「柔軟な働き方は福利厚生をセットにして初めて成功する」プリペイドカード型福利厚生のmiiveが5000万円調達

「柔軟な働き方は福利厚生をセットにして初めて成功する」プリペイドカード型福利厚生のmiiveが5000万円調達

リモート環境にも適した福利厚生サービス「miive」(ミーブ)を手がけるmiiveは2月17日、総額5000万円の資金調達を発表した。引受先は、サイバーエージェント・キャピタル、ジェネシア・ベンチャーズ。

調達した資金は、同社ビジョン「世界で最も優しいプロダクトを創る」の実現に向け、開発・人材採用に投資する。事業をより一層加速させ、福利厚生市場をリードしていくテクノロジー企業として、邁進していくとしている。

なおmiiveは、4月下旬に正式版リリース予定。サービス開始に先立ち、現在事前登録を受け付けている。

福利厚生に力を入れる企業が増加する中、利用するための仕組みやコンテンツが20年前と変わっていない

代表取締役の栗田廉氏がmiiveに取り組むことになった背景には、健康経営シフトや働き方改革の効果が広がっている影響があるという。特に、経済産業省による健康経営優良法人制度の認定数(中小規模法人)が2016年度は300社程度だったものが、2018年度3000社と大幅に増加したことを挙げた。福利厚生に力を入れている企業が増えており、従業員の健康に対する投資が当たり前になり、贅沢品から必需品に変わりつつあると指摘した。

また福利厚生は、投資効果が高い点を紹介。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が、グループ世界250社約11万4000人に健康教育プログラムを提供し、投資に対するリターンを試算した際、健康経営に対する投資1ドルに対して3ドル分の投資リターンがあるとの調査結果が得られたという。

「柔軟な働き方は福利厚生をセットにして初めて成功する」プリペイドカード型福利厚生のmiiveが5000万円調達

健康経営の推進について」(令和2年9月 経済産業省 ヘルスケア産業課)より

日本においても健康経営の効果に関する調査結果が出揃いつつあり、9割以上の企業が生産性向上、企業イメージの向上、離職率の低下などの効果を上げているとした。

栗田氏は、その一方で、コンテンツの部分が20年前と変わっておらず、改善の余地があるという。「2025年には、ミレニアル世代が労働者の8割以上が占めるようになる。この層にはすでに刺さらなくなってきている」とした。

UX、使い勝手でも課題がある。例えば従業員がスキー場のリフト券の割引を使うという場合、利用する従業員人数分の領収書を発行してもらい総務に申請。その後総務が福利厚生のアウトソーシング企業に郵送するなどの手間が発生する。

1年に1回以上福利厚生を利用する者は2~4割程度で、1年に1回も利用しない者は7~8割に上るそうだ。

栗田氏は、これらを受け、福利厚生サービスに関する予算枠があるのなら、その枠内で企業と従業員の両方に有効な利用法を提供できないかと考えたという。

またリモートワークの定着をはじめとする働き方改革の中、従来の社食やオフィスの自動販売機といった規模の大きなものではなく、従業員の働き方や働く場所に合わせて必要になるとして、プリペイドカード型福利厚生として、miiveに取り組み始めたと明かした。

場所・時間を問わず、リモートワークでも利用しやすいコンテンツ

栗田氏によると、「miiveが従来の福利厚生サービスと異なる点は、コンテンツの柔軟さと場所・時間を選ばない点」にあるという。

miiveでは、企業からプリペイドカードを従業員に発行し、これを経由する形でポイントとして福利厚生を従業員に支給。従業員は、このポイントを使って各種コンテンツを利用できる。ポイント利用先としては様々なVisa加盟店を用意しており、企業が自社の方針に合わせて利用先をカスタマイズし、福利厚生として精算できるようになっている。

ポイント利用先としては様々なVisa加盟店を用意しており、企業が自社の方針に合わせて利用先をカスタマイズできる

ポイント利用先としては様々なVisa加盟店を用意しており、企業が自社の方針に合わせて利用先をカスタマイズできる

また福利厚生として計上するには、国が定めた要件に従う必要があり、例えばコンビニはじめ何らかのサービスでポイントを食事用途で利用する場合、従業員自身が利用額の半分を負担しなければならないという。

これに応えるため、miiveのプリペイドカードは従業員自身のクレジットカードからもチャージできるようにしている。1枚のカードに、企業のポイントと従業員自身のチャージ分の2種類のマネーを内包しており、先の食事用途の例であれば、福利厚生として計上されるようこれら2種類が利用金額の50%ずつ引き落とされるという。

コンテンツについては、Visa加盟店の中から企業がカスタマイズし自由に設定でき、管理画面からいつでも追加・変更可能だ。食事・ファッション・ジム・エステなどを用意しており、身だしなみをキチンとしてほしいなど導入企業の意図を反映できるようになっている。ちなみにmiive自身の場合は、従業員に健康的な食事をとってほしいと考えて、食事用途を「厚く」しているそうだ。

柔軟な働き方や働き方改革は、福利厚生をセットにして初めて成功する

miiveでの1カ月あたりの支給ポイントは、様々なニーズに柔軟に対応できるよう5000~1万ポイントを想定しているそうだ。従業員による自発的な福利厚生の利用は、給与アップに比べ満足度の向上や離職率の低下に対して高い投資対効果が見込めるためという。

またmiiveの場合、例えば部活手当はじめ、自社コンテンツを従業員が利用した場合ポイント還元を優遇したり、ベビーシッター手当を用意したりなど、企業ごとに独自の福利厚生を簡単に構築できる点を挙げた。

柔軟な働き方に関する課題として、同僚間のコミュニケーションの低下や、従業員が企業に大切にされていないと感じる傾向が挙げられるようになっている。この状況に対して、栗田氏は「柔軟な働き方や働き方改革は、福利厚生をセットにして初めて成功する」と考えているという。早期から柔軟な働き方を採用している企業の場合、社内コミュニケーションの活性化など独自の福利厚生にも取り組み、従業員の満足度を高めているからだ。

部活手当など、企業ごとに独自の福利厚生を簡単に構築できる

部活手当など、企業ごとに独自の福利厚生を簡単に構築できる

企業独自の福利厚生の場合、立て替え申請や領収書のとりまとめ、経理の振込といった手間や時間を要するといった課題があるが、従業員による申請などはアプリによって行えるため、企業側の負担もmiiveにより一切なくなるそうだ。

従業員は、アプリ上で申請を行うだけでよく、もし承認されなかった場合はその理由が即座に表示される

従業員は、アプリ上で申請を行うだけでよく、もし承認されなかった場合はその理由が即座に表示される

従業員間の承認もアプリ上で即座に実施。立て替えなどのとりまとめが行いやすい

従業員間の承認もアプリ上で即座に実施可能。立て替えなどのとりまとめが行いやすい

また福利厚生は税務メリットも大きいものの、従業員にとっては申請などが面倒といった点が利用機会の低減につながっていたため、これもmiiveによって解決できるとした。

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miiveが食事・アプリ・書籍補助などリモートでも利用できるプリペイドカード型福利厚生サービス

カテゴリー:フィンテック
タグ:HRテック(用語)資金調達(用語)福利厚生miive日本(国・地域)

miiveが食事・アプリ・書籍補助などリモートでも利用できるプリペイドカード型福利厚生サービス

miiveがオフィスとリモート問わず利用できるプリペイドカード型福利厚生サービスを4月下旬提供開始

miiveは2月10日、リモート環境にも適した福利厚生サービス「miive」(ミーブ)を2021年4月下旬よりリリースすると発表した。miiveは、オフィスとリモートのどちらでも利用できる様々なコンテンツを、福利厚生としてポイント精算できるプリペイドカード。福利厚生にかかる運用業務もトータルで支援するオールインワンの福利厚生サービスとしている。

miive利用料金は、1ユーザーあたり月額800円(税別)。初回カード発行費用1枚800円(税別)だが、2021年3月末までの発行分は無料。2021年4月下旬のサービス開始予定に先立ち、事前登録を受け付けている。

リモートワーク導入後、出社人数がばらつくために、オフィス内での福利厚生を見直す企業は少なくないという。国税庁が定めた要件を守りながら柔軟な働き方に適した福利厚生を充実させることは難しいものの、miiveの場合デリバリーランチやコンビニにも利用できるため、オフィスとリモートのどちらでも従業員が働きやすい環境を提供できるとしている。

miiveカードは、企業において、毎月定額のポイントを従業員の福利厚生として支給できる仕組みを採用。ポイント利用先として様々なVisa加盟店を用意しており、企業が自社の方針に合わせて利用先をカスタマイズし、福利厚生として精算することが可能。

また、決済履歴をデータ化しており、毎日の食事補助などだけでなく、都度生じる部活手当やアプリ・書籍補助など独自手当の精算を1タップで完了できる機能も用意。予算と用途をカスタマイズしながら立替精算にも使うことで、従業員の働き方や働く場所に合わせた福利厚生を構築・運用できるという。miiveでは支給額や支給条件を最初に定めるだけでよく、申請や領収書の取り扱いの手間といった運用コストを削減できるとしている。

miiveがオフィスとリモート問わず利用できるプリペイドカード型福利厚生サービスを4月下旬提供開始

miiveの特徴は、「miiveカード1枚で支払い」「福利厚生管理の簡素化」「税務コストの最適化」の3点にあるという。

miiveカードはすべてのVisa加盟店で利用できるため、支払いの際はVisaと伝えてかざすだけで済む。miiveカードを使うことで、従業員は事前申請や書面での請求の手間なく、福利厚生を利用可能。また、決済金額の1%が利用者に還元するため、使うたびにお得になるとしている。

福利厚生の管理については、システム上で利用履歴データを確認できるようにしており、人事・経理担当者は書面でのチェックや承認の手間なく運用・構築できる。

福利厚生は、企業と従業員それぞれの税務コストを削減する勘定科目ではあるものの、細かな要件を満たす必要があったり、支給額に限りがあったりなど、管理が難しいという。一方miiveなら、そうした管理の必要なく、税務コストを最適化できるそうだ。

miiveがオフィスとリモート問わず利用できるプリペイドカード型福利厚生サービスを4月下旬提供開始

2020年7月設立のmiiveは、「より良い生活を支える意味のある福利厚生を」という思いから生まれたという。社名・サービス名のmiiveの由来は、「活気あふれる場所」という意味を持つ「hive」と、「価値を生み出す」という意味の「mint」を組み合わせたもの。miiveは働きたいと思えるような活気あふれる場所を、世界中の企業が構築できるよう支援するとしている。

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カテゴリー:HRテック
タグ:福利厚生miive日本(国・地域)

有給休暇の要求で団結したAmazonの倉庫従業員を新型コロナが後押し

Amazonは、その倉庫での労働条件がいかにすばらしいかを公言してやまないが、世の常として、当の従業員の話は少し違っている。シカゴの倉庫に勤める従業員たちは、非正規従業員に約束していた有給休暇や休みの提供を渋りつづけるAmazonに業を煮やしていた。彼らは団結したがAmazonは反発。ところが、新型コロナウイルスがその均衡を破ることになった。

これは、企業に搾取され待遇を変えさせたいと奮闘する従業員から直接聞いた話として、とても興味深い。搾取とは、仕事が辛く給与が安いという意味ではない。それも事実なのだが、従業員の健康と幸福を大切にすると主張している企業から当たり前の配慮と待遇を得るために戦わなければならない状況を意味している。

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この従業員グループは組合ではないが、ずっと昔に労働組合が巻いた種ではある。共通の不満を持つ従業員が団結して、雇用主側を交渉のテーブルに引きずり出すというものだ。そもそもこのグループは、きれいな飲料水を要求するために組織されたものだ。そう、読んで字のごとし。個人的に訴えても聞き入れられなかったため、150人が嘆願書に署名し提出したところ、すぐにボトル入りの飲み水が大量に届けられ、新しいウォーターサーバーも設置された。

このことから、改善が必要な場合には、みんなで組織的に行動を起こすことが大切だと学びました。その後も、解決すべきばからしい問題は山ほどあるため、私たちは再び集まり、何度かブレインストーミングを行い、自らをDCH1 Amazonians United(DCH1アマゾニアンズ・ユナイテッド)と名乗ることに決めました。組合や非営利団体のバックアップもない、ただの従業員の集まりですが、威厳を忘れず、なんとか生活を保とうと努力しています。私たちは、使えるはずの有給休暇をAmazonが使わせないことを知ったとき、それに対処する態勢が整っていました。

Amazonは、週20時間以上勤務している従業員には有給休暇と休みをとる権利があると書面で伝えているが、そのとおりになっていない。なぜか倉庫の従業員は特別扱いで、週20時間以上働いても有給休暇や休みを取る権利が与えられていないのだ。どうにかして改善されるべき問題だ。

有給休暇を求める嘆願書に251名の署名を集めた彼らは、地区担当のマネージャーと交渉の席を設けた。それは、各シフトが管理者側の説明が聞けるよう、個別に3回行われた。その結果、1人のマネージャーは嘆願書を受理し、後の2人は拒絶した。管理者側は従業員の孤立化を図るようになった。グループでは会わず、個人面談なら受け付けるというのだ。ちなみにこれは、労働者の組織化を潰す初歩的な手法だ。

彼らは、サクラメントの倉庫で同様のグループがストライキを決行したことを聞いた。組織的な活動に神経質になった管理者側が、組織潰しに出たのは明らかだ。Amazonの従業員による国際会議も開かれ、情報や活動方法などが交換された。

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そこへ新型コロナウイルスが襲ってきた。いくつものAmazonの従業員グループから感染予防対策、危険手当と育児補助金の増額を求める嘆願書が提出され、Amazonは病欠を有給扱いに切り替えた。

こうした取り組みの高まりを受け、Amazonは週20時間以上勤務する者全員に有給休暇を与える決断を下した。

画像クレジット:DHC1 Amazonians United

TechCrunchに送られた声明には、Amazonは「前例のないパンデミックに対応し、私たちの業務と物流ネットワークに携わる従業員のための福利厚生を、新しく大幅に改善しました」と述べられていた。またこの決定は、アマゾニアンズ・ユナイテッドまたはいかなるグループからの圧力によるものではないという。だがこれはAmazonを説得するには、世界中のグループが団結して会社の方針に抗議しなければならないと言っているようにも聞こえる。そもそもなぜ有給休暇が与えられなかったのか、私はその理由を尋ねたが、まだ返事が来ない。

シカゴのグループは、窮地に際して決して孤独ではなかったが、必要な改善を勝ち取るための勇気と手段を手にするには、組織とコミュニケーションが必要だった。Amazonは新たに10万人を雇用する予定だが、このグループが勝ち取った恩恵を彼らも同様に受けられることを願う。

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画像クレジット:Johannes EISELE / AFP / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

育児サービスマッチングのKinsideが累計約4.4億円を調達

育児は、米国の家庭のもっとも大きな出費項目のひとつになっている。しかもその影響を受けるのは家族だけではない。育児による米国経済の生産性損失額は年間44億ドル(約4800億円)と見積もられ、さらに離職率にも影響を与えている。Kinside(キンサイド)は、育児のための支援を最大限に活用でき、自分たちの子どもに最適なサービス提供者を探すなどの子育て支援プラットフォームで育児に協力したいと考えている。Kinsideは米国時間12月12日、プラットフォームの一般公開と、Initialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)主導の新規投資ラウンドによる300万ドル(約3億3000万円)の資金調達を発表した。

これにより、18カ月前に創設されたKinsideが調達した資金の総額は400万ドル(約4億4000万円)となった。Initialized Capitalのほかに参加した投資会社は、Precursor Ventures(プレカーサー・ベンチャーズ)、Kairos(カイロス)、Jane VC(ジェーンVC)、 Escondido Ventures(エスコンディード・ベンチャーズ)となっている。

Shadiah Sigala(シャディア・シガラ)氏、Brittney Barrett(ブリトニー・バレット)氏、 Abe Han(エイブ・ハン)氏によって設立されたKinsideは、昨年夏、Y Combinatorに参加している間に、10人のクライアントによるプライベートなベータテストを開始した。昨年中に入社した人の数が1000人を超えるなど、子育て支援の需要の大きさが伺える。

「雇用主たちとの面談の約束はすぐに取れました」とCEOのシガラ氏はTechCrunchに話してくれた。「『従業員の育児を支援をしたいですか?』と件名に書きさえすれば、すぐに返事がきます。私たちはツボにはまったのです。そして実際に会って話を聞くと、雇用主たちがいちばん頭を痛めているのが、育児を助けてくれる人が見つからず従業員たちが困っている点だとわかったのです」。

写真に向かって左から、Kinsideの共同創設者である、シャディア・シガラ氏、ブリトニー・バレット氏、エイブ・ハン氏

米国は先進国の中で唯一、育児休暇を保障する国の法律を持たない国だ。Microsoft(マイクロソフト)、Netflix(ネットフリックス)、Deloite(デロイト)といった企業には、人材募集や離職予防のために手厚い福利厚生の制度があるが、中小企業の場合、これに匹敵する制度の導入は非常に厳しい。その結果、多くの従業員、特に女性は仕事を続けたいと思っていても育児退職を余儀なくされる。

「より大規模な成長した企業での最悪のパターンは、仕事への復帰が遅れることです。生産性の低下によって、最終損益に大打撃が加えられるからです。しかし、さらに大きな痛手は、女性がいなくなることです」とシガラ氏。「専門職の43&の女性は、子どもを生んでから1年か2年のうちに戦力から離れると報告されています」。

小さい子どもの育児に特化し、最近資金調達に成功したスタートアップにはほかにも、育児サービス提供者を探せるWinnie(ウィニー)、自宅に保育所を開設したい人を支援するWonderschool(ワンダースクール)、ロンドンの育児プラットフォームKoru Kids(コルキッズ)がある。

Kinsideを立ち上げる前、シガラ氏はスモールビジネスやフリーランスのための経営管理プラットフォームであるHoneybookを共同創設している。妊娠を機に同氏は会社の家族向け福利厚生の制度作りを開始し、小さな企業が直面する福利厚生の問題に精通するようになった。

Y Combinatorに参加したときに、育児費用のための扶養家族のフレキシブル支出口座(育児費用などを給与天引きで貯蓄できる福利厚生の一種)や税引前給付金など、請求方法が非常に複雑で、制度をフルに活用できるのはほんの一部の対象家庭のみであることを知り、もっと簡単に利用できるようにする方法の考案に専念した。Kinsideは、今でもフレキシブル支出口座の管理者と協力して、口座を持つ両親の手助けしている。現在Kinsideのアプリでは、自宅で開設されている保育所からもっと大規模な保育園まで、事前に選別された幼い子ども向けの育児サービス提供者の全国ネットワークも利用できるようになった。

Kinsideは、予約した施設との事前交渉や利用者への割り引き料金の提供、育児の専門家からなるコンシェルジュの相談サービスを行っている。親は、地域、料金、育児に対する考え方などを基準にサービス提供者を検索できる。シガラ氏によれば、彼らは多くの育児サービス提供者には20%から30%の空きがあることを知り、空きを埋める管理方法や、そこを利用したい家族の紹介などで協力をしているという。また、このアプリに加えて人材システムとの統合も計画している。

Initialized Capitalは、Reddit(レディット)の創設者でもあるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)が共同創設者になっている。彼は、有給育児休暇制度の導入を熱心に訴える人物でもある。この投資会社が力を入れている分野にファミリーテックがある。そのポートフォリオには、仕事に復帰したい母親のための就職情報プラットフォームのMom Project(マム・プロジェクト)も含まれている。

Initialized CapitalのパートナーであるAlda Leu Dennis(アルダ・ルー・デニス)氏は、Kinsideに投資した理由を電子メールでこう教えてくれた。「職場や家庭での不均衡に部分的に起因する男女不平等という根本的な問題があります。男女間の給与の格差や家事労働の問題もあり、いまだに母親に大きな負担がかかっています。男女の格差問題を解決することで、つまり、安価で質の高い育児サービスを提供することで、この状況を改善できると私たちは考えました」。

デニス氏はさらに「そのプロセスに雇用主も加えるというKinsideが提案するビジネスモデルの改革によって、従業員の家庭生活に安心と安定がもたらされ、結果として従業員の生産性も向上します」と話している。

シガラ氏はKinsideを、有給育児休暇、ひいてはすべての働く親のための総合的な子育て支援を含む、利益の公正性を求める運動の一環だと見ている。Kinsideのプラットフォームの利用者は男女比が均等で、子育て支援の需要は男女の垣根を越え、家庭全体に影響を与えていると彼女は強調する。

「複雑な問題です。私たちの生活基盤と社会は、今でも一人の稼ぎ頭が家庭を支える形が基本になっています。しかし、ほとんどの家庭の経済状況は、両方の親が働いてやっと請求書の支払いができる状態です」と彼女は言う。「これは運動だと思っています。今がそのときです」。

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(翻訳:金井哲夫)

社員1人1人に適したメンタル向上プログラムを提供する「emol work」のベータ版公開

AIロボとのチャットを通じて日々の感情を記録できるアプリ「emol」を運営するemolは12月2日、従業員のメンタルケアを通じて組織の生産性向上をサポートする法人向け新プロダクト「emol work」のベータ版をリリースした。

同社では合わせてF Ventures、MIRAISE、山本敏行氏(Chatwork創業者)、松村映子氏(バスケット創業者)、海野弘成氏(Increments創業者)を引受先とする第三者割当増資により総額2000万円の資金調達を実施したことも発表。調達した資金を活用して組織体制を強化し、プロダクトの開発を進めていく。

個々にパーソナライズしたメンタル向上プログラムを提供

emol workは「簡単なサーベイによって従業員のメンタル状態を可視化した上で、アプリを通じて個々にパーソナライズしたトレーニングメニューを提案してくれる」プロダクトだ。

emolの表現を借りるとemol workでは「エンプロイー・ウェルビーイングを実現するメンタル向上プログラム」を法人に提供する。ウェルビーイングとは精神面、身体面、社会面で全てが良好な状態を指す言葉のこと。同社ではこの3つの要素は互いに結びついているものであり、精神面から良い状態を作ることが社会面でも身体面でも良好な状態に持っていく手助けになるとの考えから、従業員のメンタルケアに焦点を当てているそうだ。

このプロダクトはまず従業員のメンタル状態を把握することから始まる。「いい気分」「やる気がある」「疲れている」など今の感情をパーセンテージで選択していく10秒マインドフルネスに加え、Slackの会話データからメンバー間の関係性を判断する診断機能を搭載。それらの状況を基に従業員ごとのメンタル状態を評価する。

ここまでは同じような機能を持つプロダクトもすでにたくさん存在するが、emol workのウリはむしろその先。各メンバーのメンタル状態を踏まえて、個々に最適なメンタルトレーニングメニューを提案する部分にある。

emol代表取締役の千頭沙織氏の話では、サーベイなどを通じて社員のメンタル状態を把握するためのツールは複数あれど「状態を向上させるためには具体的に何をすればいいのか」までをサポートしているものは少ない。emol workではトレーニング専用のアプリ内にて大きく4タイプのトレーニングコンテンツを用意。それを社員ごとにパーソナライズして配信しているのが特徴だ。

  • 聴いて鍛える音声コンテンツ(瞑想・マインドフルネス、リラックス音など)
  • 読んで鍛える記事コンテンツ(ストレスコーピング、睡眠改善、自己肯定感向上など)
  • 見て鍛える動画コンテンツ(コミュニケーション、リラックス動画など)
  • 書いて鍛える記述型コンテンツ(認知行動療法、思考整理など)

「1つのメニューは1〜2分ほどで終わるものが中心で、移動中やちょっとした空き時間などで実施できる。一口にメンタルトレーニングと言っても、ポジティブな状態の人とネガティブな状態の人ではやるべき内容が全く違う。emol workではその時々のメンタル状態を踏まえて『今やるべきトレーニング』が簡単にわかり、すぐに実践できる」(千頭氏)

メンタル状態の診断やトレーニングはアメリカの心理学会会長が提唱するポジティブ心理学やDSM-5(米国精神科医師や米国の臨床心理士が参考にする精神病の診断書)をベースに設計しているそう。これに関してはアメリカの大学で心理学を学んだ後、カウンセラーや行動療法士として働いていたメンバーが心理ディレクターとしてフルタイムで参画し制作・監修を行なっているという。

ベータ版リリース時点では上述した4タイプのうち、音声コンテンツと記事コンテンツのみで約40種類のトレーニングが登録されているとのこと。今後は動画や記述型も含めて随時コンテンツを追加していく予定だ。

またメンタル状態を診断する工程においてもSlack診断機能のアップデートや他のチャットツールへの対応、企業向けのダッシュボードの開発などを進めていく。

ベータ版は基本的に全ての機能を無料で提供するが、ゆくゆくはトレーニング用のアプリを従業員数などに応じた月額課金型のサービスとして展開していく方針。たとえば新入社員の研修プログラムの一貫としてなど、教育プログラムや福利厚生ツールとして企業に導入してもらうことを考えているようだ。

アプリで手軽にメンタルケア、個人向けアプリでも提供へ

emolは2019年3月創業のスタートアップ。創業者の千頭氏は2014年に起業し自社サービスの開発やWeb系の受託開発などを行なってきたが、2018年3月にリリースしたemolに注力する形で今年3月に会社としても再スタートをきった。冒頭でも触れた通り、emolはAIロボとチャットをしながら日々の感情を記録できる個人向けのiOSアプリだ。「人には話しづらい悩みや愚痴でもAI相手であれば気軽に何でも話せるのではないか」という考えから生まれたこのサービスは、iOS単体でこれまでに約15万ダウンロードを達成している。

「そもそも自分自身があまりメンタルが強くなく、学生時代にメンタル的に辛くて悩んだこともある。その時に周囲のサポートも受けながら自分でメンタルトレーニングの方法を模索し、実践することで克服できた経験から、自分で意識的にメンタルをケアすることが重要だと思いこの領域でサービスを始めた」(千頭氏)

emolのメンバー。1番左が代表取締役の千頭沙織氏

メンタルの問題は仕事のパフォーマンスにも大きく影響する反面、上述したように従業員のメンタル状態をサーベイなどで可視化するツールはあるものの、その後のトレーニングをサポートするものは少ない。企業側の課題があることに加え、マネタイズの観点でも個人向け単体より法人向けサービスとの2本柱にした方が事業を成長させやすいこともありemol workの開発に至った。

ゆくゆくは個人向けのアプリにもメンタルトレーニングの機能を実装し、emol work導入企業の従業員でなくともアプリを使ってメンタル状態を向上できる仕組みを作っていく計画だ。

個人向けに提供している「emol」

再教育こそが新しい人材獲得戦略――テック企業に学ぶ社内教育のメリット

【編集部注】執筆者のPercia SafarはWorkRampのファウンダー。

アメリカ中の企業が、新たなデジタルディスラプションの波に身構えている。昨年だけでも、Amazonは販売スタッフのいないスーパーを立ち上げ、マクドナルドは全てのレジをセルフサービス式のキオスクに置き換えることを決め、さらにCaterpillerは自動運転トラクターの開発に向けて投資を始めた。

AIや機械学習、自動化技術といった新時代を担うテクノロジーを活用して、テック企業が上記のような変化を推し進めるかたわら、これらの先進的なテクノロジーの登場によってこれまでにないほどの数の仕事が失われようとしている。

世界経済会議は、2020年までに製造業やカスタマーサービス関連の業務を中心に500万件もの仕事がなくなると予測している。その一方で、技術的なスキルを持つ人材の需要は満たされることなく増え続けている。特にコーディングのスキルを要する仕事の数は、市場全体と比較しても1.5倍の速さで増加中だ。

より多くの業界で電子化が進み、テクニカルな人材に対する需要が膨れ上がる中、その状況は悪化の一途を辿っている。例えばAT&Tは、28万人もの社員のクラウドコンピューティングやモバイルに関連したスキルを向上させようとしている。もはや彼らはSprintやVerizonだけでなく、GoogleやAmazonとも競合関係にあるのだ。

この状況を受けて、テック業界では既存社員の再教育という新たな施策を打ち出す企業が出始めた。もちろん、コンピューターサイエンスの授業や職業訓練校への投資も長期的にはとても価値があることだが、直近の問題を解決する上で再教育には一定の効果がある。イノベーションの最前線に立つためには、技術だけでなく人材に関してもシリコンバレーのやり方を採用するのが得策と言えそうだ。

求人票を再教育で代替する

これまで企業は、給与や福利厚生を充実させることでテクノロジー人材をひきつけようとしてきた。彼らがテクニカルな職種の給与を吊り上げるあまり、今では給与水準が上位25%の求人の約半数でコーディングスキルが求められているほどだ。そのため、待遇を良くすることでテクノロジー人材を獲得しようとしている企業も、なかなか空いたポジションを埋められないでいる。技術的なスキルを持つ管理職にいたっては、誰かを雇用するまでに平均で100日以上もかかると言われている。

そこで、人材獲得にさらに大金をつぎ込む代わりに、求める人材を自分たちで生み出すための新たな施策を打ち出す企業が誕生し始めた。Boxでセールスエンジニアリング担当VPを務めるMatt Nortonは、ソリューションエンジニアを探す上で1番良い場所は、一般的な人材市場ではなくBoxのカスタマーサポート部門だということに気づいた。

「カスタマーサポートのスタッフをエンジニアとして再教育したことで、空いたポジションをより速く埋められただけでなく、カスタマーサービス部門ですばらしい仕事をしてくれていた社員が持つ、組織やプロダクトに関する知識の流出を防ぐことができました」とNortonは説明する。社内のスタッフが空いたポジションを埋められるようになったことで、他のチームも採用上の問題を軽減でき、これまでよりもスピーディーに人員の増強ができるようになったとNortonは考えている。

他にも、これまで存在しなかったスキルを育むために、新しい教育プログラムを開発した企業が存在する。例えば、Flexportは先進的なソフトウェアで物流業界を変えようと決めたとき、同社の複雑なテクノロジーと何十億ドルという市場規模を誇る物流業の両方をよく知る人材を見つけなければいけなかった。

Flexportの共同ファウンダーでCEOを務めるRyan Petersonは「単に人材市場で条件に合う人を見つけようというわけにはいきませんでした。両方の知識を持ちあわせた人など当時いませんでしたからね」と説明する。

彼らは古風な考えの残る業界を変えようとしただけでなく、従来の社員教育の在り方まで変えようとしたのだ。そのため、Flexportの設立から間もない頃のPetersonは、社員が技術的なスキルを学びつつ運輸業のプロにもなれるような教育方法の開発に多くの時間を費やしていた。

「このハイブリッドなスキルを社員が身に付けてくれたからこそ、私たちは10〜15倍も成長することができたのです」と彼は話す。各業界のトップ企業も技術的な変化の波を乗り越えるために、Flexportのように機知に富んだトレーニング方法を開発すべきだ。

さらに社員の教育やスキルアップに力を入れることで、企業は採用活動時に他社と差別化を図ることができる。エドテックスタートアップのGuild Educationは、Chipotleのような企業をターゲットに社員向けの教育プログラムを統合し、福利厚生の一環としてトレーニングを提供するための手助けを行っている。

「企業が人材の獲得・引き留めに注力する今、新しいスキルを学んだり、キャリアを前進させたりできるような場を社員に与えるのが、何よりも競争力のある福利厚生なのです」とGuild Education共同ファウンダーのBrittany Stichは説明する。彼女は今後教育プログラムが福利厚生の一部として、健康保険や確定拠出年金(401k)と同じくらい一般的になると考えている。というのも、30歳未満のアメリカ人の61%が、キャリアのある地点で新しいスキルを身につけなくてなくてはいけなくなると考えているのだ。

人材市場にいないような人をゼロから育てるにしろ、既存の社員に新たなキャリア上のチャンスを与えるにしろ、さまざまな種類の企業が社員の再教育を人員増強のためのツールとして利用し始めている。

21世紀の新しい労働力

医療業界で言えば患者が病院を訪れる必要がなくなり、小売業界で言えば実店舗の存在意義が薄れるなど、シリコンバレーの企業が仕事の消失の一端を担っているのは間違いないが、同時に彼らはデジタル経済で求められる人材を育てるための新しい教育方法をつくりだそうとしている。他の業界の人たちもすぐに気付くことになるだろうが、新しい時代を生き抜くためには最先端のテクノロジーを開発して、ディスラプティブなビジネスモデルを考案するだけではなく、社員教育や人事制度にも力を入れていかなければならないのだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

利用状況を可視化する福利厚生プラットフォーム「TUNAG」が2.8億円調達

多くの企業は社員の福利厚生制度の一環として、書籍購入制度や英会話のレッスンやエンターテイメント施設の割引特権などを用意しているだろう。しかし、どのような制度があるか社員がきちんと把握している会社は少なそうだ。私自身も社会人になってから1、2回しかそうしたサービスを利用したことがない。また、これまで会社側としても社員がどの程度福利厚生制度を利用しているか把握する効率的な方法がなかった。愛知に拠点を置くスタメンは、そうした課題を解決するクラウド福利厚生プラットフォーム「TUNAG」を提供している。スタメンはTUNAGのサービス強化を図るため、本日総額2.8億円となる第三者割当増資を発表した。引受先はジャフコ、中京テレビ放送、DGインキュベーションおよび複数のエンジェル投資家だ。

社員はTUNAGのウェブサービス内から福利厚生制度の利用の申請から上長の承認、報告まで一環して行うことが可能だ。福利厚生制度の利用に関するやりとりは全てウェブサービス上で一括管理できるため、企業は福利厚生制度がどれくらい利用されているかや予算管理、経理処理といったデータを見ながら制度の改廃を管理できるようになる。

ただ、いくら制度があっても社員に利用されなければ意味がないだろう。TUNAGのもう一つの特徴は、Facebookのようなタイムラインがあり、社員同士のコミュニケーションを活性化する点だ。ここには社員が制度を利用したことなどを投稿したり、部内のメンバーを制度利用に招待したりすることができる(例えば、部内の懇親会補助制度の利用に部署のメンバーを招待するなど)。

TUNAGでは、通常版とカフェテリアプランの2つのプランを用意している。通常版では、TUNAGのコンサルタントが企業の要望を聞き取って、その会社にぴったりの福利厚生制度を作成するプランだ。TUNAGではその会社の経営課題を解決できる福利厚生制度を提案するという。例えば、複数拠点持つ会社で社員同士の交流を促したい会社は懇親会の補助制度だったり、採用の強化を目指す会社は採用候補者との会食補助制度だったり、それぞれの課題にあった制度を提案する。カフェテリアプランでは、社員はポイント制で使いたい制度を利用できる仕組みを採用している。

2016年1月に創業したスタメンは、2017年1月からTUNAGの本格展開を始めた。料金プランは従業員数別に用意している。スタートアップ(サービス導入費5万円+月額9万8000円)、スタンダード(サービス導入費10万円+社員1名あたり900円)、エンタープライズプラン(サービス導入費30万円+社員1名あたり800円)の3つだ。

まだ本格展開してから3ヶ月ほどだが、IT系企業をはじめ、人材や製造業の会社からの引き合いが増えているとスタメンの広報担当者は話す。今回の調達は、シナジーが期待できる会社からの出資を受けたと話す。調達資金はサービス開発、福利厚生のコンテンツの拡充や営業活動に充てる計画だという。

エウレカがパパママ社員に優しい新人事制度、英会話全額負担や「pairs婚」手当ても

恋愛マッチングアプリ「pairs」を運営するエウレカが15日、福利厚生プログラム「baniera(バニエラ)」を導入した。これまでも一般的な福利厚生制度はあったが、結婚や出産、育児に関する支援を中心に充実させた。主な内容は以下の通りだ。

バニエラとは、古代ギリシャ語で「お風呂」の意味。アルキメデスが浮力の原理を見つけた場所で、そのとき「エウレカ!(わかったぞ!)」と叫んだと言われている。「エウレカでのひらめき・成長を支える場所」という意を込めて、バニエラと名付けたのだという

バニエラとは、古代ギリシャ語で「お風呂」の意味。アルキメデスが浮力の原理を見つけた場所で、そのとき「エウレカ!(わかったぞ!)」と叫んだと言われている。「エウレカでのひらめき・成長を支える場所」という意を込めて、バニエラと名付けたのだという

・オンライン英会話学習の全額負担
米国とのやり取りがある社員、月間受講日数が15日以上の社員にはレッスン受講料を全額負担する。

・海外カンファレンス参加費用負担
WWDC/Google IO/F8の参加者に飛行機代、ホテル代、カンファレンスチケット代を全額負担する。

・結婚祝い
5万円+上限20万円までの家電をプレゼント。乾燥機付き洗濯機やお掃除ロボットなどで、家事の負担を減らしたいという思いがあるという。

・Happy pairs婚
自社アプリ「pairs」を通じて結婚したメンバーには、結婚祝いに加えて5万円分のギフト券をプレゼントする。

・出産お祝い金
10万円を支給。男性社員には、出産時に家族に寄り添えるように3日間の「出産応援休暇」を付与する。

・育休中1on1/育休中でも会議出席
産休・育休中も月例の上長面談を継続。育休中でも全社会や重要会議に参加できる。どちらも復職を支援することが狙いで、Skypeでの参加も可能。

・banier for ペット
ペットを病院に連れて行く際、年3回の半休を取得可能。ペットが死亡した場合には2日間の休暇を付与する。

エウレカのオフィスでは創業当初から、副社長の西川順さんの愛犬が会社の成長を見守っているそうだ。

エウレカにはCDO(Chief Dog Officer)の「ジョブ」がいる。共同創業者・西川順さんの愛犬で、創業当初から会社の成長を見守っているそうだ。

メガベンチャーの福利厚生のいいとこ取り

エウレカは2008年11月に設立。日本と台湾で400万人が利用するpairs、350万ダウンロード超のカップル向けコミュニケーションアプリ「Couples」を運営する。2015年11月には、MatchやTinderなどのマッチングサービスを世界展開する米IACグループの傘下となった。

新人事制度は従業員が100人に達したことをきっかけに、安心して働ける仕組みを整えた。家族向け制度の内容を考案したのは、まもなく社内で育休取得第1号となる人事総務部の進真穂さん。「メガベンチャーの福利厚生のいいとこ取りをして、私が欲しいものを作りました」と語る。

「エウレカは平均年齢が28歳。出産や育児中の社員は少ないですが、30代で子供を持つ社員も増えましたし、これから必要な人も出てきます。充実した福利厚生があれば、社員が安心して働けるだけでなく、会社としてもアクセルを踏んで事業拡大しやすくなると思います」

バニエラではこのほか、有料セミナー参加費負担や自己負担200円の育児シッター制度、待機児童対策の引越し金援助などがあり、今後も社員の要望に応じて随時充実させる。現在は従業員の健康のために、営業時間中に社内でヨガを実施することを検討している。

スタートアップの福利厚生としては、フリマアプリのメルカリが産休・育休の8カ月間も給与100%を保障する「merci box」が話題になった。大企業に引けをとらないスタートアップの福利厚生は、これからも増えていきそうだ。