米証券取引委員会が企業に気候変動に関する目標や温室効果ガス排出量の開示を義務づける新規則を提案

米証券取引委員会(SEC)が提案した新しい規則は、上場企業に自社が排出する温室効果ガスの開示を義務づける。これはバイデン政権が、気候変動リスクを特定し、2030年までに排出量を52%も削減するという目標を達成するための取り組みの一部だ。SECの3人の民主党委員はこの提案を承認したが、共和党委員のHester M. Peirce(ヘスター・M・パース)氏は反対票を投じた

「私は本日の提案を喜んで支持します。なぜなら、この案が採用されたら、投資家が投資判断をする際に、一貫性があり、比較可能で、意思決定に有用な情報を提供できるようになり、そして上場企業にも一貫性があり、明確な報告義務を与えることになるからです」と、SECのGary Gensler(ゲーリー・ゲンスラー)委員長は述べている。

この新規則の下では、企業は気候変動リスクが自社の事業や戦略にどのような影響を与えるかを説明しなければならなくなる。企業が排出するCO2を公表することが求められ、大企業はその数値を独立したコンサルティング会社に確認させる必要がある。また、仕入先や顧客からの間接排出が、自社の気候目標にとって「重要」な場合は、その排出量を開示する必要もある。

さらに、カーボンフットプリントの削減を公約している企業は、その目標を達成するための計画を説明する必要がある。これには植林などのカーボンオフセットの利用も含まれるが、Greenpeace(グリーンピース)が最近の報告書で述べているように、実際の排出量削減の代用にはならないとの批判もある。

SECはすでに自主的な排出量ガイダンスを考慮しているが、新規則はこれを義務化するものだ。Ford(フォード)などの多くの企業はすでに、工場の生産過程における排出ガスから、販売した自動車の燃料消費量まで、排出量データを公開している。しかし「義務化されないとやらない企業もたくさんある」と、気候関連財務情報開示タスクフォースのチーフを務めるMary Schapiro(メアリー・シャピロ)氏は、報告書の発表に先立ち、The Washington Post(ワシントン・ポスト紙)に語っている。

この規則案がSECのウェブサイトで公開された後、一般市民は60日の間にコメントを出すことができる。最終的な規則は数カ月後に投票で採用が決まると、数年かけて段階的に導入されることになりそうだ。これに対し、ウェストバージニア州などの共和党員は、企業団体とともに、近い将来において気候変動は投資家にとって重要な問題ではないとして、法廷で争うことになる可能性がある。

しかしながら、専門家たちは時間が非常に重要であると警告している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は最近、地球温暖化の影響の多くは「不可逆的」であり、最悪の事態を回避するための時間はわずかしかないとする報告書を発表した。Antonio Guterres(アントニオ・グテーレス)国連事務総長は、この報告書を「気候変動に関するリーダーシップの失敗を痛烈に非難するもの」と呼んだ。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のSteve Dent(スティーブ・デント)は、Engadgetの共同編集者。

画像クレジット:Luke Sharrett/Bloomberg / Getty Images

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(文:Steve Dent、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

炭素排出をなくし、地球に少し休ませる技術に投資するEIPの新ファンド

「Deep Decarbonization Frontier Fund(ディープ・ディカーボナイゼーション・フロンティア・ファンド)」というキャッチーな別名をもつ、Energy Impact Partners(EIP、エネルギー・インパクト・パートナーズ)は、3億5千万ドル(約401億円)のファンドに対して2億ドル(約229億円)分の出資枠を獲得し、世界を持続可能な未来に移行させるというコミットメントを倍増させた。このファンドは、温室効果ガス排出量ゼロへの移行を加速させるアーリーステージの技術を対象としている。

このFrontier Fundは、脱炭素社会の実現に向けた投資家の新たな関心と、ゼロカーボンエネルギー、製品、商品に対する需要の高まりという2つの原則のもとに設立された。

Frontier FundのパートナーであるShayle Kann(シェイエル・カン)氏は「私たちは、気候変動に関する技術で大きな問題に挑戦する大胆な起業家を求めています」と述べている。「この6年間で、私たちは大規模で成熟した、技術的に複雑な産業においてイノベーションを推進するためのエコシステムとプロセスを構築してきました。脱炭素化の推進以外でこのようなスキルが最も求められる場所は他にありません」。と述べる。

Frontier Fundは、発電から肥料生産までの脱炭素化に取り組むスタートアップ企業への投資を始め、すでに資金展開を開始している。数日分のエネルギー貯蔵を安価にするForm Energy(フォーム・エナジー)、再生可能エネルギーによる工業規模の水素製造を推進するElectric Hydrogen(エレクトリック・ハイドロジェン)、ゼロエミッションの窒素肥料を製造するNitricity(ニトリシティー)、ゼロカーボンセメントのSublime Systems(サブライム・システムズ)などがその例として挙げられている。

「EIPが2016年に設立されて以来、『クライメートテック』と呼ばれるようになる前から、クライメートテックに投資してきました。これは荒野の時代で、『ポスト・クリーン・テック』とか『プレ・クライメート・テック』とも言えました。私たちはそれをさまざまな呼び方で呼んでいたのです」とカン氏はいう。「今、市場に到来しているイノベーションの大波は、新しいテクノロジー、新しいサービス、新しいビジネスモデルに至るまで、脱炭素化が必要な経済のさまざまな分野を脱炭素化するための方法を軸にしたものばかりです。クライメートテクノロジーは、非常に圧倒的であると同時に、非常にエキサイティングなものです。セクターを超えた包括的な挑戦なのです。この命題における最初の核となる部分は、イノベーションの波が来ているということです。もう1つは、今世紀半ばあるいはそれ以前に温室効果ガスの排出を正味ゼロにする必要性が認識されつつあり、現在の状況からその最終目標まで長い道のりがあるという事実によって、これらのソリューションの市場への導入が加速されるということです。そのため、企業、消費者、投資家、支持者、その他すべての利害関係者から、あらゆる種類の新しいソリューションに対する需要が高まっています。この2つのことが、私たちを気候変動技術への道のりにおいて強気にさせてくれているのです」と語った。

画像クレジット:Shayle Kann

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ダブリンのExergynは形状記憶合金を使って温室効果ガスの原因となる冷媒を代替

Exergyn Ltdの共同創業者でマネージングディレクターを務めるケビン・オトゥール博士(画像クレジット:Conor McCabe Photography)

ダブリンに本社を置くExergyn(エクサージン)は、冷媒を固体素材に置き換えて、温室効果ガスの排出を削減する。この技術は、データセンターに適用できる可能性がある。

この産業用クリーンテック企業は今回、シリーズAラウンド3000万ユーロ(約39億円)の資金を調達した。この投資ラウンドはエネルギー・コモディティ企業のMercuria(マーキュリア)とファミリーオフィス系ファンドのLacerta Partners(ラセルタ・パートナーズ)が主導し、プラハを拠点とするプライベート・エクイティおよびベンチャー・キャピタルのMcWin(マックウィン)も参加した。

Exergynは固体形状記憶合金(SMA)と呼ばれる製品をてがけており、HVACRと総称される暖房、換気、空調、冷蔵や、自動車、航空宇宙などの業界で炭素排出量を削減できると主張している。HVACR産業は、世界のCO2排出量の10%以上を占めている。

同社の形状記憶合金は、熱を吸収したり放出したりしながら収縮と緩和を繰り返す。これによって冷媒が不要になる。

モントリオール議定書によれば、地球温暖化の第一の解決策は、地球温暖化係数の高いガスを除去することであるという。

競合としては、メリーランド大学やスロベニアのリュブリャナ大学がこの分野に注目しているが、同じ分野で事業を行う商業組織は少ない。磁気熱量効果はSMAの高価な従兄弟のようなものだが、一般的には高価すぎると考えられている。

今回のシリーズAの発表について、共同創業者でマネージングディレクターを務めるKevin O’Toole(ケビン・オトゥール)博士は次のように述べている。「Mercuria、Lacerta、McWinといったソートリーダーたちと力を合わせることで、当社の提供する製品を複数の新しいエキサイティングな垂直市場に拡大することができます」。

今回の投資について、MercuriaのマネージングディレクターであるDavid Haughie(デヴィッド・ホーヒー)氏は次のように言及している。「Mercuriaの目標は、これらのSMAによって冷却・冷蔵などの分野で伝統的な冷媒の必要性を排除し、さらにコスト効率の高い運用を可能にすることで、HFC(代替フロン)による環境への影響をゼロすることです」。

画像クレジット:Kevin O’Toole, PhD, CEng, MIMechE Managing Director, Exergyn Ltd. Picture Conor McCabe Photography.

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】ヒートアイランド現象による影響を軽減するため、今、世界はAIを活用すべきだ

人類がこのまま何もしなければ、地球の温暖化はあとわずか数十年の間に少なくとも過去3400万年間前例のないレベルにまで達し、氷河が溶け、洪水がかつてないほど発生し、都市の熱波が我々に悲惨な影響を与えることになる。

米海洋大気庁によると、2021年には米国だけでもすでに18件の気候関連の異常災害が発生しており、それぞれに10億ドル(約1149億円)を超える損害が発生しているという。

世界中で起きた自然災害を結果や頻度の観点から見ると、洪水や地震は人や経済により大きな影響を与えるのものの、熱波よりも発生頻度は低い。熱波は一般的に都市ヒートアイランド現象(UHI)の形で発生し、ヒートポケットとも呼ばれているが、これは都市中心部の気温が周辺部より高くなる現象である。

都市部が急速に温暖化する中、世界各地のさらに多くの人々がヒートアイランド現象による致命的な被害を受けており、都市公衆衛生における格差が浮き彫りになっている。世界保健機関によると、2000年から2016年の間に熱波に影響を受けた人の数は1億2500万人急増し、1998年から2017年の間に16万6000人以上の命が奪われているという。

米国の市当局は現在、住民の中でも特に弱い立場にいる人々の生活レベルや状況が猛暑によって低下することを懸念しているが、影響を軽減するために活用できるようなデータは用意されていない。

デザイン主導のデータサイエンス企業で働く私は、組織のための持続可能なソリューションの構築や、ビジネス、社会、社会経済の複雑な問題は、高度な分析、人工知能(AI)技術、インタラクティブなデータ可視化を用いて解決できることを知っている。

とはいうものの、こういった新テクノロジーは、公衆衛生の専門家、企業、地方自治体、コミュニティ、非営利団体、技術パートナーの協力なくしては展開することができない。この分野横断的な介入こそが、テクノロジーを民主化し、都市ヒートアイランド現象の惨状を改善する唯一の方法なのである。それでは前述のプレイヤーは、都市ヒートアイランド現象を軽減するためにどのようにして協力しているのだろうか。

どの国が大きく貢献しているかを把握する

世界中のあらゆる企業、政府、NGOが熱波による問題の解決に取り組んでいる。

しかし、カナダでは1948年から2012年の間に平均1.6℃の上昇と、世界平均の約2倍の温暖化が進んでいるため、AIを使った熱波予測にはどこよりも力を入れている。もともとカナダの都市はテクノロジー主導で技術に精通しているため、世界中の都市はカナダの綿密な分析と革新的なアイデアから学べることが多くあるだろう。例えば、MyHeatは各建物における太陽光発電の潜在性を追跡し、熱波を持続可能なエネルギーの創出に利用している。

ヘルシンキやアムステルダムなどの欧州の都市もこの課題に積極的に取り組んでいる。EUの資金提供を受けているAI4Citiesは、カーボンニュートラルを加速させるAIソリューションを追い求めている欧州の主要都市を集結させるためのプロジェクトである。資金総額は460万ユーロ(約6億円)で、選ばれたサプライヤーに分配される予定だ。

こういったプロジェクトがAIを活用して気候変動問題を解決しようとしているが、二酸化炭素排出量の削減などのニッチな分野に集中して注目されているのが現状だ。気候変動の影響ではなく、原因の軽減に焦点が当てられているのである。

そのため、熱波の影響は依然として未解決のまま手つかずの状態だ。これは、すぐに甚大な被害をもたらす洪水など他の自然災害の方が注目されやすいからでもあるだろう。熱による不快感、エネルギー使用量の増加、停電などの問題を忍ばせたサイレントキラーとも言える熱波。最大の課題は、熱波に立ち向かうためのテクノロジーが自治体やNPOにオープンにされていないということだろう。

AIを用いたソリューションを活用

回復力のある都市を構築し、気候リスクを軽減することを目的とした非営利団体Evergreenとの協働を通じて、私たちはカナダの都市ネットワークを紹介された。調査と研究を重ねた結果、洪水や地震に対しては多くのデジタルインフラやデータ駆動の政策が存在しているが、熱波に対してはまったくと言っていいほどソリューションがないことが判明した。

依然として未解決の問題が多い熱波だが、拡張性の高いツールであるAIが都市に情報を提供し、それにより根拠に基づいた意思決定を行うことができたらどれだけ効果的だろうか。

Evergreenは地理空間解析、AI、ビッグデータを、MicrosoftのAI for Earthによる助成金で作成したデータ可視化ツールとともに使用して、あらゆる都市における都市ヒートアイランド現象を調査したさまざまなデータセットを統合・解析している。これにより自治体は、不浸透性の表面を持つエリアや植生の少ない問題地域をピンポイントで特定し、日よけの屋根や水飲み場、緑の屋根を設置することでヒートアイランドの影響を緩和することができるのである。

Microsoft Azure Stack上に構築された、AIを活用した解析・可視化ツールはさまざまな機能を備えている。マップ(地形図)を活用すれば地上30メートルブロックごとの地表温度を取得することができ、建物の数や高さ、アルベド値など、都市スプロールのパラメータを変更して将来の都市スプロールのシナリオを生成できるシナリオモデリングビューもある。

温室効果ガスをトラッキングできるこの多目的ツールは、すでにカナダ国内の気候変動に対する自治体の取り組みに良い影響を及ぼしている。今後は世界中の温室効果ガスや二酸化炭素の排出をめぐる政策転換にもプラスの影響を与えていくことだろう。

Sustainable Environment and Ecological Development Society(SEEDS)はMicrosoft Indiaと共同で、インドにおける熱波リスクを予測して費用対効果の高い介入策を提供するAIモデルの第2弾を発表した。熱波が発生した場合に、政府が市内のどの地域に対して特に支援や注意が必要かを知ることができるというものだ。SEEDSはグラウンドトゥルースデータを使用し、AIモデルは熱センサーなどのデバイスを使用して地上で検証した結果を生成する。

AIはスケーラブルな上、世界各地のどんな地域にでもすばやく採用できるため、各自治体は熱波対策への経済的な方法として積極的に活用すべきある。また、AIはデータソースを抽出するツールにパッケージ化できるため、部門や主要なステークホルダー間で知識を簡単に共有することができ、意思決定者にとっても状況が把握しやすい。

現実的なソリューションを提供し、ストーリーテリングモードで生き生きと伝えることができる一般向けアプリを作ることにより、AIがもたらすインパクトを地域社会に伝えたいというのがEvergreenのアイデアである。例えば、緑の屋根によって気温が下がるということをアプリで紹介すれば、ユーザーはデータ情報を分かりやすいストーリーとして見ることができ、彼らが取り組んでいる問題を取り巻く複雑な仕組みを理解することができるようになる。

信頼のスピードでAIの民主化とスケールアップを図る

AIや機械学習(ML)プロジェクトで複数のデータソースを扱うには、分野横断的なソリューションが欠かせない。テクノロジー関係者、企業、他の非営利団体、政府、コミュニティ、都市計画者、不動産開発業者、市長室などをつなぐパイプ役として、非営利団体やコミュニティビルダーが関与することが極めて重要である。

テクノロジーパートナーが突然AIソリューションを持って都市にやってきて、市の職員がそれにすんなり賛同してくれるというシナリオはまずない。さまざまな分野が関わり合い、ビジネスケースを作成し、すべての関係者が会話に参加しなければならないのである。

同様に、革新的なテクノロジー使うことになるステークホルダーも「ここにはヒートポケットがあるので緑の屋根を設置してください」と言われただけでは、自動的にそのツールを採用することはないだろう。

MicrosoftのAI for Earthの取り組みと連携して開発された、地理空間的ソリューションの良い例がある。ある都市の全人口をマッピングし、40メートルグリッドで100平方メートルのブロック内にリリースポイントを設け、病気を媒介する危険な蚊を退治するために遺伝子を組み換えた蚊を放つというソリューションが発案された。

これは、デング熱や黄熱病に苦しむ地域社会に解決策をもたらすことができるという、AIを活用したスケーラブルなソリューションなのだが、もし誰かが突然自分の家に来て、遺伝子組み換えの蚊を氾濫させると言ったら、ほとんどの人はノーと答えるのではないだろうか。地域が蚊で溢れかえるという発想に対しても抵抗がある上、進化するAIに対する世界的な抵抗感も反対理由の1つである。AIが進化することで個人情報の利用が拡大し、プライバシーの侵害が懸念されるからである。

成功するプロジェクトのほとんどが、コミュニティを教育した上で実行されるというのはこれが理由である。エネルギーを節約して環境にやさしいAI技術を採用することで気温を下げるというポジティブなメッセージを広めるには、地域社会とのパートナーシップが重要な鍵を握っている。

例えばカナダでは各都市が独自の気候チームと気象モデルを備えており、都市部の要所要所にセンサーを設置している。大規模なデータ会社やテクノロジー会社がこういった気象データを入手するのは難しく、都市が進んで共有する必要がある。高解像度・高品質の衛星画像で雲量を調べるのも同様だ。人口データや社会経済的な考慮事項については、データプロバイダーから情報を得る必要がある。

そのためプロジェクトには「信頼のスピード」感が不可欠だ。信頼性が確立されていれば、都市は現実的でスケーラブルなソリューションを提供できるテクノロジー企業にデータポイントを共有する傾向が強くなる。信頼関係がなければ、企業はNASAやCopernicusから入手可能な、一般的なオープンソースデータに頼らざるを得なくなる。

では、企業のプレイヤーやCEOにとってこのことは何を意味するのだろうか。都市向けのAIソリューションは自治体の気候チームやコミュニティを対象としているが、石油やガス会社はどうだろう。この業界の企業は都市の排出量の多くに貢献しているため、二酸化炭素排出量を報告するという大きな圧力がかかっている。

この分野へのAIソリューションでは、製油所や貨物が排出する二酸化炭素量をリアルタイムで追跡できるコマンドセンターが必要だ。製品ごと、従業員ごとの二酸化炭素排出量を減らすようCEOらは義務づけられているが、AIソリューションを導入することで環境への影響に対する説明責任を果たすと同時に、熱波の問題の一端を担っていると認識していることを示すことができるだろう。

熱波に注目が集まるようになったのは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によりオフィスで働くことよりも自宅で生活することの方が多くなったためというのもある。一般設備や快適なオフィスから離れた場所で、より顕著に不快感を感じるようになったからだ。

社会変革コミュニティのリーダーたちは企業、NGO、政府、テクノロジーパートナー、コミュニティリーダー間のコラボレーションを促進することにより、気候変動や熱波によるこうした悲惨な影響を逆転させることができるのである。もしかすると、事態が手遅れになる前に、AIとMLから生まれる潜在的なソリューションを実際に展開させることができるかもしれないのだ。

画像クレジット:instamatics / Getty Images

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(文:Shravan Kumar Alavilli、翻訳:Dragonfly)

時代遅れなビルの暖房システムをスマートに変えコスト削減、9カ月で元がとれるRunwise

米国では、温室効果ガスの約13%が商業ビルや住居用建物から排出されている。なぜなのかと首をかしげたくなるかもしれない。典型的なニューヨークのビルを見学すると、レンガで覆われた巨大なビルの地下深くにある技術は、まるで1960年代にタイムスリップしたかのように見え、その上ひどい匂いがすることに気づくだろう。Runwiseはすでに4000棟以上のビルに導入されているが、米国時間12月21日、さらに多くのビルに同社の技術を導入するために1100万ドル(約12億6000万円)を調達したと発表した。この会社は、家主のコストを削減し、その過程で地球をいくらか救うという、双方にメリットのあるWin-Winアプローチを実現している。

Runwiseのセールスポイントは、センサーではなくON/OFFスイッチやタイマーで作動することが多い古い技術があるところに、建物が必要以上に暖房されないようにするための十分な技術を加えるということだ。同社は、10年の電池寿命を持つ電池で動作するワイヤレスセンサーと、ビルのボイラーや暖房を管理するコントローラーコンピュータを開発した。平均して約9カ月で、暖房費の削減という形で導入費用を回収できるという。

Runwiseの共同設立者兼COOであるLee Hoffman(リー・ホフマン)氏はこう説明する。「5、6年前は誰も環境のことなど気にしていませんでしたが、私たちは『だが、将来的に大きなインパクトがあるんだよ!』と言っていました。でも彼らは収益について尋ねてきて、それについては会話が始まるのです。当社の長期的なビジョンは、建物の運営を改善すれば、世界中のほとんどの都市の二酸化炭素排出量と経済性を変えることができるということです。米国には1200万棟のビルがあり、当社は現在そのうち4000棟に入っていまが、すべてのビルに導入できない理由はありません」。

同社は10年前からブートストラッピングしており、目覚ましい成果を上げている。同社の技術は、Related、Blackstone、Lefrak、Equity Residential、Douglas Elliman、Fairsteadなど、米国で最大級の不動産事業者が所有するビルですでに利用されている。Runwiseは、同社の技術を導入した約4000棟のビルに、30万人以上の人々が住み、働いているとしている。Runwiseは、会社を超成長期に突入させる時期だと判断し、Initialized CapitalSusa VenturesNotation Capitalから1100万ドル(約12億6000万円)を調達した。今ラウンドにはNextView Venturesと複数のエンジェルも参加した。

「ニューヨークにあるほとんどのビルは、1960年代から70年代に設計された、ひと握りの企業が製造した制御装置で動いていますが、米国各地や世界のほとんどのビルもそうです。真新しいバンク・オブ・アメリカの高層ガラスタワーに入ると、そこには派手なデジタル表示のコントロールボックスがありますが、それは文字通り1960年代や70年代の同じコントロールの中にあるのと一緒です」とホフマン氏は説明しながら、信じられないでしょう、とでもいうように弾みがつく。「屋外リセットと呼ばれるもので、基本的にはExcelの表を使っています。暖房時間が何分なら暖房を入れる。外気温がこれくらいなら、これをやる。建物の中で何が起こっているのかは把握していません。すべてがハードコードされているのです。完全に狂っています。そして、これがほとんどすべての建物で、何百万ドル(何億円)ものエネルギー消費をコントロールしているのです」。

画像クレジット:Runwise

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

食品廃棄物を利用して持続可能な軟木を堅木のように扱えるようにするKebonyが約40億円調達

これはごくシンプルなことだ。針葉樹(軟材)は「持続可能」な森林で、広葉樹(硬材)よりも早く成長する。広葉樹は、アマゾンのような生物多様性に富んだ原生林に多く見られる。つまり、もし軟材を硬材のように使うことができれば、より持続可能な建築用木材を入手できるだけでなく、広葉樹の森林を破壊から守ることができる。さらに、温室効果ガスの排出量も大幅に削減できる。


これが、Kebonyが開発した製品の背景にある理由だ。Kebonyは、自らを「木材改質技術会社」と位置付け、Jolt CapitalとLightrockが主導して、3000万ユーロ(約39億8000万円)の資金調達を実施した。その木材特性をコントロールする方法はとても興味深いものだ。

Kebonyは、持続可能な方法で伐採された木材に、サトウキビやトウモロコシなどの食品製造過程で発生する廃棄物を加えている。これにより、熱帯広葉樹の挙動や特性を実際に反映した、長持ちする特性を木材に与えることができるという。

もちろん、建設業界がよりグリーンな建設資材を求めている中で、このような素材を使用することは非常に理に適っているし、熱帯林の伐採を減らすことにもつながる。

Kebonyは、この処理によってパイン材のような木材を「貴重な熱帯広葉樹に匹敵し、場合によってはそれを上回る」特徴を持つ木材に変えることができるとしている。また、このプロセスは、木材防腐剤を含浸させる従来の木材処理よりも優れているという。

Kebonyの資金調達は、Jolt CapitalとLightrockがリードした。Jolt CapitalとLightrockは、以前からの株主であるGoran、MVP、FPIM、PMV、Investinorとともに参加し、後者2社は引き続き取締役会に参加する。

Kebonyのコア市場は欧州と米国で、今後も拡大を計画している。欧州の木材市場は、住宅・非住宅建築業界で30億ユーロ(約3980億円)規模の市場となっている。

KebonyのNorman Willemsen(ノーマン・ウィレムセン)CEOは次のように述べている。「Kebonyは市場で最も美しくエコロジカルな木材を生産しており、環境に優しく費用対効果の高い優れた品質を誇っています」。

Kebonyの創業者たち。ノーマン・ウィレムセンCEOとThomas Vanholme(トーマス・ヴァンホルム)CFO(画像クレジット:Kebony)

Jolt CapitalのマネージングパートナーであるAntoine Trannoy(アントワーヌ・トランノワ)氏は次のようにコメントしている。「Jolt Capitalでは、特許技術を活用して持続可能な製品を提供するマテリアルサイエンス企業に強い関心を持っています。ウッドテックにおける20年以上の研究開発と、栽培された針葉樹にハードな熱帯広葉樹の望ましい特性を与える実証済みのプロセスを持つKebonyは、そのうちの1つです」。

LightrockのパートナーであるKevin Bone(ケビン・ボーン)氏は、こう付け加えた。「Kebonyは、脱炭素社会に向けた競争の中で、木材改質技術のリーダーになるという野心を持っており、絶好の立場にあります」。

Kebonyによると、2021年上半期の売上高は2020年の同時期と比べて23%の成長を遂げ、EBITDAも大きくプラスとなっているという。

ウィレムセン氏は次のように説明してくれた。「私たちが実際に行っているのは、木材に含浸させてオートクレーブに入れることです。これにより、木材構造の細胞壁が恒久的に変化し、恒久的に変化した特性が得られ、実質的に木材の寿命を延ばすことができるのです」。

それは何よりだが、スケーラビリティはどれほどのものなのか、と尋ねてみた。

「実際、非常にスケーラブルです。現在、2つのオペレーションが稼動しています。さらにスケールアップするための基本的な青写真を持っています」。

コンクリートやスチールなどの伝統的な素材と比較して、カーボンフットプリントは「大幅に削減されます」と同氏は語った。「立方メートルあたりのCO2排出量は約350キロです。例えば、スチールや従来の広葉樹と比較すると、それらは約1万キロです。つまり、他の素材に比べて非常にわずかです」。

画像クレジット:Kristian Alveo / Kebony

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

MITの研究室から生まれたVia Separations、ろ過技術で製造業の脱炭素に貢献

Via Separations(ヴィア・セパレーションズ)は、MITの材料科学エンジニアのカップルが立ち上げたスタートアップ企業だ。彼らは製造プロセスに必要なエネルギー量を削減する方法を考え出し、結果として炭素排出量、エネルギー使用量、コストを削減することに成功した。米国時間10月21日、同社はシリーズB投資ラウンドを実施し、3800万ドル(約43億円)を調達したことを発表した。

今回のラウンドは、二酸化炭素の排出量を削減するための投資に注力しているNGP ETPが主導し、2040 Foundation(2040ファウンデーション)の他、既存投資家のThe Engine(ジ・エンジン)、Safar Partners(サファー・パートナーズ)、Prime Impact Fund(プライム・インパクト・ファンド)、Embark Ventures(エンバーク・ベンチャーズ)、Massachusetts Clean Energy Center(マサチューセッツ・クリーン・エナジー・センター)が参加した。

CEO兼共同設立者のShreya Dave(シュレヤ・デイヴ)氏によれば、この会社は製造工程で炭素を削減することによって、消費者がより環境に配慮した商品を購入できるようにするための手助けをしたいのだという。

「基本的に私たちのビジョンは、サプライチェーンのインフラを脱炭素化できれば、消費者が欲しいものと地球に良いことをする方法のどちらかを選択しなければならない、ということがなくなるというものです」と、同氏は筆者に語った。

Viaのソリューションは、製造工程の途中で輸送用コンテナに設置され、生産される製品のろ過システムとして機能する。デイヴ氏は、ろ過プロセスの仕組みを、パスタの鍋に例えて説明した。「熱を加えて水を沸騰させた鍋の中に入れるのではなく、ストレーナー(こし器)を通すのです。圧力をかけてパスタストレーナーのようなフィルターを通過させるわけです」。

それにはいくつかの利点があるとデイヴ氏はいう。まず、熱の代わりに電気を使うので、必要なエネルギー量が減る。熱を使うプロセスに比べて、90%ものエネルギーを削減できるという。さらに、このプロセスでは電気を使用するため、再生可能エネルギーから電気を得ることができれば、プロセスの電化とエネルギー効率の向上の両方が実現できる。

複雑なソリューションを構築している初期のスタートアップ企業として、Viaは当面、50億ドル(約5700億円)規模のパルプ製紙業界に集中することに決めたが、この技術は、石油化学、食品・飲料、医薬品など、他の業界にも広く応用できる可能性がある。

同社はこれまでに3件のパイロットプロジェクトを進めているが、最終的にはこのソリューションをサービスとして提供することを目標としている。これを導入する顧客企業は、資本コスト全体を削減することができ、メンテナンスの負担を顧客自身ではなくViaに押し付けることができる。また、同社ではソフトウェアによるモニタリングソリューションも構築しており、製品を監視することで、顧客が最大限の効果を得られるように支援し、メンテナンスの問題を早期に発見できるようにしている。

Viaは2017年にMITからスピンアウトした。現在の社員数は23名で、年内に30名に達することを目標としている。デイヴ氏は、多様性のある創業チームとして、共同創業者でCTOのBrent Keller(ブレント・ケラー)氏とともに、多様性のある社員の集団を作りたいと語っている。

「採用するすべての職種に多様な候補者がいるというのが私の哲学です。しかし、リソースに制約があるという現実もあります。ですから、私たちは最も広い視野が得られるように、リソースを配分するよう努めています」と、デイヴ氏はいう。それは、経験よりも可能性を重視した採用を意味するということかもしれない。彼女によれば、同社では採用時に厳格なアンチバイアス教育も実施しているという。

このスタートアップのアイデアは、デイヴ氏とケラー氏がMITの大学院生時代に、現在同社の主任研究員を務めているJeffrey Grossman(ジェフリー・グロスマン)教授のもとで行っていた研究がルーツになっている。

「共同設立者と私は水のろ過膜の研究をしており、水から塩を取り除くプロセスを、より安く、より良く、より速くする方法を検討していました。その結果、私たちが発明したものは、水にはあまり応用できないものの、水以外のものを原料とする化学品製造には大きな可能性があることがわかりました」と、デイヴ氏は述べている。

会社を立ち上げたとき、彼らは最終的に、温室効果ガスの観点からより影響力の大きい工業製品の製造に焦点を移すことにした。これは創業者たちが特に重要視している点である。

画像クレジット:Via Separations

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

法人向けカーボンオフセットAPIで企業の脱炭素化を支援するSustineriが5000万円のシード調達

企業の脱炭素化を支援するSustineriは10月20日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による5000万円の資金調達を発表した。引受先はインキュベイトファンド。調達した資金はサービス開発および事業推進メンバーの採用など組織の強化にあてる。また、今秋にはカーボンオフセットAPI「Caboneu」(カボニュー)および温室効果ガス(GHG。GreenHouse Gas)算出APIのβ版をローンチする予定。

カーボンオフセットAPIは、企業による商品やサービスの販売と利用に伴って排出されるGHGについて、相殺・埋め合わせ(カーボンオフセット)が可能なクラウド型サービス。eコマース、自動車保険、旅行・航空などを販売するウェブサイトに数行のコードを記述するだけで、商品やサービスの提供に伴うGHGを算出。さらに同量のGHG削減クレジットまたは再生可能エネルギー証書を購入することで、GHG排出を相殺し気候変動への影響をニュートラルにできる。

こうしたGHG排出量を算定するには専門知識が必要になるが、カーボンオフセットAPIを利用すれば企業のサプライチェーン全体をカーボンニュートラル化可能としている。

法人向けカーボンオフセットAPIで企業の脱炭素化を支援するSustineriが5000万円のシード調達

Sustineriは、「人と地球が共存する新たなあり方を創造する」をミッションに掲げ2017年7月に設立された。企業がサステナブルシフトと脱炭素化を実現するための効果的なソリューションを提供している。事業はカーボンオフセットAPIの開発と運営のほか、GHG算出APIの開発・運営、カーボンオフセットとカーボンニュートラルの実施支援、気候変動対策および脱炭素化に関するコンサルティング。今後は日本企業の脱炭素化およびカーボンニュートラル化に貢献するサービスを継続的に開発するとのこと。

【コラム】ESG目標達成の鍵を握るのは取締役会やCEOではなく技術チームのリーダー

スタートアップ企業のCTO(最高技術責任者)や技術チームのリーダーは、会社創立のその瞬間からESG(Environmental[環境]・Social[社会]・Governance[企業統治])を重要事項として扱う必要がある。なぜなら、投資家が、ESGを重視するスタートアップ企業を優先的に評価して、持続可能性を重視した投資を行う傾向が高まっているからだ。

あらゆる業界にこの傾向があるのはなぜだろうか?答えは簡単だ。消費者が、持続可能性を重視しない企業を支持しなくなっているからである。IBMの調査によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、消費者の持続可能性(サステナビリティ)への関心と、持続可能な未来のために自身が支出することを許容する意識が高まったという。また、米国がパリ協定に復帰し、最近では気候関連への取り組みに関する大統領令が出されるなど、気候変動に対する米国政府の動きも活発化している。

ここ数年、長期的なサステナビリティ目標を設定する企業が増えているが、CEOやCSO(最高サステナビリティ責任者)が設定する目標は、往々にして長期的かつ野心的なものだ。ESGプログラムの短期的、中期的な実施は運営チームや技術チームに委ねられている。

CTOは、計画プロセスにおいて重要な役割を担っており、組織がESG目標を飛躍的に向上させるための秘密兵器となり得る。ここからは、CTOと技術チームのリーダーがサステナビリティを実現し、倫理的にポジティブなインパクトをもたらすためにすぐにできることをいくつか紹介する。

環境負荷を軽減する

企業のデジタル化が進み、より多くの消費者がデバイスやクラウドサービスを利用するようになった現在、データセンターが消費するエネルギーは増加し続けている。実際、データセンターの電力使用量は全世界の電力使用量の推定1%を占めているといわれているが、International Data Corporation(インターナショナル・データ・コーポレーション)の予測によると、クラウドコンピューティングを継続的に導入することで、2021年から2024年にかけて10億トン以上の二酸化炭素の排出を防ぐことができるという。

コンピューティングワークロードの効率化を図る。まず、コンピューティング、電力消費、化石燃料による温室効果ガス排出の関連性を理解することが重要だ。アプリやコンピューティングワークロードの効率化を図ることで、コストとエネルギー消費を軽減し、ワークロードの二酸化炭素排出量が削減することができる。クラウドでは、コンピューティングインスタンスの自動スケーリングや適正サイズの推奨などのツールを利用して、需要に対してクラウドVM(バーチャルマシン)を過剰に実行したり、オーバープロビジョニングしたりしないようにすることに加え、このようなスケーリング作業の多くを自動的に行うサーバーレスコンピューティングに移行することも検討の余地がある。

コンピューティングワークロードを二酸化炭素排出原単位(Carbon Intensity、一定量の生産物をつくる過程で排出する二酸化炭素排出量)の低いリージョンに配置する。これまでクラウドのリージョンを選択する際には、コストやエンドユーザーに対する遅延などの要素が重視されていた。しかし現在は、二酸化炭素排出量も考慮すべき要素の1つである。リージョンのコンピューティング能力が同程度でも、二酸化炭素排出量は異なることが多い(他の地域よりも二酸化炭素排出量の少ないネルギー生産が可能な地域は、二酸化炭素排出原単位が低くなる)。

そのため、一般的に、二酸化炭素排出原単位の低いクラウドリージョンを選択することは、最も簡単で効果のあるステップである。クラウドインフラのスタートアップ企業、Infracost(インフラコスト)の共同創業者かつCTOのAlistair Scott(アリスター・スコット)氏は、次のように強調する。「クラウドプロバイダーは正しいことを行い、無駄を省きたいと考えるエンジニアを支援できると思います。重要なのは、ワークフローの情報を提供することです。そうすれば、インフラプロビジョニングの担当者は、デプロイする前に、二酸化炭素排出量への影響と、コストやデータレイテンシーなどの要素を比較検討することができます」。

もう1つのステップは、Cloud Carbon Footprintのようなオープンソースソフトウェアを使って、特定のワークロードのカーボンフットプリントを推定することである(このプロジェクトにはThoughtWorksが協賛している)。Etsy(エッツィー)も、クラウドの使用情報に基づいてエネルギー消費量を推定できるCloud Jewelsという同様のツールをオープンソースで提供していて、Etsy自体もこれを利用して「2025年までにエネルギー強度を25%削減する」という目標に向けた自社の進捗状況を把握している。

社会的インパクトを作り出す

CTOや技術チームのリーダーは、環境への影響を軽減するだけでなく、社会的にも直接的で意義のある、大きなインパクトをもたらすことができる。

製品の設計に社会的な利益を盛り込む:CTOや技術系の創業者であれば、製品ロードマップで社会的利益を優先させることができる。例えばフィンテック分野のCTOは、十分な金融サービスを受けられない人々が借り入れをする機会を拡大するための製品機能を盛り込むことができるが、LoanWell(ローンウェル)のようなスタートアップ企業は、主に金融システムから排除されている人々が資本を利用できるようにして、ローン組成プロセスをより効率的かつ公平にしようとしている。

製品デザインの検討にあたっては、有益で効果的なデザインにすると同時に、サステナビリティも検討する必要がある。サステナビリティと社会的インパクトを製品イノベーションの中核として捉えれば、社会的な利益に沿うかたちで差別化を図ることができる。例えばパッケージレスソリューションの先駆者であるLush(ラッシュ)は、スマートフォンのカメラとAIを利用して商品情報を見ることができるバーチャルパッケージアプリ「Lush Lens」で、美容業界で過剰に使用されている(プラスチック)パッケージに取り組んでいる。同社のプレスリリースによると、Lush Lensは200万回の利用を達成したという。

社会的な弊害を避けるためには、企業は責任あるAIプラクティスという文化を持つ必要がある:機械学習と人工知能は、製品やおすすめコンテンツの表示、さらにはスパムフィルタリング、トレンド予測、その他「スマート」な行動に至るまで、高度でパーソナライズされたデジタルエクスペリエンスの中心となり、誰もが慣れ親しむものとなった。

そのため、責任あるAIプラクティスに取り組み、機械学習や人工知能がもたらす利益をユーザー全体で実現すると同時に、不慮の事故を回避することが重要である。まずは、責任を持ってAIを利用するための明確な原則を定め、その原則をプロセスや手順に反映させることから始めよう。コードレビュー、自動テスト、UXデザインを考えるのと同じように、責任あるAIプラクティスのレビューを考えてみよう。技術系の創業者や技術チームのリーダーは、こういったプロセスを確立することができる。

企業統治へのインパクト

企業統治の推進には、取締役会やCEOだけではなく、CTOも重要な役割を担っている。

多様性、包括性を備えた技術チームを構築する:多様性のあるチームが、1人の意思決定者よりも優れた意思決定を行う確率は87%である。また、Gartner(ガートナー)の調査では、多様性のある職場では、パフォーマンスが12%向上し、離職率が20%軽減するという結果が出ている。

技術チームの中で、多様性、包括性、平等性の重要性をしっかりと示すことが重要であるが、この取り組みにデータを活用する、というのも1つの方法である。性別、人種、民族などの属性情報を収集する自主的な社内プログラムを確立できれば、このデータは、多様性のギャップを特定し、改善点を測定するためのベースラインとなる。さらに、これらの改善点を、目標と主要な成果(objectives and key results、OKR)など、従業員の評価プロセスに組み込むことも検討し、HR部門だけでなく、全社で全員が責任を担うようにする。

これらは、CTOや技術チームのリーダーが企業のESG推進に貢献する方法を示すほんの一例である。まずは、会社設立と同時に、技術チームのリーダーとして何らかのインパクトをもたらすことができるたくさんの方法を認識することが重要だ。

編集部注:本稿の執筆者Jeff Sternberg(ジェフ・スターンバーグ)氏は、Google CloudのOffice of the CTO(OCTO)のテクニカルディレクター。

画像クレジット:Maki Nakamura / Getty Images

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(文:Jeff Sternberg、翻訳:Dragonfly)

炭素市場Agreenaは農家が環境再生型農業に切り替える経済的インセンティブを提供する

ヨーロッパの温室効果ガス排出量の24%は農業が占めているが、これは過去数十年間に行われてきた集約的な「工業型」農法と、肉の消費の増加によるところが大きい。しかし、新しいアプローチが農業界に旋風を巻き起こしている。「環境再生型農業(リジェネラティブ農業)」とは、劣化した土壌を自然に戻し、野生生物を増やし、地球を破壊する二酸化炭素を蓄えるというもので、文字通り土壌を炭素吸収源として利用する。

森林地帯を作り、泥炭地を復元することで、炭素を吸収すると同時に、ミツバチの授粉などに欠かせない自然多様性の減少を食い止めることができる。さらに、再生農業は、環境やCO2排出に焦点を当てた古い政府の補助金制度や、工業的な農業からの脱却にもつながる。

Agreenaはデンマークのスタートアップで、環境再生型農業に移行した農家が生み出す炭素クレジットを発行、証明、販売している。

2021年夏に設立されたばかりの同社は、このたびGiant Venturesとデンマーク政府のDanish Green Future Fundがリードし、470万ドル(約5億3000万円)のシード資金を調達した。また、欧州の多くの農家も参加している。

Agreenaのプラットフォームは、農家に「CO2e-certificate」を発行し、農家と購入希望者の間で販売することで、農家が従来の耕作地から再生農法に切り替えるための経済的なインセンティブを提供するという。

その仕組みとは?農家は自分の畑を登録し、再生農法に移行するためのアドバイスを受ける。そして、その変化をAgreenaが衛星画像と土壌の検証によって監視する。その後、農家はCO2e-certificateを単独で、またはAgreenaのマーケットプレイスを通じて、農家からカーボンオフセットを購入したい企業に販売することができる。買い手は、Agreenaのプラットフォームを介して、スポンサーしたCO2削減をフィールドレベルで追跡する。

AgreenaのCEOであるSimon Haldrup(サイモン・ハードルップ)氏は次のように述べている。「当社のチームは、カーボンサイエンティスト、ソフトウェア開発者、商業的グロースハッカーを含む30人のプロフェッショナルで構成されています。農業は、歴史的に誇り高い農業国であるデンマークに深く根ざしているため、会社はここで生まれましたが、私たちはヨーロッパ全体で規模を拡大しており、今後はグローバルに展開していく予定です」。Agreenaは、ハードルップ氏、Julie Koch Fahler(ジュリー・コッホ・ファーラー)氏、Ida Boesen(アイダ・ボエセン)氏によって設立された。

Agreenaは、初年度に5万ヘクタール以上の契約を締結し、発行されたカーボンオフセット証書の20%以上を事前に販売したという。

Agreenaには、いくつかの競合が存在する。農業分野のボランタリー炭素市場には、米国のスケールアップ企業Indigo(米国のユニコーン)、Nori(米国&ブロックチェーン特化)、英国・フランスを拠点とするSoil Capitalなどがある。しかし、Agreenaは、垂直統合されたカーボンプラットフォームが重要な差別化要因だとしている。

Giant Venturesの共同設立者兼マネージングパートナーであるCameron McLain(キャメロン・マクレーン)氏は、次のように述べた。「Agreenaの農業カーボンオフセットに対する垂直統合型のアプローチは、業界のニュアンスや農家にとってのインセンティブに共感的なもので、大きな期待を抱いています。また、Agreenaは、まだ誰も解いていない農業分野でのオンラインB2Bコマースを促進する有力なインターネット市場になれると信じています」。

画像クレジット:Agreena

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

Atlantic Labsが「気候」と「健康」に取り組む約130億円規模のフードテックファンドFoodLabsを設立

FoodLabsのクリストフ・F・メア氏とパトリック・フーバー氏(画像クレジット:Viktor Strasse)

テック業界が気候と持続可能性に軸足を移しつつあることを示す最新の兆候として、長年のテック投資家であるChristophe F. Maire(クリストフ・F・メア)氏が率いるベルリンのファンドAtlantic Labs(アトランティック・ラボ)の分社であるAtlantic Food Labs(アトランティック・フード・ラボ)が、食品、健康、持続可能性に関わるスタートアップに投資する1億ユーロ(約130億円)規模のフードテック専用ファンド「FoodLabs(フードラボ)」として再出発することとなった。

2016年に設立されたAtlantic Food Labsは、Infarm.com(インファーム.com)、SanityGroup.com(サニティグループ.com)、Formo.bio(フォルモド.bio)、Mushlabs.com(マッシュラボ.com)、Mitte.co(ミッテ.co)、Choco.com(チョコ.com)、Stenon.io(ステノン.io)、Gorillas.io(ゴリラ.io)などのスタートアップへの投資を行ってきた。FoodLabsは、この新しいファンドで、この分野にさらに力を入れていく。

知的財産と「農業、生産、流通、人の健康から廃棄物ゼロの分野まで、地球から地球へ、より効率的で持続可能な食品産業に向けたスケーラブルなデジタルビジネスモデル」に焦点を当てている。

メア氏は「食品産業は世界最大の産業であり、世界の温室効果ガス排出量の4分の1以上を占めています。食品の生産と消費の方法を、より効率的で持続可能なものへと変革することは、地球と人々に大きな影響を与えます。私たちは、テクノロジーと起業家精神が、現代の重要な課題に取り組むための鍵を握っていると強く信じています。フードファンドでは、より健康的な栄養価、持続可能な農業、食料へのアクセス改善への道を切り開く革新的な企業を作る最も野心的な創業者を支援します」と述べている。

私との電話で、彼はこう語っている。「5年前にFoodLabsを立ち上げたのは、食品産業は人間の健康に最も関連する産業の1つである一方、気候に最も無関係な産業の1つでもあると感じたからです。私は、今日の重要な問題を解決するために、起業家が力を貸してくれると信じています。当初の投資額は約1500万ドル(約16億9300万円)と比較的小規模なものでしたが、その過程で、私が想像していたよりもはるかに大きな可能性を秘めていることがわかりました。そこで今回、1億ユーロ(約130億円)のファンドを立ち上げました。私にはすばらしいチームと、このミッションに本気で取り組んでいる人たちがいます。これは、私のキャリアの中でも最高の活動だと思っています。ここはすばらしい空間で、とても魅力的です」。

新ファンドの最初の出資企業は以下の通りだ。

  • Foodji(ドイツ):新鮮で健康的な食品の持ち帰りを可能にするデジタルソリューション
  • Habitual(英国): デジタルヘルス関連のスタートアップで、糖尿病の改善を消費者に直接提供する
  • Kitch (ポルトガル):デリバリーサービスのためのソフトウェアを提供する
  • Klim (ドイツ):炭素農法で農業をより持続可能なものにすることを使命とする
  • getVoila(ドイツ): ヨーロッパのベストレストランの高級料理を我々のリビングルームに届ける
  • Microharvest(ドイツ)持続的に生産される栄養素やタンパク質へのアクセスを提供する
  • Myota(スイス):男性の健康に対する新たなアプローチを提供
  • Yababa(ドイツ):東洋料理のファストデリバリー企業
  • The Plate:料理創作プラットフォーム
  • Airfarm(ドイツ):農家向けにデジタルプラットフォームを提供するアグリテック企業

また、科学者を対象とした現地起業家プログラムの立ち上げも発表している。

メア氏は「私たちは、ヨーロッパがフードテック&アグテックのイノベーションの中心地になると強く信じています。ヨーロッパは、科学研究やエンジニアリングの専門知識では常に強みを持っていますが、起業家支援システムでは遅れをとっています。私たちの使命は、起業家精神、大学や研究機関の科学的ノウハウ、そして業界の主要企業を結集し、食品業界におけるイノベーションと持続可能性のための国際的なプラットフォームを構築することです」と述べている。

FoodLabsのゼネラルパートナーであるPatrick Huber(パトリック・フーバー)氏は次のように述べている。「ここ数年、私たちは、優れた企業を作るために参加してくれた科学者たちに感銘を受けてきました。科学者と起業家のコラボレーションが、フードバリューチェーンに抜本的なイノベーションをもたらす鍵になると強く信じています」。

メア氏は「私たちはまず、より多くの炭素を回収できる農業や農法から始めます。例えば、パーマカルチャーに力を入れている会社がありますが、これは一般に想像されているよりもはるかに大きなことだと思います。また、水産養殖、新たなタンパク質、新たな生産方法、新たな流通方法にも注目しています。その他クイックコマース、現地調達、新しい消費者行動など、食と健康についてです。というのも、この分野の魅力は、起業家側からの働きかけだけではなく、消費者側からの働きかけが非常に大きいからです」。と語ってくれた。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Akihito Mizukoshi)

カリフォルニア州は2030年までに自動運転車のゼロエミッション化達成を義務化

2030年から、カリフォルニア州で運用される小型車の自動運転車はゼロエミッションでなければならない。SB500はGavin Newsom(ギャビン・ニューサム)カリフォルニア州知事は、米国時間9月23日に署名した法律で、温室効果ガスの排出削減を目的に、内燃機関の新車販売を制限するための最新の取り組みとなる。ニューサム知事は2020年に、2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を事実上禁止する大統領令に署名した。同年、同州の大気資源局は、2045年までにカリフォルニア州で販売されるすべての新型トラックの排出量をゼロにすることを義務づけている。

Cruise(クルーズ)のグローバル・ガバメント・アフェアーズ部門の責任者であるPrashanthi Raman(プラシャンティ・ラマン)氏は、Engadgetに寄せた声明の中で、「これが業界標準となることを確実にするためのカリフォルニア州のリーダーシップに感謝します。AV業界は、都市における温室効果ガスの排出量削減をリードする素地があり、そのために私たちは当初から電気自動車やゼロエミッションの車両を運行してきました」という。Cruiseは、自律走行型配送サービスのスタートアップであるNuroを含むEmission Zero Coalitionへの参加を通じて、SB500を支援した。

環境保護庁によると、2019年以降、米国の温室効果ガスの唯一最大の排出源は運輸部門であり、その半分以上を小型車が占めている。しかし、現在、カリフォルニア州の道路を走る約1500万台の自動車のうち、自律走行車はごく一部に過ぎない。さらに、カリフォルニア州で完全自律走行型タクシーサービスをテストしている代表的な企業であるCruiseWaymoは、電気自動車ハイブリッド車だけで車両を運用している。今回のカリフォルニア州の動きは、自律走行車が将来的に大きな汚染源となることを防ぐためのものであり、特に完全自動運転のタクシーサービスが通勤者の間で人気になれば、その危惧は現実のものとなる。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor BonifacicはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Screenshot/GM

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】気候変動を解決するのは米国のイノベーターであり規制当局ではない

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は米国の温室効果ガス排出を2030年までに半分に削減することを誓約した。大統領は相次ぐ新たな予算と政府事業計画によってこの野心的目標を達成しようとしている。

しかし、炭素排出削減で我々が最も期待しているのは新たな財政支出ではない。それはテクノロジーの大転換であり、実現できるのは民間セクターだけだ。

実際、政府は排出削減テクノロジーが市場に出ることを妨げる規制を設けることで、気候変動の進展を遅らせている。もし我々の指導者たちが本当にこの惑星を救いたければ、実際にそれを実行できる起業家たちの邪魔にならないようにする必要がある。

政府に期待するのは、炭素汚染を削減する可能性のあるテクノロジーを支援することだ。そもそもバイデン大統領は自身の気候変動政策の中で、米国の技術革新を促進することを約束している。

残念ながら、最も有望なグリーンテックのブレースクルーの数々は、誤った、あるいは時代遅れの政策によって、厳しい逆風に曝されている。

そんなテクノロジーの1つで、イノベーターと規制の関係を描いた新しいドキュメンタリー「They Say It Can’t Be Done(みんな出来ないと言った)」で紹介されているのが、人工樹木であり、アリゾナ州立大学の物理学者・エンジニアのKlaus Lackner(クラウス・ラクナー)氏が開発した。その人造の木に含まれる特別なプラスチック樹脂は、二酸化炭素を吸収し、水に浸されると排出する。天然の木と比べて大気から二酸化炭素を取り込む効果は1000倍以上だ。捕獲された二酸化炭素は回収されて燃料に変換される。

ラクナー氏のデザインは、1台で1日当たり1トンの二酸化炭素を除去できる規模に拡大できる。主な障害は炭素捕獲テクノロジーを巡る明確な規制の欠如であり、特に捕獲した炭素の輸送と貯蔵が問題だ。

統一された枠組みができるまで、このテクノロジーを市場に出すためのプロセスはありえないほど複雑で、かつリスクをともなう

あるいは、大規模な畜産農業の必要性を低下させるテクノロジーを考えてみよう。数十億の鶏や豚や畜牛を育てるためには膨大な水と餌と土地が必要だ。その結果の炭素排出量は膨大で、年間約7.1ギガトンの温室効果ガスを生み出す。

ここでも新たなテクノロジーが排出量削減にひと役買う。研究者らは細胞培養肉をつくっている。飼育場ではなく実験室で生まれた鶏肉、豚肉、牛肉だ。代替タンパク質は安全で健康的で、従来の飼育食肉よりも炭素排出が少ない。

代替肉をつくっているスタートアップであるEat Just(イート・ジャスト)は、最近シンガポールで細胞培養鶏肉を販売するための認可を取得した。しかし、今も米国では規制当局の青信号を待っている。同社のファウンダーによると、米国の承認を得るまでには1年あるいはそれ以上かかるという。

関連記事:Eat Justが世界初の認証を取得しシンガポールで培養肉の販売を開始

代替肉生産のように大きな資本を必要とする業界では、このゆっくりとした承認プロセスによって、スタートアップが開業し、製品を市場に出すことが不可能になりかねない。

このようなハイテクソリューションこそ、気候変動の脅威から地球を守るために必要だ。果たして、代替肉が将来の持続可能食料なのか、それとも大気中の二酸化炭素を固定する最高のソリューションが人工樹木なのかはわからないが、参加しやすく公正な戦いの場は、最高のイノベーションの繁栄を可能にするはずだ。

気候変動に関することは政府だけの仕事だと信じている米国人があまりにも多い。事実は、持続可能なテクノロジーの大規模な導入の主要な障壁は、政府の介入が無いことではなく、過剰な、あるいは少なくとも誤った介入だ。

国の炭素排出量削減の約束を遂行するためには、それを実現する可能性のあるテクノロジーの開発と展開を、政府がいかに妨害しているかを、大統領とチームは認識する必要がある。

編集部注:本稿の執筆者Quill Robinson(キル・ロビンソン)氏は環境保護団体、American Conservation Coalitionの政府業務担当副社長。

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画像クレジット:simpson33 / Getty Images

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(文:Quill Robinson、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Salesforceがバリューチェーン全体での温室効果ガス実質ゼロを達成

Salesforce(セールスフォース)はこれまで頻繁に、責任ある資本主義を説き、勧めてきた。そして同社は米国時間9月21日、年次開催の顧客向けイベントDreamforceでグローバル気候変動に対する取り組みでの顕著な成果を発表した。100%再生可能エネルギーで全バリューチェーンでのネットゼロ(温室効果ガス実質ゼロ)エネルギー使用を成し遂げ、それが可能でないときはカーボン相殺を購入している、と同社は述べた。

と同時に、同社は組織の気候変動の取り組みを管理するために組織に販売しているプロダクトSustainability Cloudのアップデートも発表した。このプロダクトでは組織は責任を果たしながらも資本主義者でいられる。米国時間9月20日のDreamforce Pressイベントに登壇した同社の最高影響責任者で企業関係担当EVPであるSuzanne DiBianca(スザンヌ・ディビアンカ)氏は、ポジティブなクライメートアクションを取る大企業の例となっていることを誇りに思っていると話す。

「今日ネットゼロ企業であるという当社のクライメートアクションの約束についてとても興奮しています。これは2030年でも2040年でもなく、未来のことでもありません。取り組みを加速させなければならないことは承知していて、スコープ1、2、3の全バリューチェーンを含め、当社は現在ネットゼロです。これを達成した企業は極めて少数です」とディビアンカ氏は述べた。

持続可能性に関する多くの専門用語があり、TechCrunchはより深く理解するためにSustainability CloudのGMであるAri Alexander(アリ・アレクサンダー)氏に話を聞いた。持続可能性のコミュニティは、スコープ1、スコープ2、スコープ3として知られる3つの主要エリアでの企業のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を測定する、とアレクサンダー氏は説明した。「スコープ1とスコープ2はあなたが所有するもの、動かすもの、コントロールするもの、そして事業を展開するためにどのエネルギーを調達するかです」と同氏は述べた。

スコープ3は業界用語で「バリューチェーンの上流と下流」と言及され、あなたの会社が関わるものすべてだ。「企業が責任を負っているエミッションの圧倒的大部分は実際には企業の直接的な業務のものではなく、商品やサービスを調達する上流のものです。あるいは他の産業ではそのプロダクトや寿命を迎えた製品を使用する下流のものです」と説明した。あなたが新しいスマホを入手するときに下取りに出すスマホに起こることが、下流の例として挙げられる。

なので、Salesforceがバリューチェーンの上流と下流もネットゼロだというとき、そこには同社がコントロールするものすべて、そして同社が事業を展開する上で関わる全企業が含まれる。Salesforceのコントロール外のところで多くの変数があるため、パートナーやベンダーが同社が定める基準を遵守していることを確認できなければ「高品質なカーボンオフセット」と呼ぶものを購入する、とアレクサンダー氏は話す。

「また、すぐに対応できないところでも、完全にネットゼロでいられるよう、その不足分を埋め合わせるために当社は高品質なカーボンオフセットを購入します。その一方で、当社はサプライチェーンにわたって絶対的なゼロへと削減するという真に重要な取り組みを今後も続けます」と述べた。

加えて同社は他企業に販売するために開発した商業ツールSustainability Cloudのアップデートを発表した。これはSalesforceが自社で使っているのと同じツールとテクノロジーだ。

「持続可能性は、あるといいものから、実際に事業変革そのものの核心へと変わりつつあります。我々が生きているこの時代の趨勢の1つであり、毎年指数関数的に成長しています。そしてそれが意味するものは、企業は気候危機に対応するためにかなりのリソースを動かしており、持続可能性を事業運営の中心に据えつつあるということです」とアレクサンダー氏は述べた。

同時に、同社はより持続可能な組織になるためのSalesforce Climate Action Planという独自の計画に基づく取り組みの詳細も公開した。この計画はオンラインで無料で閲覧できる。

同社はまた、植林の目標を2021年3000万本に増やす。植林の取り組みには他の企業も参加しており、10年で1億本を植林して育成・保全することを目標に掲げ、早く達成できるよう強力に推進している。

Dreamforceプレスイベントに登場したSalesforceの社長兼COOのBret Taylor(ブレット・テイラー)氏は、気候危機はあらゆる人に影響を及ぼしていて、Salesforceが他の組織のお手本になるよう取り組みつつ、自社の行いで意義ある影響を及ぼすことができると確信している、と述べた。

「我々は事業が変化のための最善のプラットフォームであると考えていることを認識するために、またあらゆる組織が信頼される企業になり、気候変動のような危機を解決するよう、刺激を与えるビジョンを描くためにDreamforceにいます」とテイラー氏は話した。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

世界中の環境テックベンチャー対象の助成プログラムを英Founders FactoryとスロバキアのG-Forceが展開

英国のテックアクセラレーターFounders Factory(ファウンダーズファクトリー)はFounders Factory Sustainability Seedプログラムの立ち上げで欧州の同業と力を合わせる。スロバキアのブラチスラヴァに拠点を置きつつ広範に活動しているG-Force​(GはGreenからとっている)との提携のもとに立ち上げたプログラムは気候テックのスタートアップへの投資と振興を目的としている。

プログラムは世界の温室効果ガス排出を削減し、循環型経済への移行を加速させ、持続可能な住宅供給や製造のソリューションを生み出し、また気候に優しいモビリティ、食糧生産、二酸化炭素・メタン回収・貯留に対応できるスタートアップの起業家に​投資する。

主にブラチスラヴァ以外で活動しているG-Forceとともに展開するこのプログラムは、遠隔と対面のサポートを織り交ぜた「ハイブリッド」方式で展開される。世界の環境テックベンチャーがプログラムに申し込んで参加できるように、との意図だ。

Sustainability SeedプログラムでFounders FactoryのパートナーとなるG-Forceは財務面で、Boris Zelený氏(ボリス・ゼレニー、AVASTに14億ドル[1540億円]で売却されたAVGを創業した人物だ)、Startup GrindのMarian Gazdik(マリアン・ガズディク)氏、そしてアーリーステージ投資家のPeter Külloi(ピーター・キューロイ)氏やMiklós Kóbor(ミクローシュ・コーボー)氏を含む多数の東欧の投資家によって支えられている。

プログラムに選ばれたスタートアップは最大15万ユーロ(約2000万円)のシード投資、Founders Factoryチームによる6カ月のサポート、潜在的な顧客やパートナー、法人、投資家への紹介を受けられる。

Founders FactoryのCEOであるHenry Lane Fox(ヘンリー・レーン・フォックス)氏は次のように述べた。「起業家が創造を得意とするディスラプトを促進することで、すべての人にとってより良い、そしてより持続可能な未来を形成することができます。G-Forceとの提携で、Founders Factory Sustainability Seedプログラムは世界にポジティブな影響を与えるベンチャーの育成とサポートを約束する主要プレシードプログラムになります」。

G-Forceの共同創業パートナーであるMarian Gazdik(マリアン・ガズディク)氏は「Founders Factory Sustainability Seedプログラムとの提携での我々の野望は、G-Forceを欧州の中心を拠点とする世界クラスの持続可能なイノベーションハブにすることです」と述べた。

アイデアを進展させて、レーン・フォックス氏は「これまでは1つの法人パートナーと組み合わせるのが当社のモデルでしたが、この特異なケースではエンジェル投資家のグループをまとめて紹介し、純粋な金融投資家との取引にすることができます。これは実際にこの特異な部門にうまく合うと考えています。我々はまた、そうした企業がプログラムを最大限活用できるよう、早い段階でより多くの資金を提供します」と筆者に語った。

ガズディク氏は、英国ではなく欧州を拠点とすることでEUの助成プログラムを利用することができる、とも付け加えた。

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EU「2030年の温室効果ガス55%削減」が21年遅延・2051年まで未達との調査報告、挽回には約470兆円の投資必要との試算も
スタートアップが日本のエネルギーセクターに入れないワケ
クリス・サッカ氏の気候変動対策ファンド「Lowercarbon Capital」が880億円を集める
画像クレジット:G-Force team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

EU「2030年の温室効果ガス55%削減」が21年遅延・2051年まで未達との調査報告、挽回には約470兆円の投資必要との試算も

EU「2030年までに温室効果ガス55%削減」の目標達成が2051年にズレ込むとの調査報告、約470兆円の投資が必要との試算も

Reuers / Srdjan Zivulovic

欧州連合(EU)は、温室効果ガスを2030年までに1990年比55%削減するという目標「Fit for 55」を達成するのに、21年も遅れていることがわかりました。Reutersは、Enel財団と国際経済会議European House-Ambrosettiの研究の結果、現在のペースのまま大幅な改善がなければ、2030年の目標値は2051年まで達成できないと報じています。

また温室効果ガス以外でも、2030年に40%の再生可能エネルギーを導入するという目標が、2043年にずれ込むと予想しています。

調査では、こうした遅れを取り戻して間に合わせるためにはEU全体で約3兆6,000億ユーロ(約470兆円)の投資が必要だと述べています。

「エネルギー転換プロセスに関与するセクターへの投資は、ヨーロッパとイタリアの両方で、重要な間接的および誘発的効果を伴う連鎖的な利益を生み出すでしょう。実際、この調査によると、今後10年間でこれらのギャップを埋めることで、欧州連合では8億ユーロ以上、イタリアでは4,000億ユーロ以上のGDPに累積的な影響を与える可能性があると報告されています。そして、目標達成のためにはEUの取り組みを抜本的に強化する必要があると警告しています。

イタリアを本拠地としてEU各国にEnelのCEOフランチェスコ・スタラーチェ氏は調査結果を示した上で「これでは遅すぎる」と述べ「目的達成のための具体的な行動力を持つ、課題の大きさに見合ったガバナンスシステムを速やかに整備する必要がある」としました。そのためには、

この研究結果は、電力会社であるEnelが自社で手がける再エネ事業へのEUからの投資を得るのを助けるためのものとも考えられます。ただいずれにせよ、EUはより積極的にクリーンエネルギーの採用を進め、EU加盟国間の調整を円滑化して市場統合を促進していく地域戦略が求められています。

(Source:ReutersEngadget日本版より転載)

サプライチェーンの温室効果ガス排出量計測・管理をAIで自動化するEmitwiseがシード約3.5億円を追加調達

AIプラットフォームで企業とそのサプライチェーンからの温室効果ガス排出量を測定できるとするスタートアップのEmitwiseは、シードラウンドに320万ドル(約3億5000万円)を追加し、これで同社が調達したシード資金の総額は660万ドル(約7億2000万円)となった。320万ドルの追加調達はArcTern Venturesが主導した。また、Schroders(シュローダー)のCEOであるPeter Harrison(ピーター・ハリソン)氏、テトラパックのファミリー後継者Magnus Rausing(マグナス・ラウシング)氏、そしてUber(ウーバー)の共同創業者Ryan Graves(ライアン・グレイブス)氏の投資会社であるSaltwaterなどのエンジェル投資家も参加した。その他の投資家には、True Ventures、Social Impact Capital、Lightbird Venturesなどが含まれている。

同社はこのプラットフォームにより、サプライチェーン全体のカーボンアカウンティング(炭素会計)の自動化、排出ホットスポットの特定、ERPシステムとの統合、CDP、GHG、TCFDなどの監査・開示システムへの準拠を実現するとしている。

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Emitwiseの共同創業者兼CEOであるMauro Cozzi(マウロ・コッツィ)氏は、次のように述べている。「きたるCOP26気候サミットで各国首脳が気候変動への取り組みを強化する中、企業や投資家の間では、『炭素イコール コストとリスク』という確信がかつてないほど高まっています。ネットゼロに合致したモデルは、利益・効率性・耐性を代弁するものであり、当社は企業が変革により大きな経済的利益を実現できるよう支援することを約束します」。

ArcTern VenturesのMarc Faucher(マーク・フォーシェ)氏は次のように述べた。「企業は顧客、投資家、そして規制当局から正確な環境データを開示するように迫られています。Emitwiseは、効果的な緩和策やインセンティブを導入する上で重要となる、サプライチェーンのカーボンを明確に把握できるようにします。ArcTern Venturesでは、Emitwiseのソフトウェアプラットフォームは、世界共通のカーボンフットプリント報告の新しい基準となるゲームチェンジャーだと信じています」。

EmitwiseはWatershedsやPlan Aなどを含むこの分野の他のスタートアップとある程度競合しており、これらの企業も最近資金調達を行った。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:温室効果ガス人工知能Emitwise資金調達カーボンアカウンティング二酸化炭素

画像クレジット:Emitwise team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

エネルギー事業で余った天然ガスを利用し暗号資産のマイニングに電力供給するCrusoe Energy

Crusoe Energy(クルーソーエナジー)の2人の創業者が、今日の地球が直面している2つの大きな問題、すなわちハイテク産業のエネルギー使用量の増加と、天然ガス産業に関連した温室効果ガスの排出に対する解決策を見つけたかもしれない。

エネルギー事業で余った天然ガスを利用してデータセンターや暗号資産のマイニング事業に電力を供給するクルーソーは、事業の拡大に向けて、つい最近ベンチャーキャピタル業界のトップ企業から1億2800万ドル(約139億6396万円)の新規資金を調達したところであり、これはこれ以上なく良いタイミングだ。

温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化をパリ協定で定められた1.5℃以内に抑えることを目指す研究者や政策立案者にとって、メタンガスの排出は新たな注目分野となっている。クルーソーエナジーはまさにこのメタンガス排出を使用してデータセンターやビットコインマイニングへの電力供給を行おうとしている。

メタンの排出量を削減することが短期的に非常に重要である理由は、メタンの温室効果ガスは二酸化炭素の温室効果ガスに比べてより多くの熱を閉じ込め、またより早く消散するからだ。そのため、メタンの排出量を劇的に削減できれば、人間の産業が環境に与えている地球温暖化の負荷を短期間で緩和することができる。

メタンを排出する最大の原因は、石油・ガス産業だ。クルーソーエナジーの共同設立者であるChase Lochmiller(チェース・ロックミラー)によると、米国だけでも毎日約3964万立方メートルの天然ガスが焼却されているという。焼却量のうち約3分の2はテキサス州で、さらに約1415万立方メートルはクルーソーがこれまで事業を展開してきたノースダコタ州で焼却されている。

米国の大手金融機関でクオンツトレーダーとして活躍していたロックミラーと、石油・ガス業界の3代目社長であるCully Cavness(カリー・カブネス)にとって、回収した天然ガスをコンピューターに利用することは、金融工学と環境保全という2人の関心が自然に結びついたものだった。

ノースダコタ州ニュータウン。2014年8月13日、ノースダコタ州ニュータウン近くのフォート・バートホールド・リザベーションにて、3つの油井と天然ガスのフレアリングの様子。1カ月に約1億ドル(約108億9600万円)相当の天然ガスが焼却されるのは、それを回収して安全に輸送するパイプラインシステムがまだ整備されていないからだという。フォート・バートホールドにある近親三部族は、マンダン族、ヒダーツァ族、アリカラ族から成る。ここは、フラッキングと、そこに住む多くのネイティブアメリカンに石油使用による収益をもたらしていた石油ブームの震源地でもある(画像クレジット:Linda Davidson / The Washington Post via Getty Images)

デンバー出身の2人は、予備校で出会い、その後も友人として付き合っていた。ロックミラーがマサチューセッツ工科大学に、キャブネスがミドルベリー大学に進学したときには、まさか一緒にビジネスを立ち上げることになるとは思ってもいなかった。しかし、ロックミラーは大規模なコンピュータや金融サービス業界に触れ、キャブネスは家業を継いだことで、天然ガスの大量廃棄に対処するためのより良い方法があるはずだという結論に達した。

クルーソーエナジーにまつわる会話は、2018年にロッキー山脈にロッキー・クライミングに行った際に、ロックミラーがエベレストに行った話をしたことから始まった。

2人がビジネスを構築し始めたとき、最初に注目したのは、ビットコインのマイニングで発生するエネルギー・フットプリントに対処するための環境に優しい方法を見つけることだった。この試みが、Olaf Carlson-Wee(オラフ・カールソン-ウィー、ロックミラーの元雇用主)が立ち上げた投資会社Polychain(ポリチェーン)や、Bain Capital Ventures(ベインキャピタル・ベンチャーズ)、新たな投資家であるValor Equity Partners(ヴェイラー・エクイティ・パートナーズ)などの目に留まった。

(この試みについては、私が同社のシードラウンドを取材する際にロックミラーが言及していた。当時、私はこの会社の前提に懐疑的で、この事業は炭化水素の使用を長引かせ、政府の崩壊に対する投機的なヘッジ目的以外には実用性が限られている暗号資産を支えているだけではないかと心配していた。しかし、少なくとも私の懐疑のうちの1つは間違っていたと言える)

ヴェイラー・エクイティの広報担当者はメールで以下のように述べている。「持続可能性についての質問ですが、クルーソーには、排出量を実質削減するプロジェクトのみを追求するという明確な基準があります。通常、クルーソーが担当する油井はすでにフレアリングしており、クルーソーのソリューションがなければフレアリングが続くでしょう。同社は、従来のパイプラインから低コストのガスを購入することになる数多くのプロジェクトを断ってきました。その需要と排出量の実質増加を望んでいないためです。さらに、マイニングは再生可能エネルギーへの移行が進んでおり、座礁資産であるエネルギーに対するクルーソーのアプローチは、座礁資産であり限界のある再生可能エネルギーの経済的価値を向上させ、最終的には再生可能エネルギーをより多く取り入れることができます。マイニングは、電力の需要が増加したときに削減できる中断可能なベースロード需要を提供することができるため、全体として、より多くの再生可能エネルギー源をグリッドに追加する動機付けとなる効果があります」。

その後、Lowercarbon Capital、DRW Ventures、Founders Fund、Coinbase Ventures、KCK Group、Upper90、Winklevoss Capital、Zigg Capital、Tesla(テスラ)の共同創業者であるJB Straubel(J.B.ストラウベル)といった投資家が加わっている。

同社は現在、ノースダコタ州、モンタナ州、ワイオミング州、コロラド州で、廃棄された天然ガスを動力源とする40のモジュール型データセンターを運営している。来年は、クルーソーがテキサス州やニューメキシコ州などの新しい市場に参入するため、その数は100ユニットに拡大する見込みだ。2018年の立ち上げ以来、クルーソーは、ビットコインマイニング、レンダリング、人工知能のモデルトレーニング、さらには新型コロナウイルス感染症の治療法研究のためのタンパク質のフォールディングシミュレーションなどのエネルギー集約型コンピューティングによってフレアを削減する、スケーラブルなソリューションとして登場した。

クルーソーは、メタンガスの燃焼効率が99.9%であることを誇っており、さらにデータセンターやマイニング現場でのネットワーク構築という新たなメリットももたらしている。将来的にはクルーソーの事業所周辺の農村地域の接続性向上にもつながる可能性がある。

現在、同社の業務の80%はビットコインマイニングに関するものだが、データセンター業務での使用の需要も高まっており、ロックミラーの母校であるMITをはじめとするいくつかの大学が、自校のコンピュータのニーズのために同社の製品を検討している。

ロックミラーはこう述べている。「今はまだ潜伏期の段階です。プライベート・アルファ版には、何人かのテストを行う顧客がいますが、2021年後半には一般のお客様にもご利用いただけるようになるでしょう」。

クルーソー・エナジー・システムズのデータセンターの運用コストは世界で最も低いはずだと、ロックミラーは述べている。同社は、データを顧客に届けるために必要なインフラ構築をサポートするために費用をかけるつもりだが、エネルギー消費量に比べれば、それらの費用は無視できるレベルだという。

これはビットコインマイニングにおいても同様で、中国で石炭を使ったマイニングを行う代わりに、(送電網の整備に使用されるのではない)再生可能エネルギーを使った新たな設備の建設という選択肢を提供できる。暗号資産業界は、その生成と流通にともなうエネルギー使用に対する批判をかわす方法を探しており、クルーソーはすばらしいソリューションとなる。

また、制度や規制面での追い風も同社を後押ししている。最近では、ニューメキシコ州が来年4月までにフレアリングとガス放散を事業者の生産量の2%以下に制限する新しい法律を可決した一方で、ノースダコタ州は現場でのフレアガス回収システムを支援するインセンティブを推進し、ワイオミング州はビットコインマイニングに適用されるフレアガス削減のインセンティブを設ける法律に署名した。世界最大の金融サービス企業もフレアガス対策に取り組んでおり、BlackRock(ブラックロック)は2025年までに日常的なフレアガスの発生をなくすよう呼びかけている。

ロックミラーは「電力消費量については、プロジェクトの評価段階で、石油・ガスプロジェクトの排出量を削減するための明確な線引きをしています」と語った。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Crusoe Energy温室効果ガス暗号資産データセンター資金調達電力

画像クレジット:Spencer Platt / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

肉を食べる回数を減らして地球を守るHabits of Wasteの「#8mealsアプリ

アースデイは過ぎても、NPOのHabits of Wasteがリリースしている#8mealsアプリ(iPhone版Android版)を使い、週に8回の食事で肉を食べるのを止めると誰もが森林伐採や温室効果ガス排出量の削減に参加できる。

Habits of Wasteの設立者であるSheila Morovati(シーラ・モロバティ)氏が開発会社のDigital Pomegranateとともに作ったこのアプリで、目標達成に向かって肉を食べない食事の計画を立て、おすすめレシピを知ることができる。

モロバティ氏は廃棄物と消費を減らす活動を続けており、#8mealsアプリはその最新の取り組みだ。同氏の環境保護活動は、南カリフォルニア地域でレストランに回収箱を設置し、使用済みクレヨンを集めて学校へ再配分するプログラムから始まった。

クレヨンコレクション」というこのプログラムでは、2000万本以上のクレヨンがゴミにならずに再配分されたが、モロバティ氏が設立したNPOのHabits of Wasteが推進する廃棄物削減はこれでは終わらなかった。

Habits of Wasteは#cutoutcutlery(カトラリー削減)キャンペーンも開始した。Uber Eats、Postmates、Grubhub、DoorDashを説得し、標準で添付していたプラスチックのカトラリーを顧客からの要望があったときだけ添付するように変えたキャンペーンだ。Habits of Wasteのウェブサイトによれば、これは毎年400億本近く廃棄されているプラスチック製カトラリーを削減する手段だという。

モロバティ氏は「我々はカトラリーと8回の食事を変えるまったく新しい戦い方を作ることにしました。社会の考え方を変えることが私のゴールです」と語る。

一方、消費者が利用できる代替肉製品は増え続けている。朝食用シリアルのPost CerealからビールのAnheuser Buschまで、さまざまな企業が動物性タンパク質の代替製品に参入しようとしている。Impossible FoodsやBeyond Meatなどが代替肉を消費者に直接販売するために巨額の資金を調達していることはいうまでもない。

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肉を食べないことは、それが週に数回であっても、地球の健康(そして人間の健康)にとって大きな違いを生む。畜産は世界全体で温室効果ガスの18%以上を排出しており、森林伐採の一因でもあるからだ。

モロバティ氏は2021年1月にYouTubeで公開された、スーパーフード指導者を自称するDarin Olien(ダリン・オリエン)氏とのインタビューで次のように語っていた。「私はいつも、自分の頭の中で作った架空の人物であるJoe Barbecue(ジョー・バーベキュー)氏について考えています。我々はどうすればジョー・バーベキュー氏に参加してもらえるでしょうか。この人に完全なビーガンになるように勧めることができるかといえば、私はできないと思います。今はまだ。しかし週に8食だけビーガンになるように提案すれば、バーベキュー氏であっても試し、理解して、試そうと思わない人たちに勧めてくれるかもしれません」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Habits of Waste温室効果ガス代替肉

画像クレジット:ANGELA WEISS/AFP / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Kaori Koyama)

テスラ車オーナー向けアプリ「TezLab」を使えば充電する電力の「クリーン度」がわかる

Tesla(テスラ)の電気自動車オーナーは、自分のクルマに供給されているエネルギーの種類を正確に把握することが可能になった。テスラ車のためのFitbit(フィットビット)のような無料アプリ「TezLab(テスラボ)」に、エネルギーミックス(化石燃料による発電と再生可能エネルギーの種類と正確な割合)を表示する新機能が加わったのだ。これを使えば、米国内のSuperchargers(スーパーチャージャー)やサードパーティの充電ネットワークから供給される電気が、どのように発電されたものなのか、その種類と割合を知ることができる。

「私たちはエネルギーに関連するデータの出所を追跡しているため、ツーソンやブルックリン(あるいはどんな場所でも)で充電した時、その電気がどこから供給されているのか、そのエネルギーミックスはどうなっているのか、知ることができます」と、TezLabのCEOで共同設立者であるBen Schippers(ベン・シッパーズ)氏は最近のインタビューで説明している。「その結果、自宅で充電しているか、スーパーチャージャーで充電しているか、またその充電量に応じて、どれだけの炭素が大気中に排出されているかを知ることができるのです」。

Tomorrow(トゥモロー)のプロジェクトであるElectricityMap(エレクトトリシティマップ)がエネルギーデータを提供し、TezLabはそれを消費者向けアプリに組み込んだ。このアプリはダウンロードすると、テスラのオーナーがいつ、どこで充電しているかを認識することができる。そして新たにアプリに追加されたエネルギーミックス機能が、その電気のクリーン度や汚染度などの全体的な情報を、オーナーに提供する。

例えば、ラスベガスにあるテスラのLinq High Roller Supercharger(リンク・ハイ・ローラー・スーパーチャージャー)は、V3スーパーチャージャーで、1台当たり最大250kWのピーク充電レートに対応している。また、テスラのソーラーパネルとPowerpack(パワーパック)エネルギー貯蔵システムを使用し、充電器を作動させるのに必要な電力を生成・貯蔵していることで注目を浴びている充電施設だ。

TezLabのデータによると、この充電器で供給される電気のエネルギーミックスは、太陽光による発電が1.7%。再生可能エネルギーの主なものはフーバーダムによる水力発電で65.6%。残りの約33%が天然ガスによる発電だ。

カリフォルニア州ホーソーンにあるテスラのスーパーチャージャーは、いち早くソーラーパネルを設置したが、そのエネルギーミックスは、太陽光0.2%、原子力5.5%、天然ガス13.3%、石炭27%、風力49.9%となっている。

ワシントン州のセントレア、レブンワース、モーゼスレイク、シアトルなどの「最もクリーンな」スーパーチャージャーのトップ10は、水力発電のおかげでこの目標を達成できた。太陽エネルギーを最も多く利用しているスーパーチャージャーは、いずれもカリフォルニア州の同じ電力網に位置しており、バーストウ、オックスナード、カバゾン、サンディエゴ、モハーベ、イニョカーン、サンマテオ、シーサイド、サンタアナにあるスーパーチャージャーでは、太陽光が22.7%、風力が15%となっている。残りのエネルギー構成は、蓄電池0.2%、バイオマス2.9%、地熱5.6%、水力6.3%、原子力6.6%、天然ガス40%だ。

TezLabを作り出したHappyFunCorp(ハッピーファンコープ)は、モバイル、ウェブ、ウェアラブル、モノのインターネットデバイス用のアプリケーションを構築しているソフトウェアエンジニアリング会社で、その顧客には、Amazon(アマゾン)やFacebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)をはじめ、数多くのスタートアップ企業が含まれる。同社共同設立者のシッパーズ氏(現会長)とWilliam Schenk(ウィリアム・シェンク)氏をはじめとするHFCのエンジニアたちは、テスラの主にソフトウェア主導型のアプローチに惹かれた。特にテスラのAPIのオープン性から生まれるチャンスに興味を持ったという。テスラのAPIは、技術的にはプライベートなものだが、エンドポイントは部外者でもアクセスできる。リバースエンジニアリングすると、サードパーティのアプリがAPIと直接通信することが可能になる。

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2018年に配布が始まった当時、TezLabはオーナーが電力消費率や総走行距離を記録したり、ドアの施錠・解錠や冷暖房など、車両の特定の機能を制御できる機能を備えていた。その後、テスラのオーナーがスーパーチャージャー・ステーションを評価できる機能など、主にコミュニティの構築に焦点を当てた機能がさらに追加された。

これらのデータはすべて匿名で集約されている。TezLabはそのデータを販売するつもりはないという。同社はこれらのデータから得られた見解をウェブサイトに掲載しており、例えば、モデル別の所有者の内訳、平均走行距離、平均充電時間などを知ることができる。

TezLabは他の電気自動車の発売に合わせて、Ford Mustang Mach-E(フォード・マスタング・マックE)などをアプリに追加している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TezLabTeslaエネルギー再生可能エネルギー温室効果ガス電気自動車炭素アプリ

画像クレジット:Tesla

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)