甲虫の幼虫を高濃度タンパク源として収穫する体験で科学を学習するHive Explorer

Livin Farmsのオフィスの中は、体の向きを変えるのも難しい。でも香港の都心ではこれが普通で、スペースは常日変らず貴重だ。そこは、深圳のハードウェアアクセラレーターHAXが支えるこのスタートアップの、ささやかな拠点だ。デスクをいくつか置くと、もう残りのスペースはない。このスタートアップの最新のプロダクトHiveがドアの横にある。それは一見何の特徴もないトレイが、いくつか重なっているだけのものだ。

でも、ぼくがここに来たのはHive Explorerを見るためだ。その小さなトレイは、部屋の中央に置かれている。上部は開(あ)いている。ドアを開けて入ったときから、その小さな明るい色のプラスチック製品が目を引く。その中身が、奇妙なランダムなリズムでぴくぴく動いている。近づいてよく見ると、茶色く見えたのは実は白で、黒いのは生きている。ミールワームたちが小さなベッドの中で互いに上になったり下になったりしながらうごめいている。チームが置いたカラスムギの残りを、がつがつ食べている。

それらの上には、ネオンイエローのトレイの中に完全に成長した甲虫たちと、2ダースほどの蛹(さなぎ)がいる。成虫はたえず動きまわり、互いにぶつかり合い、ときにはライフサイクルの継続のためにそれ以上のこともする。蛹は横たわり、生きていないように見えるが、ときどきピクッと動いて、中に生命があることを思い出させる。

ExplorerでLivin Farmsはその地平を、STEM教育の世界へ広げようとしている。前のプロダクトはスケーラブルな持続可能性にフォーカスしていたが、この新しいKickstarterプロジェクトは若者や子どもに狙いを定めている。そしてバケツ一杯の甲虫には、学ぶことが山ほどある。たとえば、死だ。ファウンダーのKatharina Ungerは近くの瓶をつかみ、蓋をねじった。

瓶には、乾燥したミルワームがいっぱい詰まっている。彼女はその一つをつまみ、自分の口に放り込んだ。期待を込めて、ぼくの手にも渡した。ぼくも彼女の真似をした。カリッとしている。味がないことはないが、はっきりしない。たぶん、ちょっと塩気がある。でも最大の感触は、気味の悪さだ。下を見ると、今ぼくが食べているものの兄弟である小さな幼虫が、数インチ先で餌を食べ続けている。

The Mountain Goatsの歌詞を引用するなら、それは今や未来のタンパク源だ。Livin Farmsは、幼虫の無味無臭の粉末も作っている。そしてその、持続可能な高濃度タンパク質食品の、ある種の概念実証として、意外にもおいしいグラノーラを作っている。この、世界でもっとも人口密度の高い場所で、同社のミッションは家庭にも浸透している。


[彼女は少しおみやげにくれた。おなかをすかせている誰かのために。]

Explorerには、若者たちに未来の持続可能な農業を見せる意味もある。ただし食品メーカーは、昆虫を食べることに伴う消費者の嫌悪感を打破しなければならない。Explorerのユーザーである子どもたちは、過密を防ぐために幼虫の収穫を奨励される。幼虫は、唐揚げではなく乾煎り(からいり)して食べる。ボックスは、比較的臭気の少ない堆肥作り容器になる。虫たちへの給餌は、人間の食べ残しを投げ込むだけだ。小さな虫たちは、それを噛み砕いていく。下のトレイに、彼らの粉状の廃棄物がたまる。

虫たちの暖房のためのヒーターや、湿度を調節するためのファンもある。それらにより、虫たちが仕事をするための最適の環境が作られる。Livin FarmsはシステムのコントロールをSwiftのコードで公開して、プログラミングという要素も加えようとしている。

ExplorerがKickstarterに出たのは今週だ。初期の出資者はそのボックスを、113ドルで入手できる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ホーキングのブラックホールに関する最終論文がオンライン公開された

スティーヴン・ホーキングは今年76歳で死去したが、彼の驚くべき知性の科学界への貢献はまだ終わっていない。著名な物理学者の最終論文がオンラインで誰にでも読めるように公開され、博士の輝かしい経歴を明らかにした物質界の謎を振り返ることができる。

Black Hole Entropy and Soft Hair“[ブラックホールのエントロピーと柔らかい髪]と題されたその論文は、ホーキング博士と共同研究者のSasha Haco、Malcolm Perry、およびAndrew Stromingerの共著による。論文保存公開サイトのArXivから無料でダウンロードが可能で、ホーキングへの心のこもった賛辞も載せられている。

「私たちは最愛の友で共同研究者だったスティーヴン・ホーキングを亡くし深い悲しみにくれています。ブラックホール物理学に対する博士の貢献は、最後の最後まで絶大な刺激を与え続けるでしょう」

この論文は、ホーキングの経歴にとって一種のブックエンドといえるものであり、ブラックホールの量子構造に関する博士の最近の業績が集められている——ホーキングが 過去40年間追究してきたテーマだ。

ホーキングの最終論文が、物理学最大の未解決問題の一つへの挑戦となったことは実にふさわしいことだ。その問題は博士自身が提起したものでもある:ブラックホールに落ちていく物体は本当に消滅するのか、たとえ物理の法則がそれを不可能だとしていても? このパラドックスが悩ましいのは、量子力学の法則と一般相対性理論の法則を戦わせることになるからだ。

論文中ホーキングらは、「柔らかい髪」と呼ばれるものがその矛盾を解決することを示唆している。「髪」とは」とはブラックホールの縁である事象の地平線に存在する光子を意味している。柔らかい髪バージョンの事象においては、ブラックホールの縁にあるその「髪」が、ブラックホールに落下した物体に関する情報を保管する。これは、物質に付随していた情報は宇宙から消滅したのではなく、見かけ上の地平線の彼方に消えたように見えるだけであることを意味している。

「これは道半ばの一歩であり、決して完全な答えではない」と共同研究者のMalcom PerryがGuardianに語った。「これまでより若干パズルの数は減ったが、厄介な問題がいくつか残っていることは間違いない」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ノーベル物理学賞はレーザーを飛躍させた3人に――女性の物理学賞はこの半世紀で初

2018年のノーベル物理学賞はレーザー研究で大きな業績を残した3人の研究者が受賞した。この研究はその後実験から医療までありとあらゆる応用が発見されている。レーザーを利用した「光学ピンセット」の発明に対してアーサー・アシュキンが受賞し、ジェラール・ムルー、ドナ・ストリックランドは強力なパルスレーザーを開発した功績で受賞した。ストリックランドはノーベル物理学賞を受賞する女性研究者としては1963年以来初めてで、物理学賞の歴史上3人目の女性となった。

スウェーデンのカロリンスカ研究所は発表に当たって「今年の物理学賞は光を扱う新しいツールの発明が対象となった」と述べた。

対象となった研究の期間は数十年に及ぶ。最年長の受賞者であるアシュキンはベル研究所の常勤研究者として60年代から70年代にかけて微細レーザービームが顕微鏡的な微粒子や細胞を捕まえて処理できることを発見した。

1987年にアシュキンはこの「光学ピンセット」を使って損傷を与えることなくバクテリアをつかむことができることを示した。これにより医療や生化学におけるさまざまな応用の道が開かれた。

一方、ムルーとストリックランドもレーザー・テクノロジーに飛躍をもたらした。2人のアプローチは1985年の論文で示されたが、レーザーをきわめて短く強力なパルスに圧縮する方法を示すものだった。

ムルーとストリックランドによる画期的レーザー・テクノロジー、CPA(Chirped Pulse Amplification)

この「チャープ・パルス増幅」は持続時間は極めて短いが出力は低いレーザーパルスを時間的に引き伸ばし、高出力のレーザーに増幅した上で逆に圧縮をかけるというテクノロジーだ。上に図示されたような仕組みでフェムト秒クラスでそれまでより格段に強力なレーザーパルスが生成できるようになった。ムルーとストリックランドは現在広範囲で実用化されているチャープ・レーザー・テクノロジーのパイオニアだ。レーザーによる網膜光凝固手術を受けたことがあるなら、知らず知らずのうちにCPAの恩恵に浴しているわけだ。ノーベル賞のプレスリリースは以下のように述べている。

このテクノロジーの応用範囲は極めて広く、まだすべてが研究され尽くしているわけではない。しかしながら、ミクロの世界を処理可能としたこの驚くべき発明は、アルフレッド・ノーベルが望んだであろう精神をもって人類の福祉の増進への偉大な貢献となっている。

ドナ・ストリックランドはノーベル物理学賞の数少ない女性受賞者となった(ノーベル賞全体では多くの女性が受賞している)。ストリックランド以前に受賞したのは1963年のマリア・ゲパート・マイヤーで原子核の構造を明らかにするモデルを作り、「魔法数」に理論的根拠を与えた。それ以前の受賞者は1903年のマリー・キュリーただ一人だ。マリー・キュリーは放射線の発見により物理学賞を受賞した(8年後にはラジウムの発見によりノーベル化学賞を得ており、女性としてニつのノーベル賞を得た唯一の女性であり、異なる分野で受賞した最初の人物となった)。

NPRの取材に答えて、ストリックランドは驚くと同時に女性の受賞者が少なすぎること感じていると述べた。「本当ですか? (優れた女性科学者)はもっとたくさんいます。女性の科学者に栄誉を与えることは必要です…大勢存在しているのですから。なんと表現したらいいかわかりませんが、その少数の女性の一人に選ばれたことは名誉に思います」とストリックランドは述べた。

今日の研究の内容についてさらに詳しく知りたければノーベル財団による要約が発表されている。

〔日本版〕受賞者の氏名のカナ表記はノーベル財団による英語での発表の発音に近いものとした(3:20)。

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マヤの巨大古代都市を発掘したレイダーは考古学を変革するか

考古学は、最新テクノロジーとは縁遠い分野のように思われる。AIやロボットは、実地調査の過酷な現場ではまだ心もとない。しかし、ライダー(Lidar)は画期的な技術であることが実証された。とは言え、数千平方キロメートルにおよぶ古代の数百万都市を、レーザーを使った画像化処理技術でマッピングするという最新の調査で、やはり経験と眼識にとって代わるものはないことを、研究者たちは実感した。

Pecunamライダー・イニシアチブは2年前に発足した。研究者と地元自治体が手を組み、グアテマラで長年研究対象となってきた保護区域での最大級の調査を行うことを目的にしている。この調査では、ペテン県マヤ生物圏保護区の、およそ2144平方キロメートルがスキャンされたが、その周辺の、開発されて人が住んでいる地域や、その他の重要と思われる場所もこれに含まれている。

プロジェクトの成功を示す試験的な画像とデータが、今年の初めに発表されたが、研究者たちはその後、本格的なデータ解析を行い、その広範にわたる結果を要約した論文をScienceに掲載した。

イニシアチブが調査した区域。見てわかるとおり、国の5分の1にも及んでいる。

「これほど広範囲な古代の風景を一度に見ることは、これまで不可能でした。このようなデータセットは存在しなかったのです。2月の段階では解析は、実際の量的な意味において、まだひとつも行われていませんでした」と、共同著者でチューレン大学のFrancisco Estrada-Belliは私に話してくれた。彼は、チューレン大学で、Marcello Canutoを含む他の同僚研究者たちとプロジェクトを進めている。「基本的に私たちは、不規則に広がる巨大な都市圏と、農業に関する広大な地物を発見したと発表しました。それから9カ月におよぶ作業で、そのすべてを数量化し、私たちが得た痕跡の一部を、数値的に確認しました」

「私たちの主張がすべて正しかったと知るのは、嬉しいことです」と彼は言う。「一部には、誇張して伝わっていたようですが」

ライダーのデータは無人運転車両で集められたわけではない。聞いた限りでは、たった1台の車で行われている。ドローンすらなく、普通の飛行機が使われた。非効率なように思われるだろうが、調査区域の広さと地形の事情のために、それ以外の方法はとれなかったのだ。

「ドローンは使い物にならなかったでしょう。あれだけの範囲をドローンでカバーするのは不可能です」とEstrada-Belliは説明する。「私たちは、テキサスから飛んできた双発の飛行機を使いました」

飛行機は、ひとつの「ポリゴン」、つまり、おそらく長さ30キロメートル、幅20キロメートルの区画の上空を何十回と飛行している。機体の下部には「多波長、多チャンネル、多スペクトル、狭パルス幅ライダーシステム、Teledyne Optech Titan製Titan」が装備されている。読んで字の如しの装置で、冷蔵庫ほどもある大型の極めて頑丈な機械だ。森の木々を透かして地面の映像を撮影するには、これだけのシステムが必要になる。

何枚もの重複する画像をつなぎ合わせ、補正して、1枚の驚くほど高精細な地面のデジタル画像が作られた。

「私が、それこそ何百回も歩いていた場所の地物を特定してくれたんです」と彼は笑う。「大きな土手道のようなところで、その上を歩いていたのです。しかし、とてもわかりづらい。大量の下生えやら樹木やらで覆われている。つまりジャングルですよ。あと20年歩いていても、気が付かなかったでしょうね」

しかし、そうした構造物は自動的に発見されるわけではない。3Dモデルを見ただけで「これはピラミッド、これは壁」などと具合に識別できるコンピューター・ラベリング・システムは存在しない。それは、考古学者にのみ可能な作業だ。

「実際には、地表データの手作業から始めます」とEstrada-Belliは言う。「私たちは、自然の地形の地表モデルを作りました。画像の中のピクセルは、基本的に高度情報です。そして、いろいろな方向から光をあてて起伏を強調させる照明をシミュレートするフィルターを何重にもかけて、その画像を半透明にして、いろいろな方法を使ってシャープにしたり強調したりして、つなぎ合わせていきました。長時間コンピューターの画面を見つめるという作業を終えた後、それをデジタイズします」

「最初のステップは、視覚的に地物を特定することです。もちろん、ピラミッドはすぐにわかりますが、微妙な地物もあります。識別できたとしても、それがなんであるか、わからないのです」

ライダーの画像から、たとえば、低い線上構造物が浮かび上がる。それは人工物であるかも知れないし、天然の地形かも知れない。それを見分けるのはとても難しいが、周囲の状況や学者としての知識がそれを補う。

「そして、すべての地物をデジタイズする作業に移りました。全部で6万1000個の構造物があります。すべてを手作業で行わなければなりません」とEstrada-Belli。なぜ9カ月もかかったのかと疑問に思われた方のために、彼はこう説明している。「デジタイズは経験に基づいて行われる作業なので、自動化はできないのです。AIにも期待しました。近い将来、それを利用できるときが来るでしょうが、今は経験を積んだ考古学者の目のほうが、コンピューターよりも確実に地物を見分けることができます」

注釈の密度がマップから見てとれると思う。その地物の多くは、今の時点で現地調査によって確認されたものであることに注目して欲しい。既存の地図を見ながら、人間が実際にその土地に行く。そして、その地物が錯覚であったり、期待の産物であったりしないことを確認する。「すべてはそこに存在していると、私たちは確信を持っています」と彼は言う。

  1. pyramid_lidar

  2. pyramid_uncovered

  3. temple_real

  4. temple_lidar

  5. flightlines

「次のステップは数量化です」と彼は説明を続ける。「長さと面積を測定して、ひとつにまとめます。それを、普通にデータセットの解析を行うときと同じように、解析します。地域ごとの構造物の密度、都市や畑の広がりなどです。さらに、農産物の収穫量を推測する方法も編み出しました」

そこが、画像が単なる点の集まりから学術研究に移行するポイントだ。マヤのこの地域には大きな都市があると広く知られていて、何十年間にもわたり熱心な調査が続けられてきたのだが、Fundación Pacunam(Patrimonio Cultural y Natural Maya:マヤの文化及び自然遺産財団)の研究は、これまで使われてきた従来型の調査方法を進化させるものとなった。

「これは膨大なデータセットです。膨大なマヤの低地の断面図です」ととEstrada-Belliは話す。「今はビッグデータが流行り言葉になっているでしょ? 一度に一箇所を見るだけで、これまで決して見られなかったものが、実際に見えるようになるのです。ライダーがなければ、これだけ膨大なパターンの統合はできなかったでしょう」

「たとえば、私の地域では、47平方キロメートルをマッピングするのに15年かかりました」と彼は少し悔しそうに言った。「それが、ライダーを使えば2週間で308平方キロメートルをマッピングできます。私にはまったく太刀打ちできない精細さでね」

その結果、論文には、非常に多くの新理論や結論が書かれることになった。人口と経済の規模の推測、文化的、工学的な知識、隣国との紛争の時代や内容などだ。

この論文は、単にマヤの文化と技術に関する知識を高めたばかりでなく、考古学という学問そのものを進歩させるものとなった。もちろん、何事もそうだが、こうしたことが繰り返される。Estrada-Belliは、ベリーズとカンボジアで同僚が実行した調査から刺激を受けたと話している。彼らの研究は、広大な領域と膨大なデータセットの新しい処理方法の実例を示すという点で貢献してくれた。

実験と現場の作業を重ねることで、その方法はより確かなものになる。そしてそれが広く受け入れられ、人々が模倣するようになる。彼らはすでに、その方法が有効であることを実証した。この研究は、おそらく、考古学でのライダーの可能性を示す、最良の実例となるだろう。

いまさら聞けないライダー(Lidar)入門

「はっきり言って、これほど強力な技術は見たことがありません。地表にあるものですら、その詳細はまだほとんどわかっていないのです。ライダーは、人工の地物のほとんどを、明瞭に、一貫性をもって、わかりやすく特定してくれます」と、共同著者のStephen Houston(ボストン大学)は電子メールで話してくれた。「AIやパターン認識は、地物の発見の精度を高めてくれるでしょう。ドローンも、こうした技術のコストダウンに役立つと期待しています」

「こうした技術は、発見だけでなく、保護にも役立ちます」と、共同著者でイサカ大学のThomas Garrisonは電子メールで指摘した。「遺跡や人工物を3Dスキャンすれば、詳細な記録が残せます。3Dプリントでレプリカを作ることも可能です」

ライダーの画像処理技術は、略奪の程度を知ることにも役立つと、彼は書いている。文化担当の行政機関も、略奪者より前に、遺品や遺跡の存在を知ることができる。

研究者たちは、すでに次の調査を計画している。最初の実験が成功したことで資金を獲得し、二回目はさらに多くの航空調査を増やす予定だ。おそらく、最初の実作業が終わることには、この数年間に流行ったツールが使えるようになっているだろう。

「今後、飛行機の利用料が安くなるとは思えませんが、機材はもっとパワフルになります」とEstrada-Belliは話す。「もうひとつの方向性としては、プロジェクトをスピードアップできる人工知能の発達があります。少なくとも、調査の必要のない場所を除外して、時間の節約を図ると同時に、もっとも可能性の高い場所に狙いを定めることが可能になるでしょう」

また彼は、そのアイデアをインターネットで公開することにより、アマチュアの市民考古学者たちが一緒に考えてくれるようになることを大いに期待している。「私たちと同じ体験をすることはできないでしょうが、人工知能と同じく、短期間に大量の上質なデータを生み出せることは確実です」と彼は言う。

しかし、彼の同僚たちが指摘するように、この数年間のライダーを使った作業は、下準備に過ぎない。

「これは最初のステップであり、数えきれないほどのアイデアの実験、何十もの博士論文につながるものであることを、強調しなければなりません」とHoustonは書いている。「それでも、地表の下に何があるのかを調べる採掘や、廃墟から明確な年代を推論する作業は必要です」

「社会科学や人文科学など数々の学問分野と同様に、考古学もデジタル技術を採り入れています。レイダーはそのほんの一例に過ぎません」とGarrisonは書いている。「同時に私たちは、デジタル・アーカイブに関する問題(とくに古いファイル形式によるトラブル)を意識する必要があります。そして、テクノロジーは、何世紀にもわたり試され、正しいと証明された情報管理方法に取って代わるのではなく、それを補うものとして使うことが重要です」

彼らの論文は9月28日にScienceに掲載されているので、研究の結果を詳しく知ることができる(考古学者や人類学者なら、いっそう楽しめる内容だ)。Pacunamの今後の活動については、このサイトを見ていただきたい。

[原文]
(翻訳:金井哲夫)

Facebookの利用はヘイトクライムの増加を招く?

ドイツにおける、難民および移民に対する犯罪行為についての調査が行われた。この調査によると、暴力行為の件数は、Facebookの利用率と密接なつながりがあるとのこと。単発的なヘイトスピーチや過激思想の表明が行われる場合と比較して、Facebook上での反難民投稿が、具体的なヘイトクライムにつながっていく確率が高いのだそうだ。

この調査を行ったのは、ウォーリック大学のKarsten MüllerおよびCarlo Schwarzだ。右翼的な反難民的主張がヘイトクライムにつながっていくように見える中、ヘイト発言はどのような手段(テレビ、会話、ソーシャルメディア等)で広がり、そして犯罪行為に結びついていくのかを調査したものだ。

ソーシャルメディア経由でヘイト思想が広がっているのであれば、ソーシャルメディアの利用率が高いところでヘイト思想が広がるはずであるし、そしてヘイトクライムも増えるはずだという仮説をたてて、それを検証していった。

調査にあたって、MüllerとSchwarzはFacebook内のメジャーページへのアクセス数を観察した。ひとつは政治的意図など含まれないヌテラ(Nutella)ページで、もうひとつは、反移民政策を声高に主張し、差別的投稿も放置するAlternative for Germanyのページだ。ヌテラのページの利用動向を見ることで、政治思想に基づかない、一般的利用者の動きを把握しようとしたわけだ。

この両ページにおける数十万件の投稿を地域毎にまとめて分析することで、一般的な利用パターンと、ヘイト的ムーブメントの両方を把握することができるわけだ。

調査の結果、明らかな傾向が見えてきました。すなわち、オンライン上で反難民的な動きが増加しているときにFacebookの利用が増える地域で、ヘイトクライムが有意に増加する傾向が見えてきたのです。そうした地域では、移民に対する放火や暴行などの犯罪行為が増加していました。ソーシャルメディアには、移民反対のムーブメントを伝達する役割があるわけです。

データに基づく計算によれば、ソーシャルメディアが、移民に対する攻撃を13%ほども増加させているとのこと。この数値は十分な検証を経たものではなく、数%のずれが含まれている可能性はある。しかし有意差が見られたというのが重要なポイントなのだ。

もちろん、研究者たちも、今回の結果が誤解を招かないように慎重に見解を表明している。

わたしたちは、ソーシャルメディアこそが諸悪の根源であると言っているわけではありません。ヘイトクライムにはさまざまな原因があります。異文化に対する不寛容さが原因となることもありますし、移民の急増が原因となることもあります。すなわち、ソーシャルメディアがヘイトクライムの「原因」となっているのではなく、人々の怒りや嫌悪感場を拡散させる装置として機能しているのです。ソーシャルメディア上で、反移民的な言説に触れると、範囲民的な行動に出る人が増える傾向にあるようなのです。

もちろん、調査で明らかになっている条件以外のものが影響を与えている可能性も、完全には否定できない。

相関関係と因果関係

このような調査については、疑問を感じる読者の方も多いと思われる。状況を比較するためのデータをすべて扱うことはできないし、何かが原因となっていたり、あるいは相互の直接的関係がない場合でも、相関関係が見えることもある。研究者たちも、読者の方々が感じるであろうような疑問点を考慮に入れた上で、ソーシャルメディアと攻撃性の関連について調査を進めている。

すなわち、今回の調査および調査結果を否定する意見はいくらでもありえるが、しかし研究ではその可能性をていねいに潰していこうとしている。

今回の調査では、ソーシャルメディアの利用頻度が高いところでヘイトクライムが多いのだと結論づけている。しかし、多様な人々が数多く居住しているところでヘイトクライムが多くなると考えられるわけで、そういう場所ではそもそもソーシャルメディアの利用頻度が高く、両者の間に因果関係などないのではないかと考える人も多いだろう。

この疑問に対応するために、調査ではひとつの地域内でのデータ比較も行なっている。複数の地域を比較するのではなく、ひとつの地域の中での比較を行ったのだ。つまり、Facebookの利用頻度が少ない都市と多い都市のそれぞれで、移民に対するヘイト発言が増加したかどうかを比較したわけだ。

また、ソーシャルメディアの利用頻度が高ければヘイト的投稿も多くて当然であるという見解に対応するため、非政治的ページの利用状況との比較を行なって、その変化を把握することとした。前述のヌテラのページについてのデータをもとに、ヘイトクライムとは無関係な利用動向を把握しようとしたわけだ。そして利用状況の変化を1週間単位で数値化したり、またホリデーシーズンの影響具合などについても確認した。そうした利用状況からずれる動きがあったのなら、そこに何かしらの原因が働いていると見ることができるわけだ。

また、偶然の要素も調査に役立てられた。すなわちインターネットやFacebookのサービス停止が、パターンに変化をもたらすことが確認できたのだ。反移民感情が高まり、ヘイトクライムが増加するような傾向が見られる状況でも、インターネットが利用できなくなっている場合には、ヘイトクライムは減少したのだ。また、Facebookのサービスが利用できなくなった際には、Facebook上に投稿されたヘイト投稿の影響(のちのヘイトクライムの増加)が減少することが確認されたのだ。

なお、移民・難民関連以外の人種差別的行動(反ユダヤ人など)は、ヘイト投稿の動きと関連していないようだった。つまり悪感情に基づく行為のすべてに、ソーシャルメディアが関連するというわけでもないようだ。

さらに、ソーシャルメディア以外のメディア媒体(テレビニュースなど)で難民関連のニュースが扱われると、難民受け入れ反対のデモなどが行われることはある。しかしヘイトクライムに結びつく傾向は見られなかったそうだ。

Facebookが、ヘイトクライムを生み出す原因となっているわけではない、と今回の調査を行った研究者は述べている。ヘイトクライムが発生する場所というのは、歴史的に右翼的傾向が強い地域であり、暴力行為の出現率も高い地域であることが多い。しかしFacebookが、難民関連のヘイトスピーチや悪感情を広める場となっていることは、どうやら間違いないようだ。

Facebook上にヘイト投稿が蔓延するような地域では、ヘイト感情に基づく暴力行為が行われる傾向がある。ただし、これに対してFacebookができることというのはなさそうだ。Facebookが生み出したソーシャルな世界で、こうした傾向が生まれるのはむしろ普通のことと言えるのだろう。暴力的言説に無自覚のうちに、繰り返し触れることが悪影響をもたらしているのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

VR技術が老眼を救う

目の前1インチのところに仮想現実世界を描いて見せるVR技術が、現実世界のスマート眼鏡を生み出すことになるかもしれない。開発中のデバイスは「Autofocals」という名前で、これを使えば視力の低下によりもたらされる問題を解決することができるよ。深度センサーおよび視線追跡機能を利用して、自力で焦点調節をできない人が、正しく物を見ることをサポートする。スタンフォードの研究者たちが手がけるもので、現在のところはプロトタイプ段階だ。

研究チームのリーダーであるNitish Padmanabanに、バンクーバーで開催されているSIGGRAPHにて話を聞くことができた。彼自身を含む研究チームが、イベント会場にて最新版の紹介を行なっていたのだ。Padmanaban曰く、このシステムは近くのものが見にくくなる「老眼」による不便さを軽減することができるとのこと。老眼には多くの人が苦しんでおり、若い頃に素晴らしい視力を誇っていた人も悩まされている。

もちろん、現在でも乱れたピントを正すために、二重焦点レンズや累進レンズなどがある。これらは焦点を合わせるために光を屈折させるという方法をとる。純粋に光学的な解決策で、値段も安くて便利に使っている人も多い。しかしこの方法では度数も固定され、視野も限られることになる。度数を調整ができる眼鏡も存在するが、利用するには眼鏡横のダイアルを手動で調節してピントを合わせる必要がある。眼鏡を使っている人の目的(見る対象物)に応じて、自動的に対応できるレンズはできないだろうか、というのが本プロダクトのスタート地点であったそうだ。

そうした目的に向かって進み始めたのがPadmanabanおよびRobert Konrad、そしてGordon Wetzsteinだ。現時点のプロトタイプは武骨で、実用にはほど遠いものだ。しかし仕組み自体のもつ可能性については、注目している人も多いようだ。

PadmanabanはこれまでVR系技術の研究をしてきた。その頃から、眼の調節作用(convergence-accommodation problem)について研究してきている。これは(その当時の研究対象でいえば、VRの世界で)遠くを見てから近くを見るときに、焦点が正しく合わないことについて研究するものだ。焦点をうまくあわせられず、目眩や吐き気などを感じてしまう問題だ。VRの世界では10フィートの視点移動もスムーズに行なえないことがあり、そうした中で、見ているものに自動的に焦点を合わせる技術が研究されてきた。そしてこの技術を、現実の世界で焦点を合わせるのに困難を感じる人のために活用してみようというのが、Padmanabanらのアイデアだ。

写真は以前に開発したプロトタイプ

仕組みとしては、まず眼鏡に備えられた深度センサーが利用者の前面に広がる景色を把握する。たとえば14インチ向こうに新聞があり、テーブルは3フィートあちら側、などといった具合だ。そして視線追跡システムが、今現在どこを見ているのかを認識して、見ているものにピントを合わせるわけだ。

20インチより近いところに焦点を合わせにくい人に使ってもらってみたところ、うまくレンズを調節して、みたいものを見せることができたそうだ。

上の具体的ケースでいえば、利用者がテーブルの上や部屋の奥を見ているような場合には、近距離を見るための仕組みを作動させる必要はない。しかし新聞に眼をやった場合、直ちにレンズを調節(右目、左目を独自に調節するのだろう)し、きちんと焦点を合わせることができるようにするわけだ。

視線を検知して、見たいものまでの距離を判断して調節するのに150ミリ秒ほどかかるのだとのこと。これは「流れるように」というわけではなく、利用者にワンテンポの遅れを感じさせるものだ。しかし老眼の人が見る対象を変更して、そして焦点を合わせようとするには3、4倍の時間がかかるのが一般的だ。開発中のデバイスは確かに利用者の役に立つものとなりそうだ。

「Autofocalsは未だプロトタイプ段階ですが、すでに従来の老眼対策の仕組みに対抗し得るものになっており、ケースによっては優位にたつ能力を発揮しています」と、SIGGRAPHで配布されている短い資料には記されている。「自然な感覚で利用することができ、Autofocalsは広く受け入れられることになるでしょう」。

開発チームは現在、本システムの利用に伴うメリットを検証し、またあり得る悪影響や不具合などについてテストしているところだとのこと。まだ商用化には超えなければならない壁が多く残されているが、しかしPadmanabanによればいくつかの企業がこのシステムに興味をもち、そして製品化を有望視しているのだとのこと。実験段階に一段落ついた時点で、詳細な方向性が明らかになってくるのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

NASAが作った雪の結晶が解けていくシミュレーションは嵐の予報に役立つだけでなくとても美しい

雪については、まだ分かってないことが多い。それはどこから来るのか? どこへ行くのか? どんな味がするのか? これらの疑問に、一応の答はあるけれども、もっと複雑な疑問もある。顕微鏡的な微細なレベルでは、空中の雪はどのように解(溶)けるのか? それが、NASAのあるプロジェクトのテーマで、その結果は実用的であると同時に美しい

雪は、天候というシステムの重要な要素だ(雪氷圏(cryosphere)という言葉をご存知だったかな?)。そして、雪が形成され解けていく過程は、気象学者が、たとえば嵐やその激しさを予報するのに役に立つ。でも雪について知るためには、雪片を手のひらに取って、それを見つめているだけではだめだ。どんな研究でも、それを正しく理解するためには現象の数学的モデルが必要だ。

Jussi Leinonenは、NASAのジェット推進研究所で長年、この問題に取り組んできた

“解けていく雪のモデリングに関心があった。それがわれわれの遠隔感知機器の観察に与える影響を、知りたかったからだ”、と彼は最近のリリースで言っている。天候のパターンを理解し予測できることは、もちろんロケットの打ち上げにも関係がある。

Leinonenがもたらしたものは、雪片の解ける様相や要因の正確なモデルだ。それを雪片のタイプごとに、温度の違いごとに、解け方の状態ごとに作っていく。そのベーシックなバージョンは: 雪片の凹面に水が集まってそこが液体になる。その小さな湖が広がり、やがて氷の結晶全体を覆い、核を包む。そしてそれもやがて解ける。

と書いてしまうと単純だが、Leinonenのモデルはきわめて詳細で、雪片の形の違いや塊りの違いによる解け方の違いも表している。それを3Dで視覚化した映像(下図)は、とても美しいだけでなく、とても正しく見える。

正確なモデルがあれば気象学者は、雪や雨のさまざまなタイプを分析でき、それらが、どんな条件下でどう振る舞う、ということも分かる。またそれらの違いがレーダーのどんな画像になるかも、詳細に分かる。

雪片が解けていく様子を高解像度で映像化した動画は、スクリーンセーバーとしても人気が出そうだ。ただしLeinonenが作ったのは、Geophysical Researchに載った研究論文のみだけど。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

家にミューオン天文台を作ろう――MITから100ドルの観測デバイス発売

MITの物理学者チームはミューオン探知機を開発し100ドルで販売し始めた。テレビのリモコンみたいに見える装置を使って誰でも宇宙から飛来するミューオンでさまざまな観測をすることができる。高エネルギー粒子が宇宙線となって大気に衝突すると、さらに二次宇宙線が放射される。そのひとつがミューオンだ。CosmicWatchというデバイスでこの宇宙線を観測できる。

デバイスの開発者、Spencer Axaniによれば、ミューオンはいわば「霧雨のように地上に降ってくる」のだという。Axaniと同じMITのJanet Conrad、ポーランドのワルシャワにある国立原子力研究センターに勤務するKatarzyna FrankiewiczPaweł Przewłockiのチームがこのミューオン探知機を開発した。MITのサイトにはDIYで探知機を利用するプランがある。プログラムのソースはGithubからダウンロードできる。デバイスはArduino Nanoとシリコンチップの光増幅器を利用して「シンチレーター中を通過する粒子のシンチレーション発光を検出する」のだそうだ。

Axaniはこのデバイスを大気観測用の気球に取り付けたり、学生チームにデバイスを持たせてボストンの地下鉄で観測させたりした。それによると場所によって観測されるミューオンのカウントは劇的に変化するという。チームはこのデバイスをロケットで高空に打ち上げることも計画している。

「海抜ゼロでは2秒に1回程度のカウントだ。しかし巡航高度の航空機内では50回程度に増える。たいへんな増加だ。カウント数から飛行機の高度を逆算することもできる」とAxaniは語った。

ユーザーは探知機をあちこち動かしてカウント数の変化を調べることでこの壁の中の様子を推定することもできる。

Axaniによれば「この探知機で上の階がどうなっているのか地図を作ってみたい。そのうちやってみるつもりだ」とのこと。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

World Viewの新型気球、成層圏で27時間滞空に成功――地表観測、有人飛行などに活用へ

World Viewは成層圏を飛行するStratollite気球を開発しているスタートアップだ。同社は先週末の実験で成層圏上層に気球を27時間滞空させるという新記録を樹立した。成層圏で1昼夜以上にわたって気球を制御下においての飛行に成功したのはこれが最初だ。

これはWorld Viewにとって大きな一歩だ。同社はStratollites気球を一週間以上、最終的には数ヶ月にわたって成層圏に滞空させたい考えだ(TechCrunchでは今年2月、アリゾナのWorld View本社を取材した)。同社は気球に高精細度のカメラなどのセンサーを搭載し、地表の状況を詳細にモニターするなどのミッションを考えている。成層圏気球は特定の軌道に制約されず、また衛星打ち上げにはともなう莫大な費用負担がない。

ただしStratollitesと呼ばれる成層圏気球が機能するためには大きな環境変化に耐える必要がある。特に成層圏上層では昼夜の温度差などの変化はきわめて厳しいものがある。先週の実験の成功でWorld Viewの気球は成層圏の環境変化に耐える可能性があることを示すことができた。また成層圏気球として始めて高度制御にも成功した。

World Viewのビジネスモデルにとって今回の成功は大きな意義がある。同社では最終的に気球による成層圏の有人飛行を計画している。これは気球に吊り下げられたVoyagerカプセルにより宇宙との縁となる大気圏最上層を飛行するというものだ。下のビデオでWorld View取材時のもようをご覧いただきたい。

〔日本版〕World Viewでは高度をコントロールすることで互いに異なる方向に吹くジェット気流を利用して一定の場所の上空に留まるテクノロジーを開発している。また成層圏有人飛行が実現した場合、1人7万5000ドルで観光飛行も計画しているという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

大学と博物館が協力して「脊椎動物全スキャン」プロジェクトを開始

科学的探求の世界でも、フィーチャークリープ(製品などにどんどん機能を付け加えて複雑化すること)の罠にはまることは避けられないようだ、あるいは全ての魚をスキャンするという試みが、全ての脊椎動物に拡大されるこのケースは、クリーチャークリープとでも呼ぶべきだろうか。数十の教育学習機関が、2万匹以上の動物から詳細な3Dスキャンを作成するために、リソースを確保している。

この事業の始まりは、ワシントン大学の生物学者Adam Summersが、海のすべての魚をスキャンする探求を始めた20年前に遡ると言えるだろう。その当時は常軌を逸していると考えられたプロジェクトは、今では本質を付いているとしか言いようがない。科学データをデジタル化して共有する新しい手法はどこにでも芽吹いているし、Summersの先駆的研究は他の専門家たちに同様の試みを促して来た。

フロリダ自然史博物館のDavid Blackburnは、Summersのコレクションを補完するために、彼の専門分野であるカエルを全てスキャンする、という試みを決意した。しかし、他の人びとも同様のやり方で寄与したいと考えていることが明らかになったため、 彼らはきちんと資金を得て全てをスキャンすることを決意した 。ともあれすべての脊椎動物が対象だ — もしあらゆる節足動物や、刺胞動物などまでスキャンしようと思ったら作業量は1桁(あるいは2桁)多いものになるだろう。

カエルをスキャンするBlackburn(左)と共同主任研究員のEd Stanley

結果として立ち上がったプロジェクトはopenVertebrate(略してoVert)という名前だ。国立科学財団(NSF)から250万ドルの補助金を受けている。最新のスキャニング、配信、再現技術を利用して、その情報を最大限、包括的かつアクセス可能なものにしようとしている。蛇の肋骨の微小骨折の証拠を調べたい爬虫両生類学者が居る?ここを見に来れば良い。恐竜のサイズでトカゲの頭蓋骨を3Dプリントしたい10歳児も居る?よし頑張れ。

プロジェクトのゴールは、脊椎動物のほんの一部にすぎない2万体のスキャンを達成することだが、それらは慎重に選ばれ、すべての属の80%がカバーされる。ということで複数のロビン(ツグミ属に所属)が入ることはないが、複数の鳴き鳥(スズメ目に所属。属は目の下位分類)は入ることになる。

チーム、いや、むしろサイエンスアライアンス(この用語は今作ったもの)は、様々なアーカイブに保存された標本をスキャンするために、さまざまなツールを使用している。その中でも中心的に用いられているのは、X線を使用して詳細な内部イメージを生成するCTマシンだ。これはSummersがずっと利用してきたものだが、異なるマシンには異なる適用対象がある。

テキサスA&M大のものは、最大6フィートまでスキャンすることができるほどに大きなものであるのに対し、Summersの使うマイクロCTスキャナーは小さな標本の詳細部分を捉えることができる。たとえば、以下の画像では、人間の親指大のカエルが、アリを1匹食べていることがわかる。

さらに以下の凄い写真を見て欲しい、例えばこの大食らいのブタハナヘビはどうだろう。サンショウウオ(消化中)とカエル(嚥下中)を食べたところだ。

いくつかの選ばれた種では、柔組織のコントラストを見るために、臓器の構造、血管並びに他のシステムを見えるようにする。その結果は以下に示した通りだ。

このカエルのスキャンは、その骨格、筋肉構造、更にはそこに潜む寄生虫さえも明らかにしている。

提供されるのは静止画だけではない。操作、ダウンロード、そして(蛇がどのような種類のカエルを食べたかを把握したい場合などに)分離が可能な詳細な3Dモデルなのだ。

現存の全てのカエルの各科のCTスキャンデータを、オンラインで公開しました。

それらは、デューク大学が提供する3DデータのリポジトリであるMorphoSourceにアップロードされる。アカウント登録の必要があるが、モデルは自由にアクセスできる。ここではカエルの巨大なコレクションを見ることができる (もしこのポストが少々両生類推しのように見たらなら、抗議はBlackburnの方へお願いしたい)。

データは、一度適切にタグ付けされクリーンアップされてしまえば、教師や生徒たちにとって、あるいはホッキョククジラの内側を見たいと思っていたのにチャンスがなかった好奇心のある人にとって、非常に貴重なものとなる。

「これは、博物館にとって、コレクションにアクセスする見学者たちに大きくリーチできるという意味で、ユニークな機会です。私たちは、oVertは脊椎動物学に関連する研究と教育のための変革的なプロジェクトであると信じています」 とBlackburnはワシントン大学に対して語っている

プロジェクトが完了する時期については特に述べられていない。ただ9月1日に正式に始まるということが決まっているだけだ。しかし、NSFの資金援助を受けているからには、誰もが自分の仕事が連邦レベルでサポートされていることを意識しながら働いているはずだ。そしてプロジェクトが進めばさらに多額の資金が出てくることになるだろう。

最後に。より詳しい情報を知りたい人たちのために、パートナーの完全なリストを示しておこう:

フロリダ大学、ドレクセル大学自然科学アカデミー、カリフォルニア科学アカデミー、コーネル大学、自然史博物館、ハーバード大学、ルイジアナ州立大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校のスクリプス海洋学研究所、テキサスA&M大学、カリフォルニア大学バークレー校、カンザス大学、ミシガン大学、テキサス大学オースチン校、ワシントン大学、バージニア海洋科学研究所、そしてイェール大学。

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(翻訳:Sako)

まもなく始まる全米日食ショー。NASAによるライブストリーミングはこちらから!

まもなく、アメリカではほぼ100年ぶりとなる皆既日食を観測することができる。日食のおこるしばらく前から、大勢を巻き込む大騒ぎとなっている。

ただ、残念なことに皆既日食が見られるのは、オレゴン州からサウスカロライナ州まで、幅70マイルほどの区間に限られる。その他の地域では部分日食を観測することになる(もちろんそれもまた感動的なショーになるはずだ)。

もちろん日食なんてまったく見られない地域の人もいるだろう。平日でもあることで、デスクに縛り付けられている人も多いはずだ。しかし、そうした人々にも「手段」がある。

今回の日食、NASAが完全ライブストリーミングを行うのだ。開始時刻は11:45AM ET(日本時間0時45分)で、4:15PM ET(日本時間5時15分)までのライブストリーミングを予定している。本稿の英語版ページには、ライブストリーミングが開始され次第、そのストリーミング配信を埋め込んでお届けする予定だ。

NASAのウェブサイトには次のような記事が掲載されている。

地球物理学者による、太陽−地球の位置関係が起こす不思議についての解説を聞くことができます。ラント社(Lunt Solar Systems)が、Hαフィルタ、カルシウムK線フィルタ、white-lightソーラーフィルタを通した3種類の高解像度で美しい日食画像を提供します。さらにSaluki Stadiumからの観測気球からの映像もストリーミングされることになっており、市民科学者となるためのさまざまな知識を学ぶことができるようになっています。さらに得られた知識について、ソーシャルメディア上で多くのエキスパートと意見を交わすこともできるでしょう。つまり、日食を生で見られない人も残念がる必要はないのです。NASA EDGEを通じて、世界中のあらゆる場所が世界最高の観測スポットとなるのです。

ちなみに、生で日食を体験する人にお伝えしておきたい。よくご存知のこととは思うが、たとえ1秒でも、あるいは日食の最中ではあっても、太陽を直接見つめないようにしてほしい。どうしても直接に見たいという人は、ライブストリーミングの映像を見ることにしてほしい。

ライブストリーミングはUStreamYouTubeおよびFacebookなどで行われる。もちろんTwitterでも見ることができる。

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(翻訳:Maeda, H

ブタ胚の遺伝子編集は、移植臓器の不足を解決?!

ブタの内臓は人間のものと同じ大きさで、機能的にも同様になっている。そこで、ブタの臓器を人間に移植できないかという発想が出てくるわけだが、これにはなかなか難しい問題があった。移植した際に、豚の細胞内に潜むウィルス性疾患が顕在化することがあったからだ。

しかし、どうやら対処する可能性が見えてきたようだ。遺伝子編集(CRISPR-Cas9)を施した豚についての記事がScienceに掲載されている。研究を行った科学者によれば、遺伝子編集の技術を用いて、すべてのブタに認められるブタ内在性レトロウイルス(PERV)を不活性化(inactivation)することに成功したのだそうだ。

これにより動物の組織を人体で利用するという、異種移植への道が開かれることとなる。現在、アメリカには117,000人の移植待機者がいて、ドナー不足から22名の人が毎日亡くなっている。ブタの心臓や肺などが人間に移植可能となれば、多くの命を救うことができるようになる。

PERVを不活性化して異種間コンタミネーション(汚染)を防いで、移植を実現する具体的な方法が示されたのは、これが初めてのこととなる。

研究成果の発表を行ったのは、ハーバードにおけるゲノム研究の第一人者であるGeorge ChurchおよびLuhan Yangが設立したeGenesisだ。このeGenesisによれば、ブタの胚細胞に対して遺伝子編集を行いつつ、62個のレトロウィルスの非活性化を行いながら細胞を生かし続ける技術を開発したのだとのこと。処理後の肺を胎内に移植することで、PERVフリーなブタに成長する。

遺伝子編集の技術は、人間および動物のさまざまな病気を治療できる可能性を持つものだ。食糧問題にも応用可能だし、誰も想像もしていないような可能性も含んでいるに違いない。先日も、米国の科学者がヒトの胚細胞に対する遺伝子編集を行なって心臓疾患治療を行う研究についての発表がなされたところだ。もちろん、遺伝子編集を人間に適用していくには、まだまだ多くの研究および議論が必要なのは言うまでもない。

eGenesisは、遺伝子編集を行ったブタの様子を注意深く観察し、「PERVフリーのブタから、安全で効果的な異種間臓器移植を実現できるように」していく予定なのだとのことだ。

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(翻訳:Maeda, H

日本版SpaceX、初の民間ロケットを打ち上げ

商用ロケット打ち上げを目指す日本のスタートアップが、日曜日に「モモ」ロケットの打ち上げを行った。打ち上げには成功したものの、目標とした高度の5分の1にしか到達することはできなかった。しかし打ち上げを行ったインターステラテクノロジズは、すでに再チャレンジを見据えているようだ。今回の初打ち上げから得られたさまざまなデータを、次回以降に活かしていく予定であるとのこと。

Bloombergが伝える通り、日本において、私企業によるロケット打ち上げは初めてのことだった。打ち上げは日本の北部に位置する北海道の大樹町から行われた。インターステラテクノロジズは、衛星打ち上げのコストを大幅に減らすことを目的としており、今回の打ち上げにもクラウドファンディングを含め、さまざまな方向からの資金調達を行なっていた。目的とするところは、イーロン・マスク(Elon Musk)のSpaceXと重なるわけだ。

モモ・ロケットは高度20kmに達した時点で制御を失った。そこで緊急のエンジン停止措置がとられることとなった。目標高度は、いわゆる「宇宙空間」となる100kmとしていた。

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(翻訳:Maeda, H

DARPAが小型で並列性の高い双方向脳コンピューターインターフェイスの開発に6500万ドルの研究資金を提供

DARPAは6500万ドルの新規ファンドを用いて、人間の脳がコンピュータインタフェースと直接対話することを可能にする神経インプラントの開発を目指している。Neural Engineering System Design( NESD:神経エンジニアリングシステム・デザイン )プログラムの一環として、DARPAは5つの学術研究グループとサンホセに本社を置く1つの小さな企業に資金を提供し、その目標をさらに進める。

DARPAが興味を持っていることの雰囲気を味わってもらうなら、例えばブラウン大学のチームは、大脳皮質の上または中にインプラントとして装着することのできる「ニューログレイン」の広大なネットワークに編み込むことのできるインターフェイスを作成しようとしている。これらのセンサーは、脳がどのようにして音声言語を処理し、解読しているかを理解する目的のための、リアルタイム電気通信を行うことができる。これに関わる脳の働きは極めて複雑で自動的なもので、この側面はいまだに研究者たちを悩ませている。

資金提供を受ける6組織のうち4つは視覚知覚に興味があり、残りの2人は聴覚知覚と発話に関する研究を行っている。MIT Technology Reviewによれば、資金調達ニュースに含まれている唯一の企業であるParadromicsが、約1800万ドルを受け取ると報じている。ブラウン大学のチームと同様に、Paradromicsは資金を利用して、音声を解読し、解釈することができる補助装置を開発する予定だ。

受け取り側の組織は皆、熱烈に目指している高い目標のリストを持っている。DARPAにとって開発が最優先されるテーマは、1度に100万ものニューロンからの信号を記録することのできる「高分解能」神経インプラントを開発することだ。さらに加えて、デバイスは双方向通信を提供することを要求している。信号を受信するだけでなく、信号を送信することも可能にするのだ。そして、もはや2枚の硬貨が重ねられたようなものではないパッケージングが求められている。

「NESDは、高度な神経インタフェースの能力を増強し、100万以上のニューロンを並行して扱うことにより、脳の豊かな双方向コミュニケーションを、その器官の基礎となる生物学、複雑さ、機能の理解を深めるのに役立つスケールで実現することを目指しています」と、NESDの立案プログラムマネージャであるPhillip Alveldaは述べる。

NESD資金受給者の全リスト:

研究チームは、4年間のプログラム期間中、DARPAの夢のインプラントを人間の脳内および脳表面に装着することによる、長期的な安全性の影響について、FDAと調整を行なう予定だ。

しばしば脳コンピュータインターフェース(BCI)と呼ばれるこのテクノロジーが、なんらかの進展をみせた場合、広大な可能性の世界が開かれる。例えば外傷性脳傷害からのリハビリへの利用から、WhatsAppメッセージを考えただけで入力できるようになるまで、BCIは現代技術のあらゆる面に革命を起こす可能性がある。しかし、たとえ資金が流入しても、このような技術を開発する際の課題は無限に残る。日常身に付けることができるほど、ハードウェアはどれほど小さく非侵襲(ひしんしゅう)的なものにできるだろうか?人間の脳への直接的なリンクを作るというプライバシー上の悪夢を考えたとき、どうすればそれらを保護することができるのだろうか?

実用的な脳とコンピュータのインターフェースを作り出すことは、最も難しいハードウェアと最も難しいソフトウェアの問題をなんとか織り交ぜて行くことが必要な挑戦だ。そしてもちろんDARPAは、近未来の双方向性脳インプラントの橋を建設することに関心を持っている唯一の資金潤沢な組織ではないが、その防衛予算と学術的なコネクションを考えれば、間違いなく私たちが賭けるに値する馬だ。

DARPA

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(翻訳:Sako)

SpaceX、ロケットだけでなく補給線の再利用にも成功

SpaceXが新たな偉業をなし遂げた。補給船ドラゴンの再利用に初めて成功したのだ。今回用いたDragonは、前回もISSへの補給物資ならびに科学実験用機材などを運搬するミッションに利用されたものだ。

このDragonが最初に用いられたのは2014年9月のことだった。回収後にメンテナンスを行なって6月3日に再度打ち上げられたのだった。再打ち上げ後36時間ほどでISSとドッキングし、積載物を下ろすなどして、1ヶ月ほどの期間をISSにて過ごした。

Dragonは米国東部標準時で月曜日の午前中にISSを離れ、3度のエンジン燃焼を経て軌道を離脱した。軌道離脱後は数時間で、大気圏に再突入することとなった。再突入後はパラシュートを開いて、予定通り太平洋に着水した。時刻は東部標準時で午前8時14分のことだった。

宇宙船の再利用を狙うSpaceXとして、また新たな段階に達したといって良いのだろう。今回の成功で、宇宙補給線のコストを劇的に下げることが期待される。

なお、日曜日に予定されていたインテルサット35eの打ち上げは延期された。新たな打ち上げ予定は、東部標準時で火曜日の7時37分となっている。

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(翻訳:Maeda, H

AlphaGo対人類の囲碁対局、5人がかりでもAlphaGoの勝ち

世界ランク1位の柯潔が連敗するなど、囲碁ももはや人工知能に対抗できなくなりつつあるのかもしれない。それならばと、5人のトッププレイヤーがチームを組んでAlphaGoに挑む対局が行われた。しかし金曜日に行われたこのデモンストレーション対局でも、AlphaGoが勝利をおさめた。

5人で「相談碁」をプレイした人間側チームのメンバーは、陳耀燁、周睿羊、ビ・イクテイ、時越、および唐韋星だ。AlphaGo側はもちろん1人(1台? 1本?)だ。勝負はAlphaGoの中押し勝ち(人間チームのギブアップ)で決着した。

なお、この日は人間+AlphaGoと、別の人間+AlphaGoのペア碁も行われた。こちらで対局したのは「古力+AI」と「連笑+AI」だ。勝負は連笑側の中押し勝ちとなった。

解説者によると、相談碁を行ったメンバーたちはAlphaGoの打ち方を楽しむために打っているようだとのことだった。AlphaGoの動きを見て、どのような着手が効率的なのかと研究しているような感じであったらしい。AIと人間の新しい関わり方だと注目するむきも多かったようだ。

結果としては人類の惨敗となったわけではあるが、心配する必要はない。AIはあくまでも人間の味方であるのだ。

……今のところは。

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(翻訳:Maeda, H

魚群撮影などにも有益な海中ドローンのPowerRay

卵型ドローンのPowerEggの開発社が、新しいプロダクトの注文受付を開始した。新たなプロダクトとは、趣味で利用する水中ドローンだ。名前をPowerRayという。防水メカで、海の中の魚を見つけたり、追いかけたり、あるいはビデオにおさめることができる。水深30mで4時間まで動作することができる。川でも海でも、あるいはプールでも問題なく動作することができる。

PowerRayが最初に発表されたのは2017年1月のCESにおいてだった。もちろんこの時点では、テックおたくを喜ばせるためのギミックとしてのデビューではあった。しかしマリン系の人たちが興味をもつものかどうかをうかがう意味もあったのだ。

基本パッケージには、ベースステーションと繋ぐ50mのケーブルも同梱されている。水の流れに流されてしまうのを防ぐとともに、電源ケーブルおよびビデオケーブルとしても機能するようになっている。PowerRayでは、すべてのモデルで4Kカメラを搭載している。光学パーツはZEISS製だ。

ミッドレベルのパッケージとなるPowerRay Anglerには、魚を捉えるためのツールも付属している。すなわちPowerseeker Fishfinderがライトを照らして魚の注意をひき、Bait Drop Lineを使って餌をまくこともできるようになっている。

Wizardエディションになると、VRヘッドセットも付属している。これを使えばウェットスーツなしに水の中を散歩する気分を味わうことができる。PowerRayの最も安いモデルは1,715ドルで、もっとも高価なモデルが2,250ドルとなっている。まずはヨーロッパでの販売が開始されることとなっている。

ちなみに、海中で動作するドローンはPowerRayのみというわけではない。スタートアップのOpenROVが扱うTridentというモデルもある。

PowerRayがサンフランシスコ湾にて撮影した海洋写真

PowerVisionのアメリカ支部におけるCEOであるChih-Che Tsaiは、PowerVisionは趣味にとどまることなく、実用にも使えるものだとしている。これまでもソナーを使えば地形や魚群を探知することができたが、船に固定するのではなく、自在に動きまわる装置にセンサーを装着することで、新たな可能性を開くことができるのだとのこと。

PowerRayのCEOから話を聞いたのは、サンフランシスコのAquarium of the Bayで行われたローンチパーティーでのことだ。お披露目の行われた水族館では、鮫の遊泳は禁止となっていた。それはすなわち、鮫などがドローンを食べようとするのを防ぐためのことだ。

それでもパーチやバスは泳いでいて、ドローンが近くまで接近する様子を見ることができた。ドローンは流れの中でもきちんと制御されていた。なお、魚たちはドローンから逃げようとはしていなかった。きっと、魚の世界でもドローンなどの人工物が一般化しているということなのだろう。

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(翻訳:Maeda, H

Elon MuskのNeuralinkはクラウドベースAIを私たちの脳の拡張にするのが狙い


Elon Muskは、TeslaとSpaceXの経営に使っている残りの時間を使って、人間とコンピューターをつなぐ脳インターフェイスの会社Neuralinkに関わってきた。Neuralinkの究極の目標は、彼が関わる3社の中で実は最も野心的なものだろう。 Wait But WhyがNeuralinkの裏にある基本的なアイデアに関する驚くべき記事を掲載しているが、そこでは、より優れた高速のコンピューター=脳接続を実現することで、Muskが達成を狙っているものに関して、深く踏み込みが行われている。

Muskは、彼が実際にNeuralinkでCEOの役割を果たすことを認めた、すなわち彼は3つの異なる会社のCEOの座につくことを意味する。しかしNeuralinkの目標は、間違いなく3つのベンチャー企業の中でも最も空想科学小説(SF)的なものに響く。たとえ人類を銀河間植民種(intergalactic colonial species)にするというMuskのSpaceXの目標を考慮したとしてもだ。

基本的に、Muskが実現したいのは、人間が言語を発明したときと同じくらいのインパクトを持つ、コミュニケーションの飛躍を実現したいということのようだ。言語は考えを社会的に拡散する際に信じられないほど高効率な手段だったことが証明されている、しかしNeuralinkが狙うのはその効率を遥かに高めようとするものだ。人から人へ。Muskのビジョンは、人びとの間に直接的な「非圧縮」の思考のコミュニケーションを可能にすることだ。すなわち通常行われているような、自分の元々の思考を言語へと変換することで効率的に「圧縮」し、そして送られたパッケージを相手が言語的に「展開」するという、常に情報が欠落するプロセスを使うことを無くしたいのだ。

Neuralinkの技術は、人間がAIの急速な進歩と歩調を合わせていくことを助けることもできるだろう、そしてそれは基本的にはAIと人間の意識を統合することで実現される。Neuralinkの技術は、自意識やその他の高度な脳内能力と同じレベルで、AIを人間の追加能力の1つとして使うことを可能にする。そのような高帯域幅を脳に直接接続することが可能になると、私たちの核になる自意識と区別がつかないような方法で、私たちの自意識とクラウドベースAIを統合することが可能になる。それは言語による発言や表現を、それを生み出している脳の部分と分離することが難しいことに似ている、とMuskは語る。

この技術を、いかなる手段にせよ広範に商業的に適用できるまでの道のりはまだとても遠い。おそらくSpaceXが火星に到達するよりも遠いだろう。Muskは、同社が生み出す技術が障害のない人に利用されるまでには、おそらく少なくとも「8年から10年」はかかるだろうと述べている。Neuralinkは、その技術の治療的用途の開発をまず目指している、こうすれば人間を相手にした臨床試験に対する、規制当局からの許可が得やすい可能性がある。

Muskが3つ目のCEOを引き受けたことは、彼の会社への投資家たちの眉をひそめさせるだろうが、Neulalinkのミッションは彼の他の2社の目的とも見合うものだ、3社全てが、現在Muskが生存への脅威と呼ぶ問題を解決することに焦点を当てている。NeuralinkによるAIへの対応はその1つなのだ。

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(翻訳:Sako)

SpaceX、再利用ロケットの打ち上げもいよいよ間近

SpaceXによるFalcon 9ロケットの次の打ち上げが、3月30日木曜日にせまっている。民間の人工衛星サービス企業のSES-10を打ち上げることになっている。またFalcon 9の話かと思う人もいるかもしれない。しかし今回はこれまでにない打ち上げとなる。すなわち打ち上げに、史上初めて再利用ロケットが用いられることになっているのだ。今回用いられるFalcon 9は、昨年の4月8日に打ち上げられたもので、初めて海上のドローン船により回収したものだ。

ロケットの再利用は、SpaceXにとって大きな一歩となる。創業時のビジネスモデルの正当性を証明することになるし、また民間宇宙サービスビジネスの可能性を大きく広げるものとなるからだ。もともとSpaceXはロケットの再利用を訴えて業界に参入してきた。それにより実現するコスト低減をビジネスチャンスとしているのだ。Elon Muskは昨年、火星探査のプランを発表する中で商用宇宙飛行の利益率向上をうたっていた。ロケットの再利用が実現すれば、Elon Muskの計画がいっそうの現実味を帯びることともなるわけだ。

ただし、何をもって「初めて」とするのかについては議論もある。たとえばJeff BezosのBlue Originはすでにロケットの再利用を実現している。しかしBlue Originのロケット回収はか低い高度でかつテスト目的で行われたものだった。SpaceXは軌道上に実用人工衛星を打ち出すもので、すでに有料サービス段階に達している。なお、NASA自身もシャトルの打ち上げに際してロケットを再利用を行なってはいた。しかし当時は固体燃料によるもので、液体燃料を利用する今回とはまた違った意味となる。さらにNASAは再利用をコスト的に見合ったものとすることができなかったことも記憶しておくべきだろう。

SpaceXは実績のあるロケットを再利用することで、顧客の信頼感も獲得したい考えだ。顧客が気に入ったロケットを何度も利用することで、顧客側には割引料金の提供などもできるようになると考えている。しかし、こうした目論見はいまのところ画餅に過ぎない。まずは「最初の」再利用において、打ち上げおよび回収を成功させることが大切なこととなる。

現段階での話ではあるが、打ち上げの予定は3月30日のEDT午後6時27分(PTD午後3:27)だ。TechCrunchではライブ中継も予定しているので、歴史的瞬間を目にしたいと考えている人は、ぜひアクセスして欲しい。

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(翻訳:Maeda, H

IBMの研究者たちが1個の原子に情報を長時間保存することに成功

コンピュータの基本的なコンポーネントは、おなじみのニュートン物理学の世界の境界を乗り越えるほどに小さくなってきている。そして1平方インチに1兆ビットを超える情報を収めるようなハードドライブ以上に、その密度と精密さを表すことのできる場所はないだろう。しかしこの度IBMが、単一の原子にデータを読み書きすることによって、その壁を乗り越えた。

この進歩は、現段階では実用的というよりも象徴的意味合いが大きい。しかし現在の最先端技術によるものよりも遥かに小さな、実際に動作する原子データストレージの例は、もはやサイエンス・フィクションの世界だ。

原子は、いまさら聞いて驚くことはないと思うが、私たちが確実に操作することができて、安定して存在することを期待できる、物質を構成する最小の単位だ。光子との絡み合いに関する興味深い実験もあるが、それは安定せず扱い難い。目を離した隙に光の速度で飛び去ってしまわないものに期待したほうが良いだろう。なお 以前発表された原子ストレージ技術は、原子の中にデータを格納していた訳ではなく、読み取り可能な形に原子を配置する技術だった(もちろん今でも凄い技術であることには変わりない)。

このことは個別の原子を、0または1として扱うことが次の主要な段階であることを意味する。これによって、遥かに大きな容量増加が達成され、技術者と物理学者への新たな挑戦課題が提示されることになる。本日(米国時間3月8日) Nature に発表されたIBMの実験は、真の原子ストレージを理論世界から現実世界へと連れ出した。

動作原理は以下のようなものだ:1つのホルミウム原子(多くの不対電子を持つ大きな原子だ)が酸化マグネシウムの台の上に置かれている。この構成では、原子は磁気双安定性と呼ばれる性質を持つ。異なるスピンを持つ2つの安定した磁気状態を持つ(と、とりあえずここでは理解して欲しい)。

この研究では走査型トンネル顕微鏡(scanning tunneling microscope=STM。これもまたIBMによって1980年代に発明された)を用いて、150ミリボルトの電圧と10マイクロアンベアの電流を原子に適用する。この大きな電子の流入によって、ホロニウムのスピン状態が切り替わる。2つの状態は異なる導電率プロファイルを有するため、STMチップは、原子がどちらの状態であるのかを、低い電圧(約75ミリボルト)をかけてその抵抗値を測定することで判定することができる。

原子の磁気状態が確かに変化していて、それが単なる干渉またはSTMの電気嵐からの影響ではないことを確認するために、研究者たちはその側に鉄原子を配置した。近隣の磁気の影響を受けるこの原子は、ホルミウム原子とは独立の状態にあることが検出された。このことは、この実験が単一の原子内に、間接的に検出することができる、永続的に保存された磁気状態を生み出したことを証明している。

ということで、私たちは0または1に相当するものを保存するために用いることのできる原子を手にしたのだ。実験者たちはそれを2つ作成し、それぞれを独立に動作させて4つのバイナリの組み合わせ状態(00,01,10,11)を生み出した。記事の要約はこのようにまとめられている:

独立した読み書きを実証するために、われわれは原子サイズの2つのホルミウムビットを作成し、そこに4つの可能な状態を書き込み、磁気抵抗として、また電子スピン共鳴を使って遠隔から、その状態を読み出した。電気読み出しと書き込みと合わせられた、高い磁気的安定性は、単一原子による磁気メモリが実際に可能であることを示している。

私はアルマデンにあるIBMの研究施設の、ナノサイエンス研究者であるChris Lutzと、論文の著者の1人に、どういうきっかけで原子が最終的にスピンを失うのかを尋ねた。

「知る限り、私たちの実験時間よりも長持ちしています。少なくとも数時間ですね」と彼は電子メールで返信した。「原子が加熱されるに従って、私たちはそれらが勝手に反転を始めると考えています。熱エネルギーが、状態間のエネルギー障壁の多くの部分を占めるためです。実用的なメモリーへ利用するためには、複数の原子を結合させたり、個々の原子のさらに革新的な利用法を探求して、この障壁を高める必要があります」。

彼らがアイデアの実用化のために単一原子ではなく、分子を考えていることが、幾分あなたの熱狂を醒めさせてしまうとしても、心配は無用だ。2016年の実験では、わずか直径5ナノメートルの磁性粒子を使い1平方インチ換算で1テラ(兆)ビットを超える情報が保持された。

ホルミウム原子の直径は約200ピコメートルだ、その磁性粒子上に端から端に25個並べることができる。まあもし原子に「端」があると言えるなら、だが。もちろん、これはそのようなものよりも遥かに複雑だ。しかし何でも格納できる極小のものがある、という事実は変わらない。これら2つを貼り合わせても事態は大きく変わらない。

「私たちは、他の要素の原子、原子のクラスター、そして小さな分子を磁気ビットの候補として探求する予定です」とLutzは書いている。

こうしたものの1つが、あなたのラップトップに搭載されるにはまだまだ長い時間がかかるだろう。この装置はまだ実験室仕様であり、超低温と超精密機器を必要とする。しかし、そうだとしても興奮しないわけにはいかないだろう。しかし、この底の下に更に掘り下げる余地は残されているのだろうか?

(日本版:ホルミウム原子を使った情報保持の先駆的実験は、東大の宮町俊生によっても、2013年に報告されている。「原子1個に情報は記録できるか? ―従来の原子磁石の約10億倍の情報保持時間を観測―」 【PDF】なおこの時の保持時間は10分ほどであり、報告は Nature オンライン版にも掲載された)

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(翻訳:Sako)