中小企業のマーケティングとセールスを自動化するActiveCampaignは評価額3200億円で260億円調達

世界に名前を知らしめようと各企業が新しいデジタルツールの導入を続けるなか、中小企業向けのセールスとマーケティングのためのプラットフォームを構築するスタートアップが大型ラウンドによる資金調達を発表した。ActiveCampaign(アクティブキャンペーン)は「顧客体験オートメーション」と同社が説明するシステムを構築し、デジタルキャンペーンのみならず、その後の処理を自動化してセールスとマーケティングの効率化を行う企業だ。同社は、2億4000万ドル(約260億円)の投資ラウンドをクローズした。このシリーズC投資により、シカゴに拠点を置くこのスタートアップの評価額は30億ドル(約3200億円)となった。

これを主導したのは、新規のビッグネーム投資企業Tiger Global。そこに新規の支援者としてDragoneerと、以前からの投資者であるSusquehanna Growth EquityとSilversmith Capital Partnersが参加している。

この資金調達により、ActiveCampaingは大きく飛躍することになる。同社は2020年1月に1億ドル(約108億円)を調達したばかりだ。それ以前は、2003年の2000万ドル(約22億円)が唯一の調達だった。

だが、他所でも多く見られたように、パンデミックにより、オンラインでもっといろいろな、ずっと多くのことができるという関心が企業間に広がった。特に大勢の人たちが家に引きこもるようになったこともあり、顧客の生活はインターネットに移行し、ActiveCampaingの顧客ベースは、16カ月前の9万件から14万5000件に拡大した。

これが示すのは、同社がパンデミック以前にかなりの急成長を遂げていたのもさることながら、むしろ多くの企業が新世界で事業を展開するためのツールを求めるようになった流れに、うまく乗ったということだ。

この成長は、ActiveCampaingが事業開発に大量の資金を投入した結果ではないと、創設者でCEOのJason VandeBoom(ジェイソン・バンデブーム)氏はいう。「それは成功を求める人たちによるネットワーク効果です。今でも、自発的な口コミが主原動力です」。

同社のツールは、ビジネス界の幅広いトレンド全体に適合するものだ。新しいクラウドベース技術の上に構築される自動化システムが、経営上の退屈な反復作業を肩代わりするものとして導入され始めている。

セールスの場面では、ActiveCampaingが提供するであろう事例として、ログイン中の(つまりすでにアカウントを持ちサインインしている)顧客が、すでに検索やクリックしていながら、さらにはカートに商品を入れながら、それを買うことなくサイトから「離れてしまう」の時期を特定するというものがある。このときは、顧客にその商品の追加情報を添えてリマインダーを送る。買う気が失せたか、考え直している場合なら、説得できる可能性があるからだ。

ユーザーはそれを拒否できるが、関連性のない大量のお知らせや、判断を迷わせる大量の選択肢など、商品を見て回るときの気持ちを散漫にさせるオンラインの本質を考えると、便利な点もある。実際ActiveCampaignは、850種類ものアプリを統合し、オンラインの世界がどれほど細分化されているか、注意力を散漫にさせる要因がいくつあるか、または視点によって注目度が変わるものがどれだけあるかを測定している。

放棄されたカートは企業の負担になる。積み重なれば、大きな損失となる。しかし、その追跡は、通常は貴重な人材を専任させてまで行うことではない。そこに、ActiveCampaingのような企業の出番がある。

セールスおよびマーケティングのキャンペーンでは、これに加えて500ほどの作業がある。バンデブーム氏は、これを「レシピ」と呼んでいるが、その一部はActiveCampaing自身のユーザーによって提供されており、それが同社のプラットフォームの基盤を形成している。

マーケティングとセールスの自動化市場は、現在、数十億ドル(数千億円)の価値があると見積もられている。ソーシャルメディアが台頭したおかげで、また単にオンラインで過ごせる場所が多く(そしてオンラインで過ごす時間も長く)なったことで、2027年には80億ドル(約8600億円)規模を超えると予測されている。そのため、収益性が高く、よく利用されているオンラインビジネス用ツールが強く求められるようになる。もちろん、そこに目を付けた企業は他にもある。例えば同じ問題に別の角度からアプローチするShopify(ショピファイ)などがそうだ。Shopifyは現在、ActiveCampaingの重要なパートナーになっていると、バンデブーム氏は私の質問に答えて話していた。

