シンガポールの物流スタートアップNinja Vanが約300億円調達、B2B部門に注力

シンガポール拠点のロジスティックスタートアップであるNinja Van(ニンジャ・バン)が、東南アジア6カ国で増大するeコマース配達の需要に対応すべく、新たな投資ラウンドで2億7900万ドル(約300億円)を調達した。

欧州のGeoPost、Facebookの共同創業者Eduardo Saverin(エドゥアルド・サベリン)氏のB Capital Group、Monk’s Hill Ventures、Carmenta、Golden Gate Ventures Growth Fund、Intouch Holding、Grab、そして2つの政府系投資ファンドが、創業6年のスタートアップのシリーズD投資ラウンドに出資した。

Ninja Vanがこれまでに調達した資金は4億ドル(約430億円)で、バリュエーションは明らかにしていない。しかし今回のラウンドの初期トランシェの分析からするに、Ninja Vanのバリュエーションは7億5000万ドル(約800億円)ほどと推定される。

Ninja Vanによると同社はシンガポール、マレーシア、フィリピン、インドネシア、タイ、ベトナムで100万個超の荷物を配達した。ShopeeやAlibabaのLazada、インドネシアのTokopediaといった主要eコマース企業と提携している。

Ninja Vanは声明文で、新たに調達した資金をサービス全般の拡大に充てると同時に、B2B部門に食い込むために使うと述べた。

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(翻訳:Mizoguchi

Uber Eatsがチェコ、エジプトなど7カ国から撤退、成長が見込めるマーケットに注力

オンデマンドフードデリバリーのUber Eats(ウーバー・イーツ)はいくつかのマーケットから撤退する。チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウルグアイ、ウクライナだ。

またアラブ首長国連邦(UAE)のUber Eats事業を、主に中東で配車サービスを展開している完全子会社のCareem(キャリーム)に移す。

「UAEでUber Eatsアプリを使っている消費者やレストランは数週間内にCareemプラットフォームに移行することになり、その後Uber Eatsアプリは使用できなくなる」と米証券取引委員会に提出された書類で事業移管について詳細に述べている。

「こうした決断は、いくつかの国に投資し、また別のマーケットでは撤退するなど、全マーケットにおいてUber Eatsが1番手か2番手でいられるようにするための戦略の一環として行われた」と書類には書かれている。

Uberの広報担当は、変更は新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックとは関係なく、すべてのUber Eatsマーケットで1番手か2番手でいるために現在展開している戦略と関連するものであり、一部の国には投資する一方で別の国からは撤退することを意味する、と述べた。

例えば2020年初めUberはインドのEats事業をライバルだった地元企業のZomato(ゾマト)に売却した。インドではZomatoとSwiggy(スウィギー)がマーケットの2トップだ(売却の一環でUberはZomatoの株式9.99%を取得した)。

Uber EatsのライバルGlovo(グロボ)もまた、赤字削減と収益化を目指して競争力のある構造にしようと、2020年初めにいくつかのマーケットからの撤退を発表した。同社もまた、事業を展開するすべてのマーケットでシェア1位か2位のプラットフォームになることを最終目標としている。

オンデマンドフード配達業界は、収益化について大きな疑問に直面している。そして現在、そこに新型コロナ危機も加わっている(英国拠点の同業他社Deliverooは先週、大量のレイオフを明らかにした)。オンデマンド事業はかなりのマーケットシェアを握らなければ収益をあげることができないため、そのマーケットで誰がトップなのかが明らかになるにつれ、競合する事業者の数は減っていくようだ。

今回の撤退に関する声明文で、Uberは次のように述べている。「チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウクライナ、ウルグアイで事業を停止することを決めた。またアラブ首長国連邦でアプリの提供を停止し、事業をCareemに移す。我々がトップシェアを握っている世界中の他のマーケットにエネルギーとリソースを集中的に注ぐという戦略を引き続き展開する」。

証券取引委員会への提出書類によると、事業が停止または移管されるマーケットは、Eatsの予約件数の1%、2020年第1四半期決算(EBITDA)の赤字の4%を占めた。

「戦略を実行することで、節約できた分をより良い投資リターンが得られそうな優先すべきマーケットに振り向けることができる」とも書かれている。

Uberは2020年初めに「6000以上の都市」で事業を展開しているとしたが、Uber Eatsの広報担当は今回撤退してもこの数字に変更はない、と語った。

同社がどのマーケットを今後優先すべきと考えているのかについての質問には答えなかった。またUberが撤退するマーケットの事業の譲渡先を探したのかどうかについても明らかではない。

証取委への提出書類によると、チェコ、エジプト、ホンジュラス、ルーマニア、サウジアラビア、ウクライナ、ウルグアイの事業は2020年6月4日までに完全停止となる。

Uber Rides事業は影響を受けない、とも付け加えられている。

Uberに近い情報筋は、マーケット展開の見直しで同社がグローサリー配達など新たなビジネスラインにリソースを注ぐことができるようになる、と指摘した。

新型コロナパンデミックは多くのマーケットでオンデマンドフードデリバリー事業を一変させた。利便性を愛する顧客がロックダウンによりこれまでよりも自分で料理するようになり、多くのレストランが店を閉めていて(少なくとも一時休業)、こうした事態はプラットフォームプロバイダーにも影響を及ぼしている。

と同時に、グローサリー配達では需要が増えている。Uberは4月にフランスでのグローサリー配達を全国に拡大すべく、大手スーパーCarrefour(カルフール)との提携を発表した。また、スペインとブラジルでもグローサリー関連で提携を結んだ。

消費者が新型コロナ感染リスクを下げながら食材を確保する方法を模索する中で、グローサリー配達の需要はかなり増加している。

処方薬や個人用保護具など他の種のデリバリーもまた、オンデマンド物流事業者にとっては絶好のチャンスとなりそうだが、いくつの主要フードデリバリープラットフォームが参入するかにもよる。

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

ソフトバンクも巨額出資する3400億円企業、Flexport創業物語

「このビジネスを始めて1年になるまで『貨物フォワーダー』という言葉の意味を知らなかったんですよ」。物流スタートアップのFlexportが直近で32億ドル(約3420億円)の評価を受けたことを考えると、2016年にCEO兼創業者のRyan Petersen(ライアン・ピーターセン)氏に初めてインタビューしたときのこの言葉に、今となってはいっそう驚きを禁じ得ない。

しかし、そこに同氏がテック産業で最も才能のある、エキサイティングな経営者の1人である理由が透けて見える。何といっても、彼は学ぶ。謙虚に。休むことなく。果たす役割が大きくなると、それに必要なことは何でも学ぶ。

まさに今なら、旅客機の座席に人が座っているように箱をシートベルトで固定すると医療用マスク115万枚を搭載できることを学ぶ、という意味だ。Flexportはこれまでに個人用防護具約6200万個を輸送している。そのうち1000万個以上が同社のFlexport .orgの働きにより資金提供されたものだ。 一方でピーターセン氏とFlexportはFrontline Responders Fund(最前線対応者支援ファンド、FRF)の設立に協力し、同ファンドは新型コロナウイルス(COVID-19)対策支援のために700万ドル(約7億5000万円)の資金調達を行った。

Flexportが輸送する300万個のウイルス防護具

Flexport.orgは300万個の個人防護具を梱包して空の旅客機に積み付け、最前線で対応する人々に向けて送り出した。

「彼は私が知る中で最も印象的な創業者の1人ですよ」と語るのは、FRFを率いる仲間でScienceの共同創業者のPeter Pham(ピーター・ファム)氏。「ライアンは本当に私欲なく、ただ問題を解決したいと思っているのです」。

これを踏まえて、TechCrunchがこれまで4年間にわたり行った6回のインタビューから、13億ドル(約1390億円)の調達と数億の収益を達成してきたピーターセン氏の歩みを振り返る。

面倒なことを無視しない

ピーターセン氏はほどなく、「貨物のフォワーディング」が出荷と引き渡しの諸々を調整し、そこにある商品のパレットやコンテナを、トラックや船、飛行機を使って地球の反対側にいる販売業者へと届けることだと知った。それまでに、Flexportは2014年のY Combinatorに参加し、1兆ドル産業の貨物業界に参入する準備をしていた。

Flexport創業者のRyan ピーターセン氏

Flexport創業者のライアン・ピーターセン氏。

「問題の規模が大きすぎて、解決できると思えなかった」と同氏は振り返る。「どうやって世界貿易を修正すればいいんだろう? だいぶ経ってから、とにかくやってみよう。壊れっぱなしというわけにはいかないだろう、と思うようになったのです」どうしてか、当時の貨物フォワーディングの世界というのは、ファックスの記録と紙の積荷目録だらけで、Excelファイルか電子メールを受け取れればその顧客は運が良いほうだった。

貨物フォワーディングは多くの起業家の悩みの種であったが、誰もこのことに取り組もうとしなかった。困難が大きすぎて克服できないことから、YCの共同クリエイターのPaul Graham(
ポール・グラハム)氏が名づけた「schlep blindness」(面倒な仕事を無視すること)を引き起こしているようだった。

「面倒な仕事を無視することとは、あまりにも大変すぎるので脳がそのことを考えないようになってしまう、ということです。私たちの脳には必要な機能だと思います。そうでなかったら、座って死について一日中逡巡して、何もできなかったということになるでしょう」とピーターセン氏はいう。「Stripeが現れるより前にインターネットで何かを販売したことがある人なら、恐ろしく面倒な決済の手続きをしたことがあると思います。インターネット起業家なら100%その問題を経験していて、それぞれの方法ででやってきたと思います」。100年前からあって今なお現役の貨物輸送手続きと、山のような規制当局の頭文字語。参入したい人なんているのだろうか。

「Ryanは私が呼ぶところの『徹甲弾』ですよ。他の人が諦めるような障壁を乗り越え続ける創業者です」とグラハム氏は言う。同氏はFlexport.orgの新型コロナウイルス対策支援に100万ドル(約1億1000万円)を寄付している。「彼は意思が固いというだけじゃない。他の人に見えないものが、彼には見えるんです。貨物ビジネスは巨大でありながらものすごく前近代的で、けれど何千人もスタートアップ起業家がいて、誰がそのことに気づいたでしょうね」。

Flexportイメージ画像

ピーターセン氏が腹を立てていたのは、顧客の貨物が最適とは言いがたいルートで輸送されているのに、そのことが価格やスケジュールにどれほど影響しているかを顧客に知られたくないと、大手貨物フォワーダーが考えていたことだった。「全体がどう機能しているかを私自身が理解できないことで、彼らはお金を儲けていたわけです。それで、当時は、この分野にまだ疎い起業家にありがちなことなのだろうと思っていたのですが、実は大企業でさえこのことに苦労していることがわかったのです。貨物利用運送事業者に利用されてしまうのではないかと恐れていたのです」。

ところが、ピーターセン氏はそれほど世間知らずではなかった。実のところ、それまでずっと貨物ビジネスと関わりがあったのだ。

ソーダの売買からスタートアップの創設へ

「母はたぶんそうとは知らずに、私たちを起業家として育てたのだと思います」とピーターセン氏は振り返る。同氏と兄のデビッドの母親は生化学者であり、食品安全ビジネスを手がけていた。父親はその会社のプログラミングを担当していた。「子供の頃の会話といえば、ソフトウェアを活用し、どうやって政府規制をもっとアクセシブルにするか、ということばかりでした」。Flexportが最終的に、米国の43もの貿易規制当局を突破したのも、同社のCEOにしてみれば自然な成り行きだった。

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

Ryan ピーターセン氏、2015年撮影

ピーターセン氏が発散している行動的なエネルギーからは、いつも次の難題を待ち望んでいるような印象を受ける。「その頃は、何もかも飽き飽きしていて」それで、母親の職場に連れて行かれた。「母は私にオフィスに買い置きするソーダを納品させて、報酬を払ってくれたんです。Safeway(セイフウェイ)まで父の車に乗せてもらい、ソーダを1ケース4ドルで買って、9ドルで会社に販売しました」。同氏は笑いながら、ふと考えて「それって、子供のお小遣いを非課税にする方法だったかもしれませんよね」と語った。

ほどなく、ピーターセン氏はもっと大きな商品をもっと遠くへ輸送するようになった。中国でスクーターを買い付け、米国内でオンライン販売した。2005年までピーターセン氏は、サプライチェーンに近い場所にいるため中国で暮らしていた。その翌年、同氏は兄とMichael Klanko(マイケル・クランコ)氏と共同でImportGeniusを創業した。そこで彼らが気づいたのは、紙の積荷目録には膨大な量の価値ある情報が詰まっているということだった。そこで、輸入者と輸出者が競合会社の動向をチェックできるよう、スキャンしたデータを販売し始めた。

ピーターセン氏が初めてスポットライトを浴びたのは、2008年に偶然Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)に出会ったときだった。ImportGeniusは、Apple(アップル)が大量の「電子コンピュータ」を出荷しようとしていたことを掴んだ。これは同社で初めての出荷分類品目だ。 「iPhone 3Gの発売を、公開積荷目録データからスクープしたのです。スティーブ・ジョブズが米国税局に連絡し、国税局から私に連絡が来ました」と2016年のインタビューで語った。

ImportGeniusは結局頭打ちになったが、ピーターセン氏はここで知識を蓄え、後に自らの「面倒な仕事」を突き止め、それを無視することなく打ち砕くことを学んだ。 「最大の難問が本丸から私をじっと見ているようでした。世界貿易は難しすぎて、管理できるソフトウェアがありませんでした」と同氏は振り返る。「その頃、この業界では中小企業向けのソフトウェアが不足しているだろうと予想していました。しかしその後分かったのは、この業界には本当にまったくそのソフトウェアがないということでした」。

最初はImportGeniusの社内で後のFlexportを立ち上げたかったが、既存の投資家にリスクを取るよう説得するのは困難だった。何か別のことを始めるのは怖いが、エキサイティングでもある。「兄は私の親友で、最良のアドバイザーでもあります」とピーターセン氏は言う。お互いに嬉々として競争している2人 — ライアンのTwitterハンドルは「@TypesFast」だ。一方のデビッドは「@TypesFaster」である。

それで、Davidがまず動いた。後に2300万ドル(24億5000万円)を調達するBuildZoomを創業し、工事業者手配の兵站を固めた(このパターン、お気づきでしょうか)。その後2013年にライアンが退社する。「自分の城を出て自分を試したいと……1人で陣頭指揮を執れることを証明したいと望む自分がいたと思います。本当にすごく大きな挑戦でした。その日が来て、初めて味わうような解放感があって、すばらしい気分でした」。

「笑いのタネ」が10億ドルを調達

規制当局の認可をすべて受け、Flexportの商品の基盤を構築するのに数年かかった。Founders Fundからの早期の資本で、ピーターセン氏は待望の貨物ソフトウェアを構築した。それでも「大企業の経営者からは笑いのタネに。私たちのことを(映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の)Emett Brown(エメット・ブラウン)博士と次元転移装置に例えた人がいて。でもその人は、博士はタイムマシンを発明して、それは実際に動いたということを忘れていたのだと思います」。

2016年までに、Flexportは64カ国で700社のクライアントにサービスを提供した。僕が以前書いた記事のなかで、「Flexportはイノベーションを寄せ付けない退屈な巨大産業に立ち向かう、最もセクシーでない1兆ドル産業のスタートアップ」とFlexportのことを表現したことがある。それからコンシューマー向けスタートアップが飽和状態になり、投資家はこれまで触れられなかった市場で進化しているテクノロジーに目を向けるようになった。2017年の資金調達後、企業価値9億1000万ドル(971億2000万円)と算定されたFlexportは、DSTが主導する1億1000万ドル(117億4000万円)の資金調達ラウンドを実施し、シリコンバレーの目に留まり始めた。

Flexportのダッシュボード画面

Flexboardプラットフォームのダッシュボードは、地図、通知、タスク一覧、そしてFlexportの顧客がサプライヤー工場との間で使えるチャットを提供している。

幸運なことに、Flexportが1800社の顧客と取引し月間7000件の貨物を取り扱うようになっても、まだ貨物業界の巨人たちは笑って見ていた。「スタートアップのライバルは気にしていません。大手が私たちのことをジョークだと思わなくなったら心配です」と同年ピーターセン氏は語っていた。ほどなく、創業25年の中国の民間物流大手S.F. ExpressがFlexportと業務提携し、2018年の追加の1億ドル(106億7000万円)のラウンドにつながった。一方で、Flexportは老舗のライバルたちのようになろうと努力していた。 当時ピーターセン氏は「スタートアップという言葉を外したいと考えていました。(当社のお客様は)成長を助けてくれる企業を求めているのであって、地に足のつかないスタートアップは求めていませんでした」と話していた

その点、ピーターセン氏は貨物ビジネスか魅力的かどうかは気にしていなかった。「セクシーとも、セクシーでないとも考えたことがありませんでした。世界経済のバックステージパスだと考えていただけです」と後に同氏はそう説明した。それでも、サウジアラビアを後ろ盾とするソフトバンクのVision Fundには魅力的に映った。その頃Flexportは、販売業者が数カ月後に販売予定の商品の決済を完結できる貨物ファイナンス機能を追加していた。自社で航空機をチャーターし、自社の倉庫を運用するようになった。その倉庫では、入庫するすべての貨物のサイズをスキャンしてその先の輸送を最適化できる次世代ロジスティクスの実証実験を行った。

Ryan ピーターセン氏

それまでに、Flexportには数多くのイグジットの選択肢があった。しかし、ピーターセン氏は運転を楽しんでいたのだ。「ただおもしろいのです。目的があれば興味深いことに引き込まれる。ビジネスを売却してしまえば、ただのどこにでもいるお金持ちです。ビジネスを売却したいとはまったく思いません」。幸いにも、貨物フォワーディングでの利益拡大の見通しから、ソフトバンクは2019年前半、Flexportに仰天の10億ドル(約1067億円)を投資することに同意し、資金調達後の企業価値は32億ドル(約3415億円)になった。

「当社の役員会でも物議を醸しました。これは大きな希薄化だと考えられていました。しかし、これからやってくる上がり下がりの波で、サイクルを乗り切るのにキャッシュが必要だと説得しました。私の考えでは、世界は不確実なものです。あらゆる出来事に準備ができていなければならない」とピーターセン氏はいう。嵐を乗り切れさえすれば「やがて将来勝利するということです」。

この戦略はほどなく当たった。国内で新型コロナウイルスの感染が拡大したために中国との貿易が事実上停止し、Flexportの取り扱いコンテナ数は激減したが、他の後発スタートアップ企業のように大規模な解雇をせずに済んだ。2月4日に、先を見越して減速が予測される採用部門を中心に従業員の3%にあたる約50人を削減した。「社員を落胆させるのは本当に辛いこと」とピーターセン氏は打ち明ける。

Flexportのチャーター機

Flexportはここ数年自社のチャーター便を運用して輸送している。

不況時代のCEOとして舵をとること、そして思いやりを持って人員を削減することが、ピーターセン氏の新しい目標になった。「そのことに私が個人的な責任を負っているということを、社員に知って欲しかったのです。ここには透過性があることを」と同氏は語る。事態の深刻さに、その声に力がこもる。「社員は不安を感じるとリーダーに目を向ける。そのときリーダーが不安を感じていないと分かると、いっそう不安が増すのです。でも、社員が不安を感じていて、『ああ、リーダーもやっぱり不安なのかな?』と思えば、その時は大丈夫。彼らもきちんと行動してくれます」。

新型コロナウイルスの国内感染拡大前に素早い決断力で行動したことで、Flexportの推進力は強く、滑走路は開かれた。ピーターセン氏は、不況でも好況期と同じように同社を導けるだけのちからを証明しつつある。

Flexportのマネジメント術

「この18カ月ほどで得た最大の学びは、全部はできないということです。やりたいことは何でもできるけれど、全部はできないのです」とピーターセン氏は説明する。「良いアイデアが浮かんで『やろう!』というでしょう。するとすぐ手を広げすぎになってしまう。物事に『ノー』という、何らかのトップダウン的な規律が必要なのです。創業後の数年間、私たちにはそれが欠けていました」と彼は苦笑いしながら話した。

規律の探求によって同氏は、顧客ニーズと企業文化維持の優先度付けのための、2つの重要なフレームワークを開発し、今はそれに従っている。Flexportは従業員1800人、14拠点、6つの倉庫、そしてSonos、Kleen Kanteen、Timbuk2など1万社の顧客を獲得するまでに成長したのだから、それらのフレームワークは決定的に重要だ。

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するRyan ピーターセン氏

ホワイトボードで自身のマネジメントフレームワークを説明するライアン・ピーターセン氏。

最初のフレームワークは、ピーターセン氏のメンターである米国ビジネス界の大御所であるCharlie Munger(チャーリー・マンガー)氏からヒントを得たものだ。ビジネスが成功するために満足させなければならない6種類のステークホルダー、または「お客様」を明らかにする。ピーターセン氏が述べるにはこうだ。

  1. 顧客:お金を払ってくれる人たち。Flexportにとっては、輸入者と輸出者の両方だ。
  2. ベンダー:自分が支払う相手。Flexportの場合、航空機、船舶、トラックの所有者。
  3. 従業員:彼らの待遇を必ず良くすること。Win-Winな関係でなければならない。
  4. 投資家:自分の投資のリターンを得る資格がある人たち。リスクを取っているから。
  5. 規制当局:誰に免許を与えるかを決める人たち。Flexportにとっては、輸入製品に関係するもので、米国内だけでも43の規制当局がある。
  6. コミュニティ:事業を行っている場所。いつかこれは、グローバル社会になるかもしれない。

Charlie Munger氏、Ryan ピーターセン氏が提唱する「6種類の満足」

「すべての項目でBグレード以上、できればAを取れなければ、長期に持続可能ではありません」とピーターセン氏は説明する。そこで働くべきか、投資すべきか、取引すべきか、または自分で導いて向上させられるか、会社を評価するときに誰でも使えるスマートレンズだ。

Airbnbを例に取ってみよう。顧客は概してこのホテルの代わりのサービスを好んでいるし、従業員の採用も継続的に有効にできている。そして、投資家は数十億ドルのオファーを提示し、同社が新型コロナウイルスの災禍を生き延びるよう資金を注入している。ただし、ベンダーであるホストとその近隣住民は問題のあるゲストに手を焼いていて、コミュニティと規制当局は住宅供給に与える影響を巡ってこのスタートアップと衝突している。この「6種類の満足」で、Airbnbが何をもっと頑張らないといけないかが分かるだろう。

2つめのフレームワークは、ピーターセン氏が自ら開発したもので、事業の拡大期に会社のコアバリューを確実に維持する方法に関するものである。6種類の文化的な問いが与えられる。

  1. Why:なぜ自分は存在するのか。自分の目的、ミッション、ビジョン、影響力は?
  2. Who:誰を雇用していて、どのような価値観と行動を求めているか。
  3. What:自分は何に焦点を合わせているか、成功の尺度にどのような指標を使っているか
  4. How:どうやって意思決定していて、どのようにして改善のためのフィードバックループを短くしているか。
  5. When:いつまでにやり終えて、商品はいつ出荷しなければならないのか。
  6. Where:自分のチームはどこに帰属意識を持っていて、自分はどうすればもっと多様性を受け入れられるのか。

ピーターセン氏はこれらの理念を医学的な状況への対処になぞらえる。リーダーが早くからチームの文化にそれらを組み込んでおけば、あとで直そうとするよりもずっと簡単だ。「どの会社でも、これらを正しくできれば、競争に勝てる」と同氏は考えている。

これらを実践するために、ピーターセン氏は身近な人たちでチームを編成した。チームは「当社のOKR(目標と主な結果)は明確か、きちんと文書化され、多様性を受け入れた会議をしているか、社員が自ら責任をもって業務しているかを確認すること、それだけです」。この方法はアマゾンの企業スタイルに大きく影響を受けている。ピーターセン氏は2019年に「英語には官僚制を意味するポジティブな言葉がないですよね」と語っていた。

プロセスを真面目に捉えるCEOは従業員にも好評だ。「ライアンの元で働いたおかげで、この10年でキャリアが大きく前進しました。彼は人に能力を最大に発揮させるような、不思議な力を持っているのです」と語るのは、Flexportの元商品担当副社長を長年勤め、後にPlacementを創設したSean Linehan(ショーン・リネハン)氏である。「ライアンは、オペレーション集約型のテックビジネスの戦略を作り上げているのです。グローバルロジスティクスの巨大企業を一から作るのは、頭がおかしくなるほど複雑な仕事です。でもライアンは複雑さの中で成長しています。ほとんどの起業家がだめになってしまう状況で、彼は本領を発揮するのです」。

現在直面している経済的な向かい風の中でFlexportが上場を目指すならば、ピーターセン氏にはこの推進力が必要だろう。ご想像どおり、同氏はそのことについても学んでいるところだ。「年次報告書を読むのが好きなのです。趣味みたいなものです、特に競合会社の報告書が」とピーターセン氏は言う。「上場したいです。ただし、利益を出せるようになってからです。ウォールストリートの気まぐれに流されたくありません。上場していて損を出して、そのとき自社の株がウォールストリートに嫌われたら、死のサイクルに入ってしまいます」

他をしのぐ会社のCEOであることで、新しいメンターへの扉も開かれた。エグゼクティブコーチのMatt Messari(マット・メッサリ)氏と、マイクロソフトのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏である。ピーターセン氏はナデラ氏に「学びと成長を測定可能にする方法はないか」と相談した。レドモンドの実力者の答えは「すべてを測定しなくてもよい」だった。ピーターセン氏はメモを取った。自分が正しいと思うことをすればいい時もある。

戦時CEO

真心を持って率いてきたFlexportは、新型コロナウイルス対策支援に大規模に参加することに舵を切った。「私たちはただ温かい毛布にくるまってベッドで寝ているためにここにいるのではない。世界のために何かするときがやってきた」とピーターセン氏はツイートした。

Flexportの対応は2020年1月に始まり、週に数回ブログに記事を投稿して、新型コロナウイルスが世界貿易に与える影響、支援組織がサプライチェーンの問題に対処する方法、そして政府や企業が支援する方法を明らかにした。そして、Frontline Responders Fundを立ち上げ、Flexport.orgへの寄付をすべてこのチャリティーに回し、必要ならばいつでも貨物フォワーディング費用の大幅割引を提供して個人防護具の入手を支援した。

Frontline Responders Fundの立ち上げ

Flexport.orgがFrontline Responders Fundを立ち上げ。

「今回受け取った寄付は100%、最前線の人々にできるだけ速くマスクを輸送することに直接費やされます。お受けした寄付は1セントでも無駄にしないことをお約束します」とピーターセン氏はツイートした。自分のビジネスもまた世界貿易と需要の混乱における自身の問題に直面している中で、同氏はすべての時間をFlexport.orgの運営とFRFの支援を行うことにした。Arnold Schwarzenegge(アーノルド・シュワルツェネッガー)氏やEdward Norton(エドワード・ノートン)氏のようなセレブの支援もあって、700万ドル(約7億5000千万円)以上の資金を調達した。FRFはこれまでにマスク690万枚、 ガウン24万着、人工呼吸器1000台、手袋15万5000枚、そして社会的に弱い立場の人々の食事25万食を届けている。

ピーターセン氏は多くのリーダーに声をかけ人道支援を説いて回ることに躊躇がない。救援活動を妨げている主なボトルネックの広範なガイドを記している。「慈善活動家たちもステップアップして、個人防護具を受注したものの、代金を前払いで受け取らないと仕入れの資金がないという組織に対し、資金提供するべきです。パンデミックが落ち着いたらお金は戻ってくるのだから、今できる慈善活動で最も効果の高い方法のひとつです」。

同氏の意欲が従業員たちの心を動かし、彼らも腕まくりを始めた。「危機の中で、リーダーたちは彼らが体現する価値観を如実に示しています」とFlexport.orgの責任者Susy Schöneberg(スージー・シェーネベルク)氏は語る。「新型コロナウイルスの大流行後、ライアンは民間企業と非営利団体の顧客を支援するために、すぐに多くのリソースを提供してくれました。ここ数週間、私の1日は彼との会話に始まり、彼との会話で終わるという状況でした。時刻が何時だろうが構わずにです」。

Ryan ピーターセン氏

ピーターセン氏の立場を利用することに加え、同氏には利益を得るために危機を利用しようとしている人を見抜く特別な視力がある。「どの病院システムまたは最前線緊急事態対応者に提供するかを明らかにされないお客様からのご依頼の場合、Flexportは個人防護具を輸送いたしません。このことは即時有効とします」とピーターセン氏はつづった。「個人防護具は世界的に不足しています。簡単にお金を稼ぎたい起業家に戦争で儲けさせるような行為は、非道徳的です」。

連邦政府レベルの適切な危機管理の欠如により、ピーターセン氏は対新型コロナウイルス戦線の事実上の総司令官になった。「問題の規模が甚大であること、そして先に説明した市場の失敗の複雑さを考えれば、米国政府がみずからこの問題を解決できるとは思いません。それでも、障壁を取り払い、民間セクターの対応を調整するようなリーダーシップは発揮できるし、そうしなければなりません」それまで、ピーターセン氏は全速力で今すぐ必要な戦時CEOになることを学んでいることろだ。

ピーターセン氏は故Kobe Bryant(コービー・ブライアント)氏の言葉を借りて「自分のゴールがわかっているとき、世界は全部図書館になる」と締めくくった。

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Category:ネットサービス

Tags:Flexport Softbank Vision Fund 物流

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(翻訳:Dragonfly)

米国郵便公社が崩壊したら、中小企業も潰れてしまう

eコマースに多大な悪影響が及ぶ

米国に引っ越して以来 、私は米国郵便公社(USPS)を、米国の創造力と粘り強さの象徴として認識し、賞賛するようになった。

USPSは電気、電話、高速道路システムのように、私たちのより大きなストーリーの一部であり、米国を一つに結びつける存在だ。しかしそれはまた、あって当たり前のものだと思われてしまいやすいものだ。USPSは、法外な料金を請求することもなく、毎日1億8190万通の郵便を配達している。もし住所を持っているのなら、それはすでにUSPSによってサービスを受けているということだ。そして住所を持っていることに対して料金を求められることはない。

企業の配送の最適化を支援するeコマーステクノロジープラットフォームであるShippoのCEOである私は、USPSとそれがeコマースへ与える影響に独自の視点を持っている。USPSは、Shippoの初期の頃から、成長するビジネスたちが配送をより行いやすくするための重要なパートナーだった。私たちがUSPSと協力しながら、他にもいくつかの新技術(サイトビルダー、電子商取引プラットフォーム、決済処理など)を導入した結果、中小企業にとってeコマースがこれまで以上に身近なものになった。

また、USPSの重要性についてこれから述べる私の意見は、私の会社と郵政公社との利害関係に基づくものではないが、Shippoがその収益の一部を、USPSの出荷ラベルを(他社の出荷ラベルと同様に)私たちのプラットフォームを通して販売していることから得ていることはまず述べておきたい。仮にUSPSが営業を停止した場合には、それはShippoの収益に影響を与えることになる。とはいえその悪影響は、当社に対するものよりも膨大な数の中小企業に対するもののほうが、はるかに大きなものになるだろう。

私たちがこのことを知っているのは、Shippoで3万5000を超えるオンラインビジネスの運営方法と顧客へのリーチ方法を直接目にしているからだ。私たちは販売者が支払い時に顧客に提示するオプションから、返品の処理方法に至るまで、その間のプロセスのすべてを知り、サポートしている。また、すべてのビジネス毎に、製品、顧客への対応と戦略が異なり、独自の展開が行われているものの、配送を行わなければならないという点は共通している。

米国では、この出荷の大部分は、特に中小企業の場合には、USPSによって助けられている。状況を説明するならば、USPSは世界の全郵便のほぼ半分を扱い、トップの民間配送業者たちが毎年運ぶ合計量以上のものを、わずか16日で配送している。そしてこれらすべては、従業員にヘルスケアと年金を提供しながら税金を投入することなしに行われている。

さて、多くの組織の場合と同様に、新型コロナウィルス(COVID-19)はUSPSに大きな影響を与えた。eコマースパッケージの出荷は増加し続けているもの(Shippoのデータに基けば、3月上旬から30%増加)、レターメールの大幅な減少を補完するには不十分なものだ。これに伴い私は「効率が悪い」という意見や、民営化を求める声、大幅な価格設定や構造改革を求める圧力、そしてUSPSが閉鎖される可能性に対する無関心な声さえも耳にしている。

だがこの危機の中で私たちは皆、今まで以上にUSPSとその重要なサービスを必要としているのだ。USPSが縮小または解体された世界で苦しむのは、Amazonや他の大企業(そしてShippo)ではない。もしUSPSを死なせてしまったら、それに伴って中小企業が殺されてしまうのだ。

USPSの効率性(またはその欠如)に関する意見は、かなり頻繁に、非常に狭い範囲で論じられている。もちろんUSPSは、面倒な配送ルートを回避し、価格を上げ、サービスを提供する相手を選択することで、バランスシートを改善し、営業損失を利益に変えるような方向転換を行うことができる。

ただし、その議論にはUSPSの全体像と真の価値が省かれている。一部の人々が非効率的な運用だと呼んでいるものは、実際には米国における中小企業の成長の鍵となる触媒なのだ。USPSは、規模、場所、財務リソースに関係なく、全国の企業にその顧客にリーチする能力を提供する。

USPSをバランスシート上の効率で厳しく評価したり、抽象的な「公共財」として評価したりすることはできない。私たちは、どれほど多くの中小企業が USPS のおかげで事業を開始することができたのか、いったい何千億ドルもの年間商取引が USPSによって可能になったのか、またUSPSがなければ商品を手に入れることができなかった消費者が、一体どれくらいいるのかに注目すべきなのだ。

米国では、eコマースの売上高は年間5000億ドル(約53兆7000億円)に迫り、毎年2桁のペースで成長している。eコマースの成長についての話を聞くと、Amazonが真っ先に出てくることが多い。だがあまり目立たないのは、中小企業の大いなる成長の部分だ。これは一般に、商取引の健全性に不可欠なものなのだ(独占を望むものはいない!)。実際、SMB(中小企業)セグメントは、Amazonと並ぶように着実に成長している。また、新型コロナウイルスで従来の企業が直面する課題によって、これまで以上に小規模企業がオンラインに移行している。

USPSのプライオリティメールは、米国のほぼどこでも2~3日で荷物を届けてくれる(平均配送時間はShippoのデータに基くと2.5日)。フルサービス(追跡、保険、無料の集荷、さらには無料の梱包さえ)が提供される1回の配送は、約7ドル(約750円)からスタートする。

消費者としての私たちが、オンラインショッピングで無料で迅速な配送に慣れている現在、USPSは中小企業が追いついていくために不可欠なものなのだ。消費者として、私たちがeコマースビジネスとやり取りするときに、その舞台裏を見ることはほとんどない。中小企業の経営者が自宅や小さな店先で注文を処理している姿は見られず、電子商取引のウェブサイトを見ているだけだからだ。USPS のサポートがなければ、中小企業のオーナーが消費者の高い期待に応えることはさらに難しく、場合によっては不可能に近いものになってしまう。状況を説明するなら、Shippoプラットフォームを利用している米国を拠点とする中小企業(月商1万ドル=約107万円未満)の89%がUSPSに依存している。

これまで私は、USPSとAmazonとのパートナーシップや、現在の状況に対する問題点、そして現在の問題点が民間モデルの下でどのように改善されるのかに関する多くの議論を目にしてきた。Amazonとそれがeコマース市場に与える影響については、私たち自身もはっきりとした意見を持っているが、AmazonはUSPSの課題を解決するための推進力ではない。なお事実としてはAmazonは、USPSの最も利益性の高い収益源である小包配送の、継続的な成長に対する主要な貢献者ではある。

USPSとAmazonの間の取引の正確な経済状況は不明だが、eコマースの配送おいては、量と効率性への引き換えに大幅な値引きが行われるのが一般的だ。Amazonの価格設定の一部は、平均的な配送業者と比較して、Amazonの注文を引き受けることが、USPSにとって実際に安くて簡単であることの結果として現れたものだ。このプロセスの場合、AmazonはUSPSの配送センターに貨物をまとめて配送する。これによって、USPSのコストと物流上の課題が大幅に削減される。

もしUSPSがなかったとしたら、Amazonは民間の運送業者と同様のプロセスと効率性について交渉することができる。だがこれは、中小企業にとっては不可能なことだ。USPSと民間配送業者の間の、日常の運用とインフラストラクチャの劇的な違いを考えると、中小企業が民間配送業者を使おうとした場合には、配送費が大幅に、場合によっては2倍以上に増加することになるだろう。これに加えて、USPSによる日常的なルートが存在しない状況で、中小企業が配送会社のシステムに荷物を取り込ませようとした場合には、新たな運用上の負担が発生することになるだろう。

全体として見たときに、米国では、もしUSPSがない、または利益優先の考え方で運営される民間のようなUSPSが使われる場合には、eコマースに対する起業家精神の勢いが削がれてしまうだろう。参入障壁はさらに高くなり、新しいビジネスにとって、最初に必要となるコストとインフラストラクチャ投資が大きくなる。Shippoの場合には、私たちの顧客が使用する配送業者の多様性がさらに大きくなるだろう。複数の配送業者を横断して最適化できるようにする当社の技術は、顧客企業にとってさらに重要なものになるだろう。ただし、そのような最適化を行ったとしても、依然として中小企業が最も苦しむグループだということには変わりはない。

現在、Shippoのデータによれば、ほとんどの中小eコマースブランドは、収益の10〜15%を配送に費やしているが、これは既に大きなコストを占めている。特に追加料金と集荷料金を考慮に入れると、これは優に20%を越える可能性があり、すでに厳しいスペースにいる企業にさらなる負担をかけることになる。

USPSは、中小企業が困難な時期に生き残り繁栄できるようにするための重要なサービスであり、市民がどこに住んでいたとしても、基本となるサービスにアクセスできるようにするための大切なものであることを、私は議員や指導者たちに強く訴えたいのだ。

これは、新型コロナウイルスの危機を乗り切るために、政府による財政的および精神的な支援が提供されるべきであることも意味する。こうすることで、USPSは従業員を保護し安全を保ちながら(それには最前線での仕事を適切な安全保護具を身に着けて遂行できることも含まれる)、中小企業と市民の両方にサービスを提供し続けることができる。

結局の所、USPSを単なるバランスシートと見なし続け、利益だけを見つめて最適化を行っていくならば、最終的に私たちは、手に入れるものよりも、はるかに多くのものを失うことになるのだ。

【編集部注】著者のLaura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏は、21世紀のeコマース向け発送プラットフォームを構築しているShippoの共同創設者兼CEOである。

新型コロナウイルス 関連アップデート

画像クレジット: Chad Springer (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

米配送大手DHLは配送業務にLocus Roboticsの運搬ロボ1000台を導入予定

ロボティクスは物流企業が業務の時間を短縮できることから、配送や倉庫で大きな成果を上げている。その最も顕著な例はおそらくAmazonで、米国各地の同社の配送センターには現在20万台以上のロボットが配備されている。

Amazonが当日配送、翌日配送に移行したため、競合他社やパートナーは対抗策を求め、その多くは他社のロボティクスを取り入れている。米配送大手のDHLもロボティクス企業に期待を寄せてきた。同社の北米部門は、350カ所の施設でロボティクスと自動化に3億ドル(約320億円)を投資する計画を2018年11月に発表していた。

2017年以来のパートナーであるマサチューセッツのLocus Robotic(ローカス・ロボティック)は、その恩恵を受けている。DHLは今週、合計1000台のLocusBotsをLocus Roboticから調達し、配備することを決めた。投資額の大きさやDHL全体の規模からすればごくわずかのようにも思えるが、ロボットを配備する施設は来年には2カ所から12カ所へと拡大する。当然、DHLはこれまでの試験導入はうまくいったと語っている。

DHLの小売輸送事業プレジデントを務めるJim Gehr(ジム・ゲーア)氏は発表の中で「DHLサプライチェーンがライフサイエンスとリテールの部門で初めてLocusのソリューションを実装し、大きな成功を収めた。一部の顧客の業務において、生産性は最大で80%向上した。そこで、Locusの極めて柔軟なAMR(自律型協働ロボット)ソリューションの活用を複数の分野の顧客に拡大することにした。我々はこれからもLocusと協力して、生産性の向上、業務量増加への対応、米国全土の顧客のサプライチェーンについて継続的な改善を図っていきたいと考えている」と述べた。

Locus Roboticsは、2018年にDHLが投資を発表した時点で提携する計画を立てていた25社のロボティクス企業のひとつだ。Locus Roboticsは、2019年4月にシリーズCで2600万ドル(約27億円)を調達した。

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(翻訳:Kaori Koyama)

導入企業1万社超え、無料から使えるEC企業向け在庫管理SaaS「ロジクラ」が1.2億円調達

ニューレボのメンバー。前列右から2人目が代表取締役の長浜佑樹氏

EC事業者向け在庫管理SaaS「ロジクラ」を開発するニューレボは1月15日、ジェネシアベンチャーズ、マネックスベンチャーズ、オリエントコーポレーション(以下オリコ)、SGインキュベートより総額1.2億円を調達したことを明らかにした。

ニューレボではこれまで2016年9月にF Ventures、2017年8月にDGインキュベーション、2017年12月にジェネシアベンチャーズから資金調達を実施。今回はそれに続くシリーズAラウンドでの調達になる。

今後はセールスやマーケティング、開発体制の強化に向けて人材採用に投資をするほか、在庫データを活用した新たな事業にも力を入れていく計画。株主のオリコと組んで金融商品の開発に取り組むほか、在庫売買のマーケットプレイスの構築や他社との連携なども進める方針だという。

フリーミアムモデルへの転換で導入企業数は1万社を突破

ニューレボが手がけるロジクラはEC事業者の在庫管理業務を効率化するSaaS型のプロダクトだ。

商品の入荷から在庫管理、受注、出荷に至るまでの工程をオンライン上で管理することが可能。バーコードラベルの発行、宅配送り状の作成、受注データを用いた納品書の作成、iPhoneのカメラ機能を用いた入出荷検品、ロケーション管理などの機能も備える。

特に商品の在庫管理や入出荷検品については、担当者が”Excel”や“紙で出力した注文リスト”を使って実施しているケースがまだまだ多いそう。その結果として単純に作業工数がかかるだけでなく、入力ミスや確認ミスによる誤出荷・送り忘れなどにも繋がり、事業者にとって大きな課題となってきた。

もちろん在庫管理システムを始めとした解決策はすでに存在するが、価格や使い勝手の面がネックになりいまだにアナログな手法を選んでいる事業者も少なくないようだ。たとえば入出荷検品にはハンディターミナルが使われることが一般的だが、一台あたり約30万円するため導入コストは安くない。

その点ロジクラではフリーミアムモデルを採用し、基本となる在庫管理や入出荷管理機能は無料で提供(拠点数やユーザー数の制限あり)。iPhoneを使ったピッキング機能は月額1.5万円のスタンダードプランからの提供にはなるが、カメラを用いてバーコードを読み取ることにより“ハンディターミナル無しで”検品作業をスムーズに実施できる仕組みを構築した。

2019年末の時点で導入企業は1万社を突破。ニューレボ代表取締役の長浜佑樹氏によると当初は有料モデルのみで展開していたが、キャッシュアウトの危機を迎えたこともあり2018年11月に思いきってフリーミアムモデルへと転換したところ、そこから一気にユーザーが増えたそうだ。

現時点では有料で使っているユーザーは1万社のうちの一部にすぎないが、ビジネスモデルを変えて以降は次第に有料化も進み売り上げが拡大してきているとのこと。以前は年商1億円未満の小規模な事業者の利用が多かったものの、現在は1億円〜10億円ほどの中堅企業にも導入が進み始め、単価も上がっているという。

昨年は受注管理システム「ネクストエンジン」やECプラットフォーム「Shopify」とのAPI連携にも力を入れ、ユーザーの使い勝手を向上させるべく機能改善を続けてきた。ユーザーからの要望に合わせて、賞味期限管理機能やロット管理機能なども新たに搭載していく予定だ。

今回の資金調達もそれらの取り組みを加速させるためのもの。開発体制を強化して機能面のアップデートを図るほか、ビジネスサイドの体制強化およびマーケティングへの投資を通じて新規ユーザーの獲得とともに有料プランのユーザー増加を目指していく。長浜氏も1万社を超える既存ユーザーの中から、どれだけの企業に有料で使ってもらえるかが1つのポイントだと話していた。

在庫データを軸に需要予測や金融商品の展開へ

また今後の展開としては「物流郡戦略」として他社とも連携しながら新たな事業や取り組みを展開していく計画だという。

具体的には上述したネクストエンジンなどの例と同じく、API連携を含めて他社と上手く組みながらロジクラの利便性を高めていくほか、蓄積した在庫データを軸に「需要予測」「金融商品」「在庫売買のマーケットプレイス」といった試みも進める。

需要予測については以前から長浜氏が言及していたもので、小売企業にとって大きな課題である“過剰在庫”の削減が大きな目的。これまでは担当者の勘や経験を頼りに行なっていたが、そこに在庫データをAIで分析した需要予測を取り入れ、さまざまな企業がその恩恵を受けられるようにパッケージとして提供していきたいという。

「需要予測としてよくあるのは特定企業の過去のデータと外部データを掛け合わせてその企業にカスタマイズしたアルゴリズムを提供するというもの。一方で自分たちが目指しているものは、複数企業の特定商品の売れ行きなどの実データを活用して、別の企業に対してその商品の売れ行きなどを予測するもの。これはロジクラがフリーミアムでデータを集めているからこそできる予測の仕組みだと考えている」(長浜氏)

金融商品やマーケットプレイスは、過剰在庫の削減とは別の角度から事業者の成長を支援する意味合いが強い。金融商品については今回株主として参画したオリコと業務提携を締結。まずはロジクラユーザーへオリコのローンなどを提供するところからスタートし、ゆくゆくは入出荷データなどを活用した新サービスを共同開発していく予定だ。

データとテクノロジーを活用した新しい融資の仕組み(オルタナティブレンディングと呼ばれたりもする)は近年国内外でも増えつつある。たとえば国内ではマネーフォワードがクラウド会計データや銀行などの明細データを用いたオンライン融資事業を展開しているが、こういった事業が各領域で増えていく可能性はあるだろう。

「本当は借りられる力があるものの、既存の金融機関では融資を断られてしまっているような事業者に新しい機会を提供できるようなサービスを作っていく」(長浜氏)ことが目標とのこと。ゆくゆくは動産担保融資なども検討していくようだ。

もう1つの在庫売買マーケットプレイスはロジクラユーザー間で在庫を売買できる場所を想定している。ロジクラ上からスムーズに出品できる仕様により、手間なく使えることが特徴。従来はかなり安い価格で処分していた在庫を少しでも高い値段で販売でき、仕入れる側はお得な価格で購入できるプラットフォームを作っていきたいという。

「自分たちのミッションは『在庫データを活用し、企業の成長を支援する』こと。ロジクラを通じて蓄積してきた在庫データを用いて、過剰在庫の削減はもちろん、新しい成長支援手段の実現や売上拡大にも貢献できるように事業を広げていきたい」(長浜氏)

D2Cブランドに即日配達サービスを提供するOhiが約3億円を調達

世の中のスピードは随分早くなった。Amazon(アマゾン)は翌々日の配送を標準とし、即日または翌日の配送も当たり前にした。一方、今やあらゆるものが対象となったオンデマンドサービスは対応が遅れている。食料品から酒、コンシェルジュストレージ(お届けサービス付き貸倉庫)やボタンを押すだけで来てくれる家の清掃サービスまで、幅広いオンデマンドサービスのスピードは変わらないままだ。

即日または翌日配達を可能にする物流は非常に複雑になる。通常、最も成功したブランドとプラットフォームだけが実現できる。だがOhi(オヒ)がある。

Ohiは昨年、Ben Jones(ベン・ジョーンズ)氏が創業した。小規模なブランドにAmazonレベルのスピードを提供することでeコマースをもっと身近にすることが使命だ。同社は11月17日、Flybridge Capital Partnersがリードする275万ドル(約3億円)のシードラウンド完了を発表した。

Ohiは貸主と提携して、通常商業用施設またはオフィス向けに賃貸するスペースを主要都市における小型倉庫に変える。同社は3か月という短い期間で柔軟に貸し出すことで、D2Cブランドが在庫を保管し、商品の即日または翌日配達を可能にする。Ohiは倉庫での集荷と梱包に1099人の従業員を抱え、宅配ではPostmatesとDoordashと提携している。

Ohiは本格的なプラットフォームを目指しており、荷物の量に応じて貸主に支払う計画だ。今のところは貸主と伝統的なリース契約をを結んでおり、同社のユーザーとなるブランドが増えるまでは借りたスペースで財務的リスクを負うことになる。

Ohiは、プラットフォームへのアクセスフィーを月額固定でブランドに請求する。月々750ドル(約8万円)からだ。高額プランでは、在庫とロケーションのマッチングを可能にするプレミアムインテリジェンス機能やより広いスペースが利用できる。集荷や梱包などの作業料金は1個あたり2.5ドル(約270円)。

ジョーンズ氏によると、一般的に宅配の方が倉庫作業よりコストが高く、即日出荷は1個あたり50ドル(約5500円)以上、即日の集荷梱包は1個あたり10ドル(約1100円)ほどかかる。Ohiは、自社の保管スペースと、集荷・宅配サービスのネットワークを使用して即日および翌日配達の価格を下げ、Amazonに対抗できると考えている。

Ohiは自社のプラットフォームによって、即日配達の価格を下げること以上のことができると確信している。顧客に即日または翌日配達のオプションがあるブランドでは、注文キャンセルがより少ないという。

ブランドの物流を請け負うことでデータが収集できるため、場所と商品カテゴリーに基づき需要予測が可能になる。ブランドが自社の顧客そのものや、特定のカテゴリーの商品を買う顧客を深く理解するのを、Ohiが支援できる。「事業環境には勢いがある」とジョーンズは言う。「我々と話すブランドはみんな、これが未来の姿だと理解している」。

ジョーンズ氏がOhiのアイデアを思いついたのは、背中に重傷を負い、簡単に歩き回ったり物を運ぶことができない状態が1年以上続いた時だ。何をするにもeコマースのみが選択肢である状況に追い込まれた。注文の多くは配送に3〜5日を要し、その間は必要なものが届くのを待っていた。同氏は、ブランドとその顧客が即日および翌日配達の利便性を享受できるサービスについて調べ始めた。そしてOhiが生まれた。

Ohiは現在、ニューヨークのマンハッタンとブルックリンでサービスを提供しており、今週ロサンゼルスでも始める。「現在の最大の課題は、ミスなく迅速に事業を拡大すること」とジョーンズ氏は言う。「一対多の物流を扱うソフトウェアほど単純ではない。我々は実際にブランドの在庫を保管しており、ビジネスを複雑にする物理的な側面がある。ミスをせずに効率的に事業を拡大することが最大の課題の1つだ」。

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(翻訳:Mizoguchi)

アリババが物流子会社のCainiaoに約3600億円増資

Alibaba(アリババ)は、2年前に過半数の株式を取得した物流会社のCainiao(ツァイニャオ)の持ち分を増やす。11月8日に233億元(約3600億円)を追加投資し、Cainiaoへの持ち分を51%から63%に引き上げると発表した。

アリババは声明で、今回の資金調達ラウンドでCainiaoが発行する新株を引き受けると同時に、既存株主からも持ち分を取得すると述べた。Cainiaoは、中国の特にeコマース分野に組織的な物流をもたらすことを目的に、2013年にアリババが共同創業者の1社となって設立された。現在Cainiaoは、アリババの中国での物流ニーズの大半を担っている。

9月に終了した四半期に6億8000万ドル(約740億円)の売上高を計上した。eコマースプラットフォームのTaobaoやTmallを配送や倉庫などの物流面で支援している。Alipayが決済面を支援しているのと同様だとアナリストらはみる。

百貨店のオーナーであるIntime Group、コングロマリットのFosun Group、その他多くの物流会社もCainiaoの株式を所有している。

2017年にアリババがCainiaoへの出資比率を47%から51%に引き上げた際、物流事業拡大に向け5年間で1000億元(約1兆6000億円)以上投資することを明らかにした。アリババは近年、国内の物流部門への関与を強化している。同社は今年初め、STO Expressの約15%の株式を取得した。年初時点でアリババは、ZTOの約10%、YTOの11%、Best Logisticsの27.9%も所有していた。

アリババは昨年、速達便と物流がeコマース企業にとって非常に重要だと述べた。同社によれば、昨年、国内のeコマース企業から507億を超える小包が配送された。

画像クレジット:Visual China Group / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

“置き配”は再配達率を減らす救世主になるか、置き配バッグ「OKIPPA」が3.5億円調達

スマホアプリ連動型の置き配バッグ「OKIPPA」を展開するYperは4月24日、ニッセイ・キャピタルとみずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資により3億5000万円を調達したことを明らかにした。

同社にとっては昨年ニッセイキャピタルから5000万円を調達して以来となる、シリーズAラウンドという位置付け。調達した資金を活用してバッグ量産体制の整備と人材採用、経営体制の強化を進めながら国内における再配達率の改善を目指していく。

アプリ連動型の「置き配バッグ」を展開

過去に何度か紹介しているけれど、OKIPPAは狭いスペースでも手軽に活用できる“簡易的な宅配ボックス”のような置き配バッグだ。普段は手のひらサイズに折りたたむことができ、設置するための工事も不要。玄関口に収納したバッグをかけておけば置き配を利用できる。

バッグの最大容量は57リットルで耐荷重は13kg。拡げると割と大きな荷物も入れることができ、撥水加工も施されている。盗難が心配なユーザー向けに、アプリのプレミアムプランとして東京海上日動と共同開発した置き配保険も展開済みだ。

またバッグ以外のプロダクトとして、YperではOKIPPAと連動したスマホアプリを手がけている。

このアプリではバッグに荷物が預入された際に通知が届く仕組みになっているほか、ヤマト運輸や日本郵便など配送会社5社に再配達依頼ができる機能、Amazonや楽天を含むECサイトで注文した商品の配送状況を追跡できる機能などを搭載。バッグを持っていないユーザーでも荷物管理用のアプリとして単体で使うことが可能だ。

今回Yperでは同様の特徴を持つ「荷物管理/荷物管理Lite」を吸収合併し、「荷物管理OKIPPA」としてアプリのリニューアルを実施。荷物管理/荷物管理Liteを開発していたチームもYperの開発体制に加わり、さらなる機能拡充と利用者数の拡大を目指していく。

なおOKIPPAの概要や開発背景については以前詳しく紹介しているので、そちらも参考にして頂ければと思う。

複数社が置き配サービス開始、置き配検討会もスタート

「この1年だけでも置き配を取り巻く環境が大きく変わってきた」——。Yperで代表取締役を務める内山智晴氏は2018年から2019年にかけての置き配市場についてそう話す。

同社では最初のプロトタイプを翌年2月に開発した後、4月にクラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げ、9月下旬から一般販売をスタート。現在OKIPPAバッグの累計販売数は全国で1万個を突破しているという。

昨年4月にMakuakeで実施したクラウドファンディングプロジェクトでは、目標を大きく上回り、1800人以上が参加(2000個以上が売約)した

開発当初に置き配サービスをやっていたのはYperとファンケルぐらいだったそうだが、そこから昨年6月に楽天が自社サービス内で置き配に対応。今年2月にはAmazonが試験的に一部エリアで置き配を指定できるようにしたほか、日本郵便も3月からサービスを始めた。

置き配に注目が集まる背景にあるのは再配達率の高さだ。国土交通省の発表では2018年(平成30年)4月期の宅配便再配達率は約15.0%。この数値を2020年度には13%程度まで削減することを目標に掲げている。

近年この課題を解決する有力なソリューションとして注目を集めてきたのが「宅配ロッカー(宅配ボックス)」だったわけだけれど、現時点で十分に普及しているとは言えず、これのみで再配達を劇的に減らすのは難しい。そこで新たな打開策として置き配への関心が高まっているわけだ。

それを象徴するように、3月には国交省と経産省が再配達削減検討に向けて「置き配検討会」を新設。検討会の委員名簿にはアスクルやアマゾンジャパン、日本郵便、楽天、ZOZOなどと並んでYperの名前も含まれている。

「今まではそもそも『置き配』とは何か、明確な定義やルールもなかった。国としてその環境の整備を進めていく検討会に委員として参加できるのは大きい。自分たちとしては当初からOKIPPAを『置き配のインフラ』にすることを目指してやってきた。置き配自体が国主導でスタンダードなものになって行けば、配送会社も積極的に検討しやすくなるし、OKIPPAをどのように活用するか議論もしやすくなる」(内山氏)

ECヘビーユーザーをターゲットにまずは100万個設置へ

Yperでは昨年12月に日本郵便と共同で、OKIPPAによる再配達削減の効果を検証するための実証実験を実施した。この実証実験は東京都杉並区の1000世帯にOKIPPAを無料配布し、約1ヶ月の期間に渡って再配達率への影響を調査するというものだ。

期間内に約6000個の宅配物が配送され、参加者の不在率は約51%だったそう。同実験ではこの51%に当たる約3000個の宅配物を「潜在再配達個数」とし、その内OKIPPAを活用することで受け取れた荷物(OKIPPA受取個数)が占める割合を「再配達削減率」として算出した。

そのロジックに基づくと、週ごとの結果では最大で再配達率を61%削減。トータルではOKIPPAを通じて1744個の荷物を受け取ったことになり、約57%の削減に繋がった。

「OKIPPAのメインターゲットはECサイトで週1回以上買い物をするようなヘビーユーザーで、かつ自宅に宅配ボックスが内容な人たち。彼ら彼女らは一般の消費者に比べて年間で3~4倍ほど荷物を受け取る機会が多く、その人たちに置き配の選択肢を提供できれば再配達率を6割以上削減することも可能だと考えている」(内山氏)

そのためにはそもそもバッグがしっかりと行き届いて使われる状態になっている必要があるし、配送員への認知の拡大なども含めてインフラとして整備される必要もある。内山氏によるとコアのターゲット層がだいたい200万人ほど全国にいると試算しているそうで、当面はその約半数に当たる100万人への提供を目標にしていくという。

現在の1万個から100万個はなかなか簡単ではないようにも思えるが、バッグの普及に関してはすでに複数の施策を始めているようだ。

たとえば消費者に直接販売するだけでなく、事業者と組んでエンドユーザーに無料配布する取り組みを実施。東京電力グループのPinTや建設会社のオープンハウス・アーキテクト経由で、それぞれのサービス利用者などに無料でOKIPPAを提供するB2B2Cモデルにも力を入れている(事業者がバッグを購入しユーザーに提供する仕組み)。

またOKIPPAに限らず置き配サービスの障壁となるオートロックマンション向けにも、それに対応したシステムを開発中だ。

「ドライバーは減っていっている一方で、宅配物の数は増えている。特にB2Cの宅配物の増加がネックで、そこにどうやって対応していくのかは大きな社会課題だ。配送の無駄をなくし配送効率をあげることは不可欠で、置き配は日本の治安の良さを活かした配送方法としてインフラ化できる可能性がある」(内山氏)

OKIPPAバッグが普及すればECサイトなどでOKIPPAの配送プランを作り、コンビニの宅配便取次手数料のようなモデルでのマネタイズも検討していきたいとのこと。今回調達した資金を用いて、月産数十万個単位で生産可能な量産体制を整備し、最低限のインフラを整えるべく事業を加速させるという。

「再配達は誰にとっても無駄なもの。ユーザーにとってはストレスだし、配送会社にとっても負担が大きい。それにも関わらず今はそこに対してコストを払っている。OKIPPAを通じて再配達を減らすことで、誰も損しない形で、サービスとしてもしっかり成長できるような仕組みを目指したい」(内山氏)

Yperのメンバー。左から3人目が代表取締役の内山智晴氏

課題多き物流業務をITで効率化、5000社が使うオープンロジがシニフィアンとタッグで体制強化へ

左からシニフィアン共同代表の小林賢治氏、同じく朝倉祐介氏、オープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏、シニフィアン共同代表の村上誠典氏(Photo credit : 疋田千里)

近年Eコマースが急速に発展する一方で、それを支える基盤とも言える物流業界では人手不足や非効率なオペレーションなど多くの課題が浮き彫りになっている。今まではマンパワーを投下することでなんとか対処できていたことも、人手が確保できなくなれば維持できなくなるかもしれない。

だからこそ、テクノロジーを活用した解決策への期待も大きい。自動運転技術やロボティクスを活用した配送や倉庫業務の自動化、ビッグデータを用いたラストワンマイル配送の最適化など様々なアプローチでこの業界に挑むスタートアップが国内外で登場してきている。

オンライン上で物流業務をアウトソーシングできるプラットフォームを展開するオープンロジも、課題多き物流業界をITで変えようとしている1社だ。2014年にスタートした「オープンロジ」は年々着実に導入社数を増やし、今では5000社を超える企業が活用する物流基盤になっている。

そのオープンロジは2月7日、さらなる事業成長を見据えてシニフィアンと資本業務提携を締結したことを明かした。

シニフィアンは元ミクシィ社長の朝倉祐介氏、元ディー・エヌ・エー取締役の小林賢治氏、元ゴールドマン・サックスのバンカーである村上誠典氏が共同で立ち上げた企業。3人の知見や経験を活かして未上場スタートアップや新興上場企業の経営支援を行っており、直近ではFOLIOVISITS Technologiesとも資本業務提携を結んでいる。

今回シニフィアンではオープンロジへ資本参加し、これからの事業拡大や先々の海外展開の支援も見据えて、組織体制や管理体制の強化、資本政策のサポートなどを実施していく計画だ。

面倒な物流業務をオンライン上で手軽にアウトソーシング

オープンロジは商品の入庫から在庫の管理・保管、出庫までを含めた一連の物流業務をオンライン上で手軽にアウトソーシングできるプラットフォームだ。

一般的に倉庫会社と契約する場合、そもそも導入までに発生する手間と時間がネックになる。問い合わせや個別の見積もり後にシステム調整などの作業が発生し、1ヶ月以上かかることも珍しくない。加えて日々の出荷作業や在庫確認などの物流業務は、特に中小のEC事業者にとって“メインの業務ではないにも関わらず”大きな負担となっていた。

オープンロジではこのような「物流のめんどくささ」を、倉庫事業者とのネットワークと独自開発したシステムを軸に解消する。

時間のかかる打ち合わせや見積もりは一切なく、会員登録さえすればすぐに1点から物流業務のアウトソーシングを依頼できる仕組みを構築。商品情報の入力、入庫依頼の作成を済ませて倉庫に商品を送れば、手元のスマホやPCからいつでも在庫管理や出庫依頼が可能だ。

低価格でわかりやすい料金体系も特徴のひとつ。オープンロジはスペース単位ではなく、預けた商品1点ごとに料金を支払う従量課金制を採用している。倉庫の利用料金は一律18円の入庫料に、商品サイズごとの保管料を加えたもの。配送時には別途サイズごとの配送料を払えばOKだ。

オプションとして海外配送などにも対応。初期費用やシステム利用料は必要ない。

シンプルでわかりやすい料金体系はオープンロジの特徴のひとつだ

直近の1年ほどではECサイトとのAPI連携を含めたユーザー体験の向上に繋がる施策や、海外展開に向けた取り組みにも力を入れてきた。

「Yahoo!ショッピング」や「Shopify 」、ECサイト一元管理システムの「GoQSystem」などとのAPI連携を通じてEC事業者がより便利に使える環境を整備。「STORES.jp」とは業務提携を結び、利用者向けに商品保管・配送代行を行う「倉庫サービス」も提供している。

API連携以外でも、オフィスや店舗にも在庫を抱えているユーザー向けにスマホ向け在庫管理サービスをリリース。日本のEC事業者の海外向け販売(越境EC)をサポートする目的で国際転送サービスのイーバイグローバルとはパートナーシップも締結した。

将来的な海外展開に向けた取り組みとしてはインドネシアで物流プラットフォームの実証実験を実施しているほか、ジェトロの支援プログラムを通じて中国・深センでの展開も見据える。

オープンロジ代表取締役の伊藤秀嗣氏いわく「事業者が抱える物流業務の課題はグローバルで共通するもの」であり、例えばインドネシアなどは日本以上にアナログな面や、倉庫会社・配送会社の効率化が進んでいないような部分も多く、確かなニーズを感じたという。

荷主だけでなく倉庫会社もエンパワーする仕組み

冒頭でも触れた通り、現在オープンロジの導入社数は5000社を超える。当初からのメインターゲットである中小事業者を中心に、近年は大規模な企業も増加。C2Cの小口取引や購入型クラウドファンディングの商品発送時での利用が進んでいるほか、越境ECや海外ユーザーなど国を超えた取引も活発だ。

「従量課金制で、なおかつスケーラブルな仕組みである点に対して特に反応が良い。売り上げが上がって規模が大きくなるほど物流業務の負担も大きくなり、事業を成長させる上での足枷にもなる。自前でやるのに限界を感じて頼っていただけるケースも多い」(伊藤氏)

伊藤氏によるとアメリカなどでは物流業務をアウトソースすることも珍しくないそうだが、日本ではまだその文化がスタンダードにはなっていない。2014年からサービスを続ける中で徐々に口コミが広がり、近年ようやく風向きが変わり始めてきたという。

サービスの成長とともに変化が起こっているのは荷主側だけではない。オープンロジのビジネスにおいては倉庫会社とのネットワークが不可欠になるが、この倉庫会社においても利用の仕方が変わってきている。

「最初はシェアリングのような文脈で、(オープンロジを通じて)倉庫の空いているスペースを有効活用できるというような形でスタートしていたが、収益性が良いのでだんだんとオープンロジ用にスペースを借りたり、拡大したりといった例が増えてきた」(伊藤氏)

オープンロジには倉庫のシェアリングの要素もあるが、単なるマッチングビジネスとは異なる。システムを活用した効率化や、これまでのナレッジを活かした最適なオペレーション設計など裏側の仕組みが強み。荷主だけでなく倉庫会社、配送会社それぞれの負担を軽減できることが付加価値であり、それがサービス拡大にも大きく貢献してきた。

「物のEC化率が今6〜7%と言われているが、これが2倍に成長する可能性は多いにある。同じようにドライバーやスタッフの数を2倍にできるかというと、そんなに簡単にはいかない。倉庫のロボット化なども注目を集めているが、まだ費用対効果が合わず人力で対処せざるを得ないのが現状だ。各プレイヤーが自助努力するだけでは限界があるからこそ、自分たちが荷主と配送の間に立っていろいろなオペレーションを一元化して『物の流れ』を変えていく必要がある。ラストワンマイルの配送の手前、上流工程のオペレーションを効率化するだけでも、配送側の負担を大きく減らせる」(伊藤氏)

シニフィアンの小林氏も「どこかのプレイヤーをディスラプトするというのではなく、荷主も倉庫会社、配送会社もエンパワーメントする仕組みがユニーク」だと話す。

今後も国内でEC化が進んでいくこを踏まえると、少なくとも物流ニーズが今より減ることは考えにくい。一方で業界にどんどん人が増えるイメージもなく「純粋なマンパワーで何とかすることもできないからこそ、各プレイヤーを巻き込んで上流から改善していくことが求められる」という。

「日本はEコマースの成長ポテンシャルがあるのに、物流が今の状態のままだと『物流がネックでEコマースが伸びませんでした』ということが起きてしまう。データ、テクノロジーを活用してきちんと最適化することが必要で、かつ柔軟性の高いサービスとして荷主に提供することが不可欠。すでに多くの企業が導入していることからも確実にニーズを掴んでいると考えている。(オープンロジとして)事業の急成長に伴い会社も一気に拡大するフェーズであり、今の打ち手が今後に大きく影響するからこそ、そこを支えていきたい」(小林氏)

まずは国内で絶対的な存在目指す

小林氏によると今回シニフィアンではSPV(Special Purpose Vehicle)と呼ばれるスキームを用いてオープンロジの株式を取得。すでにSPVを通して一定数の株式を保有しているほか、同ビークルを通じて追加の取得も計画しているという。

SPVは特定のプロジェクトやスタートアップに投資する目的で専用のファンドを組成し、そのファンドを通じて資金を提供する仕組み。国内では500 Startups JapanがSmartHRに15億円を出資した例などがあるが、この際は500 Startups Japanが組成したファンドに、東京海上日動火災や日宣らが参加した。

出資を受けるスタートアップとしては複数の投資家とのコミュニケーションに膨大な時間をかけずにすみ、外部の投資家も専用のファンドを介して急成長中の事業に出資できるのがSPVの特徴だ。

小林氏によるとSPVを用いた出資はすでにファーストラウンドをクローズ済みとのこと。今後はセカンドラウンドを予定していて、トータルの出資額は数億円前半を計画しているという。

オープンロジではシニフィアンのサポートも受けながら組織体制を強化し、今後国内外で物流プラットフォームをさらに拡大していく計画。「国内のマーケットだけでもかなりの規模になる。課題も多くやれることもたくさん残っていて、自分たちの地名度もまだまだ低い」と伊藤氏が話すように、まずは国内において絶対的な存在を目指す。

「誰もが安心して使える効率的な物流ネットワークを提供することでデータを軸に物の流れを整えて、物流から商流を変えるようなプラットフォームを目指したい」(伊藤氏)

オープンロジは2013年の創業。これまで2015年3月2016年5月2017年7月に資金調達を実施していて、累計の調達額は10億円に上る。サービスローンチ直後の2014年11月にはTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルに参加し、審査員特別賞なども獲得した。

国際物流クラウド「Shippio」がANAと実証実験、航空輸送にもサービス展開へ

B2B国際物流のクラウドサービス「Shippio」は2月6日、ANAグループで国際輸送サービスなどを担うOCS、および航空物流のANA Cargoと共同で、国際航空貨物輸送のプロセス電子化・簡易化に取り組む実証実験を開始すると発表した。実施は2018年度中を予定している。

Shippioは、ウェブ経由で国際輸送の見積もりとドア・ツー・ドアの輸出入手続きができるプラットフォームで、2018年12月にプロダクトを正式リリースした。これまで海上輸送を中心にサービスを開発・提供してきたが、実証実験により、航空貨物にもサービスを展開。まずは、荷主が、航空貨物輸送の価格をスピーディに把握できる仕組みや、最適な輸送手段の選択、輸送貨物の動静管理ができるツールの検証・提供を図っていく。

また今後、実証実験のステップが進んだところで、輸出入データの蓄積と分析により、データを活用したさらなるサービス開発や、デジタルフローの確立、3社間でのデータ連携などを進めることも視野に入れている。

Shippio代表取締役の佐藤孝徳氏は、「海上輸送と航空輸送では、輸送スピード、価格、運ぶ荷物の種類も異なっている。これまでは海上輸送のイメージが強いShippioだったが、大手航空会社と組むことで国際航空輸送の分野にも取り組んでいく」とコメント。「物流量の増加や労働人口減少を背景とした物流×テクノロジーによる効率化が加速することが予測される中、確かな実績とオペレーションを持つANAグループと、最新のロジスティクステクノロジーを提供する我々の取り組みが、よりよい日本、そして世界の国際物流の一助になるようチーム一同尽力する」としている。

また、Shippioのサービスを通じて荷主から依頼のあった海外向け航空貨物を、ドア・ツー・ドアで発送手配するOCSは、「物流とテクノロジーの融合は当社の重点分野であり、今後の物流業界を大きく変えるチャンス」として「顧客への新たな価値の提供を主眼にこの実証実験に参画した。当社の国際物流におけるノウハウと海外160以上の拠点をフルに活用し、協働していきたい」(OCS 経営企画部 部長 田之上圭克氏)とコメントしている。

貨物の空港間輸送を担当するANA Cargoは「サプライチェーンのさらなるグローバル化や越境ECの拡大などにより、今後も航空貨物需要が大幅に拡大することが想定される。デジタリゼーションであらゆる顧客に、より身近に利用される仕組みが必要だ」として、「今回の取り組みを通し、Shippioのサービスをしっかりとサポートしていきたい。多くの顧客に同サービスを利用してもらえれば」(ANA Cargo 業務企画部 副部長 湯浅大氏)とコメントを寄せている。

誰もが簡単に輸出入できる世界を目指す「Shippio」正式版リリース、1.9億円の調達も

B2B国際物流のクラウドサービス「Shippio」は12月3日、第二種貨物利用運送事業者の許可を取得し、サービスを正式版としてリリースしたことを発表した。これにより、既存のウェブ上の見積もりと輸送管理機能に加え、物流事業者として輸出入の荷主から「荷物を預かって運べる」サービスとなる。

またShippioはプロダクトの正式リリース発表と同時に、プレシリーズAラウンドで1.9億円の資金調達を完了したことも明らかにしている。

2016年6月設立のShippio(旧社名サークルイン)は同年8月にアクセラレータープログラム「Code Republic」に採択され、YJキャピタル、East Venturesからの出資を受けた。その後、500 Startups Japan、YJキャピタル、East Venturesを引受先として、2017年5月に数千万円規模の資金調達を実施

今回の資金調達はそれに続くもので、500 Startups Japanグロービス・キャピタル・パートナーズDBJキャピタルYJキャピタルEast Venturesのほか、個人投資家2名が第三者割当増資の引受先となっている。

Shippioは設立以来「輸出入の取引をもっと身近に」することを目指して、国際物流手配の自動化、クラウド化に取り組んできた。

Shippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏は「物流はサプライチェーンが長く、関わるプレイヤーが多い業界」といい、前回調達からの動きについて「デジタルによる効率化をどこからスタートする(のがより効果的)か、検討してきた」と振り返る。

国際物流のプレイヤーは、出荷を行うシッパー(荷送人・荷主)、実際の運送を行うキャリア(運送事業者)、そして荷主から荷物を預かり、キャリアを手配して、シッパーとキャリアの間で運送を取り次ぐフォワーダー(貨物利用運送事業者)の大きく3つに分かれる。

Shippioは2017年8月、フォワーダー向けにオープンベータ版を公開。2018年6月には輸出入の荷主向けにも「WEB取次サービス」をリリースし、見積取得・依頼機能の提供を開始した。

ベータ版ユーザーは、中国、東南アジア、ヨーロッパとの間で、EC商品や家具、加工食品、日本酒、ワインなどさまざまな商品の輸出入取引を、海上・航空貨物の両方で行っている。深圳の工場から部品を指定の倉庫へ運送したり、フランスからワインを輸入したり、といった例があるそうだ。

ベータ版運用の感触について、佐藤氏は「利用者にはスタートアップも多い。すると小口貨物での利用が多いので『航空貨物だと高そう』といって船便にすることも多いのだが、比べてそうしているわけではなかったりする。船便会社も航空便のレートを知らないし、航空便の会社も船便のレートは知らない。Shippioは両方の数字を持っているので、本当に最適な輸送ルートの提案ができた」と話している。

また「国をまたぐ輸送を誰に頼めばいいのか、わからないというユーザーも多く、間口を広く持つのは重要だなと感じた」とも述べている。

このベータ版から、「間口を広く」して、誰もが輸出入の運送を頼める正式版サービスができるまでに、Shippioにはひとつ壁があった。Shippioを各国との輸出入手続きをドア・ツー・ドアで行えるサービス、すなわち「荷物を預かって運べる」サービスとするためには、フォワーダー(貨物利用運送事業者)としての許可を国土交通省から得る必要があったのだ。

佐藤氏によれば「スタートアップに外航運送の領域で免許を与えるという事例が、国土交通省にとっても新しいものだった」とのこと。「いろいろとヒアリングや交渉、調整を進めてきた」結果、第一種貨物利用運送事業者の登録と第二種貨物利用運送事業者の許可取得ができたという。

既存の見積もり取得、輸送管理のプラットフォームとしてだけでなく、物流事業者として実際に輸出入貨物が扱えるようになったことで、ユーザーはShippioに輸送依頼の発注ができ、また同じプラットフォーム上で輸出入の煩雑な手続きや管理を一元化することが可能になった。

輸送手段(船舶・航空など)の選択画面。

ステータス管理画面。

海外では、テクノロジーを活用した国際物流「デジタルフレートフォワーディング」のサービスとして、Flexportなどが既にあるが、今回の許可取得で「日本でも、見積もりからオペレーションまで一貫して、デジタルフレートフォワーディングのサービスを提供することができるようになった」と佐藤氏は話す。

調達資金の使途について、佐藤氏はその「オペレーション」の強化を進めると述べている。「物流事業にはオペレーションが必要。例えば船便やトラックの手配、輸出入業務に不慣れな顧客への対応など、数多くの業務がある。デジタルフレートフォワーディングの初期立ち上がりに必要な体制を作っていく」(佐藤氏)

また、プロダクトとしてのShippioについてもさらに機能を拡充していく、と佐藤氏。「安心してウェブで法人向けの貨物を国際輸送できる仕組みづくりを行う」と話している。「物流は建築業などと似ていて、大マーケットである一方、関係者が多いためにデジタル化が進まなかった分野だ。人手不足が進んでいる中で、やり方を変えていかなければ」(佐藤氏)

Shippioのメンバーと投資家。前列左から3人目がShippio代表取締役社長の佐藤孝徳氏。

中国のGeek+が倉庫と物流向けロボット開発のために1億5000万ドルを調達

ロボットならびに人工知能の一般的な応用の中で、もっとも直接的に役立っているもののひとつは、倉庫やそのほかの環境の中での無人ロボットの利用である。そこでは荷物を整理したり、物をA地点からB地点まで移動したりといった、繰り返し作業に関わる人間の作業が置き換えられている。さて、このたび北京に拠点を置くロボットスタートアップのGeek Plus(別名Geek+)が、製品開発、販売、そしてカスタマーサービスに投資して成長の機会を掴むために、1億5000万ドルを調達したことを発表した。

Geek Plusによれば、これは物流ロボットスタートアップが行った調達ラウンドの中で過去最大のものであると言う(実際、PitchBookによれば、これに先立つ最も多額の物流用ロボット向けラウンドは、ボストンから出てきたLocus Robotics向けの、2500万ドル強のものだった)。

今回のラウンド(シリーズB)はWarburg Pincusによって主導され、Volcanics VentureやVertex Venturesなどの他の株主たちが参加した。同社の評価額は公表されていないが、私たちは質問を送っているので、もし何かがわかったらお知らせする予定だ。Warburg Pincusは、2017年に行われた前回の6000万ドルのラウンドも主導した。今回でGeek Plusは、2015年の創業以来およそ2億1700万ドルを調達したことになる。

この大規模なラウンドの理由の一部は、同社によれば、事業が順調に成長していて、今年は5倍の成長が見込めること、そして海外はもちろん、中国国内の巨大な市場に資本投下を行いたいからだ。

これまで、Geek Plusは、中国香港台湾日本オーストラリアシンガポールヨーロッパ、そして米国の100以上のロボット倉庫プロジェクトに5000台以上のロボットを供給してきたと語っている。現在の顧客には、AlibabaのTmallやアジア発のVIP.comなどがある。

「Warburg Pincusや他の株主たちによる投資は、Geek Plusの成果と、Geek Plusの将来性に対する、全幅の信頼を示すものです」と発表で語るのは、Geek Plusの創業者兼CEOのYong Zhengである。「AIとロボット技術を通じて、さまざまな業界の強化に力を入れていきます。今年はビジネスを5倍以上成長させることができると思います…引き続き顧客中心であり続けます。そしてAIならびにロボットテクノロジーをサプライチェーンニーズへシームレスに統合することを通して、顧客の皆さまのために価値を創造して行きたいと考えています」。

独自の物流オペレーションを改良したり、他から使われる独立したビジネスとして構築したりするために、物流ロボットを掘り下げ続けている他の多くの企業がある。それらの企業はGeek Plusにとって、競合相手であり、潜在的なパートナーであり、あるいは買収してくる相手かもしれない。

そうしたリストのトップに位置するのはおそらくAmazonだろう。同社は2012年に自身の倉庫ロボットを開発するために、ロボットスタートアップのKivaを7億7500万ドルで買収した。それ以降、Amazonはロボットオペレーションを広いユニットに拡大してきた。それはAIとロボットを倉庫オペレーションに導入したいと考える他の企業のニーズを満たすためのロボットを、AWSやフルフィルメントのような基本サービスのやり方に従って、製品化することが可能だろう。

一方、InViaFetchは、最初から第三者に販売するための技術を構築することに集中している2社であり、それぞれサービスとしてのロボット技術とロボットそのものを扱っている。

こうしたロボットの中には、倉庫から出て、ラストマイル配送シナリオに向かっているものもある。こうしたより広い市場全体の価値を100億ドル規模と見積もる者もいる。

Geek Plusは、これまでに、ロボットを利用すると思われる様々なシナリオをカバーする製品を開発している。例えば人間によるピックアップを助けるシステム、整頓し移動するシステム、そして無人フォークリフトなどだ。

「昨年Geek+に初めて投資して以来、私たちはGeek+の急速な成長、特にそのビジネスの拡大と国際化に対して大きな感銘を受けて来ました」と語るのはWarburg PincusのエグゼクティブディレクターであるJericho Zhangだ。「テクノロジーはサプライチェーンに革命をもたらしています。Geek+は、従来のサプライチェーンで苦労していたポイントを解決するために、ロボット、ビッグデータ、AIなどの最先端技術を組み合わせることができる、先進的なテクノロジー企業の1つなのです。より多くのデータを蓄積し、アルゴリズムの最適化を続け、他の産業に拡大して行くにつれて、Geek+がさらにこの分野の革命と革新をリードし続けてきれるものと、私たちは確信しています」。

全体として、昨年ロボット業界には多額の投資が何件も見られた。製造業向けに力を入れているBrightMachinesは、10月に1億7900万ドルを調達した。これまでで最も大きかったロボットスタートアップのベンチャーラウンドは、Ubtechの8億2000万ドルである。これもまた中国の消費者ならびに教育向けロボットスタートアップであり、調達は今年の5月に行われた。

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(翻訳:sako)

「サービスとしてのロボット工学」で新ビジネスモデルを開拓するinVia Robotics

inVia Poboticsの面々は、ロボットを大量に販売するための、新しいビジネスモデルを構築する目指して会社を立ち上げたつもりではなかったのだが、それはまさに、彼らが今、行っていることなのかも知れない。

サザンカリフォルニア大学のロボット工学プログラムを卒業したLior Elazary、Dan Parks、Randolph Voorhiesの三人は、即座に人の注目を集められるアイデアを模索していた。

「私たちの目標は、すぐにでも経済的な意味を生み出せるものを立ち上げて、運用することにありました」と、同社の最高技術責任者Voorhiesはインタビューに答えて言っていた。

鍵となったのは、彼らが見てきた過去のロボットメーカーの失敗から教訓を学ぶことだった。

iRobotは早くから成功していたが、人と一緒に仕事を行う一般消費者向け、または協働ロボットは、大きな市場からの興味を惹くまでに至っていない。

 

 

ロボット工学業界のリーダーたちによって設立された伝説の企業Willow Garageは、Voorhiesとその仲間たちが卒業するころに事業を停止してしまった。有名なロボット研究企業のひとつ、Boston Dynamicsは、同じころグーグルに買収された。この検索エンジンの大手企業は、6カ月の間に浮かれ騒ぐように8つのロボット工学企業を買収している。

「その最中に、その様子を見ていた私たちは、おい、失敗したロボット工学企業がこんなにあるぞ! と話していました。そして、どうしてこんなことになるのかを、自分たちに問いかけました」とVoorhiesは振り返る。「私たちが見てきたハードウエア企業の多くは、こんな計画でやっていました。ステップ1:すごくクールなロボットを作る。ステップ3:アプリのエコシステムが発展して、人々がたくさんのアプリを制作するようになり、ロボットがめちゃくちゃ売れる。しかし、ステップ2をどうやるか。それは誰も知りませんでした。つまり、ロボットの商品化です」

そこで3人の共同創設者たちは、いち早く市場に打って出るためのアイデアを探した。

そして得られた考えは、高い移動で品物を運べるロボットの開発だった。「私たちは、移動式の6自由度のアームを開発しました」とVoorhies。

しかし、アームの製造は複雑で、部品代は高く、ロボットが使われる環境によっては、その順調な稼働を妨げる要素の種類が多すぎた。結局、彼らは、ロボット工学は、整備された特定の環境でこそ、大成功が叶うのだと気がついた。

「環境はあまりにも予測不能で、それに対応するには、やるべき仕事が手に負えないほど膨大になることが、すぐにわかりました」と彼は言う。

Parksがそこで、協働ロボットがもっとも楽に働ける、整備された環境を分析して、ホワイトペーパーを作成した。それを見れば、そうした環境は倉庫以外にないことが明らかだった。

 

 

2012年3月、アマゾンも同じ結論に達し、Kiva Systems7億7500万ドル(約850億円)で買収し、Kivaのロボット軍団を、世界中のアマゾンの倉庫と配送センターに展開した。

「Danは、Loiと私のためにホワイトペーパーをまとめてくれました」とVoorhiesは言う。「そして大きく見えてきたのは、eコマースの物流です。床はたいていがコンクリート張りで、傾斜もほどんどなく、そこで主に人が行っている作業は、品物を棚から下ろして、別の場所に置くというものです」

アイデアが固まると、技術者のVoorhiesとParks、そしてすでに2つの企業を経てきた筋金入りの起業家であるElazaryの三人は、プロトタイプの製作に取り掛かることにした。

アマゾン以外の倉庫や配送施設のほどんどは、品物の保管と回収を自動的に行う自動倉庫システムを利用していると、Voohriesは言う。その自動化システムとは、外観も機能も巨大な自動販売機のようなものだ。しかし彼によると、こうしたシステムには多額の埋没費用が掛かっていて、柔軟性も適応性も低いという。

しかも、これらの古いシステムは、ランダム・アクセス・パターンや、eコマースを成功に導くための、主に出荷と梱包からなる複合的な命令に対応するようには作られていない。

ところが、埋没費用があるために、倉庫はモデルの変更に積極的にはなれない。そこで、Voorhiesたちが考え出した革新的なアイデアは、流通業者が埋没費用を気にせずに済む方法だった。

「私たちは先行投資をしたくなかったのです。ロボットを設置するだけでなく、それを作る企業を立ち上げる場合でもです」とVoorhiesは話す。「自分たちの力でできることをしたかった。それを有機的に成長させて、一刻も早く勝利を収めたかったのです。そこで私たちは自動倉庫システムに目をつけ、その作業を行う移動型ロボットを作ろうじゃないか、という話になりました」

当初、彼らは、いろいろなロボット開発方法を試した。最初にあったのは、いくつもの異なる品物を運べるロボットと、回収を専門に行うロボットだった。

同社が最終的に決めた形状は、テーブルを上下に動かすシザーリフトを備えた移動式の円盤型の装置だ。テーブルの一端には前後に伸び縮するアームがあり、アームの先端には吸引ポンプが取り付けられている。このポンプで品物の箱を吸着してテーブルに載せ、梱包担当者のところまで運ぶ。

「最初は、品物を個別に積むことを考えていました。しかし、実際に倉庫の人たちの話を聞くうちに、どんな品物も、とにかく特定の箱に入れているということがわかってきました」とVoorhies。「それならもっと楽をしよう。その箱さえ掴めればいいんだからね、と」

この最初のロボットを自力で作ったことで、inViaは、そのビジョンを実現するための2900万ドル(約32億ドル)の資金調達を行った。最近では7月に、2000万ドル(約22億ドル)の投資ラウンドを成立させている。

「eコマース業界の成長が、その要求に応えるための倉庫の自動化をいう需要を、どんどん生み出しています。そうした自動化の需要を満たせるのは、作業の流れに応じて規模を調整できるよう、AIを採り入れた柔軟なロボットです。inVia Roboticsへの投資は、AIがサプライチェーン業界において重要な役割を果たすという我々の信念の現れです」と語るのは、Point72 VenturesのAI投資部門共同責任者のDaniel Gwakだ。Point72 Venturesは、ヘッジファンドで名を馳せた投資家スティーブ・コーエンが設立したアーリーステージの投資会社だ。

配送や物流を行う企業の苦しい現状を考えれば、ロボット工学や自動化技術がきわめて重要な戦略的投資の対象になることや、ベンチャー投資が市場に流れ込んでくることは理解できる。この2カ月間だけで、倉庫や店舗の自動化を目的としたロボットメーカーは、7000万ドル(約77億ドル)に近い新規の資金供給を受けている。これには、フランスのスタートアップExotec Solutionsがつい最近獲得した1770万ドル(約19億円)や、食料品店向けのロボットを開発するBossa Novaの2900万ドル(約32億円)の投資ラウンドも含まれる。

また、Willow GarageやLocus Roboticsの血統を受け継ぐFetch Roboticsなどの倉庫に焦点を絞ったロボットメーカーは、物流サービス会社Quiet Logisticsとつながっている。

「ロボット工学への投資は、当然な流れとして、過去数年に比較して驚くほど伸びています」と、市場調査会社IDCのCommercial Service Robotics(商業サービス・ロボット)研究部長John Santageteは声明の中で述べている。「投資が伸びているのは、その技術を受け入れた市場の作用です。その技術分野は、市場の要求に見合うまでに成長したのです。そしてその将来の展望には、柔軟な自動化技術が含まれているに違いありません。今日の倉庫では、消費者の要求に追いつくために、品物はより速く、より効率的に移動しなければなりません。自動化された移動型ロボットは、スピードと効率性と柔軟性のある自動化を、費用対効果の高い形で実現します」

inViaは、ロボットを販売するだけでは十分ではないと気がついた。倉庫が、inViaのロボットによって実現できる経費節約の可能性を確実なものにするためには、ソフトウエアのプレイブックのページを開く必要がある。道具を売るのではなく、ロボットが行う作業を、サービスという形で提供するのだ。

「お客様は、ロボットの価格はいくらかと聞きますが、それは見当違いです」とVoorhiesは言う。「そいういうことを、考えずに済むようにしたいのです」

inViaと物流企業との間で交わされる契約は、行った作業ごとの単位となっている。Voorhiesはこう説明している。「注文ラインはひとつ(の最小管理単位)です。数に関係なく注文できます。……私たちは、ロボットが品物を取って人のところまで運ぶごとに料金をもらいます。作業を高速化して、使用するロボットの台数が減れば、それだけ私たちは儲かるのです」

大きな違いはないように聞こえるかも知れないが、倉庫ではこうした効率化が重要になると、Voorhiesは言う。「ある人が、35個のパレットを載せられるカートを倉庫の中で押しているとしましょう。私たちがやれば、その人はじっと立っていればよいのです。使えるカートも1台だけではありません。35どころか、一度に70の注文に応えることが可能です」と彼は話す。

楽天物流では、すでにinViaのロボット導入により利益を上げていると、楽天スーパーロジスティクスCEOのMichael Manzioneは話している。

「発送センターで実際に(ロボットが)使われ出したのは、ごく最近です」とManzioneはインタビューに応えて話している。「2月の下旬にこの製品を初めて見て、3月下旬には稼働していました」

Manzioneにとって大きなセールスポイントは、先行投資の必要もなく、ロボットが即座にスケール調整できることだった。「年末休暇のシーズンの計画では、収益が上がる予定です」とManzioneは言う。「去年は人員を2倍に増やしましたが、今年は増やすつもりがありません」

Voorhiesが指摘しているが、倉庫環境で作業員のチームが効率的に働けるように訓練するのは、容易ではない。

「問題は、新らしい人間を入れにくいという点です。倉庫では、本当に真面目な専門家チームが頑張っていて、フォークリフトで品物を運ぶことに喜びを感じています。シフトの中で汗を流して得られるものに、とても満足しているのです」Voorhiesは言う。「そうした専門家チームにも対処できないほど処理量を増やす必要が出てきたとしても、その仕事が熟せる人間を探すのは困難です」

この記事は、inViaの最高責任者Lior Elazaryの名前の綴りを修正して更新しています。

  1. inVia

  2. inVia-at-Hollar

  3. inVia-Robotics_1

  4. inVia-Robotics_1

  5. inVia-Robotics_2

  6. inVia-Robotics_3

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(翻訳:金井哲夫)

ラストワンマイル無人化へZMPが宅配ロボの新モデル発表、デリバリーサービスの実証実験も

自動運転技術やそれを応用した宅配ロボットを開発するZMP。昨日は日の丸交通と都心部で自動運転タクシーの実証実験を開始することを発表していた同社だが、以前から開発を重ねていた宅配ロボットでも新しい動きがあるようだ。

ZMPは7月19日、宅配ロボット「CarriRo Delivery(キャリロデリバリー)」の量産前モデルを発表。同時にこのモデルを活用したデリバリーサービスの実証実験を開始することも明かしている。

冒頭でも触れたように、ZMPでは以前から自律移動技術を応用した宅配ロボットCarriRo Deliveryを開発してきた。荷台部には宅配ロッカーを搭載。カメラやレーザセンサで周囲の状況を360度認識しながら自律走行し、目的地まで荷物を届けられることが目標だ。

今回発表された新モデルは、実サービスに向けてデザインやユーザインタフェースなどをフルモデルチェンジしたもの。幅65cm、長さ95cm、高さ96cmと以前発表されていたモデルよりも小型化されたほか(1月時点のものは幅75cm、長さ133cm 、高さ109cm)、店舗のニーズに合わせて取り替え式のロッカーを採用し、ボックスの数や大きさを選べるようになった。

ちなみにスピードは前モデルと変わらず最大時速6kmだ。

またユーザー用と店舗用でそれそれアプリを準備。ユーザー用アプリでは商品の注文や決済、QRコード読み取りによるカギの解除が可能に。店舗用アプリでは店舗での注文管理や各ロッカーへの商品積込をサポートする機能を盛り込む。

そのほか各ロボットの位置やステータスの管理に加え、緊急時には遠隔操作ができる遠隔監視システムも用意しているという。

ZMPでは7月5日からローソンや慶應義塾大学SFC研究所と協力して、この新モデルを使った実証実験を開始。ユーザが注文から受取りまでをアプリで行い、CarriRo Deliveryが自律走行で届けるという実際のサービスに近い形になっていて、本実験を通じて実用化へ向けた開発をさらに加速させる方針だ。

荷物待ちや再配達のストレスから解放、“置き配”バッグ「OKIPPA」—— 東京海上と盗難保険も開発

「こんなにも多様な商品をネットで買える時代になっているのに、受け取る方法は未だに自宅、コンビニ、宅配ロッカーと少ないまま。もっと新しい選択肢があってもいいと思った」——そう話すのは、置き配バッグ「OKIPPA」を開発するYperの代表取締役、内山智晴氏だ。

置き配という言葉からもぼんやりとイメージできるかもしれないけれど、OKIPPAは専用のバッグを通じて不在時でも自宅の玄関前で荷物を受け取れるサービス。2018年4月からクラウドファンディングサイト「Makuake」で始めた先行販売プロジェクトには約1800人が参加(2000個以上売約済み)するなど、大きな反響を呼んだ。

8月下旬には一般販売も予定しているOKIPPA。それに向けて開発元のYperは7月5日、東京海上日動と共同でバッグ専用の盗難保険「置き配保険」を開発したことを明らかにした。合わせて7月7日より東京23区にて約1ヶ月間の実証実験を実施することも発表している。

不在時でも専用バッグで荷物受け取り、アプリとも連動

近年ECサイトやフリマサービスなどの普及に伴い、宅配物の取扱件数が年々増加している。その中で課題とされているのが再配達率の高さだ。6月25日に国土交通省が発表した資料では、宅配便の再配達率は約15.0%。特に全体を押し上げている都市部(16.4%)において、この数値を下げる方法が求められている。

自宅以外でもコンビニや宅配ロッカーで荷物を受け取ることができるものの、内閣府の世論調査などを見る限りではそこまで使われていないのが現状。これらを補完する新しい選択肢としてYperが提案しているのが、冒頭でも紹介したアプリ連動型の置き配バッグOKIPPAだ。

普段はバッグを玄関口などに吊り下げておき、荷物収納時に地面まで引き下げて使用する。耐荷重は13kgと容量の大きいものも収納できるが、使っていない際には手のひらサイズに折りたためるため余計なスペースをとらないのが特徴だ。

盗難対策として玄関口に固定する部分には専用のロック、内鍵に南京錠を付属。撥水加工の生地、止水ファスナーによって雨から荷物を守る(完全防水ではない)。一般販売では3980円(税抜)で提供する予定だ。

合わせてOKIPPAではバッグと連動するアプリを開発。OKIPPAに荷物が配送されると通知を受けとれるほか、Amazon、ZOZOTOWN、楽天で購入した商品の配送状況を管理することも可能。配送業者5社(ヤマト運輸、日本郵便、佐川急便、西濃運輸、Amazonデリバリープロバイダー各社)に対応し、もし再配達が必要になった場合もアプリから依頼できる。

OKIPPAを使う1番のメリットは、荷物を待つストレスから解放されることだろう。

通常荷物の受け取り時間は「14時から16時」など一定の範囲を指定する。この場合14時に届くのか16時に届くのかまではわからないから、その間ずっとそわそわし続けなければいけない。トイレに行くのでさえもなぜか緊張するし、たとえほんの数分だとしても家から出るとなればかなりの勇気がいる。

「いろいろな商品をネットで買えるのだから、商品に応じて受け取り方をもっと柔軟に選べてもいいはず。たとえばパソコンのように高価なものは、土日の午前中を使ってでも受け取りたいが、ちょっとした日用品を受け取るのに貴重な時間を使うのは無駄に感じてしまう。受け取りの選択肢が増えるだけでストレスも軽減される」(内山氏)

すでにMakuakeで初期に購入したユーザーを含めた50世帯以上で試験的に運用を始めていて、今のところは盗難などの被害も報告されていないそう。内山氏自身も以前は平日に受け取ることができず再配達の常連だったが、OKIPPAを使うことでその問題は解決。ユーザーからも同様の反響が多いという。

ちなみにOKIPPAのバッグ自体はIoT化していない完全にアナログなもの。その一方でアプリを作り込むことにより、少しでもIoTロッカーに近い機能を、なるべく安価かつ使いやすい形で実現することを目指している(荷物の受け取り通知も、配送員が行う配送管理処理をサーバー側で取得してアプリに通知する仕様)。

東京海上日動と共同で「置き配保険」開発

置き配サービス自体は何もOKIPPA固有のものではなく、FANCLやAmazon、アスクルを始め複数のECサイトが実践してきた。ただ内山氏の話ではダンボールをそのまま丸裸で置くのが一般的だそうで、ニーズはあるものの盗難や個人情報がさらされることを不安に思う人もいるようだ。

OKIPPAの場合は上述したバックと、新たに東京海上日動と開発した専用の置き配保険を通じて「置き配をインフラ化したい」(内山氏)という。

置き配保険は宅配物がバッグに預入された時点から一定時間(24時間の予定)を対象とし、盗難があった場合に補償してくれるというもの。もともとMakuakeの購入者にアンケートをとったところ、約半数が盗難保険を希望していたため開発に至ったそうだ。

一定金額以上に補償に関してはアプリのプレミアムプランとして提供することを予定していて、バッグが納品される8月末を目処に適用を開始する計画。なおOKIPPAバッグに預入後は、配送会社は輸送中に宅配物に付保する運送保険とは切り離すことができるという。

5000万円の資金調達も実施、インフラとなるサービス目指す

Yperは2017年8月の設立。代表の内山氏は伊藤忠商事の出身で、同社で航空機の販売や改修などに携わった後にYperを立ち上げた。

物流に関心をもったのは、前職でフランスに滞在した時。「フランスに比べて日本の物流はシステムもインフラも整備されていてすごいと感じた。その一方で物流が高度化されている日本ですら再配達など問題が発生している。これをスタートアップとして解決したらおもしろいのではと思った」(内山氏)ため、この領域でビジネスをすることに決めたそうだ。

当初はIoTロッカーを検討したものの、ヒアリングを重ねる中でコストや利用頻度、使い勝手(常に外に置いておくと雨ざらしになる上に、整備費用も発生。配置にはある程度のスペースも必要)などを考慮して方向性を転換。現在のOKIPPAのモデルに行き着いた。

2018年2月にはニッセイ・キャピタルのアクセラレーションプログラム「50M」に採択。5月には同社から5000万円の資金調達も実施している。

今後は一般販売に向けてプロダクトの改良を進めるほか、今年中にマネタイズのモデルを構築することが当面の目標。こちらはまさに進めている段階で「現時点で詳しい話まではできない」とのことだが、「独自の配送網から収益を得るモデルも検討している」(内山氏)という。

内山氏によると、MakuakeでOKIPPAを購入したユーザーの約6割が週に1回以上ECサイトを利用するヘビーユーザー。同じく約6割が半分以上の荷物で再配達を依頼している(そのうちの約4割はほぼすべての荷物で再配達を依頼)。まずはこういったユーザーを中心にOKIPPAを広げていく方針だ。

「再配達の利用率が高いECのヘビーユーザーから反響が大きいので、OKIPPAを普及させることができればB2Cの再配達率は効率的に下げていくことができると考えている。まずは日本でインフラとなるようなサービスを目指していきたい」(内山氏)

AIでラストワンマイルの配送ルートを最適化、名古屋大発のオプティマインドが数億円を調達

名古屋大学発の物流AIスタートアップであるオプティマインドは6月1日、自動運転ソフトウェアを開発するティアフォー寺田倉庫を引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は公開されていないが、関係者によると数億円規模になるという。なお調達を行ったのは5月とのこと。

オプティマインドが取り組むのは、物流業界におけるラストワンマイルの配送最適化だ。具体的には組み合わせ最適化や機械学習、統計の技術を用いて「どの車両が、どの訪問先を、どの順に回るべきか」を効率化するクラウドサービス「Loogia」を開発中。7月のリリースを予定している。

近年、物流業界ではドライバーの高齢化や人材不足が課題となっている一方で、AmazonなどECの拡大によって物流量の増加や配送の複雑化、小口化が進行。今後この流れがさらに加速する可能性も踏まえると、限られたリソースを最大限に生かすためのシステムは不可欠だ。

オプティマインドで開発を進めるLoogiaでは、2段階のプロセスを経て最適な配送計画を割り出す。

まず機械学習や統計の技術を用いて、取得したデータから物流に特化した地図を構築するのが第1段階。たとえば「マンションの出口はどちらにあるか、車幅はどれくらいか、走行速度はどのくらいになるのか」といった規則や傾向が溜まった地図のようなものだ。そして第2段階でその地図データと核となるアルゴリズムを用いて、個別の条件下における最適な配送ルートを提示する。

同社代表取締役社長の松下健氏によると、これによって「配送ルートを作る時間の削減と(人力で作成していた時よりも効率的なルートが作れることで)実際の配送にかかる時間の削減が見込める」という。

オプティマインドは2017年秋から2018年にかけて日本郵便とサムライインキュベートが実施したインキュベーションプログラムに採択され、Demo Dayでは最優秀賞を受賞。その際に郵便局で実証実験を実施したしたところ、特にノウハウや経験が少ない新人配達員の業務時間が大きく削減されたのだという。

日本郵便との実証実験の結果。資料はオプティマインドより提供

「配達員はまず配送ルートを作成した上で、それが最適なのか不安を抱えながらも配送しているというのが現状。Loogiaではルート作成という属人的な業務を人工知能を使って効率化するとともに、(組み合わせ最適化技術により)人間では考慮できないレベルでの最適化を実現することで、配送業者をサポートする」(松下氏)

もちろん配送効率化を支援するシステム自体は以前からあるが、松下氏によると買い切り型で導入コストが高く、かつアップデートがされない仕様のものも多かったそう。

Loogiaのターゲットは宅配に限らず、弁当や食材、メンテナンスや引っ越しなど、ラストワンマイルの配送を手がける幅広い業者。小口の配送業者でも継続して使いやすいように、SaaSモデルで車両台数に応じて課金する仕組みを用いる。

名古屋大学の研究をプロダクトに落とし込んで展開

オプティマインドのシステムは名古屋大学の組み合せ最適化技術を活かしたもの。特に配送最適化の分野では高レベルの研究実績とアルゴリズムを持っているそうで、社員の中には松下氏を含め同大学院の博士課程に在籍するメンバーも多い。また技術顧問という形で情報学研究科の柳浦睦憲教授も参画している。

同社はもともと2015年に合同会社としてスタート。当初は物流に限らず、最適化技術を活かしたコンサルティング事業をやろうとしていたそう。松下氏いわく「その時に1番属人的で、変えるのが難しそうだったのが物流業界だった。だからこそ業界が抱える課題を自分たちが解決していきたいと思った」ことと、自身が研究していた領域が配送計画問題だったこともあり、物流領域に絞った。

今までは個別の企業ごとにコンサルという形で配送ルートの効率化サポートをしていたそうだが、より多くの企業の課題を解決するため、これからはクラウドサービスとして広く提供する。また「新しいサービスを展開したい人に対して配送計画というノウハウを提供する会社(プラットフォーム)」を目指し、SaaSに限らず計算エンジンのAPI連携やR&D事業も進めていく方針だ。

「今は最適システムの基盤作りの段階。その上に実配送データを収集・解析してGoogleなどがもっていないような『物流に特化した生データの地図』を構築していく。将来的にはライドシェアや自動運転が普及した時に、どのように回ればいいのかという部分においては、プラットフォーマーとしての立ち位置を確立したい」(松下氏)

今回の調達元である寺田倉庫では物流APIを企業やスタートアップに提供。エアークローゼットサマリーなどにも資本参加をした実績もある。同社にとっても配送ルートの最適化は重要で、オプティマインドとは事業シナジーもあるだろう。また松下氏の話す自動運転が普及した後の展望も踏まえると、このタイミングで自動運転ソフトウェアを開発するティアフォーから出資を受けている点も興味深い。

「今はぐっとアクセルを踏むタイミング」(松下氏)ということで、まずは調達した資金と元に組織体制も強化し、Loogiaの開発と導入企業の拡大に取り組むという。

スマホで開け閉めできるロッカーのSPACERは、自販機投資ならぬ“ロッカー投資”で普及を目指す

Amazon.comをはじめとするEC業者の躍進とともに、宅配便で送られる荷物の数は近年急伸している。国土交通省が2017年7月に発表した資料によれば、2016年度の宅配便取り扱い個数は約40億個だった。2006年度の約29.4億個と比べると、この10年間で約1.4倍に増えたことになる。

その一方で問題となっているのが、宅配便の再配達にかかる社会的コストだ。同じく国土交通省が発表した報告書によれば、宅配便全体の約20%にあたる荷物が再配達となっているという。営業用トラックが排出する二酸化炭素の約1%(42万トン)は再配達によるものであり、年間9万人に相当する労働力が再配達に充てられているなど、社会的損失も無視できないレベルにまで膨らんだ。

そんななか、日本が抱える配送問題をビジネスの力で解決しようとするスタートアップがいる。本日サービスローンチを発表したSPACER(スペースアール)だ。同社は3月1日、スマホで開け閉めができる受け渡しロッカー「SPACER」のサービス開始を発表した。

SPACERの利用方法は以下の通りだ。荷物を預けるユーザーがロッカーの近くで専用アプリを立ち上げると、アプリが自動的にロッカーを認識する。荷物をロッカーに入れたあと、アプリをスワイプすることでロッカーが閉まり、その“鍵”となる電子キーがアプリに保存される。ロッカーのそばで電子キーが保存されたアプリを立ち上げ、もう一度スワイプするとロッカーが開く仕組みだ。アプリとロッカー間の通信はBluetoothで行う。

ロッカー使用料は2時間まで無料で、その後は6時間ごとに240円の料金がかかる。

現時点でSPACERが対応しているのはiOSのみだ。しかし、SPACER代表取締役の田中章仁氏は、近日中にはブラウザでBluetooth通信ができる「Web Bluetooth API」を利用したWebアプリをリリースする予定で、これによりAndroidにも対応する予定だと話す。

鍵を“共有する”ことで、ロッカーの可能性が広がる

さきほど説明したSPACERの使用の流れは、ユーザーが自分の荷物をロッカーに預けるときを想定したものだ。しかし、SPACERではアプリに保存された電子キーを他のユーザーに受け渡すこともできる。

SPACERのアプリにはチャット機能が内蔵されていて、そこにある「鍵を譲渡」ボタンを押せば電子キーを他のSPACERユーザーに受け渡すことができる。また、同社はURLによる電子キーの共有機能も2018年7月をめどにリリースする予定だ。それが実現すれば、URLを発行し、それをLINEやFacebook Messengerなどのメッセージングアプリで共有するだけで、電子キーのやり取りが可能になる。複数人への共有も可能だが、一度使用されたキーは消滅する。

セキュリティについては、「1回使用するごとに(電子キーの)暗号がランダムで変わるほか、ロッカー本体ごとにその解読方法が違う」(田中氏)という方法で安全性を担保しているという。

この電子キーの共有という特長により、SPACERの可能性が一気に広がる。家族や友人が本人の代わりに荷物を受け取ったり、スケジュールを調整することなく個人的な貸し借りを行ったりするといった用途が考えられる。また、記事冒頭にあげた“再配達問題”の文脈で言えば、宅配業者から受け取った電子キーを利用してユーザー自身がロッカーまで荷物を取りに行けば、結果的に再配達される荷物の数は減る。

これについては、「自分で取りに行くという行為が面倒くさい」という読者もいることだろう。でも、僕の場合は、再配達時間として指定した数時間のあいだは落ち落ち昼寝もできないという不便や、今すぐにでもプレイしたいゲームソフトを受け取るのに帰宅が間に合わず、翌日に再配達となったときの絶望感を考えると、どこかに置いておいてくれれば自分で取りに行くのに、と思うたちだ。

また、最近ではすっかり市民権を獲得した感のある「メルカリ」などのフリマアプリでもSPACERは活躍しそうだ。出品する側と買い取る側の両方が都内に住んでいるのであれば、例えば渋谷にあるSPACERに商品を入れ、入金が確認できたところで電子キーを送るというようなことも可能になるだろう。

個人投資家を巻き込み、普及を促進

SPACERは普及するのだろうか。昔からコインロッカーはいたるところにあるし、最近では専用の宅配ロッカーを設置するマンションも目にするようになった。それらと比較したSPACERの優位性はどこにあるのだろうか。

SPACER代表取締役の田中章仁氏は、「通常のコインロッカーには、3Dプリンタで鍵を複製されてしまったり、鍵を失くしてしったりといったリスクがある。最近ではPASMOなどのカードで開けるタイプのロッカーも登場しているが、本体価格が200〜300万円と高価だ。(宅配業者が設置する大型の)宅配ロッカーについても、通常200〜300万円程度と初期コストが高く、現状では宅配業者がCSR(企業の社会的責任)として設置している状況」だと語る。

また、最近では個人が小型の宅配ボックスを自宅に設置する例も増えているように思うが、プラネットが2017年5月に発表した宅配業界に関する調査を見ると、「宅配ボックスに入れてくれる(ので、再配達は必要ない)」と答えた人は全体の13.6%に留まる。一方で、「ドライバーに電話して再配達を頼む」と答えた人は55%だった。現時点ではロッカーや宅配ボックスで荷物を受け取るという習慣はまだ根付いていないようだ。

SPACERがその習慣を根付かせるのだとすれば、街に設置するロッカーの数を増やすことがもっとも重要な課題となるだろう。そのための施策として同社が選んだのは、ロッカーを“投資商品”として位置づけるというものだった。

従来のロッカーは初期費用が数百万円かかるのに対し、SPACERは設置からメンテナンスまでの“初期投資コスト”を40万円にまで抑えた。この価格設定でも、設置から利用まで「一連のキャッシュフローの中で弊社が赤字になる所がない」(田中氏)。

ここまで投資コスト抑えることができれば、個人が投資先としてロッカーを購入することも可能になると同社は主張する。自動販売機の投資と同じ要領で、個人がロッカー本体を購入・設置し、リターンとして利用料を受け取る収益モデルだ。

SPACERは、ロッカーを所有するオーナー、それを設置する土地の所有者である地権者、そしてメンテナンス業者それぞれの橋渡しをする役割になる。設置する土地の紹介やメンテナンス依頼はSPACERが行うので、オーナーは同社と契約して資金を拠出するだけでいい。収益の分配比率は、ロッカーのオーナーが50%、地権者が15%、メンテナンス業者が15%、SPACERが20%となる予定だ。

SPACERの資料によれば、既存のコインロッカーの使用予測と同じく1日1回の利用(6時間以内)を想定した場合、年間の収益は240円×6室(1つのロッカーあたり室数)×365日で52万5600円となる。オーナーの取り分はその50%である26万2800円だ。約2年あれば投資費用が回収できてお釣りがくる計算となる。

このように、SPACERはロッカーを金融資産として投資家に提案することで、ロッカーの普及を促進していきたいとしている。実際、今回ローンチ時点でSPACERと契約を交わしたロッカーのオーナーはすべて個人の投資家だ。「オペーレション上の限界もあるので、ローンチ後まずは企業や複数台購入いただける個人の投資家をオーナーとして募るが、最終的には広く個人のオーナーを募集したい」と田中氏は語る。

SPACERは2018年1月にエンジェル投資家などを引受先としたシードラウンドを行い、資金調達を完了した(金額は非公開)。今後の展開について、「3〜5月までを実証期間とし、様々なモニタリングを行いながら、ECなどと直接受け渡し取引等の実証実験を行う」としている。本日より設置を開始するTSUTAYA店舗は以下の通りだ(いずれも東京都)。

  • SHIBUYA TSUTAYA(渋谷区)
  • TSUTAYA BOOK APARTMENT(新宿区)
  • TSUTAYA 赤坂店(港区)
  • TSUTAYA 祖師谷大蔵店(世田谷区)
  • TSUTAYA 新大久保店(新宿区)

Embarkの自動運転トラックが北米大陸を横断

Embarkの自動運転トラック輸送ソリューションが、大きな可能性を実証した。米国の西海岸から東海岸まで、具体的にはロサンゼルスからフロリダ州ジャクソンビルまで(約3862キロ=2400マイル)を無事駆け抜けたのだ。

これは、 ロサンゼルスからエル・パソまでを走ったEmbarkの前回のテスト走行に続くもので、その走行距離は前回の4倍以上をカバーしている。Embarkは5日間で新しい国土横断旅行を成し遂げたが、運転席にはセーフティドライバーが控えていた。ドライバーは制御を引き継げるようになっていなければならないため、今回の運行ルート上には計画された休憩ポイントが設けられていた。Embarkの技術が完成し、単独で運航できることが許可された場合には、おなじ経路を合計2日で走ることができるようになると考えられている。

とはいえ、Embarkの目標は人間のドライバーを完全に置き換えることではない:チームドライブの必要性を削減し、少数のドライバーで長距離の運行を可能にすることが目標だ。例えば、この種の輸送のために必要となる有資格ドライバーの不足を補うことが可能になる。人間のドライバーは、高速道路の運行に関係しないルートの部分を担うことが期待されているが、彼らの技術が利用可能になれば、効率性の向上と運行時間の短縮メリットは非常に大きくなる。

  1. los_angeles_to_jacksonville_route.png

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このデモンストレーションは、Embarkが競合他社が行っているものとは異なる、技術的側面を証明するのにも役立った。スタートアップは、その自動運転システムに情報を伝えるために、ルートの詳細な高解像度マップを使用していない。その代わりに、センサデータと車載の機械学習に完全に依存している。これによって、新しいルートを設定する準備段階の、必要なコストと時間が削減される。そしてEmbarkは、今回の高速10号線に沿った3862キロの旅で、主要な道路を問題なく走り抜けることができることを証明できたと語っている。

Embarkのトラックは西海岸に戻ってきたばかりだ、現在チームは、人間の介入が必要とされた事象のデータを収集中である。しかし同乗したドライバーたちからの主観的な報告によれば「運行のほとんどの部分は自律的に行われました」、しかも「何時間もの間、人間の介入が必要となる事象は発生せず、もし起きたとしても大部分はほんの数秒のことでした」とのことである(CEOのAlex Rodrigues談)。

サンフランシスコを拠点とするEmbarkは、現在テスト車両を増やしつつある。4ヶ月で2台を5台に増やす予定だ。Rodriguesによれば、2018年の終わりまでには、Embarkは40台を購入することを希望している。

[原文へ]
(翻訳:sako)

AIによる需要予測で過剰在庫の削減へ、物流スタートアップのニューレボが5000万円を調達

通販事業者向けのクラウド在庫管理システム「ロジクラ」を提供するニューレボ(New Revo.)は12月20日、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により総額5000万円を調達したことを明らかにした。

同社はこれまでにも2016年9月にF Venturesから、2017年8月にDGインキュベーションから資金を調達。今回新たに調達した資金をもとに、データ収集や機械学習の精度向上・体制強化を進め、AIを用いた需要予測機能などプロダクトの拡張を進める。

通販事業者の負担となる入出荷作業をシステムで効率化

ロジクラは商品の入荷から在庫管理、出荷までを一気通貫で管理できるシステム。バーコードやラベルの発行、在庫管理、通販サイトの受注取り込み、納品書の作成といった一連の物流業務をクラウド上で完結できることが特徴だ。

ニューレボ代表取締役社長の長浜佑樹氏によると、通販事業者が在庫管理や発送を行う現場では未だに紙やFAXを中心としたやりとりや、目視での検品作業などアナログな部分が多いそう。それが生産を低下させる原因になっているという。

「中小のEC事業者では自社で商品の出荷まで行っているところが多い。他の業務もある中で注文データと目の前の商品があっているかなど逐一目視でチェックするのは負担になる。加えて送り状の記入なども毎回手書きでやっているのが現状。このようなアナログな作業をデジタル化することで生産性を上げたい」(長浜氏)

なんでも通販事業者によっては、全体の60%以上が検品作業など入出荷に関する業務に使われているという。その点は長浜氏自身も学生時代に倉庫業務のアルバイトを経験していて、同じ課題を感じていたそうだ。

ロジクラでは商品のバーコードをスマホで読み取りクラウド上で管理することで、目視で行っていた際に起こり得る検品作業のミスや無駄な時間の削減など、入出荷業務をスムーズにする。目標は「現場の入出荷作業の時間を80%削減する」ことだ。

サービス自体は11月上旬から事前登録ユーザーの募集を始めたところ。すでに約50社から問い合わせがあり、これからテスト版の運用を実際に始めていくフェーズだという。

蓄積したデータをもとにAIで需要予測、過剰在庫の削減へ

ニューレボ代表取締役社長の長浜佑樹氏

現在のロジクラでは上述したようなクラウド在庫管理機能のみを提供しているが、目指しているところはもう一歩先。蓄積された在庫データなどを解析することで、在庫の需要予測までできるシステムだ。

ニューレボが内閣府の資料をもとに計算したところ、国内の中小企業の倉庫には売れずに眠っている「過剰在庫」が54兆円ほど存在しているという。また平成28年には過剰在庫がキャッシュフローを圧迫し1週間に1社のペースで企業が倒産するなど、過剰在庫が大きな問題となってきた。

「過剰在庫が発生する原因のひとつは、発注担当者が自分の経験や勘で発注してしまうこと。欠品を恐れて必要以上に発注してしまった結果、在庫が増えてキャッシュを回収できないという状況に陥ってしまう。1番の問題はデータに基づいた需要予測ができていないことにあると考えた」(長浜氏)

そこでロジクラでは在庫管理システム上に蓄積された在庫・販売データと、景気動向や天気など外部のデータを組み合わせて解析。企業ごとに最適化された需要予測ができる機能を構築する計画だ。

「完全に過剰在庫をなくすことは難しいが、予測と出荷実績のばらつきを抑えることはできる。需要予測機能を使った場合の在庫の削減目標は30%。それだけでも大きなインパクトがある」(長浜氏)

ニューレボでは今回の資金調達を機に、統計解析や機械学習をはじめとしたAI技術を保有する人材の採用を強化する。2019年度までに各企業に最適化された需要予測機能を提供することが直近の目標だ。また長期的には在庫データをもとにした在庫売買のプラットフォームや在庫を担保にしたレンディングなど、「在庫データ」ビジネスの展開も検討していくという。

ニューレボの創業は2016年の8月。代表の長浜氏が学生時代にシリコンバレーでUberに出会ったことが起業のきっかけだ。自身がアルバイトなどで交通や物流領域の仕事をしてきたこともあり、当初は食品や日用品の即日配送アプリ「FASTMRT(ファストマート)」を運営。そこからより物流業界の大きな課題に着目する形で、在庫管理を効率化するロジクラを始めている。