社会保障制度のデジタル化が人権に与える影響に国連が警告

極度の貧困と人権に関する国連の特別報告者は、イギリスが、デジタル技術とデータツールを使って公共サービスの提供方法に関する国家規模の根本的な再構築を急いでいることに懸念を示し、本日(イギリス現地時間の11月16日)、デジタル社会保証制度が社会的弱者に与える影響は「計り知れない」と警告するステートメントを発表した。

特別報告者はまた、AIなどの技術を公共サービスの提供に利用することが、結果的に人々を傷つけることにならないよう、人権に基づく法的な枠組みを持つ、より厳格な法律を制定し施行することを求めた。

「政府の中で、この進展が生活保護手当給付制度よりも目立つようになった部分がいくつかある」と特別報告者Philip Alston教授は話している。「戦後のイギリスの社会保障制度は、ウェブページやアルゴリズムの影で次第に見えなくなり、そこにはデジタル社会保障制度が現れてきた。イギリスでもっとも弱い立場の人たちへの影響は計り知れない」

これは、よいタイミングの介入だった。今やイギリスの閣僚たちですら、デジタル技術を使って、窓口で料金を支払わずに済むイギリスの医療保健制度を改変しようと躍起になっているからだ。

Alstonのステートメントではまた、公的サービス提供の自動化(AI技術の積極的な導入)を推し進める姿勢には、不透明な部分があることも心配だと警告されている。

「イギリス政府による新技術の開発に関して、もっとも大きな問題は、不透明性だ。そうした自動化された政府システムの存在、目的、基本的な機能は、多くの部分に謎を残し、それらに対する誤解や不安を焚き付けている」と彼は書いている。さらに「そうした流れの中では、とくに、もっとも貧困な人たちや、もっとも弱い立場の人たちの人権が脅かされることが証明されている」

つまり、技術系巨大企業が無作法に破壊的な事業を強行するように、イギリスの政府機関も、きらびやかな新システムをブラックボックスで提供しようとしているのだ。そしてそれが、詳しい説明をできなくする理由にもなっている。

「自動化計画の情報公開を拡大すれば、商業的利益やAIコンサルタント会社との契約に、先入観による影響を与えてそまい、知的財産権は侵害され、個人に制度の抜け穴を与えることになると、中央政府機関も地方の政府機関も一様に主張する」とAlstonは書いている。「しかし、自動システムの開発と運用に関するより多くの知識を公開することが必要であることは明らかだ」

過激な社会再構築

彼によれば、2010年に整備された国内政策の「緊縮の尺度」の枠組みが誤解を招いたという。つまり、政府の意図はむしろ、国際金融危機を利用して、公共サービスの提供をデジタルに置き換え、社会を変えることにあると。

またはこうも指摘している。「証拠から示された結果として判明したのは、貧困に関連する政策の分野では、その推進力は経済ではなく、過激な社会再構築を進めたいという意欲にあった」

Alstonのイギリスでの調査は2週間にわたった。その間、彼はイギリス社会のさまざまな人たちに話を聞いている。それには、行政や市民団体による職業紹介所やフードバンクなどの施設、大臣から職員まで、どさまざまな階層の政府の人たち、さらには野党の政治家、市民団体の代表や現場で働く労働者なども含まれていた。

彼のステートメントには、イギリスの社会補償制度の全面的な見直しという批判の多い問題にも詳細に触れている。政府は、複数ある社会保障制度を「ユニバーサル・クレジット」と呼ばれるものに一本化する計画を進めている。とりわけ彼が注視したのは、「大いに議論の余地」がある「デフォルトがデジタル」というサービスの提供方法だ。なぜ、「もっとも弱い立場にいる人たちや、デジタルの知識を持たない人たちが、全国的なデジタル実験と思えるものに使われなければならないのか」

「ユニバーサル・クレジットは、大勢の人々の権利の行使を実質的に阻止する、デジタルの壁を作ってしまった」と彼は警告し、低所得者はデジタル機器の扱いに不慣れで、デジタルに関する知識も大変に乏しいと指摘している。そして、緊縮財政の対象とされているにも関わらず、市民が自分たちの命を支える役割まで担わされている現状を、詳しく述べている。

「現実には、こうしたデジタルの支援は公立図書館や市民団体に外注されいる」と彼は書いている。社会的に弱い立場にいる人たちにとって、光り輝くデジタル世界への入り口は、むしろファイヤーウォールになっているという。

「ユニバーサル・クレジットの権利を行使したいが、デジタル社会から排除されデジタルの知識を持たない人たちを救済する最前線に、公共図書館はある」と彼は言う。「国中の公共図書館の予算が大幅に削減されているが、それでも図書館員たちは、ユニバーサル・クレジットを求めて図書館に押しかけてくる大勢の人たちに対処しなければならない。オンラインの手続きでパニックに陥ることも少なくない」

さらにAlstonは、「デフォルトがデジタル」とは、実際には「デジタルのみに近い」と指摘している。政府が推奨しない電話相談などの別の手段では、「長い待ち時間」や「あまり訓練されていないスタッフ」による不愉快な対応に悩まされる。

自動化によるエラーに対処する人的コスト

彼のステートメントでは、自動化は大規模なエラーを引き起こす恐れがあることも強調されている。何人かの専門家や市民団体から聞いた話として、リアルタイム・インフォメーション(RTI)システムがユニバーサル・クレジットを支えている問題を挙げている。

RTIは、雇用主から歳入関税局に提出された給与のデータを取得し、それを雇用年金局と共有して月ごとの収入を自動的に計算している。しかし、給与データがに誤りがあったり提出が遅れた場合には、給付に影響が出る。Alstonによれば、政府は、請求者の訴えよりも、この自動システムの判断を優先させることを許している。

「コンピューターがダメと言っていますから」という対応は、すなわち、弱い立場の人たちの1カ月間の十分な食事と暖房が奪われることを意味する。

「雇用年金局によると、常時50名の職員が、月間数百万件にのぼる誤データのうちの2パーセントの処理にあたっている」と彼は書いている。「雇用年金局はそもそも、自動システムの判断を優先させる立場なので、請求者は適正な給付を受け取るまでに数週間も待たされることになる。システムが間違っていたという証拠を文書で示されても、そこは変わらない。昔ながらの給与明細も、コンピューターの情報と違っていたら無視されてしまう」という。

もうひとつ、自動化された社会保障システムの特徴として、「リスク対策の認証」などに関連して、請求者がリスクの高さによって分別される危険性について彼は論じている。

これには、「「リスクが高い」と判定された人たちが「その事実が判明していなくても、より厳しいセキュリティーと捜査の対象にされる」問題も含まれているとAlstonは言う。

「生活保護手当の請求者の推定無罪は、全面監視システムにより、悪いことをする可能性があると判断された時点で覆される」と彼は警告する。「自動システムの存在や仕組みが不透明なため、不服を訴えたり、実効性のある改善を求めても意味がない」

こうした彼の懸念を総合すると、自動化が政治的にも民主主義的にも良い結果を生み出すには、高いレベルの透明化を実現してシステムを評価できるようにする必要がある、ということになる。

倫理規範よりも法の支配を

「自動化を可能にする人工知能やその他の技術に、最初から人権や法の支配を揺るがす機能が備えられているわけではない。政府が意のままに政策を進める手段として、そうした技術を利用しているというのが本当だ。その結果は、良くもなれば悪くもなるのだが、自動システムの開発と運用が透明化されていなければ、その評価はできない。さらに、その分野での意思決定から市民を排除するなら、人工民主主義に基づく未来のためのステージを、私たちは提供することとなる」

「新技術の存在、目的、運用を、政府と国民との間で透明化しようという話し合いを重ね、技術がわかりやすく解説されるようになり、社会に与える影響が明確になるまでには、長い時間を要するだろう。新技術に、社会を良くする大きな可能性があることは確かだ。また、知識を高めれば、技術の限界を現実的に知ることができる。機械学習システムはチェスで人間を下せるだろうが、貧困といった複雑な社会の病を解決するまでには至っていない。

彼のステートメントは、現在イギリス政府が準備を進めているビッグデータとAIを管理する制度への懸念も示している。それは開発を導き、方向性を示すためのものだが、「倫理に大きく偏っている」と彼は指摘する。

「たしかに前向きな動きだが、倫理の枠組みの限界から目を離してはいけない」と彼は注意を促す。「たとえば公正さのよう倫理的概念は、定義とは相容れないものだ。法律で規定できる人権とは、性質が異なる。個人の権利が大幅に制限される恐れがある政府の自動化の推進は、倫理的規範だけでなく、法律によって縛るべきだ」

現行の法律を強化して、公共部門でのデジタル技術の使用を適正に制限することに対しても、Alstonはさらなる警鐘を鳴らしている。それは、公共部門のデータのためのプライバシーに関する法律の改正時に、政府が書き加えた権利に関する心配だ(今年の初めにTechCrunchが指摘した問題だ)。

それに関して、彼はこう書いている。「EUの一般データ保護規制には、自動化された意思決定に関する前途有望な条項(37)と、データ保護影響評価が含まれているが、2018年データ保護法では、政府のデータ利用と、政府によるデータ処理のための枠組みという図式の中でのデータの共有に関して、大きな迂回路ができてしまった」

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(翻訳:金井哲夫)

ジェフ・ベゾス、幼児教育とホームレス支援で20億ドルの基金設立

Amazon創業者(そして世界一の富豪)であるジェフ・ベゾスは今朝、非営利のプレスクール施設網構築のため、そしてホームレス支援団体に資金を寄付するための基金を夫妻で設立するとツイートした。

ベゾスは「Day 1 Families Fundは、緊急に助けを必要としている若い家族を支援するためにシェルターを用意したり食糧を提供したりと、実際に思いやりを持って動いている団体や市民グループに毎年リーダーシップ賞を授与する」と述べている。

それとは別にDay 1 Academies Fundがあり、低所得者が多く住むエリアでモンテッソーリ教育に基づく無料の幼児教育施設網を展開する。

ベゾスは、この教育施設は“Amazon と同じ理念”で運営するとしている。その理念とは、ベゾスにとっては顧客中心を意味する。

この基金の名称 “Day 1”は、ベゾスの哲学“初心を忘れない”からきている。

経済的に恵まれていない子どもたちのための無料の教育施設網を築き、ホームレスのニーズに応える組織を支援するために資金を拠出するのは紛れもなく善行だ。しかし、こうした個の取り組みが、ホームレスや教育機会の欠如という全体にかかる問題を改善するのに効果的かは定かではない。

おそらくベゾスは、Amazonの従業員だったVickie Shannon Allenが職場での事故により職を失い、ホームレスになったことに関するレポートを目にしたことで、国に広がるホームレスの苦境に向き合う気持ちになったのだろう。

ホームレスのためのシェルターや低所得者向けの住宅の費用を賄うことを目的とした新税の導入をシアトル市が検討したが、Amazonがこの税の標的になった後に、ベゾスがこうしたホームレス問題に取り組むのはなんとも深遠だ。

法案を廃止にするためのAmazonの取り組みについてはFortuneが詳しく報じている。

Amazonは、原案では従業員1人あたり500ドルを課すとしていた税に反対した。不満の意を表明するために新タワーの建設を中止し、ダウンタウンにある立派なビルに確保していた72万2000平方フィートもの賃貸を又貸しするかもしれない、とほのめかした。そして市議会が275ドルに減額した税を承認したのち、Amazonはタワーの建設を再開した。しかし、法案に反対したグループNo Tax on JobsにはStarbucksや他の地元企業も資金を提供し、グループは税廃止の投票のために署名活動にかかった費用30万ドルを調達した。採決後の声明で、Amazonの副社長Drew Herdenerは「雇用創出への税を廃止するという今日の市議会の採決結果は、地域の経済発展のために正しい判断だった」と述べた。

今回の基金設立で、ベゾスは社会貢献のための基金活動をしている途方もなく金持ちの人々(参照:チャン・ザッカーバーグ、ゲイツ基金、そしてウォーレン・バフェット)の長いリストに加わった。

億万長者が社会への貢献を義務ではなく贈り物として行うのは、構造的問題の壁を超えた博愛精神の長い歴史の一部である。

新基金に関するベゾスのツイートは以下の通りだ。

イメージクレジット: Drew Angerer

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(翻訳:Mizoguchi)

Googleがアメリカの退役軍人の就職や起業/企業を助けるための機能集合を展開

Googleは、アメリカの退役軍人が円滑に市民生活に戻れるために、彼らの職探しや起業および企業経営を助けるツールを提供しようとしている。

そのひとつが、同社のキャリア開発プログラムGrow with Googleの新しい機能だ。それは、彼らが従軍の期間に身につけたスキルを活かせる仕事を探す機能で、まずGoogleの検索で“jobs for veterans”と彼らの軍務を表すコード(military occupation code)を入力する。求人企業や求人求職サイトは、GoogleのCloud Talent Solutionという、機械学習による求職求人プラットホームを使って、自分のサイト上でその機能を有効にする(検索結果に現れるようにする)。

Googleの発表の中で、Google Cloud事業のマネージャーで、イラクとアフガニスタンで計3回も従軍した元空軍の土木技師Matthew Hudsonが、退役軍人は機会を逃しがちである、と述べている。それは、物理的にはまったく同じ仕事でも、民間世界の企業と元軍人の頭の中とでは、その理解、認識、言葉などがまったく違うからだ。だから求人側と求職側が、互いの目の前に求める技能や職種があっても、そのニーズがマッチしない。そのため退役軍人の三人に一人…年間およそ25万人発生している…は、自分の技能レベル以下の仕事しか得られていない。

企業を起こしたり経営しようとする退役軍人のためにGoogleは、Google My BusinesとGoogle Mapsとモバイルの検索に、新しい属性を加えた。Googleのデータサイエンティストで元アメリカ陸軍の二等軍曹だったSean O’Keefeが、アメリカの企業の250万社以上が、その過半数オーナーが退役軍人だ、とブログに書いている。そこでGoogleの企業一覧には、“Has Wifi”や“Family Friendly”などと並んで“Veteran-Led”(退役軍人が経営)という属性バッジがつくようになる。

またGoogleのチャリティー部門Google.orgは、慰安団体United Service Organizations(USO)に、退役軍人のための初歩的なIT教育と、その卒業者へのサポート職資格認定Google IT Support Professional Certificationを賦与するための事業をやってもらうために、250万ドルを助成する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

認知症の人が自分で着替えができるようにするニューヨーク大のスマートドレッサー

毎日の生活の中で、服を着ることは重要な作業のひとつだが、長年の経験で第二の天性になっている。しかし認知症の人などはその天性を失い、うまく着ることができないことがある。ここでご紹介するニューヨーク大学で作られたスマートドレッサーは、そんな人たちの服を着る作業を助けるとともに、介護者の苦労と負担を減らしてくれる。

臨機応変な人間に換えてロボットのドレッサーを使うことは、無神経なやり方に見えるかもしれない。しかし介護施設などでは介護者がタイムリーに特定の人の世話をできないこともあるし、また居住者自身もプライバシーと独立性を重視して、このようなソリューションの方を好む場合もある。

“目標は認知症の人びとを介助して、彼らが今いる場所でもっとおだやかに老いていけるようにすることだ。また理想としては、要介護者が着替えをしているときには、介護人が休めるようにしたい。そのためにこのシステムは、着替えが終わったら介護人に通報し、手伝いが必要なら合図できる”、とプロジェクトのリーダーWinslow Burlesonがニューヨーク大学のニュースリリースで述べている。

このデバイスはDRESSと呼ばれ、引き出しが5つある化粧だんすで、上には鏡ではなくタブレットがある。タブレットは、表示とカメラの役を演ずる。そして、服を着替える人の様子を観察しながら、正しいやり方を教える。

正しくない着方はたくさんあるが、正しい着方はひとつだ。シャツは上に頭と首を通し、前を胸と腹側にする。ズボンは前開きを前にして着る。靴下は両足に着ける。などなど。服にはタグが付いているので、DRESSはそれを見て正しい着方をしたことが分かる。ズボンを着る前に靴を履いた、という間違いもチェックできる。引き出しの前面についているライトが、次に着るべきものを知らせる。

しかし、要介護者が迷ったり、使い方が分からなくなると、介護者に通報が行くので助けに駆けつけられる。しかし完全に正しい着替えが終了したら、それは、完全に自力でやった着替えだ。それは、以前は不可能なことだった。

DRESSは現状ではまだプロトタイプで、概念実証のような段階だ。今後はシステムの視覚系をもっと改良したり、衣類のたたみ方/広げ方の標準化、衣類につけるタグの改良などが課題だ。

画像クレジット: ニューヨーク大学(NYU)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Facebookは個人的目的のための募金で手数料を無料にした

Cambridge Analyticaに関するあらゆることで責められているFacebookは、それでもまだ、何か良いことをしたい、と望んでいる。今日Facebookは、個人的目的で活動資金などを募金する場合、手数料を無料にする、と発表した。

これまではアメリカで4.3%、カナダで6.2%徴収していた手数料が無料になる。これらの手数料は、募金の目的や募金者の人物を審査するための費用、とされている。これからは、これら安全と保護のための方策に関わる費用を、Facebookが負担する。

Facebookの社会福祉ツール部門のトップAsha Sharmaは、次のように述べている: “この件についてはわれわれもまだ勉強中だが、とにかく人びとの福利を最大にしたいのだ”。

Facebookが無料でも、決済の費用や税金はかかる。アメリカとカナダでは決済の処理費用が2.6%+30セントだ。Facebookは、資金募集ツールの新しい機能を二つ発表した。

ひとつは、人びとが寄付を非営利の資金募集者宛てにできること。もうひとつは、個人の募金目的の種別の拡大だ。これまでのように、動物愛護や個人的緊急事態だけでなく、これからは医療目的のためのコミュニティの旅行や、養子縁組のような家族関連の目的、宗教的イベント、ボランティア活動の支援などでも募金ができる。

これまでに集まった募金の額をFacebookは明かさないが、同社の社会福祉ツールは、75万あまりの非営利目的の寄付獲得を助けた、という。Sharmaは個人的募金目的について、“これらすべての分野や種別で活動があるから、対象に含めざるをえなかった”、と言っている。

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サンフランシスコで高校生にコンピューターサイエンスを教えるMission Bitに市が$1Mを補助

高校生にコンピューターサイエンスを教えるNPO Mission Bitが、サンフランシスコ市のDepartment of Children, Youth and Their Families(DCYF)〔仮訳: 児童青少年家族局〕から5年間で100万ドルの補助金を交付された。

Mission Bitは学校の各学期の放課後に、高校生向けのコンピューターサイエンス教室を提供している。秋と春のコースはそれぞれ13週で、1週間に4時間の授業だ。その内容は主に、HTMLとCSSとJavaScriptである。

夏休みには6週間のコースがある。この秋にMission Bitは、今やっている学習や成長をさらに延伸する2年計画の事業を立ち上げる、とCEOのStevon Cookは言っている。

その2年のコースは、DCYFがMission Bitに求める目標でもある。補助金は主に、里子として育った子や、公営住宅に住む子、移民の子など、社会から疎外されているような若者をより多くピックアップすることに使われる。そのためにMission Bitは、そういう恵まれない子どもたちのために尽力している既存の団体ともパートナーしていく。

コンサルタント企業のInspireがMission Bitのために行った調査によると、サンフランシスコのベイエリアだけでも、学校でコンピューターサイエンスのクラスにアクセスしていない高校生が10万名いる。2020年までにMission Bitは、その地区の1万名の、とくに黒人とヒスパニックの生徒たちに教えたい、としている。また、食事福祉を受けている生徒も、対象とする。

これまでMission Bitのプログラムに参加したのは1600名の生徒たちだ。現在のグループは150名の生徒だ。

画像クレジット: Mission Bit

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

囚人たちにプログラミングを教えて出所後の職を確保しているThe Last Mile、刑務所に舞い戻る悪循環を断つ

[筆者: Ruben Harris](プロのチェリストで投資銀行家、後者は今、高齢者の訪問看護を行うHonorのためにサンフランシスコでパートナーシップを構築している。彼はポッドキャストBreaking Into Startupsのファウンダーでもある。)

囚人一人あたりの年間費用は彼/彼女が同じ期間に高等教育を受けた場合の学費の5倍だ。そしてアメリカの刑務所人口の10%はカリフォルニアにいる。

出所した人がまた戻ってくる大きな理由のひとつが、服役中に教育を受ける機会がないことだ。

今日(米国時間3/10)のBreaking Into Startupsは、彼らを人生の成功に導く教育事業The Last Mileに焦点を当てた。

カリフォルニア州の囚人の75%以上は、出所から一年後でも仕事がない。サンクェンティンで終身刑に服していたKenyatta Lealは、この数字を変えると決意した。

今回の放送で彼は、刑務所行きになった理由、そこで出会ったメンター、そしてThe Last Mileがインターネットのないところで人びとにプログラミングを教えているやり方を語っている。

Lealは、自分の出所についても語った。彼は、刑務所で習ったスキルのおかげで、職に就くことができた。Lealにとってそのスキルは、ブログを書いたり、自分をTwitterやQuoraの上で表現することも含まれたいた。そしてLealは、刑務所を出たり入ったりの悪循環を断つことの重要性を語っている。

出所後のLealは、刑務所でできた友だちなど、数人の人の、テクノロジー企業への就職を助けることができた。

刑事司法の改革に関心のある読者は、私(ruben@breakingintostartups.com)にメールをくれれば、あなたを導いてくれる人たちを紹介しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

スマート義肢の‘スマート’機能を靴下状のウェアラブルにして超低コストを実現

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義肢の未来が足早にやってくる。3Dプリント、新しい素材、そしてセンサーの内蔵が、古き日のそっけない木とプラスチックに代わりつつある。でも未来はどれも、平等には行き渡らない。そこで、高価な新しい義肢に手が届かない人たちのために、オーストリアの研究者たちが、センサーを取り付けた衣料品で無脳な義肢をスマート化(有脳化)する方法を提案している。

リンツの応用科学大学が開発したそのproCoverと呼ばれる製品は、ACMのUIST(User Interface Software and Technology)カンファレンスで紹介され、最優秀論文の一つに選ばれた。

その論文の序文には、こうある: “感覚をエミュレートできる義肢の開発は、昨今ますます多くの研究者たちが、関心を持ちつつある。しかしながら、この分野における優れたイノベーションの多くが、多くの人びとにとって手の届かないままでありがちである。われわれのビジョンは、既存の義肢に後付けできる、センサーを装備した安価なウェアラブルにより、この落差を填めることである”。

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彼らのソリューションは、義肢のユーザーの多くが、ふつうの手足のようにソックスやグラブを着用することから発想されている。だったら、そのソックスをスマートな素材で作ればよいではないか。そこから、彼らのproCoverは誕生した。伝導性素材の層が圧電抵抗の層をサンドイッチすれば、脚や足首全体をカバーする感圧性のグリッドが作られる。

それを、ユーザーが必要とするときに振動モーターのリングに接続する。脚のある部分が圧力を受けると、その部分のモーターが、それぞれ異なる周波数で振動する。別のバージョンとして、義肢の膝(ひざ)を曲げたときの角度を伝えるものもある。

それは多方向的な柔軟性があり、圧力や位置をローコストで感知できる。フィードバックの機構も非侵襲性(体内に入らない)なので、手術は不要だ。

プロトタイプの初期の実ユーザー実装テストでは、デバイスは構想どおりに機能し、有用性に富むフィードバックが得られたが、ユーザーの実態に応じてのカスタマイズの必要性が明らかとなった。センサーなどの配置位置や、フィードバックの強度などは、カスタマイズが容易だ。またフィードバックを、振動ではなく圧力の増加で表す方法も考えられる。

チームの次の課題は、ソックスの構造をもっと単純化することだ。そして義手のユーザーのためのグラブも、作らなければならない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

活動家のShiza ShahidがAngelListと組んで「ミッション・ドリブンなスタートアップ」に投資するファンドを設立

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6月23日(米国)、スタンフォード大学で開催されたGlobal Entrepreneurship Summit (GES 2016)で、資金調達プラットフォームAngelListと活動家のShiza Shahidはパートナーシップを組み、NOW Venturesを設立すると発表した。「ミッション・ドリブン」なスタートアップを支援するファンドだという。

利益を確保しつつ、社会と世界環境に良い影響を与えようとする企業についた最新の名称のようだ。こういったスタートアップはこれまで営利慈善事業会社、ワールドポジティブやソーシャルベンチャー、ダブルボトムラインやトリプルボトムライン企業として知られてきた。

NOW Venturesは、創業メンバーにダイバーシティがあり、女性を含むスタートアップに投資することを約束する。

母国パキスタンに住み、14歳の時から女性の教育とジェンダー平等の提唱者で活動家であるShahidは非営利団体マララ基金の共同ファウンダーであることで有名だ。マララ基金はノーベル賞を受賞したマララ・ユスフザイと彼女の父親の教育者で活動家のジアウディン・ユスフザイと共に設立した。

少し説明すると、 2012年10月、まだ15歳だったマララ・ユスフザイはタリバンの襲撃を受けた。マララが狙われたのは、タリバンが彼女の住む町における支配力を強める中でも、彼女は屈せずに良い教育を受ける取り組みを発信しようと執筆したり、話をしたりしていたからだ。タリバンは彼女が学校から帰宅するバスを襲い、彼女は頭、首、肩に銃撃を受けた。幸いにも一命を取り留め、マララは活動を続けている。

2013年1月に退院した時、彼女と彼女の家族がパキスタンの法律を変えるための支援が世界中、そしてオンラインからも届いた。彼女の訴えは受け入れられ、国が無償の義務教育を受ける権利の法案に合意するに至った。

彼らのウェブサイトによると、マララ基金はパキスタン、ナイジェリア、ケニア、シエラレオネ、本国から離れたシリア難民のコミュニティーにおける女子が少なくとも12年間、安全で質の高い教育を受けられるよう支援する。

この問題に対する人々の認識を高め、非営利団体の設立に成功したものの、自分たちで利益を得て自立した運営をしている会社が他者を助ける方が、世界に大きな変化をもたらす可能性が高いとShahidは考えている。また、そういった影響を非営利団体や慈善活動家より早く実現できると考える。

「私たちが証明したい仮説は、ミッション・ドリブンな企業の方が営利目的だけの企業より良い投資になるということです。そういった会社はロイヤルカスタマーを獲得し、かわいいアプリを制作するより規模の大きい問題に取り組んでいると考えています」 とShahidは言う。

スタンフォード大学を卒業しているShahidは、自分で営利企業を運営したこともスタートアップに投資した経験もないことを認識し、AngelListのCEOであるNaval RavikantとCOOのKevin Lawsの協力を仰いだ。彼らに教わりながらファンドの運用を行なっていくという。

LawsとRavikantはLPからの資本金集め、案件の募集、投資を検討するスタートアップのデューデリジェンスの実施に関してNOW Venturesに協力するという。また、ファンドがどの企業にいくらで投資するかを決議するNOW Venturesの投資委員会にも加入するとLawsは話す。

Silicon Valley Bankもファンドのアドバイザーを務めるが、彼らはファンドの投資委員会にメンバーに加入していない。

Lawsは、NOW Venturesのファンド設立と投資案件の決定においてサポートする以外にも、ファンドが「ミッション・ドリブンな投資の何がうまくいき、何がうまくいかないか」を特定するために、AngelListと調査会社とで広範囲に及ぶファウンダーと投資家のデータを提供するという。

もちろん、NOW Venturesが自分たちの資本を入れる案件をAngelListのサイトに掲載し、彼らのネットワークを通じて適格投資家からのファンディングを募ることも可能だ。適格投資家は自分たちの資本をその案件に投資することができる。

NOW Venturesは最初の資本を506cに沿って調達する。そうすることでNOW Venturesは広く資金を募り、LPからの資本を求めていると告知することができる。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website

消費者/労働者保護のオピニオンリーダーElizabeth Warrenが“いわゆるギグ・エコノミー”について語る

Cropped Approved CFF

Elizabeth Warren上院議員が、New America Foundationの今年の年次大会の木曜日(米国時間5/19)のスピーチで、Uber, TaskRabbit, Alfredなどの“いわゆるギグ・エコノミー(gig economy)”を構成している企業に関して、言葉を選びながら述べた。彼女は決してそれらの企業を否定する者ではないが、しかし企業と政治家の両方に対して、労働者指向の変化を促した: “いかなる労働者も、クラック*に落ちて這い上がれない状態になるべきではない”。〔*: クラック, cracks, 登山用語で深い岩の割れ目(救助が難しい)。〕

スピーチの中で上院議員は、産業を進歩させ新しい課題に挑戦していくテクノロジーの役割を称賛したが、まさにその直後に、彼女の本当に言いたかった言葉が続いた:

[真の問題はこうだ: イノベーションは生活の質を高め、新たな富を作り出す。しかし労働者がその富に与れるのは、そのための政策や方針〔政治と企業の〕があるときのみだ。]

“LyftやUberのような企業は、日々彼らの業績に貢献している労働者と同じ労働者たちが、その労働によって稼ぎだした富の、より大きな配分にアクセスしようとする努力に、しばしば抵抗してきた”、とスピーチの書き起こしにある。“彼らのビジネスモデルには、運転者の極端な低賃金に依存している側面がある”。

彼女の言う“低賃金”は、もちろん、他と比較した場合のことだ。Uberのドライバーは平均して1時間に15ドルから20ドルぐらい稼ぐが、ガソリン代や車の修理費などは自分持ちだ。良い商売、である場合もあるが、売上増など業績アップの余地はほとんどない。この問題がほかの方法で解決されるまで、客は彼らにチップを払わざるをえない

さらに彼らには、福利厚生も失業保険もない。だからその“雇用”は、真の雇用からほど遠いものに見えてくる。でもそれは、決して新しい問題ではない。Warrenはこう指摘する:

これらの問題のどれも、ギグ・エコノミーが発明したものではない。むしろ、ギグ・エコノミーは、弱い労働市場において生活を支えることのできない一部の労働者のための、一時しのぎになっている。ギグ労働の柔軟性や独立性、クリエティビティなどの美徳が派手に賞賛され、それは一定の条件下における一部の労働者には真実かもしれないが、しかし多くの労働者にとってギグ・エコノミーは、福利厚生が上位10%の労働者にしか提供されていない世界で何らかの経済的安定を得ようとする、徒労な努力の連鎖の、一歩であるにすぎない。

上院議員はこれに続けて、非正規雇用の仕事を二つとか三つ抱えて生きている大量の労働者を救うための、提案を述べている。いずれも、ギグ・エコノミーがもたらすとされるポジティブな効果やイノベーションを、大きく失うことはない、とされる施策だ。以下は、それらの提案の、ぼく自身(の無償労働!)による要約だ:

まず、正社員に提供されている“安全ネット”を、非正規〜臨時雇用者にも部分的に提供すること。

  • 臨時雇用、時給制労働者、パートタイマーなどすべての労働者が社会保障費を支払うこと。給与天引きをルールとし、雇用者がその事務を行う。
  • すべての労働者が自己を名義人とする高額医療費保険に加入すること。“すべての、とは、文字通りすべての労働者であり、障害者認定に至らない実質的障害者も含む。また、従来的な労働者災害補償の対象外の労働者も含む”。
  • すべての労働者に有給休暇があること。その具体的な条件等は今後の検討課題だが、全員に完全自由休日が与えられ、また家族の問題や医療にあてる休日も、リーズナブルな量、与えられること。
  • 医療や退職等に関わる福利厚生が、できるかぎり、複数の雇用者にまたがってポータブルであること。それに関し、被雇用者自身の事務負担等が極力少ないこと。

次は、労働法の改善と強化だ:

  • 労働の分類に錯誤や抜け穴があって、雇用者の無責任が許される状態がないこと。
  • 労働者の定義が単純明快であること。安全ネットの普遍化は、(区別が不要になるので)単純化を助ける。保険や福利厚生の要素で違いがあるのではなく、労働そのものの違いに焦点が当てられるべきである。
  • “すべての労働者に組織化の権利があること(例外なく)。正社員、パートタイム、一時雇用、ギグ労働者、契約社員、などなど、労働を提供する者全員が集団交渉の権利を持つべきであり、そのことは、労働条件をコントロールする者が誰であっても変わらない。またそれによる報復や差別から、労働者は保護されなければならない”。

スピーチの初めの方で彼女は、産業革命の初期にも、工場に対する規制がなく、労働者は死と隣り合わせの劣悪な条件と環境で働かされた、と述べた。そして、ちょっと気を利かせて、TaskRabbitのワーカーはこれまで、それほど苛酷な条件で働かされたことはないだろう、とも述べた。Warrenは、機は熟している、今こそ規制は、これらの新しい業態に適合するとともに、そこで働く労働者を保護するためにも、大幅に変わらなければならない、と語った。

“この国が100年前に行ったこととまさに同じように、今は労働者と企業との基本的な契約関係を再考すべきときである”、と彼女は語る。“新しい技術によってより大きな富が生まれているとき、その経済を支える労働者がその富を確実に共有できるために、私たちは何を為すべきか?”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

盲導犬のオーナーが犬の体調を手に伝わる振動で知るためのデバイス(まだ名前はない)

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ノースカロライナ州立大学の研究者たちが、盲導犬が苦しんでいたり病気のとき、そのことをユーザに伝えるデバイスを発明した。犬は通常、具合が悪いことやストレスを、呼吸や姿勢、心拍などで伝えるので、視覚障害者などにはそれが分からないことが多い。このデバイスは犬の呼吸と心拍を測り、ユーザが手に持つハンドルを振動させて異変(病気、熱中症など)を知らせる。

プロジェクトを率いたコンピュータ科学の准教授David Robertsはこう語る、“犬は主に動きや姿勢でコミュニケーションするから、視覚障害者などは、異変が起きたときすぐにそれを感知することが難しい。盲導犬については、前からこのことが課題とされてきた。彼/彼女らはおとなしくあるよう、しつけられているから、路上などでも人びとの注意を惹きにくい”。

このシステムは、犬のストレスと不安の両方を伝える。この二つは、盲導犬の引退時期を告げる兆候でもある。このシステムのおだやかな振動が、オーナーに犬の状態の変化を知らせる。親指の位置にある小さなモーターが犬の心拍のペースを伝え、もう一つのモーターが呼吸のペースを伝える。どちらかの振動がとても頻繁になったら、オーナーは立ち止まって状態をチェックできる。

このプロジェクトのペーパーは”Towards the Non-Visual Monitoring of Canine Physiology in Real-Time by Blind Handlers”と題され、マレーシアのジョホールで行われたSecond International Congress on Animal Computer Interactionで発表された。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

各都市に高齢者が自立生活できるための支援スタートアップを育てるインキュベータAging2.0

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一般消費者の中でも、20代から50代前半までの層は、その購買力ゆえに、いちばんだいじにされ話題にもなる年齢層だ。高齢者は、世界の人口の16%以上を占める*にも関わらず、購買力があまりないので、企業や投資家などから無視されがちだ。〔*: 言うまでもなく日本など‘先進国’では比率はもっともっと高い。〕

Aging2.0は、それを変えたいと願っている。9月に同社は、30日で30の都市を訪れ、高齢者のお世話ができるスタートアップを見つける。サンフランシスコを本拠地とするAging2.0は、高齢者にサービスを提供する起業家の支援を、自分のビジネスにしたいと考えている。すでに20近くの都市に支部があり、有望な企業に機関投資家を結びつけて育てるアクセラレータ事業Aging2.0 Academyを展開している。

来月(2015/9)同社が行うツアーは#30in30in30と呼ばれ、Google For Entrepreneursと提携して9月8日にキックオフする。その主なプログラムは、14の国におけるスタートアップのピッチ(売り込み)大会だ(オーストラリア、ベルギー、合衆国、中国、ドイツ、ペルー、イギリス、オランダ、日本(Aging2.0 #30in30in30 | Tokyo, Japan @ ITOKI Tokyo Innovation Center Oct 6 @ 6:00 pm – 9:00 pm)、チェコ、ブラジル、台湾、イスラエル、カナダ)。ファイナリストたちは11月にサンフランシスコで行われるAgeTech Expoでデモ等を行い、Aging2.0 Academyの次のバッチに優先入学できる。

Aging2.0の協同ファウンダStephen Johnstonは、Nokiaで事業開発部門のシニアマネージャだったが、その後、ヘルスケアのイノベーションを助けるコンサルティング企業を創業した。そのときのクライアントだったある富裕な家族の長老が、あまり例のない形の認知症で苦しんでいた。お金持ちでも、正しいケアが得られないこともある。そのことが、JohnstonをAgeing 2.0のローンチに導いた。

“その家族は私的な研究機関まで作って治療法を見つけようとした。そのときわれわれは、彼らの父親を支援できる適切な介護者を見つけるための、サービスやプロダクトがどこにもないことに気づいた。市場は、大きな機会を見逃していた”、とJohnstonは語る。

高齢者のためのサービスという、地味な業態にもかかわらず、同社はやがて、注目を集め始めた。Johnstonによると、合衆国だけでも、そして過去2ヶ月だけでも、5000万ドルあまりのベンチャー資金が、介護・養護関連のスタートアップに投じられている。それらはたとえば、HonorHomeHeroなどだ。

そのほかの、ポテンシャルの大きいイノベーション分野として、ヘルスケア・ウェアラブルや高齢者の安全確認デバイスが挙げられる。いずれも高齢者が家族等といつも接触している状態を作り出す製品だ。また、Stitchのようなソーシャルネットワーキングサイトや、ある種のスマートホームデバイスは、あまり動けない高齢者が一人でも生活できるようにする。

日本のSoftBankが開発した人型ロボットPepperのようなものでさえ、最初から高齢者との交流を想定して設計されている。日本では、高齢者人口が総人口の20%を超えている。

Johnstonは老年学の研究者Katy Fikeと一緒に、高齢者のケアとサービスにおけるイノベーションを支える、グローバルなエコシステムを作りたいと願っている。Aging2.0は現在、Generator VenturesやFormation CapitalなどのVCと協働して投資家のネットワークを作り、有望なスタートアップたちに彼らがプロダクトを世に出せるための資金を提供しようとしている。

“高齢者が病院や介護施設ではなくコミュニティで、自立的で健康で幸福な生活ができること。われわれはいろんなやり方で、この‘賞’というか‘ごほうび’が得られるよう、努力していきたい”、と彼は語る。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ホームレス救援のHandUpがクラウドファンディングで寄付のギフトカード化に成功…Googleの賛助で誰もが一枚試せる

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2年半ほど前にRose Broomeは、サンフランシスコの住民なら誰もが知っている、ある経験をした。彼女は路上にいるホームレスの女性のそばを通り過ぎたが、その一瞬、彼女に何をしてあげたらよいのか、分からなかった。多くの人はそんな考えを次の瞬間には忘れてしまうが、Broomeは忘れなかった。

“みんな、困っているし、途方に暮れている。ホームレスの人たちは、自分が人の目に見えない透明人間、誰からも世話してもらえない人間になった、と感じている”、と彼女は語る。“でも本当は、何かしてあげたいと思っている人がとても多い。何をどうやればよいのか、分からないだけだ”。

Broomeにとってそれは、自分が社会起業家になっていく長い道のりの第一歩だった。彼女はProject Homeless ConnectのようなサンフランシスコのNPOとパートナーして、HandUpという名のクラウドファンディングサイトを立ち上げた。人びとはそこへ行って、ホームレスの人たちを助けるための資金提供ができる。

HandUpは、立ち上げから今日までのほぼ2年で、88万6000ドルを集めた。ほとんどがサンフランシスコでだ。このサイトの上には、おむつのためのお金を求めているママたちもいる*。退役軍人のAdamは、歯の治療費数千ドルを求めている。Gladysというお母さんは、二人の息子を動機不明の自殺で失い、彼女の住居であるバンの修理費を求めている。HandUpのパートナー組織に属するソーシャルワーカーやケースマネージャたちが、そういう人たちのためにお金を配分する。〔*: アメリカの都市のホームレスは、日本よりも多様。〕

でも、これまで寄付者からのリクエストがいちばん多かったのは、毎日のように路上で見かけるホームレスの人たちに、直接渡せるようなギフトカードだった。そこでBroomeらは、上記のProject Homeless Connectで食べ物などと交換してもらえる、額面25ドルのギフトカードの、テスト配布を始めた。

“そんなもの、みんなが欲しがるかしら”、と彼女は自問した。しかし、結果は良好だった。“欲しがらない人もいたけど、それはそれでよい。ほとんどの人が、ギフトカードをもらって喜んでいた”。

今日(米国時間8/27)からそれは一般公開され、ここで登録すると、誰でもカードを1枚もらえる(郵送される)。カードの代金(25ドルの寄付金)は、Googleが負担する。カードはもちろん、町で出会ったホームレスの人に進呈すること。

Broomeによると、ギフトカードの利点は二つある。ひとつは、寄付者の寄付方法が増えること。もうひとつは、ホームレスの人たちがケースワーカーなどと接触するきっかけになることだ。後者の支援活動も、やりやすくなる。

Broomeの将来展望は、市の行政が変化の激しいホームレス人口のための福祉行政を管理するためのツールとして、彼女のサイトを利用することだ。すでに同社は、Marc Benioff(Salesforce)やEric Ries(lean startup運動)、SV Angelなどから85万ドルのシード資金を得ている。

“まだ各都市にホームレス人口の統一的なデータベースがないから、彼らが民間や行政の福祉窓口にやってくるたびに、ソーシャルワーカーたちは何度も何度も彼らにゼロから対応しなければならない。まだ、身近なところにやるべきことがたくさんあるし、もっといろんなものを作らなければならない。最大の目標は個人など民間のお金を配ることだけではなくて、行政が行う福祉もっと効率良く分配できるようにすることだ”、とBroomeは述べている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa