3月3日はスーパーチューズデー、バイデン復活のカギはシリコンバレーでの資金調達

いよいよ米国時間3月3日にスーパーチューズデーを迎える。民主党大統領候補を目指すJoe Biden(ジョー・バイデン)元副大統領はサウスカロライナ州でBernie Sanders(バーニー・サンダース)候補に大勝した勢いを維持して復活を図ろうとしている。シリコンバレーが今後のバイデン候補の民主党予備選における資金を調達する生命線となる公算は高い。

バイデン候補を支持する政治行動委員会(スーパー PAC)のUnite the Country(我が国を統合しよう)にはシリコンバレーの成功者が多数含まれている。委員会の財務責任者、Larry Rasky(ラリー・ラスキー)氏はCNBCのインタビューで、「我々はスーパーチューズデーに放映する広告枠を購入している」と述べている(米国時間2月28日のFederal Election Committeeの文書で公開ずみ

これまでのUnite the Country委員会のFECデータにはLinkedInのファウンダーでGreylock Partnersのベンチャー・キャピタリスト、Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏 の50万ドル(約5420万円)、エンジェル投資家のRon Conway(ロン・コンウェイ)氏の25万ドル(約2710万円)などが記録されている。

FEC提出文書

バイデン候補は劣勢を続けていたが、サウスカロライナ予備選でサンダース候補に28.5%ポイントの差をつけて勝った。しかしバイデン候補はアイオワ、ニューハンプシャー、ネバダの予備選で連敗し、 資金調達が困難になっていると報じられていた。

直近に公開されたFEC(連邦選挙活動)報告書によればサウスカロライナ予備選でバイデン候補の手持ち資金は710万ドル(約7億6910万円)だったのに対し、サンダース候補は1700万ドル(約18億4150万円)近かった。

サウスカロライナ予備選以降、民主党の大統領候補指名争いはサンダース対バイデンに絞られた感がある。一時ブームとなったPete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)氏が撤退し、大富豪のTom Steyer(トム・スタイヤー)氏も去った。元ニューヨーク市長でBloombergグループの創立者、Mike Bloomberg(マイク・ブルームバーグ)氏は今回初めてスーパーチューズデーに挑戦するが、同氏が期待しているようなブームを起こせるかどうかは不透明だ。

指名獲得に必要な代議員数ではサンダース候補がバイデン候補を引き離している。バーモント州上院議員のサンダース候補はスーパーPACによる資金調達を拒否して1億2600万ドル(約136億4700万円)という巨額の選挙資金を小口の寄付のみで調達してきた。

NBCニュース

共和党が弱い巨大州(ニューヨーク、カリフォルニアなど)は、本選で民主党候補が取れることが確実であり非常に重要な地域だ。ここでの選挙活動に十分な資金調達をできるかどうかは、大きな意味を持つ。サンフランシスコ周辺やマンハッタンなど富裕層がいる地域は民主党候補にとっていわば貯金箱として機能してきた。

しかし、シリコンバレーでバイデン・グループが資金調達活動に力を入れることは、テクノロジー企業内部の政治的亀裂を明るみに出すリスクがある。つまり成功したファウンダーや企業上層部が穏健で全国区で勝ち目のあるバイデン候補を推す一方で、中下層の有権者は「バーニーはすごいぞ」というキャンペーンスローガンに傾く。

LA TimesCenter for Responsive PoliticsのFEC文書の分析によれば、ハイテク企業の労働者による小額寄付は圧倒的にサンダース候補に集中している。LA Timesは「サンダース候補はGoogle、Amazon、Apple、Microsoft、Facebookの社員からの少額寄付のみでバイデン候補の4倍近い100万ドル(約1億1000万円)以上を集めた」と報じている。た。

テクノロジー系大企業内部の分裂は、候補者の政策の差異によるものだ。バイデン候補の立場は、全般に穏健で各種のイニシアチブにも現実性がある(のに対して)、サンダース候補は奨学金問題に焦点を絞っており、Facebookなどの大企業に亀裂を持ち込む可能性がある。サンダース候補は、ハイテク企業内の賃金格差に厳しく対処し、FacebookとAmazonを分割すべきだと強く主張している。

しかし資金調達がどうであれ、カリフォルニア州のファウンダーも社員も3月3日の火曜日には投票所で自分の意見を表明するチャンスがある。カリフォルニア州は、予備選のスーパーチューズデーを構成する13州の1つだ。この結果は今後の予備選および選挙資金調達の行方に反映されるだろう。民主党の大統領選挙候補者は2020年7月にミルウォーキーで開催される党全国大会で決定される。

画像: Alex Wong / Getty Images

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滑川海彦@Facebook

アイオワ州の集計アプリ問題は起こるべくして起こった

アイオワ州民主党党員集会の投票結果をアナウンスするために作られたスマートフォンアプリは結局正常に機能せず、ほぼ丸1日におよぶ膨大な遅れをもたらした。

伝統的にアイオワ州党員集会は、州内各群の集会を利用して、どの大統領候補者を支援するかを決めるために用いられてきた。結果の監査には紙の投票用紙が使われる。民主党候補を指名するための1990票のうち、アイオワ州にはわずか41票分の代理人しかいないが、それでも全米で誰が立候補を勝ち取るかのバロメーターと見られている。

そのためのプロセスを近代化し、スピードアップをはかるべく、アイオワ州民主党はアプリを発注した。

しかし、Shadowという会社が作ったそのアプリは、壮大な惨事を招いた。電話で結果を報告することになった選挙区もあった。

アイオワ州民主党広報担当者、Mandy McClure【マンディー・マクレア)氏はアプリの障害を「報告機能の問題」でありセキュリティーやハッキングではないと説明した。後にマクレア氏は、「コーディングの問題」だったと語った。集計結果は米国時間2月3日の夜遅くには発表される予定だったが、2月4日の午後まで延期されるとアイオワ州民主党は説明しているり

果たしてこれを予測できた人はいたのか?実はかなりの人数がいた。「そもそもアプリなど必要なかった」とノースカロライナ大学のZeynep Tufekci准教授がツイートで語った。

アプリについてはほとんど情報がなく、1月にNPR誌が概略紹介した後でさえ秘密に覆われていた。これは米国大統領候補指名プロセスで使われる初めてのアプリであり、電子投票やアプリを利用することはハッカーに露出する恐れがあることが懸念されていたにもかかわらず決行された。

わかっているのは、ハッカーにシステムを悪用されることへの恐怖から、セキュリティーの詳細が秘密に覆われていたことだ。これは「隠蔽によるセキュリティー」は誤りであると主張するセキュリティー専門家らから批判を浴びていた。国土安全保障長官のChad Wolf(チャド・ウルフ)氏は火曜日のテレビ出演で、アイオワ州民主党はアプリのセキュリティー欠陥をテストする同省の申し出を拒否したと語った。そして、秘密であるゆえにアプリが十分なテストを受けたことを示す証拠はない。テストしたとして、どんなレベルのテストや検査だったのかも不明だ。

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不吉な前兆はあったという人たちもいる。「正直なところ、アイオワ州党員集会でこの新アプリに起きたことについて、陰謀論や不正行為を疑う必要はない」とテスト会社であるMobile LabsのCEOであるDan McFall(ダン・マクフォール)氏がメールで私に話した。「これは、当社の企業ユーザーの間でで何年も前から起きている話だ。注目を集める重要な締め切りに向けて、新しいアプリケーション開発が強引に推し進められる。モバイルアプリはみんなが思う以上に難しく、初期リリースは遅れるのが普通であり、納期を守るために実践的テストのプロセスを省けばカオスが約束されている」。

テスト会社のApplauseを率いるDoron Reuveni【ドロン・レウベニ)氏も同意する。開発者自身には見えないことのある「盲点」を見つけるために十分なテストとリアル世界でのテストが必要だと語った。サイバーセキュリティー会社のCyberVistaのCEOで元国防総省アナリストのSimone Petrella(シモーネ・ペトレア)氏は、単純な問題に高度なソリューションは必要ないと語った。

「Googleスプレッドシートか何かの共有ドキュメントで十分」とペトレラ氏は語った。「セキュリティーを守りつつエンドユーザーが操作しやすいソリューションを開発、提供することは驚くほど困難で高くつく」とPetrella氏は言う。「この種の課題を解決するソリューションやアプリを作るのなら、設計当初からセキュリティーを考慮し、開発プロセス全体を通じて厳重なプロダクトテストと検証を行い、すべてが保存され、データは正しく安全に操作されていることを保証する必要がある」

今回の大失敗が、7月の民主党全国集会までにそれぞれの大統領候補を選ぶ党員集会を予定している他の選挙区や州に警鐘を鳴らすことは間違いない。

ネバダ州は2月に行われる党員集会で同じアプリを使うと言われていたが、計画は破棄された。

「我々はアイオワ州党員集会で使用されたアプリやデベロッパーを使わない」と広報担当者は言った。「すでに代替手段や冗長性のある報告システムを開発しており、現在最善の手段を評価しているところだ」。

Shadowは、ツイートでアイオワ州党員集会の問題について「遺憾の意」を表明し、「この教訓を将来に活
生かす」と語った。

そんな重要な事案になぜアプリを使うのか、というのが今多くの人々が自問している疑問だ。アイオワ州が選挙でテクノロジーを使ってはいけない典型例になったことは、少なくとも明るい話題だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米大統領選アイオワ民主党集会は集計アプリのバグで混乱続く

大統領の座を巡って共和党候補(ほぼ間違いなくドナルド・トランプ現大統領)と戦う民主党の大統領候補が決定するのは今年末になるはずだが、アイオワ州の民主党党員集会は長い予備選の幕開けとなるため、極めて重要な意味を持つ。このチャンスを生かしてブームを作れるかどうかが予備選の勝利に直結する。全国の有権者、メディアの関心も集中していた。

それだけにアイオワ党員集会をめぐる2月3日の混乱は非常に憂慮される事態だ。いまだに集計結果が発表できず、いったい誰がどれほど勝ったのか不明だ。

この混乱の中心はShadowという営利企業によって開発されたといわれるモバイルアプリだ。New York Timesの記事によれば、アイオワ州民主党が利用したアプリは「この2カ月で大急ぎで作られた」プロダクトで、「これほど重要な政治イベントで集計に用いられるアプリなら当然要求される綿密なテストを経ていない」という。アイオワ民主党は Shadowに6万3000ドル(約690万円)を2回分割で支払い、「安くて簡単に使えるツール」の開発を依頼したと報じられている。

TechCrunchでは2月3日の夜、集計用モバイルアプリがクラッシュして結果発表が遅れていることを報じた。アイオワ民主党の広報担当、Mandy McClure(マンディ・マクルーア)氏は声明で「結果に関する3種類の数値の間に矛盾がある(ため精査している)。基礎となる報告、またそのデータにはまったく問題がないので結果発表が若干遅れるだけだ」と述べた。

同氏は「ハッキングや悪意ある侵入などの形跡はない」と付け加えた。2016年の選挙にロシアのハッカーの介入があったという報道が繰り返されたことを考えると重要な点だ。

アプリを開発したShadowの背景にはいくぶん不明な点がある。民主党進歩派のNPO組織であるACRONYMは自サイトでShadowを「ローンチした」としていた。しかし昨夜の混乱の後、広報担当のKyle Tharp(カイル・タープ)氏は「単に投資しただけ」と距離を置き、「アイオワ民主党にいかなるテクノロジー上の援助もしていない」と述べた。ACRONYMの声明によれば「我々は、皆と同様、アイオワ民主党からさらに情報が明かされるのを待っていると声明した。

ACRONYMのサイトのAboutページには当初、「2019年1月、我々はShadowをローンチした。これは選挙運動の組織者がキャンペーンを効率的に実施するためのテクノロジーを開発する企業だ」と書かれていた。これが事件後には「 2019年1月にわれわれはShadowに投資した」と修正されていた。

アイオワ民主党の委員長、Troy Price(トロイ・プライス)氏は問題発生に続く声明で、「プログラミング上の問題」によるものだとした。

我々の調査によれば、(問題の)アプリが収集してデータは自体は正常でありまったく問題ないと判明した。 アプリはデータを正しく記録したものの、データの一部分しか集計出力されないという問題が起きていた。調査の結果、これはアプリの結果出力部分のプログラミング上の問題だと結論した。問題は同定され、すでに修正されている。アプリの結果出力の問題は各地区の責任者が報告した数値の健全性になんら影響を当たるものではない。

(…)地区責任者からの結果報告は現在もアイオワ民主党に送られ集計されつつある。われわれは即日、可能な限り早く結果を公開する予定だったが、データの整合性と正確さを最重点とする立場から、集計発表は延期された。

またプライス氏は「システムはセキュリティ専門家がチェックした」と述べ、ハッキングや侵入の試みがなかったことが確認されていることを繰り返した。

【略】

LA Timesの報道によれば、Shadowは当初Groundbaseと呼ばれ、 2016年の大統領選でヒラリー・クリントン候補のデジタルキャンペーンのスタッフだったGerard Niemira(ジェラルド・ニーミラ)氏とKrista Davis(クリスタ・デイビス)氏によって創立されたという。正確な状況や原因が不明であるため、民主党員の間には、当然ながら、このデジタル集計システムに対する不信が高まっている。

画像:Tim Hynds/Sioux City Journal / Getty Images

【Japan編集部追記】 「3種類の数字」は「参加党員の最初の選択、2回目の選択、最終の選択」。MSNBCの報道によれば、これは前回の大統領選のアイオワ集会で勝利したヒラリー・クリントン候補と次点となったバーニー・サンダース候補の差が0.3%しかないことで紛糾したため。各地区の責任者はモバイルネットを通じてこのアプリで3組の数値をアイオワ民主党本部に送ることになっていたが、トラブルが多発して電話連絡を利用するなどしている。

ShadowのCEOであるニーミラ氏のLinkedin登録ページによれば、彼はACRONYMのCOOでGroundBaseの共同創業者兼CEO、「ヒラリー・フォー・アメリカ」のプロダクト・ディレクターを歴任している。それ以前の職歴は、途上国向けマイクロファイナンスのKiva.orgに7年8カ月在職している。ボストン大学卒業となっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook