Praava Healthはバングラデッシュの医療の質の向上に11.5億円を調達

遠隔医療と物理的な診療所とを組み合わせたPraava Health(プラーバ・ヘルス)を立ち上げる前、Sylvana Sinha(シルバーナ・シンハ)氏は、2008年の米国大統領選挙でバラク・オバマ氏の海外政策顧問として貢献したり、アフガニスタンの世界銀行に務めるなど、国際法の世界で成功を収めていた。しかし2011年、家族の結婚式に出席するためにバングラデッシュを訪れた際、最上級の私立病院で手術を受けた母が危篤状態に陥ったことで、シンハ氏は「ひらめきの瞬間」を迎えた。

「母の一件から、バングラデッシュではどんなにお金を積んでも質の高い医療が受けられないことを知りました」と彼女はTechCrunchに話した。

「バングラデッシュは高度に発展し、今や中流人口が4000万人にものぼるという現実があるにも関わらず、優れた医療を受けられる選択の幅が非常に狭いことに衝撃を受けました」と彼女は語る。「毎日、何千もの人たちが国外に出かけ、年間何百万ドルもの費用をかけて海外の優れた病院にかかっているいるのです」

アメリカで生まれ育ったシンハ氏は、Praava創設のため、2015年にバングラデッシュに移り住んだ。本日(米国時間3月8日)、同社はシリーズAプライム・ラウンドの調達を発表し、調達総額は1060万ドル(約11億5000万円)となった。Praavaでは、2018年にサービスを開始して以来、毎年3倍の成長を遂げ、現在は15万人の患者を診ているという。2020年には、7万5000件の新型コロナの検査を自社で行っている。

Praava Healthの患者向けポータルアプリ

Praavaの支援者には、シードラウンドにも参加した退役アメリカ陸軍大将、KKR Global Institute(DKRグローバル・インスティテュート)会長、米国中央情報局(CIA)の元局長のDavid H. Petraeus(デイビッド・H・ペトレイアス)氏、Wellville(ウェルビル)の幹部創設者Esther Dyson(エスタ−・ダイソン)氏、SBK Tech Ventures(SBKテック・ベンチャーズ)、シンガポール科学技術研究庁デジタル医療顧問のJeremy Lim(ジェレミー・リム)博士、Iora Health(アイオラ・ヘルス)の共同創設者でありCEOのRushika Fernandopoulle(ラシカ・ファーナンドプリ)博士、Oak Street Health(オーク・ストリート・ヘルス)の共同創設者であり最高執行責任者のGeoff Price(ジェフ・プライス)氏と、高名なエンジェル投資家が名を連ねている。

同社は、バングラデッシュの首都ダッカの主要医療センターであり、街中に点在する40の小さな診療所をネットワークしている。Praavaでは、さらに多くの診療所をダッカに開設し、後にバングラデッシュ第2の都市チッタゴンにも進出したいと考えている。

これは、オンライン診療を加えた「ブリック・アンド・クリック」モデルだ。国中の患者に対応できる。バーチャル医療は、遠隔医療とオンライン薬局を含むPraavaのサービスの40パーセントを占めている。

バングラデッシュは、世界でももっとも急速に経済成長している国だが、人口1億7000万人に対する医療従事者の数は危機的なまでに少ない。世界保健機関(WHO)の概算では、人口1万人に対して医師が3人、看護師が1人となっている。さらにそのほとんどが都市部で勤務している。ちなみにバングラデッシュの人口の70パーセントは農村部で暮らしているため、人々は1分間にも満たない診療のために長距離移動を強いられることがしばしばだ。

「遠隔医療の最大の利点と私たちが考えるのは、ダッカの外に住む人たちに、その長旅が本当に必要か否かを教えられることです」とシンハ氏は話す。

同社では、とくに初期診療の場合、患者の80パーセント以上がオンラインでの医療サービスで対処できることを突き止めた。残りの20パーセントの患者にのみ、幅広い外来診療、画像診断、検査、薬の処方が行えるPraavaの診療所に来るように伝えている。

新型コロナウイルスのパンデミックが始まると、Praavaの診察のおよそ9割がバーチャルになったが、診療所での診察はまた増え出した。Praavaの医師のほとんどは、フルタイムの従業員として給与が支払われている。目標は、予約診療時間を少なくとも15分以上持たせ、医療提供者と患者との深い人間関係を築くことにある。

「テクノロジーは医療の未来だと思っています。そこに疑いの余地はありません」とシンハ氏。「しかし、私たちが生きている間に必要となる医師との対面診察や直接的な医療全般を、テクノロジーで完全に置き換えることはできません」

現在、Praavaの患者は、そのほとんどが診察ごとに料金を支払っている。価格は、バングラデッシュの公共医療システムと、高価な私立病院の相場の中間だ。定額で無制限に医療サービスが受けられる会員プランもある。

シンハ氏によれば、主に入院費をカバーする医療保険に加入している人が1パーセントに過ぎないバングラデッシュでは、それは大変に新しいモデルだという。

「これは私たちにとって、この地域に価値に基づく医療の導入実験であり、この提案に大変に胸躍らせていますが、新商品なので、今後数年間かけて伸びて行くものと考えています」と彼女は話す。「昨年は大変な伸びを見せました。おそらく人々の健康意識の高まりと、企業が従業員の健康への投資を増やそうと考えるようになったためでしょう」

今回調達した資金で、Praavaは患者用の「スーパーアプリ」の開発に注力する。すべてのデジタルサービスを、ひとつのアプリに集約することが目的だ。また、ダッカでのさらに10軒の医療施設の開設と、チッタゴンへの進出も計画している。Praavaの「ブリック・アンド・クリック」モデルは、その他の新興市場にも応用が利くが、今後数年間はバングラデッシュに集中する予定だ。

「まず対処しなければならない人たちが1億7000万人います」とシンハ氏。「なので当面私たちは、この市場に全集中します」

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トップの写真:Praava Healthの創設者にして最高責任者のシルバーナ・シハ氏(左から3番目)。同社医療センターのひとつにて。

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(文:Catherine Shu、翻訳:金井哲夫)

高速ロード機能で発展途上市場でのカジュアルなオンラインゲームの普及を目指すグーグルのGameSnacksプロジェクト

GameSnacks(ゲームスナック)と呼ばれる新しいプロジェクトが、米国時間2月13日よりGoogleの社内インキュベーターであるArea 120から提供が開始される。これは、開発途上市場のユーザーに高速ロード可能で、カジュアルなオンラインゲームを提供することを目的としている。何十億 もの人々が、モバイルデバイスを介してオンラインアクセスを行っている。しかし、それらは多くの場合、メモリの少ないデバイスに高価なデータプランが組み合わさったもので、ネットワーク接続の信頼性低さに苦労させられている。ゲームはこうした制約に対して最適化されてはいないため、ゲームにアクセスすることが多くの人にとって難しくなっている。

現在、モバイルウェブサイトの訪問者の 半数以上が、読み込みに3秒以上かかるとページを離れてしまうというのに、メモリの少ないデバイスや2Gまたは3Gネットワークでは、通常のウェブゲームの読み込みはさらに遅い。3倍4倍どころかさらに長くかかる可能性もある。

GameSnacksのアイデアは、最初にロードされるHTMLページのサイズを縮小し、スクリプト、画像、音楽などの追加のアセットを圧縮し、それらが必要になるまでロード遅らせることで、ウェブゲームのロード時間とパフォーマンスを高速化することだ。

GameSnacksによれば、こうすることで、500 Kbps程度の遅いネットワーク接続でもゲームを数秒でロードできるようになるという。

例えば、TowerというGameSnacksタイトルは、3G接続を介した内蔵メモリー1GBのデバイス上で、わずか数秒でプレイできるようになる。これまでは同じデバイス上での、典型的なウェブゲームの場合には、12秒程度かかっていたと同社は主張している。

さらに、GameSnacksのゲームは、プレイ時間数分程度のシンプルでカジュアルなゲームだ。例えば、行列に並んでいるとき、バス停で待っているとき、病院の待合室で待っているときなどの、ちょっとした手持ち無沙汰の時間を埋めることを目的としているということだ。また、各ゲームは自明なルールを持つようにデザインされているため、説明なしで遊ぶことができる。

モバイルが主要なプラットフォームではあるものの、GameSnacksのゲームは、キーボードとマウスを備えたデスクトップコンピューターを含む、あらゆるウェブ対応デバイスからアクセスできる。モバイル版では、iOSとAndroidの両方がサポートされている。

開始にあたりGameSnacksは、GoGamesサービスを通じてエコシステムに新しいゲームをもたらしている東南アジアの主要テクノロジープラットフォームであるGojekと提携している。当初、このパートナーシップは、東南アジアの他の場所に拡大する前に、インドネシアのユーザーにゲームを配信することに焦点を合わせていた。

現在、GameSnacksはFamobi、Inlogic Games、Black Moon Design、Geek Games、そしてEnclave Gamesなどの開発企業と協力している。自社のタイトルが、GameSnacksカタログに掲載される意味があると考えるHTML5ゲーム開発者には、手を伸ばしてみることをお勧めしたい。

GameSnacksのビジネスモデルには最終的に、他の開発者がGameSnacksのゲームを自分のアプリに埋め込むことを可能にする、別のパートナーシップが含まれている。

Ani Mohan(アニ・モーハン)氏とNeel Rao(ニール・ラオ)氏によって始められたGameSnacksは、GoogleのArea 120の中で働く6人のチームだ。なおArena 120とは、ソーシャルネットワーキング動画広告教育移動ビジネスその他を含む、Google社内のさまざまな実験的アイデアの拠点だ。

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(翻訳:sako)

AmazonがKindle読書基金を設立。世界でデジタル読書を推進する

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AmazonはKindle Reading Fund(Kindle読書基金)と呼ばれる新しいプログラムを発表した。世界中で電子書籍がより簡単に利用できるようにすることを目的としている。同基金は様々なパートナー組織と連携して、世界中のコミュニティへ電子書籍だけではなく、沢山のKindle電子書籍リーダー、Fireタブレットの寄付を行う。学校、図書館、PTA、病院その他の非営利団体に加えて、Amazonは現在、発展途上国での読書プログラムを支援するためにWorldreaderと協業している。

Worldreaderは世界中に読書とリテラシーをもたらすことを使命としている。同組織との協業に関するAmazonのアナウンスによれば、過去6年間にわたって、Worldreaderは400万人以上の読者が本のライブラリにアクセスすることを支援してきた。

Amazonは、Worldreaderとの新たな協業関係が、Amazonから発展途上国へ数千台のKindle電子書籍リーダーを寄付することにつながると言っている。しかし、両社は以前も一緒に働いたことがある。例えばAmazonは最近、Worldreaderによるケニア国内のLEAP 2.0ライブラリパートナーシップをサポートした。これにより国内61の図書館で50万人の人たちのデジタル読書が可能になった。

Amazonはさらに、数千台のKindle電子書籍リーダーやFireタブレットを、生徒と教師へ寄付している。そしてNational PTAと協力しながら、Family Reading Experience(家族読書体験)プログラム を通して、子供たちの読書体験に親たちを巻き込んでいる。それだけでなく、シアトル地域にあるSeattle Children’s Hospital、Mary’s Place、Rainier Scholars、Well Spring Family Servicesなどのような、病院や非営利団体にも寄付してきた。

Amazonは既存の、例えば出荷倉庫の近くで行われていた学校寄付などの、様々なプログラムはこのファンドに収斂していくだろうと言っている。しかし、過去に寄付をしていたWorldreaderのような組織に対しては、現在の寄付は新しい基金の一部として扱うだけだ。

Amazonは基金に充てられる金額についての回答を拒否している。

新しいKindle基金は、こうしたこれまでの活動を正式化する以上のものである。コミュニティ内の501(c)(3)組織と学校からの寄付要求に対してもAmazonは今や開かれている。基金のウェブサイト上のフォームを通じて、組織 – 米国拠点である必要はない – が手を伸ばしサポートリクエストを送ると、10日以内にAmazonから回答を受け取ることができる。


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(翻訳:Sako)