海賊、麻薬、汚染、違法漁業など海上監視に最適化された産業ドローン用AI特化のTekeverが約26億円調達

産業用ドローンは、消費者が余暇に楽しむ無人航空機を事業用に補完するものである。その市場は、バッテリー寿命やリーチ、パフォーマンスを向上させるソフトウェアおよびハードウェアテクノロジーの新しい波と、データオペレーション活動の強化を目的にこれらのサービスに投資する企業の増加を追い風に、急速に拡大している。米国時間1月25日、海上展開向けドローンのAI開発に特化した企業が、そのデバイスとサービスに対する強い需要を見据えて、資金調達ラウンドを発表した。

水上の活動を監視および検知するAIを組み込んだドローンを手がけるTekever(テクエバー)が、2000万ユーロ(現在のレートで2300万ドル[約26億円]弱)を調達した。このラウンドをリードしたのはVentura Capital(ベンチュラ・キャピタル)で、Iberis Capital(イベリス・キャピタル)と海洋産業からの複数の匿名の戦略的投資家が参加した。同社は今回調達した資金を、人材の雇用拡大とテクノロジー開発の継続に活用する予定である。

歴史的な海洋大国ポルトガルのリスボンに本拠を置くTekeverは、2001年に設立され、2018年から商用サービスを開始した。だが同社はすでにかなりの期間にわたって収益性を確保しており、今後3年間でCAGR(年平均成長率)60%の成長を見込んでいる。そして実際、これは同社にとって初めての外部資金調達であり、ビジネス機会の増大にともない、テクノロジーの拡張、そしてより広範な組織への販売を視野に入れたものである。

Tekeverの顧客には、違法行為に備えて水域を監視する目的で同社のサービスを利用している各国政府および政府機関が含まれる。また、民間の船舶会社やその他の海洋関連会社も、気象パターンや水上交通など、事業にインパクトを与える可能性のある物理的活動をドローンで追跡している。

Tekeverを創業したのはインテリジェンスとAIの専門家チームで、共同創業者兼CEOのRicardo Mendes(リカルド・メンデス)氏は、自社を垂直統合ビジネスとして位置づけている。同社はドローンと塔載テクノロジー両方の設計と構築を手がけており、そのテクノロジーは、機体の下に広がる水上で起きていることの監視と「読み取り」、さらには次に何が起こるかの予測を行う。

垂直統合されたドローン会社はそれほど珍しいものではないが、より独自性のある側面として、Tekeverがそのスタックを構築した順序を挙げることができる。

「私たちは、ドローン業界の他のどの企業とも正反対の方向からスタートしました」とメンデス氏は冗談交じりに語った。同社はまず地形(同社の場合は水域)を読み取るテクノロジーの構築に着手し、その後、自社のソフトウェアを動作させる目的に適したドローンを構築した。それには機体自体に組み込まれる特別仕様のアンテナ、センサー、電力機能などが含まれている(このことは、現時点では、同ソフトウェアが他の航空機で動作することを本質的に不可能にしている)。一方でこのソフトウェアは、エッジAI、衛星通信、クラウドコンピューティングを組み合わせて使用するように設計されている。

ドローン専用のハードウェアを自前で構築するのは難しい(そして費用がかかる)。しかし、それは同社にとって意図されたものであった。Tekeverは両方のコンポーネントを販売しているが、最も広く展開されているのは、自社フリートのオペレーション、そして「Atlas(アトラス)」というブランド名の、メンデス氏が筆者に「サービスとしてのインテリジェンス」と形容した、ドローンを使った監視サービスの販売である。同氏によれば、このアプローチは同社のプロダクトを可能な限り広範にアクセス可能にするために特別に取り入れられたもので、翼幅2メートルから最大8メートル、飛行時間が20時間にも及ぶドローンは、最大規模の顧客以外にはコストが高すぎることが背景にあるという。

「私たちが答えを出そうとした問いは『富裕国に限らず、世界中で手軽にこれを利用できるようにするには、何をする必要があるだろうか』というものでした」と同氏は語っている。「ドローンはバリューチェーンの一部にすぎません」。

Tekeverがどのように利用されているかの例として、欧州海上保安庁(EMSA)と英国内務省の両方が顧客である一方、アフリカの小さな共和国も顧客に含まれている。こうした機関では、海賊行為、麻薬、人身売買、移民の密入国、汚染、違法漁業、インフラの安全上の脅威に関与する船舶を監視する目的で、同社のテクノロジーが幅広く使用されている。

The Guardian(ガーディアン)紙が最近報じたところによると、欧州の政府機関は難民グループの監視体制強化に向けて、ドローンやその他の軍事技術に数百万ユーロ(約数億円)を投資しているという。これらの投資は不法移民を抑止するものではなく、脆弱な人々に対してさらに危険なルートを取るよう促すだけであるという明確なメッセージがそこには記されている。この分野の他の企業の中には、Anduril(アンドゥリ)のように、彼ら自身の論争を踏み台にして莫大な金銭的報酬を得ていると思われる企業もある。しかし、TekeverのCEO兼創業者は、自身の会社が市場の特定の技術的ギャップを埋めるということだけではなく、その利用は害をもたらすよりも利益をもたらすものであることを確信している。

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「海のような広大な領域では、何が起きているのかわからないことが多く存在します」と同氏はいう。一般的に、組織は水上で起きていることの状況把握を衛星画像に頼ってきたが、ほとんどの衛星画像はユーザーが見るときには数日経過しているため、その方法は理想的ではない。「漁業、密輸、人身売買、移民、これらはすべて、リアルタイムのインテリジェンスが必要な分野です。当社のソリューションは単なる映像にとどまらず、問題解決の糸口になるものです。その目的は、悪い事象が発生する前に行動できることに置かれています」。Tekeverは予測的アナリティクスも使用しているため、何が起こるかを予見することができる。

「私たちが行っているのは、問題発生時にその問題を解決する膨大な量のデータを収集することです」と同氏は述べ、対応に5分余分に時間がかかっただけでも、水の状態が変化する速度のために違いが生じる可能性があると指摘した。例えば、英国内務省の場合、イギリス海峡で移民船を特定し、彼らを岸まで送る手助けをし、潜在的な悲劇的事故を回避することが優先事項の1つであると同氏は指摘した。「メディアは移民問題そのものに焦点を当てていますが、これは大きな人道的問題でもあると思います」と同氏は語る。

Tekeverが今後、そのテクノロジーを発展させる可能性のある方法は山ほどある(方法の海であふれている、ともいえようか)。水域を観察してその意味を理解するには膨大なデータを処理する必要があるが、同時にそれによって同社は大量のデータセットを利用できるようになる、とメンデス氏は説明する。遠洋航海用船舶に搭載されているライダーやレーダーで識別するような、海底での活動を読み取ることはまだできていない。だが同社はこの分野を開拓し始めている。他にも、原油流出の特定と分類が考えられる、と同氏は述べている。

Tekeverは現在、メンデス氏が筆者に「ブルーエコノミー」と表現したものに注力しているが、同社はまた地上においても地歩を固めつつある。その焦点は、極めて複雑な地形を観察する新しい方法の創造を追求し続けることに置かれているようである。同氏はさらに取り組みたい分野として、森林、特に熱帯雨林に言及している。同社は数年前にブラジルのドローン会社Santos Lab(サントス・ラボ)に投資しており、その分野に足場を築いている。

「Tekeverはとても型破りなUAS(無人航空機システム)企業であり、卓越したテクノロジー、何千時間ものオペレーション経験、経験豊富なリーダーシップチーム、そして急成長する市場において驚異的かつ収益力が強いビジネスビジョンを有するマーケットリーダーです」とVentura CapitalのマネージングパートナーであるMo El Husseiny(モ・エル・ハッシニー)氏は声明で述べている。「これらの特性は、VenturaがTekeverをフラッグシップ投資として位置づけた背景をなす要素であり、テクノロジー分野のディスラプターで構成される私たちのポートフォリオと整合するものです」。

「Tekeverは欧州で最も注目されているディープテックスケールアップの1社であり、このチームと協働し、彼らがグローバル市場のディスラプションを創出するのを支援していくことを大変誇りに思います」とIberis CapitalのパートナーであるDiogo Chalbert Santos(ディオゴ・チャルバート・サントス)氏は続けた。「Tekeverがすでに自力で成し遂げていることは驚くべきものであり、今回のラウンドで空は果てしなく広がる(可能性は無限に広がる)といえるでしょう」。(サントス氏は言葉遊びを使わずにはいられないようで、私の心にかなった投資家の1人である)。

画像クレジット:Tekever AR5

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

サムスン、廃棄漁網由来のスマホで持続可能性への取り組みを強化

韓国のエレクトロニクスの巨人、Samsung(サムスン)は、ここ数年サステナビリティ(持続可能性)を派手に宣伝し、同社のエコシステムに影響をあたえている。「コーポレートシチズンシップ」などのスローガンや、環境に優しいサプライチェーンや材料、製造の強い推進など、今まで以上にグリーンな世界を強調している。Galaxy for the Planet(地球のためのGalaxy)プロジェクトの一環として、アップサイクルプログラムプラスチック包装の廃止など数多くの取り組みに続いて同社が繰り出す最新の妙技は、捨てられた漁網の再利用による環境保護だ。

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米国時間2月9日のGalaxy新機種発表を前に、同社は新しい材料が製品ラインナップのどこに居場所を見つけるかを垣間見せた。強調したのは、プラスチックの使い捨てをやめることによる効率向上と、再利用材料(特に、消費財再利用材料)や再生紙などの環境に優しい材料の使用をさらに強化することだった。

実際に意味のある影響を与えることを確かめるべく、同社は毎年64万トン廃棄されている漁網に注目した。少なくともこの一部を収集し、再利用することで少しでも海洋をきれいにする取り組みを、会社は誓約した。その結果、捨てられた漁網に絡みつかれていた海洋生物にとって、水辺の環境は少しでも改善されるだろう。

廃棄された網を海に残さないことがどの程度の環境的効果を生むのかは不明だが、マスコミに取り上げられる効果は多少なりともあるだろう(画像クレジット:Samsung)

Samsungは2021年の報告書でこれまでに数多くの善行をなし、一部のパッケージをデザイン変更したことでプラスチック使用を20%削減し、製品に省エネ機構を加え、500万トン近くの「電子廃棄物」を収集し、製造工程廃棄物の95%の再利用を確保していることを主張している。同社は、米国、ヨーロッパ、および中国で100%再生可能エネルギーも実現している。さらに、Carbon Trust Standard(カーボントラスト標準)による、二酸化炭素、水、および非リサイクル材への依存削減などの認証取得も進めている。

海洋プラスチック汚染に対し、環境および「全Galaxyユーザーの生活」に良い影響を与える方法で取り組むことを誓約する、と同社はいう。ということは、Galaxy以外の携帯電話を持っている人の生活は過去とまったく変わらないということか、それは、どうもありがとう。

冗談はさておき、そして岩礁から漁網などのごみを片付けるために数日間潜水服で過ごしたことのある1人として、これはエレクトロニクス巨人による前向きな行動だと私は思う。果たしてこれが、目に見える影響を環境にあたえるかどうかはまだわからない。Samsungは、年間64万トンの漁網のうちどれだけを海洋から取り除こうとしているのかを明らかにしていないが、コミュニケーションと測定が続いていることには希望がもてる。Samsungや他の大手メーカーが互いにグリーン化を競い合い、気候変動に対する理想的な解決策ができるまでに地球を焼け焦げにしないための役割を果たして続けてくれること願うばかりだ。

Samsungの努力に拍手を送る。そして、もしみんなが携帯電話を1年半ではなく3年毎に買い換えるようにすれば、もっと目に見える影響があるはずだ。

画像クレジット:Samsung

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

海洋研究開発機構とトリマティス、海中の光ワイヤレス通信で距離100メートル超×1Gbpsの通信速度を達成

海洋研究開発機構とトリマティス、海中の光ワイヤレス通信で距離100メートル超×1Gbpsの通信速度を達成

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は1月26日、深海域での高速光ワイヤレス通信の試験を実施し、100mを超える距離で1Gbpsの通信速度を達成したと発表した。これは、光高速制御などのハードウェア技術開発ベンチャー、トリマティスと共同で行われている海中ワイヤレス通信研究の成果だ。海中でも地上と変わらない速度で通信が可能となり、世界でも類を見ない(2021年12月12日時点)この通信速度が、この分野のパラダイムシフトを招くと期待されている。

海中での通信は、現在は音響通信が一般的だが、その通信速度は数Kから数十Kbpsと非常に遅い。近年ではレーザー光を用いた光通信が注目され、さかんに研究が行われているものの、速度は今のところ数Mbpsクラスの実績(実用化)に留まっている。

JAMSTECは、2008年からレーザー光の海中伝搬統制に関する基礎研究を開始した。さらに海中レーザー通信技術の基礎を確立する研究を開始し、海中環境がレーザー光の伝搬特性や通信品質に与える影響を精査、その原理や条件を明らかにする基礎研究を進め、通信方式の検証を行ってきた。そして2019年からはその成果である海中光学技術にトリマティスの高速光通信技術と光制御技術を合体し、1Gbpsの光ワイヤレス通信試験機を完成させた。

1Gbps光ワイヤレス通信試験機

1Gbps光ワイヤレス通信試験機

試験は、2021年11月27日から29日にかけて相模湾で行われた。実験装置は、無人探査機「かいこう」のランチャーから1Gbpsに変調したパルスレーザー光を送信し、ビークルで受信するというもの。ランチャーとビークルの間を10mずつ離してゆき、通信の成否(誤りのない試験フレームの受信数)、受光強度、伝搬場の環境パラメーターを計測した。その結果、100mを超える距離でも良好な受信が確認された。このときの水深は900m。ランチャーの深度は約699.5m、ビークルの深度は802.9mだった。

この技術を用いることで、海中や海底で計測される様々な状態や現象をリアルタイムで取得できるようになるため、海底資源開発、地震や津波などの防災技術に貢献できる。また、海中移動体や海底構造物といった多様なプラットフォーム間の情報伝達や情報共有がリアルタイムで成立する、ワイヤレス海底センサーネットワークの構築も可能となる。

今後は、光ワイヤレス通信リンクを確立するために必要となる光軸制御やシステムの統合化、小型化、さらには通信品質を担保する符号化アルゴリズムに取り組むとしている。

東大発サンゴベンチャーの「イノカ」、国内で初めて完全人工環境下でのサンゴの抱卵実験に成功

東大発サンゴベンチャーの「イノカ」、国内で初めて完全人工環境下でのサンゴの抱卵実験に成功

東京工業大学 中村隆志研究室の顕微鏡にて撮影

環境コンサルティングなどを行う東大発の環境移送企業イノカは1月6日、人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽において、サンゴの抱卵時期のコントロールに国内で初めて成功した。自然界では1年に1度と限定的なサンゴの抱卵を人為的に導くことが可能となり、20年後には70〜90%が消滅すると心配されているサンゴ礁保全に貢献することが期待される。

イノカでは、水質(30以上の微量元素の溶存濃度)をはじめ、水温・水流・照明環境・微生物を含んだ様々な生物の関係性など、多岐にわたるパラメーターのバランスを取りながら、IoTデバイスを用いて特定地域の生態系を自然に限りなく近い状態で水槽内に再現するという同社独自の「環境移送技術」により、完全人工環境下でサンゴの長期飼育を行っている。今回の実験では、沖縄県瀬底島の水温データをもとにして、自然界と時期をずらして水温を同期させることで、サンゴ(コユビミドリイシ)の抱卵時期をコントロールすることに成功した。

このサンゴは、イノカの水槽で2年以上飼育されているもので、2021年8月時点では抱卵は確認されていなかった。今回の抱卵は、黒潮流域の生態系に関する調査研究を行っている黒潮生物研究所の目崎拓真所長も画像データから確認を行った。東京工業大学 中村隆志研究室の顕微鏡にて撮影東京工業大学 中村隆志研究室の顕微鏡にて撮影

サンゴ礁は、海の表面積のわずか0.2%ながら、そこに海洋生物の25%が暮らしているという。また、護岸効果や漁場の提供、医薬品の発見など人間の社会生活に重要な役割を担っている。その経済価値は、WWFの報告によると、50年間で約8000億ドル(約92兆円)とも推定されている。この実験が進み、サンゴが、ハツカネズミやショウジョウバエのように何世代にもわたる研究調査が可能なモデル生物に加われば、サンゴの基礎研究が大きく進み、サンゴの保全に寄与することが考えられるとイノカでは話している。

今後は、完全人工環境下での今年中のサンゴの産卵に向けて、実験が継続される。

魚やフジツボにも負けず海に浮かんでデータ収集する自律制御式センサーの増加をSofar Oceanが計画

海は広大で謎めいている……が、数千個もの小さな自律制御式のブイが毎日興味深い情報を報告してくれたら、そんな謎はかなり減るだろう。それこそがSofar Ocean(ソーファー・オーシャン)という企業の目的であり、同社は7つの海をリアルタイムで理解するというビジョンを実現するために、3900万ドル(約44億円)を調達した。

Sofar Oceanでは「オーシャン・インテリジェンス・プラットフォーム」と称しているが、本質的には海流、水温、天候など、さまざまな重要な海洋指標のリアルタイムマップを同社は運営している。これらの情報の一部は、人工衛星や海上の大規模な船舶ネットワークからいつでも簡単に得ることができるが、数千もの熱心な観測者が波に乗ることで得られる粒度やグラウンド・トゥルースは非常に明確だ。

昨日の測定値や通過する衛星による推定値ではなく、15分前のデータを得ることができれば、航路や天気予報(陸地でも)などについて、より多くの情報に基づいた判断を下すことが可能になる。もちろん、このような大量のデータは無数の科学的応用にも役に立つ。

現時点で、数千個の同社が「スポッター」と呼ぶものが海に存在しているという。

「海の大きさを考えると、この数はまだ少ないと言えるでしょう」と、CEOのTim Janssen(ティム・ヤンセン)氏はいう。確かに、他の誰も実現したことがない数ではあるが、まだ十分ではない。「私たちはすでに5つの海すべてをカバーしていますが、これからさらにギアを上げて、この分散型プラットフォームの密度を高め、可能な限りパワフルなセンシング能力を発揮できるようにします。そのために、今後数年間で急速に多くのセンサーを追加し、収集するデータを拡大して、より正確な海洋の洞察を得られるようになると我々は予想しています」。

SofarとDARPA(米国防衛高等研究計画局)は先日、人々が独自の海洋データ収集装置を設計する際にリファレンスデザインとなるハードウェア規格「Bristlemouth(ブリストルマウス)」を発表した。これは、海中で増え続ける自律機器を可能な限り相互運用できるようにすることで、重複しながらも互換性のなかったネットワークの問題を回避することを目的とするものだ。

フジツボに覆われ、魚にかじられ、風雨にさらされた、何千ものロボットブイのネットワークを運営する難しさは想像に難くない。ヤンセン氏によると、同社の「スポッター」は外洋での長期間の活動に耐えるように設計されているため「最小限のメンテナンス」しか必要としないという。「最近では、過酷な天候のために氷に覆われてしまったスポッターがありましたが、数カ月後に氷が解けた途端、自動的にデータの共有が再開されました」と、同氏は振り返る。スポッターが海岸に打ち上げられてしまった場合は、同社が発見者を支援し、必要な場所に戻す。

このデバイスは、手動のデータオフロードやメッシュネットワークではなく(それもオプションの1つだが)、イリジウム衛星ネットワークを介して報告する仕組みになっているが、ヤンセン氏によれば、同社は「Swarm(スウォーム)のような、衛星通信分野に革命をもたらす最新技術にも取り組み始めている」という。TechCrunchでも初期の頃から取材しているSwarmは、低帯域の衛星通信ネットワークで、消費者向けインターネットではなく、IoTタイプのアプリケーションに焦点を当てたものだ。現在、SpaceX(スペースX)が同社の買収を進めている。

海流などの海の状態を表示するSofarのインターフェース(画像クレジット:Sofar Ocean)

今回の3900万ドルを調達した投資ラウンドは、Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ)とThe Foundry Group(ザ・ファウンドリー・グループ)が主導した。両社はプレスリリースの中で、海運業のような現在の事業においても、気候変動の研究のような将来に向けた仕事においても、より多くのデータが必要であることは明らかだと述べている。

「特にCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催を受けて、気候変動に関する議論がようやく中心的なものになってきました。世界各国の政府が、ハリケーンや暴風雨の増加、海面上昇、サンゴ礁などの生態系の危機に備えて、調整や計画を進めています」と、ヤンセン氏は説明する。「気象パターンの変化、海流や気温の変化、繊細な海洋生態系の変化について、明確な情報を提供できるようにすることは、当社やそのパートナーにとってだけではなく、地球上の1人ひとりにとっても、刻々と迫る時間に間に合わせるために一丸となって取り組む上で、本当に有益なことなのです」。

政府が何かをすべきかと考えている一方で、もちろん、海運会社やサプライチェーン管理会社は、燃料使用量を最小限に抑えて物流全体を改善するためのより良い経路選択を期待し、Sofarのデータに喜んでお金を払う。

「リアルタイムのデータにアクセスできるようになることで、これらの業界全体の不確実性が低減し、より効率的で、より良いビジネス判断ができるようになり、さらに燃料を節約して炭素排出量を削減することができます。つまり、すべて持続可能性や将来に対する備えの向上につながるというわけです」と、ヤンセン氏は述べている。

画像クレジット:Sofar Ocean

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自律航行して海洋データを収集するロボットボート開発Saildroneが約114億円調達

海洋経済の重要性は増しており、それにともなって海洋そのものをマッピング、理解、追跡する必要性が高まっている。Saildrone(セールドローン)は、自律航行する科学実験船を使ってそうした活動を展開してきたが、ロボットボートの開発をさらに進めるために1億ドル(約114億円)という巨大なラウンドCを実施した。

Saildroneの船は何年も継続して使用されており、人間の乗組員には危険すぎたり、退屈すぎたりするようなあらゆる種類の興味深い航海を行っている。例えば、2021年10月初めには、ますます頻繁に発生するようになっている激しい嵐をより深く理解するためのNOAA(米海洋大気庁)のプロジェクトで、同社の船1隻がハリケーンの中を航行した。ロボットは50フィート(15メートル)の波と120MPH(時速193km)の風に耐えてデータを収集することができる。

Saildroneの船は、合計で50万マイル(約80万km)を旅した経験を持つ、最も経験豊富な自律型ボートだ。これにより、海洋情報の重要性が高まる中、魅力的な市場ポジションを得ることができた。ある場所の海の状態を知ることは、科学的に、そして嵐の際の船の操作など予想される目的のために役立つだけではない。体系的に収集された膨大な量のデータは、気候変動や持続可能な養殖への移行の際に、複雑な水生生態系の新たな基本的理解を構築するのに役立つ。

自律型の科学ボートといえばSaildroneが知られているが、他にも別の方向から新しいブルーエコノミーにアプローチしている企業がある。Sea Machinesの自律型タグボートや商業用ボート(このほど約1610kmの航行を実証した)があり、EcoDroneSea Provenはより小型でカスタマイズ可能な船で勝負しようとしている。また、Bedrockのもののように海底をマッピングする水中ドローンというまったく異なる世界もある。

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しかし、Saildroneは立ち止まっているわけではなく、むしろ深く掘り下げている。最新の船であるSurveyor(サーベイヤー)号は、1年間航海し、水深2マイル(約3.2km)以上の海底をマッピングすることができる。しかしこの船は安くはない。Saildroneが「海洋領域のインテリジェンス」分野でできるだけ多くのシェアを獲得したいのなら、迅速に規模を拡大する必要がある。そのために1億ドル調達したはずだ。

今回のCラウンドはBONDがリードし、XN、Standard Investments、Emerson Collective、Crowley Maritime Corporation、CapricornのTechnology Impact Fund、Lux Capital、Social Capital、Tribe Capitalが参加した。「データ・インサイト・チーム」が組まれ、その資金を「GTM戦略機能」に活用する。

プレスリリースの中で、SaildroneのCEO兼創業者であるRichard Jenkins(リチャード・ジェンキンス)氏は「最も試行錯誤された自律型海洋技術と、世界で最も経験豊富なベンチャーキャピタリストたちとの提携の組み合わせは、業界における当社のリーダーシップを強化し、顧客のニーズを満たすための急速な成長路線を可能にします」と述べた。今後、注目度が高まるにつれ、同社のミッションについてこれまでよりも耳にするようになるのは間違いない。

画像クレジット:Saildrone

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

Sofarと米国防高等研究計画局が「7つの海の天気予報」を得る海洋監視機器のオープン標準を策定

海は無数のさまざまな産業にとって重要だ。しかし、海全体がどのような状態にあるのかを常に把握することは、依然として難しい。Sofar Ocean Technologies(ソーファー・オーシャン・テクノロジーズ)とDARPA(米国防衛高等研究計画局)は、新世代の海洋観測フロートなどの機器の開発を促すために「Bristlemouth(ブリストルマウス)」呼ばれる海洋ハードウェアのオープン標準を策定している。これによって研究者は、貴重な助成金を無駄にして同じ工学的問題を一から解決するのではなく、既製の選択肢を利用することができるようになる。

Sofarは自らを「リアルタイム海洋情報プラットフォーム」と呼んでいる。これは7つの海に関する天気予報のようなものだと考えればいいだろう。しかし大気とは違って、海洋は衛星やレーダーによる遠隔観測が容易ではない。海の運動、塩分、汚染物質の濃度、温度などを把握するには、実際に波に揺られている何百あるいは何千もの機器を必要とする。

同社はフロートセンサーによる独自のネットワークを維持し、価値あるデータを作成して、さまざまな関係者に販売することを事業としている一方で、それだけに留まらず、海洋センシング業界全体を発展させたいとも考えている。同社CTOのEvan Shapiro(エヴァン・シャピーロ)氏は、そのための最良の方法の1つとして、ハードウェアとソフトウェアのオープンな規格を作ることを提案している。

海流などの海の状態を表示するSofarのインターフェース(画像クレジット:Sofar Ocean Technologies)

現在、ハードウェアの接続規格が存在しないことは、開発やイノベーションの大きな妨げになっている。「今日では、新しい海洋技術の開発に割り当てられている予算の大部分が、実際の海洋イノベーションではなく、電力、データ、通信の接続性といった基本的な技術的ボトルネックの解決に向けて費やされているのです」と、シャピーロ氏はTechCrunchに語った。

これは、宇宙関連企業がいくつかの標準的なバスや宇宙船を利用するという考え方にまとまり始めた状況と、よく似ている。宇宙塵の観測や大気圏外における放射線量の測定といったことが研究目標であるならば、宇宙船の製造ではなく、それらの機器に時間と資金を費やしたいものだ。人々は「車輪の再発明」をするよりも、標準的な宇宙船を購入してカスタマイズした方がいいと思うに違いないと、Rocket Lab(ロケット・ラボ)のような企業が考えているのとちょうど同じように、海洋関連の研究者は重要な技術に集中したいと思っているはずだと、Sofarは考えた。

「電力システム、衛星テレメトリ、GPS、イルカ探知用ハイドロフォンを搭載したフロートを作りたいと思う人はまずいません。まずイルカ探知用ハイドロフォンを作りたいと思っても、現在のような(ハードウェアの標準化が進んでいない)環境では、残りの部分も結局は一から作らなければなりません。SofarによるBristlemouthの商業的採用とサポートは、このエコシステムの価値に弾みを付けるために不可欠です」と、シャピーロ氏は言いながらも、このような試みは過去にも行われたことがあると指摘した。「我々が初めて、標準化の必要性を認識したわけでも、初めてこの問題に本格的に取り組んだわけでもありません。しかし、大規模な商用プラットフォームを提供したのは当社が初めてです。例えば、USBがバークレーの報告書ではなく、Intel(インテル)、IBM、Microsoft(マイクロソフト)から登場したのには理由があります。我々はこの分野で最も影響力のある企業や団体とパートナーシップを組んでそれを行っています」。

錆びついたドックに置かれているのは「Bristlemouth」規格を実証するための試作機(画像クレジット:Sofar Ocean Technologies)

その中には、DARPAやOffice of Naval Research(米国海軍研究局)、自然保護団体のOceankind(オーシャンカインド)も含まれている。海洋観測から得られるデータが増えることは、科学や産業にとって良いことに違いないというのが、全関係者の共通認識である。

この標準規格そのものについては、民生用技術の観点から見て特にエキサイティングなものではない。これはキットやリファレンスモデルではなく(上の画像はSofarのスマートブイの1つだが、いくつかの共通点がある)、主にモジュール性と相互運用性に焦点を当てたハードウェアとソフトウェアのパッケージだ。「Bristlemouth Basic(ブリストルマウス・ベーシック)」のような製品を購入してアップグレードするというものではなく、この業界の多くの人達が、電源管理や通信など、基本的なステップをカバーする共有規格を設計し、それによって作られた機器が簡単に連携できるようにするという考え方である。詳細な情報は、Bristlemouthの公式サイトに掲載されている。

海洋インテリジェンスは、海藻の養殖から自動操縦船や気候変動監視まで、海に関わるあらゆる産業で重要な役割を果たす。Bristlemouthのようなものが、これらの領域を制限しているデータ不足を緩和することができれば「ブルーエコノミー」はより早く、より安全にもたらされることだろう。

画像クレジット:Sofar Ocean Technologies

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

再生可能エネルギーを使い、海水から二酸化炭素とセメントの原料を取り出すHeimdalの技術

大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると、それに比例して海中の二酸化炭素濃度も上昇し、野生生物に悪影響を与えたり生態系を変化させてしまったりする。再生可能エネルギーを利用して二酸化炭素を大規模に回収し、その過程でコンクリート用の石灰石をはじめとするカーボンネガティブな工業材料を生産しようとしているスタートアップ企業がHeimdalである。同社はアーリーステージの段階でかなりの資金を集めているようだ。

コンクリートと聞いて首を傾げた読者は、次の点を考えてみたら良いだろう。コンクリートの製造は、温室効果ガス排出量全体の8%を占めると言われており、また海水にはコンクリートの原料となる鉱物が豊富に含まれているのだ。おそらく関連業界や分野に身を置いていなければこの関連性に気づくことはないだろう。しかしHeimdalの創業者であるErik Millar(エリック・ミラー)氏とMarcus Lima(マーカス・リマ)氏は、オックスフォード大学でそれぞれの修士課程に在籍していた時からこの関連性を認識していたのである。「気づいてからすぐに実行に移しました」とミラー氏はいう。

気候変動が人類の存続にかかわる脅威であると確信を持つ2人は、世界中で起きているさまざまな影響に対する恒久的な解決策がないことに失望感を感じていた。炭素捕捉は回収してもまた利用されて排出されるという循環型のプロセスになっていることが多いとミラー氏は指摘する。新しい炭素を生産するよりはましなものの、生態系から永久に炭素を取り除く方法は他にないのだろうか。

2人の創業者は、電気と二酸化炭素を多く含む海水だけで、ガスを永久に封じ込めることのできる有用な素材を製造する新しいプロセスを構想した。しかし当然、そんなことが簡単にできるのなら誰もがすでにやっているはずだろう。

画像クレジット:Heimdal

「これを経済的に実現するための炭素市場は、まだ形成されたばかりです」とミラー氏は話す。太陽光発電や風力発電の巨大な設備が、数十年来の電力経済を覆したことでエネルギーコストは大幅に低下している。炭素クレジット(この市場についてはここでは触れないことにするが、これが成功要因であるのには間違いない)と安価な電力市場には新たなビジネスモデルが生まれており、Heimdalもその1つと言えるだろう。

実験室規模(1000ガロンのタンクではなくテラリウム規模)ですでに実証されているHeimdalのプロセスは、簡単にいうと以下のとおりである。まず、海水をアルカリ化してpHを上げ、ガス状の水素、塩素、水酸化物の吸着剤を分離させる。これを別の海水と混ぜると、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムのミネラルが析出し、水中の二酸化炭素の飽和度が下がり、海に戻したときに大気中からより多くの二酸化炭素を吸収できるようになる(小規模なプロトタイプ施設の画像を見せてもらったが、特許申請中のため写真の掲載は拒否された)。

画像クレジット:Heimdal

海水と電気から水素や塩素ガス、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムなどを生成し、その過程で大量の溶存二酸化炭素を封じ込めるという仕組みである。

1キロトンの海水に対して1トンの二酸化炭素と2トンの炭酸塩が分離されるが、それぞれに産業用の用途がある。MgCO3やNa2CO3はガラス製造などさまざまなものに使われるが、最も大きな影響を与える可能性があるのはCaCO3、つまり石灰石である。

石灰石はセメント製造プロセスの主要構成要素として常に大きな需要がある。しかし、現在の石灰石の供給方法は、大気中の膨大な炭素源となっているのも事実である。世界中の産業界が炭素削減戦略に投資しており、単に金銭的なオフセットが一般的ではあるものの、今後は実際にカーボンネガティブなプロセスが望まれるようになるだろう。

さらにHeimdalは海水淡水化プラントとの連携を見据えている。海水淡水化プラントは、淡水は不足していても海水とエネルギーが豊富にある、例えば米国カリフォルニア州やテキサス州などの沿岸部をはじめ、特に中東・北アフリカ地域のように砂漠と海が接する場所など、世界各地で見られるものである。

海水淡水化では、真水とそれに比例してより塩分を多く含んだ塩水が生成されるが、それを単純に海に戻すと地域の生態系のバランスが崩れてしまうため、一般的には塩水を処理する必要がある。しかし、例えばプラントと海の間にミネラルを集める工程があったとしたらどうだろうか。Heimdalは水1トンあたりのミネラルをさらに得ることができ、淡水化プラントでは塩分を含んだ副産物を効果的に処理することができるという考えである。

元RedditのCEOで、現在はTerraformationのCEOを務め、Heimdalに個人的に投資しているYishan Wong(イーシャン・ウォン)氏は次のように述べている。「Heimdalが海水淡水化の排水を利用してカーボンニュートラルなセメントを生産できるようになれば、2つの問題を同時に解決することになります。カーボンニュートラルなセメントのスケーラブルな供給源を作り、海水淡水化のブライン廃液を経済的に有用な製品に変換するという仕組みを、ともにスケールアップすることができれば、あらゆるレベルで革新的なものになるでしょう」。

Terraformationは太陽光による海水淡水化を推進しており、Heimdalはその方程式にまさにぴったりである。両者は現在、正式なパートナーシップを締結するために取り組んでおり、間もなく発表される予定だ。一方、カーボンネガティブな石灰石は、脱炭素化をはかるセメントメーカーが1グラムも逃すまいと買いあさることだろう。

ウォン氏は、Heimdalのビジネスにおいて、タンクやポンプなどを購入するための初期費用以外の主なコストは、太陽エネルギーにかかる費用だと指摘している。このコストは何年も前から下降傾向にあり、また定期的に巨額の投資が行われているため、今後もコストは下がると考えて良い。また、二酸化炭素を1トン回収したときの利益は、すでに約75%が500〜600ドル(約5万5000〜6万6000円)の収入となっているが、規模と効率が上がればさらに大きくなる可能性がある。

ミラー氏によると、同社の石灰石の価格は政府のインセンティブや補助金を含めると、すでに業界標準と同等の価格になっているという。エネルギーコストが下がり、規模が大きくなれば、この比率はより魅力的なものになっていくだろう。また、同社の製品が天然の石灰石と見分けがつかないというのも魅力の1つである。「コンクリート業者が手を加えなければいけないことは何もありません。採掘業者から炭酸カルシウムを購入するのではなく、当社の合成炭酸カルシウムを購入するだけのことです」と同氏は説明する。

全体的に見れば、これは有望な投資といえそうだ。Heimdalはまだ公に公開されていないが(Y Combinatorの2021年夏のDemo Dayで公開される予定)、640万ドル(約7億円)のシードラウンドを獲得している。参加した投資家は、Liquid2 Ventures、Apollo Projects、Soma Capital、Marc Benioff、Broom Ventures、Metaplanet、Cathexis Ventures、そして前述したウォン氏である。

Heimdalはすでに複数の大手セメントメーカーやガラスメーカーとLOIを締結しており、米国の海水淡水化プラントでパイロット設備を計画している。数十トン規模の試験品をパートナーに提供した後、2023年に商業生産を開始する予定だ。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

自律型潜水機とクラウドベースのデータでBedrockは海底マッピングを近代化

再生可能エネルギーの推進により、多くのエネルギー会社の最重要課題となっている洋上風力発電。これを実現するには設置場所となる海底を詳細に調査する必要があるのだが、幸いなことにBedrock(ベッドロック)が自律型水中ロボットと最新のクラウドベースのデータサービスを用いてそのマッピングプロセスを21世紀にもたらそうとしている。

「大きな船に大きなソナー(音波探知機)を」という一般的なアプローチに代わり、より速くよりスマートで、よりモダンなサービスの提供を目指している同社。ウェブサイトをホストするためにサーバーを立ち上げるのと同じくらい簡単に、企業が超高精度の海底画像を得られるようにしたいと考えている。

BedrockのCTOであるCharlie Chiau(チャーリー・チャウ)氏と共同で同社を設立したCEOのAnthony DiMare(アンソニー・ディマーレ)氏は次のように話している。「当社はおそらく、海底データのための初のクラウドネイティブ・プラットフォームです。これはビッグデータの問題であり、そのソリューションをサポートするためのシステムをどのように設計できるかというのが鍵です。私たちは巨大な海洋事業のようなものではなく、最新のデータサービスとして考えています。海に浮かぶ巨大なインフラに縛られることもありません。ソナーを海中で移動させる方法から、エンジニアにデータを届ける方法まですべてを見直しました」。

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同社が顧客に提供する製品は、海底の高解像度マップだ。これは解析やホスティングをすべて代行してくれるウェブサービスのMosaic(モザイク)を介して提供される。「データ移行」というといまだに「ハードディスクの箱を発送する」ことを意味するこの業界にとって、これは大きな前進だ。

通常、これらのデータは船上で収集、処理、保存されていたとディマーレ氏は説明する。港湾検査から深海調査まですべてをこなすように設計されていたが、インターネット接続環境が整っているとは言えず、ローデータでは何の役にも立たない。他の巨大データと同様、データを可視化し文脈を整理する必要があるのだ。

画像クレジット:Bedrock

「これらのデータセットは、数十テラバイトという非常に大きなサイズです。一般的なクラウドシステムは、ソナーからの2万個のファイルを管理するのには適していません」とディマーレ氏は話す。

現在の市場では、成長中の風力発電市場に参加するため、深海よりも詳細な近海のデータに焦点が当てられている。そのため通常のインターネットインフラに近いところでデータが収集され、以前よりも簡単にクラウドでの処理や保存ができるようになった。需要が高まったちょうど良いタイミングで、より早くデータを処理して提供することができるようになったわけである。

過去数十年にわたって設置候補地を見つけるための海底調査が行われているが、これは単なる最初の一歩に過ぎないとディマーレ氏は話す。何年も前の地図を確認し、詳細な情報を追加するために地図作成を行い、その後、環境アセスメント、エンジニアリング、建設、定期検査のための許可申請を行う必要がある場合もある。これが自動化されたターンキープロセスによって、乗組員のいる船よりもさらに優れた結果をより少ない費用で実現できるのであれば、従来の方法に頼っていた顧客にとっては大きなメリットとなるだろう。また、業界が期待通りに成長し、米国のすべての海岸沿いの海底をより積極的に監視する必要が出てくれば、当然ながらBedrockにとってもメリットとなるわけだ。

画像クレジット:Bedrock

当然そのためにはデータを収集するための機体が必要である。「AUVは、データを取得するために開発された技術です」とディマーレ氏はいうが、もともとは「こういった技術を作りたかったわけではない」と話している。

「既製のシステムを使用することを想定した仕様を検討し始めていました」と同氏は振り返る。「しかし、とてつもなくスケーラブルで非常に効率的なシステムを構築し、1平方メートルあたりのコストを最大化しようとすると、特定の機能、特定のソナーや計算スタックなどが必要になってきます。これらをすべてリストアップし終わった頃には、すでに自分たちで設計した基本的なシステムができあがっていました。より速くより柔軟な運用が可能で、より良いデータ品質が得られ、より信頼性の高いものとなっています」。

船が必要ないというのも驚きである。バンのバックドアから出して、桟橋やビーチから打ち上げるだけである。

「最初から、ボートは使わないという制約を自分たちに課していました。それが私たちのアプローチを完全に変えました」とディマーレ氏は話している。

画像クレジット:Bedrock

AUVは小さな機体の中に多くのものを詰め込んでいる。センサーの搭載量は作業内容によって異なるが、この機体を特徴づけるものの1つに高周波ソナーがある。

ソナーの周波数は数百から数十万ヘルツと広範囲にわたる。残念ながらこの周波数帯の音を聞き分けることができる海洋生物は、騒音にさらされることになり、時には有害であったり、このエリアに近づくことができなくなったりすることがある。200kHz程度のソナーであれば生物にとっても安全だが、周波数が高ければ信号の減衰が早く、到達距離は50〜75メートル程度と限られてくる。

明らかに、海面に浮いている船では意味がない。深さ75メートル以上の場所の地図を作る必要があるわけだが、常に海底から50メートル以内にとどまる機体を作ることができれば、そのメリットは十分にある。BedrockのAUVはまさにそのために設計されているのである。

ソナーの周波数を上げることでより詳細な情報を得ることができるため、観測機器が描く画像は大きな波形で得られるものよりも優れたものになる。また、動物の周りで使用しても安全なので、野生動物保護局でのお役所仕事(とても重要なことだが、時間がかかってしょうがない)を省くことができる。より良く、より早く、より安く、より安全にという、これ以上にないピッチである。

米国時間8月19日はMosaicの公式発表日となっており、Bedrockはプロモーションのため50GBの無料ストレージを提供する。

世の中には、厳密には「パブリック」であっても、見つけるのも使うのも非常に困難なデータがたくさん存在する。20年前に行われた詳細な調査や、研究グループが調査したエリアの超詳細なスキャンデータなど、もしそれらが1カ所に集められていたらもっと便利になるだろうとディマーレ氏はいう。

「最終的には全海域を1年単位で調査できるようにしたいと考えています。やるべきことはたくさんあります」と同氏は語っている。

画像クレジット:Bedrock

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

データセンターの膨大な電力需要を補うための液浸冷却技術にマイクロソフトが参入

LiquidStackもやっているSubmerもそうだ。どちらも地球を救うために、機密データを搭載したサーバーを液体に浸しているのだ。そしてついに、データセンターのエネルギー効率を向上させるため、世界最大級のハイテク企業であるMicrosoft(マイクロソフト)が液浸冷却市場に参入した。

マイクロソフトは、水の沸点よりも低い華氏122度(摂氏50度)で沸騰するように設計された自社開発の液体をヒートシンクとして使用し、サーバー内の温度を下げることで、オーバーヒートのリスクなしに、フルパワーで稼働できるようにしている。

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沸騰した液体の蒸気は、サーバーを貯蔵するタンクの蓋にある冷却されたコンデンサーと接触して、再び液体に戻る。

「当社は、本番環境で初めて二相浸漬冷却を行ったクラウドプロバイダーです」。ワシントン州レドモンドにあるマイクロソフトのデータセンター先進開発チームのプリンシパルハードウェアエンジニアであるHusam Alissa(フサム・アリッサ)氏は、同社の社内ブログでそう伝えている。

とはいえ、液冷は熱を移動させてシステムを作動させる方法としてはよく知られているものだ。自動車の場合にも、高速道路を走行する際にはモーターの回転を維持するために液冷が使われている。

テクノロジー企業がムーアの法則の物理的限界に直面する中、より高速で高性能なプロセッサーが求められているため、より多くの電力を処理できる新しいアーキテクチャーを設計する必要がある、と同社はブログ記事の中で述べている。中央演算処理装置に流れる電力は、1チップあたり150Wから300ワW以上に増加した他、ビットコインのマイニング、人工知能搭載アプリ、ハイエンドグラフィックスの多くを担うGPUは、それぞれ1チップあたり700W以上を消費する。

液体冷却をデータセンターに応用した最初のハイテク企業はマイクロソフトではないということ、そして同社が最初の「クラウドプロバイダー」という分類を使用していることが大きな意味を持つということを強調しておきたい。というのも、ビットコインのマイニングには何年も前からこの技術が使われているからだ。実際、LiquidStackは、液浸冷却技術を商品化して大衆に提供するために、ビットコインマイニング業者からスピンアウトしたものだ。

「空冷では不十分」

プロセッサーに流れる電力が増えれば、チップの温度が上がり、冷却を強化しなければチップが故障してしまう。

「空冷では不十分なのです」。レドモンドにあるマイクロソフトのデータセンター先進開発グループのヴァイス・プレジデントのChristian Belady(クリスチャン・ベラディ)氏は、社内ブログのインタビューで説明している。「それが、チップの表面を直接冷却する液浸冷却を導入した理由です」。

ベラディ氏は、液冷技術を使用することで、ムーアの法則の密度と圧縮をデータセンターレベルにまで高めることができるのだ。

エネルギー消費の観点から見た結果はすばらしいものだ。同社は、二相式液浸冷却を使用することで、サーバーの消費電力を5%から15%削減できることを発見した(少しではあるが、ちりも積もれば山となる)。

マイクロソフトが、AIなどのHPCアプリケーションのための冷却ソリューションとして液浸を調査した結果、二相式液浸冷却により、任意のサーバーの消費電力が5%から15%削減されることなどが明らかになった。

一方、Submerなどの企業は、エネルギー消費量を50%、水の使用量を99%削減し、85%の省スペース化を実現したと述べている。

マイクロソフトによれば、クラウドコンピューティング企業にとって、これらのサーバーをより多くの電力を消費する需要の急増時にも稼働させることができれば、柔軟性が増し、サーバーに負担がかかっても稼働率を確保することができる。

マイクロソフトのAzureチームのヴァイスプレジデントを務めるMarcus Fontoura(マルクス・フォントウラ)氏は、同社の社内ブログで「Teamsでは、1時や2時になると人々が同時に会議に参加するため、巨大な需要が発生することが分かっています。液浸冷却は、このような爆発的な作業負荷に対応するための柔軟性を提供してくれます」と述べている。

現在、データセンターはインターネットインフラに欠かすことのできない重要な構成要素となっており、世界はテクノロジーを駆使したほとんどすべてのサービスに依存している。しかし、このようなデータセンターへの依存は、環境面で大きな負担となっているのだ。

Norrsken VCの投資マネージャーを務めるAlexander Danielsson(アレクサンダー・ダニエルソン)氏は、2020年、同社がSubmerに投資したことについて「データセンターは人類の進歩の原動力です。基幹インフラとしての役割はこれまで以上に明らかになってきており、AIやIoTなどの新技術が今後もコンピューティングのニーズを牽引していくでしょう。しかし、この業界の環境負荷は驚くほどの速さで増大しています」と語っている。

海底のソリューション

実験的な液体にサーバーを沈めるというのが問題解決の1手段とされるなか、サーバーを海に沈めることにより、電力をあまり消費せずにデータセンターを冷却するという方法も存在する。

マイクロソフトはすでに過去2年間、海底データセンターを運用している。2020年、同社は実際に新型コロナウイルスのワクチンの過程を支援するための働きかけの一環として、この技術を持ち出している。

関連記事:マイクロソフトがスコットランド沖の海底データセンターを新型コロナワクチン開発に活用

同社によると、梱包済みの輸送用コンテナサイズのこのデータセンターは、必要に応じて回転させ、海面下の深いところで稼働させることができ、持続可能で高効率かつ強力な演算処理を行うことができるという。

この液冷プロジェクトは、マイクロソフトのProject Natickと共通している。Project Natickは、海底データセンターの可能性を探るもので、これは人が現場でメンテナンスをしなくても、潜水艦のような筒の中に密閉された海底で迅速に展開され、何年も稼働することができる。

これらのデータセンターでは、産業用流体の代わりに窒素空気を使用し、ファンと、密閉されたチューブに海水を送り込む熱交換器でサーバーを冷却する。

スタートアップの多くも、海上のクールなデータセンターを狙っている(「隣の海藻は青い」のである)。

例えば、Nautilus Data Technologiesは、1億ドル(約109億3200万円)以上の資金を調達し(Crunchbase調べ)、海底に点在するデータセンターを開発している。同社は現在、カリフォルニア州ストックトン近郊の支流で、持続可能なエネルギープロジェクトと同居するデータセンタープロジェクトを開発中だ。

この二相式液浸冷却により、マイクロソフトは海洋冷却技術の利点を陸地にもたらしたいと考えている。「データセンターを海底に置くのではなく、サーバーに海を運んできたのです」とマイクロソフトのアリッサ氏は同社の声明で述べている。

AzureのプリンシパルソフトウェアエンジニアIoannis Manousakis(イオアニス・マノサキス、左)氏と、Microsoftのデータセンター先進開発チームのプリンシパルハードウェアエンジニアのフサム・アリッサ氏(右)が、マイクロソフトのデータセンターで、二相式液浸冷却槽に入れられたコンピュータサーバーが作業負荷を処理しているコンテナの前を通る(画像クレジット:Gene Twedt for)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Microsoftデータセンター地球温暖化気候変動

画像クレジット:Gene Twedt for Microsoft. / Microsoft

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

オーシャンテックを育てるOcean Solutions Acceleratorが2021年から後期段階のスタートアップも対象に

Sustainable Ocean Alliance(SOA)の地球を愛する人びとが数年前に始めたアクセラレーターは、極めて初期的な段階の企業を対象にしていたが、2021年は事業を拡大して最初の資金調達ラウンドを完了した企業も受け入れる。実験的な試みとある程度実証された事業とのこのような混成は、このアクセラレーターの目下成長中のネットワークのメンバーを多様化するだろう。

アクセラレーターの共同創業者であるCraig Dudenhoeffer(クレイグ・デュデンホッファー)氏は、次のように語る。「2020年はパンデミックと、海の状態がこれまでで最も悪く対策の緊急性が増したため、Ocean Solutions Acceleratorの仕事もこれまでになく増えました。そして私たちにとってこれまで以上に明らかになったのは、オーシャンテック(海洋テクノロジー)の企業には強力なコミュニティのサポートとメンターシップ、そして事業推進のための稀有な機会に恵まれることが必要だということです。私たちはアクセラレータープログラムをこれまでの倍にすることに決め、2つの育成グループで21のイノベーターを支援ます」。

2020年のグループには、魚のロボットやケルプ由来の食品、人工珊瑚礁、海洋栽培による動物飼料など、興味深くて画期的とも思われる企業がいた。しかし2020年までの彼ら育成対象企業全員の共通点は、極めて初期段階であることだった。

プロトタイプを作って大きな問題に取り組み、成果を市場に出すことはスタート地点として重要だが、そこで終わりというスタートアップも多い。例外的にCoral Vitaのような企業はハリケーンやパンデミックなど度重なる災難にもめげず、資金を調達してスケールアップを目指した。

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しかし環境保全という分野はまだ多くのVCたちから過小評価されていて、彼らがこれはリスクを賭ける価値があると認めるまでは、まだ先が長い。問題に着目している投資家がほとんどいないし、自分の目でソリューションの可能性を至近距離で見たり、熱心で理想主義に燃える若き創業者たちと個人的な関係を築いているVCもあまりいない。しかし、私がアラスカで会った人たちは、そうではなかった

2021年初めて2グループとなる育成対象は、6月のクラスがプレシードの初期段階の企業、9月がシードやAラウンドを経て「強力なMVP」がある企業になる。どちらも応募は4月12日までで席は21ある。月曜日だから、忘れないように。

「2021年はアクセラレーター事業を拡大して2グループに分けたため、提供するコンテンツもよく練られていますし、支援策も対象の海洋が抱える重要な問題の解決に向けて、資金や技術確保などの必要性で彼らが今どんな段階にあるかという特性に合わせて調整しています」とデュデンホッファー氏はいう。

対象企業はまだ小規模で、アクセラレーターは比較的単純明快な事業だが、彼らが今いるこの分野は拡大しつつあり、投資家の信用も得つつある。バイデン政権になってから、気候変動や生態系の保護、代替エネルギー源などの施策が見直され予算配分も良くなっているため、関連業界のスタートアップやサービスにとっても状況が変わっている。2年前には無謀と見なされたアイデアが、まともに検討されている。幸運により、世界を救おうとしている起業家たちの帆にも、少しは風が当たるようになるだろう。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Sustainable Ocean Allianceアクセラレータープログラム

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)