インド国税庁がユニコーン企業「Infra.Market」を捜査、偽装購入や使途不明金などを摘発

インド国税庁は、プネーとターネー拠点のユニコーンスタートアップInfra.Market(インフラ・ドット・マーケット)による偽装購入の事実を示す大量の証拠を発見、差し押さえ、2940万ドル(約35億円)以上の追加所得を暴いたことを、異例ともいえるスタートアップに対する捜査の結果公表した。

Infra.Marketは、Tiger Global(タイガー・グローバル)、Nexus Venture Partners(ネクサス・ベンチャー・パートナーズ)、およびAccel(アクセル)が出資している時価総額25億ドル(約2981億円)スタートアップで、建設会社や不動産会社の プロジェクトのための材料調達や物流を支援している。同社は巨額の使途不明金と所得分散によって、総額40億ルピー(約62兆円)以上の所得隠しを行っていたと、米国時間3月20日の報道資料で当局が語った。

税務当局に指摘を受けた同社幹部らは、宣誓下で一連の犯行手口を認め、複数の税申告年度にわたって22億4000万ルピー(約35兆円)以上の追加所得があったことを明らかにし、その結果追徴税の支払いを求められていると当局が発表した。

Infra.Marketの共同創業者でCEOのSouvik Sengupta(ソウビク・セングプタ)氏は、コメントを求めたTechCrunchのテキストメッセージに返信していない。

同スタートアップは、新たな調達ラウンドを評価額40億ドル(約4766億円)で完了予定であることを、インドの報道機関、Entrackr(エントラッカー)が2021年11月に報じた

現在も捜査を続けている税務当局は、ムンバイとターネー拠点の複数のダミー会社によるインド独自の送金システムであるハワラネットワークも見つけており、これらの企業が書類上にのみ存在し、所得分散の目的で設立されていることを突き止めた。

予備的分析によると、これらのダミー会社による所得隠しの総額は150億ルピー(約235億円)を超えるという。これまでに100万ルピー(約157万円)の使途不明金と220万ルピー(約344万円)相当の宝石類が差し押さえられている、と当局は語った。

画像クレジット:DIBYANGSHU SARKAR / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

英歳入関税庁が2.2億円相当の脱税案件の捜査にともないNFTを押収、英法執行機関として初

Dinendra Haria/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

英国の歳入関税庁(HMRC)が、詐欺事件に関わる調査の一環としてNFT3つを押収したことを明らかにしました。当局によると、このNFTに関して140万ポンド(約2.2億円)以上の付加価値税(VAT)詐欺の疑いがあり、調査の一環としてのNFTおよび5000ポンド(約78万円)相当の暗号資産を押収したとのこと。英国の法執行機関がNFTを押収するのは今回が初めてとされます。

容疑者は偽造身分証明書、プリペイド電話、VPNなどを使い、250以上の偽装企業を通じた金品の売買に応じて徴収されるVATの額をごまかしていたとされ、脱税の疑いで逮捕されました。

調査はまだ進行中ですが、HMRCの経済犯罪担当副局長ニック・シャープ氏は、このNFTの「押収事例が暗号資産を脱税に利用すれば金を隠しおおせると思っている人たちへの警告になる」と述べ「われわれは常に新しい技術に対応し、犯罪者が資産を隠そうとする方法を研究把握している」としています。

NFTとは、デジタルアートワークやビデオゲームのキャラクターなどバーチャルなアイテムの所有権を追跡するために、ブロックチェーン技術を応用した非代替性トークンのことで、これが添付されたデジタルアートや、何らかのデータが本物かどうかを証明する鑑定書のようなものといえばわかりやすいかもしれません。

巨額の案件がいくつかニュースになり、その結果2021年には総額400億ドルを超えるNFTが販売、取り引きされたと伝えられています。しかしNFTには法的な規制や保護が整備されていない状況であり、たとえば自己売買(いわゆるウォッシュトレード)を繰り返すことによる価格つり上げから、まがい物、盗作品などを使った詐欺案件も急増しています。

NFT売買大手の米OpenSeaは、今回のNFTの押収について「犯罪者が暗号のしくみを隠れ蓑にできないことを示している」とし「執行機関がその取り引きを追跡して違法行為に使われたNFTと暗号資産を押収し犯罪者に利益を得させないようにできる」とコメントしています。

(Source:BBC NewsCNBCEngadget日本版より転載)

約99億円費やした米国税庁、結局顔認証での本人確認を取り止め

IRS(米内国歳入庁)は米国時間2月7日、同庁のオンラインポータルにログインしようとする米国の納税者から生体情報を収集するサードパーティ顔認証システムの使用を取り止める計画を発表した。

IRSは、ID.meという請負業者が構築したこの技術を、数週間以内に放棄するとしている。その代わりに、顔画像やビデオを収集しない「追加認証プロセス」に切り替えるとのこと。ID.meとの2年間の契約は8600万ドル(約99億円)に相当する。

IRSのChuck Rettig(チャック・レティグ)長官は、次のように述べている。「IRSは納税者のプライバシーとセキュリティを重要視しており、提起された懸念を理解しています。誰もが自分の個人情報がどのように保護されているかについて安心できるべきであり、当庁は顔認証を伴わない短期的なオプションを早急に追求しています」。

米国の徴税機関であるIRSのオンライン認証システムの更新は、2022年夏に全面的なロールアウトが予定されているが、米国民の機密性の高いバイオメトリックデータを収集することになると批判を受けていた。

確定申告者の多くはIRS.gov上でID.meシステムにすでに遭遇しており、オンラインログインのために顔映像の提出を求められていた。ID.meシステムでのログインに失敗すると、納税申告者は長いキューに入れられ、別のサードパーティ企業とのビデオ通話で本人確認を受けることになる。

レティグ氏に宛てた書簡の中で、Ted Lieu(テッド・リュウ)下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)、Anna Eshoo(アンナ・エシュー)下院議員(民主党、カリフォルニア州選出)、Pramila Jayapal(プラミラ・ジャヤパル)下院議員(民主党、ワシントン州選出)、イベット・クラーク下院議員(民主党、ニューヨーク州選出)は、民間企業が何百万人もの米国民の顔データを収集することは、サイバーセキュリティ上のリスクがあると懸念を表明した。また、顔認識システムには、非白人の顔の誤検出率が高いというような人種的偏見が内在していることを示す研究結果も指摘した。

議員たちは「明確にしておきたいのですが、米国民は、IRSのウェブサイトにアクセスするための代替手段として、自分の生体情報を民間業者に提供するという選択肢はありません。強制的に提供しなければならないのです。」と書いている。

IRSが顔認証技術の導入を選択したことで、IRSはプライバシー保護派と対立しただけでなく、認証システムが不測の事態を引き起こすかどうかを評価する「厳正な審査」を受けない限り、顔認証技術を導入しないと公言している連邦政府の一般調達局(GSA)の見解にも反することになった。GSAの既存の本人確認方法は、生体情報を必要とせず、代わりに政府の記録や信用報告書のスキャンを利用している。

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画像クレジット:www.SeniorLiving.Org

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

インド、暗号資産とNFTの所得に対する30%の課税案を発表

インドは、この世界第2位のインターネット市場において、暗号資産を法定通貨として認める方向で動いており、2023年までにデジタル通貨を立ち上げ、暗号通資産とNFTに課税する計画を現地時間2月1日に発表した。

Nirmala Sitharaman(ニルマラ・シタラマン)財務相は、仮想資産の譲渡による所得には30%の課税を行うと2月1日に発表した。このような暗号取引の詳細を把握するために、彼女はまた、仮想資産の購入に関連する支払いについて1%の源泉徴収控除を提案した。

「このような所得を計算する際には、取得原価を除き、支出や手当に関する控除は認められないものとします。さらに、デジタル資産の譲渡による損失は、他の所得と相殺することはできません。仮想デジタル資産の贈与も、受取人の手元で課税されることが提案されています」とニューデリーで最も注目すべきテクノロジーとビジネスに焦点を当てた連邦予算の1つで彼女は述べている。

この提案は、インドにおける規制の不確実性にもかかわらず暗号資産とNFTの購入が急速に進出しているタイミングで行われた。

Binance(バイナンス)傘下のWazirX(ワジールX)は2021年12月、同社のプラットフォームにおける年間取引量が2021年に430億ドル(約4兆9400億円)を超え、2020年から「1735%」の成長率になったと発表した。

暗号トークンの人気の高まりは、この分野で革新を目指すスタートアップ企業群の出現にもつながっている。しかし、彼らの積極的なマーケティングキャンペーンには多くの人々が眉をひそめている

関連記事:インドが高利益を約束する無責任な暗号資産の広告禁止を検討

Andreessen Horowitz(アンドレセン・ホロウィッツ)は2021年、暗号資産取引所CoinSwitch Kuber(コインスイッチ・クーバー)を支援することで、インドで初めての投資を実施した。

「これらの取引の規模と頻度から、特定の税制を規定することが不可欠になっています」と彼女は述べている。

インドの中央銀行も、次の会計年度にデジタル通貨を導入する予定だという。同国の中央銀行は、国内で数カ月間、多くの対照試験を通じてCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)をテストし、銀行・金融システムへの影響を検証してきた。

「中央銀行デジタル通貨の導入は、デジタル経済に大きな弾みをつけるでしょう。また、デジタル通貨は、より効率的で安価な通貨管理システムにつながるでしょう」と述べた。ニューデリーはプレスノートの中で、その中央銀行発行デジタル通貨は紙幣として扱われると述べている。

関連記事:インドが中央銀行によるデジタル通貨の段階的導入を検討中

インドの隣国である中国は2022年1月初め、中国人民銀行がCBDCの試験の一環として、1億6000万ドル(約183億4300万円)以上に相当するデジタル人民元の取引を300万件以上処理したと発表した(中国は、記憶に新しいところでは、2021年、国内のすべての個人の暗号関連取引を違法とするレッテルを貼ったこともある)。

関連記事:中国が暗号資産の取引は「違法」として全面禁止、海外取引所やマイニング企業も規制へ

インドの今日の提案は、ニューデリーが暗号資産にどう取り組むつもりなのか、起業家、ベンチャーキャピタル、そして一般市民の間にやや混乱を生じさせた。

暗号関連の取引に税制を導入することで、ニューデリーはこのような仮想資産を法定通貨として認めるか、あるいは、ある投資家が声に出して疑問に思ったように「すべての行動から自分たちの肉を奪う」かのどちらかだと思われる。

