、Hustle Fund、iSeed Venturesも参加している。

創業者であり最高経営責任者でもあるSon Nguyen(ソン・グエン)氏は、シリコンバレーでソフトウェアエンジニアとして働いていたときに、廃品を利用してバイクを作る方法を学び始めた。彼は2018年にベトナムに戻り、Dat Bikeを創業した。インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナムでは、8割以上の家庭がバイクを所有しているが、そのほとんどがガソリンを燃料としている。グエン氏はTechCrunchに対して、多くの人が電動バイクに乗り換えたいと思っているが、大きな障害は性能だと語る。

グエン氏によれば、Dat Bikeは市場に出回っている多くの同じ価格帯の電動バイクに比べて、3倍の性能(5kW対1.5kW)と2倍の航続距離(100km対50km)を実現しているという。ガソリンバイクに対抗するために作られたのが、Weaver(ウィーバー)という名の同社のフラッグシップバイクだ。グエン氏によれば東南アジア諸国での重要なセールスポイントである2人乗りで、5000Wのモーターを搭載し、0から50km/hまでを3秒で加速する。Weaverは標準的なコンセントを使って約3時間でフル充電が可能で、1回の充電で最大100kmの走行が可能だ(次のモデルでは1回の充電で最大200kmの走行が可能になる)。

Dat Bikeは、2020年12月にホーチミン市に初の実店舗をオープンした。グエン氏によれば、同社は「これまでに数百台のバイクを出荷していて、まだ受注残を抱えています」という。また、ホーチミン店のオープン後、新規受注が前月比で35%増加したと付け加えた。

3990万ドン(約18万9000円)というWeaverの価格設定も、ガソリンバイクの中央値に相当するものだ。Dat Bikeは、銀行や金融機関と提携して、顧客に12カ月の無利息支払いプランを提供している。

「彼らは、ベトナムの新興中産階級を初めてデジタル金融市場に引き込むために競い合っていますので、結果的に非常に有利なレートを得ることができるのです」と彼はいう。

ベトナム政府はまだ電動バイクへの補助金は提供していないが、交通省が駐車場やバイク駐輪場に充電インフラを義務づける新しい規制を提案していることもあって、グエン氏は電気自動車の導入が進むだろうという。ベトナムで電動バイクを製造している企業には他にもVinFast(バンファスト)やPEGAなどがある。

Dat Bikeの強みの1つは、地元で調達したパーツを使って自社で開発している点だ。グエン氏は、中国やその他の国から調達するのではなく、ベトナムで製造することのメリットとして、Dat Bikeのサプライヤーのほとんどが国内にあるため物流の合理化やサプライチェーンの効率化があるという。

「バイクの輸入関税は45%、バイク部品の輸入関税は15%から30%なので、地元企業であることには税制面でも大きなメリットがあります」とグエン氏。「一方、東南アジア内の貿易には関税がかからないので、海外からの輸入バイクに比べて、東南アジアへの進出に優位性があるのです」。

Dat Bikeは、Jungle Venturesなどの投資家の協力を得て、今後2~3年の間に東南アジアでのサプライチェーンを構築し、拡大していく予定だ。

Jungle Venturesの創業パートナーであるAmit Anand(アミット・アナンド)氏は声明の中で「特に東南アジアの250億ドル(約2兆7000億円)規模のバイク産業は、電気自動車と自動化の新たな発展の恩恵を受けるための機が熟しています。私たちは、Dat Bikeがこの動きをリードし、次世代の電動バイクの外観や性能について、国内だけでなく世界的にも新たな基準を作ることができると信じています」と語る。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:ベトナム東南アジア電動バイクDat Bike資金調達

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

M Capital Managementが東南アジアのスタートアップに投資する最初のファンドを約33.6億円でクローズ

M Capital Managementの創業パートナーであるヨアヒム・アッカーマン氏(左)とマヤンク・パレック氏(右)(画像クレジット:M Capital Management)

シンガポールを拠点とするベンチャーキャピタルのM Capital Management(Mキャピタル・マネージメント)は現地時間3月22日、デビューファンドであるM Venture Partners(Mベンチャー・パートナーズ)を総額3085万ドル(約33億5600万円)でクローズしたと発表。このファンドはシードおよびプレシリーズAのアーリーステージにあるスタートアップ企業40社への投資を予定しており、平均的な初回の小切手額は約50万ドル(約5440万円)となる。

