代替肉ブームに乗って海藻をハンバーガーにしたAKUAが3.6億円獲得

世界の代替肉の市場規模は、2年前には45億1000万ドル(約5140億円)で、2027年までに倍増すると見込まれており、スタートアップを惹きつけている。AKUA(アクア)のような代替肉テック企業も含まれる。同社は、この新しい業界で、重要な地位を確立することを目指している。

テクノロジージャーナリストだったCourtney Boyd Myers(コートニー・ボイド・マイヤーズ)氏は5年前、Matthew Lebo(マシュー・レボ)氏と共同でAKUAを創業した。マイヤーズ氏は、後世に何かを残し、気候変動を食い止めるという使命を果たせる仕事を探していた。

フードマーケターの父のもとで育ったボイド・マイヤーズ氏は、ファストフードの食生活が人に与える影響を目の当たりにし、地球にも良い影響を与える、より健康的な食品を常に探していたと話す。

AKUAの共同創業者でCEOのコートニー・ボイド・マイヤーズ氏(画像クレジット:AKUA)

創業者らは当初、食品に関して持続可能性に欠ける部分、つまり工場的畜産を再生可能な海洋農業に置き換えることを考えていた。ボイド・マイヤーズ氏は友人からケルプの養殖場を見せてもらう機会があり、行ってみたところ、とても気に入り、それからAKUAが誕生した。

AKUAは米国時間11月5日、Vibrant Venturesのリードによる320万ドル(約3億6000万円)のシードラウンドを発表した。資金調達総額は540万ドル(約6億2000万円)となった。総額には、プレシード投資家やRepublicのキャンペーンからの投資や、共同創業者らの出資が含まれている。

また、今回のラウンドには、Pegasus Sustainable Finance、Halogen Ventures、Fifth Down Capital、Alumni Ventures Group、Karmagawa、ニューイングランド・ペイトリオッツのコーチで元ラインバッカーのJerod Mayo(ジェロッド・マヨ)氏、美容業界の創業者であるCristina Carlino(クリスティーナ・カーリノ)氏、SmartyPantsのCEOであるCourtney Nichols Gould(コートニー・ニコラス・グールド)氏、Sir Kensington’sの共同創業者であるBrandon Child(ブランドン・チャイルド)氏、Gellert Global Groupの社長であるAndy Gellert(アンディ・ジェラート)氏、SOAのSeabird Ventures、Blue Angelsといった面々が参加した。

2019年には、4種類のフレーバーを揃えた最初の商品「Kelp Jerky」を発売した。これはボイド・マイヤーズ氏が、海で養殖されたケルプを新しい形で人々に見てもらう良い試みだと考えた商品だった。

「運を天に任せてというところはありました。ですが、とにかくヘルシーです」と同氏は付け加えた。「パンデミックの際には新製品の開発に戻り、『The Kelp Burger(ケルプバーガー)』を考案しました」。

このバーガーは、ビーガン(完全菜食主義者)、非遺伝子組み換え、大豆フリー、グルテンフリーで、原材料として、海で養殖されたケルプ、クレミニマッシュルーム、エンドウ・プロテイン、黒豆、キヌア、クラッシュ・トマト、複数のスーパーフードが含まれる。

しかし、ジャーキーでは可能だった試食が実施できなかったため、フードクラブを立ち上げ、ハンバーガーのサンプルを送った。最終的には1000人の顧客が登録し、The Kelp Burgerは「英雄的商品」になったとボイド・マイヤーズ氏は話した。

肉の代替品には、化学的な保存料や耳慣れない成分が含まれていることが知られており、より健康的な選択肢を求める目的が損なわれてしまう。最近では、Shiruのように、この問題に注目しているスタートアップもある。同社は、より体に良い肉の接合剤の開発を目指し、1700万ドル(約19億円)を調達した

ボイド・マイヤーズ氏は、AKUAがケルプバーガーの原材料を考える際、そうした主張がヒントになったと話す。ケルプバーガーは15の原材料から成り、すべてが食品または食品由来だ。

「植物由来の食事の第1波は、Boca Burger、豆、豆腐でした」と同氏は付け加えた。「第2波はImpossibleとBeyondです。第3波はホールフードやクリーンな食事への回帰になるでしょう。これまでに存在したものがなければ、私たちは今日ここで、より優れた植物性バーガーを作ることはできなかったと思います」。

AKUAは5月に消費者への直接販売を開始し、現在はアラスカとハワイを除くすべての州に出荷している。ボイド・マイヤーズ氏は、同社には売り上げがあり、リピーターもいるものの、成長の指標を語るには時期尚早だと説明する。しかし、同社は小売店舗にも手を広げており、ニューヨークでは100店以上から予約注文を受けた。今後数カ月のうちに出荷し、続いてサンフランシスコとロサンゼルスの店舗にも出荷を見込む。

同社の品揃えには、ジャーキーやハンバーガーの他に、ケルプパスタもある。今回の資金調達は、代替肉や植物由来のシーフードの分野で、ケルプやそれ以外の食品、例えばレンズ豆などを使った新製品の研究開発に充てる。

同社は、ケルプのひき肉製品をソフトローンチした。2022年第2四半期にはケルプのクラブケーキを発売する予定だとボイド・マイヤーズ氏は話す。また、人材をさらに採用し、販売・マーケティング活動を強化する。

同氏は、Vibrant Venturesの創業者であるJarret Christie(ジャレット・クリスティー)氏と一緒に働けることをうれしく思うと語った。他の創業者から紹介されたという。Vibrant Venturesは、7月に発足したロサンゼルス発の新しい「植物由来志向」のファンドだ。

クリスティー氏はボイド・マイヤーズ氏を知るにつれ、同氏がコミュニティビルダーであると考えるようになった。工場的畜産から脱却し、気候変動と戦い、人々がより低価格で健康的な食品を手に入れられるような運動を起こしていると見ている。

「半年前には誰の目にも留まらなかったケルプですが、今では作物の飼料や包装資材、作物の肥料としても検討されています」とクリスティー氏はいう。「ボイド・マイヤーズ氏はケルプの生産者と手を取り合って働いています。これは始まりに過ぎないと思います」。

画像クレジット:AKUA / AKUA Kelp Burger

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

元Momentumの高頭氏、糖尿病患者向け海藻スーパーフードパウダーのTeatisで約7700万円のシード調達

シリアルアントレプレナーの高頭博志氏は、妻をがんで亡くしたことをきっかけに、重症患者の消費者のための便利で栄養価の高い食品の必要性を感じるようになった。

高頭氏は、2017年にステルスモードで糖尿病患者向けの植物性糖質制限スーパーフードパウダー「Teatis(ティーティス)」を立ち上げ、医師や管理栄養士のグループと手を組んで2021年4月に本格的に事業を開始した。

Teatisは米国時間9月9日、米国市場での成長を推し進めるために、シードラウンドで70万ドル(約7700万円)を調達したと発表した。このシード資金により、Teatisの資金調達総額は100万ドル(約1億1000万円)を超えた。

今回のシードラウンドは、Genesia Ventures石塚亮氏(メルカリの元CEOで共同創業者)、野口卓也氏(日本のスキンケアブランドBULK HOMMEの創業者兼CEO)が主導した。このほか、7名のエンジェル投資家が今ラウンドに参加した。

Teatisの共同設立者である高頭博志CEOはTechCrunchに、今回のシード資金は、1億2200万人の糖尿病患者および糖尿病予備軍が糖尿病に対する予防と治療に取り組んでいる米国での生産とマーケティングに使用されると語っている。同社は現在、生産拠点のある米国市場に注力しており、次の資金調達であるシリーズAは2022年に予定されていると同氏は付け加えた。

「当社商品を使用するお客様の大部分、約88%は糖尿病を疾患しており、当社のレシピは糖尿病患者の血糖値管理に役立つように作られています。膨大な数の米国人が糖尿病を患っており、栄養価が高く、便利で機能的な糖尿病患者向けの食品が求められています」と高頭氏は語る。

Teatisは、低糖質食品に関心のあるすべての消費者と、糖尿病予備軍のためにサプリメントを開発していると高頭氏はいう。Teatisの植物性パウダーは化学物質や甘味料を含まず、褐藻エキス(アラメ)などの日本では伝統的な原料を含んでおり、腸管からの糖の吸収を抑え、血糖値を下げることが証明されている。この低糖質パウダーは、お茶やラテにしたり、スムージーに加えたりすることが可能だ。

高頭氏は、米国の糖尿病向けミールリプレイスメント製品の市場規模は50億ドル(約5500億円)、米国の糖尿病患者向けパッケージ食品の市場規模は約3000億ドル(約33兆円)と推定している。

「当社は、食品科学とテクノロジーを融合し、食品とテレヘルスを通じて糖尿病患者の問題を解決します」と同氏は語る。

Teatisは、糖尿病患者の健康のための総合的なワンストップショップの構築を目指しており、2021年9月中に管理栄養士プラットフォーム「Teatis RD on Demand(オンデマンド登録栄養士)」を立ち上げ、食品、テレヘルス、レシピなど、糖尿病と闘う人々のためのフルサービスを提供開始する。

Teatis RD on Demandは、登録管理栄養士による1対1のプライベートセッションを提供する。従来の対面でのアポイントメントが30分あたり150ドル(約1万6500円)、遠隔アポイントメントが30分あたり90ドル(約9900円)であるのに対し、30分あたり29ドル(約3200円)からと、コストを抑えた設定になっている。

Genesia Ventures(ジェネシア・ベンチャーズ)投資マネージャーの相良俊輔氏はこう述べている。「この分野の既存プレイヤーの多くは、デジタルコンピテンシーやデータ主導方の生産方式を持たない古い企業です。高頭さんは、市場を掌握する資質と大胆さを備えた、実績あるシリアルアントレプレナーです。Teatisのすばらしいアイデアと製品が、今後、糖尿病やその他の慢性疾患に苦しむ多くの人々の助けになることを期待しています」。

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画像クレジット:Teatis

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(文:Kate Park、翻訳:Aya Nakazato)