求人広告でSpaceXのテキサス宇宙港の構想が判明

SpaceX(スペースX)は、人や物を輸送できる次世代宇宙船Starship(スターシップ)の建造と試験を現在行っているテキサス州ボカチカで、大きな計画を立てている。CNBCの宇宙担当記者Micheal Sheetz(マイケル・シーツ)氏が発見(Twitter投稿)した新しい求人広告(SpaceXウェブサイト)では、SpaceXの宇宙船建造と打ち上げ試験の場となっている小さなボカチカ地区にもっとも近い隣町ブラウンズビルでの「拠点開発責任者」を募集している。

この求人広告では、「SpaceX初の拠点開発を、チームの組織作りから完了まで監督する」マネージャーを求めている。ゆくゆくはボカチカを「21世紀の宇宙港」にする構想だ。この仕事には、設計から建設に至る全行程を監督することと、さらに必要なあらゆる作業許可と規制当局の認可を取得し、最終的に施設の建物を完成させる責任を負う。

SpaceXは、理想的な宇宙港がどのような姿になるかを表したコンセプトデザインを提示している。またCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、6月に、惑星間飛行と、地球上の2地点間飛行のための浮遊港にしたいという意図を示していた。それが発表された当時は、海上作業エンジニアを募集していた。それも場所はブラウンズビルだ。

この新しい求人広告からは、SpaceXが宇宙飛行体験の最初から最後までを自分たちで作り上げたいとの意欲が伺い知れる。ここは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)がニューメキシコ州に建設中のSpaceport America(スペースポート・アメリカ)とよく似ている。Virginは、民間宇宙観光旅行で提供する、宇宙船の客室空間と、打ち上げ場の地上設備の両面で、顧客エクスペリエンスに大きな重点を置いている。

SpaceXは、Crew Dragon(クルー・ドラゴン)を使用した有料の民間軌道飛行の計画も発表し、民間宇宙飛行士を打ち上げるための独自の宇宙船の準備を進めているが、NASAの宇宙飛行士、Bob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏を乗せた有人ミッションを無事成功させたことで、有人宇宙飛行の認可が以前よりもぐっと近づいた。あのデモミッションは、その認可プロセスの最終段階だった。現在SpaceXは、早くも来年の打ち上げウィンドウを目指した、民間宇宙飛行士の飛行計画を軌道に載せたところだ。

画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:金井哲夫)

民間弾道飛行での宇宙飛行士の訓練にNASAは期待を寄せる

宇宙を第二の故郷と呼ぶ宇宙飛行士でさえ、初飛行を経験している。NASAは、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)やBlue Origin(ブルー・オリジン)に委託して宇宙飛行士たちを弾道飛行を体験させ、数々の挑戦的な宇宙計画に備えてもらおうと考えている。これは現在、芽生え始めている民間宇宙飛行業界に新たな巨大市場が開かれることを示唆している。

2020年3月に開かれたNext Generation Suborbital Researchers conference(次世代準軌道研究者会議)で、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官が演壇に立ち、NASAが現在民間ロケットの利用を検討しているのは、単にこれまでその可能性が存在していなかったからだと話した。

「それは、つい最近まで私たちが国として所有していなかった能力です」と彼は、Space.comの記事の中で語っている。

だが、現在その能力が確かにあると断言もできない。Virgin GalacticもBlue Originも、宇宙との境目をほんのかすった程度の弾道(準軌道)飛行を実証できただけで、試験飛行や商用飛行となると、まったく別の話だ。

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Virginは既にチケットを発売しているが、客を乗せた初飛行の日程は決まっていない。2020年中に行われる公算は大きいが、信頼できるスケジュールを立て、ミッションの成功を記録しない限り、現時点ではただ熱望しているだけとしか見えない。それが宇宙旅行というものだ。その道の99パーセントは、まだ霧の中だ。

だがVirginにせよBlue Originにせよ、ロケットの打ち上げを請け負うその他の企業にせよ、今後数年以内に、ペイロードや人を乗せる能力を持つ宇宙船の弾道飛行を成功させることは間違いない。NASAが彼らの採用に熱心なのは、そのためだ。

それと同じぐらい避けられない現実として、奇妙に思えるのは宇宙飛行士の訓練をすべて地上で行わなければならないことだ。彼らはさまざまなシミュレーターで訓練を行う。いわゆる「嘔吐彗星」や、彼らが大好きなプールでのトレーニングなどだ。それでも宇宙を体験するには、宇宙に行くしかない。

Commercial Crewのデモミッションで最初にISSへ飛行する予定の宇宙飛行士Bob Behnken(ボブ・ベンケン)とDoug Hurley(ダグ・ハーレー)。Crew Dragon宇宙船のシミュレーターを操作している。

つい最近まで、それは何億ドルもするロケットの先端に乗ってISSまで飛ぶことを意味していた。またはその昔は、オービターや着陸船で月へ行くことを意味していた。

その準備として可能なことはほんのわずかしかないが、ごく限られた中の1つとして、安価で一時的な宇宙飛行がある。それを実現するのが弾道飛行だ。

ロケットで大気圏外に出て、その結果として数分間の無重力を体験できる環境は、訓練や実験や、その他のこれ以外には軌道上でしか行えない活動にはうってつけだ。NASAはその実現を期待しているのだが、まだ実際の契約には至っていない。

VirginやBlue Originなどの企業は、最初の数回の弾道飛行によりチケットの完売をほぼ確実にしたが、宇宙ツーリズムには産業としての実績はなく、また現在のパンデミックやその後に予想される経済の落ち込みにより、そうした高額商品(または宇宙ツーリズムを提供する能力)は深刻なダメージを受ける恐れがある。そのためこうした政府との定期契約は、弾道飛行の提供や支援を行う企業にとっては、ほぼ間違いなく大きな安心となる。

「これはNASAにとって大きな移行ですが、重要な移行です」とブライデンスタイン長官は言う。この移行は、近年の政府事業がそうしているような、単に民間企業への委託を増やすという程度の話でなく、民間飛行を公式なトレーニングに利用するということだ。飛行は徹底的に安全でなければならないが、ISSへの飛行時と同じ厳格な基準に従う必要もないと長官は述べている。

実際にはNASAが運用しない飛行でのトレーニングやテストが増えることで、新しいミッションの準備が促進される。準備が加速されると同時に、その能力を唯一持っていたNASAによる飛行ミッションに依存するこれまでのようなプログラムの煩雑さが低減される。私は、この件に関する詳しい内容をNASAに問い合わせている。新しい情報が入り次第お伝えする予定だ。

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(翻訳:金井哲夫)