M Capital Managementは、Mayank Parekh(マヤンク・パレック)氏とJoachim Ackermann(ヨアヒム・アッカーマン)氏によって設立された。パレック氏は、Grange Partners(グランジ・パートナーズ)の起ち上げや、Southern Capital Group(サザン・キャピタル・グループ)、McKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)でリーダーを務めるなどの投資経験を持つ。アッカーマン氏は、Google Asia Pacific(グーグル・アジア・パシフィック)の元マネージングディレクターだ。その他のシニアチームメンバーには、Entrepreneur First(アントレプレナー・ファースト)のローンチマネージャーだったTanuja Rajah(タヌジャ・ラージャ)博士、Acquity Stockbrokers(アクイティ・ストックブローカーズ)の前リサーチディレクターだったChethana Ellepola(チェサナ・エレポラ)氏が含まれる。

分野にとらわれないファンドであるM Venture Partnersは、最近オーストラリア証券取引所に上場した3D Metal Forge(3Dメタル・フォージ)を含め、すでに11社に投資している。

他の投資先企業には、行動健康コーチングのスタートアップ企業であるNaluri(ナルリ)、AIを活用した融資およびクレジット・アズ・ア・サービス企業のImpact Credit Solutions(インパクト・クレジット・ソリューションズ)、オルタナティブ投資ファンドのアグリゲーション企業であるXen Capital(ゼン・キャピタル)、インドで腫瘍治療をより安価で利用しやすいものにすることに注力しているCipher Cancer Clinics(サイファ・キャンサー・クリニック)などがある。

パレック氏はM Capital Managementを起ち上げた理由について、次のようにTechCrunchに語った。「この地域のアーリーステージ投資スペースには、大きな成長の余地があると我々は信じています。10年前には、ユニコーンはほとんどいませんでした。これが最近になって大きく変化したのは、明らかな進歩によって、これまでサービスを受けていなかった、あるいはサービスを利用していなかった人々がオンラインになったからだけでなく、資金調達を必要とするさまざまな段階の企業に対する組織的VCのサポートや、政府機関のサポート、地元のアクセラレーターの出現、急速に成長しているエンジェル投資団体のネットワークなど、シンガポールで、さらには地域全体で、ベンチャーシステムがうまく発展したからです」。

パレック氏は、さらなるユニコーンや「soonicorns(近い将来、ユニコーンの評価を受けると予想される企業)」の出現に期待していると付け加えた。

分野を問わないアーリーステージの投資家として、M Capital Managementが重視するのは創業者であり、特に「専門的な経験と優れた学歴」を持つ人だとパレック氏はいう。例えば、Naluriの最高経営責任者であるAzran Osman-Rani(アズラン・オスマンラニ)氏は、AirAsiaX(エアアジアX)の創業者であり、6年間で同社の起ち上げから2013年に新規株式公開するまで導いた経験を持っている。

M Capital Managementは、主にB2BまたはB2B2Cの企業に投資するため、シンガポールを拠点とするスタートアップに焦点を当てている。「私たちが選んだスタートアップ企業が、大手企業やビジネスパートナーとビジネスモデルを立ち上げるためには、肥沃な土壌が必要です」と、パレック氏は語る。「シンガポールはまさにそれを提供します。この国は市場をリードする機関のハブであり、新しい技術や破壊的なアイデアのための好機を作り出すことも珍しくありません」。

M Capital Managementの投資先企業の多くは「シンガポールを中核的な起ち上げプラットフォームとして活用し、地域またはグローバルな展開を目指している」と、パレック氏は付け加えた。同社はすでにマレーシアとインドで投資を行っており、タイ、フィリピン、インドネシアの会社にも積極的に目を向けている。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:M Capital Managementシンガポール東南アジア

画像クレジット:M Capital Management

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

東南アジアの金融インフラ構築を進めるシンガポールのFinantierがY Combinatorから支援を獲得

「underbanked」であることは、金融サービスへのアクセスがない人を意味するわけではない。その代わり、従来の銀行口座やクレジットカードを持たないことを往々にして指す。しかしインドネシアのようなマーケットでは、多くの人がデジタルウォレットやeコマースプラットフォームを使っている。これは運転資本や他の財務ツールを確保するのに役立つユーザーデータの別のソースになっている。シンガポール拠点のオープンファイナンススタートアップFinantier(ファイナンティア)は、ユーザーデータへの金融サービスアクセスを提供する1つのAPIでそうしたデータを合理化したいと考えている。ここにはクレジットスコアやKYC(与信審査)の認証を可能にする機械学習ベースの分析も含まれる。

20超のクライアントを抱え、現在ベータ版を展開しているFinantierは正式立ち上げに向けた準備で忙しい。同社は米国時間12月22日、Y Combinatorの2021年冬季スタートアップとして受け入れられたと発表した。同社はまた、額は非公開ながらこのほどプレシードの資金を調達した。本ラウンドはEast Venturesがリードし、AC Ventures、Genesia Ventures、Two Culture Capitalなどが参加した。

Finantierは2020年初めにDiego Rojas(ディエゴ・ロハス)氏、Keng Low(ケン・ロウ)氏、Edwin Kusuma(エドウィン・クスマ)氏によって設立された。3人とも新興マーケットでオープンファイナンスを可能にすることを目的としたフィンテック企業向けのプロダクト構築の経験がある。

オープンファイナンスは、オープンバンキングから生まれた。PlaidとTinkが構築されたのと同じフレームワークだ。これは、ユーザーの金融データを銀行や他の機関の中に格納する代わりにユーザーがよりコントロールできるようにすることを意図している。ユーザーは自身の銀行口座やクレジットカード、デジタルウォレットなどを含むオンライン口座の情報へのアクセス権をアプリやウェブサイトに付与するかどうかを決定できる。オープンバンキングは主に決済アカウントと称されるが、その一方でFinantierが専門とするオープンファイナンスは商業融資、住宅ローン、保険引受などを含むさまざまなサービスをカバーする。

Finantierはまずシンガポールとインドネシアに注力するが、他の国にもサービスを拡大し、Plaidのようなグローバルフィンテック企業になる計画だ。すでにベトナムとフィリピンに目をつけていて、ブリュッセルで提携も結んだ。

Finantierを興す前にロハス氏はP2Pの融資プラットフォームLending ClubやDianrong向けのプロダクトに取り組み、東南アジアのいくつかのフィンテックスタートアップでCTOを務めた。同氏は多くの企業が他のプラットフォームや銀行からのフェッチデータを統合したり、異なるプロバイダーからデータを購入したりするのに苦戦していることに気づいた。

「人々はオープンバンキングや埋め込み型金融などについて話し合っていました」とFinantierのCEOであるロハス氏はTechCrunchに語った。「しかしそれらはもっと大きなもの、すなわちオープンファイナンスの構成要素です。特に大人の60〜70%が銀行口座を持たない東南アジアのような地域では、消費者や事業所が複数のプラットフォームに持っているデータを駆使するのをサポートしていると確信しています。それは絶対に銀行口座である必要はなく、デジタルウォレットやeコマースプラットフォーム、その他のサービスプロバイダーだったりします」。

消費者にとって意味するところは、クレジットカードを持っていなくても、たとえばeコマースプラットフォームでの完了した決済のデータを共有することで信用力を構築できるということだ。ギグエコノミー労働者は、毎日の乗車や他のアプリを通じてしている仕事についてのデータを提供することで、より多くの金融サービスやディールにアクセスできる。

東南アジアの金融インフラを構築する

東南アジアに注力している他のオープンバンキングスタートアップにはBrankasやBrickがある。ロハス氏はFinantierがオープンファイナンスに特化していること、エンドユーザー向けのサービスを構築するために金融機関向けのインフラを作っていることで差異化を図っていると述べた。

金融機関にとってのオープンファイナンスのメリットは、より消費者に適したプロダクトを作ることができ、売上高共有モデルの機会を得られることだ。これは東南アジアでは銀行口座などをもたず、さもなくば金融サービスへのアクセスがない人々にリーチできることを意味する。

Y Combinatorのアクセラレータープログラムに参加する一方で、Finantierはインドネシア金融サービス庁の規制緩和制度にも参加する。このプログラムを終了したら、大手機関を含むインドネシアのさらに多くのフィンテック企業と提携することが可能になる。

インドネシアには、銀行口座を持たないなど金融サービスを十分に利用できていない大人が1億3900万人いる、とEast Venturesの共同創業者でマネジングパートナーのWilson Cuaca(ウィルソン・クアカ)氏は話した。

インドネシアを専門とする同社はEast Ventures Digital Competitiveness Indexという年次調査を行うが、金融排除が現在存在する最大の格差の1つだと指摘した。ジャカルタが立地するジャワのような人口の多い島で利用できる金融サービスの数と、他の島々のものとではかなりの差がある。

金融インクルージョンを促進し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済影響を軽減するために、政府は1000万の零細・中小企業が年末までにデジタルに移行するという目標を打ち出した。オンラインで販売する零細・中小企業は現在800万で、インドネシアの零細・中小企業のわずか13%にすぎない。

Finantierに出資するというEast Venturesの決定について、クアカ氏は「金融サービスへの平等なアクセスを提供することは、インドネシア経済に乗数効果を及ぼすことができます」とTechCrunchに語った。「現在、金融サービスを多くの人に提供するために何百という企業が独自のソリューションに取り組んでいます。そうした企業がより多くのプロダクトやサービスを、金融サービスを活用できていない人々に提供するのをFinantierがサポートすると確信しています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:FinantierY Combinator資金調達東南アジアシンガポール

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(翻訳:Mizoguchi

eコマースロジスティックスのShippitが23.6億円調達、東南アジア事業拡大を目指す

Shippit(オーストラリア、シドニー)のeコマースのロジスティックスのプラットフォーム、ShippitがTiger GlobalがリードするラウンドBで3000万豪ドル(約23億6000万円)を調達することに成功した。ラウンドにはJason Lengaも加わっている。同社はこの資金により東南アジアにおける存在を拡大する計画だ。2014年に創立されたShippitはロジスティックス全般を効率化することを目的とする。同社は発注に対する最適の配送業者の選定、積荷のトラッキング、返品の処理などを自動化するテクノロジーを持つ。

今回のシリーズBによりShipitは2017年以降、4100万豪ドル(約32億2000万円)を調達したことになる。資金は東南アジアを中心とする事業拡大に使用され、ソフトウェア開発者50人を含む100人を新規採用し、社員数を倍増させる計画だ。

Shippitによれば、現在オーストラリアでSephora、Target、Big W、Temple&Websterなど数千の小売業者の配送を月に500万件処理しているという。同社は5月にシンガポール、8月にマレーシアにオフィスを開設した。

共同ファウンダーで共同CEOのWilliam On(ウィリアム・オン)氏はTechCrunchの取材に対してこう語った。

東南アジアは5年以内に世界最大のeコマース市場になると予測されています。我々がターゲットとする市場は東南アジアだけですでにオーストラリアの5倍、米国の2倍の規模です。我々はフィリピンとインドネシアへの事業拡大を検討しています。東南アジア事業については今後3年間、最低でも前年比100%の成長を見込んでいます。

オン氏はまた「オーストラリにおけるShippitの事業も、過去12カ月で取扱量が3倍に増加しました」と述べた。

eコマースが拡大する中、新型コロナウイルス流行によるサプライチェーンとロジスティクスチェーンの不安定性があらわになったことはShippitのようなロジスティックスサービスの重要性を強調することとなった。アジア太平洋地域の電子商取引はパンデミック以前に急成長路線に乗っていた。Forresterによれば、こ同地域のオンライン小売売上高は2019年の1兆5000億ドル(約156兆円)から、2024年には2兆5000億ドル(約260兆円)へと、年平均成長率11.3%で成長すると予測している。

ライバルのスタートアップにはShipStation、EasyShip、Shippoなどがある。Shippitの競争戦略は、オンラインショッピングをできるかぎりシンプルにすることだという。このためオンラインショッピングカートと運送業者割当エンジンの統合などを目指している。これにより注文と同時に最適な運送業者の
決定までが自動的に行われるようになる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

中古車市場のCarsomeが東南アジア事業で31.3億円をシリーズDで調達

東南アジア最大の中古車向けeコマースプラットフォームを標榜するCarsomeは、シリーズDで3000万ドル(約31億3000万円)を調達したと発表した。資金調達はAsia Partnersが主導し、投資家のBurda Principal InvestmentsとOndine Capitalが参加した。

Carsomeによると、これは「東南アジアのオンライン自動車業界におけるこれまでで最大級のオールエクイティ資金調達の1つ」だという。シリーズDの一部は、同社のサプライチェーンを統合するためのM&Aに使用される可能性がある。

5年前にマレーシアで設立されたCarsomeのプラットフォームは、C2CとB2Cの両方のセグメントにサービスを提供しており、車両がプラットフォームに掲載される前に検査を行うことで品質を保証している。現在の従業員数は1000人で、年間7万台、車両の取引総額は総額6億ドル(約625億円)だという。

共同創設者でグループCEOであるEric Cheng(エリック・チェン)氏はプレスリリースの中で、Carsomeは現在インドネシア、タイ、シンガポールでも事業を展開しており、過去6カ月ではパンデミック以前の水準に比べて月間収益が2倍になったと述べた。同社によると、より多くの人や企業が安全上の理由から自家用車を購入していることが一因だと主張している。

Counterpoint Researchによると、新車の売上が世界中で急落している一方で、中古車の売上は特にeコマースプラットフォームにより、より急速に回復しているという。これは人々が公共交通機関やライドシェアサービスを避けたいと考えている一方で、より安価なオプションを求めていることが主な理由だ。

東南アジアの他の中古車プラットフォームには、Carro、OLX Autos(旧BeliMobilGue)、Carmudiなどがある。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Carsome中古車販売東南アジア資金調達

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter)