Ambient.aiはAIを活用したビルセキュリティで偏見やプライバシーによる落とし穴をふさぐ

「ちょっと、そこは入れませんよ」。建物とカメラをいくつか通過すると、セキュリティの仕事はすぐに複雑で途方もない状況になる。誰が一度にすべての場所を見張り、間に合うように人を送って問題を防ぐことができるだろうか。Ambient.aiはAIでそうできると最初に主張したわけではないが、最初に実際に大きな規模でそうしたのかもしれない。そして、成長を続けるために5200万ドル(約59億1000万円)を調達した。

昨今の業務処理問題は、誰でも指摘できる種類のものである。現代の会社や学校にある幾十幾百ものカメラからは膨大な量の映像やデータが生み出され、専門のセキュリティチームでもすべてを把握するのは困難だろう。結果として、重要な事象が発生してもそれを見逃すだけでなく、間違ったアラームや音に耳を向けてしまう可能性もある。

「犠牲者はいつも、誰かが助けに来てくれることを期待してカメラを見るが、実情はそうではない」と、Ambient.ai(アンビエント.ai)のCEO兼共同創業者、Shikhar Shrestha(シカー・シュレスタ)氏はTechCrunchに語った。「ベストの状態でも、インシデントが起きるのを待っていて、ビデオを見て、そこで仕事をするわけです。カメラはあり、センサーはあり、警備員もいる。欠けているのは、仲立ちをする頭脳です」。

明らかに、シュレスタ氏の会社は頭脳の提供を目指している。セキュリティのライブ映像の中央処理装置によって、問題が発生したら即座に適切な担当者に通知できる。そうした努力を危険にさらす先入観はない。顔認識もしない。

以前にもこの特定のアイデアに取り組む例はあったが、これまでのところ本気で採用した例はない。シュレスタ氏によれば、第1世代の自動画像認識は単純な動作検出で、画面上の画素に動きがあるかどうかを確認するにすぎず、木なのか家宅侵入者なのかも見分けられなかった。次に来たのが、深層学習を使用した物体認識だった。手に銃を持っているのか、窓が割れているのか識別できた。これは役に立つことがわかったが、限界があり、維持に少々手がかかった。状況や物に対して特別なトレーニングがたくさん必要だった。

「ビデオを理解するために人が行うことを見て、他の情報も大量に取り入れることにしました。座っているのか、立っているのか、ドアを開けているのか、歩いているのか、走っているのか、屋内にいるのか、屋外にいるのか、昼間か夜間か、といったことです。私たちは、そうしたことをすべて一緒にして状況を総合的に理解します」と、シュレスタ氏は説明した。「私たちは、コンピューターの映像インテリジェンスを使って映像の事象全体をマイニングします。あらゆるタスクを分解してそれをプリミティブと呼びます。相互作用や物体などです。その後、それらの構成要素を結びつけて「シグネチャ」を作成します」。

Ambient.aiのシステムでは、行動の要素を使用し、それらの要素を相互に結びつけて、それが問題になるかどうか示す(画像クレジット:Ambient.ai)

シグネチャは「夜間に長時間車内で座っている人物」や、誰ともやり取りせずにセキュリティチェックポイントの傍らに立っている人物」のようなもので、数は任意である。チームによって調整・追加されたものや、モデルによって独自に追加されたものがある。シュレスタ氏は「管理された半教師あり手法の一種」と説明した。

AIを使用して一度に100のビデオストリームをモニタリングすることのメリットは明らかだ。何か悪いことが起きる見当をつける点でAIの出来がたとえ人間の80%だとしてもである。注意散漫、疲労、目が2つしかないといった弱点がないAIは、時間やフィード数の制限なしに成功のレベルを上げることができる。これは、成功の機会が実際にかなり大きいということだ。

銃だけを探す初期のAIシステムでも数年前から同じことが言われていたかもしれないが、Ambient.aiが目指しているのはもっと総合的なものである。

「私たちは意図的に、プライバシーの考えを中心にしてプラットフォームを構築しました」と、シュレスタ氏は述べた。AIを活用したセキュリティというと「人はすぐに顔認識が含まれているものと考えるが、私たちの手法ではこの大量のシグネチャイベントがあり、顔認識を必要としないリスク指標を利用できます。何が起きるかを示す画像やモデルは1つだけではありません。これらのさまざまな要素をすべて活用して、システムの記述レベルを上げることができます」。

基本的にこれは、各個人の認識活動を最初から先入観のないものに保つことによって行われる。例えば誰かが座っているか立っているか、どれくらい長くドアの外で待っているか、といった行動をそれぞれ監査し、発見して、構成やグループ全体で検出できた場合、そうした推測の総和も同様に先入観のないものになる。このように、システムの構造上、先入観は削減される。

しかし、先入観は潜行的で複雑であると言わなければならず、先入観を認識して軽減する能力は最先端には後れを取っている。それでも、直感的に言って、シュレスタ氏が述べたように「先入観で見られるものに関する推測のカテゴリーがない場合、そのようにして先入観が入り込むことはない」というのは本当のように思える。そうであることを望む。

Ambient.ai共同創業者。左はCTOのVikesh Khanna(ビケシュ・カナ)氏、右はCEOのシカー・シュレスタ氏(画像クレジット:Ambient.ai)

いくつかのスタートアップが同じように登場しては消えていったのを見てきたので、こうしたアイデアを記録で実証することは重要だ。Ambient.aiは比較的静かにしてきたにもかかわらず、製品に関するその仮説の証明に役立ってきた活発な顧客が多数いる。もちろん、過去2年間は厳密には通常の業務ではなかったが、効果がないのであれば「時価総額で米国最大級のテック企業の5社」が顧客になるというのは考えにくい(しかし現にそうである)。

名前の挙げられていない「Fortune(フォーチュン)500テクノロジー企業」のテストで、認証を受けた人のすぐ後からセキュリティで保護されたエリアに入る「共連れ」を減らすことを目指していた。そんなことをする人はいないと思うだろうか。何と、最初の週に2000のインシデントが特定された。しかし、事象のGIFをほぼリアルタイムでセキュリティ担当者に送信し、セキュリティ担当者はおそらく違反者に警告したのだろう。数字は週に200まで減少した。今は週に10である。おそらく私のような人間によるのであろう。

画像クレジット:Ambient.ai

Ambient.aiがドキュメント化した別のテストケースでは、学校のセキュリティカメラが、放課後に誰かがフェンスによじ登っている様子を捉えた。即座に映像が警備責任者に送信され、警察に通報された。その男には前科があることが判明した。ここで強調したいのは、学校を封鎖する必要があるということではなく(これはそうするのに役立つだろう)、そのドキュメントの中で述べられている別のことである。それは、システムが「誰かがフェンスによじ登っている」という認識と「これは8:45の少し前によく起きる」というような他のことを結びつけることができるということだ。だから、子どもが近道しても警察に通報されることはない。またAIは、よじ登ることと、落ちることと、ぶらつくこととを区別することもできる。こうしたことは、状況によって問題になったり、ならなかったりする。

Ambient.aiの主張では、システムの柔軟性は一部こうした「プリミティブ」による。プリミティブは現場の必要に応じて簡単に再調整が可能で、例えば誰かがフェンスによじ登っても、落ちない限りかまわない。また「あっ、これは誰かがフェンスを切断しているようだ」といった新しい状況を学習することもできる。チームは現在、約100の疑わしい行動の「シグネチャ」を持っており、今後1年でそれを倍に増やすつもりだ。

既存の警備人員の電話や無線機の呼び出しが鳴る機会を制御することで、既存の警備人員の効率が向上すれば、時間の節約になり、結果も良くなる(Ambient.aiは、日常的なアラームの数が概して85~90パーセント削減されると述べている)。また、AIを活用した映像のカテゴリー分類は記録やアーカイブにも役立つ。「夜間にフェンスによじ登る人の映像をすべてダウンロードしなさい」と命令する方が、5000時間手作業でスクラブするよりずっと簡単だ。

5200万ドル(約59億1000万円)のラウンドはa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)が取りまとめたが、Ron Conway(ロン・コンウェイ)氏、Y Combinator(Yコンビネーター)のAli Rowghani(アリ・ローガニ)氏、Okta(オクタ)共同創業者のFrederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)氏、CrowdStrike(クラウドストライク)CEOのGeorge Kurtz(ジョージ・カーツ)氏、Microsoft(マイクロソフト)CVPのCharles Dietrich(チャールズ・ディードリッヒ)氏、その他数名の自分が何に投資しているかわかっている個人投資家の名前もあった。

「今は異色の時代です。セキュリティに携わる者はもっと多くのことを行うように期待されています。誰かがすべてのフィードを見守っている必要はないという基本的な提案は普遍的なものになりました」と、シュレスタ氏は述べた。「私たちは1200億ドル(約13兆6000億円)という多額のお金をセキュリティに費やしています。そこに結果が出ていないのはまともではありません。私たちはインシデントを防ぐことができていません。すべての道が一点に収束しているように感じます。組織が採用できる、将来も有効に使い続けられるセキュリティを提供できるプラットフォームになりたいと思っています」。

画像クレジット:Ambient.ai

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

GE Lightingがサーモスタットや防犯カメラなどの「明るい」アイデアから誕生したスマートホーム製品を多数発表

Savantの子会社であるGE Lighting(GEライティング)は、米国時間1月4日、スマートサーモスタット、温度センサー、セキュリティカメラ、照明の新製品を発表し、スマートホームのラインアップを拡充した。さらに、Cyncアプリと連動したホームスマート化ガジェットを多数開発中であることも発表している。

2020年にGEのライティング部門をSavantに売却されるという電光石火な瞬間を経て、ますます紛らわしい名前となったGE LightingSavant傘下)は、ラスベガスで開催されているCESで、スマートホーム分野で、かつて「C by GE」と呼ばれていた自社ブランド「Cync」で新製品を多数発表し、イノベーションを続けている。このネーミングだけでも、製品 / 会社にいくつ名前が必要なのか、また「シンプルに」というメモが本社の地下にある蒸気管のどこかにいってしまったのではと思う。幸いなことに、製品ラインアップはその命名法よりもわかりやすくなっており、新製品群は世界のPhilips HueとNestのエコシステムに挑むというGE Lightingの決意を強固なものにしている。

GE Lightingのエクスペリエンス担当副社長Paul Williams(ポール・ウィリアムズ)氏は「『最も賢い』スマートホームは、シームレスに連携し、設置や使用が簡単で、究極の利便性、快適性、安全性を実現する信頼できる製品のネットワークで構成されています」と語る。「当社の新製品は、ハブレスで1つのアプリまたは音声ですべてを制御できる新たなホールホーム機能で、消費者がCyncスマートホームを強化する能力を提供します」。

廊下に設置されたCync Smart Thermostat(画像クレジット:GE Lighting)

新製品「Cync Smart Thermostat」は、スマートサーモスタットに期待されるすべての機能を備えているが、さらにいくつかのすばらしい工夫もある。他の主要なサーモスタットと違い、共通のワイヤーなしでインストールすることができ、あらゆるタイプのサーモスタットを備えた古いアパートでも、スマートホーム技術の力を活用するために簡単に使用することができる。このサーモスタット製品は、現在出荷が始まっており、価格は120ドル(約1万3900円)前後になる予定だ。

このサーモスタットは、同社の30ドル(約3500円)の「室温センサー」と組み合わせることで、それぞれの部屋を監視することも可能だ。例えば、寝室の温度が他の部屋より4℃高い場合、強制換気装置を調整することで、その問題を解決することができるかもしれない。そのためにスマートな温度センサーが必要かどうかという議論は別の機会に譲るとして、少なくともその選択肢はある。

Cync smart home camera(有線タイプ)。バッテリータイプや、オプションでソーラーパネルも用意されている(画像クレジット:GE Lighting)

Cyncは少し前に屋外用カメラを発売しましたが、この度、そのラインナップに追加製品としてCync Outdoor Smart Cameraの有線またはバッテリー / ソーラー電源のオプションを発表した。2K/1280Pの高解像度ビデオフィードとナイトビジョン、そして「デジタル旋回ヘッド」(ビデオのクロップを変更するオプション)を搭載し、少なくとも聞いた感じでは、このカメラはかなり堅実な選択のようだ。また、プライバシーとセキュリティを強化するためのオプションも用意されており、クラウドとローカルのSDカードストレージのオプションが利用できる。有線式は100ドル(約1万1600円)、バッテリー式は120ドル(約1万3900円)で、45ドル(約5200円)でソーラーパネルを追加して、監視を継続することができる。

GE LightingのDecorative White Exterior Bulbsは、スマート電球がつまらない見た目である必要はないことを示している(画像クレジット:GE Lighting)

さらぶCESでは、燭台型やグローブ型などさまざまな形状やサイズのスマートなフィラメント型電球や、電球のような形の「汎用電球」など、11種類の新製品が発表されている。白色とフルカラーの2色展開で、明るいアイデアを提案するラインナップだ。もちろん、Wi-Fiを搭載しており、音声コントロール、スケジュール管理、シーン設定など、さまざまな機能をCyncアプリからコントロールすることができる。

Cyncのアプリは、AmazonのAlexa、Google Home、AppleのHome Kitで操作できる。

画像クレジット:GE Lighting

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Katsuyuki Yasui)

米政府機関が禁止措置をすり抜け中国の監視技術を購入、Lorexは人権侵害に関与するメーカーDahuaの子会社だ

軍を含む少なくとも3つの米国連邦機関が、連邦政府での使用が禁止されている中国製の映像監視機器を購入した。

TechCrunchと映像監視ニュースサイトのIPVMが得た購入履歴情報によると、これらの各機関は、Dahua Technologyの完全子会社であるLorexが製造した映像監視機器の購入に数千ドル(数十万円)を費やしていた。Dahuaとは、中国政府のスパイ活動に役立つ技術であるとの懸念から、2019年国防費法により連邦政府への販売が禁止されている中国系企業の1つである。

関連記事:米、政府内でのHuaweiやZTEの機器使用を新国防法で禁止

またDahuaは、イスラム教徒のウイグル人が多く住む新疆ウイグル自治区の少数民族を弾圧する中国の行為に関連しているとして、2019年に米国政府の経済貿易制限リストに追加されている。米国政府によると、中国はウイグル人を監視するための監視装置の供給に、Dahuaが一部製造した技術を用いたとしている。バイデン政権は新疆での人権侵害を「ジェノサイド」と呼び、中国によるウイグル人の監視、弾圧、大量拘束を通した「人権侵害と虐待に関与している」と同社を非難している

関連記事:ムスリム少数民族に対する人権侵犯に加担した8つの中国企業が米商務省の禁止リストに載る

この禁止令が発効した後に、連邦機関が連邦政府の請負業者からLorexの機器を購入したという記録が残っている。

記録によると麻薬取締局(DEA)は2021年5月、ワシントンD.C.を拠点とする技術サプライヤー、I. S. Enterprisesを通じて監視システム用のLorex製ハードディスクを9台購入している。DEAの広報担当者であるKatherine Pfaff(キャサリン・パフ)氏は、この購入は米国共通役務庁(GSA)が運営する政府のショッピングポータル(通称GSAアドバンテージ)を通じて行われたと述べ、GSAに関するコメントを留保したが、Lorexの機器の使用を停止したかどうかについては言及を拒否している。

回答を求めたところ、GSAの広報担当者であるChristina Wilkes(クリスティーナ・ウィルクス)氏はメールで次のように答えている。「GSAは連邦調達規則(Federal Acquisition Regulation:FAR)に基づいて、GSAアドバンテージで販売されているベンダーや製品を審査する手段を複数保持しています。請負業者は対象となる技術を販売しているかどうかを明記することを求めるFARの条項および規定に準拠しなければなりません。遵守していないことが確認された製品は、GSAアドバンテージから削除されます」。

GSAは、禁止された製品が禁止令発効後も購入可能であった理由について明かさなかったが、市販の既製品が2019年の禁止規定に準拠していることを明確化する、新たな検証済み製品ポータルを立ち上げるなどして改善を進めているという。

2019年の禁止規定は、国防権限法(National Defense Authorization Act、NDAA)の第889条という特定の条項として署名されたもので、連邦政府機関がHuawei(ファーウェイ)、Hikvision(ハイクビジョン)、Dahuaなどの特定の中国企業およびLorexなどのその子会社が製造した電子機器を調達および購入することを違法としている。また、889条は連邦政府の請負業者が禁止された電子機器を連邦政府機関に販売することも禁止している。国防総省は、第889条に基づき、食料品や衣料品などのリスクの低い物品を購入するための一部の例外を認める免除措置を受けているが、電子機器や監視装置は認められていない。

また購買記録によると、国防総省の財務管理と軍人への支払いを担当する、米国防総省国防予算経理局(Defense Finance and Accounting Service、DFAS)が2021年7月、ニューヨークのFocus Cameraという店を通じてLorex製のビデオ監視カメラを購入していた。

DFASの広報担当者であるSteve Lawson(スティーブ・ローソン)氏は、eメールで次のように述べている。「2021年7月、DFASの一拠点において建物内の孤立したエリアを監視するためのセキュリティカメラの必要性を確認しました。2019年ジョン・マケイン国防権限法(NDAA)の889条(a)(1)(A)と、特定の通信や映像監視サービスおよび機器に関連する制限を認識していたため、GSA契約を利用して調査を行いました。また、購入した製品や部品がFY19 NDAAで制限されていないことを証明する情報を提供するようサプライヤーに要求しています。今回のご連絡を受け、慎重を期してさらなる分析が行われるまでカメラとコントローラーを無効化いたしました。ご指摘をいただきありがとうございました」。

またこの記録によると、陸軍省が2019年から2021年にかけて、I.S.Enterprises、Focus Camera、そしてカリフォルニア州グレンデールを拠点とするJLogisticsという3つのベンダーからLorexの映像監視カメラと録画機器を購入している。

陸軍はメールによる声明で、これに関する責任は機器を提供した請負業者にあるとほのめかしている。

陸軍報道官のBrandon Kelley(ブランドン・ケリー)中佐によると「2020年8月13日、国防総省は2019年国防権限法889条およびPublic Law 115-232の禁止事項を実施しました。連邦契約でプロポーザルを行う企業は、Public Law 115-232で要求されるものを含む連邦調達規則および国防省の補足条項の遵守をSystem for Award Managementのウェブサイトで表明する必要があります。米国コードのタイトル18、または虚偽請求取締法に基づく民事責任は、企業が虚偽の表示をした場合に適用されます」とのことだ。

下院軍事委員会の民主党広報担当者であるMonica Matoush(モニカ・マトウシュ)氏は声明の中で、委員会は「国防総省がこれらの報告を調査し、立証された場合には被害を軽減し、将来の問題を防ぐために適切な行動をとることを期待する」と伝えている。

また、購入記録によると、禁止令が発効した後も他の連邦政府や軍の機関がLorexの機器を購入したとされている。TechCrunchはこれらの機関に問い合わせてみたが、返答してくれた機関の広報担当者は購入記録がいつ提供されたかについてすぐには確認できず、コメントも得られなかった。ある軍事機関は、回答には「数週間」かかると述べている。

上院情報委員会の委員長であるMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員(D-VA)は、TechCrunchに対して次のように話している。「今回のケースの詳細は聞いていませんが、政府の省庁が購入する商用機器の出所をもっと正確に理解する必要があり、こうした購入の意思決定をする人がリスクを認識しているということを確認する必要があると考えています。議会が2019年の法案にこれらの条項を盛り込んだのはこのためなのです。簡単に言えば、安全保障上のリスクがある企業や、中国のウイグル人などの少数民族に対する弾圧キャンペーンを助長するなど、人権侵害に積極的に関与していると判断された企業を、連邦政府の購買により支援することは絶対にあってはなりません。この主張が事実であれば、このようなことが二度と起こらないようにしなければなりません」。

I.S.Enterprisesの共同設立者であるEddie Migues(エディ・ミゲス)氏に今回の購入について尋ねたところ、同社はこの問題を調査中であると回答。Focus CameraとJLogisticsはコメントを求めても応じてくれなかった。

禁止された機器を政府に提供した請負業者は契約を失う可能性もあるが、この禁止令が発効する前、連邦政府の請負業者には遵守するための準備期間がほとんど与えられなかったと業界団体は主張している。

2020年、米国情報技術工業協議会は「このような広範囲にわたる要求事項の規則の策定に時間がかかったため、請負業者は法の方針を一貫して満たすことができない可能性がある」と伝えている

コメントを求めたところ、Lorexの広報担当者はTechCrunchに次のように回答してくれた。「Lorexの製品は、一般消費者および企業向けに設計されており、NDAAの対象となる米国連邦政府機関、連邦政府出資のプロジェクトおよび請負業者向けではありません。LorexはNDAAの対象となるいかなる個人や組織にも直接販売しておらず、購入者にはこれらの規制を熟知し、遵守することを推奨しています」。

関連記事:本記事はビデオ監視ニュースサイトIPVMとの提携によるものとなる。

画像クレジット:R. Tsubin / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

「IoTテクノロジーの民主化」を掲げるIoT企業ソラコムは12月1日、IoTカメラ「S+ Camera」の新型モデル「S+ Camera Design」の発売を開始した。従来製品の約半分にスリム化され、公共施設などに設置しても違和感のない丸みを帯びたデザインになっている。ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

「S+ Camera」シリーズは、Linuxベースの小型コンピューターとセルラー通信(LTE)を搭載したIoTカメラ。AIアルゴリズムをインストールすれば、用途に合わせたAIカメラソリューションが実現する。専用コンソールを使って映像を確認したり、AIアルゴリズムをリモートで更新するなどが可能。汎用マウントで簡単に設置が行える。

S+ Cameraは、商業施設の混雑度チェック、街中の交通量調査、電気や空調設備のモニタリング、工場や倉庫の入退室管理などに利用されているが、公共の場所で使われることを考え、厚さ5cmという、コンパクトで洗練されたパッケージに収めたのがS+ Camera Designだ。デザインは、プロダクトデザインを手がける日南とのコラボによるもの。 ソラコム、LinuxおよびLTE通信機能採用のAIカメラS+ Cameraの新モデルS+ Camera Design発売

「S+ Camera Design」の特徴は次のとおり。

  • セルラー回線標準搭載:
    データの送受信にセルラー回線を利用するため、ネットワーク環境の構築が不要
  • アルゴリズムの遠隔更新:
    エッジ処理ができ、専用のコンソールからアルゴリズムを遠隔操作で更新可能
  • かんたん設置:
    電源に接続するだけですぐに利用できる。汎用マウントを利用すれば設置も容易
  • AIアルゴリズムをインストールして独自のAIカメラソリューションを実現:
    アルゴリズムはソラコムが提供する「リファレンス アルゴリズム」(無償提供)、自社で独自に開発できる「自社開発アルゴリズム」、パートナー企業が提供する「3rd party アルゴリズム」(有償提供)のいずれかが使える。

概要

  • 外形:164×50×187mm
  • 重量:305g(本体のみ)
  • F値:2.8
  • カメラ角度調整機構:縦横斜めのいずれか一方向に調整可能(手動)
  • 内容:本体、ACアダプター(ケーブル長3m)、汎用型マグネットマウント、SORACOM特定地域向けIoT SIMカード plan-D サイズ:マイクロ(データ通信のみ)、六角レンチ(角度調整用)、IMEIシール
  • 直販価格:4万9800円(税込。送料別)

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Spot AI、通常のセキュリティビデオからより多くの情報を得るプラットフォームの構築に約25億円調達

多くの企業がセキュリティを確保し業務を遂行していくために職場空間を監視しているわけだが、セキュリティカメラは、良くも悪くも、この監視の本質的な部分を担っている。現在、あるスタートアップが突如姿を表し、さまざまなカメラで撮影された映像をより有益なものにするテクノロジーのために資金調達を行っている。Spot AIは、使用されたカメラのタイプや品質に関わらずその映像を「読み取り」、必要とする人誰もがそれらの映像を言葉やカメラに捉えられた画像で検索できるようにするソフトウェアプラットフォームを構築した。

Spot AIは、2018年以来そのテクノロジーと顧客層を静かに構築してきた。同社は現在数百の顧客と数千のユーザーを抱えており、その中にはテクノロジーを他に先駆けて導入しているSpaceXや輸送会社のCheeseman、Mixt 、Northland Cold Storageといった会社も含まれる。

現在Spot AIは、より広い範囲に製品を出荷しており、2200万ドル(約25億円)の資金調達を開示している。このうち、2000万ドル(約23億円)のシリーズAは、Redpoint Venturesが主導しBessemer Venture Partnersが参画し、また前回の200万ドル(約2億円)のシードラウンドはエンジェル投資家のVillage GlobalおよびStanford StartX(同社の3人の創設者はここの出身である)によるものだ。その他の投資家も参画しているが、名前は公表されていない。

現在、多くの企業が現在レガシーテクノロジーを使用しており、それによってギャップが生み出されているわけだが、Spot AIは、そのギャップを埋めることに狙いを定めている。今日職場の監視には、膨大な数のセキュリティカメラ(2019年における推定では米国内だけで7000万台)が使用されており、通常は建物の入り口、オフィスビル自体、工場、その他のキャンパス環境などに設置され、人の動きだけではなく動きのない物体をも監視し、また機械、出入り口、部屋など、ビジネスで使用される場所の状態を追跡している。

問題は、それらのカメラが非常に古く、アナログ設定であることであり、またハードウェアが新しいか古いかにかかわらず、そうしたビデオで捉えられた動画は非常に基本的な性質のものだという点である。そうしたビデオは単一の目的のために設定されており、インデックス化もできず、古い映像は消去され、また必要な時に機能しないことさえある。実際、セキュリティカメラの映像というものは、日頃は無視されており、実際に必要があって映像を見てみると、その映像がひどいか、まったく役にたたないことに気づく(見たいものが映っていないことを発見する)、ということがままある。優れた機能を持ったものもあるが、それらは非常に高価で、テクノロジーに疎いアナログ企業にすぐさま広く受け入れられるとは考えにくい。

これに加え、セキュリティカメラは、ビデオ監視システムの多面的で重要な役割にも関わらず、非難を受けている。この非難は、公共の場でセキュリティカメラがどのように使用されているかや(公共の安全の名の下に、そこに設置され、人々が望むかどうかにかかわらず、人々が行うすべてのことのを静かに観察し記録している)、プライベートなセキュリティビデオ映像が記録された後、どのように流用されるかという、公私両面の理由で発生している。プライベートなセキュリティビデオ映像の流用に関しては、AmazonのRingが映像を警察を共有する、といった意図的なものもあれば、意図しないものもある(企業向けのビデオシステムを構築しているスタートアップVerkadaのビデオにハッカーがアクセスしてその映像をどこか別のところに投稿した事例を参考までに見て欲しい)。

関連記事:アマゾン傘下Ringが警察に映像を取得されたユーザー数についての情報開示を拒否

CEO兼共同創設者のTanuj Thapliyal(タヌジュ・タプリヤル)氏はインタビューで、Spot AIは、善良な意図を持って上記の市場に参入中であると語った。セキュリティカメラはすでに重要な役割を担っているのであり、問題となるのは、セキュリティだけではなく、健康と安全を確保し業務を正常に行えるよう、より良い、より生産的な目的のために、いかにしてセキュリティカメラを使用するかを考えることだ、というのが同社の立場だ。

「(これらのカメラで捉えられた)映像データをより有益なものにし、また職場のより多くの人がそのデータにアクセスできるようにすれば、監視というアイデアからビデオインテリジェンスというアイディアへとそれを変革できるのです。これにより、重要な判断を下せるようになります」とタプリヤル氏はいう。彼はRish Gupta(リシュ・グプタ)氏とSud Bhatija(サド。ブハチジャ)氏とともに同社を創設した。同社の基本姿勢は、すでに多くのカメラが設置されているのだから、それらのカメラをより効果的に責任ある形で使用する方法を見つける必要がある、ということのようだ。

Spot AIシステムは現在3つの部分から構成されている。最初の部分は、Spot AIがオプションとしてすべての顧客に無料で提供する カメラセット で、現在はSpot AIとの契約を終了しても顧客はこれを保持することができることになっている。これらのカメラは5MP、IPベースのデバイスで、ビデオフィードの品質をアップグレードするように作られている。ただし、タプリヤル氏によると、Spot AIのシステムは必要とあれば、あらゆるカメラの映像に対応可能である。

2つ目の部分は、配置されたすべてのカメラからの映像を記録するネットワークビデオレコーダー である。これらは映像を処理し、読み取りを開始し、分類するAIチップを搭載したエッジコンピューターで、Spot AIのシステムの3つ目の部分を通して映像を検索可能なデータに変換する。

3つ目の部分は ダッシュボードで、これによりユーザーは映像をキーワードやプロセスで検索し、また現在のストリームに対しフレームを作成しそのフレーム内で何か注意すべきことが起きた時(例えば、ドアが開いている、または誰かがある領域に入った、または期待されているようにあるものが機能していないといったことまで)、通知を受け取れるようにすることができる。

ビデオサービスのこの部分は、時間の経過とともにより洗練されていく、というのが重要なポイントである(事実、ステルスモードからGAへの移行時にさえ、機能が追加されている)。そこではインターネットに接続されたデバイスを監視するためにデザインされた数多くのIoTが役目を果たす一方、Spot AIの売りは、接続されたデバイスが関係しているかどうかに関係なく、接続されているものと接続されていないものが物理的な空間でどのように移動しているかに、より注意を向けることができる、という点である。

タプリヤル氏にVerkadaについて報告されたセキュリティ問題(2021年始めにあった悪意をもったハッカーが関与した事件、および数年前に遡るが、Verkadaの従業員がビデオシステムを悪用した件の両方)について尋ねてみた。Spot AIはVerkadaがターゲットにしているのと非常に近い市場をテーゲットにしており(さらに偶然両社はともにCiscoに買収されたWi-Fiテック企業Merakiとつながりがあり、どちらも創設者はMerakiの元社員である)、Spot AIが同様の問題をどうやって回避するのか、考えざるを得なかったのだ。Spot AIの顧客もおそらく同じ質問をするだろう。

この質問に対し、タプリヤル氏は次のように答えた。「Verkadaはハードウェアを販売している企業で、彼らのクラウドソフトウェアは Verkadaのハードウェアでしか機能しません。またそれらはとても高価で、カメラ1台で数千ドル(数十万円)します(Spot AIの場合、設置費用は2200ドル(約25万1000円)からだが、カメラは無料)。またVerkadaは、アクセスコントロール、環境センサーなど、建物のセキュリティ向けのハードウェアを多く販売しています。それらは凄いソフトウェアを備えたすごい製品です」。

しかし「当社はハードウェアビジネスをしているわけではありません。私たちは映像へのアクセスや使用を容易にすることに注力しており、カメラハードウェアはお客様が望めばすべて無料で差し上げています。当社の狙いは、当社のサービスを通してお客様に映像からより多くの価値を得ていただき、それを足がかりとして、お客様からソフトウェアサブスクリプションを通じてより多くの仕事をいただく、ということです」。

またセキュリティについては、同社のコンセプトは他社とは大きく異なり「お客様間のアクセスをサイロ化し、システムへのアクセスに多重認証を必要とする」ゼロトラストアーキテクチャを中心に構築されている。

「他のテクノロジー企業のように、私たちは常に自社のサイバーセキュリティを見直し、問い直し、改善しています。私たちのゴールは、優れたウェブダッシュボードを提供し、お客様に適した最善のものを選んでいただくことです。例えば、映像のクラウドバックアップは、追加費用を払わなくてもお客様がオプトインできるオプショナルの機能です。この製品はサブスクリプションにすでに含まれているプライベートストレージやローカルストレージで機能します。これは、HIPAA要件を満たさなければならない医療関連のお客様に特に役立ちます」。

同社がセキュリティの問題に対応するための立場を取り、それにふさわしい製品を揃えているのはすばらしいことだ。このセキュリティ対応に実効性があるかは、実際試してみなければわからないし、またこれはビデオによる監視が悪用されることなく使用できるものであるという基本的な考え方に基づいている。多くの企業にとってこれは成功の見込みのないものかもしれない。とりあえず今指摘する価値があるのは、Spot AIは公共の安全や政府向けにビジネスを行うつもりはない、ということである。同社は私企業を対象に、彼らがセキュリティカメラへの投資と使用を再考してくれるチャンスに焦点を当てている。

事実、投資家に向けての主なメッセージは、Spot AIが非技術系の顧客も含め、できるだけ広い範囲の顧客を引きつけるに十分なユーティリティを備えたテックプラットフォームをいかに作成してきたかである。

「カメラを使用して日々の意思決定を行っている新規ユーザーや企業が殺到しています。レガシーベンダーが溢れかえっているこの業界では、Spot AIのソフトウェアに焦点を当てたモデルは、お客様にしてみれば、はるかに簡単な選択なのです」とRedpoint VenturesのMDであるTomasz Tunguz(トーマス・タンガス)氏は述べた。

また、Bessemer Venture PartnersのパートナーであるByron Deeter(バイロン・データー)氏は、次のように付け加えた。「本日、専有のAIカメラシステムにアクセスできるのは世界の最大手企業だけで、ほとんどの中小企業は取り残されています。Spot AIの使いやすいテクノロジーは、多くの企業(規模の大小に関わらず)による映像データの使用を促進するでしょう」。

画像クレジット:Spot AI

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

LED一体型ネットワークカメラによる鉄道車両内のリアルタイム監視に向けMOYAIがエッジAIを開発、ギリアのAI技術を採用

凸版印刷とハイフライヤーズが位置情報・映像・バイタルデータにより保育園での園児の居場所や健康状態を可視化する実証実験

MOYAI(モヤイ)は11月19日、LED一体型ネットワークカメラ「IoTube Pro.W6」「IoTube Pro.4G」においてエッジAIを実現するための開発を、ギリア(Ghelia)のAI技術を用いて行なうことを発表した。IoTube Pro.W6は2022年4月より、またIoTube Pro.4Gは2022年6月より納品開始予定。

IoTube model Pro.シリーズは、遠隔地からのリアルタイム監視と双方向通話が可能なLED一体型製品。鉄道車両内搭載に向け各必要適合規格をすべて取得し、2020年7月に東急電鉄が導入したモデルの製品品質をベースにしたものという。魚眼カメラで撮影した動画をSDメモリーカードに保存可能なほか、通信方式は用途に合わせてWi-Fi 6とLTE/4Gの2種類から選択できる。サーモセンサー・マイク・スピーカー・煙感知センサー・温湿度センサー・3D加速度センサー・BLEビーコン・CO2センサーも搭載している。

また、エッジAI機能により、防犯カメラおよび行動解析が可能なほか、社会的弱者(車椅子・白杖・ベビーカーなど)の発見と見守りや、アフターコロナに向けた密度測定、マスク判定検知、行動分析にも利用できる。鉄道車両内での異常事態検知や非常通報ボタンとの連携、リアルタイム監視による現場状況の可視化、乗客への誘導指示といった活用を想定しており、鉄道車両内での問題発生の抑止力や有事の対応力の強化においても期待されているという。

ギリアでは、AIの社会実装で培った独自技術をベースに、「人物検出」「姿勢検出」「視線検出」など様々な利用シーンに特化したAIソリューションを提供。ギリアのAIモデルを搭載したIoTubeを利用することで、公共空間の安心安全を守るだけではなく、マーケティングや様々なソリューションへの活用が可能としている。

鉄道車両内での応用による異常事態検知では、「視線推定による異常事態感知」(複数の乗客が異常者・事態を凝視する行動)、「動線感知による異常事態感知」(複数の乗客が一定方向に逃げる行動)、「一定もしくは複数の警戒閾値を超えた場合に司令・運転士・車掌にアラートが発報」「AIによる避難者数・転倒者数の把握」などを挙げている。さらに、マイクセンサーの集音データをAIが解析し、通常騒音以外の音域、異常な足音・悲鳴・怒号などを検知するという。

鉄道車両内での応用による異常事態検知〜リアルタイム監視(イメージ)

鉄道車両内での応用による異常事態検知〜リアルタイム監視(イメージ)

このプロダクトで使用されるAI技術を開発したギリアは、「ヒトとAIの共生環境の実現」を目指して、社会や暮らしの中でAIによる能力拡張を実現し、課題解決や効率化に加えてAI技術による歓び・発見・感動体験を提供することをビジョンとするスタートアップ。同社CEOの清水亮氏が創業したUEI(2020年9月解散)とソニーコンピュータサイエンス研究所、ベンチャーキャピタルWiLが2017年に共同設立した。

ワイヤフリー防犯カメラ「Arlo Go 2」はバッテリー駆動とモバイルデータ接続を追加

建設現場や別荘など、アクセスしにくい場所に設置することを想定したArloの新製品「Arlo Go 2 LTE/Wi-Fi Security Camera」は、空き巣や泥棒などの悪人を監視するために、いつでもどこでも使用することができる。

また、同社はArlo Secureサブスクリプションサービスを販売している。このサービスでは、30日分のクラウド録画ライブラリを利用できる他、映像をコンピュータビジョンで解析し、人物、動物、車両、荷物を個別に検出することができる。また、このサービスには、ボタンを押すだけでカメラのある場所に緊急サービスを派遣することができる緊急時対応機能も含まれている。

カメラは風雨に耐える堅牢な設計で、microSDカードへの安全なローカルストレージを提供し、接続機能を内蔵している。カメラは、利用可能な場合はWi-Fi接続を利用して同社のサーバーに電話をかけることができる。また、お気に入りのテレビ番組の最新エピソードがちょうどおもしろくなってきた瞬間にまたしてもWi-Fiがダウンした場合には、LTEネットワークをプライマリまたは代替オプションとして利用することも可能だ。

Arloの製品担当SVP兼CIO(最高情報責任者)であるTejas Shah(テジャス・シャー)氏は、次のように述べている。「Arlo Go 2は、前作Arlo Goの成功を受けて開発されたもので、アクセスしにくい場所でワイヤフリーのセキュリティを求める人にとって、最も汎用性の高いソリューションとなっています。Arlo Go 2は、モバイルネットワークとWi-Fiのどちらでも動作するため、ユーザーは用途に応じて最適な接続方法を選ぶことができます」。

Arlo Go 2にはGPS機能が搭載されているため、複数のデバイスを広い範囲でモニターすることが可能だ。また、皮肉な状況が発生し、泥棒が家には入らずカメラだけを持って行ってしまった場合でも、カメラを探しに行くことができる。また、スピーカーとマイクを使った双方向通信機能を搭載しているので、安全な距離から泥棒に呼びかけることもできる。さらに、侵入者に監視されていることを知らせるサイレンを内蔵している。

価格は250ドル(約2万8000円)で、Verizon(ベライゾン)から米国時間11月4日発売され、2022年には他のキャリアからも発売される予定だ。

画像クレジット:Arlo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

米小売大手が中国企業の防犯カメラを店舗から撤去、人権侵害を指摘され

米国の大手小売企業であるHome Depot(ホーム・デポ)とBest Buy(ベスト・バイ)は、中国の防犯ビデオ技術メーカーであるLorex(ロレックス)とEzviz(イージービズ)の製品を、人権侵害との関連性を理由に店舗から撤去した。

Home Depotは「当社は最高水準の倫理的な調達を行うことを約束しており、この件が明るみに出たとき、直ちにLorex製品の販売を中止しました」と、TechCrunchに送られてきた声明の中で述べている。同社はまた、Ezviz社製品の販売も中止したことを広報担当者が認めた。Best Buyは、LorexおよびEzvizとの「関係を打ち切る」と発表した。

Lowe’s(ロウズ)はコメントを控えていたものの、TechCrunchや防犯ビデオ関連情報サイトのIPVMからの問い合わせを受け、Lorex社製品を店舗の棚から撤去した。

LorexはDahua Technology(浙江大華技術、ダーファ・テクノロジー)の子会社であり、EzvizはHikvision(ハイクビジョン)のセキュリティ機器ブランドだ。中国に本社を置くDahuaとHikvisionは、ウイグル族のイスラム教徒が多く住む新疆ウイグル自治区で、中国が継続的に行っている少数民族の弾圧に関係した企業として、2019年に米国政府の経済ブラックリストに追加された

関連記事:ムスリム少数民族に対する人権侵犯に加担した8つの中国企業が米商務省の禁止リストに載る

米国政府によると、中国はウイグル人を監視するための監視機器の供給を、HikvisionやDahuaなどの技術系企業に大きく依存しているという。Biden(バイデン)政権は、新疆での人権侵害を「ジェノサイド(大量虐殺)」と呼び、中国のビデオ監視機器メーカーが、「ウイグル人やカザフ人などのイスラム系少数民族に対する中国の弾圧運動、独断的な集団拘束、ハイテクを駆使した監視の実行において、人権侵害や虐待に関与している」と非難した。

国連の監視団によると、中国当局は近年、100万人以上のウイグル人を収容所に拘束しているという。中国はこの疑惑を長い間否定してきた。

しかし、この制裁措置はDahuaやHikvisionの子会社であるLorexやEzvizには及ばず、また、連邦政府以外には適用されないため、現在も一般的に消費者はこれらの技術製品を自由に購入することができる。

先週までLorexは、Home Depot、Best Buy、Lowe’s、Walmart(ウォルマート)、Costo(コストコ)を5つの国内正規販売店として自社ウェブサイトに掲載していた

コメントを求められたLorexの広報担当者は次のように答えた。「2018年の買収以来、Lorexは当社の親会社について、小売店パートナーと完全に透明性を保ってきました。また、FCC(米国連邦通信委員会)の規則制定案に関する質問への対応も含め、当社は様々な規制やコンプライアンスの問題に関して、これらの企業の代表者と定期的に連絡も取っています」。

Lorexは、同社製品が撤去された後のフォローアップメールには応じていない。Lorexは自社のウェブサイトから大手小売企業5社のロゴを削除したものの、依然としてWalmart社を除く4社を同社の販売店として掲載している。

WalmartとCostcoは、LorexとEzvizの製品を引き続き在庫しているが、コメントの要請には応じていない。

世界ウイグル会議の会長であるDolkun Isa(ドルクン・エイサ)氏は、米国政府による強制労働防止や中国企業への制裁などの「意味のある行動」を歓迎しつつも、「弾圧をさらに進めることを直接支援している米国企業がまだ存在することは受け入れられない」と述べている。

Hikvisionは、TechCrunchとIPVMのコメント要求に応じていない。

編集部注:この記事は、防犯ビデオ関連情報サイト「IPVM」との協力で取材したものとなる。

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画像クレジット:Lorex / YouTube
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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カップホルダーを車上荒らし防止デバイスに変えるKeep Technologiesのプロダクト

David Moeller(デビッド・メラー)氏は次の会社を起業するつもりはなかった。ウェブサイトバックアップスタートアップのCodeGuard(コードガード)とハードウェア企業Claw Hanging Systems(クローハンギングシステムズ)を起業したことで連続起業家としての称号をすでに勝ち得ていたからだ。

ところが、車上荒らしが相次ぐ中、メラー氏は自分のクルマを盗難から守る製品を急いで探していた。それでわかったのは、市場の車上荒らし対策製品は需要に応えていない部分があり、それを埋める製品を出せばビジネスチャンスになるということだった。

メラー氏は数年に渡ってプロトタイプと研究開発を行い、ビジネスプランを立て、Keep Technologiesという会社を創業する。このアトランタ本拠のスタートアップは、TechCrunch Startup Battlefieldで事実上のデビューを果たし、2020年秋に正式に創業した。

「最初は起業しない理由を本当に探していました」とメラー氏はいい、市場調査、特許調査、消費者調査に数カ月を費やしたあと、プロトタイプを制作したと説明する。「ちょうど会社を売却したところでしたし、起業を検討していたときは、ゴルフも本格的にやりたかったし、下の娘も生まれたばかりだったので、何か危険信号はないか、起業すべきでない理由が欲しかったのです」。

しかし、起業しない理由は見つからなかった。それどころか、車両の安全性とセキュリティを実現するスマートデバイススイート、および付随するクラウドサービスとモバイルアプリも開発してしまった。フラグシップ製品のKnightは、車両への侵入と車周辺の動きの検出器で、車内のカップホルダーに取り付けて使う。もちろん、カップホルダーもそのまま使用できる。

すでに5つのユーティリティ特許を取得し、他にも16の特許を申請中のKeep Technologyは、多くの投資家の目を惹きつけている。メラー氏は最初、自己資金でKeepを立ち上げた。以降、数多くの投資家たちから4億ドルの資金を調達している。Cloudflareの共同創業者兼CEOのMatthew Prince(マシュー・プリンス)氏、アーリーステージのテクノロジー投資企業TechOperators(テックオペレーター)の共同創業者Tom Noonan(トム・ノーナン)氏、Ellis Capital(エリスキャピタル)のBert Ellis(バート・エリス)氏、 Kenzie Lane Innovation(ケンジーレーンイノベーション)のCEO Tripp Rackley(トリップ・ラックレー)氏、Intercontinental Exchange(インターコンチネンタルエクスチェンジ)の最高情報セキュリティ責任者Jerry Perullo(ジェリー・ペルロー)氏などがKeepに投資している。

動作原理

Keep TechnologyのKnightデバイスは、車両のOBDポートに接続して使う。コードは床板の下を通って車両の中央コンソールに接続される。そこには通常、カップホルダーがある。Knightはカップホルダーに固定して使う。デバイスを回してしっかり固定するとアクティブ化される。

Knightデバイスは所有者以外の誰も取り外すことができない、とメラー氏は説明し、取り付けおよび取り外し作業中のアラーム機能に関する特許もいくつか取得していると付け加えた。Knightにはカメラが内蔵されており、180度の視界を確保できる。携帯電話にも接続可能で、パッシブ赤外線方式(PIR)およびマイクロ波センサーによって車内外の動きを検出できる。

画像クレジット:Keep Technologies

つまり、Knightは車上荒らしの犯人の動画を記録し、そのデータをクラウドに送信し、ユーザーのモバイル端末にも送ることができる。また、クルマの所有者の代わりに動画を確認して、警察に通報するという行動を取ることができるモニタリングサービスも提供している。

目的はもちろん、クルマへのいたずらやパーツの盗難を記録するだけでなく、車上荒らしを防ぐことだ。Keep製のデバイスはBluetooth経由で付属のフォブまたはユーザーのモバイルアプリと通信する。いずれにしても、所有者がドアをロックしてクルマを離れると、デバイスが自動的にアクティブ化される。

何者かがクルマに近づき車内を覗き込んだら、デバイスは抑止モードになり、LED光が点滅し甲高い警告音が鳴る。これは今日市場に出ている大音量の屋外用アラームとは異なる。光の点滅と甲高い警告音は誰かがクルマの周辺をうろついているときだけ発動され、その人が去ると止む。その人がクルマのドアを開けようとすると、最大120dbの警告音を発するブザー(メラー氏によると100人の赤ん坊が泣き叫んでいるような音)が鳴り、魚眼レンズがビデオを録画し転送する。

メラー氏によると、Knightデバイスの価格は299ドル(約3万3000円)、サブスクリプションの場合は年50ドル(約5500円)にする予定だという。本格的な監視サービスを望むユーザーには、月30ドル(約3300円)の価格設定を考えている。製品のリリースは2022年の中頃の予定だ。

Keep創業までの経緯

ジョージア工科大学で機械工学の学位を取得したメラー氏は、GEに就職し、ごく普通にプロとして仕事を始めた。GEでは中東、中国、ダラスの各支社に配属され、4年間在籍した。その後、投資銀行に転職するため仕事を辞め、ハーバードビジネススクールに入学した。起業家精神が芽生えたのはその頃だった。

メラー氏と友人はAmerican Inventorというリアリティーテレビ番組(2007年にABCで放送されたShark Tankの先行番組)に出演する。2人はThe Clawという自転車用ラックを発明し、ファイナリスト6組に残った。最終的には、The ClawをWhirlpool(ワールプール)にライセンス供与し、Lowe’s(ロウズ)、Home Depot(ホームデポ)、Amazon(アマゾン)で100万台以上を売り上げた。

メラー氏は、その夏の前半にAmerican Inventorの撮影を行い、後半は某投資銀行でインターンとして経験を積んだ。

「その夏の終わりまでには、その自転車用ラックが売れなくても、起業家になると決心しました」とメラー氏はいう。「あの経験で、大きなリスクを取ること、そしてその結果起こり得ることに対する私の考え方は大きく変わりました」。

Claw Hanging Systemsを立ち上げたメラー氏は、続いてCodeGuardを起業する。Clawの創業者は製品が番組で紹介されたときに先行予約を受けられるようにウェブサイトを立ち上げていた。ワールプールや他の会社に、この製品の需要があることを示すことが目的だった。が、このウェブサイトは、American Inventorが放映される前にクラッシュしてしまった。

数年後、メラー氏は、ウェブサイトバックアップスタートアップCodeGuardをジョージア工科大学の教授と共同で創業する。CodeGuardはTechCrunch Disrupt 2011に参加し、コンペでファイナリストに残った。その後すぐ、CodeGuardはCloudflareと提携し、2018年、Sectigoに買収された。

メラー氏はその後2年間、Sectigoに在籍していた。当時、同氏は、夜間も週末も費やして神経科学向けのハードウェアの開発を始めた。この取り組みはジョージア工科大学とMITからのスピンアウト組で構成されるNeuromatic Devicesとして会社化され、メラー氏は開発したハードウェアをこの会社から販売するようになる。

CodeGuardをSectigoに売却した頃から、メラー氏は立て続けに車上荒らしの被害に遭う。アトランタで近隣に引っ越した直後に被害に遭ったのを期に、同氏は、車上荒らしの被害を防ぐためのセキュリティデバイスまたは製品について考えるようになった。

今後の展望

画像クレジット:Keep Technologies

KeepはKnight以外にもいくつか製品を出している(製品名はチェスの駒の名前から取っているものが多い)。具体的には、カメラは内蔵していないが、クルマの周辺の動きや車内への侵入は検知できる廉価版のPawn、フロントガラスに貼り付けて使う360度の視界を提供するRookなどがある。

メラー氏によると、Knight、Pawn、Rookの3機種はKeepの初期製品に過ぎないという。同社はメラー氏を含めて11人の会社だが、例えば盗難の被害に遭うことが多いガス浄化装置(自動車の排出ガス中の有害成分を、触媒を使って低減する装置)の盗難防止デバイスなど、上記以外のセキュリティデバイスやセンサーの開発にも取り組んでいる。今後登場するアドオン製品としては、座席モニタリングセンサー、ドア / トランク / 給油口監視装置、カップ式無線充電装置、GPS追跡強化タグなどがある。

またKeepは、Lookoutと呼ばれる製品も設計している。これは、フロントガラスに取り付けて、警察官による職務質問を録画する小型パック型デバイスだ。といっても、メラー氏はこのデバイスでドライブレコーダー業界に参入しようとしているわけではない。むしろ、大手のドライブレコーダーメーカーと提携して、Lookoutを組み込んでもらうほうが可能性があると考えているようだ。

画像クレジット:Keep Technologies

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

【コラム】物理的セキュリティにおける「IoT」の過去、現在そして未来

Axis Communicationsが1996年のアトランタオリンピックの後に最初のインターネットプロトコル(IP)カメラをリリースしたとき、初期の混乱がある程度存在した。コネクテッドカメラはその当時市場が求めていたものではなく、多くの専門家が必要かどうかを疑問視していた。

もちろん今日では、従来のアナログカメラはほぼ全面的に段階的廃止へと追い込まれており、組織がIoTデバイスのもたらす大きな利点を認識するようになったことを反映している。しかしその技術は、初期の頃は大きなリスクと感じられていた。

それ以来状況が変わったと述べることは、劇的に控えめな表現になるであろう。「モノのインターネット(IoT)」の成長は、物理的セキュリティが進化してきた過程の一端を象徴している。コネクテッドデバイスは標準的なものとなり、録画されるビデオの枠を超えたエキサイティングな新しい可能性を切り開いた。IPカメラの改良や広範な普及といったさらなる進展は、アナリティクスの改善、処理能力の向上、オープンアーキテクチャ技術の成長など、追加的なブレークスルーを後押ししている。IPカメラが最初に発売されてから25周年を迎えた今、この業界がどこまで来たのか、そしてこれからどこに向かうのかを考えてみる価値はあるだろう。

技術の改良がIPカメラ台頭の到来を告げる

現在のIPカメラを1996年に発売されたものと比較するのは、ほとんど滑稽とも言える。当時は確かに革新的だったが、これらの初期のカメラは17秒に1フレームしか処理できなかった。今日のものとはかなりの差がある。

だがこの欠点があった一方で、物理的セキュリティの最先端にいる人々は、IPカメラがどれほど壮大なブレークスルーをもたらすかを理解していた。つまり、カメラのネットワークを構築することでより効果的な遠隔監視が可能になり、この技術を拡張できれば、さらに大規模なシステムを配備して別々のカメラグループを結びつけることが可能になるだろうということだ。初期のアプリケーションとしては、油田、空港の着陸帯、遠隔地の携帯電話基地局の監視などが含まれていただろう。さらに良いことに、この技術は、まったく新しいアナリティクスケイパビリティの世界を開くポテンシャルを有していた。

もちろん、その無限のポテンシャルを現実のものにするには、より優れたチップセットが必要だった。革新的であろうとなかろうと、初期のこの種のカメラの限られたフレームレートでは、従来の監視アプリケーションに広く採用されるほどの有効性は望めなかった。この問題を解決するのに多大なリソース投資を必要としたが、ほどなくこれらのチップセットが改良され、IPカメラは17秒に1フレームから1秒に30フレームの性能を持つようになった。フレームレートの低さはもはやIPカメラを避けてアナログカメラを選ぶ理由にはなり得ず、開発者はこのデバイスのアナリティクスのポテンシャルを探り始めることができるようになった。

おそらく最も重要な技術的飛躍は、組み込みLinuxの導入であろう。これにより、IPカメラは開発者の観点からより実用的なものになった。1990年代は大半のデバイスが独自のオペレーティングシステムを使用していたため、開発に困難をきたしていた。

企業内でさえ、プロプライエタリシステムは開発者が特定の技術について訓練を受ける必要があることを意味しており、時間と費用の両面のコストが企業に生じていた。Wind Riverオペレーティングシステムなど、業界内で標準化が試みられたが、最終的には失敗に終わっている。それらはあまりにも小規模で、その背後には限られたリソースしか置かれてなかった。さらに、より優れたソリューションとしてLinuxがすでに存在していた。

Linuxは広範囲の利点をもたらしたが、その中でも特に大きかったのは、オープンソースコミュニティの他の開発者とのコラボレーションである。これは2つの方向に走る1つの道筋だった。ほとんどのIPカメラにはLinuxを実行するのに必要なハードディスクがなかったため、デバイスがフラッシュメモリチップをハードディスクとして使用できるようにする、JFFSとして知られるハードウェアが開発された。この技術はオープンソース化されており、現在は3世代目だが、今でも広く利用されている。

圧縮技術も同様の課題を呈しており、90年代後半から2000年代前半にかけてのデータ圧縮モデルはビデオにはあまり適していなかった。当時、ビデオストレージでは個々のフレームが1つずつ保存されていたため、データストレージは悪夢のような状況に陥っていた。幸いなことに、H.264圧縮方式がビデオを念頭に置いて設計され、2009年に普及が進んだ。

その年の終わりまでに、IPカメラの90%超と大部分のビデオ管理システムがH.264圧縮方式を使用するようになった。圧縮機能の向上により、メーカーのビデオ解像度も改善された点を注記しておくことが重要である。この新しい圧縮方式が登場するまで、ビデオ解像度は60年代のNTSC/PAL以降変化することはなかった。今日ではほとんどのカメラが高解像度(HD)で録画できるようになっている。

  • 1996年:最初のIPカメラがリリース。
  • 2001年:ビデオモーションを検知するエッジベースのアナリティクスが登場。
  • 2006年:最初のダウンロード可能なエッジベースアナリティクスが利用可能になる。
  • 2009年:フルHDが標準のビデオ解像度に; H.264圧縮が主流になる。
  • 2015年:スマート圧縮がビデオストレージに革命をもたらす。

アナリティクスの成長

アナリティクスは、必ずしも「新しい」技術というわけではない。IPカメラの黎明期にも顧客はさまざまなアナリティクスケイパビリティを求めていた。しかし、この技術は飛躍的な進歩を遂げている。今日の高い基準からすると古めかしく思えるかもしれないが、ビデオモーション検出はIPカメラに搭載された最初期のアナリティクスの1つだった。

顧客が必要としていたのは、特定のパラメータの範囲内で動きを検出して、木が風に揺れたり、リスが通り過ぎることで誤アラームが発生しないようにする方法だった。この種の検出および認識技術のさらなる改良により、物理的セキュリティの多くの側面が自動化され、疑わしいアクティビティが検出された場合にアラートをトリガーし、それが人間の注意喚起につながるようにした。人間の可謬性の問題を解決することで、アナリティクスはビデオ監視をリアクティブツールからプロアクティブなツールへと変化させた。

信頼性の高い動きの検出は、今でも最も広く利用されているアナリティクスの1つである。誤アラームを完全に排除することはできないものの、近代的な改良を経て、潜在的な侵入者を検出する信頼性の高い方法として機能するようになっている。オブジェクト検出も人気が高まっており、自動車、人、動物、その他のオブジェクトを分類する能力の向上が進んでいる。

ナンバープレート認識は多くの国で普及しており(米国ではそれほどでもないが)、犯罪行為に関与する車両を特定するためだけでなく、駐車場での認識のようなシンプルな用途にも利用されている。車のモデル、シャツの色、ナンバープレートの番号といった詳細情報は、人間の目では見逃されたり、認識できなかったりする可能性が高い。しかし、モダンアナリティクスにより、データは容易に参照できるようにカタログ化され、格納される。ディープラーニングのような技術の出現は、ラベリングとカテゴライズの改善によるパターン認識とオブジェクト分類の機能向上を特徴としており、アナリティクスのこの領域におけるさらなる前進を促すだろう。

アナリティクスの台頭は、セキュリティ業界がオープンアーキテクチャ技術を採用した理由を浮き彫りにすることにもつながる。簡単に言えば、単一のメーカーでは顧客が必要とするすべてのアプリケーションに対応することは不可能だということだ。オープンアーキテクチャ技術を使用することで、メーカーは、特定のユースケースに合わせてデバイスを特別に調整することなく、顧客が自身に適したソリューションを追求できる環境を整えることができる。病院は患者の苦痛の兆候を検出する音声分析の追加を検討しているかもしれない。小売店は人数の集計や盗難の検出にフォーカスする可能性がある。法執行機関が発砲の検知に重点を置くことも考えられる。これらのアプリケーションのすべてが同じデバイスモデル内に組み込まれ得るのだ。

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、物理的セキュリティデバイスとアナリティクスの両方に興味深い新たな用途が生まれたことにも注目する必要がある。ただし、発熱の測定に対するサーマルカメラの使用など、一部のアプリケーションについては高い精度での実装が難しいことが判明している。医療業界の間ではカメラの使用が大幅に増加したが、こうした精度の問題に変化が生じる可能性は低い。病院は病室内におけるカメラの利点を見出しており、安全な環境を維持しながら、医療専門家が患者をモニタリングし、患者と通信することを可能にするビデオおよびインターコム技術を活用している。

クロスライン検出のようなシンプルなアナリティクスでも、転倒リスクのある患者が指定されたエリアから出ようとする場合のアラートを生成でき、事故や全般的な障害を低減できるポテンシャルがある。このようなアナリティクスが今日ではわずかな言及でしかないという事実は、物理的セキュリティがIPカメラの黎明期からどれほど進んでいるかを浮き彫りにしている。

セキュリティの将来を見据える

つまり、今日のトレンドを検証することで、セキュリティ業界の将来を垣間見ることができる。例えば、ビデオ解像度は確実に向上し続けるだろう。

10年前、ビデオ監視の標準解像度は720p(1メガピクセル)であり、さらにその10年前はアナログNTSC/PAL解像度の572×488、すなわち0.3メガピクセルであった。今日の標準解像度は1080p(2メガピクセル)で、ムーアの法則を定石通りに適用すると、10年後には4K(8メガピクセル)になることが見込まれる。

これまでと同様、高解像度ビデオが生成するストレージの量が制限要因となっているものの、Zipstreamのようなスマートストレージ技術の開発が近年大いに貢献している。高解像度ビデオを可能にするスマートストレージとビデオ圧縮のさらなる改良が期待できるだろう。

サイバーセキュリティはまた、メーカーとエンドユーザーの双方にとって大きな懸念となりつつある。

先頃、スウェーデンの大手小売業者の1社がハッキングのために1週間閉鎖された。他企業も安全性の低いデバイスを使い続ければ同じ運命をたどるだろう。どのようなソフトウェアにもバグが含まれている可能性があるが、これらの潜在的な脆弱性を特定して修正することにコミットする開発者とメーカーだけが信頼できるパートナーと見なされ得る。世界全体にわたって、サイバーセキュリティの改善を義務づける新たな規制が政府により可決される可能性が高くなっている。カリフォルニア州の最近のIoT保護法は、業界が期待し得ることを示す早期の指標となるだろう。

最後に、倫理的な行動がより重要になり続けるだろう。顔認識のような技術が悪用されることなく、どのように使用されることを想定しているかを示すガイドラインを公表し、自社の倫理ポリシーを前景化し始める企業が増えている。

新しい規制が登場する一方で、規制自体は常に遅れをとっている。ポジティブな評価を得たい企業は独自の倫理ガイドラインに準拠する必要がある、ということを特筆すべきであろう。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックを受けて、倫理的な配慮を主要な懸念事項として挙げる消費者が増えている。今日の企業は、責任あるプロダクトの使用をどのようにブロードキャストし実施するかについて、強く検討する必要がある。

変化は常にすぐ近くにある

IPカメラが導入されて以降、物理的セキュリティは大きな発展を遂げた。ただし、そこで起こった変化の数々は、顕著ではあるものの、20年を超える年月をかけてもたらされたことを心に留めておくことが重要だ。変化には時間がともない、多くの場合、予想以上に時間がかかる。それでも、現在の業界の状況と25年前の状況を比較するとき、感銘を受けずにはいられない。技術は進化し、エンドユーザーのニーズもシフトしていく。業界の主要プレイヤーでさえ、時代に対応する能力に応じて現れたり消えたりしている。

変化は避けられない。しかし、今日のトレンドを注意深く観察し、それが今日の進化するセキュリティニーズにどのように適合しているかを把握することは、今日の開発者やデバイスメーカーが将来に向けた自らの位置づけを理解することに役立つ。パンデミックは、今日のセキュリティデバイスが、ほんの数年前には誰も予想しなかった方法で付加価値を提供できるという事実を浮き彫りにした。そして、オープンなコミュニケーション、信頼できる顧客サポート、倫理的な行動の重要性をさらに際立たせている。

私たちが将来に向かって進む中で、これらのコアバリューを優先し続ける組織は、最も大きな成功を収める組織の1つとなるであろう。

編集部注:Martin Gren(マーティン・グレン)氏はAxis Communicationsの共同創業者であり起業家、そして最初のネットワークカメラの発明者。

画像クレジット:Erlon Silva/TRI Digital / Getty Images

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(文:Martin Gren、翻訳:Dragonfly)