NASAが火星ヘリコプターの任務を9月まで延長

火星で多忙な1年を過ごしたNASAのヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ、創意工夫という意味)」だが、今後もその勢いが衰えることはなさそうだ。21回の飛行を行った後も、依然として機体は良好な状態にあるため、NASAはその任務を少なくとも9月まで延長することにした。

Ingenuityは2021年2月18日に、NASAの探査車「Perseverance(パーサヴィアランス、忍耐という意味)」とともに赤い惑星に到着した。その元々のミッションは、単に火星の薄い大気圏でヘリコプターを飛ばす能力を実証することだった。3回の飛行でその技術を証明し、地球以外の惑星における初の動力飛行を達成した後、NASAはIngenuityを運用モードに移行させ、さらに2回の飛行を行った。以来、このヘリコプターは16回の飛行を行い、その能力をさらに試しながら、PerseveranceがJezero(ジェゼロ)クレーターを運航するのを支援した。しかし、今は新しいミッションに取り掛かっている。ジェゼロ川の三角州の探索だ。

「ジェゼロ川の三角州探査は、火星における初飛行以来、Ingenuityチームが直面する最大の挑戦となるでしょう」と、NASAジェット推進研究所のIngenuityチーム責任者を務めるTeddy Tzanetosの(テディ・ツァネトス)はプレスリリースで述べている。

この地域は、IngenuityとPerseveranceの両方にとって危険な場所だ。「ギザギザの崖、角度のある地面、突き出た巨礫、砂で満ちたポケット」がたくさんあり、探査車の進路を止めたり、着陸時にヘリコプターをひっくり返す」可能性があると、リリースには述べられている。しかし、これはIngenuityがその偵察能力を証明する大きな機会だ。このヘリコプターによる観測は、Perseveranceがこれから進むべきルートに影響を与えるだけでなく、火星に微生物が生息していた証拠を探し、やがて地球に持ち帰ることができるコアサンプルを採取するという科学ミッションにも関わってくる。さらに、Ingenuityの飛行で得られたデータは、次世代の火星探査機の設計に活かされるだろう。

「1年近く前には、火星での動力制御飛行が可能かどうかさえ、私たちにはわかりませんでした」と、NASAの科学ミッション本部のThomas Zurbuchen(トーマス・ズルブチェン)副本部長は述べている。「今、私たちはIngenuityがPerseveranceの2回目の科学研究活動に参加することを楽しみにしています」。

Ingenuityは現在、当初の飛行区域からSéítah(セイタ)と呼ばれる地域を横断し、それからジェゼロ川の三角州を探索するするために、少なくとも3回は必要なフライトの1回目を終えたところだ。次のフライトはいつになるか、現時点では未定となっている。

「私にとって今度のフライトは、我々の運航日誌への22回目の書き込みとなります」と、NASAジェット推進研究所のチーフパイロットであるHåvard Grip(ホーバード・グリップ)氏は、プレスリリースで語っている。「最初にこのプロジェクトが始まった時、3回も飛べたらラッキー、5回も飛べたら大変な幸運だと思ったのを覚えています。この調子でいけば、2冊目の日誌が必要になりそうです」。

おそらく、NASAはそれほど驚いていないだろう。同航空宇宙局の火星探査機はすべて、当初のミッション期間を大幅に上回る驚異的な寿命を備えている。時にそれは火星の周期で数千日分にもなるほどだ。Ingenuityもそれに倣っているのは当然のことだ。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イーロン・マスク氏のSpaceX Starshipイベントで残る大型ロケットをめぐる多くの疑問

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、テキサス州ボカチカにあるStarship(スターシップ)開発現場から、同社の次世代打ち上げ宇宙船Starshipの進捗と計画について最新情報を提供した。StarshipとSuper Heavyブースターを組み合わせた高さ約400フィート(約121メートル)の打ち上げ機について、これまで印象的な説明があった。しかし今回、同氏がStarshipについて語ったことの多くは目新しいものではなかった。飛行試験と開発の次のステップに関してプロジェクトが置かれている実際の状況について同氏が共有できたことは、新しいコンセプトビデオに描かれた、空想上の惑星に向かうというビジョンに現状からどうやってたどり着くのかという疑問をいくつか投げかけた。

「ノアの方舟」の正当化

マスク氏は、人類を火星やその先に恒久的に到達させるというミッション実存の正当性に繰り返し言及してきたが、今回のアップデートでは、その目標に、地球の幅広い種の保存を中心とする補足を加えた。同氏はノアの方舟に触れなかったが、以下の通り、この類推は外れていない。

人類だけでなく、地球上のすべての生命を本当に大切に思う人たちにとって、長期的には、私たちが複数の惑星を持つ種になり、最終的には太陽系を越えて生命をもたらすことが非常に重要です。私たちは生命の管理人であり、生命の後見人です。私たちが愛する生物たちは宇宙船を作ることができませんが、私たちは彼らを連れて行くことができるのです。それは、環境を大切にする人、地球上のすべての生き物を大切にする人にとって、とても重要なことだと思います。

SpaceX(スペースエックス)のCEOであるマスク氏は、究極的にはこのプロジェクトの正当化を軽視し、第2の理由であるインスピレーションをより重要視している。同氏は以前、SpaceXの野心について語った際に、Starshipと文明の多惑星化は、人々を「未来について興奮」させることができるものの1つだと述べた。これは、マスク氏とSpaceXが地球上の問題解決に費やした方がよいはずの膨大な資金をプロジェクトに注いでいるという批判に対する長い回答の一部だった。批判に対して同氏は「リソースの99%超は地球上の問題解決に向けられるべき」ということに同意し、それはすでに行われていると述べた。

Starshipの打ち上げプロセスと迅速な再利用性

SpaceXは、これまでもStarshipの打ち上げプロセスについて語り、コンセプトアニメーションも公開してきたが、今回のアップデートでは、同社がイメージする最新のバージョンを映し出した。上に掲載した短い映像は、現在ボカチカに設置されている実際の打ち上げ施設をより忠実に再現しているが、タワーにブレードランナーの雰囲気を漂わせるビジュアルが施されている。

このアニメーションでは、2つのStarship宇宙船が軌道上でドッキングする様子も描かれている。これは、SpaceXが以前にモデル化したものではないが、火星への旅のために宇宙で燃料を補給する方法について同社は議論してきた。マスク氏は、ドッキングプロセスの詳細について同社がまだ解決しなければならないことだとしながらも、実際には「自分自身とドッキングするよりも宇宙ステーションとドッキングする方がずっと難しい」はずだと語り、SpaceXの宇宙船が常に宇宙ステーションとドッキングしていることに言及した。

打ち上げ場所と必要なクリアランス

もう1つの話題は、これまで共有された情報との相違が明確になった、Starshipの打ち上げ施設についてだ。マスク氏によると、打ち上げ場所の周辺には比較的人口の少ない広大なエリアが必要で、さらに人々をすばやく避難させることができること、打ち上げ傾斜角や宇宙船が宇宙に入る際の適切な位置取りが必要なことから、Starshipの打ち上げには2つのオプションしかないという。イベントが行われたテキサス州のStarship開発施設と、フロリダ州のケープカナベラルだ。

テキサスでの打ち上げのための米連邦航空局(FAA)による現場審査がどういう状況なのか、マスク氏は実際には把握していなかったが、3月中には承認が得られると予想しているという。とはいえ、ケープカナベラルには予備のためのStarshipの建設現場と発射台があり、テキサスで環境審査とFAAの審査が通らなければ、ケープカナベラルが第一の場所になる可能性もある。SpaceXが最初からフロリダのスペースコースト(ケネディ宇宙センターとケープカナベラル基地周辺)に決めてStarshipを打ち上げようとしなかった理由の1つは、そこではすでに多くのロケット打ち上げが行われており、既存のオペレーションを中断させたくなかったからだと、マスク氏は述べた。

質疑応答のセッションでマスク氏は、最終的にはSpaceXが古い石油プラットフォームを使って現在開発しているような、海上に浮かぶ宇宙港が「おそらく」いくつもできると考えている、と繰り返した。これは、ロケット発射が「かなりうるさい」こと、また混乱を最小限に抑えるために少なくとも「主要都市から20~30マイル(約32〜48キロメートル)」離れたところで発射を行わなければならないことに対処するためだ。このことは、地球を拠点としたポイント・ツー・ポイントの移動にとって重要なことだと同氏は話した。

軌道到達のタイムラインは不明

Starshipに関して次に期待されているのは、何といっても最初の軌道上テスト飛行だ。プロトタイプはすでに(Super Heavy除く)民間旅客機が飛行する高度まで飛んでいるが、地球の大気圏を超えたものはまだない。過去の発言でマスク氏はいつも楽観的なスケジュールを示してきた。例えば2019年9月の最初のStarship情報アップデートで同氏は、6カ月以内に軌道に到達し、2020年中には人を乗せることもできると予想していた。

明白だが、それは実現しなかった。

その代わり、タイムラインは2021年末から2022年1月に、そして現在は3月になる可能性もあるなど絶えず変化しており、マスク氏は実際に軌道テストに成功するいう点に関して「2022年中に軌道に到達すると強く確信している」とだけ発言している。

Starshipアップデートのプレゼンテーションの全容は、下の動画で閲覧できる。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

NASA、火星からサンプルを持ち帰る宇宙機MAVの開発に向けロッキード・マーティンと契約

NASA、火星からサンプルを持ち帰る宇宙機MAVの開発に向けロッキード・マーティンと契約

NASA/ESA/JPL-Caltech

火星探査ローバーのPerseveranceには、火星の地表にある岩石や堆積物、大気を含むサンプルを採取してパッキングする役割があります。しかしNASAにはまだそれを地球へと持ち帰る手段がありません。NASAはそのサンプルを手に地球へ持ち帰る宇宙機Mars Ascent Vehicle (MAV)の開発製造企業としてロッキード・マーティンを選定しました。

これはNASAの火星サンプルリターン計画において、無人機で地球にサンプルを持ち帰る最初の往復ミッションになります。このミッションではMAVを搭載するサンプル回収用着陸機(Sample Retrieval Lander)がジェゼロクレーター近辺に着陸、Perseveranceが残したサンプルを拾いあつめてMAVに積み込み、発射台としてMAVを地球に向け打ち上げます。

ロッキードマーティンは複数のMAVプロトタイプを用意しテストします。NASAは、ロケットの地上支援装置の設計と開発に加えて、MAV統合システムの設計、開発、テスト、評価を請け負っています。

言葉で説明すればこれだけのことですが、いざ実行に移すとなるとそれは非常に困難なミッションになると予想されます。MAVは、火星の過酷な環境に耐えるべく堅牢に作られ、他のNASAの宇宙機と完璧に連携する必要があります。さらにMAVは2026年までに打ち上げられる予定のサンプル回収用着陸機に搭載できるぐらいのコンパクトさに仕上げられなければなりません。

契約は1億9400万ドルで2月25日からオプション基幹含め6年の契約期間になるとのこと。火星からのサンプルリターンは、地球以外の惑星からの初のリターンミッションになる予定で、成功すれば生命が存在した可能性もある初期からの火星の歴史を明らかにする重要な資料が得られると考えられています。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円のプレシリーズA調達

人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達循環型栽培のシステム開発を展開するTOWING(トーイング)は12月20日、プレシリーズAラウンドにおいて第三者割当増資による約1億4000万円を資金調達を実施したことを発表した。引受先は、Beyond Next Ventures、epiST Ventures、NOBUNAGAキャピタルビレッジ。累計調達額は約1億8000万円となった。

調達した資金により、持続可能な次世代の作物栽培システム「宙農」(そらのう)のサービス開発に向けて、愛知県刈谷市に自社農園を立ち上げて宙農の実証を開始する。研究者・農園長・エンジニアの採用による研究開発体制を強化するとともに、事業開発人材の採用により組織体制を拡大し宙農の量産化に向けたシステム開発を進めるという。また今後、月面や火星の土をベースとした高機能ソイルを開発し、宇宙でも作物栽培可能なシステムの実現を目指すとしている。人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達

TOWINGは、人工土壌による宇宙農業の実現を目標としたプロジェクト宙農を手がける名古屋大学発のスタートアップ。人工土壌「高機能ソイル」を栽培システムとして実用化しており、地球上における循環型農業の発展と宇宙農業の実現を目指している。

この高機能ソイルとは、植物の炭など多孔体に微生物を付加し、有機質肥料を混ぜ合わせて適切な状態で管理して作られた人工土壌の名称。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術に基づき、TOWINGが栽培システムとして実用化した。「有機質肥料を高効率に無機養分へと変換」「畑で良い土壌を作るためには通常3~5年程度かかるが、高機能ソイルは約1カ月で良質な土壌となる」「本来廃棄・焼却される植物残渣の炭化物を高機能ソイルの材料とするため、炭素の固定や吸収効果も期待できる」の3点を大きな特徴とするという。人工土壌「高機能ソイル」活用の作物栽培システム「宙農」で地球の循環型農業の発展と宇宙農業を目指すTOWINGが約1.4億円調達

NASA、InSight探査機の地震計から火星の「環境音」データを生成し地下構造を分析

NASA、InSight探査機の地震計から火星の「環境音」データを生成し地下構造を分析

ETH Zurich

今から3年前の11月16日に火星のエリシウム平原に降り立ったNASAの探査機InSightが送ってきた火星の環境騒音データから、科学者らは地殻からマントル、核に至るまでの最初の数十mの状態を分析し、画像化しました。

我々の住む地球では、環境騒音といえば海、人間などの活動、風、そして大地そのものなど、多様な音源からのごちゃ混ぜの音になっています。しかし、大気がほとんどなく水の海もない火星では、上に挙げたなかの”大地そのもの”からの音が環境騒音の大部分を占めます。

InSightは搭載する地震計のデータから火星の環境騒音データを生成しており、それをスイス地震局(SED)とスイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)が定期的に分析することで、火星内部がどのように積層しているかを調べました。SEDはこれまで数年のあいだ、地球上の地質構造を調べるために環境騒音データを分析してきており、その手法を火星に応用した格好です。

SEDによると、InSightが降りた場所の足もとから深さ3mまでは砂の層で、そのすぐ下には過去の隕石の衝突によって火星表面から巻き上げられて堆積した可能性が高い、約15m厚の岩石帯があるとのこと。さらに堆その下には、火星が冷え、乾燥した状態になった約17億年前ごろの溶岩層があり、その下にはさらに堆積物で分断された古い溶岩流の層があるとのこと。

この古い層は、地球もまだ火山活動が非常に活発だった約36億年前にまでさかのぼると見られており、太陽系の兄弟である地球と火星がその頃までは同じように成長の道を歩んでいたことが推測されます。

地球と火星はかつては同じように大きな海や大気層を持っていたと考えられます。しかし、その後なぜか火星だけは大気を保護する役割を持つ磁場を失い、太陽から放出される荷電粒子の太陽風が、保護を失った火星の大気を徐々に剥ぎ取っていったその結果、いまや地球と火星は見た目にも対照的な星となってしまっています。

今回の論文著者であるCedric Schmelzbach氏は、地球上で開発された手法を使用して、火星の地層構造が解析できることが証明できたと述べています。地球内部を知るための技術は他にもあり、それらを応用すれば、いつか我々の2番目のふるさとになるかもしれない赤い星についての理解がさらに深まるかもしれません。

(Source:Nature Communications。Via Space.comEngadget日本版より転載)

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

Florida Institute of Technology / Heinz

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが、火星基地内の環境を再現した環境で栽培・収穫したトマトから作ったケチャップに「Heinz Marz Edition」と名付けて発表しました。映画『オデッセイ』では、火星基地に取り残されたマット・デイモン演じる主人公ワトニーがジャガイモを栽培して生きながらえましたが、ハインツはこれと同じ条件でトマト栽培をおこなったわけです。

フロリダ工科大学の研究チームは、火星基地の環境を再現する「Red House」と称する温室を構築しました。まずケチャップの原材料となるトマトは、ハインツが持つ様々な品種の中からまず最初に30株を選び、モハベ砂漠で集めた砂を火星の土壌に見立て、赤いLEDライトを照らして2000時間以上のパイロット栽培で製鋼する可能性の高い4種類を選び出したとのこと。そして最終的にうまくいくと判定された2種類を個別に450のバケツに植え、ハインツとの密接な協力の下で大規模な栽培に移行したとのこと。

オルドリン宇宙研究所の生物科学准教授アンドリュー・パーマー氏は、「このプロジェクトでは、食料の長期的な収穫を検討しました。ハインツのトマトケチャップにふさわしい品質の作物を収穫するのは夢でもなければ難しいと思われましたが、達成することができました」と語り「ハインツのトマト専門家との共同作業により、地球外での長期的な食糧生産の可能性を確認できました。世界最大級の食品会社と協力することで、私たちが学べることはたくさんあります」と述べています。

ただ、実験を通じて収穫できたトマトは数百個に留まり、予想よりも少ない数だったとのこと。求める量の収穫を実現するには、より広い栽培スペース、光と温度、灌漑の適切な供給が課題として残ったとのこと。また個々の容器での栽培よりトラフを用いて複数の種類の作物や果物を栽培するほうが多様で有効な微生物を増やすことができ、植物が病気になりにくい環境とすることができると、パーマー氏は述べました。

なお、プロジェクトとハインツ社は研究で収穫したトマトを使い、カリフォルニアの研究施設でトマトケチャップ「Heinz Marz Edition」を限定的に生産しました。そしてそのボトルの1本を飛行機で高度37kmほどの上空に持って行き、マイナス74℃の温度環境にも晒して品質に問題がないかも確認しました。

ただ残念ながら、このように火星の環境についての研究の一環で作られた「Heinz Marz Edition」は一般向けに販売する予定はありません。ちなみに本来なら火星を意味する英単語は「Mars」ですが、このケチャップが「Marz」になっているのは、ハインツの綴り(Heinz)に引っかけてのことです。

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

Florida Institute of Technology / Heinz

フロリダ工科大学と食品調味料のハインツが火星環境を再現し栽培・収穫したトマトで作ったケチャップ発表

Florida Institute of Technology / Heinz

(Source:Florida Institute of TechnologyEngadget日本版より転載)

3Dプリントの家を建設するICONが228億円獲得、月や火星の基地建設も計画

3Dプリンティングロボットを使ってホームレスの人々のための1世帯住宅を作る。米航空宇宙局(NASA)と協力して月面、ひいては火星にインフラや居住環境を構築するための建設システムを開発し、北米最大の3Dプリント建築物になるとみられるテキサス州の軍事部門の兵舎を納入する。

これらは、テキサス州オースティンに拠点を置く建設テックスタートアップICONが取り組んできたことのごく一部だ。

そして同社は2021年8月下旬、シリーズBで2億700万ドル(約228億円)という巨額の資金調達を達成した。

筆者はICONについて、2018年10月に同社がシードラウンドで900万ドル(約9億9000万円)を調達して以来取り上げてきた。3年も経たないうちにこのマイルストーンに到達したことを見るのはかなりクールだ。

シリーズBラウンドを主導したのはNorwest Venture Partnersで、他に8VC、Bjarke Ingels Group(BIG)、BOND、Citi Crosstimbers、Ensemble、Fifth Wall、LENX、Moderne Ventures、Oakhouse Partnersが参加している。この資金調達により、ICONの純資産合計は2億6600万ドル(約293億円)に達した。同社は評価額を明らかにしていない。

ICONは2017年後半に設立され、2018年3月のSXSW(サウスバイサウスウエスト)の際、米国で初めて認可された3Dプリント住宅をもってローンチした。その350平方フィート(約32.5平方メートル)の家のプリントに要した時間は、約48時間(25%のスピード)であった。ICONは意図的にコンクリートを材料に選んでいる。それは、共同創業者でCEOのJason Ballard(ジェイソン・バラード)氏が語ったところによると「コンクリートは地球上で最もレジリエンスに優れた材料の1つ」だからだ。

それ以来同社は、米国とメキシコに20を超える3Dプリントの住宅や建築物を届けてきた。これらの住宅の半数以上は、ホームレスや慢性的貧困状態にある人々のためのものである。例えば、ICONは2020年、非営利パートナーのNew Storyと提携してメキシコに3Dプリント住宅を建設した。またテキサス州オースティンで、慢性的なホームレスに提供する一連の住宅を非営利団体Mobile Loaves&Fishesと協働して完成させた。

同社は2021年初めにメインストリームの住宅市場に参入し、テキサス州オースティンのデベロッパー3Strands向けに米国初になるという3Dプリント住宅販売を行った。4軒のうち2軒は契約が結ばれている。残りの2軒は8月31日に発売予定である。

そして先頃、ICONは「次世代」Vulcan建設システムを公開し、住宅の新たな探求シリーズを披露した。シリーズ第1弾となる「House Zero」は、3Dプリンティングに特化して最適化設計されている。

ICONによると、同社独自のVulcan技術は、従来の工法より迅速で、無駄が少なく、設計の自由度が高い「レジリエンスとエネルギー効率に優れた」住宅を実現するという。新しいVulcan建設システムは、最大3000平方フィート(約278.7平方メートル)の住宅や建築物を3Dプリントすることができ、以前のVulcan 3Dプリンターより1.5倍大きく、2倍高速になっているとバラード氏は説明している。

ICONは世界的な住宅危機とそれに対処する解決策の欠如に突き動かされている、と同氏は会社設立当初から主張してきた。3Dプリンターやロボット、そして先進的な材料を利用することは、手頃な価格の住宅の不足に取り組む1つの方法である。この問題は、全国的に、そしてオースティンにおいて、悪化の一途をたどっている。

ICONの将来計画のリストには、社会、災害救援、そしてよりメインストリームの住宅を提供することなどが盛り込まれており、さらにはNASAと共同で、月、やがては火星にインフラや居住地を作るための建設システムを開発することも含まれている、とバラード氏は語る。

ICONはまた、NASAと2つのプロジェクトを進めている。先にNASA、ICON、BIGによるMars Dune Alphaの発表が行われた。ICONはこれまでのところ、壁システムの印刷を完了し、現在は屋根に取りかかっている。また、NASAは、ICONの3Dプリントで作られる火星の最初のシミュレーション居住地に住むミッションのクルーを募集中だ。このミッションは2022年秋に開始される予定である。

プロジェクトOlympusは、未来の月探査のための宇宙ベースの建設システムを開発し「別の世界に人類の住まいを想像する」ICONの取り組みを象徴するものとなっている。

「私たちの目標は、次の10年のうちにICONテックを月に届けることです」とバラード氏は語る。

バラード氏はTechCrunchの質問に対して「2020年8月の3500万ドル(約38億5700万円)のシリーズA以降で起きている最も重要なことは、3Dプリント住宅や建物に対する需要の急激な増加です」と答えている。

「この単一の指標は、私たちにとって大きな意味を持ちます」とバラード氏はTechCrunchに語った。「人々がこうした家を求めることは必然的なことなのです」。

「住宅不足に取り組むためには、世界は供給を増やし、コストを削減し、スピードを上げ、レジリエンスを上げ、持続可能性を高める必要があります【略】これらはすべて、質と美しさを損なうことなく行うことが必要です」とバラード氏は付け加えた。

「そのようなことを可能にするアプローチはいくつかあるかもしれませんが、それらすべてを実現できる可能性を秘めているのは、建設スケールの3Dプリントだけです」。

バラード氏によると、ICONは創業以来ほぼ毎年400%の売上増を記録し、目覚ましい財務成長を遂げている。同社のチームは2020年の3倍になり、現在100人以上の従業員を擁している。来年中には規模が倍増する見込みだ。

共同創業者たちと次世代Vulcan建設システム(画像クレジット:ICON)

シリーズBの資金は、3Dプリント住宅の建設の促進「急速なスケールアップと研究開発」、さらなる宇宙ベースの技術の発展、そして「住宅問題に対する持続的な社会的インパクト」の創出に充てられる、とバラード氏は語っている。

「私たちはすでに初期段階の製造を立ち上げており、3Dプリント住宅の需要を満たすために、その取り組みをアップグレードし、加速しているところです」とバラード氏。「今後5年間で年間数千世帯の住宅供給を実現し、将来的には年間数万世帯の住宅を供給できるようになると考えています」。

今回の資金調達の一環としてICONの取締役会に加わるNorwest Venture PartnersのマネージングパートナーJeff Crowe(ジェフ・クロウ)氏は、ICONの3Dプリンティング建設技術が「米国および世界中の住宅不足に多大なインパクトをもたらす」と考えていると語った。

クロウ氏によると、先進的なロボティクス、材料科学、ソフトウェアを組み合わせて堅牢な3Dプリント建設技術を開発することは、そもそも「非常に難しい」ことだという。

同氏はEメールで次のように述べている。「制御された環境で1台か2台のデモユニットを製造するだけではなく、さまざまな地域で、信頼性と予測可能性を備えた、美しく、手頃な価格で、快適で、エネルギー効率に優れた住宅を何百、何千台も生産できるような技術を開発することは、さらに困難です。ICONはこれらすべてを実現しており【略】ブレイクアウト、世代間の成功につながるすべての要素を備えています」。

画像クレジット:ICON, Lake/FLATO Architects

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

アラブ首長国連邦が2028年にアステロイドベルトに探査機打ち上げ、小惑星への着陸を目指す

アラブ首長国連邦(UAE)の宇宙機関は、火星と木星の間にある小惑星帯に探査機を送り、2030年代初頭には最終的に小惑星に着陸させることを目指している。これはアラブ首長国連邦の民間宇宙企業にとって、大きな弾みがつくミッションとなることは間違いない。

このミッションは2028年に打ち上げが予定されている。そこから宇宙機は、長く曲がりくねった旅に出る。5年間で36億キロメートルの距離を移動し、金星と地球をブーメランのように回りながら十分な速度を得て、最終的には2030年に火星の先にある小惑星帯に到達する予定だ。UAEでは、2033年に探査機を小惑星に着陸させることを目指している。これは2014年に宇宙機関を設立したばかりの国にとって、野心的な目標だ。

これまで、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、そして日本の宇宙機関であるJAXAが、宇宙機を小惑星に着陸させている。今度のミッションが成功すれば、UAE宇宙局はこれらの少数のグループに加わることになる。その明確な科学目標は来年発表される予定だが、探査機が収集するすべてのデータは、宇宙の起源についての理解を深めるのに役立つ可能性がある。これらの小惑星は、太陽系が形成されたときの天空の残り物であると考える科学者もいるからだ。

今回のプロジェクトは、国内の宇宙産業の発展を目指しているUAEにとって、最も新しく最も意欲的な取り組みとなる。重要なのは、UAEが契約や調達の優先権を与えるとしている首長国連邦の企業が、このプロジェクトから利益を得られる立場にあることだ。

UAEは2020年7月、Emirates Mars Mission(エミレーツ・マーズ・ミッション)の「Hope(ホープ)」探査機を打ち上げ、2021年の2月には火星周回軌道へ乗せることに成功した。この探査機は火星を1年(687日)かけて周回し、火星の大気に関するデータを収集することになっている。

また、UAEは2022年に「Rashid(ラシッド)」と名付けられた重量10キログラムほどの小型月面探査車を、月へ送ることも予定している。この探査車は、カナダの民間企業3社の技術とともにペイロードとして、日本の宇宙ベンチャー企業であるispace(アイスペース)の「HAKUTO-R(ハクトR)」ミッションのランダーで月面に輸送される予定だ。

関連記事:日本の宇宙企業ispaceの月着陸船がカナダ宇宙庁とJAXAからペイロード輸送を受託

UAE宇宙庁のSarah Al Amiri(サラ・アル・アミリ)長官によれば、この最新のミッションは、火星へのミッションに比べて「5倍ほど複雑になる」という。その新たなレベルの難しさについて、UAEは声明の中で「宇宙機の設計とエンジニアリング、惑星間航行、複雑なシステム統合」に加えて、宇宙機の通信システム、電力システム、推進システムに求められる性能も高くなると述べている。

画像クレジット: ESA/Rosetta/NAVCAM Flickr under a CC BY-SA 3.0 license. (Image has been modified)

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAが火星の岩石サンプル採取に成功、初回の失敗ふまえPerseveranceローバーのカメラで慎重に確認

  1. NASAが火星の岩石サンプル採取に成功、初回の失敗ふまえPerseveranceローバーのカメラで慎重に確認

    NASA/JPL-Caltech

先月、火星で初の回収用土壌サンプルの採取に失敗してしまった探査ローバーのPerseveranceですが、先週トライした2回目の採取にはどうやら成功した模様です。NASAによれば、サンプルチューブの中には岩石からくりぬいた、さびた鉄のような色のサンプルが入っており、正常に処理して地球に回収する準備ができていることが確認できたとのこと。

NASAは最初のサンプル採取の際、処理上は完全に成功したと考えられたもののサンプル管の中には何も入っていませんでした。このことについて、科学者らはサンプルが砂状に砕けてしまったせいでサンプルとして採取するのに失敗したと述べていました。

今回NASAがサンプル管の中に明らかに何か入っているにもかかわらず、すぐに成功したと言わなかったのは、この前回の失敗を踏まえて確認作業をより確実にしたかった意図があると考えられます。採取作業のあと最初に撮影した画像の中には岩石らしきものが映っているのが見えましたが、日光の角度の関係で明確に成功というのは難しかったかもしれません。しかしその後、土曜日に撮影された新たな写真では、はっきりとサンプルが入っているのが確認できました。

アリゾナ州立大学のSteven Ruff氏は、自身のYouTubeチャンネルでそのサンプルがカンラン岩と水分が反応してできた鉄を含む物質である可能性が高いとを述べています。

Perseveranceはこのサンプルを密閉して、その場もしくは定めた場所に置いて次のサンプル採種に向かいます。地表におかれたサンプルは、あとから火星にやって来る予定の回収用ローバーがジェゼロ・クレーター近くの1か所に集め、最終的に地球に帰還するロケットに積み込まれる計画です。

ただし、ESAが準備する予定の回収用ローバーと回収ロケットはまだ設計段階で、影も形もありません。現在のスケジュールでは、この回収ミッションは2026年までに火星に向けて出発し、2028年に到着、地球への帰還は2031年と予定されています。

近年の地球外からのサンプルリターンといえば、これまでにJAXAがはやぶさ / はやぶさ2で小惑星からのリターンに成功しているほか、中国が2020年12月に嫦娥5号で月の土壌を持ち帰ることに成功しています。一方NASAは、探査機OSIRIS-RExが小惑星ベンヌからサンプルを持ち帰っている最中であり、これは2023年に戻ってくる予定です。

火星からのサンプルリターンはNASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションで、Perseveranceが荷造りしたサンプルはESAのSample Fetch Roverが集めて火星軌道上に打ち上げます。そしてそのサンプルを収めたコンテナはやはりESAのEarth Return Orbiterがキャッチして、地球に戻ることを計画しています。これらESAの機器は昨年10月に仏Airbusが開発契約を獲得しました。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

Rocket Labの火星ミッションにNASAがゴーサイン

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、同社の宇宙機、Photon(フォトン)が次の科学ミッションに向けてNASAの承認を受けるための一歩を進めた。すべてが計画通りに進めば、2基の人工衛星は2024年に打ち上げられ、11カ月後に火星に到着し、赤い惑星の磁気圏を探査する。

このミッションはEscape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers(ESCAPADE、大気流出・プラズマ加速・力学探査機)と呼ばれ、去る2019年に小型衛星科学プログラムとして提案され、最終的にファイナリストに選ばれた。UC Berkeley(カリフォルニ大学バークレー校)の研究者らが科学部門を支える主要メンバーだ。

これらの人工衛星は質量180kg以下で単体で科学ミッションを遂行しなければならない。強力な商業産業連携のもとで遂行されるより軽量で期間の短いミッションを目指す新たなプログラムの一環だ。プログラムの発表以来いくつかのコンセプトが練られ、ESCAPADEはKey Decision Point C(重要決定ポイントC)を最近通過したところで、これはコンセプトを実現する準備ができたことを意味する。

このミッションは2基1組の衛星からなり、選抜されるのに貢献した特徴であることは間違いない。Rocket LabのPhotonプラットフォームの本来の目的は、軌道上の作業から今回のような惑星間科学ミッションまでさまざまな宇宙事業のために何らかのターンキーデザインを提供することだ。

Rocket Labがこのミッションの打ち上げに同社のロケットであるElectron(エレクトロン)を使わないのは興味深い。2基の衛星は「NASAが提供する商業ロケット」(選択はNASAに任せられている)に搭載される。おそらくそのときまでには同社も契約に名乗りを上げているだろうが、現時点でRocket Labは宇宙船だけを製造しており、ナビゲーション、方位、推進など、大部分の非科学機材部分を担当している。

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「ESCAPADEは、従来の何分の1かのコストで先進惑星間科学に手が届くことを示す革新的ミッションであり、当社のPhotonでこれを可能にしたことを誇りに思っています。NASAから飛行へのゴーサインをもらったことを大変喜んでいます」とRocket Labのファウンダー・CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏は節目の発表文で語った。

Rocket Labはすでに、Artemis(アルテミス)計画のためにCubeSat(キューブサット)をシスルナ(地球と月の間の)軌道に載せる契約を結んでおり、Varda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)とは同社が2023年と2024年に打ち上げる宇宙船を製造する契約を確定している。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASA火星探査ミッション用にRocket Labが双子の軌道上宇宙機の開発契約を獲得

Rocket Lab(ロケットラボ)では、火星の気候が時間とともにどのように変化してきたか理解を深めるため、火星を周回して磁気圏の研究を行うPhoton(フォトン)プラットフォームをベースにした2つの宇宙機を開発している。この科学ミッションはNASAのSIMPLEx(Small Innovative Missions for Planetary Exploration)プログラムから授与されたもので、2024年に、NASAがライドシェアロケットとして契約したまだ明らかにされていない商業打ち上げ用ロケットに搭載して火星に飛ぶ予定だ。

これは、Rocket Labが以前に発表した、地球の軌道を超えて移動する衛星プラットフォームとしてPhotonを使用するというビジョンを実現することを含め、いくつかの理由で注目すべき進展だ。また、Rocket Labの打ち上げ事業と宇宙船サービス事業が初めて切り離されるという意味でも興味深い。

Rocket Labの「Photon」は、同社の宇宙推進システム「Curie(キュリー)」を使用する衛星バスプラットフォームで、今回のミッションでは、状況制御システムや深宇宙探査システム、ウェイファインディングのためのスタートラッカーやリアクションホイールなどが搭載される予定だ。Photonの魅力は、深宇宙探査能力を小型で手頃な価格の、比較的質量の少ない打ち上げ用パッケージで提供することで、より多くの組織や機関に惑星間科学へのアクセスを広げることができるかもしれない。

Rocket LabがPhoton2機を投入するこの火星行きESCAPADEミッションは、2021年6月にデザインレビューが行われ、7月にはPhotonの製造、装備、飛行準備が始まる前に最終チェックが行われる予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabNASA火星

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

スペースXが初の海上スペースポートを建設中、2022年にStarship打ち上げを予定

SpaceX(スペースX)は、同社初の浮体式スペースポート(宇宙港)プラットフォームの建設をすでに進めており、早ければ2022年に打ち上げを開始する予定だという。SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、同社が開発中の再使用型ロケット「Starship(スターシップ)」の浮体式発射・着陸施設に改造するために2021年初めに購入した、石油掘削リグ2基のうちの1つである「Deimos(ダイモス)」の進捗状況についてその詳細を共有した。

SpaceXが2021年1月に購入した2基の掘削リグは、火星の月にちなんで名付けられた2つの浮体式スペースポート「Deimos(ダイモス)」と「Phobos(フォボス)」を建設するためのものだった。これらの港は、Starshipの打ち上げ活動のための海上拠点として機能する。最終的な計画では、Starshipが地球と赤い惑星との間で人と物の両方の輸送を行うことになっているため、このネーミングは適切といえるだろう。

マスク氏とSpaceXはこれまでに、Deimosのようなスペースポートが世界中の主要ハブからアクセスしやすい場所に配置され、北京からニューヨークまで30分程度で移動できるStarshipを使った極超音速ポイントツーポイント飛行の世界的ネットワークを実現するというビジョンを語ってきた。しかしSpaceXはその前にまず、まだ開発中のStarshipとそれに付随するブースター「Super Heavy(スーパーヘビー)」の軌道上での飛行テストを行うことを目指している。

マスク氏は2021年初め、早ければ2021年末には海上プラットフォームからロケットを飛ばし始めることができると語っていた。今回の新しいスケジュールは、当初のバラ色の予想が裏切られたことを示しているが、これは複数企業のCEOである同氏に関しては珍しいことではない。しかし、テキサス州の開発拠点である「Starbase(スターベース)」での高高度の打ち上げ・着陸テストに成功するなど、同社のStarship計画は最近、順調に進んでいる。

SpaceXは現在、StarshipをSuper Heavyの上に載せて初めて飛行させる軌道飛行テストと、試験後にStarshipがハワイ沖で着水した後に回収する準備を進めている。また、次の大きなマイルストーンに向けて、燃焼時間がより長いRaptor(ラプター)エンジンの地上試験を行っている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXイーロン・マスク火星Super HeavyStarship

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

NASAが火星でのヘリコプター初飛行に成功、歴史にその名を刻む

米航空宇宙局(NASA)は火星で初めて動力により航空機を飛行させるという、地球外探査計画における重要な節目を迎えた。この飛行ミッションは米国時間4月19日早朝に行われ、NASAはIngenuityヘリコプターが火星で飛行したことを確認するテレメトリーを、Perseverance探査機の中継により受信した。火星の大気が非常に薄いため、Ingenuityのように大気を利用して揚力を得ることができるローター駆動の機体を作ることは非常に難しい挑戦であることを考えると、これは大きな成果だといえる。

今回のIngenuityの初飛行は自律的な遠隔飛行で、地球上のクルーが適切なタイミングでコマンドを送り、火星の「空気」の中を40秒かけて移動するというものだった。これは短い飛行のように思えるが、飛行中にヘリコプターが収集したデータには計り知れない価値がある。IngenuityにはローバーのPerseveranceよりもはるかに高性能なプロセッサーが搭載されている。そして飛行テスト中に生成された膨大なデータを収集してローバーに送信し、ローバーがその情報を地球に送信した。

画像クレジット:NASA/JPL

前述したように、これは火星における初めての動力飛行であり、どのように飛行するかを予測するために多くのモデリングやシミュレーション作業が行われてきたが、実際のテストの前には何が起こるのか誰にもわからなかった。例えば火星の大気は薄いため、地上のヘリコプターのローターが毎分400〜500回転であるのに対し、Ingenuityは毎分2500回転という超高速でローターを回転させなければならないなど、技術的な課題が山積していた。

火星でヘリコプターを飛ばすことに、どんな意味があるのだろうか。いくつかの重要な応用の可能性として、まず第1に将来の探査ミッションの準備として、火星での将来の科学探査のためにNASAが航空機を利用できるようにすることだ。例えば航空機なら、ローバーが到達できない洞窟や山頂などを探索できる。最終的にNASAは、将来の火星有人探査において航空機が利用できるかどうかも確認したいと考えている。いずれ火星に到着したときに地上の乗り物だけでなく航空機が利用できれば、火星の探査チームには大きなメリットとなる。

今後、NASAは今回のフライトから得られたデータを解析し、ヘリコプターの上昇、ホバリング中、そして着陸時の写真や動画をより多く取得する予定だ。今回の飛行によりIngenuityが意図したとおりに飛行できることがわかったため、NASAは残りの電力やその他のパラメータにもとづいて追加の飛行テストを計画する予定だ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星ヘリコプター

画像クレジット:NASA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAが自律型軌道離脱システムや金星でも使えるバッテリーの研究に補助金

NASA(米航空宇宙局)のSBIRプログラム(中小企業技術革新研究プログラム)は定期的に将来有望な中小企業や研究プログラムに補助金を出している。そしてその補助金が交付されたリストを調べるのは常に興味深い。今回のリストから、特に説得力のあるもの、あるいは宇宙業界のミッションと産業にとって新たな方向を示している1ダースほどの企業と提案を紹介しよう。

残念なことに、現在提供できるのは下記のような短い説明だけだ。補助金対象となった企業や提案は往々にしていくつかの方程式やナプキンの裏に描いた図の他に提示するものがないほど初期段階にある。しかしNASAは目にすると将来有望な取り組みがわかる(SBIR補助金の申し込み方法についてはこちらに案内がある)。

自律型軌道離脱システム

Martian Sky TechnologiesはDecluttering of Earth Orbit to Repurpose for Bespoke Innovative Technologies(DEORBIT)で補助金を獲得している。これは低軌道のための自律的クラッター除去システム構築する取り組みだ。ある決まった量をモニターしながら侵入してきたものを除去し、建設や他のクラフトの占有のためにエリアを開けておくためのものだ。

画像クレジット:Getty Images

超音波の積層造形

3Dプリント、溶接、そして「軌道上サービス、組み立て、製造(OSAM)の新興分野にとって重要なものについて、さまざまなかたちの提案が数多くある。筆者が興味深いと思ったものの1つは、超音波を使っていた。筆者にはそれが奇妙に思えた。というのも明らかに宇宙では超音波が作用するための大気がないからだ(彼らもそれを考えたと想像する)。しかしこの種の反直感的なアプローチは真に新たなアプローチにつながり得る。

ロボットが互いを見守る

OSAMにはおそらく複数のロボットプラットフォームの調整が含まれ、それは地上においても十分難しいものだ。TRAClabsは有用な他のロボットの視点を提供できるところでなくても自律的にロボットを動かすことで「知覚フィードバックを高め、オペレーターの認知負荷を減らす」ための方法に取り組んでいる。シンプルなアイデアで、人間が行う傾向にある方法に適する。もしあなたが実際のタスクを行う人でなければ、あなたは邪魔にならないよう何が起きているかを目にするのに最適の場所に自動的に移動する。

3Dプリントされたホール効果スラスター

ホール効果スラスターは、特定のタイプの宇宙での操作でかなり有用となり得る電気推進の高効率なフォームだ。しかしそれらは特にパワフルではなく、既存の製造テクニックで大きなものを作るのは難しいようだ。Elementum 3Dは新たな積層造形テクニックと、好きなだけ大きなものを作ることを可能にするコバルト鉄の原料を開発することでそれを達成しようとしている。

金星でも使えるバッテリー

金星は魅力的なところだ。しかしその表面は地球で作られた機械にとっては極めて敵対的だ。鍛えられたPerseveranceのような火星ローバーですら数分でダメになり、華氏800度(摂氏426度)では数秒しかもたない。ダメになる数多くの理由のうち1つは機械で使われるバッテリーがオーバーヒートを起こし、おそらく爆発するということだ。TalosTechとデラウェア大学は大気中二酸化炭素を反応材として使うことで高温でも作動する珍しいタイプのバッテリーを手がけている。

ニューロモーフィック低SWaP無線

あなたが宇宙に行くときは重量と体積が重要で、宇宙に行ってからは電力が重要となる。だからこそ、既存のシステムをコンパクトで軽量、電力(低SWaP)代替のものに切り替える動きが常にある。Intellisenseは着信信号を並べ替えて管理するという部分を簡素化・縮小するためにニューロモーフィック(たとえば空想科学的な方法ではなく頭脳のような)コンピューティングを使って無線に取り組んでいる。1グラムでも軽くすることは宇宙船の設計者がどこでも取り組めることであり、パフォーマンスの向上を図れるところでもある。

LiDARで宇宙を安全なものに

AstroboticはNASAの今後数年の惑星間ミッションにおいて頻繁に目にする社名となりつつある。同社の研究部門は、宇宙船とローバーのような車両をLiDARを使ってより賢く安全なものにすべく取り組んでいる。同社の提案の1つが、評価と修理の目的でスパースシーン(例えば広大な宇宙に対して1つの衛星を他の衛星からスキャンするなど)の1つの小さな物体の画像にピンポイントでフォーカスするLiDARシステムだ。もう1つの提案には、惑星の表面上の障害物を特定するのにLiDARと従来の画像手法の両方に適用する深層学習テクニックが含まれる。これに従事しているチームは現在、2023年の月面着陸を目指しているVIPERウォーターハンティングローバーにも取り組んでいる。

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宇宙ファームのモニタリング

Bloomfieldは農業の自動モニタリングを行っているが、軌道上あるいは火星の表面での植物栽培は地上で行うものとやや異なる。同社は、微小重力といった特殊な状況で植物がどのように成長するのかを観察してきた小さな実験ファームのようなControlled Environment Agriculture(環境抑制農業)の拡大を願っている。植物の状態を絶えずモニターするのにマルチスペクトル画像と深層学習分析を使う計画で、宇宙飛行士は毎日ノートに「葉25が大きくなった」などと記録する必要はない。

レゴリスブロック

アルテミス計画(NASAの有人月探査)は月に「滞在する」ために行くというものだが、どうやって滞在するかはまだはっきりとわかっていない。研究者らは必要なものすべてを月に持ち込むことなしにロケットに燃料を補給して打ち上げる方法、そして月面ロケット打ち上げパッドを文字通りブロック1つ1つで建設するExploration Architectureを研究している。この研究は月の粉塵あるいはレゴリス(堆積物)を溶かし、必要なところに置けるよう焼いてブロックにする統合システムを提案している。これを実行するか、地球のブロックを持ち込むかになるが、後者の方はいい選択肢ではない。

その他いくつかの企業や研究機関もレゴリス関連の建設とハンドリングを提案した。これはいくつかあるテーマの1つで、テーマの一部は追求するにはあまりにも小さいものだ。

他にはエウロパ(木製の第2衛星)のような氷の世界を探検するためのテクノロジーというテーマもあった。金星のほぼ逆の氷の惑星は多くの点で「通常の」ローバーにとって致命的で、パワー、センシング、横断のためのアプローチで必要とされる条件が異なる。

NASAは新たなトレンドにオープンで、衛星や宇宙船においてもそうだ。こうした新たな技術の一群の管理は多くの作業を伴い、もしそうした新技術が1つの分散型マシンとして機能するとしたら(これは一般的な考えだ)、しっかりとしたコンピューティングアーキテクチャの支えが必要となる。多くの企業がこれを達成しようと取り組んでいる。

NASAの最新SBIR補助金リストの残り、そしてテクノロジートランスファープログラムのセレクションもこちらの専用サイトで閲覧できる。もし政府の補助金獲得に興味があるのなら、こちらの記事も読んで欲しい。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA補助金金星火星アルテミス計画バッテリーLiDAR

画像クレジット:Space Perspective

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

NASAが火星で初となるヘリコプターの飛行を4月8日に計画

エキサイティングな火星探査車「Perseverance(パーセベランス)」のミッションで、我々地球人が最も楽しみにしているイベントの1つは「Ingenuity(インジェニュイティ)」と呼ばれるヘリコプターの初飛行だろう。何度もチェックを重ねた後、Perseveranceチームは地球以外の惑星で初めて制御された動力飛行に挑戦する日付を4月8日に設定した。

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すべてが順調に進めば、約2週間後にIngenuityは、火星の地上から約3メートルの高さで、初のホバリング飛行を行う。しかし、それまでの間にはさまざまな準備が必要だ。

まず、チームはPerseveranceの着陸地点の近くに「飛行場」となる10メートル四方の平らな空間を特定しなければならない。完了したら、火星探査車はその中心部に向かい、位置を確認することになる。

次にヘリコプターが探査車の腹部から切り離される。ヘリコプターは探査車にボルトやケーブルで固定されている。これは混沌とした着陸プロセスの間、ヘリコプターを安全に保つためのものだが、一度外したら元には戻せない。だからチームは、その場所が100%間違いなく、条件が整っていることを確認しなければならない。この作業には約5日かかる。

IngenuityがPerseveranceから切り離され、飛行可能な位置まで回転すると、Ingenuityは地表からわずか5インチ(約12.7センチメートル)の高さにぶら下がり、わずかに残された探査車との接続を利用してバッテリーを充電する。そしてIngenuityを着陸させた後、Perseveranceはすぐに走り去る。

「6年前にこの旅が始まって以来、私たちが歩んできた一歩一歩は、航空機の歴史において未知の領域でした」と、JPL(ジェット推進研究所)でプロジェクトのチーフエンジニアを務めるBob Balaram(ボブ・バララム)氏は、NASAのニュースリリースで語っている。「地表に展開することも大きな挑戦ですが、火星での最初の夜を、探査車による保護と電力供給なしに単独で乗り切ることは、さらに大きな挑戦となります。Perseveranceとの接続を切り離し、地表に向けて最後の5インチを落としたら、大きな友人にできるだけ早く走り去ってもらい、太陽の光をソーラーパネルに当てて、バッテリーの充電を開始するつもりです」。

ヘリコプターは切り離された後、火星で30日間(火星太陽日)は作動に十分な電力が得られることは確認されているが、それ以上は確実ではない。

これから数日間は、Ingenuityのシステムのテストと、ローターを2537rpmまで回転させるテストが行われる。火星の大気は地球と比べるとほんのわずかしかないため、飛行は多くの意味でかなり困難だ。だからこそ、挑戦はとても楽しみにものになる。

すべてのテストとチェックがOKであれば、早ければ4月8日にIngenuityは離陸を試みて、3メートルの高さまで上昇し、30秒間留まることになる。それから数時間後に、チームは飛行が成功したかどうかを知ることができる。そして多分、Ingenuityに搭載されたカメラから白黒の画像が得られるだろう。カラー画像が取得できるのは、それからさらに数日後になる。

チームは今回の初飛行に基づいて次に行うことを査定し、数週間後にはさらなる(より遠くへの)飛行が行われるかもしれない。データが戻れば、もっと詳しいことがわかるだろう。

Ingenuityの機体には、ライト兄弟が初飛行に成功した飛行機「Flyer(フライヤー)」の翼に使われていた端布が積まれている。地球で初めて飛行した機械が、他の惑星における最初の飛行にも、わずかながら参加することになるのだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星ヘリコプター

画像クレジット:NASA / JPL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAの火星を飛ぶヘリコプター「インジェニュイティー」はクアルコム「Snapdragon 801」搭載

NASAの火星を飛ぶヘリコプター「インジェニュイティー」はクアルコム「Snapdragon 801」搭載

NASA/JPL-Caltech

日本時間2月19日朝に火星へ着陸したNASAの火星探査車「パーセペランス」。同探査車は史上初めて地球以外の惑星を飛行するヘリコプター「インジュニュイティ」を搭載しています。

同ヘリコプターについてクアルコムは、主にスマートフォンに使われる同社製のSnapdragonプロセッサーを内蔵した「Qualcomm Flight Platform」を搭載していると明らかにしました。

この「Qualcomm Flight Platform」は自律飛行を念頭に開発されたドローン用の基板で、Xperia Z3など2014年の上位スマートフォンに広く採用されたSoCの「Snapdragon 801」プロセッサーを搭載。このほか、4K動画撮影やナビゲーション、飛行支援といったドローン向けの各種機能を、小型で耐久性の高いパッケージにまとめています。

発表によると、地球と火星間は、それぞれの公転軌道上の位置に応じて電波でも片道3〜22分かかることから、地球からヘリコプターをリアルタイムで遠隔操縦することは困難で、自律的に飛行する能力が求められます。また、極寒となる火星の夜から機器を保護すべく、ヘリコプターの電力の多くは保温ヒーターに配分されるため、消費電力の低さも重要となります。加えて、火星の強い放射線や変動の大きい大気にも耐える必要があります。

こうした条件を満たすため、NASAジェット推進研究所が検討した結果、クアルコムの「Qualcomm Flight Platform」が火星での飛行に必要な条件を満たすと判断されたとしています。

また、ヘリコプターだけでなく、母艦となる火星探査車の通信システムも「Qualcomm Flight Platform」を採用しており、探査車とヘリコプターが撮影した画像や映像を地球に送信します。

クアルコムの半導体はスマートフォンやオーディオ・PC・IoT・モビリティなどさまざまな領域に進出していますが、今回宇宙にも活躍の舞台が広がった格好です。

(Source:クアルコムEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:Ingenuity / インジェニュイティー(製品・サービス)火星(用語)Qualcomm / クアルコム(企業)Snapdragon(製品・サービス)NASA(組織)

NASAが火星に降下するパーセベランス探査機の高精細度動画を公開

NASAは、火星探査機Perseverance(パーセベランス)とその着陸モジュールローバーが撮影した動画を公表した。これは火星大気圏突入から着陸までの「恐怖の7分間」をPOV(一人称視点)で記録している。先週公開された画像はごく一部の予告編だった。こちらが完全な記録であり、史上初めて撮影された火星着陸動画だ。

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ローバーの降下と任務についてはこちらで随時ツイートされているが、ここではまず概要を説明しておこう。

惑星間を高速で航行してきた探査機は、ヒートシールドを前方に向けて火星の大気に突入する。大気で減速され高温になったヒートシールドは投棄され、超音速パラシュートが展開される。ヒートシールドが外れると内部のカメラなどのセンサーが観測を始め、着陸に適したフラットな地点を探す。さらに減速され所定の高度に達したところで、パラシュートの切り離しが行われる。ローバー着陸モジュールを覆っている「ジェットパック」が、前進速度と降下を速度を殺す。地表70フィート(約21.3メートル)でローバーを減速させるロケットエンジンを組み込んだ「スカイクレーン」からローバーはぶらさがるかたちになる。ローバーはスカイクレーンから切り離され、スカイクレーンはローバーを妨害しないよう退避する。ローバーは静かに着陸する。

この過程には7分間かかり、特に最後の数秒は完全な綱渡りとなる(下図)。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

以前の初代ローバー探査機は画像やテレメトリ情報を送り返してきたが、今回のような臨場感あふれる動画は史上初だ。2018年のInSight火星着陸機もこのレベルの映像を送り返すことはできなかった。

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JPL(NASAジェット推進研究所)の責任者、Mike Watkins(マイク・ワトキンス)氏は記者会見でこう語った。

火星への宇宙船着陸のようなビッグイベントを実際にキャプチャーできたのはこれが初めてです。アメージングなビデオです。我々はこの週末、パーセベランスからの動画を一気に見てしまいました。まあ数分間の動画を一気見するとは言わないかもしれませんが。もちろん、探査機が設計どおりの性能を発揮したことを見るのも楽しいのですが、多くの視聴者に火星への旅を体感してもらうことも同じくらい重要です。

NASAのチームによれば、こうした動画はそれ自体の科学的価値に加えて、チームが経験した絶大な恐怖と無力感をともに体験してもらいたいものだという。JPLのパーセベランスプロジェクトマネージャー補佐であるMatt Wallace(マット・ウォレス)氏はこういう。

この分野に長い私でさえ、いつか火星への着陸機を操縦するようになるとは想像できません。しかしこの映像を見れば、パーセベランスを操縦して火星のジェゼロ・クレーターに着陸するのがどのようなものであるか、非常に詳しく体験できます。

ローバーを囲むジェットパック・カプセルには上向きのカメラが、ローバー自体にも2台の下向きのカメラがあり、実質的に全周パノラマが記録できる仕組みだった。ヒートシールドが投棄される画像は印象的だ。そこに広がる火星の砂漠の風景はアポロが月に着陸するところを描写した映画のようだ。

火星に向かって下降する際、ヒートシールドを投棄するパーセベランス(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

フルビデオはこちら

この下降中に30GB以上の画像データが取得された。パラシュートの展開時にカメラの1台が不調となったが、それにしても巨大なサイズの画像だ。火星を周回する衛星の2Mbpsの回線を経由して映像を送るには時間がかかる(もちろん昔の数kbpsの回線に比べれば驚くべき高速化だ)。

すべての映像フレームが、火星着陸プロセスに関する新たな情報を提供してくれる。たとえばヒートシールドを投棄する使用されたスプリングの1つが外れたように見えるが、プロセスには影響しなかった。他のフレームと合わせて、今後精査されるだろう。

こうした驚くべき着陸プロセスの動画に加えて、パーセベランスはナビゲーションカメラによって撮影された多数のフルカラー画像を送り返してきた。まだすべてのシステムが稼働しているわけではないというが、チームはパーセベランスが撮影した画像をつなぎ合わせてこのパノラマ画像を作成した。

 

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAのチームは、画像を処理する度にアップロードしているので、今後さらに多くの画像が見られるだろう。

NASAからの最後のプレゼントは火星の表面からの録音だ。これ自身が新しい洞察に結びつく情報であると同時に、さまざまな理由で視覚的情報に接することができない人たちにも着陸を体験してもらいたいというのがNASAの願いだ。

着陸に必要な突入(Entry )、降下(Descent)、着陸(Landing Phase)の頭文字をとったEDLシステムにはマイクも含まれていた。残念ながら降下中に起動することができなかったが、着陸後は完全に作動して環境音を記録している。かすかながさごそという風ノイズは聞き慣れた音だが、この風が光の速さで11分間もかかる別の惑星の上を吹いているのだと思うと信じられない気がする。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

火星探査車降下途中の「恐怖の7分間」がリアルに感じられる写真

火星探査車「Perseverance(パーセベランス)」は日本時間2月19日朝、無事に火星に着陸したが、その直前には火星の大気圏に高速で突入し、NASAのチームが「恐怖の7分間」と呼ぶ着陸に向けた一連の複雑な操作が行われた。NASAはその時に撮影されたゾクゾクする写真を公開している。火星の大地の上に、ジェットパックから細いワイヤーでぶら下がっている探査車を見れば、チームの「恐怖」を容易く理解することができるだろう。

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パーセベランスのTwitter(ツイッター)アカウントが、他の画像とともに投稿した(いつものように、一人称で)この写真は、探査車から最初に送られてきたものだ。ナビゲーション用カメラによって撮影されたモノクロの写真は、ほぼ着陸した瞬間を捉えたものと思われる。我々がこの視点から探査車(に限らないが)を見るのは初めてのことだ。

この写真を撮影したカメラは、「ジェットパック」と呼ばれるロケット動力の降下モジュールに搭載されている。火星の大気圏摩擦とパラシュートの両方を使って十分に減速した後、熱シールドが取り外され、パーセベランスは安全な着陸場所を探して大地をスキャンする。着陸場所が見つかったら、そこに探査車を運んで着陸させることがジェットパックの役目だ。

冒頭の画像は、Descent Stage(降下ステージ)の「Down-Look Cameras(見下ろしカメラ)」で撮影されたもの(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

着陸地点から約20メートルの上空に達すると、ジェットパックは「スカイクレーン」と呼ばれる一連のケーブルを展開し、安全な距離から探査車を地上に降ろす。それによってジェットパック自身はロケットで離れた場所に不時着できるようになっている。

記事のトップに掲載した写真は、着陸の直前に撮影されたもので、火星の土壌の渦巻きが数百メートル下にあるのか、数十メートル下にあるのか、それとも数メートル下にあるのかは少し分かりにくいが、その後に撮影された画像を見ると、地面に見えるのが岩ではなく石であることが明らかになる。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

これらの画像は、火星から何万キロメートルもの距離を、HQトラッキングテレメトリデータとして送られて来たもので、我々は間接的にしか見ることができないが、そこに至るまでの過程が、実際には非常に物理的で、高速で、時には残酷なものであることを思い出させてくれる。数百の物事が正しく行われなければ、単に火星のクレーターを1つ増やすだけで終わってしまうのだ。そんな時間と情熱を費やしたものが、秒速5キロメートルという速度から始まった降下の後、遠く離れた惑星の上空でぶら下がっているのを目の当たりにするのは……感動で胸が締めつけられる思いがする。

とはいえ、この一人称的視点は、今回の火星着陸で最も印象的な写真ではないかもしれない。これが公開された直後、NASAは火星探査機「Mars Reconnaissance Orbiter(マーズ・リコネッサンス・オービター)」から送られた驚くべき画像を公開した。それはパーセベランスがパラシュートで降下している瞬間を捉えたものだ。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

この写真が撮影された時点で、MROは700キロメートルも離れた位置にあり、秒速3キロメートル以上で移動中であったことに留意してほしい。「2つの宇宙船の非常に離れた距離と高い速度から、正確なタイミングを必要とする難しい状況でした。マーズ・リコネッサンス・オービターは上向きに傾斜するともに大きく左側に傾かせ、ちょうど良い瞬間にパーセベランスがHiRISEカメラの視野に入るようにしました」と、NASAは写真に付記した

今後、NASAがパーセベランスから十分な画像を収集すれば、さらに完全な「恐怖の7分」を捉えた写真を我々が目にするチャンスもあるだろう。だが、今のところ公開された数枚の画像は、そこにいるチームの創意と技術を思い出させ、人類の科学と工学の凄さに驚きと畏敬の念を感じさせるに違いない。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

パーセベランスが火星着陸に成功、最初の火星表面画像を送信

火星探査車Perseverance(パーセベランス)は、スカイクレーンのロケットが作動する直前に着地地点を特定するという手に汗握る降下の後、無事に着陸を果たした。すると早速、パーセベランスは今回のミッションで探検することになっているジェゼロクレーターの最初の映像を送ってきた。

緊張を隠せないものの成功を信じる担当チームは、数時間前からパーセベランスが最終アプローチに入る様子を見守り、古代の三角州に位置し今回の探査対象となっているジェゼロクレーターのど真ん中へのコースを辿っていることを確認した。

火星の大気に突入した際に着陸船の周囲が高熱の空気に包まれるため、何度か通信が途絶えることはあったがこれは想定内のことであり、それを除けば、惑星間の距離による遅延はあるものの、着陸船からは安定的に最新情報が地球に送られてきていた。

時間どおりに着陸船が火星の大気圏に突入。10Gもの力がかかる減速操作に着陸船が耐えたとわかったときパラシュートが開き、地上を向いたレーダーで着陸地点が確認され、スカイクレーンのロケット推進降下が作動し、そしてついに探査車が無事に着地した。そのたびごとに担当チームとミッション本部の画面に映る人たちは、周囲に聞こえるほどの溜息を漏らし、「やった!」と小さく叫び、興奮した仕草を見せた。

画像クレジット:NASA

歓喜に溢れたが、新型コロナ予防対策に従って、(いつもならそうしていたのに)抱き合うことはせず、担当チームは着陸を祝った。そしてすぐに、探査車からの最初の映像というプレゼントが届けられた。

最初の映像は、着陸数秒後に、ナビゲーション用に備えられた魚眼レンズの「ハザードカメラ」(危険探知カメラ)による低解像度のものだった。文字どおり騒ぎ(砂埃)が落ち着くや、高性能なデバイスとカメラが起動し、カラー映像が送られてくることになっている。おそらく1〜2時間後だろう。

ミッションと、その驚きの着陸方法の詳細については、米国時間2月18日のパーセベランス・ミッションをまとめた記事をお読みいただきたい。これから数日間は、ハラハラどきどきの着陸時のような、興奮するほどのことは起こらないと思うが、パーセベランスはすぐにでもジェゼロクレーターの中を動き始める。そこでは、火星に生命が存在した証拠を探し、将来、人が火星を訪れた際に使用を予定している技術のテストが行われる。

「まだ宇宙飛行士を送り込む準備は整っていませんが、ロボットならいけます」とジェット推進研究所(JPL)の所長Michael Watkins(マイケル・ワトキンス)氏は放送の中で話していた。「まずは、私たちの目と腕をロボットとして送り込みます。それができるだけでも夢のようなことです。さらに各探査車や、科学とエンジニアリングから学んだことを活かして、次にはもっといいものを作り、もっともっと発見をします。こうしたミッションを実施するごとに、私たちは目覚ましい発見をしています。そしてどの発見も、1つ前よりずっとエキサイティングなものなのです」。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

みんなが楽しみにしているエキサイティングなものに、火星ヘリコプター型ロボットIngenuity(インジェニュイティー)がある。これもすぐにでも飛び始めてほしいところだ。

「現時点から初飛行までの間には、いくつもの大切な段階を踏まなければなりません。明日、ヘリコプターを起動し、探査車がその健康状態を確認できるようにします。次の重要な段階は、インジェニュイティーを地上に降ろすことです。これにより、インジェニュイティーは、初めて自力での運用を開始する瞬間を迎えます」と、インジェニュイティーのプロジェクトマネージャーでありエンジニアリング責任者のMiMi Aung(ミミ・アン)は話す。「火星での凍てつく最初の夜を生き抜くことも、重要な段階です。その後、何項目かの点検を行ってから、本当に重要な初飛行に移ります。そして初飛行が成功すれば、火星の30日以内に、飛行実験のために特別に計画している残り4回の飛行を行います」。

このヘリコプターの実験は間違いなく革新的なものだが、これは単にNASAが初めて行ったという記録作りが目的ではない。火星ヘリコプターのインジェニュイティーは、将来の探査のための、着実な技術的基礎を築くものとして期待されているのだ。

「将来は、探査車と宇宙飛行士が長旅に出る前にヘリコプターをはるか前方に飛ばして、詳細な偵察情報が得られるようになります」とアン氏。「また、飛べるということは、探査車や宇宙飛行士では到達できない場所に行けるということです。それも大変に重要です。急斜面や、地面の裂け目の中など、科学的な関心が高いあらゆる場所に行けるようになる。これまでの常識が変わります」。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星Ingenuity惑星探査車

画像クレジット:NASA

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(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

SpaceXは有人火星面着陸を2024〜2026年に実現させるとイーロン・マスク氏

SpaceX(スペースX)の創設者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、米国時間12月1日に大手メディア企業Axel Springer(アクセル・シュプリンガー)から賞を贈られたが、そこで彼は腰を据え、宇宙、Tesla(テスラ)、AIなど、幅広い話題にわたるインタビューに応えた。マスク氏はまず、SpaceXの火星への野心について語り、SpaceXの次世代宇宙船Starship(スターシップ)で赤い惑星へ到達するまでの現在のタイムラインを示した。彼らは、今週末までにこの宇宙船の新たな高高度試験飛行が実施できればと考えている。

マスク氏は、火星の有人着陸を6年後あたりに想定しているという。そのタイムラインには「とても自信がある」と彼は話していた。これは、地球と火星の太陽を巡る公転軌道上の位置が、26カ月ごとに最接近するという事実に基づくものだ。無人火星飛行と着陸は、次の最接近時、つまり今から約2年後を目指している。さらに、運が良ければ、今から6年後ではなく4年後の最接近時に有人着陸を果たしたいと彼は語った。

マスク氏自身が最初の軌道飛行を行うのはいつかと尋ねられると、「2年後か3年後になる」と答えた。ただし、第1の目標は「大勢の人が火星へ行き、惑星間で生活が行えるように、そして月面に基地を建設できるように」するための同社のテクノロジーを確立することだと釘を刺し、自身の個人的な目標を抑えて謙虚に答えた。

彼はまた、最後には火星に埋葬されたいという願望(火星に宇宙船が墜落して事故死するという意味ではなく)を繰り返した後、宇宙旅行社会の到来が現実になるとの信念と、ゆくゆくは人類の生存には必須のものになるという考えを示したが、それは避けて通れないリスクということではなく楽しく、エキサイティングで、魅力的なものであって欲しいとも語った。

Starshipは、先に述べたとおり、最初の大規模な高高度試験飛行に向けて動き出している。打ち上げはテキサスにあるSpaceXの開発施設で、早ければ今週末までには実施される予定だ。だが同社は、実際の飛行の前に、試作エンジンの重要な地上燃焼試験を済ませる必要がある。

関連記事:SpaceXがStarship宇宙船初の高高度試験飛行を来週に設定

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX火星イーロン・マスク

画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:金井哲夫)