これはActiveCampaingにとってターゲティングを継続する大きなチャンスであるだけでなく、それ自体をターゲットにする可能性をももたらす。つまり買収だ。

もう1つ、ActiveCampaingの成長を支えた要素として注目すべき点に、顧客に関連するものがある。その顧客ベースには、地元シカゴの科学産業博物館のような有名どころも含まれているが、中小企業を重視する同社は、その他におよそ200カ国にわたり、およそ14万5000社の企業と取り引きがある。

中小企業は、世界のあらゆるビジネスの大部分を占める。これが集まって、彼らを顧客として捉えるテック企業に大成功をもたらしている。しかし伝統的に、中小企業は難しいセクターであることが知られている。その理由の1つに、非常に多くの垂直市場をカバーしているため、同業の大企業に比べて、いろいろな意味で価格に敏感である点がある。

そのためActiveCampaingは、多くの中小企業が納得できる価格を含め、大きなトラクションを得る方法を探り当てた。それはまた同社が、勝ち馬に乗ろうと目を光らせる投資家の興味を引く要因にもなったようだ。

同社は資金調達をする必要はなかったのだが、バンデブーム氏はこう話している。「垂直でもロケールでもなく、顧客体験のためのアイデアを意図的に追究することを投資家は好むと話すパートナーを、もっと増やせるチャンスだと見たのです」。

「私たちは、この旅が始まった当初から最前列の席に着けたのが幸いでした。まさに息を呑むような体験でしたが」とSilversmith Capital PartnersのマネージングパートナーTodd MacLean(トッド・マクリーン)氏はTechCrunchに宛てたメッセージで述べている。「他の急成長を遂げた企業と比較しても、その勢いと資本効率は類い稀です。しかし、ジェイソンは稀少な起業家であり、イメージどおりのチームを築き上げました。まだやるべきことは山積みですが、私たちは唯一、この市場機会の表面に爪を立てられたと信じています。ジェイソンとそのビジョンを強力に支援できることに、私たちは大きな喜びを感じています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ActiveCampaignTiger Global資金調達

画像クレジット:AlexSecret / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:金井哲夫)

プログラミングなしで業務自動化を実現するTonkeanが約26億円調達

新型コロナウイルスによる危機でリモートワークを強いられ、ワークフローに困難が生じている会社が増えている。こうした中、多数のスタートアップが業務プロセスの効率化を助けるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を提供するビジネスに乗り出している。

Tonkeanは業務自動化プラットフォームを専門とするサンフランシスコのスタートアップで、まとまった額のシリーズAラウンドを成功させたという幸運に恵まれている。

同社はTechCrunchに対し「Lightspeed Venture Partnersがリードする2400万ドル(26億円)のラウンドを完了した」と述べた。これを機にLightspeedのパートナー、Raviraj Jain(ラビラジ・ジャイン)氏がTonkeanの取締役に就任している。同社はこれまでに3100万ドル(34億円)を調達している。

同社のプロダクトは顧客が自由にカスタマイズできる業務のオートメーションとデータ、ソフトウェアの管理プラットフォームだ。システムは多様なデータソースと統合でき、運用の柔軟性が高い。 カスタマイズによりタスクを適切な担当者に振り分け、フォローアップを自動化し、システム間でデータを移動するなどが容易にできるようになる。Tonkeanのソフトウェアは、広汎なカスタマイズを可能にしているが、その焦点は、チームのワークフローから繰り返しの多い定形業務をできるかぎり自動化すること、人間の作業を必要とするタスクの前処理を行うことにあるようだ。

Tonkeanの共同創業者でCEOのSagi Eliyahu(サギ・エリヤフ)氏はTechCrunchの取材に対し、「エンタープライズソフトウェアの将来は多様な業務への適応性とパーソナル化だ」と語った。

同社のテクノロジーは「人間をループ内に含む業務のロボット化」と要約されるという。重点はプログラミングせず、コードを書かずにプラットフォーム上にタスクを構築してコンピュータに自動的に実行させるオートメーション化だ。業務プロセスの作成には一見して明らかなドラッグ・アンド・ドロップが用いられ、誰でも容易にワークフローを構築できるのがセールスポイントだ。ユーザーは他のユーザーがアップロードした業務テンプレートを利用して同種の業務を簡単に自動化することができる。

RPAは最近非常にホットな分野だ。この分野の有力企業、Automation AnywhereUIPathなどがとてつもない会社評価額を得ている。 ただし業界大手が大型クライアントの獲得に力を入れているのに対してTonkeanは業務ワークフローの自動化に焦点を絞っている。今のような未知の要素を抱えた世界ではこのアプローチが成功への近道かもしれない。

画像:Andrey Suslov / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook