一般の人がIPOや追加資金調達に投資しやすくする英PrimaryBidが218.5億円調達

フィンテックの発展により、投資などの金融サービスが、より多くの消費者にとってますます身近なものになっている。このたび、このコンセプトの限界に挑戦している大手企業の1つが、旺盛な需要と今後の大きな可能性を信じて、大規模な資金調達を発表した。上場しようとする企業や、資金調達を行う上場企業が、従来の株式売却と並行して個人投資家(つまり専門家ではなく普通の人々)に株式を提供できるよう支援するPrimaryBid(プライマリービッド)が、このほど1億9000万ドル(約218億5000万円)を調達したのだ。

PrimaryBidの共同創業者であるAnand Sambasivan(アナンド・サンバシバン)CEOによると、ロンドンに拠点を置くこのスタートアップは、調達した資金を利用して、企業に提供する製品の開発を継続する計画だという。たとえばSPACベースの株式公開や、リテール債への投資などが含まれる。さらに同社は新たな地域への進出を計画しており、特に米国にオフィスを開設することを視野に入れている。米国では、その市場に上場している企業と協力するために規制当局の承認を得るプロセスの途中で、2022年後半か2023年にはローンチする予定だ。

PrimaryBidは現在、約60のチャネルと提携して投資を可能にしており、その中には現在一般人が投資を行うために利用している証券会社や投資アプリも含まれている。そして今でもその数は増え続けている。

サンバシバン氏によると、同社の使命は、一般の人々に銀行や他の大規模なプロの投資家と並んでIPOに直接投資する機会を提供し、株式公開の理念に「公共性」を取り戻すことだ。

サンバシバン氏はいう「もし今、公開市場が発明されたら、100年前のようになるでしょうか?いいえ、そうはなりません。サービスはAPIで相互運用され、モバイルアプリを使って、投資へのアクセスがさらに簡単になるでしょう。これは、アップグレードが必要なシステムなのです」。

SoftBankがVision Fund 2を通じて、今回のシリーズCラウンドを主導しており、以前からの投資家も匿名で参加している(2020年10月に行われた5000万ドル[57億4000万円]のシリーズBラウンドには、London Stock Exchange Group、Draper Esprit、OMERS Ventures、Fidelity International Strategic Ventures、ABN AMRO Ventures、Pentech、Outward Venturesなどが参加している)。

サンバシバン氏によれば、PrimaryBidは評価額を公表していないものの、PitchBookに掲載された1月の報告の時点では、評価額6億5000万ドル(約746億5000万円)で1億5000万ドル(約172億3000万円)が確保されていたという。これは、その当時Sky News(スカイ・ニュース)が、このラウンドの噂を最初に流し、プレマネーの評価額を5億ドル(約574億3000万円)としたことを受けたものと思われる。もしこうした数字が正確ならば、現在のPrimaryBidの評価額は6億9千万ドル(約792億5000万円)前後になるだろう。

シリーズB以降PrimaryBidは、一般の人々の投資の世界にもっと参加したいという欲求に後押しされて成長を続けている。同社によると、過去18カ月間で、約150件のIPOや追加株式発行に対して、個人投資家向けの投資を支援したという。これまでは主に英国で展開してきたが、現在はフランスでも活動を開始し、投資家であるABN AMROの協力を得て、オランダでのビジネス展開も視野に入れている。同社がてがけた大規模な株式売却には、Deliveroo(デリバールー)、PensionBee(ペンションビー)の売却や、英国での株式売却を通じて行われた2021年のMCG Group(Soho House[ソーホー・ハウス])の米国でのIPOなどがある。

サンバシバン氏は「資本市場に大きな足がかりを得ました 」とインタビューで答えている。「(私たちが戦っているのは)一般の人々がもはや公開市場から排除されているという考えです。上場する優良企業の中には株主に対する強い思い入れをもつ企業もありますが、それをIPOに反映できてこなかったのです。企業は皆、熟考した上でしっかりと一般の人々を含めることに価値を見出していて、私たちはプラットフォームを通じてそれを実現する手段を提供しています。私たちは持続的な成長を遂げていますし、私たちがやっていることは重要すぎて失敗することはできないと信じています」。

PrimaryBidは、他の一連の動きも手伝って、長い間形作られてきた関心の波に乗っているところだ。Robinhood(ロビンフッド)やRevolut(リボルト)のような金融アプリや、ヨーロッパで人気の高い新しい投資アプローチETFの成長は、一般消費者が興味を持ったり、良いリターンをもたらしてくれるかもしれないと考える公開企業や通貨(暗号資産を含む)への投資をずっと容易にした。これまでは、こうした投資は証券会社やプロの投資家が相手にする富裕層にしかできなかったことだ。

2021年のGamestop(ゲームショップ)の株式騒動のような出来事は、投資大衆化の落とし穴もあらわにしたかもしれないが、それでも一般投資家の力がいかに大きくなったかを浮き彫りにしている。そうした大衆化の波が、IPOや追加株式発行に押し寄せるのは時間の問題だったのだ。

B2C企業が株式公開や資金調達の一環としてユーザーに株式を提供することには強い動機がある。なぜなら、顧客たちは自分が信頼しすでに利用している企業を、とりわけ支援したいと考えるからだ。それは、これからも増える一方だ(例えばRedditのCEOは、同社が上場する際には個人投資家に株式を提供したいと述べている)。

しかし、企業や投資家自身がそうした市場の需要から恩恵を受けるのは、なにも消費者向けのビジネスに限った話ではないとサンバシバン氏は指摘する。実際、PrimaryBidが扱ってきた取引のうち、B2Cは10%程度に過ぎないという。

SoftBank Investment AdvisersのパートナーであるAnthony Doeh(アンソニー・ドー)氏は「PrimaryBidは、これまでは機関投資家やプロ投資家向けに発行されていた株式に、誰でも簡単にアクセスできるようにすることで、資本市場におけるインクルーシブ性を強化しています」と声明の中で述べている。そしてさらに「このチームは、株式発行企業のための独自のコミュニティIPOプラットフォームの開発を含む、参加者の拡大という課題に対して、テクノロジー、データ、『エコシステムフレンドリー』なアプローチを組み合わせたプラットフォームを構築したと考えています。私たちは、彼らとパートナーを組めることに興奮していますし、私たちのグローバルなネットワークと専門知識が彼らのビジネスに大きな価値を付加できると信じています」と語っている。

画像クレジット:ALotOfPeople / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

アマゾン、インド独禁監視当局にCatamaranからのPrione株式購入の承認を求める

Amazon(アマゾン)は、eコマースプラットフォームで最大級の販売事業を運営するCatamaran Ventures(カタマラン・ベンチャーズ)が持つPrione(プリオーネ)の株式を購入するため、インドの反トラスト法監視当局の承認を求めている。両社が2022年5月以降は合弁事業を更新しないと発表してから数カ月が経過している。

今回の発表は、CatamaranがPrioneの76%の株式を所有していることから、驚きをもって受け止められている。Amazonは以前、同社の49%の株式を保有していたが、eコマース企業が自社のマーケットプレイスで販売する企業に直接または間接的に出資することを禁じるインドの法律を順守するため、24%に希釈した。

両社は現地時間12月22日の共同声明で、取引を完了するために「すべての資産と負債を含む」適用法を遵守しており、規制当局の承認を求めていることを明らかにした。Amazonはインドの監視機関であるインド競争委員会に承認を求めていると、この件に詳しい人物は述べた。

億万長者のN.R. Narayana Murthy(N.R. ナーラーヤナ・ムールティ)氏のCatamaranとAmazonは、2014年にインドで合弁事業を開始した。インドの規制変更にともない、合弁会社は2019年に所有権を再編した。そして2021年8月、両社は提携を終了すると発表した。

その発表は、ロイターがAmazonの資料を引用して、AmazonがCloudtail(クラウドテイル)を含む少数の販売者グループに何年も優遇措置を与え、インドの法律を迂回するためにそれを利用していたと報じた後だった。インド競争委員会はそれとは別に、AmazonとFlipkart(フリップカート)が自社のeコマースプラットフォームで一部の販売者(出資している販売者)を宣伝し、競争を阻害する商習慣を用いた疑いがあるとして2021年に調査を命じている。両社はこの調査を却下する試みを行ったが、失敗に終わった。

AmazonとCatamaranは12月22日に共同声明で「合弁会社の事業は現経営陣のリーダーシップの下で継続し、規制当局の承認を得た上で、PrioneとCloudtailの取締役会は適用される法を遵守して取引を完了するための措置を取ります」と述べている。

Cloudtailは、インドのAmazonで最大の販売者の1つだ。30万人以上の販売者と起業家のオンライン化を実現し、400万の加盟店にデジタル決済機能を提供してきたと、両社は2021年初めに発表した。

インドでは長年の法律により、Amazonや他のeコマース企業が在庫を保有したり、消費者に直接商品を販売したりすることが制限されてきた。これを回避するために、企業は在庫保有企業として活動する現地企業との合弁事業という迷路を通じて事業を展開してきた。

インドは2018年末、当時国内におけるアメリカ企業への最大の反撃と広く見られた動きで、この抜け穴の修正に取りかかった。AmazonとWalmart(ウォルマート)傘下のFlipkartは、何十万もの商品を店頭から撤去するために奔走し、関連企業への投資をより間接的なものにした。

2021年6月、インドはさらに厳しいeコマース規制を提案し、とりわけAmazon、Flipkart、その他のeコマース企業が自社ブランドあるいはプライベートブランドを運営することを禁止している。この新提案では、eコマース企業に対し、顧客に直接販売するための売り手として、その関連・関係者がプラットフォームに掲載されないようにすることを求めている。(インド政府はまだこの新規制について動いていない)。

Amazonは、Patni Group(パトニグループ)との合弁会社であるAppario Retail(アパリオリテイル)を含む、さらにいくつかのサードパーティの販売者に出資している。

画像クレジット:NOAH SEELAM / AFP Photo / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏がテスラ株1240億円超分を売却

Tesla(テスラ)のCEO、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、先週末にTwitterでフォロワーに所有する自社株の10%を売却すべきかどうかを問う投票を行った結果、約10億9000万ドル(約1243億円)分のTesla株を売却した。投票では57.9%が売却に賛成し、42.1%が反対した。そして今に至る。

米国時間11月10日に米証券取引委員会(SEC)に提出された複数の書類によると、マスク氏は210万株を超えるストックオプションのうち93万株以上を、1株あたり6.24ドル(約710円)で売却した。11月8日にTeslaの株価が4.8%下落したため、マスク氏の株は1株あたり1200〜1100ドル(約13万6800〜12万5400円)で売られた。

マスク氏は提出書類の中で、ストックオプションの行使に関連する納税義務を満たすために持ち株の一部を売却したことを明らかにした。同氏は、2012年に1株あたり6.24ドルで付与されたストックゲインに対して所得税を課せられているが、11月10日に1067.95ドル(約12万1800円)で取引を終えた今日の株価を見ると笑ってしまう。マスク氏がこれらのストックオプションを行使する場合、150億ドル(約1兆7000億円)超の税金が課せられることになる。

このニュースはまったく驚くべきものではない。マスク氏は以前から、保有するテスラ株の大規模な売却を公言しており、SECへの提出書類によると、同氏はすでに9月14日に株の売却を計画していたことが明らかになっていて、ツイッターでの動きは単なるショーだった。さらに、9月に行われたテックジャーナリストKara Swisher(カーラ・スウィッシャー)氏との対談で、マスク氏はストックオプションの大部分が2022年8月に期限切れになると述べ、第4四半期に売却することを多かれ少なかれ約束していた。

マスク氏は現在も1億7000万株以上を保有しており、持分は約17%だ。

画像クレジット:Britta Pedersen-Pool / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏が株売却の是非をツイッター投票で問う、背景には迫り来る多額の税金支払い

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOが、6280万人のソーシャルメディアのフォロワーに対して、自身が保有する自社株の10%を売却することを支持するかどうかを尋ねたところ、米国時間11月8日月曜日の朝、テスラの株価は4.5%下落した。もっとも、いずれにせよマスク氏がまとまった量のテスラ株を売却する可能性は高い。

マスク氏の問いかけには、全投票数の約58%に相当する約350万人が賛成票を投じた。同氏はその後のツイートで「この投票結果がどちらに転んでもそれに従う」と述べている。彼の言葉を信じるならば、それは将来的に大量の株式売却が行われることを意味する。

最近、含み益が租税回避の手段になると言われていますが、私はテスラ株の10%を売却しようかと思っています。

これを支持しますか?

だが、このツイートは単なる芝居にしか見えない。マスク氏はすでに他の公式声明でテスラ株の大量売却を示唆していたからだ。9月にテクノロジー系ジャーナリストのKara Swisher(カーラ・スウィッシャー)と対談した際、マスク氏は自身が保有するテスラのストックオプションの大部分が、来年8月に期限切れとなることを認めている。「来年初めに失効するストックオプションをたくさん持っているので、第4四半期には大量のオプションを売却することになるだろう」と、マスク氏は語っていた。

2012年に役員報酬の一環として付与されたストックオプションにかかる税金も控えている(マスク氏は、テスラから給与を受け取っていないと頻繁に発言している)。2012年に1株あたり6.24ドル(約700円)で付与された株の譲渡益には所得税が掛かるわけだが、テスラの株価は現在1200ドル(約13万5000円)を超えている。オプションを行使した場合、150億ドル(約1兆7000億円)以上の税金が課せられることになる。

今回のツイート投票が、一時的に株価を押し下げる以上の影響をもたらすかどうかは不明だが、マスク氏のソーシャルメディア上における悪ふざけは、かつて株主との間で困った事態を引き起こしたことがある。2021年3月、マスク氏はテスラの投資家から、彼の「気まぐれなツイート」が、米国証券取引委員会との和解案に違反しているとして訴訟を起こされた。この和解案では、テスラの取締役会がマスク氏のソーシャルメディア活動を監視しなければならないことになっていた。

この時の訴状で引用されたツイートの中には、2020年5月にマスク氏が投稿した「Tesla stock is too high IMO.(私の意見を言わせてもらうと、テスラの株価は高すぎると思う)」というものもあった。

画像クレジット:HANNIBAL HANSCHKE/POOL/AFP / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

MovesはギグワーカーにUber、Lyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供しようと取り組む

トロントを拠点とするギグエコノミーフィンテックのスタートアップMovesは、ギグワーカーらが所属する企業の株式を、ギグワーカーへの報酬として提供できるようにしたいと考えている。Moves Collectiveと名付けられた同サービス。第一弾として木曜日にはUberの株式を提供し、その後すぐにLyft、DoorDash、Grubhubの株式を提供する予定だとMovesのCEOであるMatt Spoke(マット・スポーク)氏は話している。

ギグワーカーたちが株主になれば、彼らが働くプラットフォームと彼ら自身の経済的なつながりをより強く感じてもらうことができるかもしれない、というのがMovesの考えである。さらにMoves Collectiveを通じて十分な数の労働者がこれら企業の株式を保有すれば、将来的には議決権を持つ集団を形成して企業の意思決定に実際に影響を与えることができるかもしれないと考えているのである。Movesによると、Moves Collectiveはすでにこれらの企業の「かなりの株式」を保有しており、そのすべてが議決権付きの普通株式だという。

この1年間、ギグエコノミーワーカーの劣悪な労働条件が労働者の抗議行動を引き起こし、カリフォルニア州、イリノイ州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州ではギグワーカーを従業員として見直し、ヘルスケアや休暇手当、有給病気休暇などの基本的な権利を与えようとする試みが行われてきた。Uber、Lyft、DoorDash、Instacartなどの企業は、カリフォルニア州で進行中の「Proposition(プロポジション) 22」をめぐる騒動に反撃し、マサチューセッツ州ではギグワーカーを独立した契約者として分類する提案を2022年11月の投票にかけるための連合体を結成している。

「ギグワーカーはギグエコノミーに膨大な価値をもたらしていますが、貢献した結果としての経済的リターンはまったく得られていません。私たちが解決しようとしているのは、ギグワーカーのみなさんが働いている企業の成功には、彼らが経済的に関与しているのだと感じられるようにすることです」とスポーク氏はTechCrunchに話している。

すでに同社のプラットフォームを利用しているギグワーカーは、Collectiveに登録して株式という形で報酬を受け取ることが可能だ(ギグワーカーはさまざまな企業からの金を追跡および管理し、毎月の支出口座や最大1000ドル(約11万4000円)までの即時ビジネスキャッシングを利用できる)。「3人の友人を紹介する」や「ユーザーアンケートに参加する」など一連のタスクをこなすことで、ギグワーカーは無料の株式や株式の一部を受け取ることができ、その株式はMovesが開設したユーザー自身の証券口座に入るという仕組みになっている。

「Moves Collective」という名の通り、長期的には莫大な数のギグワーカーを結集させて企業のガバナンス決定に反映させられるだけの声を生み出すことを目的としている同社。ギグワーカーの利益を確実に反映させるために、これら大手プラットフォームの年次株主総会で委任状資料の提出を提案する予定だとスポーク氏は話している。

ギグワーカーがMovesカードを使って買い物をするたびに蓄積されるインターチェンジレートがMovesの主な収益源となっており、またその収益がMovesからワーカーに還元される株式の原資となっている。

「新規顧客を獲得し、その顧客を維持するために、収益を効率的にトレードしていると言えるでしょう。ギグワーカーの当座預金の利用で我々が得た収益を商品に還元し、株式建ての報酬の資金を調達しているのです」とスポーク氏は説明する。

現時点では同プログラムは招待制になっており、株式報酬プログラムであるBumped Financialとの提携により株が蓄積されている。スポーク氏によるとMovesはInstacartの株購入を見据えて同社のIPOにも注目しているという。またFlexの配達員にはAmazonの株を、Shiptの作業員にはTargetの株をサポートすることも検討しているという。

アプリを使ったギグエコノミー企業はどこも「同じ問題」を抱えているとスポーク氏はいう。「ドライバーや作業員の離職率が非常に高く、作業をしてくれる人が定着しないのです。彼らは他のギグアプリに移るか、ギグエコノミーから完全に離れてしまうため、これらの企業は何千万ドル、何億ドルもの費用をかけて常に労働者を入れ替えているのです」。

参考:Uberがドライバーを取り戻すためにインセンティブとして2億5千万ドル(約285億円)を費やした結果、第2四半期に大規模な損失が発生

UberとLyftは株式公開前、ドライバーの定着率を高めて、労働者のロイヤルティを生み出す仕組みとしてドライバーに株式を発行することを検討したものの、規制上の問題が両社の真摯な取り組みを阻んだ。最終的に両社は一部のより活動的なドライバーに対して一度限りの現金を支給し、株式を購入するオプションを与えることにした。Uberはドライバーに向けて全体の3%にあたる普通株540万株を用意したが、ドライバーによって買い占められなかった場合は一般に提供すると伝えている。

参考までに書くが、株式公開時に8.6%の株式を保有していたUberの創業者兼CEOのTravis Kalanick(トラビス・カラニック)氏は、その持ち株で約50億ドル(約5691億円)を得ている。また5.2%の株式を保有していたAlphabetは約32億ドル(約3643億円)を獲得。当時、米国を拠点とするドライバーは、最大1万ドル(約114万円)相当の自社株を購入できる現金ボーナスを利用することができたのである。

ギグエコノミーに依存している企業が労働者にストックオプションを提供する際の規制は、非常に厳しいものとなっている。SEC Rule 701は、企業が従業員、コンサルタント、アドバイザーに報酬としての株式を発行する際に、詳細な財務記録を提出する必要がないことを認めているが、ギグカンパニーにはこの適用除外がうまく当てはまらない。2018年、SECは働き方の変化に適応するためにルールを拡張するとした場合の、可能な方法についてコメントを要求した。Uberは締め切り日を過ぎたものの回答を提出し「パートナーに会社の成長を共有することで、パートナーとその先の世代の収入と貯蓄の機会を強化」できようにするためにSECがルールを改定するよう要求している。

現在の法律では、UberやLyftがドライバーに株式でインセンティブを与えようとすれば、雇用者のテリトリーを侵害することになりかねない。しかし、UberやLyftのこれまでの姿勢を見ると、このようなサービスは将来的に外部に委託することになるのではないだろうか。

「Uber、Lyft、DoorDash、Instacartの4社がProp 22のような課題で一致団結し、新たな規制に反対するロビー活動を行っていることもあり、彼らはこれが業界にとって全般的にプラスになるとは考えていないでしょう」とスポーク氏。「最終的に我々は彼らと経済効果を共有する方法を模索することになると思います。1年後、2年後には、弊社が提供できる具体的な利益についてUberと話し合い、『Uber株を発行されたドライバーは、より長く働く可能性がX%高いためこの資金調達に一部参加すべきだ』などと提案することになるでしょう」。

Movesによると、現在全米50州で約1万人のユーザーが同社のプラットフォームを利用しているという。ライドヘイリング業界がパンデミックで大打撃を受ける直前の2020年2月に設立され、2021年4月から市場に進出した同社。来年前半には再び資金調達を開始する予定だが、スポーク氏によるとMovesは事業のシナリオにおけるユニットエコノミクスを洗練させ、Moves Collectiveのユースケースが出来上がるまでは、資金調達を行いたくないと考えている。

「Uberがドライバーを大切にしていないわけではないのですが、ドライバーは彼らの主要なステークホルダーではありません」とスポーク氏。「Uberの主なステークホルダーは消費者です。彼らは消費者側の市場価値を革新するために全力を尽くしており、労働者は後回しにされていることが多いのです」。

画像クレジット:Moves

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)