【コラム】東欧のスタートアップは見過ごされ、過小評価されている?

ロシア語圏や東欧のテクノロジー系の起業家は、世界で最も技術力が高い人たちだと言われている。

例えば、Coursera(コルセラ)が発表した「2020 Global Skills Index(2020年グローバルスキル指標)」では、60カ国6500万人の学習者の中で、ロシアの学習者がテクノロジーとデータサイエンスの分野で最も高い能力を持っていることがわかった。また、起業家精神のレベルも高く、今なお成長を続けている。

彼らの技術的な能力や起業家としての才能に加えて、1つ疑問が残る。彼らは投資対象になりうるのか?

推定では、英国、欧州、米国などにおける主要な拠点で活動するロシア語圏および東欧の起業家は、すでに1万7000人ほどいると言われている。

多くの人が知らないだけで、成功した事例に、Telegram(テレグラム)、Revolut(レボリュート)、TradingView(トレーディングビュー)、PandaDoc(パンダドック)、Preply(プリプリ)などの有名企業がある。2019年だけでも、ロシア語圏の起業家が設立した企業は、合わせて125億ドル(約1兆3760億円)以上で米国の企業に売却された。最も主要な案件としては、Veeam(ヴィーム)のInsight Partners(インサイト・パートナーズ)への50億ドル(約5500億円)の売却、MagicLab(マジックラボ)の米投資運用会社Blackstone(ブラックストーン)への30億ドル(約3300億円)の売却、DXC Technology(DTXテクノロジー)のLuxoft(ルクソフト)の20億ドル(約2200億円)の買収などが挙げられる。

関連記事:スイスのデータ管理企業Veeamを投資会社のInsight Partnersが約5500億円で買収

Leta(レタ)の私たちのファンドは、2017年のBright Box HK(ブライト・ボックス HK)のZurich Insurance Group(チューリッヒ・インシュアランス・グループ)への売却や、WeWork(ウィーウォーク)によるセールス&マーケティングプラットフォームUnomy(ウノミー)の買収など、国際的な企業に買収されたスタートアップを支援してきた。

このような実績と成功にもかかわらず、東欧の起業家は、自国で活動していても、投資家に見落とされ、過小評価されていると思う。

ロシアの伝統というスティグマ

その理由は、文化的な違いの認識、理解、信頼、自信の欠如、そして悲しいことに、ロシアや東欧のネガティブなステレオタイプに煽られてのリスク回避など、数え切れないほど挙げられる。実際、多くの起業家は「西洋」の同業者と同じ土俵に立つために、自分の伝統や経歴をわざわざ控えめにしているほどだ。

最近、当社のアナリストが行った調査によると、ロシア語圏や東欧圏の起業家のかなりの割合が、投資家を惹きつけることができず、シード資金の調達に成功していないということがわかった。

また、シード資金、シリーズA、シリーズBの資金調達に成功した場合でも、米国の同業他社に比べて平均65%、英国やEUの起業家に比べて40%以上少ない資金調達額となっているという。従業員1人当たりの資金調達額は、米国と英国の平均よりも2倍近く少なく、買収案件の発生比率は、米国とEUの企業がそれぞれ17%と20%であるのに対し、これらの企業は約5%だ。

では、これらの企業は成功率が低い、あるいは成長特性が異なると考えてよいのだろうか?

いや、そのようなことはない。私たちの分析対象となった起業家や企業は、成長と投資家への利益還元という点で、十分な力を発揮している。同業他社と比較しても、特にシードやシリーズAの段階で力強い成長を遂げており、資金燃焼率も低く、投資をリターンにつなげる効率性も高い。

チャンスの宝庫

いくつかの成功事例があるにもかかわらず、東欧のスタートアップ企業の多くはまだ見過ごされ、過小評価されていると思う。投資家にとっては、これは未開拓の大きなチャンスだ。

私自身がIT起業家であり、幸運にも自分の財布からお金を出すことができる立場にあるので、自分が成功したように他の人が成功するのを手助けし、その過程で非常にエキサイティングな企業や型破りな技術を世に送り出すことが私の使命だと考えている。

私たちは、より多くの安心感と説得力を必要としている他の投資家と協力して、この重要でエキサイティングな未開拓分野の市場をよりよく理解し、導いていきたいと考えている。自分たちの分析と自分たちのファンドのパフォーマンスから、投資家に魅力的なリターンを提供できると確信している。

編集部注:本稿の執筆者Alexander Chachava(アレクサンダー・チャチャバ)は、シリアルアントレプレナー、投資家、テクノロジー関連の投資会社であるLETA Capitalのマネージングパートナー。

画像クレジット:Juanmonino / Getty Images

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(文:Alexander Chachava、翻訳:Akihito Mizukoshi)

.meの歴史、モンテネグロが独立で勝ち取った大きな資産

Montenegro Kotor Bay at Sunset

【編集部注】執筆者のAlan DunnはNameCorpのマネージング・ディレクターでありながら、シニア・デジタル・ネーミング・エキスパート兼ブランドコンサルタントでもある。

10年前、国民投票で賛成派が規定の割合を1%未満の僅差で上回り、モンテネグロはセルビアから分離して独立を果たした。そしてこの独立は、コネチカット州ほどの大きさの同国にとって様々な変化を意味した。数ある重要な変革の中でも、当時あまり注目されていなかったのが、モンテネグロのドメインの変更だった。

ほぼ全ての国がユニークなドメインを持っており、これはccTLD(country code top-level domains=国別コードトップレベルドメイン)と呼ばれている。例えばカナダであれば.ca、イギリスであれば.uk、デンマークであれば.dkというドメインが割り振られている。しかし国民投票以前のモンテネグロは独立国家ではなかったため、(ユーゴスラビアの一部として)cg.yuというドメインを使用していた。2003年のユーゴスラビア解体の結果、新たにモンテネグロには.csというドメインが割り当てられたが、新たなドメインへの移行は活発に行われていなかった。

前述の国民投票の結果を受け、2007年にモンテネグロ政府は公式なRFP(提案依頼書)を発布し、GoDaddy.com、Afilias Limited、ME-net, Ltdのジョイントベンチャーであり、モンテネグロに拠点を置くdoMEn Ltdを指定業者に選んだ。同社は5年間にわたって.meのレジストリとなる契約をモンテネグロ政府と交わし、その後契約は2023年まで10年間延長された。

一見すると、.meドメインとはモンテネグロに関することだと思うかもしれない。しかしこのドメインはその後もっと多くの人々をひきつけ、WordPressやFacebook、PayPalを含むグローバルブランドにも採用されることになった。結果的にこの短いドメインは、ドメイン名そしてモンテネグロの様相を一変させることになる。

100万件の登録

2016年3月に、.meの登録件数が100万を超えた。これは香港とアイルランド、シンガポールのccTLD登録件数を足し合わせた数よりも多い(Domain Toolsの情報)。

.ukや.deといったccTLDの登録件数はもっと多いものの、.meほど世界中に広まったccTLDというのはあまり存在しない。

輸出額の2%

モンテネグロの統計局であるMONSTATによれば、2015年の同国の輸出総額は3億1720万ユーロだった。

それと比較して、doMEn LtdでCEOを務めるPredrag Lesicは「2015年の.meドメインからの売上総計は650万ユーロでした」と話す。さらにLesicは、モンテネグロ政府の会計制度上、ドメイン名からの収益は通信収益としてカウントされているが、「現在.meドメイン登録者の99%以上が国外にいる(=輸出されている)」と付け加える。

つまり.meアカウントはモンテネグロの輸出総額の2%以上に相当するのだ。

誰が.meドメインを購入しているか?

.comや.netのように、.meドメインの所有者の多くはアメリカと中国にいる。doMEn Ltdによる2016年Q3の.meドメイン所有者の内訳は以下の通りだ。

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出典: .me registry

サービス・プロバイダー(登録申請を代行する指定業者)でさえ、ほとんどがモンテネグロ国外に拠点を置く企業だ。2016年Q3時点で、.meドメインを扱う業者の76.45%がアメリカか中国にいるとされている。

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出典: .me registry

モンテネグロは世界中で需要のあるデジタルプロダクトを手に入れただけでなく、ドメインをマネタイズし国内の経済を潤すと共に、産業にも大きな変化をもたらすことに成功した。例えばDomain.meのCSRプログラムの一部として、Spark.meと呼ばれるカンファレンスが2013年にスタートした。

海辺のリゾート都市Budvaで毎年開催されているこのカンファレンスには、テック業界の全ての分野からさまざまな人が参加している。過去にはMatt Mullenweg(WordPress創始者)、Peter Sunde Kolmisoppi(The Pirate Bayの共同ファウンダー)、Christopher Fabian(ユニセフ・イノベーションユニットの共同ファウンダー兼共同リーダーであり、TIME紙が選ぶ2013年版『世界で最も影響力のある100人』のひとり)がスピーカーとして同カンファレンスに参加していた。

一夜にして10年分の成功を掴む

現在世界中には何千という数のドメインが存在するが、10年前に.meが作られたときの状況は今とはかなり違っていた。アメリカ大統領はTwitterアカウントを持っておらず、新しいgTLD(generic top-level domains=ジェネリックトップレベルドメイン)は遠い存在であり、Uberは単なる形容詞でしかなかった。

.meによってccTLDという言葉が一般に広まっただけでなく、.meは.coと共にドメインのマーケティング戦略を大きく変えたと言われている。

モンテネグロが自国で貨幣を発行しておらず、コネチカット州ほどのサイズしかない国だと考えると、全く大したものだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ロシアのバスチケット比較サイト「Busfor」が2000万ドルを調達、東欧やアジア諸国へのさらなる拡大を目指す。

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個人所有のクルマによる配車サービスという分野でUberなどの企業がしのぎを削る一方、人を運ぶという分野には運ぶ人数がはるかに多いのにも関わらず、まだ古いビジネスモデルがそのままの業界がある。長距離バス業界だ。

ここまで言っただけでは笑われそうだが、私は「バス版のUber」というビジネスを話しているのではない。この業界がもつ複雑さはバスが家までやって来たとしても無くならない。そうではなく、それぞれのバス会社が単体で提供するルートよりも遠くに行くとき、この業界の複雑さがのしかかる。バスを乗りつぐ中距離や長距離の旅行を計画することは、ユーザーにとって非常に骨の折れる作業だ。バスの時刻表は会社によって別々に提供されていて、チケットを購入するプラットフォームはもちろん、価格もバラバラなのだ。

ベルリンを拠点とするGoEuroが1億4600万ドルを調達し、ヨーロッパ地域の鉄道、飛行機、バス、車での移動手段の比較し、それぞれの移動手段を組み合わせることができる検索ツールを開発したのも、おそらくこれが理由だろう。

しかし、より大きなディスラプションが起こる土壌ができているのは開発途上国のマーケットのようだ。なぜなら、バスが最も利用されている地域はそのような開発途上国のマーケットだからだ。

ロシアのマーケットが抱える問題に世界が注目するなか、モスクワを拠点とするBusforは静かにその仕事に取りかかっていた。

同社はロシア、東欧、アジア諸国のバスチケットの検索と購入ができるプラットフォームを提供している。どのようなチケット販売サイトにも対応しているため、バスの運用会社と競合することはない。彼らは企業と消費者の両方が使いやすいプラットフォームを提供しているだけあり、そこから得る手数料が彼らの収益となるからだ。

今回、BusforはロシアのPEファンドであるBaring VostokとElbrus Capitalの2社から2000万ドルを調達したことを発表している。

それと同時に、おなじくロシアを拠点とする既存投資家のInVenture Partnersも出資金額を引き上げている。これにより、今回の合計調達金額は2500万ドルとなる。

Busforは今回の資金を利用して国内向けビジネスを強化するとともに、新しいマーケットへの進出も目指す。2019年までにロシアのバスチケット販売において20%のシェアを獲得することが今後の目標のようだ。

同社の創業は2012年で、創業者は元レーシングドライバーのIIya Ekushevskiyと元デベロッパーのArtem Altukhovの2人だ。彼らがBusforを起業したのは、旧ソ連諸国ではどの交通手段よりもバスが利用されていることに気づいたことがきかっけだった。しかも、それらの国々で利用されているオンラインのチケット販売サイトはどれも酷いクオリティのものばかりだった。

同社のプラットフォームを利用することで、バス会社やバス停は簡単にバスチケットのオンライン販売ができるようになる。同サービスはロシア、東欧諸国、独立国家共同体(CIS)に所属する12ヵ国、タイで利用可能だ。Busforはこれまでに5000社のバス運営会社と提携を結んでおり、月あたりの利用ユーザー数は200万人だという。

同社の競合にはドイツのFlixbusとインドのRedBusなどがある。しかし、Busforのビジネスモデルはこの2社を組み合わせたものであり、それによりバス運営会社はより広いマーケットにアプローチすることが可能となる。その結果、運営会社は他社と競争するためにサービスのクオリティを高めなければならず、乗り心地のよいバスの購入などにもっと資金を回すようになるかもしれない。便利なプラットフォームだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter