【コラム】所有の新しいかたち、P2Pファイル共有から音楽NFTまで

Outkast(アウトキャスト)の海賊版が販売されていた2003年に、そのMP3のコピーを所有することでロイヤリティー(著作物使用料)を得られる世界を想像できただろうか。

NFT(非代替性トークン)やWeb3への批判が高まる中、ヒップホップ界のレジェンドでありイノベーターであるNas(ナズ)は、自身のシングル2曲をNFTでリリースしている。ファンはこれを購入することにより、ストリーミングのロイヤリティを得ることができる。音楽NFTの人気の高まりにより、次のような非常に興味深い議論に注目が集まっている。ブロックチェーンは、トレントの自由でオープンであるという利点に相反するものだろうか。ブロックチェーンは、コンテンツの違法コピー製作者と同じように、ゲートキーパーを排除しようとしているのだろうか。

アーティストとファンの対立

デジタルエンターテインメントの歴史の中で最も対立が激しかったのは、Napster(ナップスター)が登場してきた時期と、2000年代、BitTorrent(ビットトレント)が広く普及した時期だ。この時期、音楽業界、映画業界が大きく変わり、アーティストとファンが対立した。2000年代の終わりには知的財産権の行使が急増し、同時に、Spotify(スポティファイ)、Netflix(ネットフリックス)、Apple Music(アップルミュージック)などに代表されるような、デジタル商品の消費者向けオプションが大幅に拡充した。

Web3への移行が始まり、デジタル所有権、知的財産マネジメント、クリエイターの権利といった概念に再び注目が集まっている。Web3を批判する人たちはトレントの特性と比較して否定することが多い。トレントは「知的財産権への革新を求める抵抗」の表れで、コンテンツがよりオープンで自由で利用しやすいインターネットを生み出したのに対し、ブロックチェーンはその逆のことを行っている、というのがその言い分だ。

これには的外れな点がある。まずユーザーがトレントを利用する理由として、金銭面の節約という人もいたが、多くの人にとっては公式の有料コンテンツに比べて利便性が圧倒的に高いからというものだった。トレントの動きは、急速な技術革新によって引き起こされた、時代遅れのビジネスモデルに対する消費者の反発と捉えると、非常にわかりやすい。その意味で、Web3はまさにトレント時代の精神を継承したと言える。

もう1つの問題は、Web3を批判する人たちが当時の実際の論点を忘れてしまっていることだ。哲学的な考えを持った当時の違法コピー製作者たちは、その行為の大義名分として、アーティストは中間業者のせいで不利益を被っていると指摘していた。

「アーティストはツアーで稼いでいるから問題ない」というのがその時の目立った主張で、大規模な音楽出版社はたいてい悪者とされた。実際には、トレントがレコードの売上に影響を与え、音楽出版社とアーティストの両方の利益が損なわれた可能性が高い。トレントの動きをWeb1.0支持者によるWeb2.0移行への反発としてのみ捉え直すのは、コンテンツの違法コピーにより不利益を被る人たちを無視する「バラ色のメガネ」をかけた楽観主義だ。

また、自らの権利を主張し、音楽出版社側に付いていたと思われる多くのミュージシャンもファンの反感を買ったが、これによりトレントの道徳的優位性が高まるということはなかった。

一方、Web3では、コンテンツへのアクセスだけでなく、そのコンテンツで何ができるかということも重要視されている。言い換えれば、コンテンツの実用性と価値、とりわけこの問題の中心であるクリエイターにとってのそれが重要になる。ゲートキーパーを排除しようとする点では、Web3の構築者とトレントのサービス提供者は多くの同じ目標を共有している。

しかしWeb3は、強力な希少性、透明性、完全な所有権、明確な出所など、トレントよりはるかに優れた武器をこの戦いのためにクリエイターやファンに提供する。アーティストが自分のコンテンツを直接所有し、自分のコミュニティとのつながりを維持することは、これまで以上に容易になってきている。Web3はある点ではトレントに敬意を表しつつ、アーティストとそのファンにとってより有意義で、彼らに経済的な力を与えることのできるインフラを提供している。

ゲートキーパーの排除

トレントとブロックチェーンは、どちらもピア・ツー・ピアの分散型テクノロジーであるという点で類似している。また、NFT人気の高まりにより、ブロックチェーンはコンテンツを配信するためのより一般的な方法になりつつある。コンテンツ配信はビットトレントが手がけるサービスでもある。これらのテクノロジーの大きな違いの1つは、知的財産権に対するそれぞれのユーザーのアプローチだ。

トレント時代、Web3時代のどちらにおいても常に認識されているのは、創作活動は難しく、楽しく、利益や称賛に値するという事実だ。知的財産権は、このような創作活動が継続的に行われることを保証する1つの方法である。これまでの知的財産権の制度では、創造活動の価値は、ゲートキーパー、レントシーカー(既得権者)、中間業者によって圧倒的に掌握されていた。こうした枠組みでは、中間業者は価値を「発掘」するための手段に過ぎないということが見逃されている。

私と同じようにシャワーを浴びながら好きなように歌う人たちには好感しかないが、アーティストが何もない部屋に閉じこもって創作活動をしても、家賃を支払う助けにはならない。そのために、音楽出版社、レーベル、管理会社、代理店などが登場してきたのだ。賛否両論あるものの、こういった中間業者は、テクノロジーや配信手段の特質を考えると、非常に長い間、信じられないほどの成功を収めてきた。それでも、決して価値の発掘が大きな問題としてなくなったわけではない。もっと詳しいことが知りたい方には「shill on Twitter(Twitter上のサクラ)」の部屋がある私のNFT Discord(ディスコード)を紹介したい。

ともあれ、トレント時代に激しい対立が生まれた要因は、これらの中間業者が、支援するべき才能あるクリエイターが手にするよりはるかに大きな力と価値を持つようになったと考えられたことにある。とりわけ急速に技術革新が進む時代にありながらである。

Web3の大きなゴールは、トレントのサービス提供者が追い込んできたゲートキーパーを根本的に排除することだ。Web3に問題があるとすれば、その1つは、ゲートキーパーが数多く存在するということだ。このような透明で分散化されたツールを使えば、自分が苦労して稼いだお金が支援したいクリエイターやプロジェクトに直接使われているのを実感できることが増えていく。

オープン台帳やスマートコントラクト、ホワイトペーパーは、かつてクリエイターが強制的に結ばされていた不可解で機密性の高い契約とは際立って対照的だ。これまでは知的財産権がクリエイターを保護してきたが、これからは新しいメカニズムがその役割りを果たすことが期待されており、利益を得るのはクリエイター自身であると確信できるようになった。あるアーティストの言葉を借りれば、このテクノロジーによって「クリエイターを増やし、音楽を増やし、そして人間としての体験を増やしていく」ことが可能になるのだ。これを「昔は知的財産権は悪だったが、今は知的財産権は善だ」とまとめては、両者の動きの核心を完全に理解していないことになる。

権利を求める戦い

NFTは、アルバムや物理的なアートと完全に置き換わるものではない。音楽を聴いたり美しいものを集めたりするのに、暗号資産ウォレットは(おそらく)必要ないだろう。NFTはファンに新しい体験を提供すると同時に、権利設定とクリエイターの自活能力の両方に大きな影響を与える。

私は4年以上かけてTwitch(ツイッチ)の音楽サービスを構築し、そのうちのかなりの時間をDMCA(デジタルミレニアム著作権法)の調査に費やしたため、米国のデジタル知的財産権の行使には頭痛がともなうをことをよく知っている。

NFTは、それよりはるかに明確で、透明性が高く、相互運用性があり、効率的なビジネス手法だ。すべての所有権の詳細は法律用語に埋め尽くされることなく、単純なコンピューターでも理解できる言葉で書かれている。さらにこれらの契約がシンプルであれば、ライセンスの利用が大幅に促進される。これは、購入しやすいMP3への移行が音楽ストリーミング産業の始まりとなった流れと同様だ。人々はやるべきことをしたいと考えており、それを容易にかなえられる製品があれば、それを実行に移す。

つまり、NFTはコラボレーションへの障壁を下げ、ファン自らもクリエイターを志せるきっかけなるということだ。ファンがアルバムを所有すれば、そのアルバムを使ってリミックスやサンプリングができるようになるだけでなく、ストリーミングしたり、バーで流したり、映画やポッドキャストのサウンドトラックに入れたりする権利も得られるというのであれば、それはとてもすばらしいことだ。

当然のことながら、NFTの利用に際して譲渡される権利はアーティストが所有しているか、権利者により譲渡される必要がある。これが独立系アーティストがこの領域でのイノベーションと早期導入を後押しする理由だ。彼らは自分たちのために公正な権利プロファイルを保持しており、そのおかげで活動の余地がさらに広がる。

契約を結んでいるアーティストにも参加のチャンスはある。自分の肖像や制作したアートをベースにしたアートやコレクター向けのNFTを発行することができるだろう。私は、クリエイターがNFTをメリットバッジやコンサートなどのライブイベントへのアクセスパスとして活用しているを見るのが好きだ。多くのミュージシャンがこのような新しい手法を使い、自分たちのファンクラブを変えることに成功している。そこでは、完全な所有権と、一緒にコミュニティを構築する機会を得られる。

訴訟ではなく、コラボレーション

ブロックチェーンのテクノロジーは、自分のファンを把握する、中間業者を介さずにファンに物を贈ったり売ったりする、共有されたアーティファクトやシグナルでコミュニティを形成することなどを可能にして、アーティストがファンとのコミュニティを構築するための直接的な方法を提供する。

こういった活動を組み合わせることで、アーティストは20年前(特にファンを訴えていたころ)をはるかにしのぐコミュニティ形成力が得られる。そしてこれらのことはすべて、かつて消費者へのアクセスを管理していた中間業者を介さなくとも実行可能だ。

さあ、一息ついて、クリエイターたちにこの新しい領域を開拓する余地を与えよう。そして、これから構築される新しい物事を保護するために知的財産法が役立つのであれば、それを称えよう。私たちは、近年の技術的な動きにおいて最も重要な原則が、いまだ有効であることを喜び、そして理解することができる。その原則とは次のようなものである。「作品を生み出すというのはたいへんなことであり、クリエイターとその作品は保護されるに値する」。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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(文:Chris Fortier、翻訳:Dragonfly)

分散型「マーベル」のようなNFTメディア帝国を目指すPixel Vault、約115億円の資金を調達

NFT(非代替性トークン)の世界は、奇妙で、混乱していて、爽快だ。否定派は、大衆文化から永続的な価値をすべて奪おうとする資本に執着した詐欺師であふれていると見ているが、一方で肯定派は、オンラインメディアから実際に価値がどのように創造され、獲得されるかを一変させる新たな技術革命であると見ている。

この1年の間に、機関投資家は2021年まではほとんど検討されなかったNFTへ投資する機会に夢中になり、Dapper Labs(ダッパーラボ)、OpenSea(オープンシー)、Sky Mavis(スカイ・メイヴィス)といったスタートアップ企業の株式投資に数十億ドル(数千億円)を投じている。

投資家による最新のNFT投資では、Pixel Vault(ピクセル・ヴォールト)と呼ばれるスタートアップが注目を浴びている。Pixel Vaultはスーパーヒーローの巨大なNFTコレクションで「分散型Marvel(マーベル)」のような帝国に成長することを目標としている。このNFTスタートアップは、Adam Bain(アダム・ベイン)氏とDick Costolo(ディック・コンストロ)氏の01 Advisors(ゼロワン・アドバイザーズ)とVelvet Sea Ventures(ベルベット・シー・ベンチャーズ)から1億ドル(約115億円)の資金を調達したと、TechCrunchに語った。

Pixel Vaultは、NFTプロジェクトが何千枚ものJPG画像を超えたもっと大きな何かになるのかという実験の最前線にいる。

「Pixel Vaultのプロジェクトは、コミュニティエンパワーメント、分散型ガバナンス、真のデジタルオーナーシップという、Web3の重要な理念を中心に構築されています」と、Pixel VaultのCEOであるSean Gearin(シーン・ギアリン)氏(暗号資産業界ではGFunkという名前で知られている)は、声明の中で述べている。「私たちは、ファンを顧客として見ていません。我々のファンはオーナーであり、ビルダーなのです」。

2021年5月(実際に会社として設立される前)に行われた同社の最初の製品発表では、CryptoPunks(クリプトパンク)の世界のキャラクターが登場するリアルおよびデジタルのコミックブック数千冊が発行された。ユーザーは、短期間でこのコミックのNFTと交換して、Pixel Vault創設者が運営するDAO(分散型自律組織)の一員になることができた。これによりユーザーは、多数のNFTアートワークのコレクションの所有権を得ることができた。その中には、Pixel Vaultコミックのメインキャラクターである、現在の価格で数百万ドルの価値があるCryptoPunksのNFTも多く含まれている

このPunksのほとんどを提供したのは、@beaniemaxiという偽名の暗号投資家で、彼はこのプロジェクトに最初から資金を援助し、数百万ドル(数億円)のPunksコレクションを提供して、このプロジェクトの可能性について声高に語っていた。彼はここ数週間、自分のフォロワーにプロジェクトを押し付けておきながら、彼の個人的な関与の範囲については透明性が欠けているため、非難を浴びていた。このマイナーな暗号スキャンダルにより、彼はPixel Vaultプロジェクトから離脱することで、同スタートアップへのさらなる反感を避けた。

私は開示していないことは、何1つしていません。私は投資家として、NFTの販売収益の一部を受け取ることがあります。私は成功する可能性が高いと思われるチームのみを支援しています。私の実績がすばらしいから、私に続こうとする人がいるのでしょう。完璧を求めることは現実的ではありません。プロジェクトやファウンダーの中には失敗するものもあります。

Beanie

Pixel Vaultチームは「Punks Comic(パンクス・コミック)」のリリース以来、コミックの世界観を大切にし、同コミックのベテランアーティストを起用して、スーパーヒーローのNFTを大量に作成してきたが、これをより広いメディア世界に展開したいと考えている。チームは、知的財産権の維持と、コミュニティによる「MetaHero(メタヒーロー)」アートの使用と促進を奨励することのバランスを取ることを考えている。また、146の「Core(コア)」キャラクターのNFTに対する知的財産権を維持しつつ、何千ものジェネレーティブなキャラクターの幅広い再利用を可能にしようとしている。

「(彼らには)分散型Disney(ディズニー)を構築するという使命があります。これは、私の考えでは、経済的には参加しないが、この世界に存在するキャラクターを評価してくれる熱心なファンとの共同創造と共同所有を意味します」と、Velvet Sea VenturesのMichael Lazerow(マイケル・ラゼロフ)氏は、TechCrunchに語った。

MetaHero Universe:Core Identities collection(スクリーンショット)

CryptoPunksは、ハリウッドをはじめとするさまざまな分野でパートナーシップを展開するために、すでにWMEと代理店契約を結んでいる。

数千もの「MetaHero Generative Identity(メタヒーロー・ジェネレーティブ・アイデンティティ)」の1つの最低落札価格は、現在の価格で1万8000ドル(約200万円)強のETHとなっており、146のCoreキャラクターの中で最も安いものでも30万ドル弱(約3500万円)となっている。

分散型マーベルの構築は、確かにお金以上のものだ。とはいえ、Pixel Vaultはそのコミュニティにおそろしく多くのお金を持っている。このプロジェクトは、生涯取引量が10万ETH近く、現在の価格で約3000億円にも達しているのだ。

画像クレジット:Punks Comic / Pixel Vault

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

分散型「マーベル」のようなNFTメディア帝国を目指すPixel Vault、約115億円の資金を調達

NFT(非代替性トークン)の世界は、奇妙で、混乱していて、爽快だ。否定派は、大衆文化から永続的な価値をすべて奪おうとする資本に執着した詐欺師であふれていると見ているが、一方で肯定派は、オンラインメディアから実際に価値がどのように創造され、獲得されるかを一変させる新たな技術革命であると見ている。

この1年の間に、機関投資家は2021年まではほとんど検討されなかったNFTへ投資する機会に夢中になり、Dapper Labs(ダッパーラボ)、OpenSea(オープンシー)、Sky Mavis(スカイ・メイヴィス)といったスタートアップ企業の株式投資に数十億ドル(数千億円)を投じている。

投資家による最新のNFT投資では、Pixel Vault(ピクセル・ヴォールト)と呼ばれるスタートアップが注目を浴びている。Pixel Vaultはスーパーヒーローの巨大なNFTコレクションで「分散型Marvel(マーベル)」のような帝国に成長することを目標としている。このNFTスタートアップは、Adam Bain(アダム・ベイン)氏とDick Costolo(ディック・コンストロ)氏の01 Advisors(ゼロワン・アドバイザーズ)とVelvet Sea Ventures(ベルベット・シー・ベンチャーズ)から1億ドル(約115億円)の資金を調達したと、TechCrunchに語った。

Pixel Vaultは、NFTプロジェクトが何千枚ものJPG画像を超えたもっと大きな何かになるのかという実験の最前線にいる。

「Pixel Vaultのプロジェクトは、コミュニティエンパワーメント、分散型ガバナンス、真のデジタルオーナーシップという、Web3の重要な理念を中心に構築されています」と、Pixel VaultのCEOであるSean Gearin(シーン・ギアリン)氏(暗号資産業界ではGFunkという名前で知られている)は、声明の中で述べている。「私たちは、ファンを顧客として見ていません。我々のファンはオーナーであり、ビルダーなのです」。

2021年5月(実際に会社として設立される前)に行われた同社の最初の製品発表では、CryptoPunks(クリプトパンク)の世界のキャラクターが登場するリアルおよびデジタルのコミックブック数千冊が発行された。ユーザーは、短期間でこのコミックのNFTと交換して、Pixel Vault創設者が運営するDAO(分散型自律組織)の一員になることができた。これによりユーザーは、多数のNFTアートワークのコレクションの所有権を得ることができた。その中には、Pixel Vaultコミックのメインキャラクターである、現在の価格で数百万ドルの価値があるCryptoPunksのNFTも多く含まれている

このPunksのほとんどを提供したのは、@beaniemaxiという偽名の暗号投資家で、彼はこのプロジェクトに最初から資金を援助し、数百万ドル(数億円)のPunksコレクションを提供して、このプロジェクトの可能性について声高に語っていた。彼はここ数週間、自分のフォロワーにプロジェクトを押し付けておきながら、彼の個人的な関与の範囲については透明性が欠けているため、非難を浴びていた。このマイナーな暗号スキャンダルにより、彼はPixel Vaultプロジェクトから離脱することで、同スタートアップへのさらなる反感を避けた。

私は開示していないことは、何1つしていません。私は投資家として、NFTの販売収益の一部を受け取ることがあります。私は成功する可能性が高いと思われるチームのみを支援しています。私の実績がすばらしいから、私に続こうとする人がいるのでしょう。完璧を求めることは現実的ではありません。プロジェクトやファウンダーの中には失敗するものもあります。

Beanie

Pixel Vaultチームは「Punks Comic(パンクス・コミック)」のリリース以来、コミックの世界観を大切にし、同コミックのベテランアーティストを起用して、スーパーヒーローのNFTを大量に作成してきたが、これをより広いメディア世界に展開したいと考えている。チームは、知的財産権の維持と、コミュニティによる「MetaHero(メタヒーロー)」アートの使用と促進を奨励することのバランスを取ることを考えている。また、146の「Core(コア)」キャラクターのNFTに対する知的財産権を維持しつつ、何千ものジェネレーティブなキャラクターの幅広い再利用を可能にしようとしている。

「(彼らには)分散型Disney(ディズニー)を構築するという使命があります。これは、私の考えでは、経済的には参加しないが、この世界に存在するキャラクターを評価してくれる熱心なファンとの共同創造と共同所有を意味します」と、Velvet Sea VenturesのMichael Lazerow(マイケル・ラゼロフ)氏は、TechCrunchに語った。

MetaHero Universe:Core Identities collection(スクリーンショット)

CryptoPunksは、ハリウッドをはじめとするさまざまな分野でパートナーシップを展開するために、すでにWMEと代理店契約を結んでいる。

数千もの「MetaHero Generative Identity(メタヒーロー・ジェネレーティブ・アイデンティティ)」の1つの最低落札価格は、現在の価格で1万8000ドル(約200万円)強のETHとなっており、146のCoreキャラクターの中で最も安いものでも30万ドル弱(約3500万円)となっている。

分散型マーベルの構築は、確かにお金以上のものだ。とはいえ、Pixel Vaultはそのコミュニティにおそろしく多くのお金を持っている。このプロジェクトは、生涯取引量が10万ETH近く、現在の価格で約3000億円にも達しているのだ。

画像クレジット:Punks Comic / Pixel Vault

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

グーグルのSonosへの敗訴で大手テック企業による知的財産権侵害問題が改めて明らかに

米国際貿易委員会(US International Trade Commission)は米国時間1月6日に、Googleがワイヤレススピーカーの技術でSonosが特許を持つイノベーションを侵害したと判決した。それは、知的財産権をめぐる複雑な抗争への、わかりにくい判決と思われるかもしれないが、それは米国のイノベーション経済と経済の国際的競争力を脅かしている問題を、改めて確認している。

その問題とは、知的財産権の盗用だ。

数年前にGoogleのような大手テクノロジー企業は、小さな企業の知財を買ったりライセンスするよりも、それらを盗んだ方が利益が大きいと判断した。GoogleやApple、Samsungなどはみな大金持ちなであり、法務の費用や、万一窃取と認められた場合の賠償金など気にしない。一例としてGoogleは、1420億ドル(約16兆1514億円)のキャッシュを有している。これは、多くの企業の1年の利益をはるかに上回っている。

大手テック企業は、こうして欲しいものを手に入れる。そして次は焦土作戦で、苦情を訴えたIP所有者を打ち負かす。訴訟を何年も長引かせて、正義を求める知的財産所有者に巨額の訴訟費用を課す。知的財産所有者の多くは、訴訟すらできない。それが自分を滅ぼすと知っており、自己の正当な権利を守ろうとする行為、すなわち長引き費用がかさむ訴訟が、自己を破壊すると承知している。

端的にいうと、大手テックは知的財産を盗むことから利益を得る。長年の訴訟で法務費用や賠償などが増えたとしても、それらは得られる利益に比べると微々たる額だ。

しかし、やり返す企業も少しはいるために、この途方もない権利侵害行為の存在が確認されている。GoogleがSonosを侵害した1件は、その明瞭な例の1つだ。

Sonosは、米国におけるサクセスストーリーの典型的な例だ。そしてGoogleによる、その技術に対する海賊行為は悲劇だ。Sonosはワイヤレススピーカーの画期的なイノベーションで特許を取り、2005年に革新的なスタートアップを創業した。Googleとは2013年にライセンス契約を結んだが、Googleはそのとき、同社の音楽サービスGoogle Play MusicをSonosのスピーカーに統合することで合意した。

しかしGoogleは単にこの契約を、Sonosの技術へのアクセスを得るために利用した。すぐに同社はSonosの技術を使って自社のデバイスを作るようになり、それらのスピーカーやオーディオ装置は、市場にあるSonosのスピーカーなどと直接競合するものだった。

Googleは、Sonosの開発費用を負担していない。検索エンジンの事業で大きな利益を得ているのだから、自社の新しい製品やサービスを下支えすることもできただろう。まさにそのとおり、GoogleはSonosの価格を下押しした。それは、特許海賊の常套手段である商業行為だ。

Sonosは最初、Sonosから略取した技術のライセンス料を求めてGoogleと協議した。Googleはその協議を何年も長引かせ、その間にGoogleの利益は膨らみ、Sonosはますます多くのお金を失った。7年後にSonosは、法廷で自己の権利を護る以外の選択肢はない、とい状態に追い詰められた。Sonosは、2020年にGoogleを訴えた。

Sonosは、国際貿易委員会にもGoogleを訴えた。この特別法廷は通常の裁判所よりも迅速に、侵害的な輸入を禁ずることができる。ただし、損害賠償はない。

2021年夏にITCの判事は、Googleが確かにSonosの5つのパテントを侵害したと判決した。先に同委員会は、この決定を再確認した。Googleは今でもSonosの主張を「根拠がない」とし、控訴を続けるつもりだ。

これは大手テック企業が、他人に特許のある技術を不法に利用する顕著な例にすぎない。あまりにも多いから、今では「略奪的侵害(predatory infringement)」と呼ばれている。法学者や政策立案者は「効率的侵害」(efficient infringement)と、皮肉な名前で呼んでいる。わかりやすくいえば、これは「海賊行為(piracy)」だ。

しかし大手テック企業は米国の特許システムに対する攻撃を続けており、海賊行為をさらに支持することを求めている。Googleなどの企業は長年、議会に対するロビー活動に数百万ドル(数億円)を投じて、規制当局に特許を弱体化し、排除させようとしている。つまり特許というシステムを、イノベーターに反するものに改装するつもりだ。たとえば彼らはパテント・トロールという怪物を作り出して、侵害で彼らを訴えようとする特許保有者を中傷している。あたかも、問題は彼ら自身の窃取行為ではなく、彼らと戦おうとする被害者たちのあつかましさだ、と言わんばかりに。

米国のイノベーション経済の中心的な推進者は特許に依存するイノベーターやクリエイターたちだから、ワシントンは彼らを護るために活動する必要がある。議会は、超党派のSTRONGER Patents Act法案を再提議し、成立させるべきだ。この法律は特許のシステムに均衡を回復し、ビッグテックがロビー活動で作り出した、略奪的侵害の戦術的実践の鍵となっている法規や制度をリフォームするだろう。

SonosのGoogleに対する法的勝利は、長年、政策立案者や法律家たちがいってきたことを確認している。すなわち、ビッグテックによる略奪的侵害は21世紀の海賊行為であり、Sonosは多くの被害者の1つにすぎない。ワシントンはこの海賊行為を終わらせる努力をすべきであるし、それができる。

編集部注:本稿の執筆者Adam Mossoff(アダム・モソフ)はGeorge Mason大学の特許法の専門家。STRONGER特許法について議会で証言しており、Hudson Instituteのシニアフェローでもある。

画像クレジット:erhui1979/Getty Images

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(文:Adam Mossoff、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】ビッグテックはビジネスが苦手なのか?中小の知的財産権を侵害する大手

Google(グーグル)は2021年8月、Sonos(ソノス)との法廷闘争で大きな敗北を喫し、米国際貿易委員会の判事はグーグルがSonosのオーディオ技術特許5件を侵害したと判断した。この判決が支持されれば、Googleは数億ドル(数百億円)を支払うことになり、PixelスマートフォンからNestスピーカーに至るまで、あらゆるものを取り込むことが禁止されるかもしれない。

これは些細な展開ではない。ビッグテックがより規模の小さい企業から知的財産を盗むのを阻止しようとする一連の訴訟や苦情の最新事例である。

ここ数年、ビッグテック企業が小規模なライバル企業の知的財産権を侵害するケースが増えている。こうした小規模な企業は反撃を開始しており、今やビッグテック企業は裁判所から命じられる数百億ドル(数兆円)の損害賠償と訴訟費用に直面する可能性がある。

もしビッグテックの幹部たちが無謀な侵害を続けるなら、彼らの会社は取り返しのつかない財政的、評判上の損害を受けることになる。競合他社の知的財産を盗むことはもはや単に非倫理的なだけではない。それはビジネス上の決定があまりにも悲惨なほど近視眼的であり、経営者の株主に対する受託者責任の侵害にあたることはほぼ間違いない。

長い間、Apple(アップル)のような巨大テクノロジー企業は、対抗する資金力や法的な武器を持たない小規模な競合他社を自由に餌食にすることができると考えていた。だが、もはやそうではない。

小規模企業は訴訟にコストをかける価値があると判断し、大きな勝利を収めている。この1年間に行われた3つ訴訟だけでも、陪審は小規模企業に10億ドル(約1133億円)以上の賠償金を認めている。8月にAppleは4G技術を侵害したとしてPanOptis(パンオプティス)に3億ドル(約340億円)を支払うよう命じられた。また2020年には、VPNの特許を保有するVirnetX(バーネットX)に10億ドルの損害賠償を支払うよう裁判所から命じられている。

Appleだけではない。2020年10月、連邦裁判所はCisco(シスコ)に対し、サイバーセキュリティとソフトウェアを手がけるCentripetal Networks(セントリペタル・ネットワークス)に20億ドル(約2266億円)近くを支払うよう命じた。この裁判の判事は、Ciscoの行為を「典型的な侵害を超えた意図的な不正行為の悪質な事例」と呼んだ。

知的財産権の盗用は、ビッグテックの収益に大きな影響を与える可能性がある。これらの企業は数千億ドル(数十兆円)、場合によっては数兆ドル(数百兆円)の時価総額を誇っているが、裁判所が命令した巨額の支払いを積み上げるのは好ましいことではない。

例えば、Ciscoのペイアウトは年間売上の4%を占めている。Appleは最近、さらに10億ドルの損害賠償を支払うことなく、日本企業と和解した。また、英国の裁判所で特許侵害に対する70億ドル(約7921億円)の支払いを受け入れる代わりに、(強要されれば)英国市場から撤退する可能性があると警告した。

しかし大企業が知的財産権の盗用による罰金を免れることができたとしても、その結果としての評判へのダメージは相当なものになる。

米議会の委員会は、反トラスト法違反やプライバシー侵害に関する公聴会のために、幹部を定期的に議場に引き入れている。消費者はますますFacebook(フェイスブック)、Google、Apple、Amazon(アマゾン)を嫌悪するようになっている、あるいはもっと深刻だ。もし政治家や顧客が、これらの企業の利益が継続的な特許侵害にかかっていることを知れば、企業の評判は打撃を受けるであろう。

結局のところ、ビッグテックの経営陣は株主に対して法的な受託者責任を負っている。特許裁判にともなうリスクに目をつぶっている経営陣、つまり自分たちの会社を莫大な法的リスクや評判リスクにさらしている経営陣は、最終的には彼らの道徳的に疑問のある決定が株価に反映されていることに気づくだろう。

一方、株主、一般社員、その他の利害関係者は、経営陣の責任を問うべきである。最大の機関投資家の利益のためにも、Appleなどに圧力をかけて係争中の訴訟を解決させ、小規模ベンダーとライセンス契約を締結させることが必要だ。

ビッグテックが知的財産法の範囲内で活動を開始すれば、セクター全体を持続的な成功に導くであろう。

ペルーの経済学者Hernando de Soto(エルナンド・デ・ソト)氏が著書「The Mystery of Capital」で指摘しているように、社会の経済的繁栄は知的財産権を含む財産権の保護と保全に大きく依存している。

財産権の保護が強い社会は、人々が自分のアイデアに投資することを奨励する。逆に、財産権の保護が弱い社会はそのような投資を抑制し、イノベーションも抑制される。

米国のテクノロジーセクターも例外ではない。消費者と株主は、規模の大小を問わず、企業の繁栄を望むべきだ。より小規模な企業では、入力ソフトウェア、アプリケーション、ハードウェアを開発しており、最終的には消費者向け製品になることが多い。

しかし、大企業が小さな企業を虐げ、お金を払わずに最高のアイデアを略奪すると、小さな企業はイノベーションへのインセンティブを失ってしまう。

ビッグテックは特許の盗用をやめる時を迎えている。

編集部注:本稿の執筆者Andrew Langer(アンドリュー・ランガー)氏はInstitute for Libertyのプレジデント。

画像クレジット:

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(文:Andrew Langer、翻訳:Dragonfly)

4月のTCイベント:Early StageでPerkins Coie、Merus Capital、Brainbaseと知財・M&Aの戦略や注意点を語ろう

米国時間4月1日と2日に開催される第1回TechCrunch Early Stage 2021イベントまであとわずか数週間となった。この2日間のブートキャンプでは、創業間もないファウンダーがスタートアップを成功させるために必要な、起業家としてのコアスキルを身に付けられるように支援する。どれもその分野のエキスパートがリードする、必要不可欠なトピックだ。

例を挙げると、知的財産は基本的な飯の種であり、スタートアップはそれを保護するとともに、VCの視点から価値を理解する必要がある。また、アーリーステージの創業者であっても、M&Aのノウハウを学ぶのに早すぎるということはない。なぜなら、スタートアップが急速に成長した場合に、足元をすくわれるようなことがあってはならないからだ。

そこで今回は、Perkins Coie(パーキンス・コーイー)法律事務所、Merus Capital(メルス・キャピタル)、そしてBrainbase(ブレインベース)からそうそうたる顔ぶれを招き、M&Aと知的財産保護に関する専門知識を披露してもらうことにした。この3つのインタラクティブな分科会は業界最高クラスの頭脳によるものなので、お見逃しなく。

VCファイナンスにともなうIP価値の創出と保護Perkins Coie

VC投資家はテクノロジーやライフサイエンス分野のスタートアップへの出資を決定する際に、正式な知的財産(IP)権をどのように評価するのだろうか?また、IPのデューデリジェンスはどのように行われるのだろうか。投資家や創業者は、資金調達後、どのようにしてスタートアップ企業がイグジットバリュエーションを最大限に高めるようなIP戦略を追求するのだろうか。Perkins Coieの特許出願担当パートナーであるMichael Glenn(マイケル・グレン)氏と新興企業向けベンチャーキャピタル担当のMatt Oshinsky(マット・オシンスキー)氏が、経験豊富なベンチャーキャピタリストとともに、知的財産権の保護とすべての技術開発活動の価値を最大化するための質問に答える。Perkins Coieがお届けする。

スタートアップ創業者のためのM&Aプレイブック – グーグルとマイクロソフトからの教訓Merus Capital

創業チームが下す最も重要な決断の1つは、戦略的な買い手に会社を売却することを検討するタイミングだ。このセッションでは、どのように買収者にアプローチし、よくある落とし穴を避け、目を見張るようなバリュエーションを得るチャンスを最大にするかを学ぶ。Merus Capitalの創業パートナーであり、Google(グーグル)やMicrosoft(マイクロソフト)で10年間にわたり買収を指揮したSean Dempsey(ショーン・デンプシー)氏と、Dave Sobota(デイブ・ソボタ)氏から話を聞く。Merus Capitalがお届けする。

自社の知的財産のネーミングと保護Brainbase

世の中を変えるような製品やサービスのアイデアを思いついたとき、それを何と呼べばいいのだろうか?名前を決めたあと、他の誰かがその名前を使っていないことを確認するにはどうしたら?ドメインやTwitter(ツイッター)のハンドル名は利用可能だろうか?Brainbaseでは、誰でも簡単に、弁護士を通さずに商標登録を行うことができ、あらゆるチャネルで即座にブランドを所有することができる。このセッションでは、Brainbaseの共同創業者兼CEOであるNate Cavanaugh(ネイト・キャバノー)氏が、ブランド保護と資金調達のためのデューデリジェンスの両面から、自社の商標を所有することの重要性を説明する。Brainbaseがお届けする。

さて、これだけでもいい情報が盛りだくさんだ。Early Stage 2021のアジェンダには、他にも多くの貴重なプレゼンテーションが含まれている。ぜひチェックして、一日を戦略的に過ごそう。

TC Early Stage – Operations & Fundraising(アーリーステージ – 運営・資金調達)」イベントは米国時間4月1~2日にバーチャル開催される。こちらからパスを購入して、仲間と一緒にスタートアップを構築するための最良の方法を学ぼう。プロのヒント:2つのEarly Stage 2021イベントに両方参加すれば、知識が倍増する。「TC Early Stage 2021:Marketing and Fundraising(マーケティング・資金調達)」は7月8~9日に開催される。両イベントのダブルチケットの早期割引価格は、3月26日午後11時59分(PST)まで有効。期限前に購入すると、最大100ドルの割引となる。

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タグ:知的財産

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alexandra Ames、翻訳:Aya Nakazato)