ツイートで、野党議会党のスポークスパーソンRandeep Singh Surjewala(ランディープ・シン・スルジェワラ)氏は「財務大臣、国民に教えてください。暗号資産に課税することになるため、暗号資産法案を提出しなくても、暗号資産は今や合法なのでしょうか?その規制当局についてはどうでしょうか?暗号取引所の規制はどうなっているのでしょうか?投資家保護はどうなっているのでしょうか?」と訪ねた。

更新:ニューデリーは、現在「規制のための情報収集を行っている」と明らかにした

「しかし、今回の最大の進展は、暗号の課税に関する明確化でした。これにより、求められてきたように、インドの暗号エコシステムがより認知されるようになります。また、この開発によって銀行が曖昧さを取り除き、暗号業界に金融サービスを提供できるようになることを期待しています。「総じて、これは我々にとって良いニュースです。細かい部分を理解するためには、予算の詳細を見ていく必要があります」。とWazirX(ワジールX)のCEOであるNischal Shetty(ニシャル・シェッティ)氏は声明で述べている。

「税制が明確になったことは歓迎すべきことです。全体として、政府がイノベーションの方向に進むという進歩的なスタンスをとっていることがわかり、大きな安堵感を覚えます。税制を導入することで、政府はこの業界を大いに正当化することになります。これまで不安から傍観していた大多数の人たち、特に法人が暗号に参加できるようになります」。

ニューデリーはまた、国の農村部におけるインターネットとデジタル銀行の普及範囲を拡大することを約束した。

その他、注目すべき発表がいくつかある。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

英アマゾン、「英国で発行されたVisaカードの取り扱いを停止する」との脅迫を撤回

Amazon(アマゾン)は、決済手数料をめぐる論争で、英国でのVisa(ビザ)カード決済のサポートを終了すると公に脅していたが、撤回したようだ。

同社は現地時間1月17日、Amazon.co.ukのユーザーに電子メールを送り、1月19日に予定されていた「見込まれる変更」が、同日から実施されないことを知らせた。

ただ、AmazonとVisaが手数料について持続的な条件に達したかどうかはまだ明らかではない。

「Amazon.co.ukでのVisaクレジットカードの使用に関して予定されていた変更は、1月19日には行われなくなりました。当社は、顧客がAmazon.co.ukでVisaクレジットカードを使い続けられるような潜在的な解決策について、Visaと緊密に連携を取っています」と、Amazonは英国のユーザーに宛てた電子メールに書いている。

「Visaクレジットカードに関連する何らかの変更を行う場合は事前にお知らせします」と続け「それまでは、Visaクレジットカード、デビットカード、Mastercard、American Express、Eurocardを現在同様に使い続けることができます」と付け加えた。

AmazonとVisaにコメントを求めたところ、この動きを認めたが、それ以上の詳細については説明しなかった。

Amazonは、今のところ何も変わらないというユーザーへの簡潔な声明以上のコメントを却下した。

Visaの広報担当者も「潜在的な解決策」が実際に何を意味するのかについては詳しく説明しなかった。「Amazonの顧客は、我々が合意に達するために緊密に協力している間、1月19日以降もAmazon.co.ukでVisaカードを使用できます」と記した声明の中で、手数料に関する交渉が続いていることを暗に示している。

2021年末にAmazonは英国のユーザーへの電子メールで、Visaのクレジットカード決済に課す高い決済手数料を理由にVisa決済のサポートを終了し、Amazon.co.ukでの買い物の支払いに代替手段を用意するよう警告していた。

関連記事:英Amazonで1月19日から英国発行Visaクレジットカードが使えなくなる

その際の大量の電子メール送信というやり方は、Amazonが自社の市場パワーを利用してVisaからより良い条件を引き出そうとしたように思われた。

それが功を奏してVisaにクレジットカード手数料を引き下げさせることができたのか、それともAmazonが英国の買い物客に大きな混乱をもたらす瀬戸際から一歩下がることにしたのかは不明だ。

後者であれば、Amazonはすでに、Visaベースの支払い方法に依存する英国のユーザーに、近い将来、同社のサイトで買い物を続けられるかどうか、数カ月にわたって不安を与えていたことになる。

Visaは2021年11月に、Amazonが「将来的に消費者の選択肢を制限すると脅している」ことを残念に思うと述べ「消費者の選択肢が制限されて得をする人はいない」とも主張していた。

Visaは当時、Visaカード保有者が英国で発行されたVisaクレジットカードを引き続きAmazonのウェブサイトで使用できるよう、解決に向けてAmazonとともに取り組んでいると述べていた。

それから数カ月経ったが、Amazonが英国発行のVisaカードの利用を停止する期限が迫っている中でも交渉は続いているようだ。

Amazon.co.ukでのVisa決済の手数料上昇は、英国のEU離脱と関連している。ブレグジットにより、英国と欧州経済領域 / EU間の取引で課される手数料の上限が撤廃されたからだ。

しかし、この問題はおそらく、Amazonが英国のビジネスをどのように構築しているかという点にも関わっている。同社は、英国の顧客にEU拠点の法人を通じて請求し、英国のウェブサイトを通じて計上した収益をルクセンブルグの欧州本社に移しているためだ。

City AMの2021年8月のレポートによると、Amazonはこの企業構造によって、かなり高額な英国の税金の支払いを免れることができたという。しかし、同じ「利益移転」構造によって、AmazonはVisa「税金」をかなり多く負担しているようだ(というか、負担してきた……)。

画像クレジット:David Ryder/Stringer / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

スペインがスタートアップ法成立へ前進、税制面で優遇や手続きを簡素化

スペイン政府は、スタートアップ法草案の詳細に同意し、議会へ提出した。議会は法案採択の議決に先立ち審議を行う。内容を修正する可能性もある。

閣僚理事会が現地時間12月10日、草案採択を発表した。この草案には、スペインでスタートアップを設立したり、スタートアップに投資したりする際の官僚主義的な障害を取り除くための重要な措置が含まれているという。

また、起業家やデジタル人材にとってスペインをより魅力的な場にするための、ストックオプションやビザの取得に関する改革も含まれている。

スペイン政府はリリースで、今回のパッケージには「ストックオプションのリターン関してEUで最も有利な扱い」が含まれていると述べた。

閣僚らは、ストックオプションの所得に対する非課税枠を、年間1万2000ユーロ(約153万円)から5万ユーロ(約640万円)に引き上げることで合意した。

また、この草案は、株の売却と会社の上場のいずれかの日まで課税を繰り延べると規定している。

その他の注目すべき税制措置としては、法人税および非居住者所得税の4年間の引き下げ(25%から15%へ)がある。これは、大きな障壁への取り組みだ。スタートアップは普通、創業期に売り上げの計上に力を注がないからだ(現行の規則では、一般的な企業と同じ税率が適用される)。

閣僚会議が採択した草案によると、新規 または最近設立された企業への投資に対する控除額の上限も年間6万ユーロ(約768万円)から10万ユーロ(約1280万円)へ引き上げられた。控除率も30%から50%になり「最近設立された」とみなす期間も延長される。

また、この改革は、スペインの創業者が抱えるもう1つの不満、スペインでの起業にかかるコストと官僚的手続きにも対処することになりそうだ。それらのせいで、スペイン国内にオフィスを構えて製品を開発したとしても、ヨーロッパの他の場所で事業を立ち上げる創業者もいる。

今回の法案では、会社設立の手続きが「合理化」され、公証人や登記の費用が不要となり、オンラインで完了できるようになるという。

スタートアップは、オンラインポータルで各種申告を提出し、特典を受けることもできる。

キーボードスタートアップであるThingThingの共同創業者であるOlivier Plante(オリビエ・プランテ)氏は、スペインの高いコストのせいで、2015年に英国でスタートアップを法人化した際、そうせざる得ないと感じたと話す。同社は、スペインにオフィスを構え、Fleksy(キーボードSDK事業)を開発している。

「私たちは3年間、1ユーロも稼げませんでした」と同氏は説明した。「最初の数カ月は、登記簿、株式、銀行、公証人(彼らは寄生虫のようなものです)など、事業の開始に多額の資金が必要でした。スペインでは最大5000ユーロ(約64万円)かかるところ、英国では70ポンド(約1万500円)で済んだのです」。

プランテ氏は、改革パッケージを歓迎している。同氏にとって最も重要な2つの点は、スタートアップの設立手続きを簡素化することと、初期段階での法人税率の引き下げだ。

現在のアプローチは、基本的に「起業家精神を初日から殺すものです」とプランテ氏はいう。あるいは、創業者となりうる人々を、創業するのに十分な資金を蓄えられる立場にある人々に限定しているという。「本当の起業家は、往々にして手段を選ばないものなのです」と指摘する。「そしてスペインでは、根本的に、貧しい人々が豊かになることができません」。

スペインのスタートアップ団体であるスペインスタートアップ協会も、閣僚会議による草案採択を歓迎したが、全文発表後に詳細を確認したいとしている。

また、議会がこの提案をさらに改善することを期待していると述べた。企業がスタートアップとみなされる年数をさらに長くすることや、(草案がそうなっていないとの仮定で)制限する条件を変更する可能性も示唆した(例えば、スタートアップが適格となるために、スタッフの60%がスペイン国内にいる必要がある、売上高がたった500万ユーロ[約6億4000万円]までであるなど)。

同協会は、スタートアップ投資家に対する税控除の拡大については「成功している他のエコシステムと同等になるすばらしいニュースだ」と、非常に高く評価している。

また、この改革案には、起業家精神を刺激するさまざまな施策が盛り込まれている。例えば従業員として別の仕事にも就いている起業家は、社会保障制度へ2回拠出する必要がなくなる(これはブートストラッピングを阻害する要因となる)。また、規制業種では、新しいサービスやMVP(実用最小限の製品)の開発を促進するため、サンドボックスやトライアルライセンスの新設が計画されている。

ただし、具体的な内容が国会でどのように修正されるかは注目だ。

法案可決の時期は、政府関係者がTechCrunchに語ったところによると2022年前半だが、可決期限は同年末までだという。

資金面では、スペイン政府は最大40億ユーロ(約5120億円)の投資目標を掲げている。欧州連合(EU)のコロナウイルス復興資金の活用も含め、スタートアップの成長を促す。

スペインのスタートアップ改革のための10カ年計画については、TechCrunchが2021年初めに行った、スペインの起業家戦略を担当するFrancisco Polo(フランシスコ・ポロ)高等弁務官へのインタビューをチェックして欲しい。

関連記事:スタートアップを経済の推進役に据えるスペインの10年計画

画像クレジット:AntoinePound / Flickr under a CC BY 2.0 license..

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

デジタルファースト企業のグローバル税務を支援するFonoaが約23億円調達

商品、コンテンツ、あるいはサービスをグローバルに販売すると、税務上の問題が数多く発生する。世界的にクロスボーダー取引が急増する中、デジタルファーストの企業は、国際的に成長・拡大していく中で、グローバルな税務・コンプライアンス問題を理解し、管理するという課題に直面している。

アイルランドのダブリンを拠点とするFonoa(フォノア)は、Uberの元社員であるDavor Tremac(ダボール・トレマック)氏、Filip Sturman(フィリップ・スターマン)氏、Ivan Ivankovicz(アイヴァン・イバンコビッチ)氏の3人によって創業された。設立2年の同社は、デジタル企業がインターネット販売で徴収すべき税金を決定し、計算するためのAPIを開発した。

Lime、Uber、Teachable、Zoomなどの企業の税務コンプライアンス維持をサポートしているFonoaは、オンラインで販売される商品やサービスが特に国際マーケットで増加しているのに伴い、シリーズAラウンドで2050万ドル(約23億円)を調達した。Fonoaの顧客は配車サービス、モビリティ、フードデリバリー、SaaS、eコマースなどの業界が中心で、またサブスクリプション企業も含まれる。

FonoaのAPIは顧客の既存のデータを「簡単」に統合できるため、顧客は何時間もかけて手作業で税金に関する問題を解決する必要はない、とCEOのトレマック氏は話す。自動化されたサービスへの需要の高まりを受けて、Fonoaが扱う年間税務案件は3億件を突破した。B2BのSaaS事業者として同社は「非常に健全なマージン」を確保しており、トレマック氏によると、2020年12月以降、売上高は7倍に増えた。

「デジタルの世界では、企業と顧客は世界規模で取引を行います。国の国境はもはや制限要因ではなく、テクノロジーがグローバル取引をかつてないほどのスピードで推進しています」と同氏は話す。「規制当局による監視の強化と相まって、より自動化された信頼できる方法で税務問題に対処することは、これまで以上に緊急の課題となっています」。

Fonoaによると、同社は「プラグアンドプレイ・モジュラー・プラットフォーム」を提供していて、取引が行われた後に買い手と売り手の税務上のステータスを確認して正しい税金を計算し、地域の規制に準拠した請求書を作成することができる。また、必要に応じて、その国の政府に取引内容をリアルタイムで自動報告することも可能だ。

画像クレジット:Fonoa

新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、Fonoaの成長は「著しく」加速したと、トレマック氏は語る。

「オンラインでの取引にはそれぞれ税金がかかるため、オンラインでの販売が増えるということは、我々の仕事も増えるということです」。

OMERS VenturesがFonoaのシリーズAラウンドをリードし、Index Ventures、FJ Labs、Moving Capitalが参加した。Indexは2020年11月に450万ドル(約5億円)のシードラウンドをリードしたが、これは未発表だった。その他の出資者には、OpendoorとUberでCOOとCFOを務めたGautam Gupta(ゴータム・グプタ)氏、Eventbriteの創業者であるKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏、DoorDashのCFOのPrabir Adarkar(プラビール・アダーカー)氏、GoCardlessの元COO、Carlos Gonzalez-Cadenas(カルロス・ゴンザレス・カデナス)氏、FastのCOOであるAllison Barr Allen(アリソン・バー・アレン)氏などが含まれる。

Uber出身の創業者たちは、税金を正しく計算して世界中の当局に報告することがいかに難しいかを身をもって体験した。そこで、インターネット経済全体のために税金を自動化する技術の開発に着手した。

Fonoaは現在、100カ国以上の国で税金計算の自動化をサポートしており、今回の資金調達により、年内に140カ国超に拡大することを目指している。また、今回の資金を雇用にも充てる予定だ。Fonoaはダブリンを拠点としているが、最近の他の多くのスタートアップと同様にリモートを基本としていて、現在60人のチームが15カ国で働いている。米国、欧州、アジア、中南米で、エンジニアリング、プロダクト、営業、人事、オペレーションなどの分野の人材をさらに60人採用する計画だ。また、今回の資金は、現在の製品のカバー範囲を広げるためにも「まったく新しい製品を作るため」にも使う、とトレマック氏は話す。

同氏は「目の前に膨大な機会があり、利用可能なすべてのリソースを使って、成長を倍増させようとしています」とTechCrunchに話した。「我々は、すべての地域で、すべての製品に関連するすべてのユースケースをカバーするまで、事業拡大します」。

Index VenturesのプリンシパルであるHanna Seal(ハナ・シール)氏は、Fonoaが国際的に事業を展開している企業の成長を解き放ち、そうでなければそうした企業は各国の複雑な税制で「身動きが取れなくなる」と考えている。

シール氏は「単なるバックオフィスの自動化ではなく、成長を可能にすることにFonoaが焦点を当てている点に惹かれました」とメールに書いた。「複数のマーケットでUberを運営してきたFonoaの経営陣は、国境を越えて事業規模を拡大する際の課題を深く理解しており、企業が新たな地域をシームレスに追加して拡大できるような製品を開発してきました」。

OMERS Venturesのマネージングパートナー、Jambu Palaniappan(ジャンブ・パラニアパン)氏は、Fonoaのプロダクトを「市場で最高かつ最も完全な製品」と評した。

「Fonoaは、検証からリアルタイムのレポート報告まで、税務の全工程に注力しており、コンサルティングではなくテクノロジーを製品の中核に据えています。世界中の政府がこれまで以上にコンプライアンスに関心を寄せている今こそ、Fonoaが世界に通用するプラットフォームを構築する絶好の機会です」。

画像クレジット:Fonoa

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

G20が巨大IT企業の税逃れ防止のため法人税率を最低15%以上とする協定に合意

G20が巨大IT企業の税逃れ防止のため法人税率を最低15%以上とする協定に合意

Kirsty Wigglesworth – Pool/Getty Images

10月30日にイタリア・ローマで開幕した主要20か国および地域首脳会議、通称G20は、多国籍企業の世界最低税率を15%以上に設定する協定を結ぶことで合意しました。この協定は主にGoogle、Amazon、Meta(Facebook)といった大手インターネット・IT企業を対象とするもので、これら企業はタックスヘイブンと呼ばれる無税もしくは税率の非常にやすい国や地域(租税回避地への無形資産移転によって、ビジネスをおこなっている国や地域にでの法人税などの納税を回避しています。

2015年の経済協力開発機構(OECD)の試算によると、これらの企業による租税回避によって、全世界で約1000億~2400億ドルの法人税が収められていないと報告されています。

今回のG20での合意は、米国が主導して議論されました。世界の大企業の最低税率を15%に設定することで、企業が租税回避地に利益を移す旨みをなくすことを目的とします。OECDはこの措置により世界銃の企業から合計1500億ドルを得られるようになると述べました、

この協定によって本来得られるはずだった税金が納められるようになれば、各国の政府は公共サービスへの資金や、気候変動やその他の問題にそれらを割り振ることが可能になります。

ただ、合意された15%という最低税率は、先進国の法人税の平均となる約23.5%をはるかに下回る税率です。また影響を受ける企業は100社に満たないと言われ、貧しい国にはほとんどお金をもたらさないと主張する意見もあります。

いずれにせよ、G20各国における法人税回避の現状を打破するのなら、それは各国の人々にとっては良いことと考えて良さそうです。

(Source:BBC News、。Engadget日本版より転載)

トヨタとホンダは米自動車メーカーに有利なEV税制優遇措置拡大に反発

Toyota Motor(トヨタ自動車)とHonda(ホンダ)は、米国内で労働組合員が製造した電気自動車の税制優遇措置を拡大する法案を、否決するようにと議員たちに要請している。

この法案は、米国内で労働組合員によって製造された自動車に対する連邦税の優遇措置を7500ドル(約82万円)から最大1万2500ドル(約137万円)に拡大するというもので、トヨタは議会に提出した書簡の中で「明らかに偏っている」「法外だ」と非難している。さらに、米国内で製造されたバッテリー搭載車には優遇措置が500ドル(約5万5000円)上乗せされる。この法案が可決された場合、トヨタ、ホンダ、Tesla(テスラ)などの自動車メーカーの車両は優遇措置の対象外となるが、デトロイトの「ビッグ3」と呼ばれるメーカーはすべて対象となる。

トヨタは議員に宛てた書簡の中で、「現在の法案は、組合に加入しないという選択をした米国の自動車労働者を差別し、電動車両の普及を加速させるという目的を二の次にする」と述べ、「これは不公平であり、間違っています。この明らかに偏った提案を否決してくださることを求めます」と嘆願している。

さらにトヨタは、この法案は富裕層、つまり電気自動車の購入に公的資金を必要としない人々を優遇するものだと述べている。この法案には、調整後所得が40万ドル(約4400万円)までの個人、または80万ドル(約8800万円)までの世帯に、優遇措置の適用を制限するという所得調査の条項が設けられている。所得制限を設けるかどうか、あるいはその所得制限をどのようにするかは、議会の民主党と共和党の間で大きな争点となっている。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、この法案を「メキシコで電気自動車を製造しているFord(フォード)  / UAW(全米自動車労働組合)のロビイストが書いたものだ。これがどれだけ米国の納税者のためになるのかはわからない」とツイッターで批判した。

Whole Mars Catalog

労働組合のために4500ドル(約49万円)に引き上げ、米国製に対してはたったの500ドルに減らしたことには、開いた口が塞がりません。

労働組合への2500ドル(約27万4000円)はすでに馬鹿げていました。しかし、新提案ではそれを4500ドルに拡大するとは?!? 彼らは明らかに1つの企業をターゲットにしています。

Elon Musk

メキシコで電気自動車を製造しているフォード / 全米自動車労働組合のロビイストが書いたものです。これがどれだけアメリカの納税者のためになるかはわかりません。

この法案は、EVに対する最大7500ドル(約82万円)の税額控除が10年以上前に施行されて以来、初めての増額となる可能性がある。また、この法案では20万台以上のEVを販売した自動車製造業者の車両を控除の対象外とする規定が廃止されるため、General Motors(ゼネラルモーターズ)やテスラのクルマも再び対象となる。

GM、フォード、そして旧クライスラー(Chrysler)のStellantis(ステランティス)という、全米自動車労働組合に代表される従業員が働く大手自動車メーカー3社は、この法案を賞賛している。

この法案は米国時間9月14日に下院歳入委員会で審議される。この税控除拡大は、現在議会で審議されている3兆5000億ドル(約383兆6000億円)規模の巨大な予算調整法案の一部に過ぎず、その中には他にも教育、医療、気候変動などを対象とした社会的に進歩的な提案が多数含まれている。

画像クレジット:Toyota

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

HRテックのGustoが研究開発税額控除サービスのArdiusを買収

政府から無料でお金がもらえるというと、まるで宝くじに当たったような気分になるが、実際には技術系のスタートアップ企業はもちろん、地元の小売店やレストランであっても、米国の研究開発に関する税額控除の対象となる可能性がある。ただこの税額控除は、ハイテク企業の税率をゼロに近づけてはくれるが、中小企業にとっては、膨大な書類の提出や税務調査の費用の可能性のために、受けることが困難になっている。

そこで、この問題を解決するために多くのスタートアップ企業が立ち上げられたが、ここにきて大企業も参入し始めた。

中小企業向けの給与計算サービスから始め、その後従業員の入社手続きや保険、福利厚生などの人事サービスにも事業を拡大してきたGusto(ガスト)は米国時間6月17日、研究開発費の税額控除に特化した税務コンプライアンス自動化スタートアップのArdiusを買収すると発表した。

ロサンゼルスを拠点とする同社は、それまで会計事務所EYで10年以上勤務していたJoshua Lee(ジョシュア・リー)氏が2018年に創業した。買収条件は公表されていない。Ardiusは独立した事業として運営され、チーム全体がGustoに移る。

ここでの戦略はシンプルだ。ほとんどの研究開発税額控除では給与明細書が必要になるが、そのデータはすでにGustoの記録システムに保存されている。現在のArdiusは、多くの給与データプロバイダーからデータを抽出し、それを検証可能な税務書類に変換できる。今回の提携により、両社はGustoの膨大な数の顧客のために自動でそれを実行することができる。

Gustoの共同創業者でCEOのJoshua Reeves(ジョシュア・リーブス)氏は、今回の買収は顧客とシンプルさを重視する同社の長期的な方針に沿ったものだと話す。「我々は、テクノロジーと優れたサービスを融合し、政府をよりシンプルにしたいと考えています」と同氏はいう。「ある意味では、給与計算をよりシンプルに、医療費をよりシンプルに、PPPローン(米政府の融資制度の1つ)や税額控除をよりシンプルにするなど、当社が行っている多くのことは、これらが意図された通りに機能するようにすることなのです」。Gustoはおそらくそうした機能を自社で開発することもできたが、Ardiusを最初の買収対象にしたのは「Time to Market(市場投入までの時間)」が重要なポイントだったと同氏は指摘する。

共同創業者で最高製品責任者のTomer London(トマー・ロンドン)氏は「私たちが長い間この分野に注目していたのは、独善的な製品を作るという当社の当初の製品理念の1つにつながるからです」と話す。人事のような複雑な分野で「私たちは単なるツールではなく、アドバイザーでありたいと考えています。これは、私たちがすでに持っている給与データを数回クリックするだけで、数日後にはそのビジネスにとって本当に重要なキャッシュフローにアクセスできるというすばらしい例です」。また、税額控除については「長い間、私たちのロードマップにあったものです」と述べた。

Gustoは、100以上のサードパーティーサービスと連携しており、プラットフォーム上で統合することができる。リーブズ氏は、ArdiusがGustoの一部となっても、すべての企業(Ardiusの製品と直接競合する可能性のある企業も含む)は、引き続きGustoのプラットフォームのデータに平等にアクセスできることを強調した。同社はプレスリリースで、Boast.ai、Clarus、Neo.Tax、TaxTakerなどを現在Gustoと統合している税務製品の例として挙げた。

もちろん、Ardiusは、研究開発や経済開発の税額控除の分野で登場した数多くの競合企業の1つにすぎない。筆者が以前、2020年のシードラウンドで紹介したMainStreetは、3月にSignalFireがリードした資金調達で6000万ドル(約66億円)を調達したばかりだ。一方、こちらも筆者が2020年紹介したNeo.taxは、総額550万ドル(約6億500万円)を調達している。

リーブズ氏は、この分野が注目されていることと、Ardiusにとっての競争の可能性について、前向きに考えている。研究開発費の税額控除については「アクセス性を高めるものであれば、私たちは賛成です」と語る。「率直に言って、まだ十分に活用されていないため、認知度が高まっているのはすばらしいことです」。また、Gustoのデータやソフトウェアを活用すれば、他の競合他社よりも垂直統合型のソリューションを提供できると強調した。

パンデミックの影響を特に受けたのは中小企業で、中小企業は大企業のような資金力を持たないため危機を乗り切れないことが多いが、Gustoは新しい企業の誕生とともに事業を拡大してきた。リーブズ氏によると、4月に終了した前事業年度は同社の顧客ベースが50%増加したという。「パンデミックや経済危機の中では、給与の支払いや医療へのアクセスなどが非常に重要であることがわかりました」とリーブス氏はいう。Gustoは、中小企業が政府の景気刺激策であるPPPローンを獲得するためのプログラムを開始した

Gustoの主な拠点は、サンフランシスコ、デンバー、ニューヨークで、Ardiusの拠点はLAのままだが、Ardiusのスタッフを含めリモートワーカーの数は増えている。リーブズ氏は今後の買収については言及していないが、Gustoは従業員と企業の両方を対象とした包括的なファイナンシャル・ウェルネス・プラットフォームへの拡大に注力していることから、将来的にはさらなる買収が行われる可能性がある。

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カテゴリー:HRテック
タグ:Gusto税金買収

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi

最もリクエストが多かった消費税計算、会計ツールを決済大手Stripeは約30カ国で提供開始

消費税計算を専門とするTaxJar(タックスジャー)を2021年4月に買収したのに引き続き、Stripe(ストライプ)は米国時間6月10日、税分野でさらに大きな動きに出た。企業価値950億ドル(約10兆3855億円)もの決済巨人である同社はStripe Taxという新プロダクトを展開する。自動でアップデートされる消費税計算(消費税、VAT[付加価値税]、GST[商品サービス税]をカバー)や関連する会計サービスを、Stripeの決済を利用するまず30カ国超の顧客に提供する。

Stripe TaxはTaxJarとは別のサービスだが、関係がないわけではない。Stripe Taxはここ数カ月かけてダブリンにあるStripeのオフィスで制作され、StripeのEMEA(欧州、中東、アフリカ)担当責任者Matt Henderson(マット・ヘンダーソン)氏は、その過程でTaxJarがこの分野で強い会社だとチームは気づいた、と筆者に語った。それが最終的には2社のM&Aにつながった。

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消費税、そして特に課税と追跡に対応するよりシームレスな方法の確保は事業をオンラインで行う人にとって悩ましい問題だ。

デジタル、そして物理的商品は130カ国超で課税されるとStripeは話す。課税に関する規則は絶えず変化するため、規則やコンプライアンスの複雑さは大きく異なる。一方で、消費税の取り扱いミスはかなり高額の罰金につながり、時に支払い期限を過ぎた未払額の利子は30%にものぼる。

驚くことではないが、消費税ツールはStripeの顧客から最もリクエストが多かった機能だったとヘンダーソン氏は話した。こうした要望は、新型コロナウイルスの影響でeコマースとデジタル決済が非常に増えたために2020年にさらに大きなものになったようだ。

おそらくそれはStripe TaxをStripeのプロダクト立ち上げでも大きなものの1つにしている。2021年初めの巨大な資金調達を発表してから初のプロダクトであるということはいうに及ばないだろう。

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これまでStripe顧客は消費税に対応するのに(TaxJarのような)サードパーティのサービスに頼っていた。あるいは、より典型的な例として、そうしたStripe顧客は複雑でかなり地域によって異なる複数の税法に対処する労力を最小化するために、商品やサービスを販売する場所の数を制限することを選ぶこともある。

「税に対応するのに興奮して朝ベッドから飛び起きる人はいません」とStripeの共同創業者で社長のJohn Collison(ジョン・コリソン)氏は声明文で述べた。「大半の企業にとって、税コンプライアンスの管理は頭痛の種です。当社は消費税の計算と徴収に関するすべてを簡素化します」。

Stripeは同社の顧客に行った調査で、3分の2が消費税実行の問題が実際に成長を制限したと答えた、と述べた。

TaxJarは消費税を扱うための強固なシステムを構築したが、マサチューセッツに拠点を置きリモートチームを抱える同社は主に米国マーケットにフォーカスしている。米国の消費税も非常に複雑だ(米国には1万1000もの税務管轄区域がある)。

このため、米国以外の国のための消費税ツールを構築する余地がある。このように、TaxJarとStripeが今後どのように統合するかにかかわらず、Stripe Taxの広範なフォーカスはStripeにとっての地理的ギャップを埋めている。

もう1つ、2社の間に注意すべき主要な相違点がある。

TaxJarはかなり確立されたオペレーションでStripeの注意を引いた。TaxJarは買収発表時に2万3000もの顧客を抱えていた。Stripeは(賢くも)TaxJarを独立事業会社とし、これはTaxJarを利用する新規・既存顧客がこれまで通りTaxJarを使えることを意味する。つまり、少なくとも当面はTaxJarを使うためにStripeの決済顧客である必要はない。2つのプラットフォームの統合が今後さらに進むとしてもだ。

一方、Stripe TaxはStripe顧客との接点と付き合いを増やすことを目的とするプロダクトとしてゼロから構築されている。

Stripe Taxは顧客の所在地と販売するプロダクトに基づいてリアルタイムの税計算を提供している。顧客のための透明な項目分け、(欧州のように)ビジネス顧客が一定の売上高以下であれば自社コードを提供して税金ををリバースチャージできる地域でのタックスID管理、書類提出と送金を簡単にするためのすべての取引での調停と報告などだ。

しかしStripe決済の外でStripe Taxを使う方法は現在のところない。

これは一部の顧客にとっては問題となるかもしれない。最近、大手小売の多くがマーケットプレイスを通じた販売、ウェブサイトを通じた販売、ソーシャルメディアを通じた販売などをカバーする「オムニチャネル」アプローチを取ろうとしているが、そうしたエクスペリエンスのすべてがStripeで提供されるわけではない。Stripe Taxの将来のイテレーションがそこをカバーするかどうか、注目する価値がありそうだ。

StripeのStripe Tax以外の最も大きなプロダクトの立ち上げは2020年12月のStripe Treasuryだ。これは、同社が現在いかに基本的な決済事業以外のところで多様化を図り、広範でさらに多くの取引にプラットフォームを開放することに注力しているかを強調している。

まだ招待制であるTreasuryでStripeは銀行業務サービスを展開するために銀行と提携し、顧客がStripe駆動の事業からの売り上げを管理できる方法を提供している。

Stripe Taxが利用できる国はオーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、ニュージーランド、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、米国、英国だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stripe

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi