ウェブブラウザーだけでXR空間を構築できる「STYLY」を手がけるPsychic VR Labが9億円調達

ウェブブラウザーだけでXR空間を構築できる「STYLY」を手がけるPsychic VR Labが9億円調達

VR・AR・MRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」(Android版iOS版)を提供するPsychic VR Labは2月26日、計9億円の資金調達を発表した。引受先は、KDDI Open Innovation Fund 3号(グローバル・ブレイン)、DGベンチャーズ、DG DaiwaVentures、DK Gateほか。累計調達額は約19億円となった。

調達した資金により、様々な空間のXRメディア化を促進すべく組織体制の強化と事業化を推し進める。

ウェブブラウザーだけでXR空間を構築できる「STYLY」を手がけるPsychic VR Labが9億円調達

2016年5月設立のPsychic VR Labは、すべてのアーティストがXR空間を構築できる世界を作ることをミッションに、アート、ファッションからライフスタイルに関わるインターフェイスのXR化を推進。

同社のクラウドサービスSTYLYは、VR・AR・MRの制作負荷を圧倒的に下げることが可能なクリエイティブプラットフォームという。ウェブブラウザーだけでXR空間を構築し、VR・AR・MRコンテンツを配信できるとしている。

クラウド上でコンテンツの制作から配信まで一括管理するため、キャンペーンやイベント対応など、制作から運用まで自社で行うことも可能。制作者は難しいエンジニアリング作業から解放され、空間構築に集中できるという。

これまでの実績としては、渋谷パルコにおいて、商業施設で珍しいXRアート作品の常設展示 XR SHOW CASEを実施。1カ月で2万5000人の来場を記録した。

渋谷5Gエンターテイメントプロジェクトを通じた渋谷駅ハチ公前広場での5G体験イベントや、渋谷区公認「バーチャル渋谷」MR企画のほか、KDDIのコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI」でのクリスマスツリーのAR拡張などの取り組みも行っている。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:XR / xR(用語)拡張現実 / AR(用語)仮想現実 / VR(用語)混合現実 / MR(用語)Psychic VR Lab(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

混合現実ベースのバーチャルイベントプラットフォーム拡大でTouchCastが約58億円調達

過去12カ月間、パンデミックの影響によりキャンセルされなかったイベントはオンラインのバーチャル環境で開催されてきた。こうしたイベントの企画や参加を支援するスタートアップへの注目は急速に高まり、資金提供も増えている。

最近の話題としては、ニューヨーク発のビデオスタートアップ企業TouchCast(タッチキャスト)が、5500万ドル(約58億円)の資金を調達した。同社は、一般企業が技術的な負担なしにリアルなバーチャル会議やイベントを実現できるようにすることを目的としたプラットフォームを開発した。共同創業者でCEOのEdo Segal(エド・シーガル)氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により「需要が高まり過ぎた」同社のサービスとチームを増強するためにこの資金を使用していきたいと述べている。

今回の資金調達は、大手コンサルタント企業兼システムインテグレーターの投資部門で戦略的投資家のAccenture Ventures(アクセンチュア・ベンチャーズ)がリードしており、Alexander Capital Ventures(アレクサンダー・キャピタル・ベンチャーズ)、Saatchi Invest(サーチ・インベスト)、Ronald Lauder(ロナルド・ローダー)氏の他、匿名の投資家らも参加している。これまで、同スタートアップの資本金は大部分が自己資金であり、シーガル氏は現在の評価額を明らかにしていないものの、間違いなく9桁台、つまり数億ドル(数百億円)規模だと伝えている。

Accenture(アクセンチュア)はTouchCastの技術を自社のイベントで使用してきたが、自社で使用すること以外にも関心を持っていると考えられる。Accentureは複数の企業顧客のインタラクティブなサービスを構築および実装していることから、TouchCastのパイプラインにさらなる潜在顧客が増えることになる可能性もある

(実例:著者がZoomでシーガル氏にインタビューを行った際、同氏はボーイング747などが並ぶ、とある大手航空会社の広大な格納庫にいた。企業名は伏せておくが、同氏はその航空会社へのプレゼンから戻ったところだと教えてくれた。)

特にカンファレンスなどのバーチャルイベントでは、これまでZoom、Google(グーグル)のHangout、Microsoft(マイクロソフト)のTeams、Webexなどのビデオ会議プラットフォームを活用した、グループ通話を管理形式にしたようなものが多く見られてきた。

実際のステージや会場というよりも、古いテレビ番組の「The Brady Bunch(ゆかいなブレディー家)」や「Hollywood Squares(ハリウッド・スクエア)」のオープニングシーンのようなグリッド状の画面に、参加者それぞれのビデオストリームが表示されるのが一般的だ。

もちろんそれとは一線を画した企業もある。2020年開催されたApple(アップル)のオンラインイベントでは、実際のライブイベントよりも細やかな情報を提供し、自然な雰囲気でバーチャルイベントがあるべき姿を見せつけた。

しかし、誰しもがAppleのようなハリウッドレベルのプレゼンテーションを実現できるわけではない。

シーガル氏によると、TouchCastが構築したプラットフォームの本質は、企業が古いクイズ番組よりもAppleのイベントに近いクオリティのイベントを企画できるよう、コンピュータービジョン、ビデオストリーミング技術、自然言語処理を組み合わせたものだという。

「このプラットフォームは、どんな企業でもAppleのようなイベントが実現できるようにするために制作しました。ホームオフィスに座っている現実を忘れるような体験を参加者にもたらしたいと思っています」とシーガル氏は語る。

しかし「ホームオフィス」という概念は未だ健在だ。TouchCastでは、主催者やステージへの参加者は自宅からZoomやTeamsなどのベーシックなビデオ会議ソリューションを使用して参加することになる。しかしその舞台裏で、TouchCastはコンピュータービジョンを用いて人物にトリム加工を施し、バーチャル環境の「会場」に配置して、実際の会議のステージにいるかのように演出する。

会場は複数のテンプレートの中から選択することが可能だ。主催者が特定の会場を撮影してそれを使用することもできる。TouchCastは、実際のイベントに加えて、オーディエンスが質問をしたり互いにチャットをしたりできるツールも提供している他、イベントが進行するにつれて重要なポイントの書き起こしや概要を作成し、希望者に提供することもできる。

シーガル氏はTouchCastをB2B2Cを含め消費者向け製品として売り出すつもりはないというが、会議主催者がスペシャルゲストを招いてイベント内に音楽のセクションを設けたいと希望している場合に備え、それを実現できる機能も準備しているという(正直にいうと、その機能をより消費者向けのイベントのために使用するのはそう難しいことではないように思われる)。

TouchCastが、現在不安定な立場にあるイベントプランナーたちを相手にサービスを提供するスタートアップへと成長したことは意外な結果ではあるが、この事実は創業者(や投資家)にとって、想定していた機会が必ずしも正しい機会というわけではないことを示す良い例だといえるだろう。

TechCrunchの元編集者Erick Schonfeld(エリック・ションフェルド)氏が共同創設者である同社が、2013年にひっそりと設立されたのはまだ記憶に新しい。

同社の創業当時のコンセプトは、クリエイターがオンラインビデオにインタラクティブな要素やメディアウィジェットを簡単に取り入れられるようにすることで、ウェブサイトで見られるような双方向性やにぎやかなメディアのような雰囲気に近づけるというものだった。

あまりにも知的過ぎたのか、または技術面で時期尚早だったのか、同社のサービスは日の目を見ることはなく、失敗に終わったと推測した同僚もいたほどだ。

しかし、それは見当違いだった。シーガル氏(AOLで新興プラットフォーム担当副社長として働いていたシリアルアントレプレナー。AOLはTechCrunchを買収し、最終的にはVerizonの一部となった)によると、TouchCastが会議ソリューションに使用している技術は、当初のビデオ製品のために構築した技術と本質的には同じであるという。

現在市場に出ているものよりも機能の少ない初期バージョンを発表した後、同社はUnreal Engineを使用してより優れた混合現実を実現するカスタム機能を加え、約半年の期間をかけて再編成を試みた。その結果、他社が主催するTouchCastを使用した会議に参加した参加者が、今度は自社のイベントのためにTouchCastを使用したいとアプローチしてくるようになり、そうした顧客の期待に応えられるような現在のバージョンが完成した。

シーガル氏は「当社が一夜にして成功を収めるためには、8年かかりました」とジョークをいう。

TouchCastが引用したGrand View Researchのデータによると、バーチャルイベントは2027年までに4000億ドル(約42兆円)規模のビジネスになると推定されており、参加する価値のあるイベント体験を構築しようと考える多数の企業が生まれている。

最近大規模な資金調達を行ったHopin(ホピン)やBizzabo(ビザボ)だけでなく、Zoomやグーグル、マイクロソフト、Cisco(シスコ)など、テレビ会議の大手企業もより充実したサービスを提供し始めている。

Accentureが、そうした企業の中でも特に興味深いTouchCastへの支援を決めたのも不思議ではない。

たとえ「ライブイベント」が再開したとしても、バーチャルの要素と、バーチャル体験がうまく機能し、見たくなるような魅力を持つだろうということへの期待は、リモートワークと同様に、今後も定着していくだろうという事実を多くの人々が理解して受け入れ始めているからである。

Accenture VenturesのマネージングディレクターであるTom Lounibos(トム・ルーニボス)氏は同社の発表中で、「デジタルディスラプション、分散型ワークフォース、顧客体験は、企業のビジネスのあり方を変革し、未来の働き方へと移行することへのニーズの原動力となっています。組織がバーチャル体験の力をうまく使いこなしてビジネスにインパクトを与えるためには、質の高いやりとりと洞察力が必要不可欠であることが今回のパンデミックで明らかになりました。TouchCastへの投資は、クライアントの重要なビジネスニーズに対応するために役立つ最新のテクノロジーを見極めるという当社のコミットメントを明確に示しています」と述べている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TouchCast混合現実ビデオ会議バーチャルイベント資金調達

画像クレジット:TouchCast

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:TechCrunch Japan)