SpaceXの爆発事故が宇宙ビジネスに与える影響は


9月1日9時07分(東部標準時間)頃(日本時間1日22時07分)、SpaceX社が土曜日の打ち上げの準備のために行っていたルーチン着火テストの最中に壊滅的な爆発事故が発生した。

幸いなことに、負傷者は報告されなかったが、搭載貨物だったAmos-6衛星はFalcon 9と共に破壊された。約2億ドルの衛星Amos-6は、静止軌道へ打ち上げられ、Facebook主導のInternet.orgの一環として、アフリカの様々な場所にインターネット接続を提供する予定だった。

爆発の原因はまだ不明なものの、イーロン・マスクは、爆発が上段の酸素タンク付近で起きたことをTwitterで述べている。

Amos-6はFacebookの最初の衛星になる筈だった。現在アフリカに居るMark Zuckerbergは、Facebookのポストで爆発に対する失望を表明した。

マーク

ロケットの爆発が発生したときに、宇宙業界では3つの疑問が話題になる。最初は、爆発による損傷と原因の根本についてである。第二は、この爆発が原因となるであろうスケジュールの遅れと、影響を受ける他の顧客について。最後が、この爆発が打ち上げプロバイダの信頼性に与える影響についてである。

損害評価

今回、ロケットと搭載物の両者が破壊され、何百万ドルもの機器が灰燼に帰した。その上、ケープカナベラルのロケット発射台に対する重大な損傷があるだろう。幸いなことに、試験点火中の発射台には労働者がいなかったため、負傷者は報告されていない。

この損害は誰が負うのか?まあ、高価な搭載物を積んだロケットの場合、通常は宇宙保険会社がその大部分がカバーする。CNBCは「一握りの保険会社に、年間約7億5000万ドルほどの保険料が払われ、年間50件ほどの有保険打ち上げが行われています」と指摘している。

統計的に言えば、米国の打ち上げの9件に1件は失敗する可能性がある、よってもし1億ドルを超える搭載物を送り出そうとしているのなら、保険をかけることがおそらく賢明だ。SpaceX社に限って言えば、失敗率はより低くFalcon 9の29件の発射中ただ2件だけが失敗に終わっている(最初の失敗は2015年6月)。

しかしながら、今回のケースは非常に珍しいものである。なぜなら爆発がエンジンの点火前に起きているからだ。SpaceNewsのPeter B. de Seldingによれば、発射保険はエンジン点火後に初めて有効になるということだ。しかし、被害は海洋貨物保険として知られている別のタイプの保険によってカバーされる可能性がある。

しかし、これは発射台やSpaceXの車両、そして衛星をカバーするのだろうか?これがどのようになるかに関しては、私たちは成り行きを見守るしか無い。

スケジュールの遅れ

どのような企業にせよ、ロケットの失敗は遅延を招く。遅延の期間は原因の根本に依存している。もしそれがSpaceX社の技術的エラーの場合には、長期間の遅延が予想される。もしそれがSpaceX社側の人的エラーの場合には、遅延はおそらく短期間に留まるが、信頼性の高い打ち上げプロバイダとしての評判が傷つくおそれがあるだろう。

昨年の6月、国際宇宙ステーションに物資を運ぶFalcon 9ロケットが、発射後わずか数分で爆発した。このときはSpaceX社が最終的に打ち上げに戻るまでに半年かかっている。しかし、その復帰は派手だった:その復帰飛行は、初めてのロケット再着陸を行うものだったのだ。

今年、SpaceX社は2015年に比べて3倍の打ち上げを計画していた、これが意味することは、今回の爆発が後に控える自分たちの打ち上げにどのように影響するかを不安に思っている多くの顧客がいるということだ。

そうした顧客のひとつが米航空宇宙局(NASA)である。Falcon 9を使った国際宇宙ステーションへの貨物補給ミッションは、11月に予定されていた。SpaceX社は貨物契約以外にも、NASAの商業乗組員プログラムに、2社のうちの1社として選ばれている(もう1社はボーイング)。

SpaceX社は、もともと2017年の8月に、ISSへの同社による最初の有人打ち上げを提供することを計画していた。ボーイング社の商業乗組員のための機材の準備が遅れていたため、SpaceX社が宇宙飛行士を登場させて打ち上げる最初の民間企業なることが予想されていた。SpaceX社が遅延する可能がでてきたため、競争の行方は不透明なものになった。

Falcon Heavyロケットの初打ち上げと再着陸を行ったロケットの初再打上げ(両者とも本年後半に予定されている)といった、他のSpaceX社の大きなマイルストーンも、おそらく遅れることになるだろう。

信頼性への懸念

ロケット打ち上げの世界では、信頼性が至上命題である。あなたが仮に最も安いプロバイダーで、顧客が2億ドルの搭載貨物を託すのには不安を抱えていたとしても、それは変わらない。

SpaceX社は、最も安い打ち上げプロバイダの一つであるという特徴を押し出して事業を行って来た。例えばSpaceX社の直接の競争相手の1つであるUnited Launch Allianceと比べても、かなり安価である。ULAはその価格を公表してはいないものの、いくつかのケースで、顧客はULAの代わりにSpaceXを選択することで40%の節約を実現している。

しかしULAの高い値札は、搭載貨物が行くべきところに届く、という安心感をもたらしている。ULAは2006年以来、わずか2件の部分的な失敗を除き、ほぼ完璧な発射記録を保っているが、その一方SpaceX社は過去15ヶ月に2つの大きな失敗を経験している。

SpaceX社の信頼性についてどのような判断を下すにせよ、まずは今日の爆発について多くのことを学ばなければならない。しかし現時点での大きな疑問は;この失敗の真因は何であったのか、誰に落ち度があり、どれほど速やかにその原因を取り除けるのかである。

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(翻訳:Sako)