早起きは三文の「損」であることが判明!? 朝型人間と夜型人間の睡眠の問題と生産性との関連を調査

早起きは三文の「損」であることが判明!? 朝型人間の夜ふかしと夜型人間の早起きに関する生産性との関連を調査

東京医科大学は3月28日、いわゆる朝型人間と夜型人間の睡眠の問題と生産性との関連性を調査し、朝型人間の夜ふかしと、夜型人間の早起きが、生産性低下に関連していることを明らかにした

人間には、早寝早起きで昼間に高い生産性を発揮する朝型の人と、遅寝遅起きで夜に高い生産性を示す夜型の人がいる。こうした朝型か夜型かの体内時計の傾向は「クロノタイプ」と呼ばれている。クロノタイプは遺伝や細胞周期によって決められているため、後天的に修正することは難しい。そのため、朝型の人の夜勤、夜型の人の早朝勤務では体の調子が出ずに生産性が下がり、これを続けると健康上の問題が生じることがわかっている。しかし、クロノタイプと生産性低下との関連を調べた既存研究がわずかにあるものの、見解が一致していない。そこで、東京医科大学精神医学分野の志村哲祥兼任講師らによる研究グループは、クロノタイプと生産性の関係、つまり本当に「早起きは三文の得」なのかを調査した。

調査対象は、2017年から2019年にかけて、IT・官公庁・金融・放送業・コンサル業などの第三次産業42社に勤務する人のうち、質問紙調査に回答しデータ利用に同意した8155人。平均年齢は36.7歳。

まずは体内時計の指標となる「睡眠負債がない状態において、自然に眠り自然に起きるときの、睡眠時間帯の中間時刻」を調べたところ、平均は午前4時16分だった(平均4:16。標準偏差:1:33)。これは、0時過ぎに寝て8時ごろに起きることを意味し、ここに属する人が全体でもっとも多かった。そして、午前1時30分以降に寝て9時30分以降に起きる夜型と、夜10時半ごろ前に寝て6時半以前に自然に起きる朝型の人とが少なくない割合で存在した。

生産性については、1時間の遅寝で生産性が0.29%低下し、1時間の早起きで0.14%低下することがわかった。この傾向には朝型と夜型で違いがある。朝型は起床時刻による影響はなく、入眠時刻が1時間遅れると生産性が0.48%低下していた。夜型では入眠時刻の影響はなく、起床時刻が1時間早まると生産性が0.26%低下した。

夜型の傾向が強いほど生産性が低いことも示されたが、それはクロノタイプと生産性低下(プレゼンティズム)が直接関連しているからではなかった。夜型の人は様々な要因から睡眠に問題を生じやすく、そのために生産性が落ちるという間接的な理由からだった。

早起きは三文の得か否かについては、前述のとおり1時間の早起きで0.14〜0.26%の生産性低下が見られる。これをOECDの平均賃金に換算すると年額8000〜1万3500円ほどとなり、日額にすると約3文になるとのこと。つまり、早起きは3文の損だったわけだ。

このことから研究グループは、健康的な生活を通じて生産性を維持するためには、「夜ふかししないこと」、「無理に早起きしないこと」、「良好な睡眠をとること」が重要だと話している。

成人10万人分のデータを機械学習アルゴリズムで睡眠解析し睡眠パターンを16に分類、新たな不眠症診断法に期待

成人10万人分のデータを機械学習アルゴリズムで睡眠解析し睡眠パターンを16に分類、新たな不眠症診断法に期待

東京大学は3月15日、腕の加速度から覚醒と睡眠を判別する機械学習アルゴリズム「ACCEL」を開発し、約10万人の加速度のデータを解析したところ、睡眠が16種類のパターンに分類されることがわかったと発表した。その中には睡眠障害との関連が疑われるものもあるため、腕時計型ウェアラブルデバイスと「ACCEL」を組み合わせることで、睡眠障害の新たな診断方法や治療法の開発につながるものと期待されている。

ライフスタイルの多様化により、遺伝的に持っている睡眠パターンと相容れない生活が強いられると、不眠症となり健康リスクが高まる。例えば夜型の人は、昼間に学校や会社に通うといった社会的義務感により平日の睡眠時間が短くなり、平日と休日の睡眠時間が違ってくる傾向にある。これは「社会的時差ぼけ」と呼ばれ、肥満、高血圧、精神的なストレスといった健康への悪影響が心配される。実に現代人の60〜70%は睡眠不足を感じているという。その解消には正確な不眠症の診断と適切な治療が大切だが、そのためには週単位の睡眠パターンを把握しなければならず、その方法は問診などによる主観的な指標に頼っているのが現状だ。

そこで東京大学大学院医学系研究科機能生物学専攻システムズ薬理学分野の上田泰己教授、香取真知子氏、史蕭逸助教らによる研究グループは、簡単に正確に1週間以上の長期にわたる睡眠測定を行い、その結果を定量的に解析できれば、より詳細な診断ができると考えた。そして2022年に、腕の加速度から睡眠と覚醒の状態を判定するアルゴリズム「ACCEL」を開発した。

研究グループは、英国の遺伝情報や健康情報を含む研究用データベース「UK Biobank」にある、30〜60代の成人10万人分の加速度データから睡眠データを生成し、それを「ACCEL」で解析した。睡眠データを21の睡眠の指標に変換し、次元削減法とクラスタリング法という分析手法を用いて睡眠パターンを8種類のクラスターに分類。さらに、睡眠指標の中の睡眠時間や中途覚醒時間など、睡眠障害に関係が深いとされる6つの指標において、一般的な睡眠から大きく外れるデータを同様に解析したところ、新たに8種類のクラスターが分類された。こうして、不眠症診断に用いられている現行方式では判定が難しい社会的時差ぼけや、生活習慣に関連するクラスターを定量的に分類することに成功した。

今後は、睡眠障害と診断されている人のデータを用いて、各クラスターと睡眠障害の関係性をより正確に解明することで、定量的な指標に基づく新たな診断方法の開発が期待できるという。また、睡眠障害をより詳細な分類による適切な治療法の確立も期待される。

解析された16のクラスターは以下のとおり。

    • 1:中途覚醒を持つ(不眠症に関連)。合計睡眠時間は多い
    • 3a:中途覚醒を持つ(不眠症に関連)。合計睡眠時間は一般的
    • 3b:中途覚醒を持つ(不眠症に関連)。合計睡眠時間は少ない
    • 2a:不規則な睡眠スケジュールを示す
    • 2b:断片的な睡眠を繰り返し、合計睡眠時間が少ない
    • 3b-1:合計睡眠時間が短く、中途覚醒が長い(不眠症に関連)
    • 3b-2:合計睡眠時間が短く、長い中途覚醒と短い中途覚醒の両方を持つ(不眠症に関連)
    • 4a:1日の睡眠覚醒リズムが24時間よりも長いと推定される
    • 4b:平均的な睡眠を持ち、データ総数がもっとも多い
    • 4b-1:長眠型
    • 4b-2:朝型
    • 4bー3:1日の生活リズム(睡眠覚醒リズム)が24時間より短い
    • 4b-4:合計睡眠時間が短く、短い中途覚醒を持つ(不眠症に関連)
    • 4b-5:合計睡眠時間が一般的であり、少ない回数の長い中途覚醒を持つ(不眠症に関連)
    • 4b-6:夜型
    • 5:日中の睡眠を持たない

夜型人間も夜型人間も平日の活動量に差がなく、社会的要因が影響しているという世界初の研究

夜型人間も夜型人間も平日の活動量に差がなく、社会的要因が影響しているという世界初の研究

夜型20人と朝型61人の学生それぞれの活動量平均値をプロット。土曜日と日曜日午前は、夜型の活動量が朝型よりも低下する。しかしこれ以外の時間帯は、活動量に差はなかった(平日は金曜日と月曜日だけを図示したが、火曜日から木曜日も同様に差がない)

島根大学京都医療センター臨床研究センター金沢大学の研究グループは、遺伝子で決まる朝型と夜型の人の活動量が、平日においては差がないことを明らかにした。これまで夜型生活者は活動量が相対的に低いとされてきたが、差が表れるのは土曜日のみで、遺伝的要因と社会的要因が大きく関わっていることが世界で初めて示された。

ヒトには「朝型タイプ」「夜型タイプ」があり、その違いの約半分は、遺伝的(先天的)に規定されている。その規定遺伝子が、2017年のノーベル医学生理学賞の対象となった「時計遺伝子」であり、その個人差である時計遺伝子多型であることが知られている。

夜型の生活習慣を持つ者(夜型タイプ)は、朝型に比べて身体活動量が低く、睡眠時間が短く、食生活が乱れることが多いために、肥満や糖尿病の罹患率が高いことが広く報告されてきた。しかし、そうした研究では、調査は1日だけ(24時間程度)に限られており、社会的制約が異なる平日と休日の両方で調査しなければ「健康増進へのエビデンスとして不十分」だと研究グループは考えた。そうして、この比較研究を行うことにした。

研究グループは、大学生男女81人を対象に、朝型とされるTの遺伝子多型を持つ人(TT者)と、夜型とされるCを含む遺伝子多型を持つ人(TC+CC者)とに分けて実験を行った。学生たちには、7日間連続して、起床時から就寝時にかけてデジタル加速度計を装着してもらい、活動量を計測した。その結果、平日は両者とも活動量に大きな差はなく、土曜日と日曜日の午前中にのみ、TC+CC者の活動量の低下が見られ、起床時間と就寝時間が大幅に遅くなることがわかった。ここから、平日は通学などの社会的な制約のために夜型も朝型と同じ行動をとらざるを得ず、差が見えなくなっていると推定された。

また、実験の際に行ったアンケート調査から、「自分は朝型」や「自分は夜型」といった主観は、遺伝子による分類とは関係がないこともわかった。つまり、自分の遺伝子の型を理解することで、自分にとって最適な活動時間を把握できるということだ。研究グループは、子どもの生活指導を行う人は、社会的制約のない週末の子どもの行動を観察して、適切にその生活習慣を理解することが大切だと提言している。また、勉学、スポーツ、ビジネスに取り組む際には、遺伝的な朝型か夜型かの個性を考慮することで、最善のパフォーマンスを発揮できるとも指摘している。

Dawn Healthは認知行動療法で快眠をサポートする不眠症治療アプリ

新年を迎えて全力で進む中、不安な状態が続くと誰もが眠れない夜を過ごすことになる。

不眠症治療のスタートアップDawn Health(ドーンヘルス)は、不眠症を抱える人たちが睡眠を再びコントロールできるようにしたいと考えている。同社は2021年に、Intercom(インターコム)とMicrosoft(マイクロソフト)で製品エンジニアとして働いたRahul Shivkumar(ラホール・シブクマール)氏、認知行動療法士のAndreas Meistad(アンドリアス・マイスタッド)氏、Yahoo(ヤフー)のソフトウェアエンジニアだったVarun Krishnamurthy(ヴァルン・クリシュナムルティ)氏によって設立された。

シブクマール氏は、不眠症について身をもって知っている。ひどい睡眠障害を抱え、効果があるとされていた薬が効かなくなり、依存症になった。

シブクマール氏だけではない。米国睡眠協会は、米国人の70%が何らかの睡眠障害を抱えていると推定している。米国睡眠医学会によると、職場においては、平均的な労働者が毎年2280ドル(約26万円)、合計で年632億ドル(約7兆2700億円)の生産性を失っていることになるという。

画像クレジット:Dawn Health

シブクマール氏の場合、睡眠薬をやめるのに6カ月かかった。その後、同氏は瞑想など、眠りにつくための常套手段をすべて試したが、世の中に出回っている一部の人気アプリは、たまに起こる睡眠の問題には良いが、病的な不眠症にはそれほど効果がないことがわかった。

そんなときに出会ったのが、不眠症のための認知行動療法(CBT)だった。これは、睡眠障害を引き起こしたり悪化させたりする思考や行動を特定し、睡眠につながり、眠り続けるための習慣に置き換えるよう導くケア方法だ。

「12週間のセッションを受け、1回につき300ドル(約3万5000円)の費用がかかりましたが、今はよく眠れるというROI(投資利益率)があるので、その価値はありました」と同氏は話した。「それが会社を始めるきっかけになりました」。

シブクマール氏と同氏のチームは2020年半ばに会社を設立し、不眠症のためのCBTを活用して「不眠症治療の新しいスタンダード」と呼ぶDawn Healthアプリを開発した。

月額60ドル(約6900円)のモバイルアプリは、マイスタッド氏の研究に基づく証拠に準拠するセラピーを、睡眠トラッカーと統合して提供する。ユーザーは、Dawn Healthのセラピストからトレーニングを受けた睡眠コーチとペアを組み、チャット機能やパーソナライズされた毎日のレッスンプランにアクセスすることができる。

Dawn Healthはこれまでに100人以上の患者を治療しており、その中にはOpenAI CEOのSam Atlman(サム・アトルマン)氏やTwitch共同創業者のKevin Lin(ケビン・リン)氏、Galaxy Digital共同創業者のSam Englebardt(サム・エングルバート)氏といったテック業界の著名人が含まれている。シブクマール氏によると、初期のデータでは、プログラムを受けた人の80%が不眠症で薬やアルコール、マリファナに頼ることがなくなったという。

Dawn HealthはiOSアプリを展開し、ユーザーを獲得している。成長モードに入り、治療のスタンダードを継続するために重要な研究調査による臨床的証拠を構築している。

そのために同社は、Kindred Venturesがリードし、OnDeckのRunway Fundと、リン氏やSegment共同創業者のIlya Volodarsky(イリヤ・ヴォルダルスキー)氏、Intercom共同創業者のEoghan McCabe(エオガン・マッケイブ)氏といった個人投資家が参加したプレシードラウンドで180万ドル(約2億円)を調達した。今後、チームを拡大し、新製品も展開する。

ウェアラブル(Oura RingZeitGoogleのNest Hub)、その他の睡眠トラッキングアプリ(Aura)、スマートマットレス(Eight Sleep)など、最近ベンチャーキャピタルが注目した製品の多くが人気を集めている中、Dawn Healthは2026年までに1370億ドル(約15兆7740億円)に達するとされる睡眠市場でシェアを獲得するために、競争が一層激しさを増している市場に参入する。

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「医療費の多くは、睡眠障害に起因しています」とシブクマール氏は話す。「特に、Ouraのような企業がデータを発表しているアルツハイマー病やその他の疾患を予防できれば、長期的に大きなメリットがあります。人生の早い段階で睡眠不足を解決したり、睡眠の問題を完全に予防できれば、健康とコストの大幅な節約になります」と述べた。

画像クレジット:Dawn Health

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

睡眠時無呼吸症候群(SAS)解決ソリューション開発のマリが3億円のシリーズA調達、開発中の治療機器の薬事承認化を加速

睡眠時無呼吸症候群(SAS)解決ソリューション開発のマリが3億円のシリーズA調達、開発中の治療機器の薬事承認化を加速

イビキや睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの睡眠障害を解決するソリューションを開発するマリは1月20日、シリーズAラウンドにおいて第三者割当増資による総額3億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のMPI-2号投資事業有限責任組合(MedVenture Partners)のほか、イノベーション京都2021投資事業有限責任組合(京都大学イノベーションキャピタル)、KIRIN HEALTH INNOVATION FUND(グローバル・ブレイン)。

2017年11月設立のマリは、SAS患者の負担が少なく受け入れやすい完全非接触の診断・治療法の提供を目指す京都大学発のスタートアップ企業。調達した資金により、現在開発中のSAS治療機器の臨床研究を推進し、独自技術による治療ソリューションを確立させ、医療機器の薬事承認に向けた治験の準備を進める。

SASは、日本において治療が必要な患者が約500万人とされ、患者本人が気づかない間に高血圧・動脈硬化などをもたらし、重篤な場合は心不全や脳梗塞などの疾患につながる可能性もある。しかし自覚症状に乏しく、治療の第1選択肢である持続陽圧呼吸療法(CPAP)は受け入れや治療継続面での課題が顕在化しているという。このような課題に対してマリは、「Sleep Freely. 世界の睡眠障害をやさしく解決したい」を理念に掲げ、ミリ波レーダー計測・解析技術や音声解析技術を用いた非接触睡眠状態評価・生体情報センシング技術を開発している。

この電球はユーザーの健康状態をモニターする

CES 2022で見つけた、ちょっと変わった楽しい製品だ。心拍数、体温、睡眠の記録といった健康状態の測定ができるスマート電球だ。必要なものではないが、おもしろい。

本製品は、一見したところ最新のNest Hubと同様の機能を持ち、同様の技術を使用している。レーダーセンサーを中心に、ユーザーの身体の変化を計測し、スマートウォッチやフィットネスバンドを装着する必要のないパッシブなヘルスモニターシステムとなる。

もちろん、電球と睡眠時に頭の横に設置するために特別に設計された製品とでは、もっと多くの変数があります。また、フィットネスバンドや指輪をしないという便利さは、電球にアウトソーシングしたいと思うほどすごいことなのか?精度はどうだろうか?身体に直接取り付けるセンサーによる測定値と精度を競うのは酷ではないだろうか?

このスマートホームガジェットは、BluetoothとWi-Fiの機能を持ち、転倒検知など、高齢者介護に役立つ可能性のあるアプリケーションを搭載している。The Vergeは、2022年末に価格未定で発売予定となっているこの電球について、もう少し詳しい情報を紹介している。メーカーのSengledは、この展示会で、スマートオイルディフューザー、ポータブルランプ、モーションセンサーなど、他の製品も多数発表している。

画像クレジット:Sengled

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

睡眠計測サービスの筑波大学発S’UIMINがシリーズBファーストクローズで5億円調達、サービス拡大や新規デバイス開発

睡眠状態を可視化するサービス「InSomnograf」(インソムノグラフ)を提供する「S’UIMIN」は12月20日、シリーズBラウンドのファーストクローズにおいて、総額5億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、長瀬産業と帝国通信工業。累計調達額は約14億円となった。

調達した資金は、健康診断や人間ドックにおけるオプションサービスの拡大、新規デバイスの開発、電極量産のための資金、ビッグデータビジネスに向けての基盤構築などにあてる予定。

InSomnograは「InSomnia」(不眠症)と「Graf」(可視化)を合成した造語。サービス内容は、脳波を測定する独自ウェラブルデバイスから得られた情報をクラウド上のAIで解析し、睡眠状態を高精度で可視化するというもの。サービス利用者はPCやスマートフォンを通じ、その日の睡眠の「経過図」や「簡易評価」を即時的に確認できる。複数晩の計測後に作成するウィークリーレポートも、オンラインで確認可能。

2017年10月設立のS’UIMINは、筑波大学の「国際統合睡眠医科学研究機構」を母体とするスタートアップ。「世界中の睡眠に悩む人々にとっての希望の光となる」をビジョンに、睡眠障害へのあるべき予防・診断・治療の実現を通して、睡眠をキーワードとした健康寿命の延伸を実現を目指し、人類社会に貢献するとしている。

光を当て記憶を消去?京都大学、学習結果が長期記憶に移行する細胞活動を解明

京都大学は、光を当てることで記憶を起こしたシナプスのみを消す、つまり記憶を消すことに成功した。映画のように光を当てれば人の記憶を消せるというような単純な話ではないものの、この研究が重要な脳の働きを解明することにつながった。

京都大学大学院医学研究科後藤明弘助教、林康紀同教授らからなる研究グループは、海馬に保存された短期記憶が皮質に長期記憶される、いわゆる「記憶の固定化」がなされるときに起きるシナプス長期増強(LTP)という現象について調べている。このLTPが、いつどこで誘発されるかがわかれば、記憶がどの細胞に保持されるかがわかる。研究グループは、それを検出する技術の開発を目指した。

実は、この光によって記憶が消せる手法は、LPTがいつどこで起きるかを検出する手法として開発されたもの。LTPが起きるとシナプス後部のスパインという構造が拡大するのだが、これにはコフィリン(cofilin)という分子が関わっている。このコフィリンとイソギンチャク由来の光増感蛍光タンパク質SuperNovaを融合させ、特定の波長の光を当てると、SuperNovaから活性酵素が発生し、近隣のコフィリンだけが不活性化される。するとLPTが消去され、記憶が消える。

この手法を使うと、薬剤を使った場合と異なり、狙いどおりの場所と時間にLTPの消去が行える。これを利用して、学習直後と学習後の睡眠中の海馬に光を当てたところ、それぞれの記憶が消えた。このことから、学習直後と、その後の睡眠中の2段階でLTPが起き、短期記憶が形成されることがわかった。さらに、神経細胞の活性を調べたところ、細胞は学習により特異的に「発火」(スパイク信号を出力)し、学習後の睡眠中にはLTPによって細胞同士が同期して発火することが認められた。これにより、記憶を担う細胞が形成される過程が詳細に見られるようになった。また、記憶が皮質に移り固定化される時間を知るために、前帯状皮質でのLTP時間枠を調べたところ、学習翌日の睡眠中に前帯状皮質でのLTPが誘導されていることもわかった。

この研究により、LTPが誘発される時間枠を解析する技術が開発された。これは、記憶に関連する多くの脳機能を細胞レベルで解明できる可能性を示すものだ。LTPに関連するシナプスの異常は、発達障害、外傷性ストレス障害(PTSD)、認知症、アルツハイマーといった記憶・学習障害だけでなく、統合失調症やうつ病の発症にも関わることが示唆され、こうした病気の治療にもつながるという。

この研究は、京都大学大学院医学研究科後藤明弘助教、林康紀同教授、理化学研究所脳神経科学研究センター村山正宜チームリーダー、Thomas McHughチームリーダー、大阪大学産業科学研究所永井健治栄誉教授らの研究グループによるもの。

睡眠中の脳卒中を早期に警告するZeitのウェアラブル、実用化に向けシード約2.3億円調達

睡眠中の脳卒中を早期に警告するシステムを開発しているZeit Medicalは、Y Combinator(Yコンビネータ )のSummer 2021コホートを卒業した直後に、シードラウンドで200万ドル(約2億2800万円)を調達した。同社の研究によると、脳モニタリング用ヘッドバンドは、脳卒中の可能性を数時間前に警告することで命を救うことができると考えられており、今回の資金調達は、実用化に向けた推進力となる。

同社のデバイスは、軽量の脳波計(EEG)が内蔵されたソフトなヘッドバンドだ。スマートフォンのアプリと連動して、脳の活動を分析し、人間の専門家によって訓練された機械学習モデルを使って、差し迫った脳卒中の兆候を監視することができる。

共同創業者でCEO(そして現在はFerolynフェロー)のOrestis Vardoulis(オレスティス・バルドゥリス)氏は、使用状況の調査で、CPAPマシンを使用している人も含め、90%の夜にヘッドバンドを装着して、装着感や快適性に関する不満はほとんどなかったと述べている。脳卒中の影響を軽減するという目標を達成するためには、継続して使用することが重要であり、不快なヘッドバンドやかさばるヘッドバンドは確実に悪影響を及ぼす。

「当社は、製品を最終的に完成させ、今後の研究でテストできるようにすることに加えて、入院患者へのAIのさまざまな応用を試してきました。集中治療室の患者の多くは、綿密な虚血モニタリングを必要とします」とバルドゥリス氏は語る。本来であれば専門家や専用のシステムでなければ診断できないような様々な状態を、Zeitが作成したモデルで警告できる可能性がある。「くも膜下出血の患者を脳波でモニターしているいくつかの大規模な国立学術センターに、当社の技術が許容可能なアプリケーションであるかどうかを確認するためにアプローチしました」とも。

バルドゥリス氏によると、脳卒中患者のコミュニティはこの装置に非常に興味を持っており、我々の以前の記事でも、コメント欄にこの装置が自分にどれほど役に立つかを指摘する人がいたという。ZeitはFDA(米国食品医薬品局)の認可に向けて進んでおり、「Breakthrough designation(ブレイクスルー指定)」という一種のファストトラックを取得しているが、広く普及するまでにはまだ1〜2年かかるかもしれない。

これは、医療機器としては非常に短いリードタイムであり、投資家たちは明らかにこの製品がインパクトとROIの両方をもたらす機会であると考えた。

200万ドル(約2億2800万円)のラウンドは、SeedtoBとDigilifeが共同で主導し、Y Combinator、Gaingels、Northsouth Ventures、Tamar Capital、Axial、Citta Capital、そしてエンジェルのGreg Badros(グレッグ・バドロス)氏、Theodore Rekatsinas(テオドール・レカツィナス)氏をはじめとする医療関係者数名が参加した。

この資金はご想像のとおり、事業の継続と拡大、チームの構築、FDAの検討と承認に必要な研究のために使用される予定だ。運がよければZeitのデバイスは、早ければ2023年には、脳卒中のリスクを抱える人々に標準的に使われることになるだろう。

画像クレジット:Zeit

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Aya Nakazato)

第3世代「Oura Ring」は健康状態トラッキングや生理予測など新機能満載のフィットネスリング、有料コンテンツ配信も

2017年初頭、Motiv(モチーブ)はウェアラブルなフィットネストラッカーの装着箇所が手首だけでないことを実証し、テクノロジー業界メディアの想像力を掻き立てた。しかし、同社は最終的に運動トラッキングだけでは飽き足らず、すぐにその技術を生体認証ツールなどへ拡大することに目を向けるようになった。その一方で、Oura(オーラ)は、健康という分野にまだまだ可能性を見出していた。


実際、新型コロナウイルス流行時には、組織が既成概念にとらわれないソリューションを探し求めていたため、Ouraは2020年に大きな成功を収めた。このスタートアップ企業は、そのさまざまな健康指標が、新型コロナウイルスやその他の健康状態の早期発見にいかに役立つかを証明し、NBA(全米バスケットボール協会)、WNBA(全米女子バスケットボール協会)、World Surf League(世界プロサーフィン連盟)、Red Bull Racing(レッドブル・レーシング)、Seattle Mariners(シアトル・マリナーズ)、UFC(アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ)、NASCAR(ナスカー)など、米国の大手スポーツ団体が喜んで採用した。

画像クレジット:Oura

これまでにOuraは「数十万個」のリングを販売してきたと記している。家電製品の世界では驚異的な数字というわけではないが、ハードウェアのスタートアップとしては、特にスマートウォッチやフィットネスバンドが氾濫している市場では、目覚ましい成長と言えるだろう。

Ouraの製品は、数多くのセンサーを1個のパッケージに詰め込むという特長で成功を収めており、これがワークアウトや睡眠などに関する質の高い洞察を提供する。同社の新しい第3世代のリングは、Ouraが自分たちの本業に力を入れていることを再認識させる製品に仕上がっている。もっとも、ほとんどのウェアラブルメーカーが健康とウェルネスに力を入れている今、もちろんそれは当然のことだろう。

第3世代Oura Ring(オーラ・リング)の最大の特徴は、24時間365日の健康状態トラッキング機能で、心拍数を常時モニタリングできることだ。体温モニターや睡眠トラッキングも改善された他、生理予測などの機能も備わる。これについては、同社は次のように述べている。

Ouraは、次の生理を30日前に正確に予測し、生理開始の6日前に警告するため、あなたは常に準備を整えておくことができます。Ouraはカレンダー方式だけに頼るのではなく、生理周期を通じて自然に変化する体温から、より総合的なアプローチで生理を予測します。多くのトラッキング法は、あなたの生理周期が毎月同じであることを前提としていますが、Ouraの生理予測は、あなたの生理周期の変化に合わせて予測を調整します。

今回のニュースでは、Ouraが、Apple(アップル)、Fitbit(フィットビット)、Samsung(サムスン)などのメーカーと同様に、ワークアウトのコンテンツにより深く踏み込んでいることもわかった。現在は「近日公開」となっているこのライブラリにはワークアウト、瞑想、睡眠、呼吸法などをテーマにした50以上の映像 / 音声セッションが用意されている。

画像クレジット:Oura

「当社ではこのライブラリを拡大し続ける予定です。ライブラリには、睡眠とカフェインなどの影響を理解するための教育的なコンテンツと、ガイド付きコンテンツの両方があります」と、同社CEOのHarpreet Rai(ハープリート・ライ)氏はTechCrunchに語った。「最初のうちは、瞑想や睡眠のための音が多いですが、我々はこのライブラリを大幅に増やしているところです。今後もどんどん増えていくでしょう。これはあなたの健康のためのワンストップショップになります」。

これらの動画は、より深い健康に関する洞察とともに、新たに開始される月額6ドル(約680円)のOura Membership(オーラ・メンバーシップ)サービスを通じて提供される。

「Peloton(ペロトン)、Tonal(トーナル)、Tempo(テンポ)、Hydro(ハイドロ)などのコネクテッドフィットネスは、ハードウェアとサブスクリプションの組み合わせになっています」と、ライ氏はいう。「ウェアラブルもそのような形になりつつあります。将来的には完全なサブスクリプションモデルに移行できると思うかと訊かれたら、収益を得る方法は色々とあるでしょうが、私はそれも可能だと思います。その方法を除外してはいません。しかし、より多くの消費者は、総所有コストの点からこの製品に惹かれていることも確かです」。

このOura Ringは、今後も新機能の追加が予定されており、2022年には血中酸素濃度を示すSpO2値の測定機能が搭載される予定だ。価格は300ドル(約3万4000円)で、現在予約注文を受け付け中。11月中旬に出荷開始となる。

画像クレジット:Oura

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

夜中目覚めたユーザーを再び眠りに誘うMuseの「脳感知」瞑想用ヘッドバンド最新版

瞑想ハードウエアは難しいものだ。マインドフルネスを追求して挫折したことのある人は誰もが間違いなく、練習をなんとか簡単に、あるいは少なくともジャンプスタートする方法を切望しているはずだ。私は、初代Museヘッドバンドがこのカテゴリーに加わり、ゲーム感覚でフォーカスできるようになったことをとても気に入っている(聞こえは悪いが、想像するよりも良いものだった)。

2020年のCESで発表された「Muse S」は、さらに基本的なもの、つまり「より良い睡眠」を約束するものだった。その当時に記事を書いた際、私はまだテストを始めたばかりで、正直なところ、頭にガジェットをつけたまま眠るのは難しいと思っていた。本当に使い続けられるだろうか、と声高に考えたものだ(ネタバレ:できなかった)。米国時間10月20日、同社はそれに続く、わかりやすいネーミングの「Muse S(Gen.2)」を発表した。

今回の製品は「眠ること」と同じくらい「眠り続けること」を重視している。後者の方が苦手な私にとっては、この点は高く評価できる。確かに今回のパンデミックでは、変に早く寝てしまったり、夜中に1〜2時間(あるいはもっと長い時間)目が覚めることが多かった。頭の一部では、人間は夜通し眠れるようにはできていないと確信している。

CDCによると、米国の成人の3分の1以上が7時間の睡眠をとれていないと言われているが、正直なところ、この数字は少ないように感じる。新しいMuseは「Digital Sleeping Pills(デジタル睡眠薬)」と呼ばれるものを利用している。これは、バンドの脳波(EEG)測定値を利用して、起床時に睡眠コンテンツを配信し、着用者を眠りに誘おうとするものには奇妙なネーミングだ。コンテンツには、以下のような選択肢がある。

  • オリジナル、クラシック、そしてアドベンチャー「スリープストーリー(Sleep Stories)」は、おなじみの童話や、新しいオリジナルの物語を音声でナレーションする
  • 「アンビエント・スリープ・サウンドスケープ(Ambient Sleep Soundscapes)」は、癒しのアンビエントミュージックとハーモナイズされたサウンドを音声ナレーションなしで提供する
  • 自然音やバイオフィードバックに対応する音楽を収録した「バイオフィードバック・スリープ・サウンドスケープ(Biofeedback Sleep Soundscapes)」(音声ナレーションなし)
  • 「ガイド付きスリープ・メディテーション(Guided Sleep Meditations)」は、瞑想インストラクターがあなたをリラックスさせるスリープ・メディテーションで眠りに導く

このコンテンツは、ソフトウェアアップデートによって第1世代のユーザーにも提供される。この他にも、新しいヘッドバンドには、精度の向上やバッテリー寿命の改善など、いくつかの微調整が施されている。今回も、400ドル(約4万5700円)という価格が大きな障害になると思われる。その数分の1の価格であれば、多くの人が睡眠ガジェットを試してみたいと思うのではないだろうか。

画像クレジット:Muse

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

【レビュー】Galaxy Watch 4 Classicは均整のとれたスマートウォッチ、サムスンとグーグルがそれぞれの強みを活かし協力

スマートウォッチ界は、Apple対世界という構造になっている。CounterPointが発表した最新の数字によると、Apple Watchが第1四半期の世界出荷台数の3分の1以上を占めている。Samsung / Tizenの市場シェアは8%で、遠く離れてはいるが、しかし立派な2位だ。GoogleのWear OSは4%弱で5位となっており、他のカテゴリーでは圧倒的な優勢を誇る両社が、競争上の優位性を求めて躍起になっていることがよくわかる。

Googleにとって、解決策は2つだった。まず、Fitbitの買収により、既存の市場が事実上2倍になったこと。そして長い間、Tizenの困難の中にいたSamsungにWear OSへの復帰を説得すること。Samsungにとって、GoogleのOSに戻ることは、開発者のアクセスとその結果としてのアプリを考えると理に適っている。また、Googleがサポートの問題を解決してくれるのであれば、それに越したことはない。

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純粋な市場シェアという点では、Samsungが明らかに優位に立っている。また、独自のTizenの開発は、世界的に注目されたわけではないが、当大手企業は2位の座を確保することができた。SamsungがGoogleに復帰するとしたら、独自の条件下で行う必要があるのは明らかだ。

画像クレジット:Brian Heater

Google I/Oで発表された、スマートウォッチ分野における両社の協力体制に続き、Samsungは先週、その成果の第一弾としてようやく「Galaxy Watch 4」を発表した。標準モデルとクラシックモデルの両方が用意されたこの新しいウェアラブル端末は「Wear OS Powered by Samsung」を搭載している。これは現実的には、SamsungがGoogleと緊密に協力して、Wear OSのカスタマイズ版-Tizenのように見え、Tizenのように泳ぎ、Tizenのように鳴くものーを構築したということだ。

これは、Samsungが何年もかけて構築してきた体験の親しみやすさを失うことなく、苦労しながらも強固なウェアラブルOSのエコシステムに向けて前進するための努力だ。正直なところ、私はこれに賛成だ。SamsungとGoogleのチームは、それぞれのエコシステムの特徴を見極め、両者の長所を活かした体験を構築するというすばらしい仕事をしている。Googleにとっては理想的な状況であり、他の大手ハードウェアメーカーを採用することで、Googleにとってもメリットがあることは間違いない。とはいえSamsungほど勢いのあるメーカーは業界にはいないのだが。

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それに加え、Galaxy Watch 4は、数世代にわたるハードウェアの改良と健康機能の改善により、Appleと互角に渡り合える数少ないスマートウォッチの1つとなっている。Appleと同様に、この新しいウェアラブル端末は、Samsungのエコシステムと明確に結びついている。結局先日の発表も、どう見てもエコシステムの活動の一環だった。

画像クレジット:Brian Heater

新しいGalaxy Budsは、Samsungユーザーにとって最高のイヤフォンであることは間違いないが、同じことがSamsungの堅実な新しいスマートウォッチにも言える。Samsungは、Wear OSによって第三者にオープンになってきているが(Appleよりもその程度は低いが、正しい方向への一歩だ)、それでもこれは明らかにSamsungのスマートウォッチであり、SamsungのモバイルハードウェアやSamsung自身のアプリとの相性が最も良いのだ。これは、世界No.1のスマートフォンメーカーだからこそできるギャンブルだろう。iOS以外の残りの市場では、Huawei、Garmin、Fitbitが戦えばよい。

スマートフォンやイヤフォンと同様に、Galaxy Watchシリーズも、その仕組みは必ずしも一筋縄ではいかなかった。長年にわたり、さまざまなモデルやSKUを模索してきたが、ようやく合理的な仕組みにたどり着いたと思う。実質的には、触覚技術を用いベゼルを組み込んだ下位モデルのGalaxy Watch Activeは標準的なGalaxy Watchに、標準的なGalaxy WatchはGalaxy Watch Classicになった。

ここまで書いてきて、頭で考えていたほど簡単なことではないことがわかった。基本的には「Galaxy Watch 4 = より薄く、軽く、スポーティに」ということになる。Galaxy Watch 4 Classicは、デジタルベゼルからSamsungのトレードマークである回転式ハードウェアベゼルに変更され、少し上品な外観になっている。

画像クレジット:Brian Heater

先ほども言ったが、もう一度これを言いたい。回転ベゼルは、Samsungのエースだ。スマートウォッチ業界では、Appleに勝るとも劣らないエリアだ。Appleのクラウンもいいが、スマートウォッチのインターフェースを操作するには、現在のところベゼルが最適だ。AppleがGalaxy Watch 2でベゼルを廃止し、デジタル版を採用したときは、正直言って私は戸惑った。SamsungはGalaxy Watch 3ではそれを考え直し、復活させたのだ。

以前の私のレビューを読んだ人は、私がこれまでのSamsungの時計で一番こだわっていたのがサイズであることをご存知のことだえろう。以前のウォッチは巨大だった。私は小柄な人間ではないし、手首が異常に小さいわけでもないけれど、そんな私でも装着して歩き回るのに苦労した。大きくて不格好な時計が好きな人もいるだろうが、これらのデバイスのサイズが1つしかないというのは、最初から潜在的な利用者が大きく制限されていると言える。

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ありがたいことに、今回はいくつかの選択肢がある。Galaxy Watchには40mmと44mmのバージョンがあり(それぞれ250ドルと300ドル[約3万2840円])、Classicには42mmと46mmのバージョンがある(それぞれ350ドル[約3万8310円]と380ドル[約4万1590円])。デザインの違いだけなのに、かなりの金額が加算されていると思われることだろう。ClassicにLTEを追加すると、379ドル(約4万1480円)と429ドル(約4万6960円)になる。もちろん、これはApple Watch Series 6の399ドル(約4万3670円)という初値と比べると好意的に受け取ることができる。

私は中間に位置する42mmのGalaxy Watch Classicを選んだ。数日前からこのデバイスを装着しているが、とても良い選択をしたと思っている。デザインを考えると、46mmは私が日常的に使うには目立ちすぎる時計であることは間違いない。また、寝るときには大きすぎるだろう。

44mmバージョンの標準的なウォッチがどのようにフィットしたのかはまだ気になるところだが、回転ベゼルを選択できるのであれば、回転ベゼルを選ぶべきだ。Classicの40mmバージョンは、その機能性を求める手首の小さいユーザーにとっては良い選択肢となるだろう。Samsungが4つの異なるサイズを用意していることは正しい方向性だと言える。

画像クレジット:Brian Heater

多くの競争と同様に、Samsungはここでも健康面の機能でリードしている。パンデミックから1年半、私は運動量を増やそうと努力しているが、この時計は運動量をしっかりと検知してくれる。ウォーキングやランニングを自動検出するという点では、Apple Watchとほぼ同じだ。最近、ジムでボートを漕ぐようになったのだが、そこでもしっかりと仕事をしてくれる。ただし、朝のHIITになるとかなり難しく、ヨガはさっぱりだったので、Samsungの接続型のルーチンを使用している場合を除き、手動で開始するのがベストだ。

心臓の異常を検出するためのECGが搭載されている。心臓の不調の早期発見のために多くの医療関係者が推奨し始めている、いち早く標準化されたツールだ。体組成計は、2本の指をデバイスに当てると、骨格筋、体水分、代謝率、体脂肪率などの主要な健康指標を表示してくれる、目玉となる新機能だ。

睡眠トラッキングでは、血中酸素濃度、ライト / ディープ / レム、トータル睡眠スコア(ヒント:私の場合は低い)など、確かな情報が得られる。また、スマートフォンをそばに置いて寝ると、このアプリは夜中のいびきの時間も教えてくれる。これらの数値を総合すると、自分の睡眠パターンについて優れた実用的な知識を得られる。

画像クレジット:Brian Heater

もちろん、寝るときに時計を装着するのは、快適さの問題だけでなく、バッテリーの問題もある。Watch Classicのバッテリー寿命はまずまずで、標準的な使い方から軽めの使い方で、1日半を過ごすことができた。朝や昼に充電する時間を確保できれば、フィットネスや睡眠のトラッキングには十分だろう。ほとんどの用途には問題なく、特筆すべき点はない。

これらすべての要素が、確かなスマートウォッチ体験につながっている。Galaxy Watch 4は、Samsungユーザーにとって最高のスマートウォッチであると同時に、Android対応スマートウォッチとしても最高であると強く主張できる。

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画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

睡眠中の脳卒中も早期に警告、治療開始までの時間を短縮するZeitのウェアラブルデバイス

脳卒中のリスクがある人は、進行中の脳卒中の兆候に常に注意を払っているが、寝ているときに注意を払うことは誰にもできない。つまり、何千人もの人が「目覚めたときの脳卒中」に見舞われ、数時間後にようやく判明するということだ。Zeit Medicalが開発した脳モニタリングウェアラブルは、脳卒中の兆候を早期に発見して病院に搬送することで、脳卒中によるダメージを軽減し、命を救うことができる。

数十年前までは、脳卒中の患者を助けるためにできることはほとんどなかった。しかし、90年代には有効な薬が使われるようになり、その少し後には外科手術も行われるようになったのだが、それらはいずれも脳卒中発症後数時間以内に処置する必要がある。

Orestis Vardoulis(オレスティス・ヴァルドゥリス)氏とUrs Naber(ウルス・ネーバー)氏は、脳卒中に関する911コールから被害者が必要な治療を受けるまでの時間を短縮するために、多くのリソースが使われているのを知り、Zeit(ドイツ語で「時間」の意)を立ち上げた。同社は、Y CombinatorのSummer 2021グループに参加している。

「以前は何もできなかったが、突然、いかに早く病院に行けるかが重要になってきた」とネーバー氏は語る。「脳卒中になると、すぐに脳が死滅し始めるため、時間が最も重要だ。911番通報から搬送までにかかる時間、そして病院の扉を開けてから治療にあたるまでの時間を短縮しようと多くの人が力を注いできたが、誰も911番通報の前に起こる時間には対応していない。だから、イノベーションが必要な分野だと思った」。

本人が気づかないうちに脳卒中を発見できれば、救急車が呼ばれるよりもずっと前に、本人や周囲の人に警告して病院に搬送することができる。しかし、これを実現するためには、手術室での作業が必要となる。

EEG信号の特性が変化した場合、このアルゴリズムによってすばやく検出することができる(画像クレジット:Zeit)

手術を行う外科医や看護師は、患者のバイタルを注意深く観察し、脳波から脳梗塞の兆候を見極めることができる。

「脳波には特定のパターンがあり、彼らはそれらを目で捉えられるように訓練されている。私たちは、最も優秀な神経学者から、彼らがこのデータをどのように視覚的に処理するかを学び、それを自動的に検出するツールを作った」とヴァルドゥリス氏はいう。「この臨床経験は本当に役に立った。というのも、彼らが信号内の特徴を定義付けするのを助けてくれたおかげで、何が重要で何が重要でないかを決定するプロセスの進行を加速させることができたからだ」。

チームは、脳からの関係する信号をモニターするコンパクトなEEGを内蔵した、柔らかいウェアラブルヘッドバンドを作った。このデータがスマートフォンのアプリに送られ、前述のパターンで訓練された機械学習モデルによって分析され、何かが検出されると、ユーザーと事前に指定した介護者にアラームが送られる。また、自動的に911に通報するように設定することもできる。

「私たちが分析したデータの大部分は手術室から出てきたものだ」とヴァルドゥリス氏は語る。このデータをすぐに整合性チェック用データと照合することができる。「その結果、手術室で発生した事象を偽陽性ゼロで確実に捉えることができるアルゴリズムがあることがわかった」。

この結果は、複雑な変数が少ない家庭でも活用できるはずだとのこと。それを実験するために、すでに一度脳卒中にかかったことのある、ハイリスクと言われる人たちのグループと協力して進めている。脳卒中やそれに関連する症状(臨床的にはさまざまなカテゴリーに分類される)が発生した直後の数カ月間は、2回目が多発する危険な時期だ。

画像クレジット:Zeit

「現在、ヘッドバンドと携帯電話をセットにした研究用キットを、研究に参加している人たちに届けている。ユーザーは毎晩それを装着している」とヴァルドゥリス氏はいう。「我々は、2023年のどこかのタイミングで商業化できるような道筋を準備しているところだ。この認可を得るために必要な臨床証明を明確にするため、現在FDAと協力して動いている」。

脳卒中のリハビリテーションを行うBrainQと同様に、彼らのものも「画期的なデバイス」の分類に位置づけられており、試験や認証を迅速に進めることができる。

「まずは米国での販売を開始するが、世界的にもニーズがあると考えている」とネーバー氏はいう。「高齢化がさらに進み、障害者介護のサポート体制がさらに整っていない国もある」。このデバイスは、これまで定期的に病院に通わなければならなかった多くの人々にとって、在宅介護や障害者介護のリスクとコストを大幅に低減することができる。

現在の計画では、データと協力してくれるパートナーを集め続け、大規模な研究を準備することになっている。この研究は、このデバイスを直販から、費用払い戻しの適用(保険適用など)の対象にするために必要なものだ。また、現在は脳卒中に焦点を当てているが、このメソッドは他の神経疾患の検査にも応用できるはずだ。

「将来的には、脳卒中のリスクがある人全員にこのデバイスが支給されるようになることを期待している」とヴァルドゥリス氏は述べている。「私たちは、このデバイスが脳卒中の治療において現在欠けているパズルのピースであると考えている」と述べている。

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Akihito Mizukoshi)

メンタル&パーソナルサウンドスケープのEndelがミュージシャンGrimesらとのコラボで活況

Oleg Stavitsky(オレグ・スタヴィツキー)氏と共同創業者たちがEndelを始めたとき、彼らは必ずしも、AmazonのAlexa Fundなどを投資家とする、ベンチャーが支援する企業になるつもりはなかった。スタヴィツキー氏と彼の創業チームは自分たちのことを「想像力に富むクリエイティブとアーチストの集まり」と呼び、前にはBublと呼ばれる子どものためのアプリのユニークな集まりを作っていた。それは子どもたちのクリエイティブな発達を育むことを目的とし、いわゆる子ども向けのキャラクターを使ったお決まりのエンターテインメントではないものだ。

Endelは、それとは全然違うプロジェクトで、個人化されたサウンドスケープを提供してユーザーの集中心の安定やリラクゼーションや睡眠を助ける。それは各個人向けに誂えた作品で、従来的な音楽よりもむしろ、瞑想のエクササイズやウェルネスのテクニックに近い。すでにGrimesとパートナーを組むなど、多くのビッグネームたちの関心を集めており、Grimesの場合は彼女自身がそのアプリを使うことが好きなので、一緒になにかやりたいと自分からEndelに接近してきた。

オレグ氏はEndelの構築体験と、シリコンバレーの外で消費者向けテクノロジーのスタートアップを作る、あまり型にはまらない創業者集団の一員であることについて、何から何まで話してくれた。

彼とのおしゃべりは楽しかったし、お聴きになればあなたも好きになれるだろう。もちろん、一番いいのは、SpotifyGoogle Podcastsやあなたのお気に入りのポッドキャストで、Found in Apple Podcastsをサブスクライブしていただくことだ。そして感想やフィードバックをぜひお願いしたい。それらはTwitterでもfound@techcrunch.com宛のメールでも何でもいい。私たちへのvoicemail、(510) 936-1618でもいいね。そして、来週お招きする創業者も、お楽しみに。

GrimesとEndelのコラボ作品 on YouTube。

 

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Endel睡眠瞑想リラクゼーション

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

モバイルゲームと認知行動療法を組み合わせたアプリで睡眠、メンタルヘルス問題に取り組むRevery

シェイクスピアは「マクベス」の中で、睡眠を「この世の饗宴における最高の滋養」と表現した。だが、シェイクスピアの主人公と同じように、多くの大人がよく眠れていない。Revery(レベリー)は、不眠症のための認知行動療法(CBT)とモバイルゲームのコンセプトを組み合わせたアプリで、その手助けをしたいと考えている。

2021年3月創業のReveryは、現在ベータ版のステルスモードで、2021年後半に米国でアプリ立ち上げを予定している。同社は米国時間8月3日、Sequoia Capital Indiaのサージプログラムがリードしたラウンドで200万ドル(約2億2000万円)を調達したとを発表した。参加者にはGGV Capital、Pascal Capital、zVentures(Razerのコーポレートベンチャー部門)の他、MyFitnessPalの共同創業者であるAlbert Lee(アルバート・リー)氏、ゲーム起業家のJuha Paananen(ジュハ・パーナネン)氏、CREDの創業者であるKunal Shah(クナール・シャー)氏、Mobile Premier Leagueの創業者であるSai Srinivas(サイ・スリニバス)氏、Carolin Krenzer(キャロリン・クレンザー)氏、Josh Lee(ジョシュ・リー)氏などのエンジェル投資家が名を連ねた。

Reveryの創業者であるTammie Siew(タミー・シュー)氏とKhoa Tran(コーア・トラン)氏は、共通の友人であるリー氏の紹介で出会った。シュー氏はSequoia Capital India、Boston Consulting Group、CREDで勤務経験があり、トラン氏はGoogle(グーグル)でプロダクトマネージャーを務めていた。

Reveryは、将来的には他のメンタルヘルスの問題にも取り組む予定だが、まずは睡眠から始める。「睡眠はメンタルヘルスと非常に強い相関関係があるからです。当社は、不眠症に対する認知行動療法など、30年間試行錯誤されてきた強固な手順を活用しています」とシュー氏はTechCrunchに話した。「これが最初の適応症ですが、目標は他の健康適応症のためにも複数のゲームを開発することです」。

調査会社Infiniumの調査によると、世界の成人の約30〜45%が不眠症を経験しており、この問題は新型コロナウイルスの流行により悪化している。慢性的な睡眠不足は、高血圧、脳卒中、うつ病、免疫力の低下などさまざまな健康問題と関連している

Reveryのチームには、ZyngaやKingでリードゲームデザイナーを務めたKriti Sawa(クリティ・サワ)氏やソフトウェアエンジニアのStephanie Wong(ステファニー・ウォン)氏などがいる。彼らの睡眠へのこだわりは個人的なものだ。

Zoomで話すReveryのチーム

「私たちのチーム全員が、このミッションに深い関わりを持っています。というのも、チーム全員が、家族や友人がメンタルヘルスの問題に直面した経験があるからです」とシュー氏は語る。「介入が遅れるとどんな結果になるかを目の当たりにしてきました。そうしたことは、もっと早く助けを求めていれば避けられたかもしれないのです」。

トラン氏は15歳のときに、高血圧症とその他複数の健康上の症状について診断を下され、投薬治療が必要になった。睡眠時無呼吸症候群が原因だとがわかったのは26歳になってからだ。手術を受け、同氏の血圧は正常になり、他の多くの症状も改善された。

「睡眠障害の治療を受けて初めて、睡眠がメンタルヘルスに与える影響に気づきました」とトラン氏はいう。「私の場合、医師が睡眠障害を見つけてくれたことは本当に幸運でしたし、治療を受けるための時間とリソースがあったことも非常に幸運でした。多くの人にとって、治療へのアクセスはかなり得難いものになっています」。

Reveryの医療顧問チームには、トラン氏の手術を担当したスタンフォード睡眠外科フェローシップのディレクターであるスタンフォード大学のStanley Liu(スタンレー・リュー)博士、スタンフォード大学教授で行動睡眠医学の専門家であるFiona Barwick(フィオナ・バーウィック)博士、そして臨床心理学者でビデオゲームを使ったセラピーの研究を行っているRyan Kelly(ライアン・ケリー)博士がいる。

睡眠アプリというと「Calm」や「Headspace」などの瞑想をテーマにしたものや、癒し系の音などが思い浮かぶ。Reveryのチームは、立ち上げ前のアプリの詳細について明らかにしていないが、携帯電話のカジュアルゲームを参考にしていると話す。カジュアルゲームは、短時間のプレイを長期間にわたって繰り返し楽しんでもらえるように設計されている。目標は、ゲーミフィケーションを利用して、CBTをインタラクティブで楽しいものにし、ユーザーの日常生活の一部にすることだ。

「ZyngaやKingが採用しているのと同じようなゲーム性を持っているので、クリティの経験は非常に参考になります」とシュー氏はいう。カジュアルゲームは、ちょっとした行動に報酬を与えることで成り立っている。Reveryアプリでは、より良い睡眠に資する習慣を積極的に強化することを意味している。例えば、携帯電話を置いたときに報酬を与える。

「多くの人は、睡眠を解決するのは寝るときだけだと誤解しているようです。睡眠がその日の行動に影響を受けていることを理解していません」シュー氏は語る。「そのため、効果的かつ持続的に睡眠を改善するためには、眠ろうとする時以外の思考や行動も変えていく必要があります」。

GGV Capitalのマネージング・ディレクターであるJenny Lee(ジェニー・リー)氏は声明で「私たちは、成長するメンタル・ウェルネス市場に期待しています。Reveryのユニークなモバイルゲームベースのアプローチには、大きなインパクトを与えるチャンスがあると信じています。このような使命感を持ったチームを支援できることをうれしく思います」と述べた。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Revery資金調達メンタルヘルス睡眠アプリ

画像クレジット:JGI/Jamie Grill / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

犬用スマート首輪の「Fi」が睡眠トラッキング機能を追加

「寝た犬は起こすな」と昔から言われている。しかし、寝ている犬の睡眠トラッキングをするなとは誰も言っていない。米国時間7月22日、ニューヨーク発のスマートドッグカラー(犬の首輪)のメーカーであるFi(ファイ)は、スマート首輪のトラッキング項目に睡眠を追加した。

新機能は首輪に内蔵されたモーションセンサーを使って、愛犬の睡眠状態を昼夜追跡する(そして飼い主はほぼ間違いなく、睡眠時間の長さに嫉妬する)。

追跡情報は、人間用のスリープトラッカーを使ったことのある人なら誰もが見慣れているタイムラインに表示される。昼間愛犬がどうしているかを仕事中に確認するライブチェックインもある(在宅からオフィス勤務に戻っている場合)。

画像クレジット:Fi

目的は、睡眠過剰であれ夜間の水飲み頻度の多少であれ、ペットが抱えているかもしれない健康問題に関する共有可能なデータを提供することだ。数値の急激な変化は愛犬の健康状態の赤信号でもある。

「愛犬家のみなさんがペットに最大限のケアを施すための総合的ヘルストラッキングに参入できることを大いに喜んでいます」とファウンダーでCEOのJonathan Bensamoun(ジョナサン・ベンサモン)氏がリリースで語った。「愛犬は疲れた時に自分でそのことを伝えられないので、Fiが知らせます。Fiは、『この子はすぐ眠りについているのか?』とか『最近アクティビティー・レベルが下がっていないか?』などの重要な質問に、深刻な問題が起きるよりずっと早く答えることができます」。

Fiは2021年2月に3000万ドル(約32億8000万円)を調達し、最近オンラインペット用品通販最大手のChewy(チューイー)と販売契約を結ぶなど、米国での販売網を拡大している。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Fiペットトラッキング睡眠

画像クレジット:Fi

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アマゾンも睡眠トラッキング、スマートディスプレイ「Echo Show」新型がレーダーを使った計測機能を搭載か

アマゾンも睡眠トラッキング、スマートディスプレイ「Echo Show」新型がレーダーを使った計測機能を搭載か米Amazonは7月9日(現地時間)、レーダーを利用しユーザーの睡眠計測を行う許可を連邦通信委員会(FCC)から取得しました。同社のHaloバンドなど、フィットネストラッカーを身に着けることなく、レーダーを利用して睡眠状態を監視できるようになります。ようするに、Googleが第2世代のNest Hubで行っているのと同じ機能です。

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AmazonはFCCへの申請に際し、この機能を搭載するのは、電源に接続したときにのみ動作する「非モバイルデバイス」だとしています。また、睡眠追跡だけではなく、運動障害や言語障害を持つ人でも利用できるジェスチャー操作にも対応するとのことです。

デバイスの具体的な内容やリリース時期などには触れていませんが、上記のことから、新しいEcho Showデバイスに搭載される可能性が高そうです。

Haloバンドのリリースや、AIによる体脂肪率や運動能力の測定など、ヘルスケア分野に力を入れているAmazonですが、睡眠のデータも当然無視できないという考えなのでしょう。今後のEchoデバイスは、単にスマートホームのハブや音楽再生デバイスというだけではなく、ヘルスケアのハブとしても機能していくのかもしれません。

(Source:FCC。Via BloombergEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Amazon / アマゾン(企業)Amazon Echo Show(製品・サービス)Google Nest(製品・サービス)睡眠 / スリープテック(用語)スマートディスプレイ(用語)

見守りタグ「biblle」のジョージ・アンド・ショーンが7000万円を調達、早期認知症の回復に向けた新規サービス開発

見守りタグ「biblle」のジョージ・アンド・ショーンが7000万円を調達、ヘルスケアAI事業を推進

位置追跡可能なタグとモバイルアプリによる見守りサービス「biblle」(ビブル)を展開するジョージ・アンド・ショーン(G&S)は7月7日、NTT西日本を引受先とする第三者割当増資による7000万円の資金調達を実施したと発表。NTT西日本との資本業務提携により、高齢者の認知症および軽度認知症(MCI)の早期発見のためのライフログ解析AIエンジンと、早期認知症の回復に向けた新規サービスの開発を進めるという。

G&Sはこれまでも、医療データに頼らず、日常的な生活習慣データを利用して認知症やMCIの発見する技術の開発を進めてきた。それを、その他の認知症早期発見や回復を目指したコンテンツやサービスと共に、必要な人にいち早く、できるだけ負担の少ない形で提供することが重要と考えたG&Sは、複数のパートナー企業と連携して、次の3つの柱を軸に社会実装を目指している。

ひとつは、「生活様式を変えない」ログ取得。高齢者の長期にわたる生活行動の記録データ「ライフログ」を、「biblle」や、高齢者施設用見守りシステム「施設360」(シセツサンロクマル)といった製品を活用して、当人に負担をかけずに取得する。

2つ目は、「気づき」を与える検知アラート。認知症またはMCIが疑われる人を高感度でスクリーニングし、当人に早い段階で認知症を疑うきっかけを与える。すでに、 認知症とMCIのスコアリング予測を行うAIプラットフォーム「Cognivida」(コグニヴィーダ)を高齢者施設に導入している。現在、認知症高齢者の検出精度は最大95%、MCIは最大81.8%とのこと(最大精度は睡眠データ利用時。センサーごとに推定精度は異なる)。検知に用いるデータは「位置情報の履歴」「睡眠サイクル」「家電利用の状況」「会話データ」などとしている。

3つ目は、「楽しみながら」の回復コンテンツ。食事、運動、コミュニケーション、脳トレなどを日常的に親しみながら継続できる回復コンテンツを提供する。すでに、食を通じて回復を促す動画コンテンツが展開されている。

これらの取り組みは、NTT西日本をはじめとするパートナー企業との連携で行われている。たとえば、NTT PARAVITAとは、睡眠情報を用いた認知機能推定のためのAI開発が進行中だ。今後は、投薬や医学療法との連携も重視し、医療機関や製薬会社との協力を推進してゆくという。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:NTT西日本(企業)AI / 人工知能(用語)高齢者(用語)睡眠 / スリープテック(用語)ジョージ・アンド・ショーン(企業)トラッカー / スマートタグ(用語)認知症ライフログ(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)